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1990年代後半にムーディーマンやセオ・パリッシュらによって押し広げられたテンポ・ダウンされたハウス・ビート。そのキックとキックの「間」には漆黒のサイケデリックが埋め込まれているかのようで、我々を排水溝に吸い込まれていく水のようにゆっくりと別の場所へと連れて行く。ザラついたサンプル同士が交錯し、幻聴のような効果を生む彼らのトラックは実験的でもあるのだけど、それ以上に官能的で、セオの霞がかかったような半覚醒状態のトロけ具合は本当に素晴らしいと思うし、ムーディーマンに至ってはエロとサイケは同義語みたいなものだろう。
そういえば今年の3月にロンドンでおこなわれた〈Red Bull Music Academy〉のトークショーに登場したムーディーマンことケニー・ディクソン・ジュニアは、まわりにはべらせたセクシーな黒人女性たちにヘアー・セットをさせたり、酒を作らせつつ「マザ・ファッキン!」を連発しながら喋りまくり、勝新的俺流な時空のネジれを発生させていた。しかし、何だったのだろうアレは......。
そしてムーディーマン(Moody名義)の新作「Ol'dirty Vinyl」は、その濃度にむせるようなジャケット・ワークに包まれて届けられた。内容はいつも以上にヴァラエティに富んでいて、タイトル曲の"Ol'dirty Vinyl"などは珍しく爽やかな雰囲気もありつつ「気分がいいと思ったらいつの間にかあの世だった」というような感じだし、"We Don't Care"はKDJ自身のVoがのるジャズ・ナンバーで、"No Feed Back"は歪みまくったギターがのたうつKDJ流ブラック・ロック。そして、彼らしいセクシーなハウス"It's 2 Late 4 U And Me"の後には、混沌とした電子音楽" Hacker"が待っているという具合だ。
ある意味、寄せ集め的な作品集なのだけど、最近それなりに洗練されていく傾向をみせていたことに若干不満を感じていた僕のような人間からしたら、この自由度の高い錯綜ぶりは大歓迎だ。さぁ我々をエロとサイケの奈落の一番深いところまで連れて行ってくれよ、KDJ。
オールドスクールなシカゴのエッセンスやアレやらコレやらをデトロイトのフィルターを通して再定義した俗に言うビートダウンの種子は様々な場所へと伝搬し、そのBPMと同様にゆっくりと、しかし確実にそれぞれの場所で独自の発展を遂げている。ドイツのソウルフィクション(Soulphiction)、モーター・シティ・ドラム・アンサンブル(Motor City Drum Ensemble)、ニューワールドアクアリウム(newworldaquarium)、イギリスのトラスミー(Trus'me)やロシアのヴァクラ(Vakula)(UKの〈Firecracker〉からリリースされるシングルが素晴らしい)などなど、エトセトラエトセトラ。ようするに国境を越え、それぞれがあちらこちらの地下で重心低めのディープなリズムを響かせているというわけだ。
そしてその影響力は巡り巡って、昨年ひっそりとリリースされた日本のモンゴイカ a.k.a. T.Contsuの12インチにまで及んでいたりもする。モンゴイカ(戸田真樹)とは、ヒップホップ・ユニットの降神をはじめとした〈Temple ATS〉のアートワークを手掛ける画家でありトラックメーカー。その彼が、自身の〈Close Eye Recordings〉から出した「KIMI EP」のローファイでスモーキーな4つ打ちには、やはり何処か日本的な叙情と孤独が忍び込んでいて、その事実がとても面白く思う。
このようにデトロイト・ビートダウンが拡散し、かつ各エリアで様々なヴァリエーションを見せるなかで、ドイツのSoulphiction及び彼の主宰するレーベル〈フィルポット〉は、もはやフォロワーという域を越えた存在になりつつある。ソウルフィクション(Michel Baumann)のアナザー・プロジェクトであるというミッシング・リンクスの前作「Who to Call」に収録さていれた"a Short History of..."は、強烈なバネをもった美しい野獣のようなファンクだったし、この新作の「Got A Minute」も削ぎ落とされた筋肉のようなビートが脈打っている。
ドイツから放たれたこれらの音は、本家とはまた異なる種類の緊張感を漂わせ、非常にシンプルでタイトだ。黒人音楽をサンプリングしてそれっぽく仕上げただけのフォロワーも多いけれど、リスペクトとコピーは別ものだし、ときにはリスペクトなんて言葉は忘れるべき。
ちょっと手前味噌なのだけど、僕がリミキサーとして参加した作品を紹介させていただきたい。HUMAN RACE NATION(以下HRN)から出たG.I.O.N.の「Echoes of Our Minds Pt.1」がそれだ。言うまでもなく、デトロイトから影響を受けつつ、そこから受け取ったものを独自に展開し活動している者は日本にも存在する。音楽ユニットG.I.O.N.として硬派なミニマリズムを追求するフジサワ・アツシとコシ・シュウヘイによるHRNもそのひとつ。
HRNは長野で活動しながらもドイツ経由でワールドワイドにヴァイナルをリリースするという、ローカリズムとグローバリズムを兼ね備えた日本では非常に希有なレーベルである。 今まで彼らは地元長野でデトロイトやドイツを中心としたアーティストを迎えたパーティーを行い、地道にコネクションを築いてきた。それは2007年のシングルでのフランク・ムラー、本作における元UR、ロス・ヘルマノスのメンバーのDJ S2ことサンティアゴ・サラザール、そして次のリリースでのDJ3000とレニー・フォスターのリミキサー起用にも繋がっている。一方そこにトラックス・ボーイズや岩城健太郎、d.v.dとしても活動するJimanicaや僕などの国内リミキサーも混ぜることにより、既出の4枚のヴァイナルはちょっとした異文化交流の機能も果たしてもいる。
「Echoes of Our Minds Pt.1」は昨年末にヨーロッパでリリースされ、G.I.O.N.のオリジナル、DJ S2 REMIX、僕の手掛けたREMIXそれぞれが、ベルリンのBerghainのレジデントDJであるMarcel Dettmannや、フランスの Syncrophone(Theo ParrishとかAnthony Shakirのリミックス盤を出している)のオーナーDidier Allyneらのチャートに入るなど高い評価をもらった。しかし、ヨーロッパで品薄となり、日本には極少数しか入荷されない状態で残念だったのだが、近々ディストリビューターを変えて再リリースされるとのこと(そんな理由もあり、出てから少し時間が経っている本作を敢えて紹介させてもらった)。そして間もなく「Echoes of Our Minds Pt.2」の方も出るようだ。
彼らとは今後も諸々関わっていく予定で、実際に現在進行中のプロジェクトもある。そういえば僕と彼らの最初の接点はというと、確かmixiのデリック・メイのコミュに僕がパーティの告知を書き込んだのを、HRNのフジサワくんが見てコンタクトをとって来たのがそもそもの始まりであった。ここはmixiとデリックに感謝するべきなのだろう。
〈A.R.T.〉〈B12〉に〈ラッシュ・アワー〉、〈プラネットE〉と、このところAS ONEことカーク・ディジョージオがリリース・ラッシュである。同じく90年初頭のデトロイト・リヴァイバル~インテリジェント・テクノを代表するアーティスト、B12が同名のレーベルを一足先にリスタートさせたのに続き、カークもかつて自身が運営していたA.R.T.を復活させたりと、何だかこの辺り盛り上がっている模様。一時期〈モワックス〉などでリリースしていた生ドラム再構築モノは封印し、完全にテクノ/ハウスへ舵を切っているものの、音自体は〈A.R.T.〉の頃の音というよりも、疾走するリズム+エレガントな上モノのコンビネーションの、昨今割りとよくあるデトロイト・フレイヴァーのテック・ハウスという感じのものが主だったりする。
そんななか、ドイツの良質なディープ・ハウスレーベル〈Mojuba〉のサブ・レーベルである〈a.r.t.less〉は、その〈A.R.T.〉とカール・クレイグの名曲"At Les"を掛け合わせたような名前からもわるように、恥ずかしいほどの初期デトロイトへの愛が丸出し状態だ。更にオーナーであるドン・ウィリアムス自身の「Detroit Black EP」からはじまる黒、赤、青のデトロイト三部作は、モロに初期〈トランスマット〉。とくに青盤は初期のカール・クレイグ、ひいてはインテリジェント・テクノであり、もうところ構わず「好きだ~!」と叫んでいるような1枚。
思えば当時のデトロイト・リヴァイバル~インテリジェント・テクノというのは、結局のところ初期のカール・クレイグのサウンドのコピーだった。例えばデリック・メイのラテンにも通じるようなバウンドするリズム感ではなく、それは 69名義で豪快な実験を繰り広げる以前のカール・クレイグ、ようするにPsyche名義での"Elements"や""Neurotic Behavior"などの音を指す。孤独で繊細で壊れやすく、思わず「詩的」なんていう恥ずかしい言葉がまるで恥ずかしいと思わなくなる程に、それは魅惑的な青白い輝きを放っていた。そう、色で言うとデリック・メイは赤で、カール・クレイグは青だ。
それにしても、このドン・ウィリアムスの「Detroit Blue Ep」は、何だかこちらが赤面するくらいの青臭さに満ちていて、これをどう評価するべきなのか正直僕にはわらない。しかし、カール・クレイグがPsycheで描いた音世界は、当の本人でさえもう作れない類いのものだと思うし、結局その後放置されたままになっているのもたしか。その先の音が知りたい。
DJ ネイチャーことマイルス・ジョンソン。またの名をDJ MILO。ネリー・フーパー、ダディー・G、3D、マッシュルームが在籍していたブリストルのDJチーム、ワイルド・バンチの中心人物である。82年から86年まで活動したこの伝説的DJチームは、その後のUKサウンドの核、つまりパンク~ニューウェヴの残響とレゲエのサウンドシステムとヒップホップの接点を体現した存在であり、解散後、ネリー・フーパーはSOUL II SOULを、そしてダディー・G、3D、マッシュルームはマッシヴ・アタックとして活動することとなる。一方のMILOはUKの喧噪と離れ、ニューヨークのハーレムで黙々と音を紡ぐこととなるのだが、それはなかなか世に出ることはなかった。しかし、元ワイルド・バンチという伝説に彼を閉じ込めるべきではないし、実際に彼の音楽はブリストルで得たものを更なる深みに向けて解き放ったものである。
そして今年、彼の12インチが日本の〈ジャジースポート〉から届けられた。この「Necessary Ruffness」と題されたヴァイナルに収録されたトラックは、いずれもディープ・ハウスよりもさらにディープでロウなハウスであり、そのくぐもった音質が独特の空間を生み出していて、それは意識しているのか無意識なのか、デトロイトのビートダウンやベルリンのシーンなどとも共振する類いのものになっている。そして、その音楽性は日本の〈DIMID〉から2003年にリリースされたMILOの初のアルバム『Suntoucher』(表記はDJ MIL'O)ですでに示されていた。
ここで個人的な話しを少々。2004年に出た僕のS as in Soul.名義のアルバムは、元々は〈DIMID〉から2003年に出る予定だったのだが、途中でA&Rが独立することとなり、それに伴い1年後に〈Libyus Music〉の第一弾としてリリースされた。当時の〈DIMID〉~現〈Libyus Music〉の竹内君とS as in Soul.のリリースの打ち合わせしている時、このMILOのアルバムを出すべきかどうかを相談されて、僕は絶対出すべきだと答えたのを憶えている。そのことがどれだけの影響したのか知らないが、あのアルバムが世に出るキッカケを僅かでも与えることが出来たのならば、それは非常に光栄なことだ。
僕としては、現在のマッシヴ・アタックよりもMILOの音のほうが遥かに魅力を感じるのだけれど、そんな比較など本人からしたら迷惑な話しでしかないだろう。この12インチの後に控えているというニュー・アルバムを楽しみに待つのみだ。
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MAYNARD FERGUSON
PAGULIACCI-JOE CLAUSSELL REMIX
COLUMBIA (US)
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HIRAGEN from TYRANT『CASTE』
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SEMINISHUKEI PRESENTS『WISDOM OF LIFE』»COMMENT
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STARRBURST『INSTRUMENTALS』
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ROCKASEN『WELCOME HOME』
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HIKARU『Sunset Milestone』
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KIRIMANJARO
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DJ Holiday『The music from my girlfriend's cnsole stereo』
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Shhhhh『Ritmo del baile futuros』
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DJ ASAMA『Spread Pure Darkness』
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VIKN『the 6 MILLIONDOLLAR MAN』
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5月に入り、ニューヨークは真夏模様になったり寒くなったりはっきりしない天気が続く。私は、カフェの近くにある公園、マカレン・パークでときどき運動をしている。エクササイズ・クラブというチームを組み、2人、4人、あるときはひとりで、時間があう人たちが集まってしたい運動をするという、健康的な集まりである。私はランニング、ストレッチ、バドミントンを専門にしている。この日はとても天気がよく、最高のエクササイズ・クラブ日和だった。日本とは違う種類だが、桜が満開で、ベンチに座っているおじいちゃんおばあちゃんが微笑ましい。週末はピクニックをする人、BBQをする人、読書をする人など、てんやわんやの人ごみになるのだが、エクササイズ・クラブはだいたい平日の昼間なので、人はそんなにいなく、運動するにはちょうど良い。
i-Podを聴きながら、ランニングする人、ストレッチをする人、ドッチボールをするキッズなどを横目に見ながら、今日は5マイル、次は7マイルなど、どんどん距離を伸ばしていき、完走したときの爽快感に浸る。最高に良いショーをみた後の爽快感と似ている。一昨年までは、向かい側のマカレン・パーク・プール(プールといっても長年使われていない跡地)で、夏のフリー・コンサートが行われていた。MGMT、ヤーヤーヤーズ、ソニック・ユースなどたくさんのバンドがプレイして、毎週通っていたが、いまでは本当のプールに生まれ変わるべく建設中だ。
こう書くと、なんて健康な日々を過ごしているのかと思われるが、実はほとんど毎日が夜遅くまで働き、ライヴハウス通い。先日は、〈パリ・ロンドン・ウエスト・ナイル〉というパフォーマンス・スペースのクロージング・パーティに朝の3時頃までいた。うちのカフェから2ブロック程先にある一角に、〈グラス・ランズ〉、〈ディス・バイ・オーディオ〉、〈ウエスト・ナイル〉という3つのライブハウスが並んでいる。そのなかの〈ノン・プロフィット・スペース〉と〈ウエスト・ナイル〉が、先日4/13に幕を閉じた。リースが切れたので、グリーン・ポイントに引っ越すのだそうだ。https://www.shinkoyo.com/parislondon/
![]() 〈ウエスト・ナイル〉のZeljko |
平日の夜だからといって、そんなに人はいないだろう、と思っていたのだが、なんと会場の前に人が溢れている。なかを覗くと、人ごみのなかで、エクスペリメンタルなロック・バンドがごりごりにパフォーマンスしている。そこで、この場所を仕切っているZeljkoを捕まえたので、インタヴューを慣行。
Ele-king: 今日でこの〈ウエスト・ナイル〉がクローズするそうですが。
Zeljko:そう、今日がラスト・ナイトなんだ。来てくれてありがとう。
Ele-king:まずは、この場所〈ウエスト・ナイル〉を紹介して下さい。
Z:ここはアーティストが住み、仕事をする、〈ノン・プロフィット・スペース〉。5~7人が集団が活躍している。〈ウエスト・ナイル〉は、2006年ぐらいにラフにはじまって、ここに引っ越して来たときは、バスルーム以外は壁も何もなかったんだ。コステス、トニー・コンラッド、ノウティカル・アルマナック、ライト・アサイラム、ブラック・パス、アキ・オンダ、ヴァンピリアなど数えきれないバンドがプレイしてきたよ。「https://www.shinkoyo.com/parislondon」からArchiveに行くとリストがみれるよ。
Ele-king:ショーはどれぐらいの割合でやっているのですか。
Z:だいたい1週間に1~2回、1ヶ月に1~2回の時もあるけど。ショーは口コミとeメール・リストのみ。
Ele-king:今日プレイしているバンドを紹介して下さい。
Z:スケルトンズ、ウィッシュ、ミラーゲイト、ザ・ガマット、フレディナイトライカー、ザ・ナスティズ。僕は、ウィッシュって、ヴォーカルありの、エピック・ダンス・ミュージックなバンドをやっているよ。アニマル・コレクティブをもっとダンシーにしたような感じ。スケルトンズとミラーゲートは友だちで、Shinkoyo(僕らのアートコレクティ))のパートナーでもある。ナスティズは、火曜日に公式に解散する前に、ここでラスト・ショーをして、ザ・ガマットは隣のグラスランズでサウンドを担当しているデリックのバンド。
Ele-king:次のスペースは、いままでと同じような活動をするつもりですか? 名前は同じですか? またいつ頃からはじめるのでしょうか?
Z:次はグリーン・ポイントに引っ越すんだけど、ここは住居兼でなく仕事場だけにしたい。次の場所は、〈ノース・ウエスト・ナイル〉とでも呼ぼうかと思っている。僕らには、コラボレート・グループがカリフォルニアのオークランドにもいて、同じようなことをやっている。彼らのスペースは〈イースト・ナイル〉っていうんだ。ショーは、5月ぐらいからやっていきたいね。
Ele-king:ウエブ・サイトには、「paris london france tokyo berlin texas los angeles georgia cleveland」とありますが、これが〈ウエスト・ナイル〉の正式な名前ですか?
Z:僕らは最初に〈パリ・ロンドン・ニューヨーク・ウエストナイル〉って付けたんだけど、ときどき別の都市の名前を適当に当てて遊んでた。ファッション・ブランドのフラッグ・シップ・ストアがある都市名を適当に並べて遊んでたんだけど、ブランド名はなくして、都市名だけにしたりとか。基本的にジョークで、僕らのスペースのフレキシブルさを表していると思う。
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次の日はライアーズのショーへ。ニューヨークは〈バワリー・ボールルーム〉と〈ミュージック・ホール・オブ・ウィリアムスバーグ〉の2回の公演。今回は〈バワリー〉のほうへ行く。
![]() 新作が話題のライアーズ |
ニュー・アルバム『Sister World』を引っさげてのツアーは、ソールド・アウト。ロスアンジェルスとプラハでレコーディングされたというこのアルバムは、前回までのライアーズのレコードと同様に、超現実的で恐ろしい雰囲気を醸し出しているが、それと当時にいまにも雷が落ちてきそうな、ダークで不思議なテンションのバランスを保っている。このテンションが、いかにもライアーズだ......とライヴを観てあらためて思った。
決して張っちゃけ過ぎず、一歩寸前のぎりぎりのところを上手く綱渡りしている。ライヴ・セットも5人にパワーアップして、いつものように楽器を取り替えたり、オーディエンスとのキャッチボールもきちんとこなし、知的なエナジーに満ちあふれていた。後ろにいた女の子は、全部歌詞を覚えていてずっと一緒に歌っていた。
『Sister World』が完成したと同時にアンガスもベルリンからLAに移り、3人が同じ都市に暮らすようになった。観客のなかには、元々ブルックリンでスタートした同じ仲間のバンド、ヤーヤーヤーズのメンバーもいた。LAとブルックリン、いまアメリカのインディ・シーンでいちばん気になるふたつの都市である。共演はどちらもFol Chenという、カリフォルニアのバンドで、US/ヨーロッパ・ツアーはずっとライアーズと一緒にツアーを回っている。メンバーのひとりは、ライアーズのサポートメンバーとしてプレイしていて、アンガスAとエアロンと一緒の学校に通っていたらしい。〈Asthmatic Kitty〉から作品を出している。
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カフェからベッドフォードアベニューを南に下がり、ブロードウェイを右に曲がると、『カプリシャス・マガジン』というフォト雑誌のスペース、ギャラリーがある。4月23に開かれたそのアート・オープニングに行ってきた。
アンドリュー・ロウマンとニコラス・ゴットランドの〈スモーク・バス〉というショーで、日本でもよくショーをしている、アーティストのピーター・サザーランドがキュレーターを務めている。
ギャラリー関係者や、ミュージシャン、アーティスト、うちのカフェのお客さんもたくさんいて、外もなかもわやわやしている。フロントとバックに部屋がふたつある、ゆったりしたギャラリー兼仕事スペースだ。この展示は、キャンプ、自然、探検がテーマで、フレッシュ・エア・ファンドという非営利団体のベネフィット・ショー。作品をひとつひとつに物語を思い浮かべ、どんな状況でこの写真が撮られて、ここに飾られるまでの過程を考えたり、リラックスした、開放感溢れる雰囲気に包まれていく。音楽もそうだが、アートで人の気持ちを動かす事ができるのは素晴らしい。こういう風に、音楽やアートをしっかり堪能し鑑賞できるような感覚を養っていきたい。
5月5日、日本ではこどもの日だが、アメリカではCinco de mayo(シンコ・デ・マヨ)という、アメリカ人にもっとも良く知られている祝日である。スペイン語で「5月5日」の意味で、メキシコの祝日なのだが、メキシカンがたくさん住んでいるここアメリカでは、すでにアメリカの祭日になっている。メキシカン・ビール、テキーラ、サルサ、タコス、トルティーアなどを食べて飲んで、お祭り騒ぎをするのだが、私たち日本人や他の人種の人たちも、ここに住んでいると関係なくそれに便乗して、マルガリータなどを飲んでお祭り騒ぎをする。
![]() ライトニング・ボルトのベースのブライアンのバンド、ウィザード |
![]() 日本人女性によるハード・ニップス! |
![]() Nobody can stop girls! |
ニューヨークにいると、アイルランドのセント・パトリックスディ、中国人の旧正月、ドイツ人のオクトーバー・フェストなど、いろんな民族の祝日をもれなく体験できる。ちょうどこの日は、ハード・ニップスのCDリリース・パーティで、チーズ・バーガー、ウィザード(ライトニングボルトのメンバー)、エイリアン・ホエール(USA イズ・ア・モンスター、タリバム!、ネッキングのメンバー)が共演。ハード・ニップスは、グリッター仕様のCDリリース・パーティという事もあり、ラメいっぱいの華やかなステージを披露した。
かなり盛り上がっていたが、バンドが変わるごとに観客がごっそり変わり、それぞれのバンドの個性が面白かった。ウィザードは、ライトニング・ボルトのベースのブライアンのバンドで、このバンドではドラムを叩いている。かなり久しぶりのショーで、バンドも観客も大興奮。彼らもライトニング・ボルトと同じくフロアでプレイした。チーズ・バーガーは元々プロヴィデンスの3ピース・バンドだったのが、いまでは5人に増え、この日はオリジナル・メンバー、ヴォーカリストのJoeが飛び入り参加。このバンドは、ビール缶を投げるのがお決まりのようで、観客は容赦なくビール缶をステージに投げ、最後のほうでは、会場からさっさと電源を切られ追い出されていた。ここでもやはり「ハッピー・シンコ・デ・マヨ!!」と叫んでいた。
ここ数年はいろんな理由が重なって海外に行っていない。最後に行った海外が3年前の南シナ海の島で、ちなみにアメリカに最後に行ったのは......2006年の1月だ。われわれ一行は税関で厳密な審査に遭うばかりか何人かは取調室まで連れて行かれ、非常に不快な思いをしたものだった。9.11以降に初めてアメリカに行ったときには指紋をスキャンされ、顔写真を撮られ、そのときもずいぶんと不快な思いをしたものだったが、そういえば9.11以前でもデトロイトの空港でバッグの中身をすべて調べられたことがあった。たしかにザ・ブラック・ドッグが告発するように、いまやブライアン・イーノの『ミュージック・フォー・エアポーツ』の楽天性など70年代という過去の絵空事、虚構である。
ザ・ブラック・ドッグはUKテクノのベテランだ。1989年、当初3人組のプロジェクトとして登場したザ・ブラック・ドッグは、〈ワープ〉から2枚のアルバムと〈ジェネラル・プロダクションズ〉から1枚のアルバムを出すと、プラッド(エド&アンディ)とザ・ブラック・ドッグ(ケン・ドウィン)のふたつに分裂した。プラッドはその後、周知のように〈ワープ〉を拠点としながらビョークとの共作や映画音楽などにもにも挑戦するなど順調に活動を続け、いっぽうザ・ブラック・ドッグはよりアンダーグラウンドで、よりアーティな道を選んだと言える。それは、もともとテクノの匿名性を強く意識して、ミステリアスな存在を望んだザ・ブラック・ドッグらしいあり方だ。彼らが1995年に〈ワープ〉からアルバムを出したとき、イギリスの雑誌『The Face』で顔は出させずにインターネットのチャットのみで取材を受けた話は有名で、それほどまでに彼ら、いや、彼(ケン)は匿名性を望んだ。また、分裂後に出した1996年のアルバム『ミュージック・フォー・アドヴァーツ(宣伝のための音楽)』が良い例だが、ザ・ブラック・ドッグは、プラッドにはない批評性(トゲ)を持っている。
本作『ミュージック・フォー・リアル・エアポーツ』は、分裂後のアルバムとしては5枚目となる。この2~3年、ザ・ブラック・ドッグはふたたび評価を高めている。2007年にはオリジナル・メンバー時代の音源を編集した『ブック・オブ・ドグマ』を発表しているが、〈ダスト・サイエンス〉を主宰するマーティン&リチャード・ダストが加入してからの『レディオ・スケアクロウ』(08年)や『ファーザー・ヴェクサションズ』(09年)といったアルバムは、聴き応え充分のデトロイティッシュなテクノ・サウンドで満ちている。ここ数年のあいだで、ザ・ブラック・ドッグは自らの音楽性をあらためて定義したと言えるだろう。何枚かの魅惑的なシングルも記憶に新しい――「フルード」(07年)、ロバート・フッドをフィーチャーした「デトロイトvsシェフィールドEP」(08年)、オウテカのリミックスを収録した「ウィ・アー・シェフィールドEP」(09年)等々......。
『ミュージック・フォー・リアル・エアポーツ』はこの2~3年の作風とは趣を異にしている。メロウでダンサブルだった『レディオ・スケアクロウ』とも違うし、IDMスタイルを美しく豊かに展開した『ファーザー・ヴェクサションズ』とも違う。これはダーク・アンビエントの作品だ。このアルバムでザ・ブラック・ドッグは、未来への苛立ちをスケッチしているようだ。いわゆるディストピア・ミュージックである。ダブステップからの音楽的な影響を聴き取ることもできる。収録曲の半分はアート・インスタレーションのために作られたというが、"偽情報デスク""パスポート・コントロール""この線の向こう側で待て""空席計算""遅れ""睡眠遮断"......トラック名が暗示するように、悪夢としての空港体験が描かれている。
車の音、ざわめき、音の断片の集積とともにわれわれは空港の「出発」のラウンジに座って、曇った空を眺めているようだ。ザ・ブラック・ドッグのもうひとつの拠点であるシェフィールドの〈ダスト・サイエンス〉は、同郷のキャバレ・ヴォルテールを精神的支柱としながら自分たちの作品とともにデトロイト・テクノ(アンソニー・シェイカー、ダン・カーティン等々)やリチャード・H・カークの作品も発表している。『ミュージック・フォー・リアル・エアポーツ』はブライアン・イーノというよりはキャバレ・ヴォルテールに近く、デトロイト・テクノというよりもブリアルやコード9と同じ匂いを持っている。
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