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(編集部註)本記事は結末(ラスト)に言及しています。

ジャレット コベック著『くたばれインターネット』はダグラス・クープランドの疎外感をミシェル・ウェルベックが踏みにじりながらビアスの『悪魔の辞典』をあちこちに差しはさんだような小説で、ネット社会をボロクソにこき下ろしている割に登場人物が何を着ているのかいっさい描写がないという意味で同じギークの世界観をさまよう不合理な衝動の産物であった。何をどうすることもできないけれど、インターネットがある限り世の中の雰囲気はけして良くならないということだけはわかるというか、この世界をネット社会にしてくれと頼んだわけではないのにネット社会になってしまった不幸を噛みしめたい時には最適のロードマップではないかと。シャルロット・ル・ボンの初監督作『ファルコン・レイク』はバスティアンの家族がフランスからカナダの避暑地に移動してくるところから始まり、一足先に来ていたクロエが彼女の母親から「スマホ禁止!」と言われると、そこからはインターネットが存在しない世界になっていく。バスティアンもクロエも70年代のティーンエイジャーのように夏休みを過ごし、とても充実した日々を過ごす。最初はまだ不満げだったクロエがバスティアンに「スマホは?」と訊くと、「14歳になったら」と答え、16歳のクロエもそこからはスマホを知らないバスティアンと同じ目線で遊ぶようになる。彼らは湖で遊び、親の目を盗んでワインを飲み、バスティアンが悪酔いして吐くと、クロエはゲロまみれのバスティアンをシャワーで洗ってあげる。至近距離でクロエと接したバスティアンはクロエを異性として意識するようになり、クロエに向ける視線が微妙に変わっていく過程がとても繊細に描かれている。バスティアンとクロエは性の知識を互いに小出しにするようになり、性と自意識が結びつくことで一人前の人格が形成されていく様子も滑らかに伝わってくる。クロエがおっぱいを見せてくれそうな場面でシダ・シャハビの音楽がシガー・ロスみたいになるのはなんか納得だった。性の主体になることが人の成長においてどれだけ大きな意味を持つことか。このことをスマホを手にする前にバスティアンは経験する。

バスティアンから見えるハイティーン=性の主体が加速度をつけて錯綜する様子も巧みに織り込まれていく。とくに避暑地の10代が集まって騒ぐDJパーティのシーンは秀逸で、ミクスチャー・ロックで踊り狂うお兄さん、お姉さんがバスティアンの目には野獣のごとく見え、60年代のヒッピー・パーティを描いた『ダーリング』(65)や『セコンド』(66)の異様さを思い出させるに充分な迫力があった。中から見るのと外から見るのでは大違いというか、まさかダンス・パーティというものをこんなにも暴力的に見せてしまうとは。少し下の世代にはレイヴ・カルチャーもこんな風に見えていたのだろうか。野獣のようなハイティーンはそして、日常的に恋人を取っ替え引っ替えしているような印象操作が続き、人格形成に不安を覚えたバスティアンはクロエを置いてその場から1人で脱出する。帰りの路上で彼は子鹿の死体を目にする。このカットがあまりに長い。セックス・ピストルズ『ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』の裏ジャケットと同じ構図で死んでいる子鹿のカットはさすがに長すぎると思ったけれど、最後まで観終わった時にその意味はようやくわかる。そして、これと同じ意味を伝えるシーンが何度も繰り返されていたことも最後になって気がつく仕掛けになっている。(以下、ネタバレ)似たようなトリックはフランソワ・オゾン『スイミング・プール』(03)でも使われていて、ということは『ファルコン・レイク』も『シックス・センス』(99)を起点とするニューエイジの余波のなかにあり、肉体を超越する志向を持っているということになるけれど、困難と成長が結びつかず、弁証法的なロマンに解消されないという意味で近代はすでに過去形なのだということが印象づけられる。

バスティアンが取り返しのつかない嘘をついたことで物語の終盤は急速に焦燥感を帯び始める。マンガだとページをめくる手が止まらなくなる部分である。バスティアンがハイティーンの振る舞いに脅かされたことで主体性を失いかけ、これを挽回するために嘘をついたことは明白で、嘘をつくことは大人になるための近道であり、思春期にはよくある振る舞いでもある。しかし、バスティアンの嘘は一通のメール(というネット社会の産物)によって暴露され、彼はクロエの信用を失ってしまう。1回の失敗ですべてを失うというのは極めてネット的で、それによって導かれるバスティアンの死はりゅうちぇるやコーネリアスの追い詰められ方を想起させる。登場人物たちはインターネットを使わないとしても彼らを取り巻く世界はもはやネット的なのである。失敗を乗り越えて次に進むという成長の図式は初めからなく、一度失敗をしたらずっとその場で足踏みをしていなければならない。弁証法どころか話し合いも成立しないのがネット社会であり、コミュニケーションが成立しているようで、自分に向けられた言葉でもすべてが他人同士の会話でしかなく、「みんなって誰?」を繰り返すしかない。それこそ主体性がどこにあるのかわからないニューエイジそのままで、バスティアンが泣いて謝ってクロエが一発ぶん殴ってぐちゃぐちゃになれば70年代の青春映画のようになったのかもしれないけれど、そのような感受性がネットに取り巻かれていることで導線を失い、誰の意志なのかわからないままに人が死んでいく。エンディングではバスティアンが死んでも誰も泣いていない。呆然としているだけ。死んだ当のバスティアンも同じくで、自分の姿が誰にも見えていないことを悟り、諦めたような表情にしかならない。その瞬間にこの作品は最初から時間軸が歪んでいたことが判明する。クロエはオープニングから何度も死体のマネをしていたこと。死の記憶が予感として何度も先取りされていたこと。バスティアン自身が幽霊のコスプレをしていたこと。またイメージは時間軸を移動できても、スマホを手にする前に死んだバスティアンには言葉を現在に伝えるすべがない。死んだ人の言葉が届かなくなるのは当たり前だけれど、この作品では過去も未来も同時にふさがれてしまうのがネット社会だという印象にすり替えられる。ネット世代の橋元優歩が編集部にいた頃、「歴史なんて必要ですか?」と言っていたことを思い出す。

フランスの有名な討論場組でご機嫌なお天気お姉さんを務めていたル・ボンが役者になることは約束された道だったのかもしれないけれど、まさか映画監督になるとは思いもしなかった。しかも、初監督とは思えない出来である。上映が終わると、背後から呼びかけられ、振り返ると木津くんだったので、どちらからともなくフランスは女性の映画監督が増えたよねという話になった。レベッカ・ズロトヴスキ、ミア・ハンセン=ラヴ、レア・フェネール、ヴァレリー・ドンゼッリ、メラニー・ローラン、レア・ミシウス、ソフィー・ルトゥルヌール……と実力派が並び、なかではセリーヌ・シアマが頭ひとつ抜けている(音楽はほぼ全作、TTCのパラ・ワン)。2000年代にはオゾン、オディアール、ノエ、ゴンドリー、ケシシュと男ばっかりだったのに、こんなにも変わってしまうとはさすがに驚く。そしてこの列にル・ボンも加わったと。見終わってからなぜか岩館真理子『アリスにお願い』が読み返したくなり、家に帰ってすぐに読んでみると、ストーリーや設定は似ても似つかないのに「嘘」をついたことと「人の命」がつながっているというテーマが両作には共通していた。

待ってました御大、ハート・オブ・ダブ、ダブ・リジェンド・イン・国立、ミスター・サイレント・プレイヤー、ダブとトランペットとビールの芸術家、ペシミズムとロマンティシズムの複雑なかたまり、珠玉のメンバーが集う最高のレゲエ・バンドのひとつ、ザ・ダブ・ステーション・バンドをバックにトランペットを吹いて歌も歌う……
KODAMA AND THE DUB STATION BANDのカヴァー・アルバムが出るとは、2023年の望外の僥倖なり。しかもライヴまで観られるのだからもう思い残すことはない。『COVER曲集 ♪ともしび♪』は10月4日発売。ライヴは9月27日と9月29日@立川A.A.カンパニー。さらに10月25日には、この春Kazufumi Kodama & Undefinedとしてすばらしいサイレント・ダブを響かせたWWWにも帰ってくる。かならず空けておきましょう。
元ミュート・ビートのこだま和文率いるKODAMA AND THE DUB STATION BAND。
そのライヴの定番となっているカヴァー曲の数々をスタジオ録音した待望のアルバム、10/4リリース!リリース記念ライヴも決定!
元ミュート・ビートのこだま和文(Tp/Vo)を中心に、HAKASE-SUN(Key/リトル・テンポ、OKI DUB AINU BAND等)、森俊也(Dr/ドリームレッツ、Matt Sounds等)、コウチ(B/やっほー!バンド、Reggaelation IndependAnce等)、AKIHIRO(G/ドリームレッツ、川上つよしと彼のムードメイカーズ、Matt Sounds等)という日本のレゲエ界を代表する面々が集い、そこに、在籍するバンド、ASOUNDでも注目を集めるARIWA(Tb/Vo)が加わったKODAMA AND THE DUB STATION BAND。
2019年にリリースした初のオリジナル・フル・アルバム『かすかな きぼう』がきわめて高い評価を受けた彼らが、ライヴでたびたび披露してきた、ファンの間ではもはやおなじみとなっているカヴァー曲の数々をスタジオ録音。
ついにリリースするカヴァー・アルバム。
反戦歌として有名な「花はどこへ行った」、「Fly Me To The Moon」「Moon River」といったスタンダード、こだまが作詞したチエコ・ビューティ・ヴァージョンでARIWAが歌う「End Of The World」、
こだまとARIWAの二人で歌う「You’ve Got A Friend」から、「Is This Love」「Africa」といったレゲエ・クラシックス、2021年にリリースし、話題となった「もうがまんできない」につづいてのカヴァーとなる、
盟友JAGATARAの「タンゴ」、ミュート・ビートの「EVERYDAY」、さらには「ゲゲゲの鬼太郎」の衝撃のダブ・ヴァージョン、こだまとARIWAの二人で歌うルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」まで、
ヴァラエティに富んだ選曲は、すべてこだま和文によるもの。
唯一無二のメランコリックな響きを湛えたこだまのトランペットを軸に、よりいっそう豊潤となった精鋭メンバーによるバンド・アンサンブルをもって、取り上げた楽曲に新たな息吹を吹き込んでいる。
「もうがまんできない」で第二期ダブステとしてははじめて正式に作品となったこだまの歌声も味わい深く、清々しく凛としたARIWAのヴォーカルも心地好い。
オリジナルとはまったく違う魅力を放つ楽曲の数々を存分に楽しんでほしい。
10月25日(水)に渋谷WWWにて、9月27日(水)と29日(金)に立川A.A.カンパニーにてリリース記念ライヴの開催も決定している。

《リリース情報》
アーティスト:KODAMA AND THE DUB STATION BAND
タイトル:COVER曲集 ♪ともしび♪
レーベル:KURASHI/P-VINE
商品番号:KURASHI-007
フォーマット:CD
価格:定価:¥3,300(税抜¥3,000)
発売日:2023年10月4日(水)
収録曲(オリジナル・アーティスト)
01. 花はどこへ行った(ピート・シーガー)
02. Is This Love(ボブ・マーリー)
03. Fly Me To The Moon(スタンダード)
04. Moon River(オードリー・ヘプバーン)
05. End Of The World(スキーター・デイヴィス)
06. EVERYDAY(ミュート・ビート)
07. Africa(リコ・ロドリゲス)
08. You've Got A Friend(キャロル・キング)
09. ゲゲゲの鬼太郎 (DUB)
10. タンゴ(JAGATARA)
11. What A Wonderful World(ルイ・アームストロング)
12. What A Wonderful World (Trombone Version)(ルイ・アームストロング)

《ライヴ情報》
KODAMA AND THE DUB STATION BAND
LIVE ♪September♪ 飛石2DAYS
公演日:9月27日(水)、9月29日(金)
会場:立川A.A.カンパニー
出演:KODAMA AND THE DUB STATION BAND
時間:開場19時 開演20時
料金:6,500円+1D
予約(8月10日20時より):
立川A.A.カンパニーホームページ
https://www.livehouse-tachikawa-aacompany.com/
『KODAMA AND THE DUB STATION BAND』予約専用コンタクトホームよりお一人様ずつお申込みください。
返信メールが届いた時点でご予約完了となります(返信は2、3日以内に連絡いたします。1週間が過ぎても返信がない場合は、お手数ですが菅原[09054193255]までご連絡ください。)
※両日とも10月4日発売のcover album♪ともしび♪の先行販売を予定しております。
公演日:2023年10月25日(水)
会場:渋谷 WWW
※詳細は後日発表
先月、1年ぶりの新曲 “夏の雫” を発表したヴォーカリスト/鍵盤奏者の遊佐春菜。昨日新たな楽曲 “夜明けの夢” の配信が開始されている。
https://big-up.style/nk1y6kHfEA
また、上記2曲を収める新作EPのリリースもアナウンスされている。オリジナル・ヴァージョンに加え、Eccy による “夏の雫” リミックス、Sugiurumn が遊佐をフィーチャした楽曲などを収録。島崎森哉主宰〈造園計画〉からの作品で注目を集めつつある新世代エレクトロニック・ミュージシャン、大山田大山脈による “夜明けの夢” のリミックスも気になるところです。カセット作品とのことなので、なくなってしまうまえにチェックしておこう。
遊佐春菜1年ぶりの新作をリリース!
遊佐春菜をフィーチャーしたSugiurumn初の日本語シングル収録

10月13日発売
遊佐春菜 / 夏の雫 ep
KKV-156CA
カセット+DLコード
2,200円税込
2,000円税抜
「Cassette Store Day x Cassette Week 2023」参加作品
収録曲
Side A : 夏の雫、夜明けの夢、All About Z (Sugiurumn feat 遊佐春菜)
Side B : 夏の雫(Eccy Remix)、夜明けの夢(大山田大山脈Remix)、All About Z(YODA TARO Remix)
2022年、ソロとして2作目となるHave a Nice Day!のカバー・アルバム『Another Story Of Dystopia Romance』が大きな話題となった遊佐春菜。自身のバンドである壊れかけのテープレコーダーズをはじめHave a Nice Day!など多くのアーティストのサポート活動をしながら1年ぶりの新曲をリリース。
今回はレーベルメイトであるStrip Jointの名曲「Liquid」を日本語詞にして再構成、彼女のマジカルな声が夏の一瞬を切り取っている。
また日本のクラブ・シーンをリードしてきたハウスDJ Sugiurumn初の日本語シングルで遊佐春菜がシンガーとして抜擢、その楽曲「All About Z」とリミックス「All About Z(YODA TARO Remix)」も収録。
「All About Z」は劇作家、演出家である川村毅作、演出の同名舞台のテーマ曲を再構築した話題曲!
カップリングの「夜明けの夢」ではアンダーグラウンド・シーンで静かに話題となっている大山田大山脈によるリミックスを収録。
