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非常階段や赤痢など、着々とリイシューを進めている〈Alchemy Records〉。新たにたまげたブツが2タイトルも送り出されている。
ひとつはザ・スターリンのライヴ音源で、1981年4月、京都磔磔におけるイヴェント、《Answer 81》にて録音されたもの。これまで一度も正式リリースされていない、初期メンバーによる演奏が収められている。
そしてもうひとつ、おなじイヴェントでレコーディングされたライヴ盤。非常階段、アウシュビッツ、ほぶらきんによるパフォーマンスを収録、こちらもレアな音源のようだ。
いずれもCDはすでに発売中、LPは来年3月20日リリースとのこと(後者のLPは非常階段のみ収録)。曲目など詳細は下記よりご確認を。

1981年4月に京都磔磔で実現した、非常階段とスターリンの初共演となった伝説のライブイベント“Answer 81”の未発表含む貴重な音源がCD&アナログでリリース!
1981年4月京都磔磔にて実現した、非常階段とザ・スターリンの初共演となった伝説的ライブイベント“Answer 81”。当日の熱気と緊張感溢れる雰囲気を味わえる貴重な音源がCD&アナログでリリース決定!
Vol.1に収録の非常階段は狂気的な演奏でキングオブノイズたる所以を早くも発揮しており、それに応えるかのように共演のアウシュビッツ、ほぶらきんも流石のパフォーマンスを披露。
また、Vol.2に収録されている同日のザ・スターリンのライブ音源はこれまで一度もリリースされておらず、これまでブート盤でしか聴くことの出来なかった最初期のバージョンなども収録された非常に貴重な音源となっている。
P-VINEとJOJO広重氏がタッグを組んで20タイトル以上に及ぶ再発リリースを実現させてきた「Alchemy Records Essential Collection」、その集大成が今ここに。

【ザ・スターリン】
ザ・スターリンが非常階段らと共演した1981年京都磔磔でのイベント“Answer 81"での未発表ライブ音源がまさかの発掘リリース!
JOJO広重氏が保管していた膨大なテープの中から発見され、ミチロウ、シンタロウ、金子あつし、イヌイジュンという初期メンバーによる過激な演奏と生々しい緊張感に溢れたライブが40年以上の時を超えてついに陽の目を見る。
「電動コケシ」「解剖室」「撲殺」など初期の代表曲が飛び交う全15曲収録。
今作の曲名はマスターテープに残されていたトラックリストを参照しており、「血の海Want You」と書かれた4曲目はミチロウ氏のデビュー25周年記念BOXセットのタイトルとしても知られる「飢餓々々帰郷」で、スターリン単独名義の音源としてはライブも含めて過去一度も公式にリリースされていない。また、13曲目「お前まじかだ(ブタのケツ)」は前身バンドである自閉体の曲をアレンジしたもので、過去にブート盤にのみ収録されていたものの、こちらも今回が史上初のオフィシャルリリースとなる。

【非常階段+アウシュビッツ+ほぶらきん】
言わずと知れた"キングオブノイズ"こと非常階段、1981年に京都磔磔にて行われたイベント"Answer 81"でのライブ音源がついに単独作品としてリリース!
初期のドロドロとした阿鼻叫喚、地獄絵図のサウンドがCD&アナログで蘇る!
CD限定ボーナストラックとして、当日の共演バンドでJOJO広重氏とともにアルケミー・レコードを立ち上げることになる林直人氏のバンド「アウシュビッツ」、
そして当時の関西インディーズを語るうえでは外すことのできない伝説的カルトバンド「ほぶらきん」のライブ音源も収録!
アウシュビッツは今回が初出しの音源、ほぶらきんは以前ボックスセットに収録された音源とは別のマスターテープが発見されたことで音質が格段に向上!関西インディーズシーンの歴史が垣間見える必携の1枚。

【ザ・スターリンリリース情報】
アーティスト:ザ・スターリン
タイトル:Answer 81 1981.4.19. Vol.2
CD/LP/DIGITAL
CD Release Date:2023.12.6 / LP Release:2024.3.20
品番:CD/ALPCD-17, LP/ALPLP-21
定価:CD/¥2,750(税抜¥2,500), LP/¥4,378(税抜¥3,980)
レーベル:P-VINE
協力:遠藤ミチロウオフィス
写真:地引雄一
【Track List】
01. 豚に真珠
02. 猟奇ハンター
03. GASS
04. 血の海 Want You (飢餓々々帰郷)
05. コルホーズの玉ネギ畑
06. Bird
07. 電動コケシ
08. アーチスト
09. サル
10. 解剖室
11. 冷蔵庫
12. Light My Fire
13. お前まじかだ (ブタのケツ)
14. 暗いネ落ち込んだ (欲情)
15. 撲殺
※LP SIDE A:1~7 SIDE B:8~15

【非常階段+アウシュビッツ+ほぶらきんリリース情報】
アーティスト:非常階段+アウシュビッツ+ほぶらきん
タイトル:Answer 81 1981.4.19. Vol.1
CD/LP/DIGITAL ※LPには非常階段のみ収録
CD Release Date:2023.12.6 / LP Release:2024.3.20
品番:CD/ALPCD-16, LP/ALPLP-20
定価:CD/¥2,750(税抜¥2,500), LP/¥4,378(税抜¥3,980)
レーベル:P-VINE
【Track List】
01. 非常階段 / Live at Kyoto TakuTaku,19th April 1981
02. Auschwitz / I'm disease
03. Auschwitz / High
04. Auschwitz / Slow
05. ほぶらきん / 魚売り
06. ほぶらきん / アックンチャ
07. ほぶらきん / ゴースン
08. ほぶらきん / とんがりとしき
09. ほぶらきん / いけいけブッチャー
10. ほぶらきん / ペリカンガール
※LPは1曲目のみをAB面に分けて収録
これは冬のためのアルバムだ。ローラ・キャネル自らがそう説明している。地球の北半球の、ここ日本でもまさに今週からはじまった寒い冬。12月1日にリリースされた、彼女にとって8枚目のアルバムは『真冬の行列』と名付けられている。
これはいかにも英国風の、宇宙的だが土のにおいがする音楽だ。牧歌的だが厳しさがある。馬車に乗って、森のなかでたき火をしよう。ノーフォークの900年の歴史を持つノリッジ大聖堂内でレコーディングされたその本作について、キャネルは次のようにコメントしている。「大聖堂の内部からの残響を捉え、真冬の世俗的な行列を想像させるシンセサイザーのレイヤーと組み合わせたいと思った。長い音色はステンドグラスや石壁に跳ね返り、長い小島や彫刻の施された柱を通り抜け、トランセプトへと霧のように消えていく」
すでにキャネルの音楽に親しんでいる人は、この発言に「おや」と思うはずだ。そう、本作には、いつものヴァイオリンとリコーダーのほかにシンセサイザーが使われている。それだけで、興味をそそられるのではないだろうか。アルバム・タイトルもさることながら、“星の記憶” “太陽の行列” “大聖堂のこだま” “夜明けまでの月光を追って” “真冬の鐘” といった曲名もじつにいい。
ローラ・キャネルの音楽は、ぼくにとって2010年代の喜ばしい出会いのひとつだった。社会のものごとはスマホやネットありきが前提となっている今日において、液晶画面が告げる未来から逃げるように、削除された記憶や歴史の残滓が混在する荒れ地と共振しようとする音楽が生まれ、小さいながらも広く注目されることになるのは必然だ。2023年のベスト・アルバムの1枚がランクムであることと、キャネルのようなアーティストに一目置かれることとは無関係ではない。
「醜悪な町の広がりを忘れ、むしろ下りの荷馬車を思い浮かべよ」と書いたのは、都市化がすすむロンドンを嘆いた19世紀後半の、後世にもっとも影響を与えたデザイナーであり情熱的な社会主義者であったウィリアム・モリスだったが、古くは詩人ウィリアム・ブレイクや作曲家グスタフ・ホルスト、そして大衆文化の分野ではザ・ビートルズやレッド・ゼッペリン、ケイト・ブッシュにザ・KLF、エイフェックス・ツインやボーズ・オブ・カナダ等々もそうだったように、イギリスの夢想的な文化はことあるごとに、未来を志向するとき田舎道を選ぶところがある。SF的なタイムトラベルが中世ロマンに通じることは、ウィリアム・モリスの『ユートピアだより』にも見て取れよう。キャネルの音楽の基礎はクラシック音楽にあるが、彼女はそのエリートコースから脱し、かつてのセシル・シャープのように農村を訪ねて歌を集めていたわけではないが、先駆者デイヴィッド・マンロウようにアーリー・ミュージックの旋律をもとめて過去を調査した。
彼女の目的はしかし、中世の旋律の収集ではなかった。キャネルの試みは、古き建造物固有の音の鳴りを捉えること、時空を超えたサウンドの探求であり、前作『Antiphony of the Tree』のように鳥たちとの対話から生まれたサウンドであったりもする(エレキングvol.29のインタヴューを参照)。『真冬の行列』は、高さ69フィートのノリッジ大聖堂の中央で即興演奏したときの録音をもとに作られている。「私の多くのレコーディングと同様、今作も、その瞬間に自分がどう感じるかをたしかめるために、決まったプランなしに臨んだ」と彼女は明かしている。「演奏すること、そして自分には言いたいことがあるのだと信じること、サウンドがどこに行きたいのかを見つけること。私は、教義に基づいて、高度に設計された建てられた美しい空間の神聖なるものに対する葛藤した感情を押し通すことができるだろうか。私は、その瞬間に判断するのではなく、突き進み、演奏を続け、家に帰ったら空間との対話から何が生まれたのかを確認することを学んだ」
ぼくのような彼女のファンのために付け加えると、なかば神秘的ともいえる旋律をもった“星の記憶” には、彼女の音楽には珍しく、少しだけビートが刻まれている。もちろん今作にも、ローラ・キャネルのヴァイオリンとリコーダーによるヴィジョナリーな旋律が演奏され、そして編まれているわけだが、先にも書いたように、今作には彼女にとって初の試みといえるシンセサイザーの伴奏もあって、いままでにないポスト・プロダクションが施されている。今作のひとつの聴きどころとしては、彼女の説明にもあったが、大聖堂内部における反響音とシンセサイザーの抽象音との調和にある。いわばエレクトロニカの時代のフォークで、ひとりの演奏者が作品ごとにコンセプトを変えて、これだけのアルバムを発表するのは並大抵のことではないが、そんな風に、ここでも新たなアイデアが具現化されているのである。
キャネルが住んでいる英国ノーフォークの美しい田舎町は、ぼくが住んでいる人工的な東京よりもずっと季節の厳しい変化に晒されているはずだ。ゆえに、自明のことだが、ぼくよりも深く自然を感じることができているのだろう。そうしたライフスタイルすべてが彼女の、真冬の冷たく澄んだ空気に溶け込み、白い月や吐息と共鳴する演奏に影響していることは想像に難くない。リコーダーが反響する “大聖堂のこだま” や “真冬の鐘” といった曲からは、彼女が演奏した場のアトモスフィアさえも伝わってくる。
サウンドのゆらめきと幽玄さは、彼女のすべての作品の特徴ではあるが、ことに今作では突出しているのかもしれない。あるいは、東京も本格的な真冬を迎えているから音楽がより鮮明に聴こえるのかもしれない。なんにせよ、この季節にどんぴしゃりの、これは嬉しいリリースだ。型にはまった音楽に飽き飽きしているあなたが、さらに冬の冷気を愛することができる人でもあるならば、『真冬の行列』もきっと好きになれる。
