Home > Interviews > interview with Tomggg - バターとシュガーとクリームの祝福
(歌詞のオーダーについては)甘いものを食べてる……部屋の中でひとりでお菓子を食べているというイメージでやってほしいと言ってたんです。
■そこでこの『Butter Sugar Cream』ですが、甘味三段活用。もう、甘いぞーってタイトルですね。ワン・ワード?
T:ワン・ワードでいいと思います(笑)。
■ハハ、この甘いものの三段重ねは、ご自身の音への自己評価なんですか?
T:ああー、なるほど、そうですね……。「バター・シュガー・クリーム」って言葉自体は、この歌詞をつくってくれた辻林(美穂)さんが使っていた言葉なんですよ、歌詞のなかで。僕としては、甘いものを食べてる……部屋の中でひとりでお菓子を食べているというイメージでやってほしいと言ってたんです。
■あ、そこまで明確にディレクションされてたんですね。
T:そうですね。けっして相手がいないかたちで、甘いものを楽しんでいる状態というか。で、実際にできた詞のなかの「バター・シュガー・クリーム」って言葉がとてもよかったので、タイトルとして使うことにしました。あと、「シュガー・バター」だとウェブで検索したときにノイズが多そうなんですけど、「バター・シュガー・クリーム」だったらこれしか引っかからないし。
■ハハハ。「バブルガム・ベース」なんて言ったりもしますけど、まあ、バブルガムとはニュアンスがちがうにせよ、「バター~」もポップで甘いってとこは共有してると思うんですね。そこで、ポップとか甘いとかって感覚が目指されているのは何なんですかね?
T:なんですかね、「カワイイ」を横にズラした感覚っていうんでしょうか。「カワイイ」を言い過ぎてしまうというか。手に余る感じをわりとポジティヴに表現してるんじゃないですかね。
■ははー。それはなんか、咀嚼したい回答ですね。なるほど。しかしそもそもクリムゾンとツェッペリンからはじまって、行き過ぎたカワイイまでいったわけですか(笑)。
T:ははは。やっぱり、遠回りしたほうがおもしろいなっていうのはあります。ルーツがそのまま出るよりも。それから、たとえばノイズっていうものは一部の人にしか楽しまれないものだと思うので、せっかくならいろんな人が聴く場所でやってみたいという気持ちもありますね。お菓子ってみんな好きですよね。漬物とか、限られたひとの嗜好品みたいなものよりもそっちをやりたい。子どもも大人も食べられるようなものを使って発信したいです。
■ということは、Tomgggさんの目指している音楽性は、Tomgggさんの考えるレンジ、リスナー層の幅に対応しているものだと。
T:そうですね。なんだろう、生きていく上で絶対必要なごはん、以外の食べ物。本当は食べなくてもいいもの、動物としてじゃなくて人間として必要な食べ物。お菓子ってそういうことですね。
■ああ、人はパンのみにては……バター、シュガー、クリームなしには生きられないと。
T:重要ですね(笑)。
■なるほど。ですけど、あえて反論するなら、たくさんのひとが快適で楽しめる感じの甘さであるには、『バター・シュガー・クリーム』はちょっと毒なくらい過剰に甘すぎませんか?
T:でも思いっきり濃くしないと。薄い甘さじゃ広がらないだろうなって思います。やっぱり10秒聴いてグッとくるかこないかの世界──インターネットってそういう場所だと思うんですけど、プレヴューで10秒、20秒、30秒って飛ばして聴かれるようなときに耐えられる甘さにしなきゃいけないわけですよね。
思いっきり濃くしないと。薄い甘さじゃ広がらないだろうなって思います。
■(担当さんに向かって)……いまのミュージシャンって、ほんと大変ですね。
T:自分もそうだし、みんなもそうだと思うんですよね。
■マジで絶句しましたよ。俺の歌を聴くまで待つとか、そんな悠長なことをいっていられないんだ。むしろ、あっちはお客様ってくらいの意識があるというか。
T:そうですね、自分もやっぱり聴く立場だし。SoundCloud(サウンドクラウド)とかも日々更新されるじゃないですか。時間をそんなに取れないから、こことこことここだけ聴く、みたいな。
■盤を買いにレコ屋さんに行って掘ってきたりってするんですか?
T:サンクラ……ですね。それこそ高校生の頃はディスクユニオンのプログレ館に行ったりとかしてましたけど。
■ハハハ。でもその頃は、ひととおり紙ジャケの再発ものがバンバン出ていて、聴きやすいし買いやすかったんじゃないですか? 解説も新しくついてるし。
T:そうですね。たしかに再発で新しく知るきっかけになったり。
■そうですよね。プログレ館まで行くんなら、聴いてたのはイギリスのバンドとかだけじゃないんじゃないですか? アレア(Area)とか。
T:アレア聴いてましたね。もちろんヨーロッパからですけど、イタリア系も聴いて。オザンナ(Osanna)最高、みたいな。
■ハハハ! マジですか。ジャズとか、ちょっとクラシックにも寄ってきますしね。頭おかしい合唱みたいのでアガったりとかしませんか。
T:どうですかね、マグマ(MAGMA)みたいのもやってみたいですけどね。
■いいですねー。バーバーヤガッ、つって。それぎりぎりカワイイなのかな(笑)。
T:ははは。
■でも訊いてみたかったんですよね。グロッケンとストリングスを禁止したら、Tomgggさんはどんなものをつくるんです?
T:やっぱひたすらマグマみたいになりますかね(笑)。ひたすら繰り返して……すげー盛り上がる、みたいな。
■あははっ!
T:やっぱりいまのスタイルは、グロッケンとかストリングスでメロディをつくるっていうところなので、それを禁じられるとメロディをつくれないだろうから、ひたすら繰り返すっていう方向になるだろうなあ……。
■いまもそういう方向がないこともないですけどね。カワイイをひたすら横すべりさせていって……
T:大袈裟な展開と音づかいにする。
■ははは。そういえば、アナログな音への憧れとかないんですか? ヴィンテージなシンセとか。
T:ああー。はっきり言ってしまうと、シンセにそこまで憧れがなかったりもするんですよね。
■ラスティ(Rusty)が好きって言っておられましたっけ。彼なんかはそういう憧れがちょっと逆に出てるのかなって感じもしますが。彼の音楽はどんなところが好きなんです?
T:はじめて聴いて、カッコいいなーっていうのがきっかけです。この感じがほしいなって。
■音のカロリー高いですよね(笑)。
T:そうそう!
■情報量も凝縮されていてね。逆に、チルな感覚ってないんですか?
T:僕は、重ねるというか、足し算で音楽をつくっていくタイプなんで、どちらかというとカロリー高めにはなりますかね。はじめの、スピーカーを増やして情報量を過密にするという話ではないですが。
■ああなるほど、じゃ北欧シンフォニックみたいにね、異常なエネルギーで過剰な情報量をさばいていくかんじのポップス、やってほしいですね。
T:ははは、いいですね。
■ポストロックとかは通ってますか?
T:そうですね、多少。ポストロックというかわかりませんけど、ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー(Godspeed You! Black Emperor)とかはカッコいいですよね。
■ええー。なんだろう……素っ裸になったりしなきゃ。
T:いやいや、そんなストイックだったりはしないんですけど。あとはドンキャバ(Don Caballero)とか。
■ええー! そうか、お話を聞いていると、意外に底に沈んでいるものがハードコアですね。手数の多いドラミングとかは、まあ、情報量ですかね。
T:ああ、ドラムがメロディみたいになっていますよね(笑)。好きですね。
■なるほどなー。バターとシュガーとクリームの成分がわかってきました。
もともと人の声を切り取ってきてるわけなんですが……。ただ、ヴォーカルに還元したくないんですよね。
■でも、じゃああの甘さっていうのは仮面?
T:甘い餅にくるむみたいな感じ。どんな中身でも、食べちゃえばわかんないでしょっていう(笑)。
■ハハハ。でも甘いものは本当に好きなんでしょう? 戦略的な意図だけで劇甘メロディを入れている、ってわけじゃないですよね。
T:好きですよ。やっぱりそこは、たくさんのメロディがあったほうが楽しいなって思いますし。
■うーん。なんか、食えないやつですね、ほんと。
(一同笑)
■ご自身のピアノを生かしたいというような気持ちはないんですか? 作曲技法ってことではなくて、生音として取り入れたいというような。
T:そうですね、自分の曲をこのままバンドに変換できたりしないかなってことは考えたりするんですけどね。あまり生音に関心があるというようなことではないですね。
■おお。そうか、譜面が書けるんですね?
T:書けますね。
■ということは、バンドに手渡すということもできますね。それはそれで、おもしろい展開が考えられそうですね。この作品も2曲めとかにヴォーカル・サンプルが入っているわけですが、あれはトラックを渡してその上で歌ってもらうってことじゃなくて、声のデータをもらってつくっているんですか?
T:はい。素材としてもらって、それを打ち込んでます。
■ボーカロイド以降の感覚ってあります?
T:そうですね。でもボーカロイドっていうよりも、僕はコーネリアスが好きなので、コーネリアスのヴォーカルの使い方ってあるじゃないですか? あれをどうにか僕なりのかたちでやってみたいという感じなんです。
■一見、人間性みたいなものをばらばらにしてるような。
T:ええ、ええ。声らしき断片みたいなものがあって、声かどうかは一瞬わからないんですけど、やっぱ声でした、みたいな感じ。そういうイメージですね。
■では、生の声への信仰があるのかどうかってあたりをうかがいたいんですけども、どうですか。生のヴォーカルのほうが尊いっていうような。
T:生の声のほうが言葉になるっていう感じはあるんですけどね。メッセージが強く出ますよね。ボーカロイドだとただ音色になる部分もあると思うんですけども。
■ああ、なるほど。Tomgggさんのこの声の使い方は、声を音色にする方法論ではないんですか?
T:声を音色にしてるんですけどね……なんだろう、もともと人の声を切り取ってきてるわけなんですが……。ただ、ヴォーカルに還元したくないんですよね。
■人が能動的に歌うものにしたくないという? 歌い手が歌う歌にはしたくない?
T:そう、メロディではあるんですけど、ヴォーカルを切り取ってきたときには、無機質な状態のほうがやっぱりおもしろいって思います。
■なるほどなあ。人が歌う歌って、その人の人間性の限界みたいなものも出ちゃったりするじゃないですか。よくも悪くもとにかく情報量がノイジーで。……でも、そういう人間性みたいな部分がいらないわけじゃなくて?
T:そう、人間性もほしいんだけど、無機質さもほしいって感じですね。やっぱり、録音された素材はそれ以上広がりようがないじゃないですか。その状態を保ったままつくるというか。
■そこには人格とかキャラクター性はない?
T:僕の曲だと認識されやすくなるためのひとつのキャラクター性ではあるかもしれないですね。持ち味というか。そういうものは生まれているかもしれません。どの曲にもちょっとずつ混ぜ込んであるんですよ。
ライヴでは前でぴょんぴょん跳ねているのが楽しいんですけどね。
■なるほど。一方で、歌詞もきっちりついている“Butter Sugar Cream”ですが、これはさすがに「歌い手性」みたいなものも出ているかと思います。これは、「女の子ヴォーカルを歌わせる」っていうような意味でのプロデューサー意識はありました?
T:そうですね、さっきも少し触れましたけど、この曲は歌詞をつくるのにもけっこう口を出しているんです。あと、歌い方も指定してつくったものですね。いろいろ歌詞があって、最後「消えたりしない/溶けたりしない」って繰り返すのはぜったいやりたいと思っていました。
■へえ、それは──?
T:あの音色でこんな言葉を入れたらおもしろいだろうなって。「歴史にちゃんと残るんだ」っていう気持ちにリンクするなという気持ちもありました。
■ああ、なるほど、かなりコンセプチュアルなんですね。誰かシンガーを引っぱってきて歌わせたいという思いはあります? この作品でもフェニックス・トロイ(Phoenix Troy)さんがラップで参加されていますけど、トラックを提供して歌い手を歌わせるというふうに仕事を発展させていきたいというような。
T:そうですね。この2曲はうまくいったなとは思うんですけど、まだまだ発展はできるなと。
■彼にラップを入れてもらったのはなぜですか?
T:これは、あちらからアプローチがあって。それで、こういうリリースがあるからそのなかに入れましょうっていうふうになりました。「お菓子がモチーフなんだ」みたいな話をして(笑)。
■へえー。ボーエンさんもそうですけど、なんかそういう、日本人みたいな人たちいますよね。たんにインターナショナルだっていうことじゃなくて、日本人めいた人。
T:ははは。
■しかし、Tomgggさんって、自身がすでに歌ってるというか、トラックがものすごく歌うでしょう?
T:そうですかね(笑)。
■だから誰かに歌ってもらう必要がないようにも思うんですよね。こうやって歌い手と仕事をして、変化した部分もあったりしますか。
T:広がりましたね。いろんなメロディを重ねていくなかで、独自性のある声も出てくるし、さらにそこに自分の音が重なることで情報が増えるなっていう気持ちはあります。
■Tomgggさんの場合、そもそもの夢の方向が裏方を向いていたわけですけど、裏から糸を引っぱって踊らせるっていうプロデューサー志向が、かなり若い人のなかで強いような印象があるんですよ。そのあたりはどうですか?
T:ははは、でもライヴでは前でぴょんぴょん跳ねているのが楽しいんですけどね。記号的なオモテというか、前に出てくる出演者でもあるというところはほしいはほしいですよ。
■ああ、ぴょんぴょん跳ねてるっていいですね! 2曲めは、指をぱちんってやる音がサンプリングされてたりもするじゃないですか。ああいうのも不思議な空間性を生んでますよね。
T:音楽的に使わないであろう音色ってあると思うんですけど、それが普通の音楽に持ち込まれたらどうなるかっていうのを意識することはありますよね。エレクトロニカとかのモチヴェーションに近かったりするかもしれないですけど。ライヴでも、最近は曲と曲の間に雑踏の音を入れたりとかしはじめてます。
足、太い女の子が好きな人が聴く音楽になってほしいですね。
■いまのスタイルだと、ある種箱庭的に、すべての要素を自分自身の手で決定してつくってるわけですよね。ジャケットのイラストはkazami suzukiさんで、〈Maltine〉からのEPでもお馴染みの方なわけですけれども、最初のころからすでにけっこうご活躍の方だったんですか?
T:どうなんだろう。〈Maltine〉のときが最初なんですけど、あのときはtomadくんが見つけてこられたんですよね。Tumblr(タンブラー)にいい感じの人がいるって(笑)。……やっぱりそこにはtomadがいるという。
■ハハハ! すごい、さすが名プロデューサー。つなげますね。だってすでにTomgggさんの音と切り離せないようなものになってるじゃないですか。
T:そう、もうキャラクターが生まれているんで(笑)。
■Tomgggさんから見て、kazamiさんの作品の客観的な評価はどんな感じですか?
T:なんていうか、ロリっぽい感じだとは思っていて。僕の曲──声のサンプルもそうなんですけどね。そういうオタクくささみたいなものが絵のなかに凝縮されていると思いました。やっぱり、本人も吾妻ひでおがどうとかって言ってましたしね。
■ええー、そうなんですか。なるほど。……足、太いですよね。
T:そう。そう、足、太い女の子が好きな人が聴く音楽になってほしいですね。
■ハハハ! またニッチなところに投げましたけども(笑)。いや、でもこれはもっと概念的な太さだとも思うんですよね。実際に太いってだけじゃなくて。
T:ええ、ええ。
■この輪郭の崩れた感じとか。
T:カロリーを感じますね(笑)。
■ハハハ、そうそう(笑)。どうです、こういう絵は詳しいほうですか?
T:いやー、詳しくはないですけど、でも実写とか写真とかそういうものよりはぜったいイラストがいいとは思っていたんです。
■へえー。もし彼女に頼まなかったらどんなジャケになってたと思います?
T:どんなジャケになってましたかね(笑)! アクの強いイラストがよかったので……見つけてきてもらってすごくよかったですね。それから今回も思ったんですけど、キャラクターって重要だなと思いました。
■キャラクターですか。
T:やっぱり強いです。どこにいってもついてくるものというか。逆に言えばどこにでも連れていける感というか。これ俺だよっていう感じで。
■音楽性とか人格も宿っちゃいそうな……
T:それはあると思います。
■それはおもしろいですね。可愛くてコンパクトな情報の運び屋になる。この絵をみるとTomgggさんの音が思い浮かびますからね。
T:いい出会いをいただいたんだと思います。最初は「ポムポムプリン」とかサンリオ系のキャラクターが好きだったみたいですよ。
■へえー。
T:それがあるとき吾妻ひでおに出会って……
■ハハハ。すごいなあ。でもサンリオもいま総選挙とかやってますからね。
(一同笑)
■ポムポムプリンもセンターとらなきゃって、世知辛い時代ですよ(笑)。吾妻ひでおのほうにいってよかったんじゃないですかね。
ソウルフルな女性ヴォーカルはやりたいという気持ちもあるんですよ。
■さてヴォーカルのほうですけど、tsvaci(ツバシ/辻林美穂)さん。彼女もまた音楽を専門的に学ばれてる方ですよね。プロとしてのお仕事もけっこうされている。
T:そうですね、まだ事務所には入っていないようなんですけども。いろいろ呼ばれてやってますよね。出会いは、tofubeats(トーフビーツ)が去年のいまぐらいだったか、ラジオでミックスを流したことがあって、そのなかに入っていたのがtsvaciさんの“You know…”っていう曲だったんですけど、それがよさそうだなって思って声をかけたんです。それから何か月も経ってやっと曲ができましたという感じだったんですけど(笑)。
■戦略的に選ばれているのかもしれませんが、ロリっぽいものは素朴に好きなんですか?
T:うーん、いちばんイメージしやすかったんですよね。自分の音から。
■ああ、音との相性ということですか。個人的な嗜好として好きな女性ヴォーカルの名前は挙がります?
T:やくしまるえつこに衝撃を受けて。
■ああ、それは大きいですね。
T:太くてゆたかなアルトとかが素材としてあったとしても、それはピッチを変えてケロケロさせちゃうかもしれません。音に合わないから。
■ハハハ、なるほど。じゃあ時代にチューニングしてるみたいな部分もあるのかもしれないですね。自分の趣味だけでやるとしたら別ってことですか?
T:うーん、どうでしょう。でもソウルフルな女性ヴォーカルはやりたいという気持ちもあるんですよ。
■へえー。フェニックス・トロイさんとかも、グライムとか、あるいは白人ラッパーとかの雰囲気ではないですもんね。
T:自分のトラックに乗せたらギャップがあってすごいおもしろそうだなって思って。ほんとに、相手に合わせるんじゃなくて、こっちのやり方に合わせてもらうつもりでトラックを渡しました。
■なるほどー。ちなみに男の人の声はケロケロさせなくてよかったんですか(笑)?
T:ははは、あれはあのまま乗せましたね。
■男の人の声はケロケロさせたらどうなるんですかね。ていうか、女の子の声があふれていますけど、男の人の声ってなにかおもしろい展開ないんですかね。
T:はいはい(笑)、やっぱプログレやるしかないんじゃないですか。オペラを登場させるしか。
■ハハハ! つながったー。男声合唱やるしか(笑)。
T:声で音圧を高めなきゃ。
■挑戦はつづきますね。
放課後の部活というか、みんな社会人で、働いてるんですけど、土日は曲をつくって。
■ちなみに〈PCミュージック〉とかはどうですか? 熱かったですか。
T:すごくグッときましたよ。雑な感じというか、軽率な感じというか。
■はは、軽率な感じということなんですな(笑)。
T:ははは、このまま行っちゃうんだーみたいな感じですかね。雑なんだけど、何か新しいものを提示しているっていう、そういう気分を共有できました。
■雑さは織り込み済みの評価なわけですね。雑っていうのは……ヴェイパーウェイヴみたいな露悪性があるわけではなくて、ただ雑、っていう感じ?
T:そのへんですかね。新しさと、あとはミックスの感じにも不思議な印象を受けてます。好きになりましたね。
■〈Maltine〉の中ではとくに仲のいいアーティストって誰になりますか?
T:三毛猫ホームレスとかですかね。
■素敵ですね! なんでしょう、楽理系というか、そういう部分での共感もあるんですかね。
T:あとはHercelot(ハースロット)とか。テクニカルな感じの人たちでしょうか(笑)。スカイプで作曲講座みたいなものが展開されてたりするんですよ。
■いいですねー。
T:三毛猫、芳川よしの、Nyolfen(ニョルフェン)とか……、スカイプで日々会話してます。
■つくってるときのPCの画面を全部見せるみたいな感じですか。内輪でしか公開しないもの?
T:そうそう、新曲をそこで批評しあったり。
■楽しそう。オープンにしないのは、ショーではないという感じなんですかね。
T:うーん、そうですね。放課後の部活というか、みんな社会人で、働いてるんですけど、土日は曲をつくって、そういうところに集まる……。
■いいですねー。部活の楽しさもあるし、テクニカルな交歓もある。
T:テクニックは……それぞれお互いのやり方を見ながらも、実際のところそれほどテクニックに興味がなかったりもするんですよね。音圧とかもみんなわりと、どっちでもよくて(笑)。
■そうですか。それはほんとに……尊いというか。歴史に残る残らないという尺度とはまた別の次元で生きている音楽の例ですね。
T:そういう自覚があるわけではないですけど、そうかもしれませんね。歴史には残りたいですよ(笑)。
取材:橋元優歩(2015年4月06日)
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