「IO」と一致するもの

 スローイング・スノーがついに初来日公演を行う。

 スローイング・スノーことロス・トーンズ。90年代のブリストル・サウンドを今日的に蘇生させるにとどまらず、自らもレーベル運営を行ってその新しい価値観を提示し、他のフックアップにも余念ないこの男は、まさにいまUKのクラブ・カルチャーの突端を走ろうとしている才能のひとつだ。
 Pitchfork、Guardian、Dazed、Fact、Resident Advisor、XLR8Rなど大手メディアが早くからその動きを追いかけ、マッシヴ・アタックとジェイムス・ブレイクをつなぐUKの超大型ルーキーとして注目してきたその姿を、われわれはついに初来日公演でうかがうことができる。新世代のトリップホップが列島に木霊する瞬間を見逃すことなかれ!

■UNIT / root & branch presents
- Special Showcase in Tokyo -
THROWING SNOW (Houndstooth)

Pitchfork, Guardian, Dazed, Fact, Resident Advisor, XLR8Rなど大手メディアが早くからその動きを追いかけ、マッシヴ・アタック~ビヨーク~ジェイムス・ブレイクといったイギリス音楽の系譜に続く超大型ルーキー、全世界が注目する逸材スローイング・スノーの初来日公演決定! これぞ新世代のトリップホップ!

Live: THROWING SNOW (Houndstooth)
Guest Live: agraph, mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote), submerse (Project: Mooncircle)
DJ: Ametsub

2014.09.26 (FRI) @ 代官山 UNIT
Open/ Start 24:00 ¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door)
Information: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
Supported by P-VINE RECORDS
You must be 20 and over with photo ID.

Ticket Outlets: ぴあ(P: 242-392), ローソン (L: 72714), e+ (eplus.jp), Clubberia (www.clubberia.com/ja/store/), diskunion Club Music Shop (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO and UNIT
*ローソン/e+(8.30 発売)、ぴあ(9.3 発売)

■THROWING SNOW (Houndstooth)
ロンドンを拠点にスローイング・スノーの名前で活動するロス・トーンズ。彼はダブステップ、UKガラージ、ハウスからフォーク、パンク、ハードコア、メタル、そしてレゲエなど様々な音楽を聞いて影響を受けてきた。彼の音楽には心地の良い温かさと、光沢感のある冷たさが共存している。2010年にHo Tepレーベルからデヴュー・シングルをリリースし、その後はゴールド・パンダなどのリミックスを手がけてきた。ジャイルス・ピーターソンやベンジBの強力なサポートもあり、多くのラジオ番組にも出演してきた。 2011年にはDominoやNinja Tuneのような大手レーベルからリミックスの依頼が来るようになった。リリースもSuperやSneaker Social Club、Local Actionなどから続けてきた。2012年には大手音楽サイトのXLR8Rにポッドキャスト用のDJミックスを提供。2013年にはニューヨークで開催されたRed Bull Music Academyへの参加も好評だった。インターネット上でDJのプレイを生中継する人気サイトBoiler Roomにも何度も出演を果たし、ボノボ、アトモス・フォー・ピース、ジョン・ホプキンスなどの前座を務めてきた。またレーベル・オーナーとしても他のアーティストのリリースに協力している。Left Blank(レフト・ブランク)とA Future Without(ア・フューチャー・ウィズアウト)の共同オーナーでもあり、Vessel, Wife, Visionist, Lorca, Memotone, Young Echoなどが駆け出しの頃のリリースを手掛けていた。ヴォーカリストAugustus Ghostとの別プロジェクト、Snow Ghostsもここか
らリリースもしている。2014年には待望のアルバム『モザイク』に先駆けて『Pathfinder EP』を先にリリース。イギリスの現代のミュージシャンの中で最もユニークなアーティストとの一人としてデヴュー・アルバム『モザイク』は数多くの大手メディアから大絶賛された。
www.facebook.com/throwingsnow www.throwingsnow.co.uk

■agraph
牛尾憲輔のソロ・ユニット。2003年からテクニカル・エンジニア、プロダクション・アシスタントとして電気グルーヴ、石野卓球をはじめ、様々なアーティストの制作、ライブをサポート。ソロ・アーティストとして、2007年に石野卓球のレーベル "PLATIK" よりリリースしたコンビレーション・アルバム『GATHERING TRAXX VOL.1』に参加。2008年12月にソロユニット "agraph" としてデビュー・アルバム『a day, phases』をリリース。石野卓球をして「デビュー作にしてマスターピース」と言わしめたほどクオリティの高いチルアウト・ミュージックとして各方面に評価を得る。2010年11月3日、前作で高く評価された静謐な響きそのままに、より深く緻密に進化したセカンド・アルバム『equal』をリリース。同年のUNDERWORLDの来日公演(10/7 Zepp Tokyo)でオープニング・アクトに抜擢され、翌2011年には国内最大の屋内テクノ・フェスティバル「WIRE11」、2013年には「SonarSound Tokyo 2013」にライブ・アクトとして出演を果たした。一方、2011年以降は "agraph" と並行して、ナカコー(iLL / ex. supercar)、フルカワミキ(ex. supercar)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers / toddle)との新バンド、LAMAのメンバーとしても活動。2014年4月よりスタートしたTVアニメ「ピンポン」では、劇伴を担当。その他、REMIX、アレンジワークをはじめ、CM音楽も多数手掛けるなど多岐にわたる活動を行っている。
www.agraph.jp

■Ametsub
東京を拠点に活動。昨年は山口の野田神社で、霧のインスタレーションを交えながら坂本龍一と即興セッション。TAICOCLUBの渋谷路上イベントにてパフォーマンス。Tim HeckerやBvdubといったアーティストの来日ツアーをサポート。夏にはFLUSSI(イタリア)、STROM(デンマーク)、MIND CAMP(オランダ)といった大型フェスへ招聘される。アルバム『The Nothings of The North』が世界中の幅広いリスナーから大きな評価を獲得し、坂本龍一「2009年のベストディスク」にも選出されるなど、現在のシーンに揺るぎない地位を決定付ける。スペインのL.E.V. Festivalに招かれ、Apparat, Johann Johannson, Jon Hopkinsらと共演し大きな話題を呼ぶ。最新作『All is Silence』は、新宿タワーレコードでSigur Rosやマイブラなどと並び、洋楽チャート5位に入り込むなど、大きなセールスを記録。FujiRock Festival '12への出演も果たし、ウクライナやベトナム、 バルセロナのMiRA FestivalへActressやLoneと共に出演。今年はTychoの新作をリミックス、Plaidと共にスペイン発、Lapsusのコンピに参加。秋にはArovaneやLoscilらの日本ツアーをサポート予定。北極圏など、極地への探究に尽きることのない愛情を注ぐバックパッカーでもある。

■mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote)
兵庫県出身の音楽家、光森貴久によるソロ・プロジェクト。電子音楽レーベルmoph records主宰。これまでにアルバムをソロ/ユニット/ライブ・リミックス盤などで4枚リリース。downy、川本真琴、miaou、smoug等のリミックスの他、YMOのカバー集「YMOREWAKE」、またXperia™アプリ "Movie Creator" やGRAN TURISMO 6に楽曲提供。また、Sound & Recording MagazineにてCubase記事を短期連載やムック本への執筆なども行う。ライブも都内を中心に精力的に活動。SonarSound Tokyo, DOMMUNE, EMAF TOKYOなどにも出演。打楽器奏者Kazuya Matsumotoとのパフォーマンスは電子音楽の域を越えていると評判。海外ツアーも2011上海、北京、2012ベルリン、ロッテルダム、ミュンヘンなどを敢行。最新作はPROGRESSIVE FOrM x mophより ”Hyper Fleeting Vision” をリリース。7月にはそのリリース・パーティを13人の演奏家を迎え行い、成功を収めた。そこで出会った仲間とともに ”THE MERGRIM GROUP” を結成。更なる躍進へ望む。
www.mergrim.net www.mophrec.net

■submerse (Project: Mooncircle)
イギリス出身のsubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し、ビートミュージック、ヒップホップ、エレクトロニカを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/ビートメーカーとして知られている。これまでにベルリンの老舗レーベルProject: Mooncircleなどから作品をリリースしSonarSound Tokyo 2013、Boiler Room、Low End Theoryなどに出演。また、英Tru Thoughtsや仏Cascade Recordsなどのヒップホップ・レーベルのリミックス・ワークも手がける。2014年には待望のデビュー・アルバム "Slow Waves" がProject: Mooncircleとflauよりリリースされる。また、Pitchfork, FACT Magazine, XLR8R, BBCといった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。
twitter.com/submerse soundcloud.com/submerse facebook.com/submerse submerse.bandcamp.com YouTube.com/djsubmerse

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2014/09/26/140926_throwing_snow.php




O.N.O(THA BLUE HERB)主宰の〈STRUCT〉が本格始動 - ele-king

 O.N.OといえばTHA BLUE HERBのトラックメイカー。ここ数年は、onomono名義でDJ、あるいはプロデューサーとしてソロ活動を続けている。そのO.N.Oによって今年立ち上げられたレーベル〈STRUCT〉が、いよいよ本格始動する模様だ。

 「音/映像/文章/ソフト/ハードを問わず、未だ見ぬ素晴らしいプロダクトとコンテンツを広く世に発信するため、O.N.Oを中心に組織されたクリエイターたちによる構造体(=”STRUCT”)」──そう謳う彼らは今年3月、第一弾となる『O.N.O×SATOL』をリリース。そして、まもなく販売開始予定の第二弾『THRIVE / KEITA YANO』をもって本格始動となる。本日からはレーベルの公式サイトもオープンとなった。

https://struct-sound.jp/

 現段階ではサイトにて掲載されている以外の参加アーティストは未発表ながら、今後もワールドワイドな影響力を誇るクラブ界の重鎮から、シーンで勢いをもつ若手アーティストまで、多彩なラインナップによるリリースが控えているとのこと。

 これを記念して、9月14日(日・祝前日)に中野〈Heavysick Zero〉でダブル・リリース・パーティ〈RADICAL BEAT SESSION〉が開催される。O.N.OはもとよりSTRUCTからのアナログリリースを控えた二人組の“ドープ・トラック・マスター”THRIVEや、熱狂的なファンを持つベース・ミュージックパーティ〈MAMMOTH DUB〉を主宰するDJ DOPPELGENGERらが出演。


O.N.O / Ougenblick
Amazon

 O.N.O自身もソロ名義によるアルバム『Ougenblick』を今年6月にリリースしている。前作をリリースしてからの5年間に体験した、全国ライヴ・ツアー、2012年にTHA BLUE HERBとしてリリースされた4枚めのフル・アルバム『TOTAL』などが反映された作品だ。あわせてチェックしたい。

■RADICAL BEAT SESSION
~O.N.O 『Ougenblick』 + THRIVE 『In Confusion / STRUCT-002』 Double Release Special~

日時: 2014年09月14日(日) 23:00開演
会場: 中野heavy sick ZERO
入場料: 当日3,000円
フライヤー持参もしくは24:00までに入場の方: 2,500円

出演:
[RELEASE LIVE]
O.N.O a.k.a MachineLive (THA BLUE HERB / STRUCT)
THRIVE (STRUCT / ambivalent deviation)

[B1F DJ]
DOPPELGENGER
MIZUBATA
SEKIS&DIKE
RAW THE BACKWELL

[B2F DJ]
YAZI (BLACK SMOKER RECORDS)
BLACKOLY
DAISUKE IWANAGA (water bar)
惹蝶
DJ SIET (water bar)
VSTLE

STRUCT 公式サイト
https://struct-sound.jp/

RADICAL BEAT SESSION
https://www.clubberia.com/ja/events/226114-RADICAL-BEAT-SESSION/


TOMOKI A HE-ART - ele-king

MetroJuiceRecords、SoundChannel を経て、2014年、日本独自の突き抜けた才能を世界に発信していくレーベル、iro music を立ち上げた。国籍やジャンルの垣根を超えて、音楽を通してダイレクトに繋がることを目指し、オープンマインドにパーティ道を突き進んでいる。

TOMOKI A HE-ART classic chart 10


1
unless+w-moon / entry plug ep / MetroJuiceRecords

2
TOMOKI A HE-ART feat. V.A. / oneness ep / iro music

3
MODEL 500 / DEEP SPACE / R&S Records

4
massive attack / protection / circa records

5
jepte guillaume / voyage of dreams / Spiritual Life Music

6
moodyMANN / silentintroduction / planet e

7
A Guy Called Gerald / black secret technology / JUICE BOX

8
SADE / Lover's Rock

9
one dove / why don't you teke me

10
M / M4 / M

DJ歴 1994-2014 祝20周年!後半戦もがっつり攻めマス!!
>>DJ Schedule
[8月]
2014/08/30-31 "OVERDRIVE" @山梨 さがさわキャンプ場
[9月]
2014/09/08-15 "Transylvania Calling" @ルーマニア
2014/09/19(FRI) "Space Gathering" @広島 cafe Jamaica
2014/09/27(SAT) "IMAGINATION WORLD" @福岡 北九州 Othree Plus
[10月]
2014/10/04(SAT) "Airport Gathering 2014" @熊本 エアポートホテル熊本
2014/10/11(SAT) "amitAyus" -ノゲランズ the KANREKI 宇宙大宴会 博多編- @福岡 今泉 BlackOut
2014/10/10-13 "あそびのくに" @熊本 阿蘇山3合目坊中キャンプ場
2014/10/18-19 "Secret" @Secret
2014/10/25-26 JUNGLE FRESH MUSIC PRESENTS "GREAT HAPPINESS 2014" SUPPORTED BY ACTINGDIGITAL.LTD & BAR NICO @静岡 天子の森キャンプ場
Mixcloud : https://www.mixcloud.com/fumicronagashima/
Facebook : https://www.facebook.com/fumicro

毎日雨ばかりでモヤモヤだった2014夏。夏らしい事もあまり出来なかったフラストレーションを発散すべく10曲(順不同) (2014/08/27)


1
Age Of Broken Mind - Iso(Original Mix) - Muenchen

2
Vadz - Amphetamine(Anal Acid Mix) - Russian Techno

3
PROJECT AKC - Boing(A. Mochi Remix) - Octopus Records

4
AnGy KoRe - Acidume(Original Mix) - Spielstaub

5
SEBASTIAN MULLAERT - Chant De Paris(Original Mix) - Ovum Recordings

6
Jamez - Drum Spirit(Boshell & Cody Remix) - Repressure Recordings

7
Pascal FEOS, Frank Leicher - Bodygroove(Original Mix) - Level Non Zero Recordings

8
Hefty - Pain Relief (Original Mix) - Zenon Records

9
Brunno Santos - Get Me Higher (Original) - Muenchen

10
Alic - Supabugfix(Original Mix) - Soundmute Recordings

interview with Charles Cohen - ele-king


Charles Cohen
A Retrospective

Morphine Records/P*dis

ElectonicMinimalExperimental

p*dis online shop

 40年以上のキャリアを誇るチャールズ・コーエンというアーティストだが、決して有名ではない。昨年まで私も存在を知らなかったし、アメリカ東海岸のアヴァンギャルドな音楽シーンにかなり精通していない限り、多くの人がそうであったと思う。その理由は明確だ。彼はほとんど作曲をしないし、レコーディングもしない。即興演奏のパフォーマンスにこだわってきたからだ。
 しかもコーエンが演奏し続けてきたのはBuchla Music Easel(ブックラ・ミュージック・イーゼル)という1973年に25台程度しか生産されなかったという、まさに幻のシンセサイザー(*2013年に同メーカーから、40年の時を経てElectric Music Boxという名で復刻された)。
 Buchlaは、シンセ・マニア憧れの究極の逸品とされ、日本ではヤン富田や坂本龍一などが所有している200e Seriesという非常に高価なモジュラー・システムを製造している、Moogと並ぶパイオニア的メーカーだ。ミュージック・イーゼルはそのモバイル版とでも呼ぼうか、スーツケースに収まるトラベル・サイズのややかわいらしい楽器だ。一見するとカラフルでおもちゃのようにも見えるが、もともと鍵盤型のシンセとは全く異なるために演奏が難しいと言われている。さらに製造台数が少なかったため、思い通りに操れる者は極めて少ない。コーエンはこの独特な音色を愛し、プレイし続けてきた屈指の演奏家である(こちらの映像→ https://youtu.be/Zra0EOXRe3A で、コーエンの演奏と楽器を見ることが出来る)。
 この、孤高のパフォーマンス・アーティストを、まさに「発掘」したのが〈Morphine Records〉を運営し、モーフォシスやRa. H名義でミュージシャンとして活躍するラビ・ビアイニ。つねにエレクトロニック・ミュージックのアヴァンギャルドな側面を追求してきた彼は、コーエンが80年代に録音し、未発表のままだったテープがあることを知り、それを2013年に一挙リリースした。いま聴いても色褪せていないそのサウンドがとくにテクノ・シーン界隈で話題となり、アナログ回帰、モジュラー・シンセ・ブームも手伝って、コーエンに注目が集まったのである。

 そして今回、ついに初来日ツアーが実現。モーフォシスと共に三都市を回る。これに先駆け、貴重なインタヴューが実現したので、ぜひこのユニークなアーティストについて知り、そしてこの機会に演奏を体験してもらいたい。

70年代、私はたくさんのエレクトロニック・ミュージックを聴いていました。実際にいくつものシンセサイザーを弾いて試してもみました。その頃にモートン・サボトニックの『Silver Apples of the Moon』という作品を聴いたんです。これを聴いたときに、これこそが自分の求めているサウンドだと思いました。

まず伺いたいのが、あなたが演奏される稀少な楽器、Buchla Music Easelとあなたの関係についてです。これだけ珍しい楽器を、どういう経緯で「自分の楽器」として演奏し続けることになったのですか?

CC:70年代、私はたくさんのエレクトロニック・ミュージックを聴いていました。実際にいくつものシンセサイザーを弾いて試してもみました。その頃にモートン・サボトニックの『Silver Apples of the Moon』という作品を聴いたんです。これを聴いたときに、これこそが自分の求めているサウンドだと思いました。サボトニックのようになりたいというわけではなくて、音色が自分の好みだったんです。でも、彼が何者で、どんな楽器を使っていて、どうやってそれを入手すればいいのか分かるまでに数年かかりました。何とか突き止めてブックラ氏本人に手紙を書いたんですが、1年待っても返事が来ませんでした(笑)。もう一度手紙を書いて、カタログを送って欲しいと頼んだら、やっと届いたのです。

当時は、普通に買えるものだったんですか?

CC:ブックラ氏から直接譲ってもらうしか方法はありませんでした。

でも、注文すれば誰にでも買えたんですか?

CC:いやぁ……(笑)。なぜ欲しいのか、どんな音楽をやっているのか説明して、本人が納得しないと譲ってくれなかったようですね。色々な説があって、私にはよく分かりませんが。

でも手に入れられて、それからずっと使い続けるほどの魅力は、どんなところにあるんですか?

CC:実は私も、手に入れてからしばらくは使い方がよくわかりませんでした。あまりに他のシンセサイザーとは勝手が違っていたので。ですから、手に入れてからも他の楽器を使いながら、ときどき戻って試行錯誤して……ということを繰り返していました。それなりにお金を投資した楽器でしたからね、そう簡単に諦めるわけにもいかなくて(笑)。でもそうしているうちに、だんだんとどんな楽器なのかがわかってきた。そして、わかればわかるほど、Music Easelは私がやりたいことがすべて出来る楽器だということに気づいたんです。一度理解出来たら、実はとてもシンプルでした。だから、他のどの楽器よりもこれを使い続けているんです。

ちなみに、他にはどんな楽器を試してみたんですか?

CC:MoogやE-muなど、いろいろ演奏してみましたよ。

でも、つねにシンセサイザー、電子楽器を演奏してこられたんですね?

CC:そうです。私はもともと、演劇のサウンド・デザイン、サウンド・エフェクトを仕事としてやってきたので、劇場という環境で抽象的な音を鳴らすことが好きなんですよ。演劇プロダクションにおいて、ミュジーク・コンクレート的な音作りを試していました。私がそれらを学んでいた学校で、初期の巨大なMoogのモジュラー・システムを購入しました。誰も使い方が分からなかったのでほとんど使われていなかったんですが(笑)、私はそれまでに自分がやってきたことのお陰で、初めて触れた瞬間からすぐに使い方が分かったんです。シンセサイザーとの付き合いはそこからですね。

他のインタヴューで、あなたは主にフィラデルフィアのフリージャズのシーンで活動されてきていて、とくにサン・ラーとセシル・テイラーに影響を受けていらっしゃると書かれていたんですが、それがあなたの音楽的なバックグラウンドですか?

CC:はい。間違いなくバックグラウンドのひとつですね。もっと若い頃は、プログレッシヴ・ロックなども好きでしたし、もっと抽象的な音楽も聴いていましたが、ジャズのより冒険的な側面に触れてから、すっかりのめり込んでしまいました。ジョン・コルトレーンのレコードを聴いたときに、「音を演奏している」と思ったんです。単なる音符でなく、音楽表現としてサウンド作り出していると。サン・ラーは、フィラデルフィアを拠点に活動していたので、何度もライヴを見たことがあります。実は、シンセサイザーを生演奏しているのを初めて見たのはサン・ラーのコンサートでした。それまでスタジオ機材としか考えていなかったので、彼が最初のきっかけとも言えますね。セシル・テイラーは、彼のワークショップに参加したこともあり、非常に影響を受けた人です。彼も、ジャズ・ミュージシャンですが、(コルトレーンと同じように)「音を作り出す」演奏家でした。(音を使って音符を弾くのではなく)音符を使って音を作り出す人。

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実は、シンセサイザーを生演奏しているのを初めて見たのはサン・ラーのコンサートでした。それまでスタジオ機材としか考えていなかったので、彼が最初のきっかけとも言えますね。セシル・テイラーは、彼のワークショップに参加したこともあり、非常に影響を受けた人です。

あなたはずっとフィラデルフィアを拠点にされているんですか?

CC:そうです。

フィラデルフィアにはそのような実験的、あるいは冒険的な音楽のシーンが常にあったのでしょうか?

CC:拡大と収縮を繰り返していますね、一定の周期で。大学院でニューヨークに行っていたこともあったんですが、中退することにして、同じ頃にフィラデルフィアの劇場でサウンド・デザインの仕事を紹介してもらったので、戻って働きはじめました。新しい劇場で、スタジオには4トラック・レコーダーがあったので、それで色々と実験をしはじめたわけです。

それ以降はフルタイムの音楽家として活動されてきたんですか?それとも「本業」のお仕事は続けていらした?

CC:ええ、サウンド・デザインの仕事はずっとやっています。その後はテンプル大学でずっとやっていました。素晴らしい仕事でしたよ。

あなたの音楽に対するアプローチで非常に興味深いところは、作曲や録音をほとんどせず、即興パフォーマンスに完全にフォーカスしていらっしゃるところです。録音をされていた時期もあったようですが、どうしてそういう活動方針になったのですか?

CC:実は録音もしてきたんですよ、仕事としては。ダンスや演劇のための音楽は録音していました。でも、自分の作品としてリリースするということに関しては……私にはたくさんのミュージシャン友だちがいますが、その多くがレコードを作っても売れませんでしたし、聴く人がいなかった。「チャールズ、頼むから僕のレコードをもらってくれ」なんて言われたりしてね。それでは何だか悲しいので、出したいと思わなかったんです。
 でも、いまは状況が違います。私がかつて録音した音楽も聴いてもらえているようですし、新たに作曲をして作品にしてもいいかなと考えるようになりました。

それは大変興味深いお答えですね。一般的には、今の時代は録音作品を作っても売れなくなってきたので、音楽ビジネスはよりライヴ・パフォーマンスにシフトしてきていると言われています。

CC:それも事実のようですね。私自身、パフォーマンスを重視してきましたから、それがもっとも満足を得られる音楽活動だと思っています。優れた録音作品を完成させるには、根気を必要とします。楽曲が出来上がってから、それを完成形に仕上げるまでの作業や編集に多くの時間を要するからです。私はとても怠け者で短気なので、それが出来なかったんです。でも、現代のデジタル技術を使えば、プロダクション行程に時間を取られすぎることなく、即興演奏を作品化することが可能になったと思うので、やっとそれをやる気になってきたんですよ。マルチ・トラックのテープに録音していた時代には、ポスト・プロダクションは非常に骨の折れる行程でした。今はそうではなくなったので、だいぶ(録音に対する)態度を改めました。
 それに、アーカイヴ音源(〈Morphine Records〉から発売された『The Middle Distance』、『Group Motion』、『Music For Dance and Theater』、『A Retrospective』)の成功のお陰で、作品を出しても無視されることなく、誰かに買ってもらえるんじゃないかと思うようになりました(笑)。ですから、いまは前向きな気持ちです。

なるほど。それと関連して伺いたいと思っていたのが、音楽とテクノロジーについてのあなたのお考えです。一方であなたはとても古風なシンセサイザーをずっと演奏し続けてきていらっしゃるわけですが、その一方で音楽制作の技術は凄いスピードで進化してきています。新しいシンセサイザーもたくさん作られましたし、いまはソフトウエアでも無限の音が作れるようになった。

CC:そうですね。本当に驚くべきテクノロジーが存在しています。

録音に際してはそういう技術も使っていらっしゃいますか?

CC:デジタル・エフェクトは使います。私はアナログ信奉者というわけではないので、アナログだけとか、デジタルだけとか、こだわるつもりは全くありません。私は、自分が実践する上で最適だと思う技術を使うようにしています。アナログの楽器を使い続けているのは、私にとって使い心地が良く満足のいく結果が出せるからで、それを変える必要性を感じないからです。これまで培ってきたテクニックとアイディアがあれば、やりたいことは全て出来るのです。もし限界を感じるようなことがあれば、他のものに変えようという日が来るかもしれませんが、今のところは間に合っています。(操作に対する)反応が良く、シンプルなところ、選択肢が限られているところがいいんです。現代の楽器の問題点は、選択肢が多過ぎるところ。何を選べばいいのか分からなくなってしまう。
 Music Easelには23個のノブしかありません。4~5つの基本構成要素と、オシレーターもひとつしかありません。そう聞くと、何もできないように感じますが、各パラーメーターでコントロール出来る範囲はとても大きい。私は、その方が自分の表現力が発揮出来ます。

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オウテカを例に取ってみましょう。私をよく知る友人などから、「チャールズ、きっと好きだから聴いてみた方がいいよ!」と薦められて、実際に聴いてみました。そして気に入りましたよ、最初の30秒くらいは。でも、ビートが入って来ると興ざめしてしまうんです。

お話を伺っていると、あなたにとってのMusic Easelはクラシックやジャズのミュージシャンが生楽器をマスターする感覚に近いように感じます。彼らのような演奏家は、例えば一度ベーシストになると決めたら、一生その楽器と付き合っていきますもんね。

CC:練習もしなくてはいけないですしね。練習した人には、楽器が報いてくれるものです。現代の電子楽器は、特定のタイプのミュージシャンが特定のタイプの音楽を作るようにデザインされています。こうした楽器は、私も実際に使ってみましたが1~2年すると限界が見えてしまう、もうそれ以上探求する深みがなくなってしまうんですね。その点でも、Music Easelは知れば知るほど深みが出て来る楽器。それに、私は単純にこの楽器のサウンドが大好きなんです。

これも別のインタヴューで読んだんですが、あなたは音楽をほとんど音楽を聴かれないとか!?

CC:ははは。そうなんです。それを言うとみなさんショックを受けるようですけどね! 聴かないといっても、絶対聴きたくないと耳を塞ぐわけではないですよ。定期的に新しいものを手に入れて聴くことを楽しみとはしていないということです。そのミュージシャンと個人的なつながりがあるか、友だちに強く薦められない限りは。ただ座って、45分間なりのまとまった時間を人の作った音楽を聴くことに費やすのが、私には長く感じます。そこまで時間を割けない。音楽にどっぷりと浸かりたいとき、没頭したいときは自分で演奏する方が好きです。

それでも、これまで聴いたり見たりした中であなたが感銘を受けたミュージシャンにはどんな人がいるのか、非常に興味があります。そういう人はいないですか?

CC:ランダムなものしか聴いていないですね。セシルとサン・ラー以外は、私を本当に感動させた人は思い浮かばないです。
 例えば、オウテカを例に取ってみましょう。私をよく知る友人などから、「チャールズ、きっと好きだから聴いてみた方がいいよ!」と薦められて、実際に聴いてみました。そして気に入りましたよ、最初の30秒くらいは。でも、ビートが入って来ると興ざめしてしまうんです。一番最近、人に薦められて気に入ったレコードは、デムダイク・ステアというグループのものでした。それほど最近でもないかもしれませんが……彼らのレコードは楽しんで聴きましたよ。

〈Morphine Records〉のラビ・ビアイニと出会って、アーカイヴ作品がリリースされてからは、世界各地のフェスティヴァルなどに出演されるようになり、だいぶ周囲の環境が変わりましたよね?

CC:自分でも信じられません。ゼロの状態から、いきなりフェスティヴァルなどに呼ばれるようになって。まったくこんなことが起こるとは想像したことすらありませんでしたよ。本当にすべてラビのお陰です。こんなにいろんなところに呼んでもらえたのは。自分でも、これからこんなところやあんなところでプレイするんだ、と口で言っていながら、自分でも信じられないくらいです。日本で演奏する日が来るなんて……いまだに信じていませんよ(笑)。実際に行って、ステージに上がるまでは実感が持てないです。私にとっては、すべてが全く新しい体験です。演奏することが好きですし、新しい人と出会うことも好きです。移動することは少々大変ですけどね。日本なんて遠いところまで、いままで行ったことがありませんから。

恐らく、あなたを聴きに来るオーディエンスもこれまでとはだいぶ違うのではないかと思います。

CC:まったく違いますね。

違うというのは、私もそうですが、いわゆるダンス・ミュージック、テクノ系のリスナーが、最近ではよりエクスペリメンタルな電子音楽に興味を持つようになったと思うんです。そういったタイプのフェスティヴァルにも……

CC:私のような実験的なアクトを混ぜるようになった(笑)。それは、とてもいいことだと思いますよ。テクノには、素晴らしいサウンドがたくさん使われてきました。音楽的なスタイルとしては、私がそれほど熱中するものではありませんが、サウンドそのものは素晴らしいものがたくさんあります。とくにテクノは、多くの人の耳をより抽象的な音にも開かせた。テクノは、エレクトロニック・サウンドの美しさを多くの人に気づかせた。その功績はとても大きいと思います。共通の美意識を持つことで、(スタイル的な)境界線が薄れてきましたね。かつては、DJとパフォーマンス・ミュージシャンの間には大きな隔たりがありました。でも、いまはだんだんとなくなってきている。だんだんと統合されてきて、両方をやる人も増えてきています。私は、それはとてもいいことだと思います。私は、それまで隔たれていた音楽が統合されていくこと、混合されていくことは歓迎します。

今回が、日本を訪れることも初めてなんですね?

CC:初めてです。日本といえば、「禅」についての本は読んだことがあります(笑)。私の親友が数年間日本に住んでいたことがあって、話はたくさん聞きましたが、私にとっては神話のような感じで。日本の文化にはかねてからとても感銘を受けてきたので、本当に訪れるのを楽しみにしています。

あなたの演奏が完全に即興であることを考えると、その場所であるとか、周囲の環境に少なからず影響を受けるのではないかと思いますが、いかがですか?

CC:まったくその通りです。環境のすべてから影響を受けます。周囲から聞こえるちょっとした雑音、見聞きした情報など、全てが何らかのかたちで音楽表現に表れます。例えば、酔っ払いの、暗くて不機嫌な客ばかりの会場だったら、どうしてもそういう音楽になってしまうでしょうし、ハッピーでクリエイティヴで、冒険心のあるお客さんに囲まれていたら、それに相応しい音楽になります。

それでは、あなたにとって未知の環境である日本のパフォーマンスがどんなものになるか、益々楽しみですね。ツアーの成功をお祈りします!ありがとうございました。

CC:ありがとう。私もとても楽しみにしています。


※奇跡の来日公演!

9/4 Charles Cohen / Morphosis Japan Tour 2014 @ Conpass
https://www.conpass.jp/5611.html

9/5 Gash feat Morphine Rec @ Mago
https://club-mago.co.jp/pick-up-party

9/6 Future Terror @ Unit
https://www.unit-tokyo.com/schedule/2014/09/06/140906_future_terror.php

OG from Militant B - ele-king

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。レゲエのバイブスを放つボムを連チャンラクラク投下。Militant Bでの活動の他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしてもその名を聞くことができる。

今回はR&R特集!ということで、スクランブルロッケンロール~...ではなく、"ラガマフィン"と"ラッパー"のコンビ曲を挙げてみました。REGGAEとHIP HOPの関係、歴史を歌で知れるヒビキラー氏とジブさんの"Culture 365"も先ずはオススメ。そしてランキング曲をチェックして少しでもレゲエを好きになってくれたら嬉しいです。みんな!踊ろう!パーティーしよう!

9/2 吉祥寺cheeky "FORMATION"
9/10 新宿open "PSYCHO RHYTHMIC"
9/12 渋谷虎子食堂 "虎子食堂5周年"
9/14 渋谷asia "IN TIME"
9/15 渋谷neo "AKA"
9/19 代官山unit
10/3 吉祥寺cheeky "MELLOW FELLOW"
10/7 吉祥寺cheeky "FORMATION"
10/12 青山蜂
10/18 渋谷asia "EL NINO"
10/25 吉祥寺warp "YougonnaPUFF?"

俺とお前とR&R (2014/08/26)


1
Juelz Santana feat. Cam'ron&Sizzla - Shottas - Def Jam
説明不要、サンタナ、キャム、シズラによるMilitant HIP HOPチューン。俺のアイドル的存在、そして青春の1ページ!ブーン!

2
Shyne feat. Barrington Levy - Bonnie&Shyne - Bad Boy ent
まずシャインの声が最高。そこに絡むバーリントン、疾走感が◎同コンビで送る別曲"Bad Boyz"はハードでこれもカッコいい!

3
Damian Marley feat. Stephen&Black Thought - Pimpa's Paradise - Tuff Gong
ボブの同名曲のリメイクで、息子2人とThe Rootsのブラックソートのコンビネーション。歌とは関係ないけど昔先輩のDJが「金髪パァラダイス~」と、唄ってたのが懐かしい思い出です。元気かな?

4
The Game feat. Junior Reid - It's Okay - Geffen
ハードなトラックにゲームの男気ラップ、Jr.リードの名曲One Bloodが見事に融合した一曲。悪そうな仲間たち大集合なPVも必見!

5
Shabba Ranks feat. Queen Latifah - What'cha Gonna Do?(Club Mix) - Epic
90年代、ジャマイカンでいち早くインターナショナルヒットした男シャバランキン。Mix違いで4曲収録してるけどこのバージョンはディスコっぽくてイイ。ダンス!

6
Rhymester feat. Boy-Ken - 隣の芝生にホール・イン・ワン - File
Love Punnany MAX!ライムス2人の物語にバイブス番長ケンさんのラガが見事にマッチ。今日もどこかでナイスショット!

7
Super Cat feat. Method Man - Scalp Dem(Wu Mix) - Columbia
94年RZAプロデュース。レゲエとヒップホップが密に関わってた時期。乾いたスネア、ベースライン、謎の上物オケに2人のトーストがバッチリはまってます

8
Foxy Brown feat. Spragga Benz - Oh Yeah - Def Jam
Toots&Maytals"54-46"、ボブの"Punky Reggae~"に"Africa Unite"もサンプリングしたレゲエ臭プンプンなトラック。ウォヨーイ

9
Sticky feat. Shiba-Yankee - お好きにどうぞ - Scars ent
男のSAGA全開な曲。女の子はドン引?でもクラブってそういうとこじゃん。駆け引き駆け引き。相手が本物か見極めろ!

10
Jamalski feat. Cool MB&Topcat - If The Clip Fits - Baraka Foundation
2001年ジャマルスキーのレーベルコンピから。今ランキング中、ラガとラッパーの掛け合いが一番タイトで大人ワルな曲。Cool MBって名前も!

interview with Oh Shu - ele-king


王舟 - Wang
felicity

Indie Rock

Tower HMV Amazon iTunes

 7月17日、夜10時。渋谷・スペイン坂の上にあるライヴ・ハウス〈WWW〉は親密な空気で満たされていた。その日の主役はファースト・アルバム『Wang』をリリースしたばかりの王舟で、彼はオーディエンスの拍手によって2回めのアンコールに引っぱり出されてきたところだ。グレーのポロ・シャツにブラウンのパンツという、普段、酒場で出会すときとまったく同じ格好をして、寝癖がついたままの頭を照れくさそうに掻きながら現れた王舟に、PA卓の後ろで観ていたceroの髙城晶平、Alfred Beach Sandalの北里彰久といった友人のミュージシャンや、ステージにいるホライズン山下宅配便/片想いの伴瀬朝彦、GELLERSのシャンソンシゲルといったサポート・メンバーから冷やかしの声が飛ぶ。それをフロアの壁に寄りかかったトクマルシューゴが楽しそうに見つめている。

 そう、これまでディスコグラフィには2010年に制作した『賛成』と『THAILAND』という2枚のCD-Rしか載っていなかった、世間的には無名だと言っていいだろうこのシンガー・ソングライターは、いま注目を集めつつある東京の新しいインディ・ミュージックにおいて、愛すべき人柄と、何より素晴らしい楽曲でもって欠かせない人物だと認識されているのだ。そして、王舟が簡単な感謝の言葉を述べてから歌いはじめたのが、オープニング・アクトを務めたHara Kazutoshiの「楽しい暮らし」だったのは、彼の哲学を反映していたように思う。たしかに、記念すべきデビュー・アルバムのリリース・ライヴの締めに選んだのがひとの曲で、しかも、最後はHaraにヴォーカルを取らせ、会場も当然のように盛り上がっていたのは奇妙な光景かもしれない。ただ、それぐらい、「楽しい暮らし」は王舟と仲間たちにとってアンセムになっているのだし、王舟は音楽を通して自己を表現するよりも、音楽を通して他者と繋がり、音楽を通して新たな空間をつくりあげることを第一義としているのだ。王舟が歌うとき、そこは、他でもない、音楽の鳴る/生る/成る場所になる。

 アルバム『Wang』の最後を飾る大らかな名曲“Thailand”で、「タイに帰るの」とうれしそうに話す彼女に対して、主人公は困惑しながら呟く。「Where is Thailand?」。この“Thailand”は、つまり、異世界の象徴である。あるいは、それは“音楽のなる場所”のことなのかもしれない。だから、王舟にも訊くことにしよう。――「Where is Thailand?」と。

■王舟(おうしゅう)
2010年に自主制作CD-R『賛成』『Thailand』をリリース。以降、東京を中心にソロ、デュオ、バンド編成など、さまざまな形態でライヴ活動を行う。今年7月に、待たれていたファースト・アルバム『Wang』をリリースした。


自分も含めて関わってくれたひとは他の仕事をしていたりするんで。それもあって、アルバムを“創る”って感じじゃないんですよ。ゼロから何かを生み出すというよりは、日常の用事のひとつみたいな感じで。

デビュー・アルバムがこうしてプレスされて、いまは「ようやく終わった」という感じ? それとも、「ようやくはじまる」という感じ?

王舟:どうっすかねぇ……。でも、“終わった”って感じはしないな。頭では終わったってわかってるんですけど、身体はとくに反応がなくて。それだけ、時間が長くかかっちゃったから。

レコーディングが日常になって、身体がその生活に慣れてしまったということ?

王舟:レコーディング自体は2012年の9月には終わってたんですけど、なかなか満足のいくミックスができなくて、そこからさらに時間がかかってしまったので、レコーディングが日常になったというよりは、アルバムについて考えるのが日常になっていたという感じですね。だから、取材を受けているいまもあまり変わらないという。

“アルバムについて考える”といっても、壮大なコンセプトを掲げたような作品ではないよね。

王舟:そうですね。考えていたというのは、単純に作業のスケジュールを組んだりだとか。自分も含めて関わってくれたひとは他の仕事をしていたりするんで。それもあって、アルバムを“創る”って感じじゃないんですよ。ゼロから何かを生み出すというよりは、日常の用事のひとつみたいな感じで。でも、それがあったからこそ、毎日、張り合いがあった。もちろん、最終的には答えを出さなければいけないことなので、プレッシャーもなくはなかったんですが。

なるほど。ところで、アルバムを聴いてまず思ったのは、CD-R『賛成』『THAILAND』(鳥獣虫魚、2010年)の楽曲も再演しているけど、雰囲気ががらっと変わったなと。

王舟:『賛成』はほとんどひとりでつくっていて、そうするとああいう雰囲気になるんですよ。でも、ひとりでやるのはいつでもできるので、今回は同じ楽曲を使って、ひとといっしょにつくるとどうなるんだろうかっていうのが最初に考えていたことでした。

『賛成』につづく『THAILAND』にはmmmoono yuukiをはじめとして何人かのミュージシャンが参加していたよね。その延長線上で、『Wang』にはさらに多くのひとが関わっているわけだけど、それは、私的なものよりは、なんというか、ガヤガヤしたものをつくりたいという思いがあったということかな?

王舟:そうですね。あんまり濃い感じじゃないほうがいいというか、個性があるっていう感じじゃないほうがよかった。

『賛成』と『THAILAND』には凛とした空気を感じて、単行本『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト、2011年)の後書きに「東京のボン・イヴェールとでも言いたくなるような美しいCD-R」って書いたんだ。

王舟:そのあと、〈Roji〉で磯部さんに会ったとき「ボン・イヴェールって誰ですか?」って訊いたら「王舟は知らなくていいんだよ」って言われた(笑)。


サポートをお願いしたひとたちも仕事があるのでそこまで練習に入れるわけではなくて。それだったら、オレの楽曲を使ってセッションをするっていうジャズ・バンドみたいな形式でやるのがいいなと思ったんです。

ははは。酔っぱらってたのかな。失礼しました。でも、インディ・ロックをマニアックに聴き込んでいるというよりは、もっと大らかなタイプのミュージシャンなんだろうなと思ったんだよ。実際、『Wang』はラグタイムだったりカントリーだったりフォークだったり、オールド・タイミーなアレンジで仲間たちとセッションを楽しんでいるようなリラックスしたアルバムに仕上がっている。そういう方向性に関しては意図的?

王舟:『賛成』と『THAILAND』を出したあたりからライヴをよくやるようになったんですけど、サポートをお願いしたひとたちも仕事があるのでそこまで練習に入れるわけではなくて。それだったら、オレの楽曲を使ってセッションをするっていうジャズ・バンドみたいな形式でやるのがいいなと思ったんです。だから、もともとは時間だったりお金だったり、制約がある中で、「だったらこうやろう」という感じでできたスタイルで。

でも、その制約の中でやるのがおもしろくなったと。

王舟:オレにとって、音楽って遊びなんですよ。もちろん、演奏しているうちに熱くなってくることもあるんですけど、基本的には楽しいからやってる。

だから、キャンプテン・ビーフハートやジェームス・ブラウンのようにメンバーの生活を犠牲にして、王舟の頭の中で鳴っているサウンドを再現するみたいなやり方ではないってことでしょう?

王舟:それも憧れますけどね(笑)。でも、そういうことがやれる環境にはいないし、そもそも、そういう人間ではないのかもしれない。


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普通は、ジャズっぽいことをやりたいと思っても、ジャズのライヴ・ハウスに行って、そこに出ているミュージシャンに声をかけられないじゃないですか。こっちが敷居が高いと思っているだけかもしれないけど、〈七針〉にはそういう感じがない。

そういった、気兼ねなくセッションできるメンバーと出会ったのは、やはり八丁堀のアート・スペース〈七針〉で、ということになるのかな?

王舟:そうですね。〈七針〉で知り合った人が多いです。あるいは、〈七針〉で知り合った人のライヴを観に別の場所に行って、そこでまた知り合ったりだとか。

どうして、〈七針〉は王舟にとって特別な場所になったんだろう?

王舟:どうしてなんだろう……たとえば、以前、〈七針〉でよくセッションをしてたんです。ライヴが終わった後、出演していたミュージシャンや遊びに来ていたミュージシャンでもって。「さあ、セッションするぞ!」みたいな感じではなく、なんとなくはじまって、なんとなく終わるみたいなゆるい感じで。そうすると、「あ、このひととは合うな」とかわかるじゃないですか。それで、音源をあげたりとか、「今度、いっしょにやりましょうよ」って誘ったりとか。オレもバンドっていう形にはこだわっていなかったので、結果としていろんなひととやることになったんです。

また、〈七針〉には、管楽器だったり、弦楽器だったり、あるいはマルチ・プレイヤーだったり、さまざまなタイプのミュージシャンが出入りしているよね。

王舟:そうなんですよ。いわゆるライヴ・ハウスだと普通のロック・バンドしかいなかったりするじゃないですか。それが〈七針〉だと、ポップなバンドもいれば、ハードコア・パンクまではいかないけどうるさいバンドいたり、フリー・ジャズや現代音楽のひともいて。しかも、それぞれのひとが次のライヴではまったくちがうことをやっていたりする。しかも、みんな、音楽に対して寛容な雰囲気があったので繋がりやすかったんですよね。普通は、ジャズっぽいことをやりたいと思っても、ジャズのライヴ・ハウスに行って、そこに出ているミュージシャンに声をかけられないじゃないですか。こっちが敷居が高いと思っているだけかもしれないけど、〈七針〉にはそういう感じがない。

ただ、そっちの方が不思議にも思えるな。“ジャズ”のような共通言語がないのに繋がることができるというのは。

王舟:そう、だから、音楽の話はほとんどしないんです。セッションが終わった後は飲みながらくだらない話をしてるだけですし。でも、そうやって人柄がわかることで繋がりやすくなるのかもしれない。以前の〈七針〉では、ライヴが終わると近所のお店のひとが差し入れをしてくれて、お客さんを入れて飲み会になったり、ゆるい空気があったんですよ。そういう場所に出会えたのはデカかったと思います。

じゃあ、アルバムも〈七針〉と同じような空気感にしたいと思った?

王舟:『THAILAND』以降、レコーディングは〈七針〉のセッションと同じような感じでやるようになったので、自然と空気感が近くなったんでしょうね。楽曲にもよるんですけど、「こういうアレンジがいいんじゃない?」ってみんなで話しながらつくっていくっていう。そうすると、「ここでこう鳴らしてもいいんだ」って発見する瞬間がところどころであって、そのおかげでレコーディングの間、モチヴェーションが持続できた感じはありました。


そういうやり方ができるのはファースト・アルバムしかないんじゃないかって思ったんですよね。時間を掛けて、納得するまでつくり込むっていう。

ちなみに、今回のアルバムは、『賛成』と『THAILAND』を出した〈七針〉主宰の〈鳥獣虫魚〉ではなく、〈felicity〉から出ることになったわけだけど、その経緯は?

王舟:レコーディング中はどこからリリースするか考えてなかったんです。自分で出すか、あるいは、まわりにレーベルをやっているひとがたくさんいるからお願いしようかなってぼんやりと思っていたぐらいで、あえて答えを出さないようにしていました。そういうこととは関係なく、とりあえず、アルバムを完成させようと。

でも、それって不安にならない? 完成してもリリースできないんじゃないかって。

王舟:そういうやり方ができるのはファースト・アルバムしかないんじゃないかって思ったんですよね。時間を掛けて、納得するまでつくり込むっていう。セカンドを〈felicity〉で出すかどうかはまだわからないけど、もしそうなったら、次は締め切りがあるでしょう。

昨年だったか、達彦(仲原達彦/『Wang』を担当した〈felicity〉のA&R)が〈felicity〉に入ることになったとき、「まずは王舟のアルバムを出そうと思うんです」と言っていたよね。

仲原:僕が王舟と話をしたのは3回めのミックスの時ですね。

王舟:アルバムを録りはじめたのは2011年なんですけど、1回めのミックスは録り音がよくなかったので満足できなくて、結局、最初から録り直したんです。それで、2回めのミックスをしたんですけど、今度はミックス自体が「もうちょっと出来るんじゃないか」って感じた。だから、タッツ(仲原)に「どうしたらいいかな?」って相談したことが〈felicity〉で出すことになったきっかけですね。

達彦は完成したアルバムを聴いてどう思った?

仲原:こんなことを言うのは安易かもしれないんですけど、それでも、聴けば聴くほど、王舟らしいなと。自分から湧き出てくるものを表現するのではなく、出会った人と音を鳴らすっていうか。


音楽ってもともとそういうものだと思うんですよ。自己を表現するのではなくて、自然の調和を表現するっていうか。

先程、「(レコーディングは)ゼロから何かを生み出すというよりは、日常の用事のひとつみたいな感じ」、あるいは、「(アルバムの出来は)あんまり濃い感じじゃない方がいいというか、個性があるっていう感じじゃない方が良かった」と言っていたけど、王舟にはいわゆる“自己表現”のようなものから距離を置こうとしている感じがあるよね。

王舟:「音楽は自己表現」みたいな考え方が当たり前になっていることは嫌だなとは思いますね。何か言いたいことを音楽を使って表現するということがあまり好きではなくて。個人的な好みとしても、主張が強くない音楽が好きだったりしますし。メッセージみたいなものがなくても、曲の旋律とか音の並び方が魅力的だったらそれでいいんじゃないかなって。

それは、昔から思っていたことだったの?

王舟:そうですね。それに、オレがどう考えているかというよりも、音楽ってもともとそういうものだと思うんですよ。自己を表現するのではなくて、自然の調和を表現するっていうか。

アリストテレスの「芸術は自然の模倣である」っていうやつだね。

王舟:自然っていう普遍的なものがあって、それに近づきたいみたいな欲求は、自己っていうものが発見される以前からひとが持っていた感覚なんじゃないですかね。個人的にもそういう作曲観の方が好きですし。

そういう観点から影響を受けたミュージシャンはいる?

王舟:わかりやすいところで言うとバッハとか……。

えー、バッハ!?

王舟:あとはジュディ・シルとか。身近なひとだとmuffinさんとか。ただ、“自然”や“調和”っていうと大袈裟に聞こえるかもしれないですけど、(机の上のペットボトルを手に取って)こういうものと同じだと思うんですよ。これって、ひとに不快感を与えないようにデザインされてるじゃないですか。

サティの「家具の音楽」みたいなこと? ちなみに、英詞が多いのもそれと関係している?

王舟:そうですね。やっぱり、音に日本語を入れるとざらざらして、滑らかさが減るので。意味がわかるっていうことは引っ掛かりが多過ぎるということでもありますし、それよりは意味がわからないもの、抽象的なものが好きなんですよね。

『Wang』の製品盤をもらったとき、ジャケットも抽象的だし、帯に「注目のシンガーソング・ライターがデビュー!」みたいなコメントも書いてないし、「おしゃれだなー」と思った。

王舟:ははは。ジャケットとデザインに関してはタッツとつんちゃん(惣田紗希)にお任せしたので。


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そもそも、音楽がすごく大事なものとして扱われるのがあまり好きじゃないんですよ。スタンダードってそういうところがないじゃないですか。


王舟 - Wang
felicity

Indie Rock

Tower HMV Amazon iTunes

達彦としては、ここまで主張のないアーティストを売り出すことを難しいと思わない?

仲原:曲はわかりやすいじゃないですか。聴いてさえくれれば理解してもらえるはずなので、そこまで難しいとは思っていないですね。だから、ジャケットに関しては王舟のそういう性格を上手く生かすというか……「何だろう、このCD?」って手に取ってくれるようなものにしようと。僕自身、『賛成』を初めて聴いたとき、どんなひとなのか前情報が何もない状態で再生して「いいな」と感じたので、これから王舟を知るひとにもできるだけそういう状態で触れてほしいんです。

ひとつ思うのは、本当に衒いがないというか、オーセンティックでスターンダードなひとなんだなということだよね。最近のライヴで“500マイルズ”と“アイ・ウィッシュ・ユー・ラヴ”をカヴァーしてるでしょう? いま、あの2曲を普通に歌えるひとはなかなかいないよ。

王舟:いろいろな音楽を聴くんですけど、サイケでもレア・グルーヴでも、結局、それぞれのジャンルでいちばん有名なひとが好きなんですよ(笑)。だから、ジュディ・シルを知ったときは「こんなにスタンダードなことをやっているひとがなんでこんなに知られてないんだ?」って驚きましたね。

まぁ、ジュディ・シルも音楽好きにはよく知られているわけだけど、「こんなにスタンダードなことをやっているひとがなんでこんなに知られてないんだ?」というのは、王舟自身がまさにそうだよね。そういえば、アルバムの1曲め“tatebue”の歌い出しが“バッド・バッド・ウィスキー”に似ているんだよね。あの曲は『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)の挿入歌でもあるから、王舟が酔っぱらってる姿を思い出して笑っちゃうんだけど(笑)。

王舟:その曲と似ているのはいま言われて気づいたんですけど、オレもそういう酒場の音楽が好きっていうか、そもそも、音楽がすごく大事なものとして扱われるのがあまり好きじゃないんですよ。スタンダードってそういうところがないじゃないですか。

昔、「音楽のいちばん美しい消費のされ方はBGMである」というコラムを書いたことがあるけどね。

王舟:まさに。そういう方が美しいですよね。

王舟にとっての理想の音楽は、陶酔するようなものではなく、むしろ、聞き流せるようなものだということかな。

王舟:みんながガヤガヤしているところで何か曲が流れている。ふと、「これって何て曲なんだろう」って耳を澄まして聴いてみたらすごくいい曲だった。そんなときって感動するじゃないですか。

そこにいる誰もが音楽を聞き流しているようで、じつはその音楽が空間に作用していたことがわかる瞬間というかね。

王舟:いまって、何の音楽を好きかによって派閥になっているようなところがありますよね。オレはそういう、ひとの価値観を限定する音楽よりも、むしろ、価値観が凝り固まって疲れたときにラクにさせてくれるような音楽の方がいい。もちろん、何かにハマるのは楽しいことだけど、音楽にハマることが他人との壁をつくるように機能してしまったら残念じゃないですか。


オレはそういう、ひとの価値観を限定する音楽よりも、むしろ、価値観が凝り固まって疲れたときにラクにさせてくれるような音楽の方がいい。もちろん、何かにハマるのは楽しいことだけど、音楽にハマることが他人との壁をつくるように機能してしまったら残念じゃないですか。

ただ、“BGM”や“ラクにさせてくれるような音楽”といっても、『Wang』はエレベーター・ミュージックやヒーリング・ミュージックみたいな無味無臭なものとも違う。どこか人懐っこいところがあるのは、職人的な作業としてではなく、仲間と遊びながらつくっているからだと思うんだけど。

王舟:ああ、そうかもしれませんね。

ちなみに、先程、英詞が多いのは「日本語だと滑らかさが減る」からだと解説してくれたけど、内容自体も淡いイメージというか、まぁ、言ってみればたわいないラヴ・ソングが多いよね。

王舟:そうですね。たわいない感じがむしろいいんじゃないかと思うんですよね。Hara Kazutoshiさんの歌なんかも簡単な言葉しか使ってないけどぐっとくる。だから、歌詞にしてもコードにしてもできるだけシンプルなものを使うっていう制約の中でやりたいと思ってます。印象に残る言葉みたいなものは要らないんじゃないかな。ありきたりな言葉を、ありきたりじゃない響きで聴かせられたらいいなと。


音楽に影響を与えているとしたら、「どこがルーツか」ということよりも、「どういうひとと接してきたか」ということがデカいんじゃないかな。

言葉と言えば、王舟は上海生まれだよね。このアルバムも『Wang』という君の名字をタイトルにしているわけだけど、“王”は中国でいちばん多い名字でもある。つまり、私的にも、抽象的にも取れる。そこで訊きたいのが、「自分のルーツが自分の音楽に影響を及ぼしていると思うか」ということ。

王舟:『Wang』ってタイトルもタッツが付けたんですよね。オレ自身はルーツに関してとくに意識はしていないです。大事にしようと考えているわけでもなくて、かと言ってぞんざいに扱っているわけでもない。でも、音楽に影響を与えているとしたら、「どこがルーツか」ということよりも、「どういうひとと接してきたか」ということがデカいんじゃないかな。美意識みたいなものは生まれつき持っているわけではなくて、積み重ねでできあがるものだと思うから。

ああ、なるほどね。自分で選べない“Roots”よりも、自分で選び取ってきた“Routes”の方にリアリティを感じるというのは、当然と言えば当然の話だよね。

王舟:それも意識してないんですけどね。たとえば、「この音楽、いいな」と思うのって無意識じゃないですか。そして、その経験が積み重ねられていくことによって、「ああ、おれはこういう音楽が好きなんだ」って意識する。音楽をつくるときも、曲の書き方だったり、音の出し方だったりは無意識だと思うんですよね。いまはそれを意識的に説明してますけど。

そういえば、松永良平さんのインタヴューで「ちっちゃいころに上海でニューオリンズ・ジャズを結構聞いてたんですよ。でも、そのころの記憶って、一回日本に来てから、完全に途切れて忘れてた。それを、NRQを聴いたときに思い出したんです」と語っていたけど、NRQって疑似的なルーツを鳴らすバンドなわけで、それを聴いて自分のルーツを思い出すというのはおもしろい話だなと思ったんだよね。王舟の音楽自体、スタンダードだったり、ノスタルジックだったりするものの、それって擬似的な標準だったり記憶だったりするんじゃないか。

王舟:ニューオリンズ・ジャズを聴くと「懐かしい」と思うんですけど、ニューオリンズなんて行ったことないですからね(笑)。それってよく考えるとすごい。

それは、ジャズを通して子どもの頃にいた上海を懐かしんでいるだけではなく、音楽そのものからノスタルジーを感じ取っているということだよね。

王舟:そういうふうに、音楽が感じさせてくれるものって、演奏者の自己だけじゃなくて、見たこともないどこかの風景だったりするからこそおもしろいと思うんですよね。

王舟の音楽に“ルーツ”があるとしたら、それは参加している友人たちとの関係なのかなという気はする。

王舟:そうかもしれませんね。でも、聴いているひとは気づかなくてもいいかな。


自分の生まれ育ちが自分の音楽に影響を与えているとしたら、それこそ、“個性を出す”という欲求がないところなのかもしれないです。だって、オレが子どもの頃に日本に来たとき、まず思ったのは、「普通になりたい!」ってことだったんですもん。

しかし、自分自身に興味がないところは徹底してるよね。

王舟:ああ……話していて思ったんですけど、自分の生まれ育ちが自分の音楽に影響を与えているとしたら、それこそ、“個性を出す”という欲求がないところなのかもしれないです。だって、オレが子どもの頃に日本に来たとき、まず思ったのは、「普通になりたい!」ってことだったんですもん。わざわざ個性を出そうとしなくても、まわりから個性的だと思われちゃうから。それと「普通のアルバムをつくりたい」と思ったことは繋がっているのかもしれない。

さっき、「王舟にとっての理想の音楽は、陶酔するようなものではなく、むしろ、聞き流せるようなもの」と言ったけど、むしろ、君は、音楽が陶酔によって自己から解放してくれるところに魅力を感じているのかもしれないね。

王舟:それはあるかもしれないです。たとえばニューオリンズ・ジャズの歴史を調べていたら、もともとは日曜の公園にバラバラの土地からいろいろなひとが集まっていっしょに演奏するところからはじまったっていう。そういう音楽のあり方には憧れますね。

演奏の中で自己から解放されてひとつになっていくという。ただ、王舟の音楽は、ニューオリンズ・ジャズをそのまま模倣しているわけではなくて、“王舟の音楽”としか言いようがない独特のものになっているわけだけど、あたかも昔から存在しているもののように自然に聴けるっていうのが『Wang』のおもしろいところだね。

王舟:みんなで集まって音楽をやるという行為から、ジャズという名前を取ったとしても、楽しさは残っているじゃないですか。それを言い表す言葉はないけど、まさに“そういう音楽”がやりたいんですよね。


Taylor McFerrin - ele-king

 秋といえばジャズ、そこでテイラー・マクファーリンだ。もちろん日本初の単独公演です。大阪、東京でそれぞれ1回限りです。
 えー、日程は、
 2014年9月25日(木)@東心斎橋CONPASS
 2014年9月26日(金)@渋谷WWW
 more info : https://www.beatink.com/Events/TaylorMcFerrin/
 です。

 ビートインクから送られてきたメールによれば「テイラー・マクファーリン再来日公演に大注目の共演ドラマー、さらに東京公演のサポート・アクトが決定!」
 「今回の公演で日本人ドラマーとの共演を望んだテイラーからの熱いラヴコールに応えたのは、現在20代では右に出る者がいないと言われる若き超絶ジャズドラマー《石若駿》だ」「幼少期からドラムをはじめると、さっそくその才能をかのハービー・ハンコックからも認められ、弱冠15歳にして日本を代表するジャズ・トランぺッター日野皓正のクインテットのメンバーに抜擢されるなど、その実力は折り紙つき。2012年にはフジテレビ放送のアニメ『坂道のアポロン』のドラム演奏とモーションを担当し世間の注目を広く集め、昨年には石若駿Trio名義でのミニアルバムを発売、リズム&ドラムマガジンの“次世代”Jazz Drummer特集に取り上げられるなど、日本の新世代のJAZZを担うスーパー現役音大生である」
 「東京公演のフロントアクトには、現在その人気と認知度を飛躍的に高めている《fox capture plan》が決定。コンテンポラリー・ジャズとポスト・ロックの融合をコンセプトとし、昨年12月に発売した2ndアルバムが[JAZZ JAPAN AWARD 2013]アルバム・オブ・ザ・イヤーニュー・スター部門、さらに[第6回CDショップ大賞2014]ジャズ部門賞を受賞するなど空前の勢いに乗るピアノ・トリオ。前作からわずか半年でリリースされた最新作『WALL』もこれまでよりダンスロック色を強め、より広いジャンルのリスナーにリーチする仕上がりだ。ジャズをルーツにしながらもジャンルの垣根を越えた活躍をみせる2組が魅せる一夜にますます期待が高まる」

 エレキングもただいま、別冊エレキング『プログレッシヴ・ジャズ』を準備中。乞うご期待あれ。

DJ AGEISHI - ele-king

 大阪のDJ AGEISHIが今年還暦を迎えた。日本で最初のDISCOと呼ばれた「赤坂MUGEN」からキャリアをスタートし、過ぎる時代の中で数々のスタイルの変遷を重ねながら、いまだに一線の場で活躍を続ける日本が誇るリビングレジェンドをお祝いすべく地元大阪を始め各地で祝賀パーティが催されてます。
 東京では9/3青山ZEROで、そして9/5には12周年を迎えたばかりの中野HeavySick ZEROにて豪華な面々を迎えて開催されます。キャリアに裏打ちされたその素晴らしいプレイを是非現場にて体感して下さい。

■DJ Ageishi 生誕60年を祝してバースデーバッシュをDJ NORIホームパーティTreeにて、開催決定!

2014.9.3. WED
OPEN 22:00 / DOOR 2000yen(1d) / W/F 1500yen(1d)
Guest DJ:DJ AGEISHI (AHB pro.)
DJ:NORI(KONTACTO)、YUKI TERADA
more info
青山ZERO
https://aoyama-zero.com/

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■Luv&Dub Paradise
~DJ AGEISHI Happy 60th Birthday!!!!!!~

2014.09.05(fri)
@heavysick ZERO
OPEN&START/23:00
DOOR/2000YEN+1D
W.F/1500YEN+1D
DJ:DJ AGEISHI (AHB.pro)、DJ WADA (Co-fusion)、DJ NORI (TREE/gallery)、Ackky (journal)、KABUTO (CABARET)、Hagiwara (FAT BROS)、P-RUFF (radloop)、JYOTARO (BLACK SHEEP/LOCUS)、FUSHIMING(HOLE AND HOLLAND)、YAMADA(Luv&Dub Paradise)
more info
heavysick ZERO
www.heavysick.co.jp/zero/

Burial Hex - ele-king

 今年のはじめごろ、ブリアル・ヘックス(Burial Hex)が初めてLAでショウをおこなうとのことでEBMやミニマル・ウェーヴなんかのパーティをガンガン推している寝床から、近所のハコ、〈コンプレックス〉に観に行った。かなりキモかっこ良かった。90分近い、終始スーパー・ラウドなロングセットを飽きさせず……いや、途中のドローン・パートで一服していたけれども、充実したパフォーマンスであった。いったいどこからこんなに湧いてきたのか、ショウに群がるLAのゴス女子は不思議とメンヘラ感が薄い。カリフォルニアの気候とゴス、情熱的なラテン系女子とゴス、自然な調和をみせる光と影かな、などとゴスな衣装に包まれるたくさんの谷間やケツを目で追っていたから妙に満足しただけかもしらんが。

 話がだいぶ逸れた。アメリカ中西部のド田舎、ウィスコンシン州マディソンを拠点に活動する暗黒電子音楽家クレイ・ルビー(Cray Ruby)ことブリアル・ヘックスに僕はデビューから現在に至るまで毎度、黒くてぬるっとした感銘を受けている。ホラー・エレクトロニクスと形容されるクレイのサウンドはインダストリアル、儀式音楽、アンビエント、フリー・インプロヴ、サイケ・フォーク、ネオクラシカル、コズミック・シンセジス、ブラック・メタル、といったアンダーグラウンド・ミュージックに湧き出る黒い泉の水にディスコの油を加えて完成させたエリクサーである。その完璧な配合は錬金術師クレイにしかおこなえない。書いていることがだいぶ中2じみてるな。クレイいわくブリアル・ヘックス(埋葬された呪い)は地底深くに隠されたある種のエネルギー・サイクルであり、それはヒンドゥー教の宇宙論において循環するとされる4つの時期の最終段階、万物が破滅にいたる終末の状態を表すそうだ。カリ・ユガ(Kali Yuga)である。なんのこっちゃ。

 ブリアル・ヘックスのサウンドを単なる中2で終わらせないのは、そのオカルトな思想体系や芸術的探求心のズブッズブなドープさ、それにギリギリ悪趣味にならない完璧なバランスで成立する比類なきトラックの完成度にある。
 サイキックTVやメルツバウのリリースでもお馴染み、ノイズ/ゴス系大御所レーベル、〈コールド・スプリング(Cold Spring)〉から前回ココでレヴューした『惑わしの書(Book of Delusion)』に引きつづき、12インチや7インチ、テープなどのキラーなトラックだけを集めたコンピレーション・アルバム『心霊の護り(In Psychic Defense)』(同名タイトルの12インチも存在するので注意)が発売された。これがまた名曲揃いで、購入後にディグりがいのある音源だ。それに、毎度毎度僕のお気に入りの映画のシーンを持ってきては勝手にミュージック・クリップにしてやがるのも気になりやがるのだ。前作、『惑わしの書(Book of Delusion)』のタイトル・トラックではフェリーニのローマだし、

 今作に収録される“ハンガー”にいたっては僕もその昔自分のバンドのライヴで濫用していたマヤ・デレンの『ディヴァイン・ホースメン(Divine Horsemen)』だし! おまけにリリックはランボーの詩だし、

 ラストの“ザ・タワー”はデレク・ジャーマンの『セバスチャン』だし……

 このトラックは収録されなかったが、“ザ・ナイト”のリリックはリルケの詩だし、

 今作に収録される7インチにカットされたトラック“ファンタジー”はピュンピュン系のアシッド嫌いの僕でも聴き入るほどキモかっこいい名曲だ。ぜひダンスフロアで聴きたい。

 かつてのニノス・ドゥ・ブラジル(Ninos Du Brazil)のニコ・ヴァセラリとクレイのコラボレーションであったアート・インスタレーション、『I hear a shadow』の共鳴から連なる暗闇からのズンドコの誘いはこんな現代だからよく響くのかもしれない。CDなんで手に入りやすいと思います。

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