ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  2. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  3. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  4. 忌野清志郎さん
  5. Stones Taro ──京都のハウス・プロデューサーによる新作
  6. Columns 9月のジャズ Jazz in September 2026
  7. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  8. interview with Boom Boom Satellites 明日は何も知らない | ブンブンサテライツ(中野雅之+川島道行)、インタヴュー
  9. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  10. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  11. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  12. R.I.P. 鷲巣功
  13. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  14. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  15. Rough Trade ──完売間近、〈ラフ・トレード〉50周年記念公演がいよいよ来週開催、ジェフ・トラヴィスのDJもあり
  16. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  17. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  18. interview with Cameron Picton (My New Band Believe) 元ブラック・ミディのキャメロン・ピクトン、新バンドにかける想い | ──初のアルバムを送り出したマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ
  19. Arca - XXXXX
  20. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集

Home >  Interviews > interview with Shinichiro Watanabe - カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツに声をかけた理由

interview with Shinichiro Watanabe

カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツに声をかけた理由

──渡辺信一郎、インタヴュー

interview with Shinichiro Watanabe

監督みずから集大成と語るアニメ『LAZARUS ラザロ』は、音楽をカマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツが手がけたことでも話題を呼んだが、いよいよフィジカルでサウンドトラックがリリース。現在の心境を語る。

取材:小林拓音    写真:小原泰広 Feb 02,2026 UP

 どんな痛みだって消し去ってくれる万能薬。肉体的な苦痛はもちろんのこと、精神的なそれまで含めて。
 いや、そんなものがあったらそりゃあ使っちまうですよ。そりゃ世界じゅうに伝播しますよ。でも、これまであなたたち人類が重宝してきたそれ、じつはそろそろ体内で突然変異するんです。端的にいえば、服用経験者は死にます。一度でも使ったことがあったら──ご愁傷さま。
 2025年4月から6月にかけ放送されたアニメ『LAZARUS ラザロ』は、あわや人類滅亡という危機的な状況を、しかしダークになりすぎたり湿っぽくなりすぎたりしない絶妙なあんばいで、あくまでも明るい未来を探る方向で描いていく。
 そうしたアニメの世界を構築するうえで音楽が果たした役割は小さくなかったはずだ。絶望的なのに前向き──そんな機微をサウンド面で担うことになったのがカマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツの3組だったことは、すでに多くの視聴者の知るところだろう。放送から半年。ついにフィジカルでサウンドトラックがリリースされている。
 作中では場面ごとにばらばらに配置されていた曲たちが、今回のサウンドトラックでは作曲者単位で整理されている。つまりこの3枚は、カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツそれぞれの新作として聴くこともできるわけだ。そもそも監督みずから「自分のアルバムを作るつもりでやってくれ」とオファーしていたそうだから、むしろそうした聴き方こそが本道かもしれず、アニメ自体を観ていないリスナーにとっても大いに発見のあるだろうリリースといえる(もちろんシーンを思い出しながら聴くのだっておおいにアリ)。
 これまでも音楽に強いこだわりをみせてきた渡辺信一郎監督が、みずから集大成と語る『LAZARUS ラザロ』。『別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』では自身の半生を語っていただいたり、「オールタイム・ベスト100アルバム」を選んでいただいたりしているが、今回はまたそれとは異なる角度から、『LAZARUS ラザロ』のサウンドトラックについて話していただいた。

今回のサウンドトラックの3人はみんな、はみ出している人たちを選んだというか、むしろそのはみ出しの部分に可能性を感じてオファーしたと言えるんじゃないかな。

■2025年は『LAZARUS ラザロ』が放送されましたが、1年を振り返ってみてよかったこと、嬉しかったことはありましたか?

渡辺:ひとつはもちろん、『LAZARUS ラザロ』がようやく放送できたこと。あとは『LAZARUS ラザロ』の主題歌、カマシ・ワシントンの “VORTEX” がエミー賞にノミネートされたことですね。アニメは苦労が多いわりに報われることが少ないんで(笑)、スタッフみんなで本当に頑張って制作した甲斐がありました。

■これはカマシ・ワシントンも嬉しいのではないでしょうか。パートナーのアミ・タフ・ラも、彼が作った最高の音楽のひとつが『LAZARUS ラザロ』だったと言っていましたよ。

渡辺:いやあ、本当に良かったですね。

■制作期間も踏まえると、1年以上経ってようやく、ですよね。

渡辺:カマシに限らず、ボノボもフローティング・ポインツも、みんないい曲を書いてくれた。サントラになると、すごくよそ行きになっちゃう人もいるんですよ。だから発注するときにも、「いかにもサントラ風の曲、っていう意識は持たなくていい。自分のアルバムを作るつもりでやってくれ」と伝えてました。結果、遠慮せずやってくれたのが良かったかな。

■今回のサントラの作り方は、通常と違うんでしょうか?

渡辺:いや、サントラの作り方には2種類あって、映画なんかだと先に画ができてて、それを見ながら作曲するフィルムスコアリングというのがひとつ。でも多くのTVシリーズなんかだと画ができるのがギリギリで、そこから作曲してたら間に合わないんです。だから画がないうちから先に曲をいっぱい作っておいて、それをうまく画にハメていくというのが多い。それで、通常はフィルムスコアリングのほうが高級で立派な手法だとされてますが、今回そういう意味ではフィルムスコアリングじゃないんで通常のパターンではあるんです。

■そうなんですね。

渡辺:でも自分の意見としては、フィルムスコアリングってちょっと合いすぎるところがあるんじゃないかな。無難になってしまうというか、曲が画に従属してしまうというか。その分、先に作った曲をはめると、思ってもいなかったような効果が生まれるときもあるし、画に従属しない、バランスを崩しかねないような強い曲を、ギリギリ崩れないように使ったりすることもできる。もちろんこういうやり方は、時間がない、間に合わないってとこから生まれたんだけど、じつはそこに可能性があると思うし、自分はこのやり方もけっこう好きなんです。

■なるほど。曲のエディットも、監督自身が手がけてるんですよね?

渡辺:そうです。たまに、「曲がいいとこでビシッとはじまってビシッとうまいこと終わるけど、どうやってるんですか?」って聞かれることがあるんですけど。

■思います、それは。

渡辺:たまたまうまくいった、なんてことはあんまりなくて(笑)。苦労して、曲をエディットして合わせてるんですよ(笑)。やっぱり、音楽が映像に合わせてビシッとはじまり、終わるものが好きなんですね。

■フェード・アウトではなく。

渡辺:そう。音と画のシンクロの快感って、はじまり方と終わり方が肝心だから、そこに細心の注意を払ってます。作曲家にいつも言ってるのは、「フェード・アウトは禁止」と。

取材:小林拓音(2026年2月02日)

12

INTERVIEWS