「Lea Lea」と一致するもの

CHANGYUU (DOWNNORTHCAMP) - ele-king

普遍の反逆チューンズ


1
The Clash - The Guns Of Brixton - CBS

2
Kiddus I - Too Fat - Shepherd

3
DOWNNORTHCAMP - Lazy Days - Dogear Records

4
EKD & Pachucabras - Babylon City - Sun Shot

5
Cypress Hill - Dr. Greenthumb - Ruffhouse Records

6
Bad Brains - Leaving Babylon - ROIR

7
Don Drummond, Ernest Ranglin, Tommy McCook, etc - Jazz Jamaica From Workshop (Album) - Studio One

8
Jackie Mittoo - Macka Fat (Album) - Studio One

9
Soul Vendors - Drum Song - Studio One

10
Vivian "Yabby U" Jackson & The Prophets - Judgement On The Land - Vivian Jackson

Q'HEY - ele-king

Q'HEY TOP 10 CHART AUGUST 2010


1
Umek / OMGWTF / 1605

2
Duca & DJ Slater / Virada - Manuel De La Mare Remix / Tribal Vision Records

3
Joseph Capriati / Galaxy Express / Drumcode

4
Funk D'Void / Flealife / Outpost Recordings

5
Sasha Carassi / White Sucker / Harthouse

6
Nihad Tule & Nima Khak / Framework / Drumcode

7
Marco Bailey & Tom Hades / Always Valid / Excentric Muzik

8
Hans Bouffmyhre / Mistake Me - Matador Remix / Perc Trax

9
m0h / Pink Elephant - Secret Cinema Remix / Weave Music

10
Mark Broom / If You / Saved Records

Anchorsong - ele-king

CURRENT TOP 10 CHART


1
Squarepusher - Shobaleader One : Cryptic Motion - Ed Banger Records

2
Little Dragon - Little Dragon - Peacefrog Records

3
Tokimonsta - Midnight Menu - Listen Up

4
Mount Kimbie - Crooks & Lovers - Hotflush

5
Caribou -Bowls(Holden Remix)- City Slang

6
M.I.A - XXXO (SBTRKT Remix) - XL recordings

7
Nosaj Thing - Drift - Alpha Pup records

8
Four Tet - Angel Echoes (Caribou Remix) - Domino Records

9
Born Ruffians - Say It - Warp Records

10
Holy Fuck - Latin - Young Turks

Chart by UNION - ele-king

Shop Chart


1

MOODYMANN

MOODYMANN Black Mahogani PEACEFROG / JPN »COMMENT GET MUSIC
初期最高傑作「Shades Of Jae」、乾いたブレイクビーツと黒いベースラインの上で跳ねるフェティッシュなエレピが奇跡の恍惚感を放つ「Black Mahogani」等を収録したベスト的1枚。深みを極めたグルーヴがアルバム全体を支配した傑作中の傑作だ。

2

CRUE-L GRAND ORCHESTRA

CRUE-L GRAND ORCHESTRA (You are)More Than Paradise CRUE-L / JPN »COMMENT GET MUSIC
延期が続き日に日に問合せの声が耐えない(You are)More Than Paradise"のTheo Parrish Remix。既に国内の現場で数多くプレイされその度に独特なフロアの空気を作り出している。DJ Harveyが「最近の新譜の中で一番アメイジングだ」 と絶賛したのも頷ける圧倒的な存在感、こんな曲、他には無い。

3

PLASTIKMAN

PLASTIKMAN Kompilation MINUS / JPN »COMMENT GET MUSIC
現行ダンス・ミュージック・シーンのトップRichie Hawtinによる、幻覚体験を基にして始まったプロジェクトPlastikmanのベスト・アルバムが緊急リリース。初期の作品から一貫して実験的な音作りを進めてきたPlastikmanの集大成がここに刻み込まれている。

4

MARCELLUS PITTMAN (3 Chairs)

MARCELLUS PITTMAN (3 Chairs) Loneliness Leave Me Alone/Razz09 UNIRHYTHM / US »COMMENT GET MUSIC
浮遊感溢れるシンセがシャッフル・ビートと相まって独特の空気を醸し出すA面"Loneliness Leave Me Alone"、緩めのアシッド・シンセをアクセントに使いつつレイドバックしたメロウなサウンドがたまらないB面"Razz09"と、今作もPITTMANNのポテンシャルが遺憾なく発揮された実に魅力的な1枚。

5

SCHERMATE

SCHERMATE CD Volume 3 SCHERMATE / ITA »COMMENT GET MUSIC
リリースの度に反響を呼ぶミニマル・レーベル"SCHERMATE"の限定CD-Rシリーズ第3弾!今回はカタログ7,8,9番、そしてリミックス盤からPETER GRUMMICHのリミックスを抜粋! 恒例のSE集も充実したCD派も大満足の1枚! LTD200、ナンバリング入り。

6

UNKNOWN

UNKNOWN Rose 2 Red RAL(RICARDO AND LUCIANO) / GER »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOS & LUCIANOによるシークレット・プロジェクトシリーズ。今作ではST GERMAIN "Rose Rouge"をサンプリング、オリジナルのヴァイブを損なわずに、パーカッシブかつタイトにシェイプしたフロア仕様のキラーボム。

7

ANDRES

ANDRES Andres MAHOGANI / JPN »COMMENT GET MUSIC
Andresのレアな1stアルバムが再発。哀愁を帯びた統一感のある中に、ソウル、Pファンク~ラテン、サルサなどが絶妙にブレンドされ、Moodymannにも劣らぬコラージュと、デトロイト特有のざらつきがアルバム全体に散りばめられている。

8

DEE EDWARDS/S.L.P.P.O

DEE EDWARDS/S.L.P.P.O Why Can't There Be Love/Accelerate UBIQUITY / US »COMMENT GET MUSIC
プロモーションCMにて使用されたDee Edwardsの"Why Can't There Be Love?(Pilooski Edit)"が限定500枚でのリリース。さらに数々のMIXにも収録された、その人気レア・グルーヴのオリジナルをオフィシャルに収録、カップリング曲にはShawn Leeによる初期QUANTICを思わせるパーカッシヴな変則アフロビートトラックも!

9

UNKNOWN

UNKNOWN Eno + Hall RAL(RICARDO AND LUCIANO) / GER »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOS & LUCIANOによるシークレット・プロジェクト"RAL"!A面は 映画「HEAT」のサントラからBRIAN ENO "Force Marker "を、そしてB面は「2001年宇宙の旅」からHAL9000のヴォイスサンプルを借用したおもしろい1枚。

10

砂原良徳

砂原良徳 Subliminal Ki/oon / JPN »COMMENT GET MUSIC
その優美なフォルムで世界的な評価を獲得した「LOVEBEAT」以来となる5thアルバムに先駆けた4曲入り先行シングル。いしわたり淳治&砂原良徳+やくしまるえつこ名義でリリースしたシングル「神様のいうとおり」のサウンドもさすがというべき仕上がりでより時間をかけて丹念に制作したというその内容に注目。

DJ KEITA(Jack Warriors) - ele-king

2010上半期TOP10


1
Mick - Macho Brother - 10 Inches Of Pleasure Records

2
Sly Mongoose - Noite - ene

3
TBD - Got To My Baby - Golf Channel

4
Hard Ton - Flawless EP - Permanent Vacation

5
Sombrero Galaxy - Journey To The Centre Of The Sun - ESP Institutee

6
Harvey Presents Locussolus - Gunship / Little Boots - International Feel

7
Mr Raoul K - Mystic Things - Baobab Secret

8
Ozo - In the Threshold of Jain - Riot Records

9
Nick Straker Band - A Walk In The Park - Decca

10
Mike Oldfield - Crime Of Passion - Virgin

ele-king - ele-king

Current Top 10 Chart


1
Candy Claws - Hidden Lands - Twosyllable

2
Julian Lynch - Mare - Old English Spelling Bee

3
Emeralds - Does It Look Like I'm Here? - Editions Mego

4
Actress - Splazsh - Honest Jon's

5
The Stamps - Wizard's Sleeve, etc(12") - Mexican Summer

6
Gold Panda - Lucky Shiner-Notown/Yoshimoto

7
Digital Mystikz - Return II Space - DMZ

8
Baths - Cerulean - Anticon

9
High Wolf - Shangri L.A. -Moamoo/Artunion

10
Donovan Quinn & The 13th Month - Your Wicked Man - Soft Abuse

 ぼくがロマンの語り手になり切れない部分は、つまりロマンがしばしば語り手の自己肯定を前提にして、ナルシズムに陥りやすいからで、対立物を内包するとくずれてしまう性格をもっているからだ、という気がする
寺山修司(唐十郎との対談『劇的空間を語る』76年3月)

 これは丑三つ時に見た奇天烈な夢の話
 夢の中で夢が夢であると自覚したばかりに
 私は私と分裂した悲しき性に
 汝の半身を探し闇の中
志人"ジレンマの角~Horns of a Dilemma~"


 現在の志人の凄みとは、00年代初頭にヒップホップ・グループ降神のラッパーとして日本語ラップ・シーンに鮮烈に登場してから約10年間、悩み、懊悩し、思想や価値観やラップのスタイルを劇的に変化させながらも決して歩みを止めなかったからこそ獲得できた代物だと思う。


志人 / ジレンマの角 EP ―Horns of a Dilemma EP―
Temple Ats

 今回、志人のシングルはアナログでリリースされている。もしかしたら、「お、久々のリリースじゃん」と思う人もいるかもしれないが、実は昨年も、家族を主題にした「円都家族~¥en Town Family~」というシングルをポストカード・レコードという特殊なレコードでリリースしている。さらに、今回のアナログにも収録された、志人が志虫という名でいくつもの虫に成り代わり物語を紡ぐ(宮沢賢治の『よだかの星』を彷彿とさせる)"今此処 ~Here Now~"とDJ DOLBEEのインストを加えた増補盤を懐かしの8cmCDという形態で発表してもいる。
 それらは、失われていくメディアに焦点を当てるという企画の一環で、ダウンロード配信など、急激に変化する昨今のメディア環境に対する彼らなりのレスポンスなのだろう。志人らが主宰するインディペンデント・レーベル〈Temple ATS〉のアートワークの要である画家の戸田真樹の絵も含め、手作りの「モノ」を残すことへの強いこだわりが感じられる。
 "今此処"のクレイアニメーションのMVなどが収められた『明晰夢シリーズvol.1』やポエトリー・リーディングのイヴェントに飛び込みで参加する志人の姿を撮影した『森の心』といったDVDもひっそりと世に出回っている。また、「ジレンマの角 EP」に収められた"夢境"のクレイアニメのMVは秋に、NHKで放映される予定だという。ヒップホップ・シーンから遠く離れた場所で、彼らは変わらず自分たちの活動を続けてきたのだ。
 そして、"ジレンマの角"をリード曲とするアナログも〈Temple ATS〉のHPで購入すると、特典としてCDとポストカードが付いてくるという仕組みになっている。ラップ入りの曲が3曲、インストが2曲収められているが、すべてのトラックを担当したのはDJ DOLBEEで、音楽的に言えば、エレクトロニカ、アンビエント、ヒップホップとなるだろうか。とはいえ、何をおいてもやはり特筆すべきは志人のラップの圧倒的なオリジナリティである。

 "ジレンマの角"は、志人が、無実の思想犯、警察官、裁判官、医者、看守、死刑執行人、囚人、ガーゴイルなどに扮し、国家権力に囚われ死刑を宣告された主人公と思しき、野蛮思想に侵されたとされる無実の思想犯を中心に展開するストーリーテリング・ラップで、まるでATG映画のような重苦しいムードに満ちている。意図的に劣化させたノイジーな音質はまさにATG映画のざらついた映像のようで、その世界観は大島渚が死刑制度をテーマに撮った映画『絞死刑』を連想させる。危険な香りを漂わせながら、鬼気迫るラップを披露する、一聴して率直に「ヤバイ!」と思わせる志人は久々だ。
 このアナーキーな感覚は、2005年にリリースされたアナログでしか聴くことのできない"アヤワスカ"以来だろう。ちなみに僕は、三島由紀夫、チェ・ゲバラ、ジミヘン、ジャニス・ジョプリン、サン・ラ、バスキアといった過去の文学者や革命家やミュージシャンらの名前をリリックに盛り込み、路上の怒りが渦を巻きながら天空に舞い昇り優しさに変わっていく、麻薬的な快楽の潜むこの曲が、志人の作品のなかでも1位、2位を争うぐらいに好きだ。

 リーマン フリーター ディーラー 
 ブリーダー Dremaer ハスラー やくざ 
 Jasrac シャーマン ターザン 
 ターバン巻くサーバント 
 We are Music Mafia have No Fear 
 FREEDOMを作り出し 救い出すビーナス 
 Winner Loser Who is the Luler(ママ) in this earth?
 I ask You やさしく言う まさしく 君だ
"アヤワスカ"

 ◆無実の思想犯
 そうだ あのとき私は確かにアナーキーな連中とばかりつるみ
 社会からは脱藩人よばわり 盛り場の話題はいつも中身無き冗談か
 国家権力から逃れる方を夜長に語りあかした
 空が白むまで 朝もやが稲妻で 引き裂かれて行くのをただ睨むだけ
 気が付けばそこにはもう誰もいなくなって
 周りには口を尖らした どたま来たお巡りが

 ◆警察官A......「野蛮思想に冒された犯罪人よ じたんだ踏もうが時間だ
 お前にもう夢を見る権利は無い」

 逃げなきゃ 後ろ手に回される 絞め縄
 二メーターはある権力者達に上から押さえつけられ
 あっという間に 前後塞がり 暗がりに砂を噛み
 不渡りつまはじきものの姿に
"ジレンマの角"

 "アヤワスカ"にも近い部分はあるが、"ジレンマの角"は明確に戯曲という形式が採られている。が、しかし、この曲は紛れもなくラップ・ミュージックとして成立している。この2曲に関して言うと、苛烈さという点において、ソウル・ウィリアムズやマイク・ラッドなんかと同じ匂いを嗅ぎ取ることができる。
 いずれにせよ、日本でこんな芸当をやってのけるラッパーを志人以外に僕は知らない。詩人が朗読しているかと思えば、役者のセリフ回しのような語りに切り替え、一瞬ラガ調の声音でかましてみせたりもする。志人のとどまることを知らない自己内対話のエナジー放出するために必然的に発明されたスタイルなのだろう。

 「私」への深い疑念からくるラップへの苛烈な欲求、言い換えれば、近代的自我の解体への欲望と言えるかもしれない。近代的自我に亀裂を入れて、その危うさや不確定さを炙り出そうとするのは、志人の表現の底流にあるもので、我を忘れるほどの限界状態から真実を手繰り寄せるために志人はラップの技術を鍛え、進化させ、ときに驚異的な速度に身を任せているように思える。
 まるで千手観音の手が、五感に物凄い勢いで襲いかかってくるような変幻自在のラップには、聴く者の視覚や聴覚などの感覚を統一させる力を感じる。それはいわば明確なトリップ体験であり、個々の枝分かれした感覚のその奥にある根源的な感覚に触れてしまうような、共感覚の稲妻に打たれる経験である。志人のラップのスピードは共感覚へ到達するための、未来を生み出す生命力に溢れた速度である。
 ことばは生きものである、ということを志人は全身を楽器にすることで体現し、また彼のラップを聴く者はそのことを全身で痛いほど感じることになる。志人は日本語のラップ表現を意味と音声と物語の構成といったいくつかの点において、明らかに次元が違うところまで持って行ってしまった。韻を踏むことでイメージを膨らませ、物語を予期せぬ方向へ転がし、ことばとことばの連なりがまた新たなイメージを喚起させる。

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 「とりたて何の理由も無いですが、鳥だって色んな色を持っているはずなのに
 どうして僕はこんなに真っ黒で小汚ねー色をしているんでしょう?」と問いかける
 「お日様の様にどうしたら成れるの あの真っ赤っかな色に成りたかったんだ
 時たま邪な気持ちを残したお星様に聞いてもさっぱり分からなんだ
 名前も知らないカラスが一匹飛んで来たとき
 浜辺の白波 黒く汚れたこの身を洗い
 何万年後も流れ星追い 嫌がってもやがて年老いる僕らは
 今までのままこれからのカラーを探して どんくらい根比べ重ねてどんぶら大海原
 日溜まりの中で暗闇を焼き払い給え 名前の無い僕は
 猛スピードでモスグリーンに曇った街を行くモスキート
 もう救い様の無い都市はホスピタル 夜の持つ魅了に取り憑かれたヒーローは
 次の朝、ポルノスターになりました
 アスリートの吹かすウィード
 唐墨色に染まる空のオリオン座に恋をした少女は
 君の心なら全てお見通しさ ってな具合にカラカラとただ笑うんだ
"私小説家と黒カラス"(『Heaven's恋文』)

 「ことばの偶発的な干渉=共鳴の自由を許す」(今福龍太)とでも言えようか。ことばとことばの隙間に壮大な冒険への扉を無数に用意し、そして、どの扉を開けるかは、そのラップを聴く人間次第なのである。志人は日本語ラップ界のダダイストであり、モダン・ビートニクの詩人である。そんな形容さえ、僕はまったく大袈裟に思わない。
 2002年に降神がCDRによるデビュー・アルバム『降神』を発表した後、志人のフォロワーが大量に現れたが、「THA BLUE HERB以降」や「SHING02以降」という日本語ラップの歴史認識が仮に成立するのであれば、間違いなく「志人(降神)以降」というのも成立することになる。まあ、誤解されないように一応書いておくが、それは商業的成功という意味ではなく、あくまでも芸術的観点から考えた場合である。


photo by 新井雅敏

 ところで、『降神』の2曲目を飾る、ファンのあいだではクラシックの呼び声も高い"時計の針"の最後で、「血染めの鉢巻き絞めて印税もらって勝ち負け気にして死んでろ 特に お前と彼等」と、商業主義に走るBボーイたちを唾を吐きながらディスしていたことを思えば、ある時期から志人は随分優しくなった。いまは口が裂けても「死んでろ」と言い切ることはないだろうし、「hate=憎しみ」の感情をあからさまに表に出すこともなくなった。
 何が原因でそうなったかは知らない。年齢のせいもあるだろう。デビュー当時の降神には感じられなかった友愛をいつからか率直に表現するようになった。初期の攻撃性や狂気を愛したリスナーは戸惑ったに違いない。だから、もちろん降神や志人をずっと追い続けているファンはいるだろうが、一方で、彼らのリスナー層は変わっていっているように思える。
 実際のところ、僕もある時期、志人のラップとことばを素直に受け入れることができなかった。何年か前、湘南の江ノ島の海の家だったと思うが、志人のライヴをオレンジ色の夕陽が深い闇に沈まんとする美しいロケーションのなかで観たことがある。具体的には思い出せないが、志人が放った自然回帰やエコロジーや友愛のことばは、僕にはあまりに無垢なことばに聴こえ、愕然としたことがある。正直、最後まで観ていられなかった。

 「それは、お前が偏屈で心が汚れているんだよ」、ということであればむしろ話は早いが、しかし、似たような感想を持つ人間は少なくないということだ。いや、これは本当にきわどく、危うい現代的な問題なのである。
 僕は志人というラッパーが、宇宙の真理や自然の偉大さを考えもなしに漠然とペラペラと喋るスピリチュアリズムかぶれの軽薄な人間などではないことをよく知っている。豊かな知性と感情と表現力を持つラッパーであることを知っている。裏を返せば、そんな志人であっても、いまの時代に自然回帰やエコロジーという切り口から平和を訴えることは、共感と同じぐらいの拒絶を引き出してしまう困難さがあるのだ。それぐらい自然回帰やエコロジーというのは、一筋縄ではいかないものだ。
 その意味で、「野は枯れ 山枯れ 海は涸れ すきま風が吹き 国は荒れ果てた 放火魔に 連続殺人 原子力発電所 核戦争 終わらせよう 今日からでも 君は地球さ 地球は君なのだとしたら」というリリックから穏やかに滑り出すアンビエント的な"夢境~Mukyo~"の平和主義は、果たしてリスナーにどう受け止められるだろうか。
 ともあれ、"ジレンマの角"、"今此処"、"夢境"といったまったく異なる表情の曲を1枚のアナログに収めたことには意味があるだろう。それが志人の懐の深さでもある。これは取って付けたフォローではなく、真実だ。

 そしてまた、志人の豊穣さの底を支えるものにはノスタルジアがある。それは単に幼年時代や少年時代や過去を懐かしみ感傷に浸るということではなく、人間の奥深くにある記憶を呼び覚まさせるようなノスタルジアのことだ。それはどこか稲垣足穂の「宇宙的郷愁」と相通じるし、あるいは、志人が思想的にも、芸術的にも大きくインスパイアされたであろう寺山修司の土俗的な、ある種屈折したノスタルジアを思い起こさせもする。
 "今此処"や"夢境"にももちろん滲み出ているが、2005年に発表したファースト・アルバム『Heaven's恋文』に収録された"LIFE"はとくに、ノスタルジアを結晶させた、豊かな色彩感覚に彩られた名曲である。KOR-ONEによるファンクとソウルの感性が映えるトラックも本当に素晴らしい。

嫌というほどに見た現実に疲れては/まぼろしの公園でいつもひなたぼっこLIFE

忘れかけたユーモアというものや/君にとってとっても重要な日々の匂いや色は、
街で見かけたチンドン屋/なびかせた黄色いハンカチーフ
やさしくなった自分をふと思い出すのさ/
どこもかしこも/立ち止まる足場も無く/暇も無く/芝も無い/
僕の居場所を探し出そう/この 都会に お帰り
LIFE

 しかし、こればっかりは歌詞の引用だけでは伝えられないものがあるので、聴いて感じてもらうしかない。他にも、日本の庶民的な家庭を描いているようだが、よく聴くと、現実と虚構が入り組んでいて、どこかズレが生じている"円都家族"の奇妙なノスタルジアも面白い。
 詳述は避けるが、『Heaven's恋文』のあるスキットでは、実際に寺山の映画のワンシーンが引用されている。それは、インテリ批判とも読める志人らしい軽妙なやり口で、その映画を観た人間から言わせると、「ああ、そこなのか!」と膝を打ちたくなるような風刺の効いた場面を拾っている。
 ただ、志人に寺山修司や稲垣足穂や宮沢賢治といった過去の芸術家や詩人の影を感じたとしても、志人がやっていることは、当然過去の意匠の焼き回しではないし、ましてや懐古趣味や権威主義、または衒学趣味とは程遠いものだ。
 「いまの時代がいちばん面白いと言わせたい」というのは、かつて志人が放ったことばだが、その情熱の炎がいまだ燃え盛っているということは、この新しいアナログを聴いても実感できる。さきほど、異なる表情の3曲を1枚のアナログに収めたのが懐の深さだと書いたのは、対立物を内包しながらもロマンを語ることはできる、ということに志人が挑戦しているように思える故である。

 さて、最後に、志人の刺激的な今後について書いておこう。まず、そのうち志人と渋さ知らズとの共演(競演)があるかもしれないという噂が耳に入ってきている。また、MSCのTABOO1のファースト・ソロ・アルバムにゲスト・ラッパーとして参加する予定だが、"禁断の惑星"と名付けられたSF風の曲のバックトラックを制作したのは、なんとDJ KENSEIである。さらに、〈アンチコン〉とも縁の深いカナダのラッパー、BLEUBIRDと録音した数曲は、おそらく日本のヒップホップ・シーンに小さくない衝撃を与えることになるだろう。そして願わくば、ごく少数しか流通しない(させない)「ジレンマの角 EP」の楽曲が、なんらかの形でより多くの人に届くようになればと思う。まあ、ということで、志人の今後の展開を楽しみに待とう。

ackky (journal) - ele-king

Chart


1
Inner Science - Momentary Spread - Plain Music

2
9dw - Posse (the beat brokers california club mix) - Ene & Catune Records

3
Red Fulka - Kumpo (raihani & salgado mix) - Elevator People

4
Bubble Club - Violet morning moon (Remix by Dr dunks) - Bubble Clubmusic.Com

5
Dj Nature - A Win Lose and Dance - Golf Channel Records

6
Eddie C Presents - Sleazotica - Kolour LTD

7
Supernova - Sweet disco music - Soundscape

8
Body Shower - S-Glez - Body shower

9
Adam & Philipp Maier - OWN - Rockets & Poines

10
Hungry Ghost - Illuminations - Feel Records

Chart by Pigeon - ele-king

Shop Chart


1

B.F.

B.F. Escape / Indica Aldebaran [GER] / »COMMENT GET MUSIC

2

Dr.Dunks

Dr.Dunks Keep It Cheap / No P's Keep It Cheap [US] / »COMMENT GET MUSIC

3

Jill Scott

Jill Scott Ron Trent Remixes Spring [US] / »COMMENT GET MUSIC

4

Juana Molina

Juana Molina Un Dia (Reboot Remix) Domino [UK] / »COMMENT GET MUSIC

5

Magoo

Magoo Magoo E.P. Boogie Times [FRA] / »COMMENT GET MUSIC

6

Sam Sallon

Sam Sallon You May Not Mean To Hurt Me Fascinating Rhythms [UK] / »COMMENT GET MUSIC

7

Terence Fixmer

Terence Fixmer Comedy Of Menace Part.1 Electric Deluxe [GER] / »COMMENT GET MUSIC

8

J Dilla

J Dilla Donut Shop Stones Throw [US] / »COMMENT GET MUSIC

9

Unknown

Unknown Mountain 001 (Lexx Edit) / Mpuc001 Mountain People [GER] / »COMMENT GET MUSIC

10

V.A.

V.A. Little Leaf No.01 Little Leaf [UK] / »COMMENT GET MUSIC

DJ NOZAKI(PRIMO ONLY/NO JERKY NO CHICKEN) - ele-king

CHART


1
Led Zeppelin - Remaster 4 Track Sampler - Atlantic

2
Holger Czukay - Ode To Perfume / Fragrance - Claremont 56

3
Rasta Instante - Avec L'effroy Able Pecqre - Better Days

4
DJ Kent - Cozmo - Balance

5
Tomoki Tsukamoto- Primind - Ssoundchannel

6
Lenny Kravitz - The Circus Single Collection- Virgin

7
Die Dominas - S/T - Fabrikneu

8
Akira Sakata - Tenoch Sakata - Better Days

9
Unknown - 1,2,3 - Sunshine Sound

10
Mick - Macho Brother - 10" of Pleasure
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140