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ダブ・パトロール

ダブ・パトロール

──2022年上半期の推薦盤10枚

河村祐介 Jul 19,2022 UP

 昨年末の紙のele-kingの年間ベストにおける「ダブ」の続きという感じであります。うだるような夏にぴったりのヌケ成分多めの2022年上半期にリリースされたダブ系のリリースから10枚お送りいたしましょう(1枚昨年リリースでした)。なんだか振り返ってみると国産ダブものが異常に豊作だったイメージで、国産レーベルはもちろん、海外からのリリース(〈ZamZam〉傘下からUndefined)さらには海外勢とのコラボにはダッピー・ガンとエレメント、ちょいと別項で紹介する予定のミスティカ・トライブとまさかのダッチ・エレクトロのベテラン、レゴヴェルトとのコラボ=Noda & Wolfersなんてのも出ておりますがそちらは別途単体のレヴューにて近日。


Om Unit - Acid Dub Versions Self-released

 まずはベース・ミュージック方面から、ブリストルのドラムンベース~ダブステップのベテランのリミックス・シングル。サウンドそのままな身も蓋もないタイトルで、ザ最高な2021年のアルバム『Acid Dub Studies』を素材としてリミックス・シングル。本作との間に共作シングル「Root, Stalk, Leaf and Bloom」(こちらも最高です)をリリースしているデッドビート、ブリストルのニュールーツ・ユニット、ダブカズム、〈ボケ・ヴァージョンズ〉などからのリリースで知られる、シーカース・インターナショナル、そしてミニマル・ダブのベテラン、エコースケープの片割れ、ステファン・ヒッチェルがCV313とヴァリアント名義で解体。ローファイ・ダブなシーカース・インターナショナル、ステッパーなダブカズム、アップデートされたミニマル・ダブ~ダブ・アンビエントのデッドビートとエコスケープ方面と、ある意味でさまざまな方向に拡散している、現在のエレクトロニック・ミュージックのダブの解釈が楽しめる1枚。


Undefined - Defined Riddim Khaliphonic


ZamZam Sounds · UNDEFINED "Defined Riddim" LP + 7" Khaliphonic 15 vinyl blend

 こだま和文との10インチに度肝を抜かれた国内のダブ・デュオが、かねてからアナウンスされていた〈ZamZam〉系列の〈Khaliphonic〉(前者7インチ専科、こちらは10インチやLPなどそれ以外)からLPがリリース。ポール・セント・ヒラーレ、ヤング・エコーのライダー・シャフィーク(参加楽曲は〈ZamZam〉から先行7インチでリリース)、さらにLPに付属するボーナス7インチには、日本人ルーツ・レゲエ・シンガー、故ラス・ダッシャーが参加。エレトロニックと生ドラムの編成で、ミニマル・ダブやアンビエントなどの手法を取り入れつつも、やはりルーツ・ダブのうまみを極限の引き算でむき出しにするソリッドなダブ・アルバム。彼らのなかでもオーセンティックなサウンドのボーナス7インチも、アルバムとの対比でおもしろい。


Duppy Gun × Element - Andromeda EP Bokeh Versions / Riddim Chango

 UK〈ボケ・ヴァージョンズ〉と日本の〈リディム・チャンゴ〉による共同リリース。〈リディム・チャンゴ〉を1TA(Bim One Prduction)と運営するタカクラヒロシことエレメントのプロダクションによる3リディムとダッピー・ガンのMC陣。タカクラが件のレーベルからリリースした「Freedom EP」(フィーチャリングされていたダブ・ポエッター、Nazambaは先日残念なことに急逝)は、ニュールーツ色強めでしたが、こちらはダンスホール方面というかダビーなグライムというか。最近「その手の音」といった感じで定式化してしまった感のあるテクノ方面などのダンスホールですが、こちらはそのグライム感の強さなど、くっきりとオリジナル。リディム解釈の角度の違いを聴かせている。


KEN KEN, ICHIHASHI DUBWISE, asuka ando - AMAI HIT KOUCHIE E.P. ARRROUND Wicked Sound Maker

https://arrround.thebase.in/items/55899471

 最近新たな勢いを見せている国内のラヴァーズ・ロック・レゲエ。ある意味で2010年代後半でその動きの突端を作ったとも言えるaska ando。彼女の『あまいひとくち』より、表題曲のニュー・ヴァージョニングでリカットとなる10インチがNoolio主宰の〈ARRROUND WICKED SOUND MAKER〉より。ヴィン・ゴーデン+リー・ペリーのトロンボーン・ダブ “5 Cardiff Crescent”(『Musical Bones』)を下地にした楽曲だったんですが、さらに先日坂本慎太郎『物語のように』にも参加のトロンボニスト、KEN KEN(KEN2D SPECIAL / URBAN VOLCANO SOUNDS)がほっこりホーン・カヴァー、またKEN2D SPECIALのICHIHASHI DUBWISEがズブズブにダブワイズ、幾重にも重なるレゲエ・ヴァージョニングの妙味が味わえる1枚。スピーカーからは温泉気分の熱風が。そしてオマケのミックスCDがまた……ツッテッツテッテ。


Chakra & Ichiro feat. Tamaking Kozy / Chakra & Ichiro Dub Mix Hav - Rasta Woman / Rasta Woman (Chakura Dub) SF Recordings

https://drumandbass-rec.com/products/226434chakra-and-ichiro-feat-tamaking-kozy-ch

日本のダブということでいえばコチラは事件。2000年代の大阪ダブ・シーンを象徴するソウル・ファイヤーの〈SF Recordings〉がおそらく15年ぶりぐらいに突如シングルをドロップ。目を疑いました。詳細は不明ながらダブ・ミックスに〈SF〉のドン、HAVを迎えた体制のキラー・ルーツ。色っぽいダブル・ミーニングで、ある意味でスラックネスな歌詞ですがキラーなサウンドはレーベルの往年と変わらず。そしてB面は同オケにて、まさかのヴォーカロイド、初音ミクの音声をフィーチャーしたこれまたキラーなダブ。


MaL - Primal Dub HOODISH

 冷房効果もありそうなチルアウトなダブを。PART2STYLEとして欧州のベース・ミュージック・シーンにも食い込み、そして最近ではMACKA-CHIN、J.A.K.A.M.(JUZU a.k.a. MOOCHY)とのZEN RYDAZとしてのリリースも活発なMalのソロ。2021年に全治9か月の足の大怪我で、2か月半もの間、入院。そんな入院のさなかにラップトップで制作が進められたというアルバム。これが生活に溶け込むような滑らかにチルアウトなエレクトロニック・ダブ・サウンド。レーベルは彼が拠点にしている高田場馬にある九州料理店「九州珠(KUSUDAMA)」のレーベル〈HOODISH〉より。「Night on the Sidewalk」あたりは、なんというか高田場馬からDJパイソンへの回答というか。詳しくは大石始氏のnoteにて(https://note.com/oishihajime/n/n93d6ab00e9f2)。


Tapes meets Nikolaienko - Sunda School II Porridge Bullet

 エストニアのレーベルより、ここ数年のローファイなエレクトロニック・ダブの旗手とも言えるテープス、そしてヤン・イェリネックのレーベル〈Faitiche〉などからのリリースで知られるウクライナのドミトリー・ニコライエンコのコラボ・シングル。モコモコしたループ・サウンドがまどろみながらエコーに消えていく、チャーミングでローファイなダブ・アンビエント。どこかザ・ケアテイカー的なノスタルジーも。


Nocturnal Emissions - In Dub Holuzam

 インダストリアルのベテランがダブ・アルバムをリリースというか、2010年代よりスタートしていたというダブ・シリーズCDRをコンパイルしたもののよう(オリジナルは自身のBandcampで入手可能)。リリースはリスボンのレコードショップ〈Flur〉のスタッフ、マーシオ・マトスが運営する〈Holuzam〉(姉妹レーベルにDJニガ・フォックスなどをリリースする〈Príncipe〉がある)。初期ダンスホールをスローダウンしたというか、どこかメビウス&プランクの『Rastakraut Pasta』を電化ダブ化したような、決してグルーヴィーとは言えないチャカポコとしたドラムマシンのチープな響き、そしてカットアップされる電子音やらノイズやらギターやらが飛び交うサイケデリックなダブ・アルバム。マスタリングはニュールーツのマスター・エンジニア、〈コンシャス・サウンド〉のダギーが担当とのこと。


FROID DUB An iceberg crusing the Jamaican coastline DELODIO

 オブスキュアなエレクトロやインダストリアルをリリースしているフランスはパリのレーベルより、主宰ふたりによるロックダウン下に作られたダブ・アルバム。大阪は〈naminohana records〉のウェブショップで知り速攻で購入。実は2021年の作品ですがLPがやっと再発されたようです(A4インフォ・シートっぽい+レコード盤面風の印刷のジャケットが最高ですね)。内容は、これまた上記で紹介したノクターナル・エミッションズの作品にも通じるチープな脱力系エレクトロニック・ダブ・サウンドということでチャカポコとしたドラムの上を、電子音やらスクリューなヴォーカルやらがエコーでいったりきたり、DAF『Allest Ist Gut』をあたりを適当かつ無理矢理レゲエ・カヴァーしたらこんな音になるのではないでしょうか、とかいろいろ妄想が広がります。さらにダブ色を強めた『DUBS & BEATS FROM 'AN ICEBERG CRUISING THE JAMAICAN COASTLINE'』もあり。リー・ペリー “Dub Revolution” (アルバムではなく楽曲の方)を始祖としそうな、オールドスクールなドラムマシンっぽいサウンドのローファイなエレクトロ・ダブを、最近勝手にドンカマ・ダブと呼んでいるんですが、まさにそっち系の音。最近流行っているような気がするんですよね。冒頭で書いたNoda & Wolfersもまさにという音で。


Best Available Technology - Fixing Until Broke Accidental Meetings

 イギリス・ブライトンのレーベル〈Accidental Meetings〉より、テープでリリースされたオレゴンのアーティストのダブ・ダウンテンポ。これまたローファイ系なダウンテンポですが、本当に1人の怠惰な時間のために脳を揺らす音楽というか、ニューエイジだとリラックスできない自分としては、トリップホップ時代のフィーリングありなブレイクビーツとかもあったりで、これは世代的には抗えないんですよね。

河村祐介