「ZE」と一致するもの

DUBKASM - ele-king

 ブリストルを拠点に活動するDJストライダとディジステップによるレゲエ/ダブのデュオ、ダブカズムが2月に来日ツアーを行う。2013年に発表された“ヴィクトリー”は、ダブ界の重鎮ジャー・シャカやダブステップのパイオニア、マーラにもプレイされ、多くの人々に愛されるアンセムとなった。去年リリースされたマーラによるリミックス・バージョンも、発売後すぐにソールド・アウトになるほどの人気ぶりだ。

Victory - Dubkasm (Mala Remix)

 世界各地域において独自のシーンを持つサウンドシステム文化において、グローバルな広がりはもちろんのこと、現地のミュージシャン同士の繋がりを見るだけでも心が踊るものだ。テクノ・シーンでも評価される〈リヴィティ・サウンド〉のペヴァラリスト、ダブステップやグライムのシーンで活躍するカーン&ニーク、スミス&マイティとして多くのクラシックを生み出したロブ・スミス。日本でも馴染み深い彼らは、各々が少しずつ異なったフィールドに身を置いているものの、ブリストルというひとつの街のなかで実に有機的な関係性を築いている。

 そのなかで重要な役割を果たしているのがダブカズムのふたりだ。ブリストルにみずからのスタジオを構え、自分たちのプロダクションに専念するだけではなく、他のプロデューサーたちとも積極的にコラボレーションを続ける彼らは、ブリストルのハートのような存在なのかもしれない。2014年に発表された“マイ・ミュージック”の音楽とビデオで描かれるのは、ブリストル、ひいては他の街のミュージシャンたちとダブカズムの繋がりだ。テクノロジーの発達により、個人作業の可能性がどこまで拡張される現在。そんな時代においても、素晴らしい音楽は人々が交差する「場所」からやってくることを、彼らは思い出させてくれる。

 ツアーは2月5日からはじまり、東京、京都、福岡、相模原、札幌の5都市をダブカズムが巡る。東京公演ではロブ・スミスことRSDもプレイする予定だ。近くの会場でブリストルのハートを心して聴こう。

'My Music' - Dubkasm meets Solo Banton (Feat. Buggsy)

Dubkasm( from Bristol, UK)

DJ StrydaとDigistepは、15才の頃に地元ブリストルで体験したJah Shakaのセッションで人生を変えられ、サウンドシステム文化に没入していく。以降、20年以上に渡りトラック制作/ライヴ&DJ/ラジオ番組などでシーンに関わり続けている。そのトラックはJah Shaka、Aba Shantiらのセッションでも常連で、昨年リリースの「Victory」はここ日本でもアンセムと化している。09年に発表したアルバム『Tranform I』は高い評価を受け、全編を地元の盟友ダブステッパーたちがリミックスしたアルバムも大きな話題となった。最近ではMalaやPinch、Gorgon Soundらとの交流も盛んで、ダブをキーにした幅広いシーンから厚い信頼を獲得している。2016年2月、BS0の第2弾として待望の初来日を果たす。


Millie & Andrea - ele-king

  現代のエレクトリック・ミュージックを代表するレーベルのひとつ、UKの〈モダン・ラヴ〉に所属するアンディ・ストットとデムダイク・ステアのマイルズ・ウィテカーによるプロジェクト、ミリー&アンドレアの来日公演が決定した。
2014年のアルバム『ドロップ・ザ・ヴァウェルズ』はインダストリアルかつ、ふたりのジャングルのバックグラウンドもかいま見える傑作。そのリリース後にアンディとデムダイクは来日ツアーも行ったものの、ミリー&アンドレアとしてステージに上がることはなかった。
この約2年の間にも数々のリリースでシーンを沸かせてきたふたりが、今回の来日でどのようなライヴ・セットを披露するのかに期待しよう。東京公演にはヤジとハルカによるツイン・ピークスや、国内でのライヴは久しぶりのエナ、独自のテクノ/ノイズ観を探求するコバらが出演。

root & branch presents UBIK
Millie & Andrea

日程:2016年2月26日金曜日
会場:東京 代官山 UNIT
時間:Open/ Start 23:30
出演:
Millie & Andrea (Modern Love, UK) Live
Twin Peaks (Future Terror, Black Smoker) 3 Hours Set
ENA (7even, Samurai Horo) Live
Koba (form.)
料金:¥3,500 (Advance) 1.23 sat on SALE!!
Information: 03-5459-8630 (UNIT)
https://www.unit-tokyo.com/
Ticket Outlets:
PIA (287-002), LAWSON (70967), e+ (eplus.jp), diskunion CLUB MUSIC SHOP (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, JET SET TOKYO, DISC SHOP ZERO, clubberia, RA Japan, UNIT

【Millie & Andrea 大阪公演】
日程:2016年2月27日土曜日
会場:大阪 心斎橋 CIRCUS
出演:Millie & Andrea (Modren Love, UK)
more acts to be announced!!
時間:Open/ Start 23:00
料金:¥2,500 (Advance), ¥3,000 (Door)
Information: 06-6241-3822 (CIRCUS)
Ticket: https://peatix.com/event/141308


Millie & Andrea (Modern Love, UK)


2008年に結成されたMILLIE & ANDREAは、MODERN LOVE傘下のヴァイナル・レーベルDAPHNEからハンドメイド仕様ヴァイナルを2008年から2010年の間にゲリラ的に限定リリースして、カルトな話題を集めた。作品をリリースする度にその評価を拡大させ続けているANDY STOTTは、2014年11月にリリースした『Faith In Strangers』でポスト・インダストリアル・ブームを凌駕する充実度と多面性を以て圧倒的存在感を示した。MILES WHITTAKERは、DEMDIKE STAREで幽玄的なインダストリアル・サウンドの美学を追究、多くのリスナー層に訴求するその普遍性を兼ね備えた作品は世界中で賞賛されている。2014年初頭、500枚限定ヴァイナルでリリースされ即日完売となった最新ベースサウンド~トラップに挑んだ作品「Stage 2」で更なる注目を集めた。同年4月には満を持してアルバム『Drop The Vowels』をリリースした。制作に2年の歳月を掛けたこのアルバムは、彼等の飽くなきビートの追求が結実した傑作として、ダブ~ミニマル~ベースミュージック~インダストリアルを通過した孤高のストリート・ベース・サウンドの金字塔として大きな話題となった。多忙な個々の活動の為、中々実現しなかったMILLIE & ANDREAとしての超レアなライヴ・セット、お見逃しのない様に!

ENA (7even, Samurai Horo)

Drum & Bassから派生した独自な音楽の評価が高く、ジャンルを問わないTop DJからのサポートを受け、Resident AdvisorのPodcastに自身の曲を中心としたMixを提供。多数のレーベルからリリースを重ねると同時に、楽曲のクオリティの高さからミキシング/マスタリングの評価も高く、様々な作品にエンジニアリングでも参加。7even Recordings, Samurai Horoなどヨーロッパを中心に多数の作品をリリース。
https://ena-1.flavors.me/

Twin Peaks (Future Terror, Black Smoker)

Black Smoker RecordsのYaziとFuture TerrorのHarukaの友情に基づいたコンビ。様々な手法、機材を導入したそのセットはDJとライブのハイブリッド。それぞれの音楽的な背景を活かしてはいるが、どちらのDJともかけ離れた世界観を提示。

Koba (form.)

線の細いキック、マシンノイズが混じったハードウェア産ベースライン、硬質なハイハット、ダブルアクションのスネア。徹底したマテリアルの配置と、その裏側から大きくうねり次第に厚みを増していくグルーヴに抱き合わせた「緊張感」と「高揚感」を投げ込むDJ / Producer。「温度」に固執した楽曲の選定は、ミニマルミュージックの根底に在る「変化に伴うリズムの層と層の浮き沈み」を簡潔に提示し、そこにオリジナルの素材を組み込む事で確立するサウンドTechno / Dubの解釈を広義に着地させる。2010年より、音楽行為において「演奏」に到達するまでの着想を様々な媒体でコミュニケートする極建設的DJレーベル「form. (フォーム)」を展開。翌2011年には、レーベル初のリリースとなるMIX CD「Thought to Describe」を発表。自身のダブプロダクトを再認識する為のライブレコーディングをコンポジットした。現在は「form.」の企画・運営と、「SOLISTA」にてレジデントDJを勤める。
www.soundcloud.com/koba-form

Loe(SPECTRUM) - ele-king

SPECTRUMらしい10曲:2015

Swindle & Flava D来日公演 - ele-king

 2015年にリリースされた『PEACE,LOVE & MUSIC』で、堂々と新たな一歩を踏み出したスウィンドル。同作は自身のルーツのひとつであるグライムを軸に、ジャズ、ファンク、ワールド系の音までも取り込んだ秀逸な1枚だ。あの壮大な音絵巻をDJでどうやって披露するのか、期待して待ちたい。ともに来日するフレイヴァDのストリート感覚が全面に出た、UKの現在を体現するかのようなセットにも要注目。さらに、東京公演にはふたりが所属するレーベル〈Butterz〉の創設者、イライジャ&スキリアムの出演が急遽決定。UKアンダーグラウンド・シーンを先導するクルーを体感できる貴重な一夜となるだろう。
 スウィンドルとフレイヴァDは東京、名古屋、大阪の3都市をツアーする予定。パーツ―・スタイル、沖野修也、クラナカなど、各公演には強力なゲストDJたちが集う。

SWINDLE (Butterz / Deep Medi Musik / Brownswood, UK)
グライム/ダブステップ・シーンの若きマエストロ、スウィンドルは幼少からピアノ等の楽器を習得、レゲエ、ジャズ、ソウルから影響を受ける。16才の頃からスタジオワークに着手し、インストゥルメンタルのMIX CDを制作。07年にグライムMCをフィーチャーした『THE 140 MIXTAPE』はトップ・ラジオDJから支持され、注目を集める。09年には自己のSwindle Productionsからインストアルバム『CURRICULUM VITAE』を発表。その後もPlanet Mu、Rwina、Butterz等からUKG、グライム、ダブステップ、エレクトロニカ等を自在に行き交う個性的なトラックを連発、12年にはMALAのDeep Mediから"Do The Jazz"、"Forest Funk"を発表、ジャジーかつディープ&ファンキーなサウンドで評価を決定づける。そして13年のアルバム『LONG LIVE THE JAZZ』(Deep Medi)は話題を独占し、フュージョン界の巨匠、LONNIE LISTON SMITHとの共演、自身のライヴ・パフォーマンスも大反響を呼ぶ。14年のシングル"Walter's Call"(Deep Medi/Brownswood)ではジャズ/ファンク/ダブ・ベースの真骨頂を発揮。そして15年9月、過去2年間にツアーした世界各地にインスパイアされた最新アルバム『PEACE,LOVE & MUSIC』(Butterz)を発表、新世代のブラック・ミュージックを提示する。

Flava D (Butterz, UK)
名だたるフェス出演や多忙なDJブッキングでUKベースミュージック・シーンの女王とも言える活躍を見せるFlava Dは2016年、最も注目すべきアーティストの一人だ。
幼少からカシオのキーボードに戯れ、14才からレコード店で働き、16才から独学でプロデュースを開始。当時住んでいたボーンマスでは地元の海賊放送Fire FMやUKガラージの大御所、DJ EZの"Pure Garage CD"を愛聴、NasやPete Rockにも傾倒したという。2009年以降、彼女のトラックはWileyを始め、多くのグライムMCに使用され、数々のコンピに名を残す。12年にはグライムDJ、Sir SpyroのPitch Controllerから自身の名義で初の"Strawberry EP"を発表、13年からは自身のBandcampから精力的なリリースを開始する。やがてDJ EZがプレイした彼女の"Hold On"を聴いたElijahからコンタクトを受け、彼が主宰するButterzと契約。"Hold On/Home"のリリースを皮切りにRoyal Tとのコラボ"On My Mind"、またRoyal T、DJ Qとのユニット、tqdによる"Day & Night"等のリリースで評価を高め、UKハウス、ガラージ、グライム、ベースライン等を自在に行き交うプロダクションと独創的なDJプレイで一気にブレイクし、その波は世界各地へ及んでいる。

ELIJAH & SKILLIAM (Butterz, UK)
UK発祥グライムの新時代を牽引するレーベル/アーティスト・コレクティブ、Butterzを主宰するELIJAH & SKILLIAM。イーストロンドン出身のふたりは05年、郊外のハートフォードシャーの大学で出会い、グライム好きから意気投合し、学内でのラジオやブログを始め、08年にGRIMEFORUMを立ち上げる。同年にグライムのDJを探していたRinse FMに認められ、レギュラー番組を始め、知名度を確立。10年に自分達のレーベル、Butterzを設立し、TERROR DANJAHの"Bipolar"でリリースを開始した。11年にはRinse RecordingsからELIJAH & SKILLIAM名義のmix CD『Rinse:17』を発表、グライムの新時代を提示する。その後もButterzはROYAL T、SWINDLE、CHAMPION等の新鋭を手掛け、インストゥルメンタルによるグライムのニューウェイヴを全面に打ち出し、シーンに台頭。その後、ロンドンのトップ・ヴェニュー、Fabricでのレギュラーを務め、同ヴェニューが主宰するCD『FABRICLIVE 75』に初めてのグライム・アクトとしてMIXがリリースされる。今やButterzが提示する新世代のベースミュージックは世界を席巻している!


TOYOMU - ele-king

2015年音楽まとめ日記

Sophie - ele-king

 UKガラージのコンテンポラリーな王道を再定義したディスクロージャーのブレイクをピークに、一連のUKベース・シーンのメインストリーム進出もそろそろ幕を引きそうな気配となっていますが、さて、文化系かつ進歩的ポップ・ミュージック愛好家のみなさま、果たして次はどこを拠り所にお過ごしでしょう。全世界のDQNを巻き込んで猛威を奮いつづけるEDMの圧倒的パワーを目の当たりにして、もはや行き場を失って呆然とする……なんて方がいらっしゃらないかと、余計な心配も募るわけです。ナードかつギークではあるけれど、根本的に苦悩のない僕みたいなタイプは、正直なところジェイムス・ブレイクが歌いはじめたあたりから脱線気味で、後のポスト・ダブステップ〜IDM再興にしても、脇道のインダストリアル、アンビエント、グライムにしても、どうにもシリアスな成分が多すぎて馴染めないと思ってきたわけです。

 そんな折、個人的にもえらくハマったのが、2014年から話題となっている〈PCミュージック〉というネット・レーベルを中心に盛り上がる、90’sレトロ・フューチャリスティックなエレクトロ・ポップ・ミュージック、俗称“バブルガム・ベース”です。その名の通り、風船ガムのようにカラフルで甘く刹那的(つまり俗っぽくキャッチーで安っぽい)ユーロ・ポップと、10年代のベース・ミュージックのマナーが意図された音楽ということで、かなり絶妙なタグ付けではないかと思います。

 A.G.クックの主宰するこの〈PCミュージック〉については過去に日本語のテキストもいくつか出ているので省略させてもらいますが、そのA.G.クックの盟友であり、シーンの象徴的アーティストであるソフィーが、ついにデビュー・アルバム『プロダクト』をリリースしました。

 2013年にグラスゴーのUKベース・ミュージック名門〈ナンバーズ〉からリリースしたセカンド・シングル『ビップ/エル(BIPP/ ELLE)』のヒットで注目を集めたソフィーは、サミュエル・ロングによるソロ・プロジェクト。当初は素性がよくわからず、アーティスト名と女性ヴォーカルを起用したサウンド、モデルと思われる女の子をつかったビジュアル・イメージを使用するために、女性アーティストと思っていた人が多かったよう(もちろん意図的な仕掛け)ですが、20代の男性アーティストです。

 古いWindows内蔵のFM音源(もしくはエミュレータなのかな?)を使用して制作されたと思われる、不協和で歪んだエレクトロ・サウンドと、異常にピッチを上げられ女性ヴォーカルの組み合わせで展開される彼のポップ・ミュージックは、とにかく記名性が高くキャッチー。つづく2014年のグリッチ・ヒップホップなシングル「レモネード」(※今年になって米マクドナルドのCMにも採用)も話題となり、前述のA.G.クックとのユニットQTで〈XL〉からリリースした「ヘイ・QT」のヒットを受けて、メインストリームのミュージック・シーンでも注目を集めました。ここからのスピード感は流石に10年代という展開。ディプロのフックアップを受けて、なんとマドンナのシングル曲“ビッチ・アイム・マドンナ(Feat. ニッキー・ミナージュ)”を共同プロデュース。さらにチャーリーXCXの次回作にもプロデューサーとして参加が決定しており、相当な変化球ながら、一躍売れっ子プロデューサーの仲間入りを果たしそうな勢いとなっています。また日本では、安室奈美恵の最新アルバム『_genic』に収録の“B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU”の楽曲プロデュースを手がけているというトピックも面白いですね。

 余談になってしまいますが、〈PCミュージック〉界隈のアーティストの嗜好性とサウンドの親和性から期待するに、久しぶりに日本と英米のポップ・カルチャーがリンクした盛り上がりの芽があるかもしれないですね。ソフィーやA.G.クックは、じつは〈マルチネ〉からリリースしているボーエン(bo en)やケロケロボニトのメンバーとは同じ芸術大学の友人同士だったようで、相当にコアなJポップ(とくに中田ヤスタカ周辺)マニアが集まっていたご様子。QTのコンセプトには明らかにPerfumeの影響があるだろうし、先日は〈PCミュージック〉のダックス・コンテンツがSekai No Owariをリミックスするなど、アーティスト同士の交流が急速に具体化してきている。ライアン・ヘムズワースやポーター・ロビンソン、スカイラー・スペンスあたりのポスト・インターネット世代のアーティストによる、Jポップ・カルチャーに対するポジティヴな評価というのは、日本側の視点からするとファンタジーではあるのだけれども、たしかにEDMのような圧倒的なマッチョイズムへの抵抗手段として、中田ヤスタカの方法論はパーフェクトに映るのかもしれない。「カワイイ」みたいなのがキーワードになるのは、HCFDM(ハッピーチャームフールダンスミュージック)のときといっしょだし、結局、日本人が得意なのはそこだよねと思います。


 さて、話を戻して、ソフィーのアルバム『プロダクト』。これまでにリリースされたシングルに収録された“レモネード”“ビップ”“ハード”“エル”に、新曲4曲を収録したシングル・コンピ的内容の作品ということで、正直なところ何か新味があるわけではないのだけれども、媚もない、これまでのサウンドとヴィジュアル・コンセプトが貫徹された内容。つまりエッジは充分すぎるほど効いている。ポップ・ナンバーとしては新曲“ジャスト・ライク・ウィ・ネヴァー・セッド・グッバイ”が彼の関連作の中でもトップクラスの好曲だけど、〈ナンバーズ〉からのリリースにふさわしい、ベース・ミュージックらしいグルーヴを成立させたヒップ・ハウス・チューン“Vyzee”も人気を呼びそうですね。

 ヴェイパーウェイヴの醸造したポスト・インターネット以降のシーンを震源地にしたアーティストが、現実のメインストリームのポップ・チャートまで侵食していく、いよいよそんなタームに入ってきたことを象徴する1枚として、2015年の重要作に推しておきたいと思います。

Myths Of The Far Future - ele-king

 12月15日、原宿のVACANTでアシッド・フォークのイヴェントが開催される。出演は、UKからGrimm Grimm(Koichi Yamanohaによる)。今年、〈ATP Recordings〉からデビュー・アルバム『Hazy Eyes Maybe』をリリースしたばかり。
 他に、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)とKohhei Matsuda(Bo Ningen)と、強力なラインナップ。映像はTakashi Watanabe。



環太平洋電子音楽見本市 - ele-king

Day 1  語るべき音楽世界がまだある

Phew + Rokapenis
Black Zenith
Amplified Elephants
Philip Brophy
DJ Evil Penguin

文:松村正人 写真:伊藤さとみ / Satomi Ito

 コープス・ペイントの上半身裸の長髪の男が楽屋口からステージへ肉食獣のように歩み寄り壁際のドラムセットに就く。11月13、14日の2日間にわたって開催された「JOLT Touring Festival 2015」の初日はこうして幕を切った。


Philip Brophy

 メンバーはほかにいない、ドラム・ソロのようだ。やおら打ち込みの音が鳴る。ダンスミュージック的……だがどこか古びている。しかしまだはじまったばかり、意想外の展開があるかもしれない……がとくにない。1曲めを叩ききった。オーディエンスからまばらな拍手。説明もなく2曲め。似たような展開だが、ちょっと待て、よく聴くとこれはイエスの“燃える朝焼け”のリフか。ブラックメタルの恰好をした男が自作カラオケに合わせてドラムを叩く。しかもそれがブラックメタルとはそぐわない古典的プログレの、さらにいえば、超訳とでもいうべき、きわめて恣意的なトラック(基本的にメイン・リフをくりかえすだけ)というある種のコンセプチュアル・アートかもしれないが、伝わりづらい。学園祭のにおいがする。Xジャパンの恰好でTスクェアをカヴァーするような、そぐわないものを同居させる思いつきイッパツのパフォーマンス。私は嫌いでないどころか、学生時代はそういうことを喜々としてやった。ところが、そういうことをするとベクトルは内に向かう。楽屋オチというヤツだ。ああ3曲めはAC/DCの“サンダーストラット”か。私はその外しっぷりに色めきたつが、ほかのお客さんは遠くにいったような気がする。AC/DCに乗せ、〈スーパーデラックス〉がスタジアムになった瞬間である。

そのようにして、トップバッターのフィリップ・ブロフィのステージは終わった。つけくわえると、彼はカルト映画『ボディ・メルト(Body Melt)』の監督もつとめた才人で、パフォーマンスは毎回主旨を変えたコンセプチュアルなものになるのだという。そのことばにウソはなかった。

***


Amplified Elements

 微妙に温まった会場に次に登場したのはジ・アンプリファイド・エレンファンツ。今回は障がいをもつ男女、それぞれふたりがサンプラーやカオスパッド、タブレット端末を操作し、それをJOLT Inc.の創設者でもあるジェイムス・ハリックがサポートする、ソニックアート・グループ──と聞くと、日本のギャーテーズあるいは明日14日のフェスに出演する大友良英の音遊びの会などを思い出す。この2組はなりたちも音楽性を異にするが、前者は声ないし生楽器といった、比較的身体にちかい楽器をもちいているのが、エレファンツは電子楽器という、インターフェイスを介在する機材をもちいているのがユニーク。もちろん、上述のように彼らの使用機材は直感的に使用できるものが多いが、彼らはそれらの機材と戯れるように音を空中に放っていく。


 電子音楽のおもしろさは既存の楽器編成では実現できない音楽空間の生成だが、彼らの演奏は、既存のサウンド/アートの構図が、よくも悪くもその意味で先行する音楽的価値観を(意識せずとも)視野に収めがちなのにたいして、そもそもその前提に立っていないうえにメンバーの自由闊達な演奏の交錯は即興の理想のひとつにひらかれている、それはぎゃーテーズや音遊びの会にも通じるものだ。そのベクトルは聴取に向かうだけでなく、作品を作曲/構成するハリックの意図そのものにもむかい、音楽を時々刻々つくりかえる、緊張より融和を思わせるが、だからといってだれていない、非常に興味深いものだった。

***


Black Zenith

 エレファンツにつづくダーレン・ムーア、ブライアン・オライリーからなるシンガポールのデュオ、ブラック・ゼニスはアブストラクトな映像との相乗効果による無情にまでにハードコアな世界。回路がショートする衝撃音を構造化するような音響はノイズないしインダストリアルを想起させるところもあるが、会場全体をあたかもモジュラー・シンセのパッチに接続するかのような錯覚をおぼえさせる、力感あふれるものだった。それはトリをとつめたPhew+ロカペニスとは好対照で、Phewのアナログ・シンセ弾き語りとロカペニスの映像を対置した演奏はやわらかとかかたいとか、あるいは色彩ゆたかだとか逆にモノクロームだとか、印象論で語れるものからどんどん遠ざかっていく。



Phew + Rokapenis

 抽象的なだけではない。ときにメロディ(の断片のようなもの)も見え隠れするが、それらはたやすく像を結ばない。声は音の一部だが、意味もなさないこともなく、たとえば近日リリースの新作にも収録する“また会いましょう”の星雲のような電子音のカーテンがひるがえる向こうに垣間見えるとことばとたんに寓話めく、Phewはおそらく、かつてないほど独自な境地にいたりつつあり、詳しくは新作リリース時に稿をあらためることもあるだろうが、はからずも電子音楽の環太平洋見本市の感もあったこのたびの「JOLT TOURING FESTIVAL 2015」初日はともに語るべき音楽が世界にはまだまだあることを示唆するえがたい機会だった。また会いましょう。

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Day2 即興音楽の構造化をめぐる3つのありよう

灰野敬二 + 大友良英
L?K?O + SIN:NED + 牧野貴
田中悠美子 + Mary Doumany
森重靖宗 + Cal Lyall
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中山晃子 (alive painting)
DJ Evil Penguin

文:細田成嗣

 〈JOLT TOURING FESTIVAL 2015〉は、音響作家のジェイムス・ハリックが主宰するオーストラリアの団体〈JOLT〉が中心となって企画した、香港とマカオを巡るツアー・イヴェントの一環として行われた。ここ日本では、現在は東京在住のカナダ人アーティスト、キャル・ライアルが運営し、都内で継続的な無料イヴェントを手がけてきた〈Test Tone〉との共催というかたちになっている。〈JOLT〉は過去2012年と2014年にも日本でのフェスティヴァルを開催しているが、3年前のそれが日本の各都市を経巡りながら行われ、昨年は日本とイギリスとで開催されたのに対し、今回スポットが当てられたのは、近年そのオルタナティヴな音楽シーンへの注目度が高まりつつあるアジア圏だったと指摘することができるだろう。とはいえ、それはあくまでツアーの全体像から導き出されることであって、〈スーパーデラックス〉で行われたこのフェスティヴァルに、とくにアジア圏に対する目配せがあったとか、ましてやそれを代表するものだったというようなことはみられなかった。

 終始閑散としていた前日とはうってかわって、2日めは開場後も入り口の外まで人が並ぶほどの賑わいをみせていた。これから行われるライヴ演奏が、誰もが未だ体験していないものである以上、観客の人数が演奏の質をそのまま表しているわけではないことは言うまでもないが、そこにかけられた期待の大きさは推して知ることができる。おそらく7年ぶりに共演する灰野敬二と大友良英のデュオにとりわけ注目が集まったものと思われるが、全体が3部構成にプログラムされたこの日のイヴェントでは、まさに期待の中心が熱狂の頂点に達するようにして、圧巻のライヴをみせてくれた。同時にこの3部のプログラムは、即興音楽の構造化をめぐる3つのありようを、それぞれ提示していたようにも思う。まず第1部において、もっとも自発的な形態での構造化、すなわち、演奏家が演奏を始めることによって音楽が始まり、そこから演奏家が終わりを見出すことによって音楽が終わるという、即興演奏におけるスタンダードなありかたが示される。続く第2部では、演奏家の外部に設けられた開始と終了に対して、その中間をいかにして彩るかということに焦点が当てられることになる。そしてこのふたつのプログラムを受けて、第3部では、それらを止揚するような取り組みがなされていった。

***


Yumiko Tanaka + Mary Doumany

 最初に登場したのは義太夫三味線の田中悠美子とハープのメアリー・ダウマニーだった。ダウマニーがハープを打楽器的に扱いながら生み出すリズムにのせて、卓上に寝かせられた三味線を田中はときには叩き、ときには弾きながら応対していく。即興演奏に特徴的ともいえる、相手の出方をうかがいながら有機的に反応していくやりとりは緊張感溢れるものだった。ふと気づくと地響きのような低音が聴こえはじめ、ごく自然な流れで演奏に参加していたジェイムス・ハリックがピアノの内部奏法を行なっている。さらにキャル・ライアルと森重靖宗がそれぞれバンジョーとチェロをもって参加し、クインテットによる集団即興へ。



森重靖宗 + Cal Lyall + )-(U||!C|< + 中山晃子

 ハリックとダウマニーによる唸るようなヴォイスが、田中の義太夫節とあいまって、どこか「日本的」ともいうべきおどろおどろしさを生み出していく。演奏者の背後の壁には、ヴィジュアル・アーティストの中山晃子によるアライヴ・ペインティングが映し出されていて、その都度の演奏にイメージを付与していたのだが、手元に用意した極彩色の液体を、垂らしたり流したりしつつその場で絵画を描き、それを拡大して投射された映像は、演奏の「おどろおどろしさ」と共犯関係を結ぶようにもみえた。その後、田中とダウマニーのふたりが退場し、残されたトリオによる演奏になる。バンジョーによる音楽的な和音を響かせもするライアルの演奏と、舞踏家のような身のこなしでチェロから深い低音を紡ぎ出す森重、それに引きつづき唸り声をあげながら解体されたピアノ演奏を聴かせるハリックの3人が、デュオからはじまった音楽に終着点を見出していった。

***

 転換を挟んで行われた次の演奏は、ターンテーブル奏者のL?K?Oと香港出身の音楽家SIN:NEDによるデュオが、映画作家の牧野貴によって作成された/されつつある映像作品に対峙しながら聴覚的余白を埋めていくというものだった。このまえに行われた演奏を第1部とするなら、この第2部はそれと好対照をなすものだったといえる。演奏家とコミュニケートしながらその場で即興的にイメージを生成していった中山晃子のペインティングと比較するとき、牧野の映像は演奏に触発されて変化していくというよりも、あらかじめ定められた枠組みの中で、不確定的に散りばめられていったノイズが、偶発的なイメージを生成していくといったものだった。


L?K?O + SIN:NED + 牧野貴

 その内容も対照的で、滴り落ちる極彩色の液体がグロテスクかつ官能的に蠢いていた中山の映像に対し、高速度で明滅する宇宙的なイメージから生み出される牧野のそれは、まるで内的世界がテクノロジーの力を借りて視覚化されたもののようだ。演奏のほうも、第1部のそれがアコースティック楽器による丁々発止のやりとりだったのとは異なり、電子的なノイズが、共同して映像作品に対する音楽を生み出していくといったふうであり、サウンドの移り変わりも緩やかに変化していった。とりわけ印象的だったのは、ドローン/アンビエントな響きからはじまった演奏において、中途、ターンテーブルの演奏も行なっていたSIN:NEDが、そのトーンアームの先端を咥えて「吹奏」しはじめたことだ。

 それを契機とするように、演奏は轟音ノイズの海へと突入していった。まるで教会オルガンのような奥行きのある共鳴が聴こえたターンテーブルの「吹奏」は、しかしながら、むしろ呼吸する根源的な身体性が、電子回路によってつねにサウンドと断絶させられてしまうという事態を象徴していたように思う。第1部における演奏者の身体性は、ここでは機械的な操作性へと変わり、ライヴの枠を演者のそれぞれが推し広げていったパフォーマンスは、枠によって切り取られるべき演奏をどのように満たしていくかという問題へと移されていった。

***

 対照的なふたつのライヴを経て、灰野敬二と大友良英によるデュオがはじまった。2日間のフェスの大トリでもあるこの演奏は、まさに大円団というに相応しい圧倒的なもので、予定時間を大幅に超過して行われることとなった。灰野が歌唱する“イエスタディ”から幕を開けた演奏は、当然のことながらメロディがぐにゃりと変形したそれにビートルズの面影はなく、時折聞こえる、それもまた定かではないが、歌詞の部分的なフレーズによってそれがその曲なのだと判別できるもので、それに対して大友のギターは弦と金属の衝突による打楽器的ノイズで応戦していく。


灰野敬二 + 大友良英

 伴奏というよりも歌と拮抗するようにギターが向かい合う演奏だ。歌唱が終わると灰野はギターを手にとり、ギター同士によるノイズのデュオがはじまった。爆音の渦が観衆を包む。第1部でパフォーマンスを行っていた中山晃子が、ここでも演奏にイメージを付与していたのだが、一瞬だけ、灰野の背後に妖気が立ち昇るかのようなモヤモヤとした映像が投射されていた場面があった。だが「おどろおどろしさ」が、オーストラリア勢によるちょっとしたサービス精神のあらわれでもあったと思えば、ここにそれが出る幕はなく、そしてそのことを強調するかのようにして、中山はすぐさま別のイメージへと変化させていった。

 終了予定時刻を大きく過ぎてから、なんども大友が終わりの合図を出していたように思う。即興演奏において、その演奏を終了する場面は明確に定まっているものではないが、演奏しているとたしかにその時が訪れる、ということを、大友をはじめとした多くの即興演奏家はよく口にしている。そういった終了の契機がなんどもみられたように思う。だがそれも、灰野がつねに終わりを逸脱していくようにして拒みつづけ、演奏は継続していく。こうなってしまった以上、果たしてこの演奏は終わりを見出すことができるのかどうか、あるいはこのまま延々と続いていくのではないか……とまで思われた。だがしかし、それから暫く経ったあと、灰野がギターを置いてマイクを手にすると、大友もそれに合わせてギターを持ち直したのである。そして締めの一曲として「奇妙な果実」を歌いはじめたのだった。
 つまり、このデュオによる演奏は、はじめから終わりが定められていたのである。その瞬間、いままで見せていた「終わり」に対する逸脱が、ことごとく演奏の「中間」におけるパフォーマンスであったことに切り替わった。それは次の展開をその場で切り開いていく即興演奏に、あらかじめ「終わり」が設定されていることによって、より大胆に、かつどこまでも遠い地点を見せながら、「終わらない」演奏をなし得るように仕掛けた巧妙なトリックだったのである。

 これを第3部とするならば、すなわちパフォーマンスの枠をその場で構築していった第1部と、あらかじめ規定された枠のなかでパフォーマンスがなされた第2部を受けて、第3部では、始まりと終わりの行為が決められながら、むしろ決められていればこそ、その枠を自在に拡張し変化させることによって、予見不能な構造化をなしていったということができるだろう。個々別々に体験するだけでは捉えきれない原理のようなものが、ひとつの場所に複数並置されることで浮上する――フェス特有の異化作用が一層スリリングな展開をもたらした一夜だった。


Yasuyuki Suda (inception records) - ele-king

2015.11.29

 いまや『ローリング・ストーン』誌も「いまや新しいブルックリン」と評価するアイスランドのエアウェイヴスに今年も行って来た(最近では、ジョン・グラントも引っ越した!)。たしかにレイキャヴィック(アイスランドの首都)のサイズは、ブルックリンのウィリアムスバーグぐらい。
 で、今年、ローカルで良かったバンドを思うがままに挙げてみると……


dj. flugvél og geimskip


bo ningen

 グライムスやコンピュータ・マジックのアイスランド版とも言えるdj. flugvél og geimskip(DJエアロプレインとロケットシップ)に、レイキャヴィッカダートゥア(発音できない……)は革命を起こしたい女の子10人のラップ・グループで、とにかくかわいい。2、3本のマイクを10人で次々にパスして行くのですが、間違えて違う人に渡したりしないのかなぁ、と素朴な疑問を抱いてみたり。ピンク・ストリート・ボーイズは今時珍しい、トラッシーなパンク・バンド。ヴォックは3年連続で見ているが、ドラマーが増え、よりバンドらしくなり、大御所の風格さえあった。シュガー・キューブスのリード・シンガーだった、エイナーのヒップホップ・プロジェクト、ゴースト・デジタルの大人気っぷりは流石、レコード屋から人が溢れ、道を渡ったところにも人が盛りだくさん。
 レイキャビックの『ヴィレッジ・ヴォイス』とも言われる、情報紙『grapevine』のライターのポールさんによると、ダークで、奇妙で、突拍子もない、Kælan Miklaが今年のエアウエイズのベスト1だと言っていた。私は、世にも美しい音を奏でるMr. sillaに一票。


pink street boys

 エアウエイヴスは、ニューヨークのCMJやオースティンのSXSWのアイスランド版と言った所だが、より個人が主張し、インディ感覚を忘れていない。リストバンドの種類がアーティスト、プレス、フォト以外にダーリンというVIPパスかあり、ダーリンを持っていると、長い列に並ばなくても良い。人気のショーはリストバンドがあっても列に並ばないとだめで、このダーリン・パスは大活躍だった。
 今年のハイライトは、ホット・チップ、ビーチ・ハウス、ファーザー・ジョン・ミスティ、バトルズ、アリエル・ピンク、パフューム・ジニアス、ボー・ニンゲン、グスグスなどで、私のハイライトは、断然ボー・ニンゲン。ブルックリンでも見て親近感が湧いたが、オフ・ステージでの腰の低さも好かれるポイントなのだろう。
 Samarisやkimonoのメンバーとアイスランド、ロンドン、日本、そして音楽に関しての対談が『grapevine』に掲載されている。
 今年のCMJではアイスランド・エアウエイヴスもショーケースを出し(dj. flugvél og geimskip, fufanu, mammútが出演)、アイスランドとブルックリンの位置はどんどん近くなっている気がする。

 昨年と比べて、街は少しだが変わっていた。空き地が取り壊され、新しいホテルができ、コーポレート企業が少ないアイスランドにダンキン・ドーナツができていた。と思えば、フリーマーケットに行くと、シガーロスのオリジナルのポスターが普通に売られていたり、道を跨ぐと壁にグラフィティが満載だったり、街には文化の匂いがする。ご飯は魚が新鮮で、何を食べても美味しいが、羊の頭、というギョッとするものがスーパーマーケットに売っていたりもする。名物は、パフィン(=ニシツノメドリ)とクジラですから。
 エアウエィヴスHQ近くのハーパ(窓のステンドグラスは光によって色が変わる!)と自然の美しさは相変わらずで、まるで他の惑星にいるような感覚に陥る。近くの水辺でまったりしていると、何処からともなく人が現れ、この最高の景色を共有出来る偶然と贅沢を、改めて堪能。こんな景色を毎日見ていたら、創作欲もどんどん湧く、と羨ましくも納得していた。


シガー・ロスのポスター


ニューヨークから直航便で6時間、時差は5時間。


 そしてニューオリンズ。今回はバンドのツアーで来たが、町も音楽も想像以上に素晴らしかった。ニューオリンズといえば、ブルースやジャズのイメージだが、インディ・ロックも、エレクトロ、ダンス・ミュージック、ヒップホップも何でも見ることができる。音楽会場がたくさん並ぶエリア(フレンチ・クオーター)では、バー、レストランなどがズラーッと並び、バーホップを楽しめる。ロック、ブルース、ジャズ、ホーン隊が10人以上いるビッグバンドや、2ピースのエレクトロ・ダンシング・バンド等、ミュージシャンはさすがに上手く、観光地になるに連れてカバーバンドが多かった。お客さん同士仲良くなるなどノリも良く、こちらは毎日がCMJやSXSWな感じ。
エレキング読者には、フレンチ・クオーターからは少し離れるが、私たちがショーをしたサターン・バーがオススメ。ここは元ボクシングを観戦する会場で、バルコニーが四方をグルっと囲み、バンドを180度何処からでも上から眺められる。何気に天井がプラネタリウムの様になっていたり、サターン(土星)が壁に、ドーンと描かれ、場末な感じが最高だった。
 今回お世話になったのは、ビッグ・フリーダ、シシー・バウンスなどでDJをしているDJ Rasty Lazer。ニューオリンズ・エアリフトも主催するニューオリンズのキーパーソンである。

www.neworleansairlift.org
https://en.wikipedia.org/wiki/Bounce_music

 エア・リフトが今年2015年夏に開催したアート/音楽・プロジェクト、「ミュージック・ボックス」の映像を見せてくれた。



 大きなフィールドに、多様なアートピースを創り、ミュージシャンが音楽を奏でるのだが、ディーキン(アニマル・コレクティブ)やイアン(ジャパンサー)、ニルス・クライン、ウィリアム・パーカーなど、面白いほどに、ブルックリン他のなじみある顔のミュージシャンが参加していた。

 このプロジェクトにも参加していたラバーナ・ババロンは、4年ほど前にブシュウィックで知り合ったアーティストだが、いつの間にかブルックリンからベルリンを経由し、ニューオリンズに引っ越していた。彼女曰く、ブルックリンより、こちらの方がアート制作に時間を費やせるし、露出する場がたくさんあると。たしかに彼女のようなパフォーマーは、あたたかい気候が合っているのかもしれない。
 そのDJ Rusty Lazerがキュレートするパーティにも遊びに行ったが、規模がブルックリンとまったく違うことに驚く。会場の大きなウエアハウスは南国雰囲気。手前にバー、真ん中にはトロピカルな藁のバー、回転車輪(ネズミの様にクルクル回る)、ポップコーンバス(中で男の子がポップコーンをホップし続けている)、ダンスホール(バウンス・ミュージック)、映像部屋(自分がライトの中に入っていける)、ライト&ペーパーダンスホール(上から紙のリボンが垂れ下がり、ブラック・ライトが照らされた部屋)、野外映画、仮装部屋(いろんなコスチュームが揃い、みんなで写真が撮れる)など、もりもりたくさんのエンターテイメントが用意されていた。人も今日はハロウィン? と思うくらいドレスアップ(仮装)している人ばかりで、こちらは毎日ハロウィン。

ニューヨークからは直行便で3時間半と。時差は1時間。

 全く違う2都市だが、空港に降り立った時から、違う空気を感じ、気候が音楽に与える影響も感じる。この2都市のパーティにかけるピュアな姿勢と気合は、ブルックリンは断然負けている。ブルックリンはパーティしつつも、頭は何処かで冷静だったりもする。さらに人びとが次々繋がっていくのが面白い。小さなインディ・ワールドにいるからか、今回もニューオリンズやレイキャビクからブルックリンの知り合いが繋がっていった。ブルックリンのエッセンスは、何処かで継がれていくのだろう。

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