「CE」と一致するもの

TOYOMU - ele-king

2015年音楽まとめ日記

AFR - ele-king

"MOJO"

DJ NiSSiE - ele-king

MY CLASSIC

Deerhunter
@ Rough trade 12/7
@ Irving plaza 12/8
@ Warsaw 12/9

 2015年、私がもっともよく聴いたアルバム3枚のうちの1枚がディアハンターの『フェイディング・フロンティア』だ。今回は、この力作を引っさげての、3日間のNYショー(全てソールドアウト)をレポートしよう。

 1日目は、ジュークリー(jukely.com)のイベントだった。つまり、一般客は入場できないのにソールド・アウト。
 ジュークリーとはメンバーのみがさまざまなイベントのゲスト・リストに載せてもらえるウェブサイト。月に$25払うと100以上のショーにアクセスできる。いまのところニューヨークを含む17都市で展開されていて、多彩なジャンルを網羅、メンバーでないとどんなショーがあるかわからない。
 さて、NYツアー1日目は、キャパ500ぐらいの、ディアハンターにとっては小さいハコだが、バンドにとってはウォームアップと言ったところでちょうどいいのかもしれない。
 ブラッドフォード・コックスのソロ・プロジェクト、アトラス・サウンドがすべてのショーのオープニングを務める。ギター、キーボード、マラカス、ヴォーカル、ドラム……すべてはフリーキーな即興で、何が出るのかわからない。毎日が新しく、ときには狂気さえ感じらる。アトラス・サウンドは、ブラッドフォードの可能性をとことん試す場なのだろう。
 そして、ディアハンターの登場。ブラッドフォードはキャップを被り、黄色のジャケットを着ている。メンバー3人も50年代風のグランジーな出で立ちで、この凸凹感が良い。ライヴは、ロケットが歌う“Desire Llines”でスタートした。
 ブラッドフォードは上機嫌で、ブルックリンに帰ってこれて嬉しいこと、ジュークリー、ラフトレードについて(どのdiscが好きだとか)、NYの最近について(グラスランズ、デス・バイ・オーディオはどうした?)などの会話を観客と楽しんでいた。
 誰かに「ナイスジャケット!」と突っ込まれると「グッドウィル(古着屋、スリフトストア)だよ」と言って、「NYにはグッドウィルはあるのか?」と訊く。で、自分の電話を出すと「僕はグッドウィルのアプリを持ってるんだ」と、お喋りしながら23丁目にあることを確認。ギターのロケットに「明日は早起きしてショッピング行かない?」と話しかける。なんだかんだと結局彼は、20分以上喋り続けていた。
 ブラッドフォードは、いままでにも(観客からのリクエストで)“マイ・シャローナ”のカヴァーを1時間プレイしたり、オーディエンスをステージに上げてキーボードをプレイさせたり、観葉植物をステージにあげそれとプレイ(?)したり……してきている。
 それで肝心のライヴだが、新曲の演奏が4曲ほどあって、あとは昔の曲、ファンにはお馴染みの曲が並ぶ。
 アンコール前の“Nothing Ever Happened”では10分以上に渡るジャムを展開。アンコールの“Ad Astra”では、ブラッドフォードはベースを弾く。ラストの“Fluorescent Grey”では10分以上におよびインプロヴィゼーションを見せたが、2時間弱のショーでは、他にも多くの場面で即興があった。

 2日目の会場のアービング・プラザは、キャパも1000人と昨日の2倍はある。オフィシャル・ショーの1日目ということもあり、バンドも気合が入っていた。
 8時にはアトラス・サウンドがはじまる。ライヴ開始の5分前にやって来たブラッドフォードは、ドアのセキュリティにバッチリひっかかっていた。で、お客さんに「この人、いまからステージだから」と擁護してもらう始末……。
 ディアハンターのショーはスムーズだった。ブラッドフォードのトークもほとんどなく(ホテル・プラザについてのみ。この日がアーヴィング・プラザだからか?)、ライティングによるサイケデリック感も増し、バンドも良いグルーヴに乗っていた。即興は危なっかしいところもあるのだが、音の厚さもバランスも良く、なにかと綺麗に着地する。私は、そのシューゲイズなグルーヴ感にずっと包まれていたかった。
 ライヴを終えた後のアフターパーティでは、ドラマーのモーゼス(aka moon diagrams) が、いまNYで一番いけてる会場、ベイビーズ・オール・ライトが運営するエルヴィス・ゲストハウスというバーでDJをした。

 3日目最終日は、グリーンポイントのポーリッシュ・ナショナル・ホーム内にあるワルソウでのショーだった。ポーリッシュの会場なので、ポーリッシュ料理が食べられる(ピエロギがオススメ)。
 長いラインを抜け、中に入ると、すでにアトラス・サウンドがはじまっていた。私は一番前に行く。そして、昨日や一昨日も来ていた人たちの会話に挟まれる。「今日は『Monomania』からの曲もやって欲しいね」「昨日は“Helicopter”後の最後の曲のインプロがよかったなー」「“Fluorescent Grey”ね。やっぱり“Nothing Ever Happened ”がどうなるかだよねー」など……まあ、濃い会話だ。
 隣の男の子が、「今日のアトラス・サウンドは1曲だけ彼の曲で、他は全部インプロだったよ」と教えてくれた。ちなみに最前列は男の子がほとんどで、ショーがはじまると、ずっとシンガロング。
 一番前で見ると、ブラッドフォードのペダルの多さやモーゼス(ドラム)のロボットのようなドラミング、ロケット(ギター)の落ち着きぶりがよくわかる。ジョシュ(ベース)のグルーヴもね。
 その晩のブラッドフォードとロケットはともにストライプ・シャツ着ていた。たまたまだろうが、その服は、たしかにグッドウィルで売っていそうだ。
 ライヴ終了後は近くのダンス・クラブ、グッドルームで再びモーゼスのDJがあった。4ADの社長も上機嫌。これにてNYショーはすべて終了。

 3日間のライヴはほとんど同じセットリストだが、しかし彼らのショーは1日1日違う。ブラッドフォード曰く「僕らは実験的バンドだよ。だって僕のiPod を1時間ずっと聞きたいかい?」
 何が出るかわからないヒヤヒヤ感と隣り合わせに、彼の音楽への真摯な姿と才能はショーからヒシヒシと伝わってきた。アーヴィング・プラザでの“Nothing Ever Happened”は、この曲を新たなレベルに高めた、最高のロング・ヴァージョンだった。
 グルーヴに乗ったバンドは火がついたように走り続ける。ディアハンターはいま新しい伝説を作っている。

■Setlist (Irving plaza)
Desire Lines
Breaker
Duplex Planet
Revival
Don't Cry
Living My Life
Rainwater Cassette Exchange
All The Same
Take Care
Nothing Ever Happened
Encore:
Ad Astra
Cover Me (Slowly)
Agoraphobia
Helicopter
Fluorescent Grey

https://deerhuntermusic.com

Miss Red - ele-king

 イスラエルのMC、ミス・レッドのミックス・テープ『マーダー』が先週より公開されている。プロデュースはザ・バグこと、ケヴィン・マーティンが担当。マーティンがイスラエルにツアーで赴いたときから、その交友ははじまった。いま彼女はアンダーグラウンドで注目を集めているMCのひとりだ。昨年リリースされれたザ・バグのアルバム『エンジェルズ&デビルズ』や、日本のビム・ワン・プロダクションのシングル「ナー・ボーイ」にもミス・レッドは参加している。
 今回の『マーダー』には、マーク・プリッチャードやアンディ・ストット、マムダンスといった豪華プロデューサーも参加している。文句なしの強力なトラックのうえで、ミス・レッドの妖艶な声が揺れる様は圧巻。こちらのサイトにてフリーでミックスを聴くことができるので、是非チェックしてほしい。マーク・プリッチャードとの“マーダー”は、後日ミス・レッドの〈レッド・レーベル〉より7インチでリリースされるとのこと。


Murder – Miss Red

Miss Red /Murder / Red Label
01 Mad
02 Murder (Mark Pritchard riddim)
03 No Guns
04 What Would You Like (Andy Stott riddim)
05 Rollercoaster
06 Ganja Man
07 Sugar
08 Lean Back (Stereotyp riddim)
09 Trash It
10 Fever
11 Pull It Up (Mumdance riddim)
12 Leggo (Evian Christ riddim)
13 1 Dog Shot
14 Come Down

Lyrics/Vocals - Miss Red
All riddims built by - The Bug (unless otherwise stated )
Produced The Bug
Mastered by Stefan Betke aka POLE


Elijah & Skilliam - ele-king

 ロンドンを拠点にグライム・シーンを牽引するイライジャ&スキリアム。現在のロンドンは家賃の上昇などの問題で、シーンを支えたクラブやレコード店がどんどん姿を消している。2年前に閉店してしまったクラブ、ケーブルはイライジャとスキリアムが運営するレーベル〈バターズ〉がパーティを開催していた場所だった。そんな状況であってもグライムのパーティは終わることなく、DJやプロデューサーたちはラジオやツアー、リリースをとおして人々に喜びを与え続けている。イライジャとスキリアムがいるのはその最前線だ。先日、イギリスの「ファクト」が制作した〈バターズ〉のドキュメンタリーからは、現在のシーンの空気感がひしひしと伝わってくる。
 今回、イライジャ&スキリアムは去年に続き2度目の来日となり、12月11日に東京、28日に名古屋、大晦日31日に大阪の順での公演を予定している。ハイパージュースやプリティボーイらが東京公演に出演し、名古屋ではダブル・クラッパーズ、大阪ではセスといった気鋭のプロデューサー/DJたちがイライジャ&スキリアムと共演する。明日12月10日にふたりはドミューンにも出演するので、是非チェックしてほしい。ツアーの情報は以下のとおり。

【東京】
DBS presents
Elijah & Skilliam Japan Tour2015

日時:
2015.12.11(Fri)
OPEN/START 23:00

場所:
TOKYO CIRCUS

料金:
ADV:2,500yen/DOOR:3,000yen

出演:
Elijah & Skilliam (Butterz,UK)
with.
HyperJuice
Prettybwoy
Sakana

《1st Floor》
HELKTRAM
DIMNESS
maidable
Chocola B

Ticket outlets:
https://peatix.com/event/127181

info:
TOKYO CIRCUS:TEL/03-6419-7520
https://circus-tokyo.jp/

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【名古屋】
GOODWEATHER #43 ELIJAH & SKILLIAM

日時:
2015.12.28(Mon)
OPEN/START 22:00

会場:
CLUB JB’S

料金:
ADV/ 2,500yen DOOR/ 3,000yen

出演:
GUEST : Elijah & Skilliam
dj noonkoon feat. Loki Normal Person
NOUSLESS feat, AGO
DJ UJI feat. BRAVOO
Double Clapperz
MOMO

Photographer: JUN YOKOYAMA

info:
https://www.facebook.com/events/1634818833446707/

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【大阪】
CIRCUS COUNTDOWN 2015 to 2016
ELIJAH&SKILLIAM

日時:
2015.12.31(Thu)
OPEN 20:00

料金:
DOOR/ 2,015yen

出演:
CE$
SATINKO
TUTTLE
m◎m◎
BIGTED
Keita Kawakami
D.J.Fulltono

Photo Exhibition Jun Yokoyama

info:
https://circus-osaka.com/events/circus-countdown-2015-to-2016/


ELIJAH & SKILLIAM (Butterz, UK)

UK発祥グライムの新時代を牽引するレーベル/アーティスト・コレクティブ、Butterzを主宰するELIJAH & SKILLIAM。
イーストロンドン出身のELIJAHとSKILLIAMは05年、郊外のハートフォードシャーの大学で出会い、グライム好きから意気投合し、学内でのラジオやブログを始め、08年にGRIMEFORUMを立ち上げる。同年にグライムのDJを探していたRinse FMに認められ、レギュラー番組を始め、知名度を確立。10年に自分達のレーベル、Butterzを設立し、TERROR DANJAHの"Bipolar"でリリースを開始した。11年にはRinse RecordingsからELIJAH & SKILLIAM名義のmix CD『Rinse:17』を発表、グライムの新時代を提示する。その後もButterzはROYAL T、SWINDLE、CHAMPION等の新鋭を手掛け、インストゥルメンタルによるグライムのニューウェイヴを全面に打ち出し、シーンに台頭。その後、ロンドンのトップ・ヴェニュー、Fabricでのレギュラーを務め、同ヴェニューが主宰するCD『FABRICLIVE 75』に初めてのグライム・アクトとしてMIXがリリースされる。今やButterzが提示する新世代のベースミュージックは世界を席巻している!
https://elijahandskilliam.com/
https://butterzisthelabel.tumblr.com/


万助橋わたる(井の頭レンジャーズ) - ele-king

知られざるミニマル音楽

Tracey Thorn - ele-king

 机の上のPCの裏側にはCDが積んであり、一番上にはジュリア・ホルターの新作が置かれている。彼女のアルバムはつねに良いが今作はとりわけて評判が良い。早くレヴューしなくては……。いや、その前に、ビーチ・ハウスの新作のレヴューが、かれこれ2カ月ほど書きかけのままになっている。読みか返してみると酷い原稿で、いまさら「ドリーム・ポップ」というジャンル用語を、意味もわからずに持ち出している音楽ライターへの憎悪に満ちている。ジャンル用語は、おおおそコンテキストにおいて有効であるということが、いまだわからない連中への……。いや、いくら業務に忙殺されていたとはいえ、これはよくない。ビーチ・ハウスの新作のレヴューで重要なポイントは、メジャーで失敗した彼らがインディーに戻って、あの名作『ティーン・ドリーム』に匹敵する作品を作れるかどうかにある。
 今年ラフトレードのNY店でいちばん売れたのはビーチ・ハウスだというが、それというのも誰もがいまだに『ティーン・ドリーム』並みの作品を期待しているからだろう。もちろんヴィクトリアの声の魅力も重要だ。ニコ直系の低めの声で、線の細いガーリーな声とは反対の、中性的で、太めの声。トレイシー・ソーンもその手の声の歌手だが、ソーンにあってヴィクトリアにない要素はダスティ・スプリングフィールドだ。ソウル・ミュージックというコンセプトはビーチ・ハウスにはないが、ソーンにはある。

 トレイシー・ソーンは、年齢的にはぼくより1歳上で(つまり、現在53歳)、ぼくは彼女の最初のソロ・アルバム『ア・ディスタント・ショア』をリアルタイムで買って、聞いている。ネオアコ(当時はネオフォークなどとも呼ばれていていた)なるジャンルの契機となった1枚だ。パンク以後の、ディストーションを効かせたギター・サウンドばかりで埋め尽くされていた時代に、アコースティック・ギター1本で歌うというただそれだけのことが、あり得ないほど新鮮で、あり得ないほど強いインパクトを持ち得たのである。
 ヴェルヴェット・アンダーグラウドの“ファム・ファタール”のカヴァーを聴きたいというのが買った理由だったけれど、それから数年後に出たエヴリシング・バット・ザ・ガールに混入されていたのはヴェルヴェッツではなくジャズやサンバだった。それはパンク以後のやかましいだけのディストーション・サウンドと違って、いささか高級品に思えた。その高級感はややもすれば80年代的で、貧しい若者の魂を救済するものとは思えなかった。“ルック・オブ・ラヴ”をお洒落だと思えるには、ぼくにはもう2~3年は必要だった。
 そういうわけで長いあいだ、ぼくはトレイシー・ソーンの声とは微妙な距離を保っていたわけだが、あながちこれはぼくの個人的経験に過ぎないというわけではない。あの時代、『ア・ディスタント・ショア』から『エデン』にかけてリスナー層は変わった。調査したわけではないが、考えてもみて欲しい。後者のなかに“パンク”を見いだすのは、困難だ。マッシヴ・アタックが教えてくれるまでは。そう、彼らがセカンド・アルバムでソーンを起用したことで、多くのリスナーは彼女の過去の作品を聴き直している。それほど“プロテクション”はパーフェクトな曲だった。『エデン』から10年後の1994年のことだ。

 それは、トレイシー・ソーンという歌手を物語っているかもしれない。その頃ダンス・カルチャーを我がモノとしてポップスターへと昇ったビョークは、キュートで、エキセントリックだった。ソーンは、充分に魅力的な低い声を有しながらも、グラビアを飾るようなタイプではなかった。また、彼女の曲の多くはメランコリックで、人生を伸び伸びと冒険しているビョークに比べると、なんとも内気に見える。彼女が舞台恐怖症であることも充分にうなずけるほどに。
 しかし“プロテクション”は、見事に逆手を取った。ガーリーではなくメランコリック、内気で、低い彼女の声は、マッシヴ・アタックのトラックにおいて魂を揺さぶる声となった。荒涼とした音像から聴こえる「シェルター(避難所)を必要としている少女がいる」という歌い出しは、何度聴いても感動する。

 本作はトレイシー・ソーンのコンピレーション・アルバム、CDで2枚組、全34曲が収録されている。1982年の『ア・ディスタント・ショア』の1曲目も収録されているし、もちろん“プロテクション”も入っている。最近やったというケイト・ブッシュのカヴァーをはじめ、ザ・XXやヴァンパイア・ウィークエンドやスフィアン・スティーヴンスなどのカヴァーもある。ぼくの世代には思い出深いワーキング・ウィークでの客演もあれば、90年代に活躍したドラムンベースのプロデューサー、アダム・Fのトラック、テクノ・プロデューサー、ティエフシュワルツので歌った曲もある。エヴリシング・ザ・バット・ガール以外の曲での客演もの、ソロ活動からのセレクションだ。厳密にベスト盤とは呼べないが、とてもありがたい編集盤だ。だいたい彼女の声は、12月というこの季節にはぴったりの声である。寂しいが、しかし温かい音楽。シンディ・ローパーの“タイム・アフター・タイム”とエルヴィス・コステロの“アリソン”のカヴァーが収録されていたら、満点だった。

 アルバムのライナーで本人も少し触れているが、トレイシー・ソーン作品で人気があるのは、マリン・ガールズ時代の2枚のアルバム、『ア・ディスタント・ショア』、エヴリシング・ザ・バット・ガールの最初の2枚だ。個人的に思い入れがあるのは『ア・ディスタント・ショア』とEBTGの最初のEP、それから「Each & Every One」と「When All's Well」という2枚の12インチ・シングル。いま挙げた12インチはともにアルバムの1曲目を飾っている曲だが、このおよそ30年ものあいだいつ聴いてもワクワクするし、吹雪の夜に恋人と一緒にいるような、ロマンティックな気持ちになる曲だ。「Plain Sailing」や「When All's Well」のジャケットに印刷された恋人のいる風景の写真は、10代も後半にもなれば誰もが憧れる世界だろう。

 トレイシー・ソーンの声は、ダスティ・スプリングフィールドの声がそうであるように、風化されなかった。結局のところ、ぼくもこうして、ずっと聴いていることになる。「自分のファンは年寄りだから……」というようなことをガーディアンの記事で話していた彼女だが、それはこの拙文の通り事実で、しかし年寄りだけが聴くにはもったいないほど魅力がある。“ルック・オブ・ラヴ”が年寄りの音楽ではないのと同じ意味で。
 バラードが得意なソーンであるが、90年代以降のEBTGがそうであるように、彼女はクラブ・ミュージックにアプローチしている。この時期は、ネオアコどころかほとんどの曲がエレクトロニック、ダンス・ミュージックなのである。彼女の自伝のタイトルは『Bedsit Disco Queen』というが、ベッドシットとは台所付きのベッドルームのことで、内気でありながら外向的なダンス・ミュージックを好む彼女の作品の性格を、あるいはその繊細な感じをうまく言い表している。本作を聴けばそれがよくわかる。踊るということが、まずは心が満ちていなければ空しい行為に過ぎないことを。

Future Brown - ele-king

 〈ハイパーダブ〉からのリリースでも知られるファティマ・アル・カディリ。LAのビート・ミュージック・デュオであるエングズングズのダニエル・ピニーダ&アスマ・マルーフ。シカゴ・ジュークの天才児Jクッシュ。この4人によるプロデューサー集団、フューチャー・ブラウンが来日する。今年の頭に〈ワープ〉よりリリースされたファースト・アルバムでは、グライム、ジューク、トラップ、ゲットー・ハウスなどが起こす鮮やかな音の化学反応が大きな話題を呼んだ。アルバムには多くのMCが参加していたように、今回の来日講演にはMCのローチ―が4人とともにステージに上がる。ファティマ・アル・カディリは去年も日本へやってきたが、フューチャー・ブラウンの来日は今回が初となる。スーパー・グループのセットを是非体感してほしい。


Yasuyuki Suda (inception records) - ele-king

2015.11.29

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