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Home >  Interviews > interview with xiexie - オルタナティヴ・ロック・バンド、xiexie(シエシエ)が実現する夢物語

interview with xiexie 向かって左から飛田興一(ドラムス)、開輝之(ベース)、Meari(ヴォーカル/ギター)、幸田大和(ギター/ヴォーカル)。

interview with xiexie

オルタナティヴ・ロック・バンド、xiexie(シエシエ)が実現する夢物語

取材:ヒラギノ游ゴ(ヒラノ遊)    写真:川島悠輝   Jul 24,2024 UP

 オルタナティヴ・ロック・バンド、xiexie(シエシエ)が1stアルバム『wellwell』をリリースする。
 2020年1月に東京で結成。2021年2月に1stデジタルEP「XIEXIE」でデビュー。以降、EPとシングルを続々とリリースし、ライヴ・シーンで存在感を示してきた。活動期間は4年を超えるが、今回が初めてのフル・アルバムとなる。
 USインディ、ドリーム・ポップ、サイケといったフレーズで説明されることの多いこのバンドは、日本のみならず、アジア諸外国で評価が高まっている特異な存在だ。
 なかでも台湾でのあるエピソードはちょっと、興奮なしには語れない。まるでバンドをはじめたばかりの少年少女が思い描く夢物語。映画や漫画のような光景を実現してしまったのだ。

 2023年秋、台湾の音楽フェス「浪人祭」に出演することになったxiexie。この時点でのxiexieは現地のオーディエンスにとってまったくの無名と言っていい「外国のバンド」だ。
 開演時刻を迎えても会場はガラガラ。しかし演奏を続けるうち、目を輝かせたオーディエンスが続々と引き寄せられてくる。
 ステージ間の移動中、たまたま耳に入ったxiexieのサウンドに心を掴まれた人びとが集まってきたのだ。彼らが惹かれたのはネーム・ヴァリューでも物珍しさでも奇抜なパフォーマンスでもない。純粋にその音楽をもっと聴きたいという思いが足を運ばせた。その夜は結局、超満員のオーディエンスからの大歓声を浴びながら終演を迎え、翌々日の同地でのワンマンはソールドアウト。
 「音楽が大衆に見つかるときはこうあってほしい」と界隈の人間が願う理想そのもののような体験を得て帰国した。

 台湾の落日飛車/Sunset Rollercoaster(サンセットローラーコースター)をはじめとして、韓国やタイなどのアジアの国と地域には、USインディやその周辺ジャンルの影響を感じさせるバンドが数多く存在し、またそうしたバンドが支持される土壌が豊かにある。xiexieの台湾での反響はそうした背景からくるものといえるだろう。ただ、音楽性の近い他のバンド同様、xiexieにはxiexie独自の持ち味、特異性がある。今回のインタヴューでは、メンバーたちとの対話を通してその特異性の一端の言語化を試みる。
 その過程で、バンドの成り立ち、メンバーそれぞれの音楽的ルーツ、最新アルバムの聴きどころ、今後の展望など、包括的に話を聞いた。

作ってる側としてはドリーム・ポップと思ってないんですよ。そう思われるのが不服ってわけじゃないんですけど、なんでドリーミーとか言われるんだろう? って不思議ではあって。(幸田)

バンド結成の経緯はどういったものだったんでしょうか。

飛田興一:僕がこのバンドの発起人です。ビッグ・シーフリアル・エステートが好きで、それくらいの時期のUSインディ的なサウンドのバンドをやりたいなっていうコンセプトでメンバーを集めました。

幸田大和:僕はもともと飛田さんと別のバンドを組んでたんですけど、その頃はいまとぜんぜん違う音楽性でした。

「USインディ」以外だと、「ドリーム・ポップ」もxiexieの音楽を表現するうえでよく使われるフレーズです。

幸田:僕がバンドのメイン・コンポーザーなんですけど、作ってる側としてはドリーム・ポップと思ってないんですよ。そう思われるのが不服ってわけじゃないんですけど、なんでドリーミーとか言われるんだろう? って不思議ではあって。

皆さんの自認としてはオルタナ(オルタナティヴ・ロック)?

Meari:そうですね。

飛田:こういう音楽性ではあるんですけど、似たような音楽が好きな人たちのなかでちょっと浮いてるかもと思うこともあって。僕個人としてはですけどね、こう、アングラなコミュニティに居心地のよさを感じるわけではないんですよね。割と陽気な方で。

開輝之:陽気(笑)。

飛田:だから売れなくていいとはまったく思ってなくて、xiexieとしても「どうすればこういう音楽をオーヴァーグラウンドに持っていけるか?」って意識は共有してます。
 そもそも、USインディ的だと言われるような音楽性ってポップでキャッチーだと思ってるんですよね。

Meari:本当にね。

開:それはあるよね。

抽象的な話になってしまうんですが、かつてのUSインディ系のバンドと、近年のそういった傾向のバンドとを比較して、思うことがあります。ダンス・ミュージック的というか、ファンクネスが感じられることが増えたように思うんです。

Meari:あー、そうかもしれない。

もともと私は踊りたいほうというか、踊るのが好きですね。(Meari)

チャートにおけるいわゆるブラック・ミュージックの存在感が一段強まって以降の世代というのも関係するのか。断定的なことは何も言えないのですが、その点でいうとxiexieはなかでもかなり “踊れる” タイプのUSインディ・サウンドだなと。

Meari:実際、私がギター置いてタンバリン振って踊る曲ありますよ。今回のアルバムに入ってる “City” って曲です。もともと私は踊りたいほうというか、踊るのが好きですね。

開:言われてみると確かにって思いましたね。意識してたわけではないけど。

飛田:僕もブラック・ミュージック寄りだけど、幸田くんなんてもともとモロにそっち側の人じゃない?

幸田:カッティングしかしてなかった時期あります。カッティングで右に出るものはいねえぜと。

ナイル(・ロジャース)よりも。

幸田:ああもう全然。俺(のほうが上)ですね(笑)。

飛田:個人的には、ブラック・ミュージック寄りな音楽で自分にできることは前のバンドでやりきった感じがあって。そういう要素を持ちつつ、それだけじゃないことをやりたくてはじめたのがこのバンド。
 それで言うと、xiexieをはじめるときに開くんを誘おうと思ったのは、ブラック・ミュージック寄りな音楽と縦のノリの音楽、どっちをやっても説得力があるんですよね。
 彼を尊敬しているところなんですけど、どっちをやってもグルーヴのクオリティが変わらない人ってなかなかいないと僕は感じてるので、彼とリズム隊をやりたいなと思ったんです。

開:そうだったんだ。いま初めて聞きました(笑)。

いろんな要素を内包しているのもあり、皆さんとしては「オルタナ」くらい抽象度の高い括りが居心地いい、というところなんでしょうか。

幸田:オルタナティヴ・ダンス・ロック・ポップ・バンドでいいんじゃない?

Meari:ダンスとポップ入れたくないなあ……。

幸田:オルタナティヴ・ロック・バンドでいきます。

取材:ヒラギノ游ゴ(ヒラノ遊)(2024年7月24日)

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ヒラギノ游ゴ(ヒラノ遊)ヒラギノ游ゴ(ヒラノ遊)
文筆家・ライター。音楽をはじめ映画、コミックほかユースカルチャー全般とソーシャルイシューについて執筆。

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