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Kazufumi Kodama & Undefined

AmbientDub

Kazufumi Kodama & Undefined

2 Years / 2 Years In Silence

Rings

野田努 Nov 11,2022 UP

 空しい気持ちに包まれたとき、こだま和文の音楽はより親密に響いてくる。これほど空虚さに寄り添ってくれる音楽をぼくは知らない。彼がUndefinedと作り上げた『2 Years / 2 Years In Silence』は、いまのぼくにとって最良のサウンドトラックだ。打ちひしがれた空しい夜の友である。

 作品とは関係のない話をすることをお許し願いたい。1週間前の土曜日のことである、二度勝ち越しながら二度追いつかれたとき、哀しみではなく、空しさだけがぼくを包んだ。引き分けに終わったジュビロ磐田戦で、清水エスパルスのJ2降格を覚悟したとはいえ、一縷の望みがなかったわけでもなかった。が、しかしそれにしても、最終節のコンサドーレ札幌戦は劇的なまでにいまの清水を象徴する試合だった。「らしかったな」とひと言、静岡の高校時代の友人からメールが入った。金を使うばかりで、肝心なソウルの部分をおろそかにするからこんなことになるのだ。
 
 音楽ライターの原雅明が主宰するレーベル〈Rings〉からリリースされた『2 Years / 2 Years In Silence』は、前半4曲のダブ・ヴァージョン4曲が後半という構成になっている。後半はアンビエントを意識したということだが、アルバムでぼくがとくに注目したいのは、Undefinedのトラックだ。極論をいえば、こだま和文のトランペットが入っていないヴァージョンも聴いてみたくなるほど、この人たちのダブ・サウンドは傑出している。ベーシック・チャンネルの系譜を思わせるそのミニマリズムは、作品の後半においてよりラディカルに解体されているのだ。素晴らしい沈黙が創出されているそれら4曲は、ぼくが近年聴いたダブと形容される音楽においては、もっともクリエイティヴなもののひとつであることは間違いない。
 
 悲観論者として知られるこだま和文がいまどんな心境にあるかは、この音楽を聴かなくとも察するにあまりある。2022年は、あまりにも大きなことが起きた1年でもあった。CDのアートワークにあるささやかな美しさは、いまもミクロな次元では希望があるのだということを暗示している。思えばこだまの音楽はずっとそんな調子だ。最悪ななかにも小さな最善はあるのだ。それをみつけて今日を生き、明日を思う。彼はいま、数ヶ月前から立川でTHE DUB STATION BANDのライヴを再開しているが、そうした小さな場面では良きことは起きているし、音楽シーンや身近なところにはほかにもポジティヴなことはある。スペシャル・インタレストは「もうがまんできない」とは言わず、より現実主義的にこの厳しい時代を「耐えていこう」と言った。そうだ、小さな希望を見つけて耐えていこう、そして昔のように、まずは地元のサッカー少年少女が憧れるチームになって欲しい。
 
 ミュート・ビートの時代から、こだま和文の音楽を聴いているとその折々の自分を思い出す。『2 Years / 2 Years In Silence』は、戦争があって元首相が暗殺されて、清水エスパルスが降格した2022年のアルバムだったとぼくのなかでは記憶されだるろう。直感的な作品なのかもしれないが、ぼくにとっては、この音楽にはそのすべてのことが詰まっているのだ。

野田努