「坂本慎太郎」と一致するもの

トリプルファイヤー - ele-king

 ふわふわしたものとの、ふわふわした戦い。人によっては、それは、ただ虚空を舞っているだけの悲しいダンスに見えてしまうかもしれない。なぜならば、彼らの音楽は徹底してノンポリティカルで、(ノー・ウェーヴやギャング・オブ・フォーを評するときの海外のライター風に言うなら)パンク・ファンクのダンサブルな反復演奏を基調とし、メロディをほぼ排したうえでの、ヴォーカル、吉田による意味深な独白がただひたすらに続いていくものでしかないからだ……一義的には。だが、おそらく、トリプルファイヤーは何かと戦っている。もっと些細で、微妙で、小さい何かと。あるいはそれは、かつて山本七平が論じた「空気」のようなものだろうか。
 そうに違いないと決め込み、自分なりに吉田の言葉を解釈しきった気になってパソコンを立ち上げると、何も書き出せず、ドツボにはまっている自分にただ気づくのである。何を書いても「いや、そんな細かいこと考えてないすね(笑)」と流されそうだし、「いや、本当はそういうことが言いたいんじゃないんですけどね(苦笑)」とも返されそうだ。それくらい、歌詞(?)はメタフォリカルな弾力に富んでいる。こんな字数稼ぎまがいのことを断らなければ何も書けないような、解釈とその裏との無限ループに徒労を感じつつも、なお何かを語りたくなる、そんな魔力を余白と行間に忍ばせた9曲32分、トリプルファイヤーのセカンド・アルバム『スキルアップ』が恐ろしい!

 昨年の〈DUM-DUM PARTY 2013〉で観た30分足らずのライヴ。没個性的なポップ・スターのパロディなのだろう、両手を挙げ、唐突に「カモン!」と連呼し、フロアを煽りはじめるヴォーカルの吉田は終始、真顔であった。その動きにキレや真剣さというものはまったく感じられず、その目はただあさっての方向を凝視している。再三の「カモン!」コール。まったく反応のないフロアに、ときどき笑い声が漏れる。額面通りに観察すれば、彼はデフォルメされた、ある種の「普通」に擬態しようとしていた。だが、彼にそんな気がないのは誰の目にも明らかで、建前として取られたポーズと実際の意気込みのズレによって、聴き手の腰はいちど抜ける。それを立て直そうとするうちに、またリズムに乗り遅れる。トリプルファイヤーの虚空を舞うようなダンスは、そうやってよろめくようにはじまる。
 たとえば、友だち至上主義的にパーティーに明け暮れる人間になりきる“おもしろいパーティー”、あるがままの自分を懸命に自己アピールしてみる“ちゃんとしないと死ぬ”、観光地の土産によくある、穴を覗くと絵や写真が見えるキーホルダーを日本人が好きそうな権威主義的な煽り文句で真剣に売り込んでみる“本物のキーホルダー”などは、その典型だろう。そう思うと、ノー・ウェーヴ/『Solid Gold』あたりの頃のギャング・オブ・フォー/後期のゆらゆら帝国を混ぜ合わせたような、タイトなパンク・ファンク・サウンドも、ある種の勤勉さのパロディというか、ストイシズムに水を差すための反復演奏というか、マニュアル漬けにされた学生アルバイトの仕事のようにも見えてきて、いったいどこまでが天然でどこまでが計算されたバンドなのだろうと、僕は勝手な解釈を重ねながらもまたドツボにはまるのである……。

 この際だ、ドツボついでに行くところまで行ってしまおう。かつて鶴見俊輔が、戦後における漫才を評してこんなことを書いている。「官僚制度と教育制度の要求する機械のような正確さを一拍はずして受け止めるような、それに乗り遅れることを通してその流儀を批判するというスタイル」、それは物言えない人びとの知恵であると(『戦後日本の大衆文化史(1945~1980年)』より引用)。
 そう、トリプルファイヤーに僕が感じるのも、強い言葉を持たない人間ならではの知恵だ。「あえて・空気・読まない」という真っ向からの反発ではなく、「(まったくその気がないのに)あえて・空気・読んでみる」ことによって、なし崩し的に迫ってくる空気をふとシラケさせてしまうこと。超大手の就活サイトの広告にインスパイアされた例のアー写に象徴的だが、あのような「類型化された個性への同調圧力」なんて手合いはいまさらまともに取り合っていられないから、あえて適応してみる道だけが残るのだろう。そこでは演奏だけが勤勉で、表現に両義性を持たせている。そうした文脈で聴けば、タイトル曲“スキルアップ”は、格差社会と官僚制度のなかで成長していくサラリーマンを生温かく祝うような歌だ。

 真面目な話、これは案外、役者の揃った観のあるいまのインディ・ロックのシーンに一石を投じる存在になるかもしれない。あとは、たとえば5月28日にリリースされるという坂本慎太郎のセカンド・アルバム『ナマで踊ろう』が出た後でも、果たして本作を同じ思いで聴くことができているか。聴いている方が勝手に気負っているようで恥ずかしいが、しかし僕は、そんな乱暴な比較が成り立つくらいのポテンシャルをこのバンドの将来に感じていたい。

Shintaro Sakamoto - ele-king

 坂本慎太郎の、セカンド・ソロ・アルバムが2014年5月28日(水)に、彼自身のレーベル〈zelone records〉からリリースされることになった……という情報は、みなさんもご存じかと思いますが、アルバム・タイトルも『ナマで踊ろう(Let's Dance Raw)』に決まったと、レーベルからメールが来ました。以下、レーベルのメールいわく「全くトロピカルではないスチールギターが、底抜けに明るいバンジョーが、人類滅亡後の地球でむなしく鳴り響く。構想&妄想約2年、坂本作品史上最もシリアスで最もポップな、入魂のコンセプトアルバムが完成しました」
 〈zelone records〉、続いていわく。「今回のレコーディングは、もはや坂本作品には欠かせないドラマーとなった菅沼雄太に加え、新たにベーシストとしてOOIOO等で活躍するAYAを迎え、トリオのバンド編成で入念なリハーサルを重ねた後に行われました。M-1のみ坂本がベースを弾いています。菅沼はドラムの他にパーカッションとコーラス、AYAはエレクトリック・ピアノとコーラスも担当しました。その他のゲストプレイヤーには、サックスとフルートに西内徹、ヴィブラホンに初山博、M-1のボーカルとコーラスに中村楓子、そしてエンジニアは中村宗一郎と、いずれも坂本作品ではおなじみのメンバーが強力サポートしています」

 2年前の『幻とのつきあい方 (How To Live With A Phantom)』において、ポップソングを探求した坂本慎太郎が次に何をやるのかは、我々にとって大いなる関心事である。リリースされるのが、とても楽しみだ。曲名を見ているだけでも、ワクワクするね!

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2014年5月28日(水) zelone recordsより発売!
──初回限定盤のみ紙ジャケ仕様 / 初回&通常盤共に2枚組仕様──

ナマで踊ろう / 坂本慎太郎
Let's Dance Raw / Shintaro Sakamoto

01. 未来の子守唄
02. スーパーカルト誕生 
03. めちゃくちゃ悪い男 
04. ナマで踊ろう 
05. 義務のように 
06. もうやめた
07. あなたもロボットになれる 
08. やめられないなぜか
09. 好きではないけど懐かしい 
10. この世はもっと素敵なはず 

All Songs Written & Produced by 坂本慎太郎

品番: 初回限定盤: zel-012s / JAN: 4582237829204
通常盤 : zel-012 / JAN: 4582237829211
価格: 初回限定盤 ¥2,600+税 (紙ジャケ仕様/2枚組/BONUS CD付)
通常盤 ¥2,600+税 (2枚組/BONUS CD付)

Distribution: Bridge Inc. 03-3710-8049 https://bridge.shop-pro.jp/
More Info: zelone records: 03-6805 4232 info@zelonerecords.com


■坂本慎太郎 Profile■
1967年9月9日大阪生まれ。
1989年: ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。21年間で、3本のカセットテープ、10枚のスタジオアルバム、1枚のスタジオミニアルバム、2枚のライヴアルバム、1枚のリミックスアルバム、2枚組のベストアルバムを発表。
2006年: アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。
2010年: ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。
2011年: salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelone recordsにてソロ活動をスタート、1stソロアルバム「幻とのつきあい方」を発表。
2012年: 以前から交流のあるYO LA TENGOのジェームズ・マクニューのソロ・プロジェクト”DUMP”の”NYC Tonight"にREMIXで参加。NYのOther MusicとFat Possum Recordsの新レーベル”Other Music Recording Co" から、「幻とのつきあい方」がUSリリース。
2013年: 1月11日シングル「まともがわからない」(「まほろ駅前番外地」のエンディング曲) と同ドラマ劇中音楽を手掛ける。「攻殻機動隊ARISE」エンディング曲や、冨田ラボのアルバム「Joyous」に作詞で参加。舞台「高校中パニック!小激突!!」では作曲で参加。
2014年: Mayer Hawthorneとのスプリット7inch vinylを、4月19日の全米/全欧のRecord StoreDay限定でリリース(UNIVERSAL/Republic)。
5月28日に2ndソロアルバム「ナマで踊ろう」をリリース予定。

official HP: www.zelonerecords.com


Record Store Day 2014 - ele-king

 音楽メディア/文筆業をはじめて以来、レコード店で音楽ライターに会ったためしがないんですよ。ワタクシ野田よりも年配のライターの方にはディスクユニオンなどでお会いすることもあるし、三田格とは会いたくもないのに会ってしまったりするものなのですが……。ほかに僕が知っている顔とはまず会わないのです。

 レコード店は、たんにモノの売り場というだけではありません。音楽シーンのメディア(情報発信地)であります。とくに洋楽なんぞを好きなリスナーが本当にフレッシュな音に出会いたければ、輸入盤を扱っているレコード店に行くしかないでしょう。すべてが並列しているネット通販などと違って、その扱われ方、置き場所にも触発されますし、隣り合わせの盤など自分の未開拓領域との出会いもあります。ナイスなレコード店のスタッフは自分たちの持っている知識を分け与えてもくれます。

 近年のネット通販の普及やDL問題などによってかどうか、レコード店は(音楽メディアと同様に)危機に瀕しています。こりゃまずいと、USのインディ・シーンで、ミュージシャンやレーベルなどが小さなレコード店を支援するために立ち上がり、はじまったのがレコード・ストア・デイ。その日に限り小さなレコード店でしか買えないレコードを売る。予約もなし、お店に行くしか買えないというわけであります。

 さて、少々気が早い、2014年4月19日土曜日のレコード・ストア・デイですが、大ニュース。なんと今回、坂本慎太郎&メイヤー・ホーソーンのスプリット7インチ・シングルが出ます。zelone recordsから届いた資料によれば、「これは、メイヤー・ホーソーンが、坂本慎太郎の1stアルバム『幻とのつきあい方』(US盤: Other Music Recording & Co.)を愛聴していて、『坂本とメイヤーで2014年の全米のレコード・ストア・デイで一緒に7inch出さないか?』とNYのOther Musicに連絡して来たことから始まりました」という話だ。そして、「お互いのインスト・ヴァージョンのオリジナル・マスターを使用してそれぞれ英語/日本語での訳詞ヴァージョンでレコーディングしよう、という事になり、遂に実現/完成しました」
 
 しかも、今回の7インチがすごいのは、「坂本慎太郎が、メイヤーの最新アルバム『Where Does This Door Go』から、ファレル・ウイリアムスのプロデュース楽曲“Wine Glass Woman”のオリジナル・トラックに日本語で歌詞を付けて歌い、メイヤー・ホーソーンは、坂本の1stアルバムから「幽霊の気分で (In a Phantom Mood)」のオリジナル・トラックに英語の歌詞を付けて歌った、つまり、坂本慎太郎がファレルのトラックで歌い、メイヤー・ホーソーンが坂本のトラックで歌うという、なかなかあり得ない日米のコラボレーション/スプリット7inchです!」という点にあるのです。
 坂本慎太郎がファレルのトラックで歌っているなんて……!

 さあ、2014年4月19日 (土) 発売! 店頭のみの販売。web・予約販売は無し。

interview with CORNELIUS - ele-king


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

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 つづら折りになったジャケットには、内側になるにしたがってどんどん小さくなっていくように四角い穴がくり抜かれ、あたかも「記憶」のより深層へと降りていくかのような演出が施されている。キャラ絵や作品タイトルこそを見せたい・見たいはずのアニメのサントラ盤にあって、これほどミニマルでデザイン性の高いジャケットを提示することはずいぶんと挑戦的であるようにも思われるが、これが『攻殻機動隊』シリーズの劇場版最新作のサントラであること、そしてコーネリアスの仕事であることを考えれば納得だ。シリーズに通底するテーマと世界観がとてもシャープに表現されている。

 監督や脚本、キャストが一新され、“第4の『攻殻』”とも言われる『攻殻機動隊ARISE』。特殊部隊「攻殻機動隊」創設までのエピソードを、ヒロイン・草薙素子の過去に光を当てるかたちで描き出す最新作であり、全4部作となるうちの1作め『攻殻機動隊ARISE Border:1 Ghost Pain』が今年6月に公開、つづく『攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers』が11月30日より全国劇場にて公開となり、注目が集まっている。

 コーネリアスはこのシリーズのサントラを手がけるとともに、「ゴースト・イン・ザ・マシーン」と名付けられたブッダマシーンの最新モデルなどの企画も行っている。経典音読マシンがルーツだったというあの四角い箱のコアに素子ともおぼしき女声(=ゴースト)を宿らせたこのモデルに筆者は震えたが、何よりも、コーネリアスの音楽自体が「楽曲を作る」ということで単純に完結してしまうものではないのだろうということを感じさせる。ヴォーカルにsalyu、青葉市子、歌詞に坂本慎太郎を加えた新鮮なコーネリアス・パーティも、期待を掻き立てるものだ。

 インタヴューでは「空気感」という言葉をひとつのキーワードとして感じた。そしてそれは、筆者が『攻殻機動隊ARISE Border:1 Ghost Pain』のトレイラーを初めて観たときのちょっとした違和感と驚きの源でもあったかもしれない。
 コーネリアスは、ロジカルでディストピックな『攻殻機動隊』の世界に奇妙な空間性を開いている。たとえばこれまで激しいブレイクビーツが多用されてきたような、タフでハード、隙間なくテーマ性と論理が敷き詰められたシリーズのなかに、まさに「空気感」という曖昧なものを感受しかたちにするコーネリアスの手つきは、何か新しい光源をもたらしてはいないだろうか。それはシリーズを一新する本作にちょうどふさわしい違いかもしれない。筆者にはその僅かな違和が、相対的な明るさとして感じられる。 

明るい作品じゃないですか?

でもコーネリアスにしてはダークだと思ったよ。
――うん、そうだと思うんだよね(笑)。

映画の劇伴というのは、依頼がまずどーんと来て、テーマ曲から作りはじめるというような進行なんですか?

小山田:そうですね、まさにそんな感じですね。

オーダー・リストみたいなものがあって、それに従って作っていくというような……?

小山田:そうです。そんな感じです。

そのリストというのは、場面みたいなものが書かれているんですか? 感情みたいなものが書かれているんですか?

小山田:まず台本みたいなものがあって、それに従って音響監督が、「このシーンでこういう音が欲しい」というようなことを指定してくるんです。「何秒で落ちる」とか「何秒でまたアップ」っていう感じで。

なるほど作るのも秒単位なんですね。その指定に基づいてどんどん収めていくわけですか。

小山田:基本的にはそうなんだけど、結果として指定された箇所とは違うところで使われたり、まるまるなくなっていたりすることもありますね。場面に合わせて編集されていたりとか。だから、言われたとおりに作るんだけど、言われたとおりに使われるとは限らないという感じです。

お題というよりも、台本に沿ってオーダーがあるんですね。

小山田:そうですね。でも、言われていたシーンと違うところで使われるのが逆におもしろかったりはしますね。

どう使うかということですよね。……ということは、作りはじめる前に台本なりを通して作品への理解がはっきり生まれているわけですか。

小山田:うっすらと(笑)。

(一同笑)

では作品理解ありきというよりは、コーネリアスというアーティストとの綱引きが求められている感じなんでしょうか?

小山田:いえいえ、そこは作品ありきなんですけど、それも感じつつ自分なりの解釈で作っていくということかなと思います。

「サントラってこういうものだな」とあらためて感じられた部分はありますか?

小山田:やっぱり、基本的に暗い話なので、感情も限定されてくるというか。そんなに明るい感情というのはなくて、ちょっとしたユーモアみたいなものはキャラクターによってはあったりするんだけど、中心になるのはダークな世界観ですよね。あとはバトルとか心理的葛藤とか。それも段階がいくつかあって、すごい深いものからニュートラルなものまで幅があるんだけど、基本的なところは限定されていきますかね。この映画の世界観に沿っていくと。
そういうものは自分のなかに日常的に持っているわけではない、パーセンテージとしてはわずかにしかない感覚なので、そこを増幅して作品にできるのはおもしろいなと思いました。

ああー、まさにそこもお訊きしたかったんですが、『攻殻機動隊』って近未来の過剰な管理社会をディストピックに描くものですよね。おっしゃるように基本的に暗い世界だと思うんですが、サントラにはわりと一貫して明るい印象を受けるんです。柔らかい光源を感じるというか。明るさを意識したりはしませんでしたか?

野田:でもコーネリアスにしてはダークだと思ったよ。

小山田:うん、そうだと思うんだよね(笑)。

そうですか。小山田さんの特徴というだけのことかもしれないですが、でも暗いイメージに寄り添う以外に、ご自身のなかにもう少し違うイメージがあったりはしませんでしたか?

小山田:うーん、そんなに強く意識はしてないんですけれど、無意識に自分にちょうどいいバランスに調整している部分はあるので……。まあ、こういう感じになっちゃったというところ(笑)。


「音楽メニュー」と呼ばれる楽曲のオーダー・リストには、カット番号と「混乱」などの簡潔なテーマが記されている。 はじめはミュージック・ヴィデオのように細かくタイミングを合わせて作っていたものの、セリフ等との兼ね合いもあり、その後の段階でのエディットは音響制作側にまかせたとのこと。

音にするときに、とくにポイントになる視覚的要素というとどんなところですか?

小山田:それはたくさんあって、最初はそういうものに偏執的に合わせて作ってたんだけど(笑)、結果ズレていったり修正が大変だったりして。

要素としては動きとかになりますか?

小山田:うん。動きですね。あと、色味が変わるとか、カットが変わるとか。

表情とかエモーションとかっていう内面的な要素よりは、アクションとか場面転換みたいなものに音が影響されるという?

小山田:それは両方ですね。

今回の『ARISE』は、まだ未熟な(草薙)素子の揺れる内面とか、孤独な闘いとかが印象的ですよね。昔のシリーズ(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』)は公安9課というチームワークもあったりしてグルーヴィーなんですけど、それに比べてよりインナーなテンションがあるように感じます。でも、小山田さんの音楽って、そういうインナーなもの……気持ちみたいなものを文学的にしないというか、そういうものをどちらかといえば無視していくもののように思うんです。

小山田:なるほどね。気持ち……。気持ちというより雰囲気という感じですかね(笑)。

ああ、なるほど。空気みたいなものとかでしょうか。

小山田:ストリングスで泣きメロを入れたりとか、そういうハリウッドっぽいスコアリングじゃなくて……。そうですね、メロディってエモーショナルで内面的なものを表すって一般に言われるけど、もうちょっと空気感で内面的なものを表すことができるっていうか。まあ、「内面的なもの」って、わかんないんだけどね(笑)。空気感で「内面」とかその状況を表すという、どちらかというとそんな要素の方が大きいのかもしれないですね。

よくわかります。小山田さんは、近年は『デザイン あ』とか『CM4』ですとか、リミックスとかサントラのリリースが続いていますけれども、そういうものはオリジナル・アルバムでキャリアをつきつめていくというのとは逆で、人と人との間とか、社会のなかで機能する音を考えていくという仕事になると思います。小山田さんには、そうした作品制作を通して見える、社会の色とかってありますか?

小山田:うーん、色って言われて思い出したのは、オウムの事件があったときに「世界は黄色だ」っていうような歌を歌っていたことですかね。テレビで、誰だったか容疑者の人が「世界は黄色だ」って。

ええー、すごい感性ですね。黄色ってちょっと出てきませんでした。それはなんだかインスパイアされるお話です。

野田:すごいねえ。

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アニメOPの条件

アニメのオープニング・テーマって、タイトルも言ってほしいし、必殺技の名前とかもできれば言ってほしい(笑)。


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

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野田:映画のサントラとかって、今回が初めて?

小山田:ちゃんとしたのは初めてだね。

野田:サントラとか好きだったじゃない? いまはないけど、渋谷の「すみや」っていうレコード屋で、日本盤で出てないイタリア映画のサントラとかを漁っていた人なわけだから。

小山田:あははは。そのときからそうなんですけど、観たことない映画のサントラとかを聴いたりしていて、それ自体は何かの映画のなかで機能させるために作られたものなんだけど、iPodとかで聴くとまったく別のもののようにも聴こえるというか。その映画と切り離されたところで楽しめる部分っていっぱいあって。
そういう意味では音楽って器というか、何かのために作られたものが別のかたちで機能することがありますよね。サントラはとくにそうかも。だから、僕はこのサントラを『攻殻機動隊』のために作ったけれども、それを切り離した部分でも聴けるものにしたいなというところはありますね。

アニメ音楽で参照されたものとかはありますか?

小山田:わざわざ聴いたりとかはしていないんですけど、“ゴースト・イン・ザ・シェル・アライズ”っていう『ARISE』のテーマ・ソングでは、頭にあったのは『ルパン三世』のはじめの曲ですね。「ルパン~ルパン~」って、ひたすらルパンっていうタイトルを連呼する曲で、それを意識しました。「ゴースト・イン・ザ・シェル」をひたすら連呼する、みたいな。

へえー。

野田:なんで『ルパン』だったの?

小山田:『ルパン』がっていうより、タイトルを連呼するっていうところですかね。僕のなかでは、アニメのオープニング・テーマって、タイトルも言ってほしいし、必殺技の名前とかもできれば言ってほしい(笑)。ちゃんとそのコンセプトに合ったものが入っていてほしいっていうのがあって。それで、アニメ「らしい」オープニング・テーマというと、どうしても『ルパン』が出てくるという感じです。

小山田さん的なアニメOPの条件みたいなものが、ちゃんと入っているんですね。

小山田:うん。それに、ひたすら繰り返すから曲のミニマルな構造に合うというか。そういう曲って他にないなと思って。

連呼というところでは、「きおくきおくきおく……」(“じぶんがいない”)もそうかと思いますが、「記憶」も『ARISE』のひとつのテーマですよね。記憶が勝手に操作されたりいじられたり、不安定で信用できないものとして描かれています。この曲はそのテーマをそのまんまというか、かなり直接的に使っていておもしろかったんですが、音節ごとに「き」「お」「く」と切ってエディットされているのも、やっぱり「記憶をいじる」というようなテーマを意識してのことなんですか?

小山田:歌詞は坂本(慎太郎)君が書いてるんだけど、それは曲の後にできたものなので、最初から音のなかに「記憶」という言葉が当てはまっていたわけじゃないんだよね。ただ、素子が「義体」というキャラクター――人間とロボットの中間、アンドロイド的なものなので、あんまり人間ぽくない編集で作ったヴォーカル・ラインが合うのかな、とは思っていて。
歌詞は、最初に「き、き、き」ときて、次に「きく、きく、きく」ときて、最後に「きおく、きおく……」となるんですけど、「一文字でも意味があって、二文字でも意味があって、三文字でも意味があって、という構造になっている言葉が何かないかな?」って坂本くんに相談したら、「きおく」っていう言葉を出してきてくれたんです。

へえー、必ずしもテーマから来たものではないんですね。

小山田:もちろん坂本くんは、ちゃんと脚本を読んで言葉を選んできたとは思うんだけれども。

なるほど。戦後詩では最初、谷川俊太郎の『ことばあそびうた』みたいなものが精神的に低いものとして厳しい評価を受けていたようですけれども、言葉遊びみたいなものの方が、逆に空気を受容する器にはなりやすいのかもしれないですね。
 詞が後に上がったということですが、今回、詞のついているものは全部そうですか?

小山田:うん。

それをまた組み替えるということですか。

小山田:あ、組み替えはしないですね。

そのままでしたか。では、本当にうまくはまっているんですね。

小山田:そうですね(笑)。

ブッダマシーンは草薙素子の夢をみるか

あれは、もともと中国にあった「電子念仏機」っていう機械がモデルになっているんですよ。

なるほど。ところで、「ゴースト・イン・ザ・マシーン」という新しいブッダマシーンとダミーヘッド・マイクを使って、動画を撮っておられますね。あれはどこから来たアイディアなんですか?

小山田:ダミーヘッド・マイクに関しては、たまたま使っていたスタジオにあったんですよ。ブッダマシーンを作ったんですけど、あれってたくさんで鳴らすとおもしろくって。いろんな層で音楽が流れていて、ずっとドローンで、ピッチも変えられるし、演奏みたいなこともできるし。あのときは同時に4台使ってるんですけど、おもしろかったですね。

ダミーヘッド・マイクって、まだまだおもしろい使い方があるんでしょうか? ドラマCDみたいなものではさかんに使用されていますけれども。

小山田:ん? ドラマ?

はい。お話とかセリフの朗読が収録されているCDなんですけど、耳もとで甘い言葉を囁かれるとか、そういうことがリアルに感じられるようにダミーヘッドで録音されていることが多いんです。でも、音楽でそんなふうにうまいこと使用されている例はあんまりありませんよね。

小山田:たしかにね。CDでやってもあんまりよくわかんないというか。ダミーヘッドを使ってる例だと、マイケル・ジャクソンとかルー・リードとかもやっているんですよね。

へえー。

野田:ルー・リードも?

小山田:そう、他にもいろんな人がやってるんだけど、「ギター、ドラム、ベース」みたいな音楽で使ってもべつに何もおもしろくないというか(笑)。

それはそうですよね(笑)。以前に読んだインタヴューで、髪の毛を耳元でちょきんと切られる音が立体的に再現されたCDで感動されたというお話をされていたように思うんですが……。

小山田:うん。やっぱりいちばんおもしろいのは髪の毛をきってもらったりとかだよね。

なるほど(笑)。このマイク自体はけっこう歴史の長いものなんですね。

小山田:うん。80年代くらいからかな……。70年代くらいからあったっけ?

その頃からの進歩ってあるんでしょうか?

小山田:だいぶ進歩しているんじゃないですか? ダミーヘッドじゃなくてさ、ヒューゴ・ズッカレリっていう人がいて、知ってる? アルゼンチンかどこかのちょっとマッド・サイエンティストみたいな人で、詳細は明かしていないんだけど、立体音響に関してちょっとすごい録音技術を持っている人なの。マイケル・ジャクソンとかはそのやり方を使っているみたいなんだよね。それはダミーヘッドではないって言われてるんだけど、どういうノウハウかはわかってない。

へえー。

小山田:サイキックTVとかもそうだよね。80年代後半とかに、一時期すごい話題になってた。

野田:あー、そうだったね。

あの動画に関しては、「あ、頭の後ろ通った!」っていう気持ち悪い感触とかが生々しくあって、おもしろかったです。小山田さんにとっては、旋律とかそれがリニアに導いていく物語じゃなくて、こういう体験のようなもののほうにより興奮があるんじゃないかなと思いました。

野田:ほとんどそうでしょう。ライヴとかを観るとほんとにそうだよ。

小山田:はははは。

音響体験のほうが優先される。

小山田:まあ、このサントラに関してはわりとそういうものですよね。

GHOST IN THE MACHINE
https://www.jvcmusic.co.jp/ghostinthemachine/

テーマ性がたしかに色とか空気みたいなものとして感じられます。では、ブッダマシーンのほうはどうでしょう? そもそもはあのガジェットのなかにブッダがいる、というジョークみたいなものだったように思うんですけれども。

小山田:あれは、もともと中国にあった「電子念仏機」っていう機械がもとになっているんですよ。お経を自動で流してくれる機械。それをみんな流しながらお祈りとかをしていたみたいで。それを、中身をミニマルっぽくしてあんなかたちに仕上げたのがブッダマシーン。

実用的なものだったんですか!

小山田:そう。昔、中国に行ったときにお土産でもらったことがあって、それには本当に念仏が入ってた。形とかもだいたいあんなものですね。わりと最近になって中国の若い人がブッダマシーンのかたちにしたっていう。

そうなんですね。わたしもシリーズの最初のマシーンから知っているんですが、てっきりヨーロッパが作り出したオリエンタルなジョークみたいなものだと思っていたんです。そんな日用品だったとは意外ですね。

小山田:うん。ふつうにあったものなんだよね。

なるほど。そうすると余計おもしろいんですが、『攻殻機動隊』には、ロボットとかマシンみたいなものにゴーストが宿ることがあるか、あるとすればどんな条件のときか、っていうようなテーマも通底していますよね。ブッダマシーンの「機械のなかに宿った声(=ゴースト)」っていう性格は、なんてこの作品にぴったりなんだろうって思ったんです。

小山田:はははは。「ゴースト・イン・ザ・マシーン」っていう名前つけてるしね。

野田:あ、意識しているんだ。

小山田:もちろん。

あれ? このブッダマシーンのアイディア自体、小山田さんのものなんですか?

小山田:そうです。

そうなんですか! これ、すごくびっくりしたんですよ。よく『攻殻』とブッダマシーンが掛け合わさったなって、すごく不思議だったんです。いままでのブッダマシーン・シリーズでいちばん気がきいていると感じましたし。実際に声優さんの声が入ってるんですか?

小山田:声優さんの声は入ってなくて……、あ、ちょっと入ってるか。でも基本は声優さんの声じゃないんです。

へえー。「機械のなかの心」みたいなものへのロマンチックな気持ちは、小山田さんのなかにありました?

小山田:……なかったね(笑)。

(一同笑)

野田:そこまで少年じゃなかった(笑)。

ははは。すっごいドライなんですね。バトーさんが天然オイルを与えつづけたタチコマにだけは、ゴーストが宿った? みたいなエピソードもとても印象でしたけれども、そういうロマンティシズムも作品を牽引する強さだと思うんですね。ものに宿るゴースト、みたいなものはぜんぜん感じませんか。

野田:『ファンタズマ』の人だもんね。

小山田:(笑)そういうのとはちょっと違うかもしれないんだけど、何かつかみきれないものというのは意識していて。曲の構造だったりもそう。“ゴースト・イン・ザ・シェル・アライズ”も、ただ「ゴースト・イン・ザ・シェル」って言っているだけなんだけど、頭のなかに残らないというか……。同じように展開しているように聴こえるかもしれないんだけど、実際はぜんぜん解決しないままどんどん進行していくっていう構造になっていて、そこはつかみきれない感じを意識してはいますね。

すごく複雑で、複雑すぎて不透明になっている感じでしょうか。でも、そういうつかみきれない模糊としたものが表現されつつ、やっぱりコーネリアスって、音は透明になる感じがするんです。その透明な感じは、この新しいシリーズのなかにも大きなインパクトを与えていると思うんですけどね。

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おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった

「おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった/ほら 静か」(“外は戦場だよ”)っていうところがあるんだけど、そういうところに共感しますね。


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

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ここ数年、音楽シーンのひとつのモードとして、ちょっとニューエイジなものがリヴァイヴァルしているところがあるんですね。(クリスチャン・)ラッセンにスポットが当たったり、「シーパンク」って呼ばれるようなファッションが注目されたり……

小山田:ええ! ラッセンなの?

そうですね。何かとイルカなムードなんです。

野田:ほら、90年代リヴァイヴァルでもあるからさ。

小山田:ああ、(ジ・)オーブとかの感じ。

野田:そうそう。

はい。一方にそういうちょっとドリーミーでメディテーショナルな感覚があって、そこではあんまり暗い気持ちとか、絶望みたいなものは鳴らされていないんですね。どこかでそういうモードを感じられていたりしたところはありませんか?

小山田:そういうムードがあるっていうのは知らなかったけど(笑)。

ふだんは社会というところが暗いというふうに感じますか?

小山田:まあ、暗いといえば暗いし……。

すみません(笑)。「暗い曲が多い」という認識に対して、どこか明るく感じられるところにこだわりたかったので……。90年代リヴァイヴァルということについては、何か感じられている部分はありますか? ハウスとかR&Bを中心にして、いま本当にそんな機運なんですよ。

小山田:あんまり感じないですけど、まあそろそろかな、という気はしますよね。

野田:これからどんどん感じると思いますよ。

小山田:ひととおり80年代の巡回も終わってるように見えるから、90年代にちょっとフレッシュな感じがあるんだろうなとは思います。

野田:フリッパーズ・ギターとかがね。

血を引くような存在が出てきていますよね。

野田:フリッパーズ・フォロワーみたいなバンドが、新鮮な感じで受け入れられているんだよね。

小山田:ほんと? 絶対(フリッパーズのこと)知らないでしょう?

野田:いやいや、ぜんぜん知ってるよ。20歳くらいの子たちにしてみれば90年代ってすごく新しいからね。

小山田:そっか。年齢的には僕らの子どもくらいになってくるよね。その子たちが生まれたころが90年代くらいでしょ? ちょうど、僕たちに60年代とか70年代のものがカッコよく見えたのとまったくいっしょなことなんだろうね。

リヴァイヴァルっていう意味はおいておくとしても、ハウスを意識した部分はなかったですか? わりと「ドッチンドッチン」っていうトラックが入っているんですけれども、ちょっと新鮮でした。

小山田:うん、「ドッチンドッチン」はわりと入ってますね。

躍動感を出すため、みたいな理由でしょうか。いまわりと世間的にこういう気分だっていうふうに感じていた部分はないですか?

小山田:うーん、両方かな……。

野田:でもダンス・ミュージックを作ってるっていうところは、トピックだね。わりと直球なね。

そう思います。

小山田:うーん、そうかもね。

野田:だって、『カメラ・トーク』の福富(幸宏)さんがリミックスした曲(“ビッグ・バッド・ビンゴ”)、あれをいまみんな探してるんだよ!

小山田:ええ、うそ! へえー……。若い子が?

野田:そう。しかも日本人だけじゃなくてね。

小山田:そうなんだ。

あとはクラウトロックっぽいものの気分もありました。2000年代後半は、若いバンドやアーティストにすごく参照されて、スターも生まれて。“スター・クラスター・コレクター”とかも、ちょっとそういう琴線に触れるんじゃないかと思います。

小山田:へえー、そうなんだ。でもまあ、どっちも偶然かなあ。クラウトロックはずっとあるといえばあるし。

それもたしかにそうなんですけど、ジャンルをまたいで一気にメディテーショナルなモードが広がって、そのなかでクラウトロック的なものの存在感はとても大きいものだったんです。
……というムードもまだ余韻を引いているなか、“外は戦場だよ”というボーダー2(『攻殻機動隊ARISEborder:2GhostWhipers』)のエンディング曲が鮮やかでした。小山田さんには「外は戦場」というような感覚はありますか?

小山田:外は戦場……。うーん、どうなんだろうね。

言葉尻からすると酷薄な世界観のようにも見えますけれども。

小山田:いや、そういうことよりも……。なんて言ったらいいのかな……。最後の方に「おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった/ほら 静か」っていうところがあるんだけど、そういうところに共感しますね。

ああ……。それは、「おおきなこえをだすひとたち」は、干渉するものっていうような感じでしょうか。暴力とかもふくめて。

小山田:うーん、そうね……、ほっといてほしい感じ。……何なんだろうな(笑)。

ここはとっても両義的な部分かと思うんですが(※)、「ほら 静か」は、肯定的な感じですか? そうならざるを得なくなってなったという静かさですか?
(※詞のなかばに「心配ない/見て/外は/戦場だよ」という逆説がある)

小山田:うーん。

より自分にとって居やすいところになったのか、その逆なのか……。

小山田:なったんだかなっていないんだか、実際はよくわからないんだけど、どっちも含んでいる感覚なのかな。

Synth-pop, Rock & Roll, Electronica, Juke, etc. - ele-king

Inga Copeland - Don't Look Back, That's Not Where You're Going
World Music


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「Don't Look Back, You're Not Going That Way.(振り返らないで、あなたはそっちではない)」、いかにもアメリカが好みそうな自己啓発的な言葉で、沢井陽子さんによれば、この言葉がポスターになったり、ブログのキャッチになったり、本になったりと、いろんなところに出てくるそうだ。インガ・コープランドは、そのパロディを彼女のセカンド・シングルの題名にしている......といっても、この12インチには例によってアーティスト名も曲目もレーベル名も記されていない。表面のレーベル面には、ナイキを着てニコっと笑った彼女の写真が印刷されていて、裏側は真っ白。ちなみにナイキは、彼女のトレードマークでもある。
 Discogsを調べると今回の3曲のうち2曲はDVA、1曲はMartynがプロデュースしているらしい。ディーン・ブラントではない。ベース系からのふたりが参加している。レーベルの〈World Music〉は、ブラントとコープランドのふたりによる。1曲目の"So Far So Clean"はアウトキャストの"So Fresh, So Clean"のもじりで、「いまのところとってもクリーン」なる題名は悪ふざけだろう。シニシズムは相変わらずで、しかし音的にはスタイリッシュになっている。

Synth-pop

Jamie Isaac - I Will Be Cold Soon
House Anxiety Records


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 デビュー・アルバムのリリースが待たれるキング・クルーの初期作品を出していたレーベルから、冷たい心を持った新人が登場。簡単に言えば、ザ・XX、ジェイムズ・ブレイクの次はこれだろう、そう思わせるものがある。まだ聴いてない人は、"Softly Draining Seas"をチェックしてみて。

E王

Electronic Blues

Americo - Americo graffiti PEDAL


 アメリコは、50年代のロックンロール(ないしはフィル・スペクター)×70年代の少女漫画(ないしは乙女のロマンス)×70年代歌謡曲×ポストパンクという、なかば超越的なバンドだ。坂本慎太郎作品やオウガ・ユー・アスホール作品で知られる中村宗一郎をエンジニアに迎えての12インチで、全6曲。アートワークも楽曲も(そして録音も)アメリコの美学が貫かれている。ヴォーカルの大谷由美子さんは、80年代はクララ・サーカス(日本でザ・レインコーツにもっとも近かったバンド)なるガールズ・ポップ・バンドをやっていた人。

Rock & RollDream Pop

DJ まほうつかい - All those moments will be lost in time EP HEADZ


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 クラスターのレデリウスを彷彿させる素朴なピアノ演奏ではじまる、。DJまほうつかいこと西島大介の4曲入り......というか4ヴァージョン入り。本人の生演奏によるピアノをまずはdetuneがリミックス、自分でもリミックス、そして京都メトロでのライヴ演奏が入っている。エレクトロニカ調のもの、クラウトロック調のもの、少しお茶目で、それぞれに味がある。西島大介といえば可愛らしい画風で知られる漫画家だが、これは漫画家が余興でやったものではない。僕は最初の2と3のヴァージョンが良いと思ったが、もっともシリアスなライヴ演奏が最高かもしれない。

Modern ClassicalAmbient

DJ Rashad - I Don't Give A Fuck Hyperdub


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 これだけファック、ファック言ってる曲はラジオではかけられないが、海賊ラジオやネットでは大丈夫なのか。DJラシャドの「ローリン」は今年前半の最高のシングルだった。"アイ・ドント・ギヴ・ア・ファック"は前作のソウルフルなな路線とは打って変わって、残忍で、好戦的で、不吉で、緊張が走る。声ネタを使ったDJスピンとの"Brighter Dayz"ではジャングル、フレッシュムーンとの"Everybody"でも声ネタを使った、そして頭がいかれたジャングル、DJメニーとの"Way I Feel"はパラノイアックで不穏なR&Bを披露する。楽しんでいるのだろが、しかし......やはり恐るべき音楽だ。

Juke, Footwork


にせんねんもんだい
N

美人レコード

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2011年のライヴ盤以来久々のリリースとなった、にせんねんもんだい『N』(美人レコード)。〈zelone records〉からはその12インチ・ヴァイナル化の報とともに、レコ発パーティの開催が案内されている(8月リリース予定)。「いつもとは違う」という特別なライヴに期待が高まる。
今年に入ってからも国内の大型フェスに続けて出演し、6月には9度目のEUツアー(4カ国8カ所)を敢行、7月5日には!!!(チックチックチック)との共演、7月13日には〈FREEDOMMUNE〉への出演と、西へ東へ飛び回る彼女たちのいまのエネルギーと、それをクールに閉じ込めた演奏、構築度の高い楽曲スタイルを堪能しよう。

多彩なDJが参加!
まずは今回の12inchのサウンド・プロデューサーであり、Ogre You Assholeやゆらゆら帝国のプロデューサーとしても知られる、石原洋。
つづいて、LIQUD LOFTの名物イヴェント〈COMPUMA 7hours〉や悪魔の沼でもおなじみ、日々フレッシュでユニークなファンク世界を探求し、昨年末には最新MIXCD『MAGNETIC』を自身のプロジェクト〈SOMETHING ABOUT〉からリリースしたばかりのコンピューマ。
そして、今年3月に、最前線のテクノからオルタナティヴ・ハウス、そしてインダストリアル、ノイズ、ドローンなど広義な電子音楽を未体験のサウンドスケープへと昇華した、
2年ぶりのオフィシャルMIXCD『Crustal Movement Volume 01 - Dream Into Dream』をリリース。この国のダンスフロアを語る上でもはや欠かせない存在となっている、〈FUTURE TERROR〉主宰、DJ Nobu。
さらに、〈zelone records〉主宰、坂本慎太郎がDJとして初登場します。

にせんねんもんだいのレコ発パーティにふさわしい、よりミニマルでインダストリアルな一夜になるでしょう。
2013年東京発、ガールズ・オルタナティヴ最前線をいま一度体験せよ!

zelone records presents
"NISENNENMONDAI 12inch vinyl Release Party!"

■LIVE
にせんねんもんだい

■DJ
石原洋
Nobu (FUTURE TERROR/Bitta)
COMPUMA
坂本慎太郎

■開催日
2013年8月20日(火)

■会場
LIQUID LOFT + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]

■開場 / 開演
19:00 / 20:00

■前売券
2,000円(1ドリンク付き)
*ローソンチケット[Lコード 77351]、イープラス、ディスクユニオン(新宿本館 日本のロック・インディーズ館(BF)/渋谷中古センター(2F)/お茶の水駅前店/下北沢店/吉祥寺店/池袋店/立川店/町田店/横浜西口店/柏店)、リキッドルーム

■問い合わせ先
リキッドルーム 03-5464-0800 https:///www.liquidroom.net 
zelone records 03-6320-4396 https:///www.zelonerecords.com

■にせんねんもんだい (NISENNENMONDAI) バイオグラフィ
1999年: にせんねんもんだい結成。G-高田、B-在川、D-姫野、東京を中心に活動。
2004年: ep"それで想像する / ねじ"、2005年ep"トリ"をnisennen/dotlinecircleより発表。
2006年: 自主レーベル "美人レコード" 創立。
同年アルバム"ろくおん"、2008年"デスティネイショントーキョー"、2009年"FAN"を発表。海外レーベルsmalltown supersoundより"TORI/NEJI","DESTINATION TOKYO"をリリース。
2011年: 結成12年の集大成・初のライブ盤"NISENNENMONDAI LIVE!!!"を発表。
過去、3回のUSツアーと8回のヨーロッパツアーを敢行。
2013年: "NO NUKES"、"Sonar Sound Tokyo"に出演、6月には9回目のヨーロッパツアー。
この夏、新作CDを自身の"美人レコード"から、New 12inch Vinylをzelone recordsから発売予定。

official HP: www.wearenisennenmondai.com


Music Video"B-1 (You Ishihara Mix)"zelone official YOU TUBE:

■more info
zelone records official HP:www.zelonerecords.com
official twitter: https://twitter.com/zelonerecords
official face book: https://www.facebook.com/zelonerecords

 東京の幡ヶ谷にある異空間「LOS APSON?」が恵比寿リキッドルームの〈KATA〉で、大々的にTシャツ販売大会を実施する。これがとんでもないメンツだ。日本のストリート・カルチャー/アンダーグラウンド・シーンの総決起とも言えるような内容になっている。本格的な夏に向けて、Tシャツを買うならいましかない。そして、少数しか作られない格好いいTシャツを探すなら、ココに行くしかないでしょう。坂本慎太郎のzeloneのTシャツから五木田智央、ヒップホップのWDsoundsやBLACK SMOKER RECORDS、COMPUMA等々、「LOS APSON?」から送られてきた以下の資料をじっくり読んで、その参加者の膨大なリストに驚いて欲しい。

(以下、資料のコピペです)

 白い~マットのジャングルにぃ~、今日もぉ~嵐が吹き荒れ~るぅ~♪ということで、おまんた?アゲイン!!! 今年2013年も"T-SHIRT! THAT'S FIGHTING WORDS!!!"の季節が、遂にやってまいります! 回を重ねるごとに出品参戦者も続々と増え、闘魂バトル・デザイン壮絶!あの手この手のアイデア空中殺法!Tシャツのみならずの場外乱闘!十六文キックに卍固め、サソリ固め、ラリアットに、バックブリーカーに、スピニング・トーホールド、そしてマイナーな?決め技、人間風車まで飛び出す始末!!!(なんのこっちゃ...暴走しすぎ。。。) そんな、ストロング・スタイルから金網デスマッチまでをも網羅したような総合格闘Tシャツフェアが、この"T-SHIRT! THAT'S FIGHTING WORDS!!! 2013"なんですっ!!! そして今年は、なんと!なんと!あの革新邁進画家!大竹伸朗氏(宇和島現代美術)が、バ・バ・バーーーンと遂に参戦決定!!! Tシャツ虎の穴から大本命現れる!みたいな感じで、オジッコちびりぞぉーーー!!! Tシャツフェア参戦者達をゾクゾク・ビンビンに震撼させています! 我がロスアプソン・チームは今回、開店当初からお付き合いさせて頂いているSAMPLESSさんにデザインを入魂オーダー!めちゃんこカッコイイ(自我自賛!)3パターンのTシャツを取り揃えました!!! こりゃ、Tシャツフェア史上における記念メモリアルイヤーになりそうです!!! さあ~それでは、そんな特濃3日間に無くてはならないDJミュージック・プレイヤー達を紹介してまいりましょう! 初日は「GRASSROOTSな夜ぅ~」と題して、"ミュージック・ラバー・オンリー"を掲げるGRASSROOTSのオーナーINSIDEMAN a.k.a. Qと、MIX CD「Crustal Movement Volume 02 - EL FOLCLORE PARADOX」も好評のワールド・パラドックス・ハイブリッド・ミキサーShhhhh、そして女性アーティスト集団WAG.からオヤG達をも唸らせる選曲ムードを醸すLIL' MOFOが参戦! 中日は、酔いどれトロピカル・ハウス・パーティー「細道の夜ぅ~」で、Tシャツフェアでも毎年大人気!お馴染みの373&DJ DISCHARGEと、ALTZのレーベルALTZMUSICAからリリースしたMIX CDが早々に完売したマジカル・オーガニック奥様bimidoriの細道トリオが集結! そして、最終日は異種格闘バトルよろしく、トリップ・ストレッチングMIX「UNWOUND MIX」が大ロングセラー中のBING、ぶっトバしにかけては現在最高峰のDJ!アシッド夢芝居テクニシャンのKEIHIN、キュートなサイケデリックHIP HOPにファン急増中のDJ Highschool、そして私ロスアプソン店主ヤマベの4人にて、一時間ごとにムードがガラリと変貌するミル・マスカラス的?異空間を楽しみながら、Tシャツ争奪に参戦して頂ければ幸いです!!! 3日間の会期中はTime Out Cafe & Dinerスペースにて、お食事&喫茶&お酒を飲んだり出来るのですが、最終日には、ロスアプソン西新宿店時代に毎日モニターで流していたPOP実験映像、'80sブレイクダンス、レア・ベルベッツ、あるバンドの解散コンサートetc.を収録した伝説の?7時間ビデオの特別上映もありますので、お買い物参戦に疲れたらダラリとそちらの方も鑑賞してみて下さい。さあ!さあ!さあ!ゴングが打ち鳴らされる時が迫っています! 今からしっかりと準備万端、走り込み&うさぎ跳びなどをして体力をつけて、ご来場下さいませっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(山辺圭司/LOS APSON?)

2013.6.28 (fri) ~ 30 (sun)
at KATA
(東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F)
https://www.kata-gallery.net/
open 15:00 close 22:00
Entrance Free!!!

〈参加アーティスト/ブランド〉
LOS APSON?, 宇和島現代美術(大竹伸朗), 五木田智央, SAMPLESS, zelone records, SEMINISHUKEI, Vicinity, DJ Discharge, 373, KIZM, GRASSROOTS, KLEPTOMANIAC, JOJI NAKAMURA, 86ed, BLACK SMOKER RECORDS, HE?XION! TAPES, THE GODS ARE CRAZY, SONIC PLATE, COLORgung, DMB PRODUCTION, DREADEYE, PARANOID, COSMICLAB, COMPUMA, hentai 25 works, MANKIND, Ackky, 威力, TACOMA FUJI RECORDS, TARZANKICK!!!, TOGA, TRASMUNDO, BOMBAY JUICE, BREAKfAST, BATH-TUB OffENDERS, MGMD KRU, 2MUCH CREW, chidaramakka by syunoven, 大井戸猩猩, 植本一子, VINCENT RADIO, WACKWACK, WDsounds, WENOD RECORDS, WOODBRAIN/水面花木工, word of mouth, Akashic, BLACK SHEEP, 4L, chill mountain, DEATH BY METAL / galeria de muerte, ESSU, ExT Recordings, FEEVER BUG, 2YANG, 37A, FORESTLIMIT, GEE, KEN2-DSPECIAL, MAGNETIC LUV, MidNightMealRecords, MOWHOK ART SHOP, nightingale, noise, SLIMY MOLD HEAVENS, SpinCollectif TOKYO, STRANGER, SUMMIT, TUCKER, LIQUIDROOM and more!!!

〈追加アーティスト/ブランド〉※6月22日現在
コトノハ, dublab.jp, STRUGGLE FOR PRIDE, INDYVISUAL, ヨロッコビール, DogBite, amala, 前田晃伸, RWCHE, SWOW Backshelter Lab.

〈DJ Time/17:00~〉
6.28 fri
「GRASSROOTSな夜ぅ~」
DJ: INSIDEMAN a.k.a. Q, Shhhhh, LIL' MOFO

6.29 sat
「細道の夜ぅ~」
DJ: 373, DJ DISCHARGE, bimidori

6.30 sun
「異種格闘でバトルな夜ぅ~」
DJ: BING, KEIHIN, DJ Highschool, ヤマベケイジ

more information
https://www.losapson.net/tshirtfair/
https://twitter.com/losapson



NISENNENMONDAI - ele-king

 ノルウェーの〈スモールタウン・スーパーサウンド〉から作品を出したり、先日のソナーサウンド・トーキョーにも出演したり、海外にも多くのファンを持つ、女性3人による超クールなミニマル・ロック・バンド、「理工学系女子サウンド」代表、にせんねんもんだいの新作『N』が、彼女たち自身の〈美人レコード〉からリリースされる。
 そして、坂本慎太郎が主宰する〈zelone〉からは、新作の1曲+"appointmen"の新録ヴァージョンによる12インチのアナログ盤が出る。しかも、この、「理工学系女子サウンド」の裏方には、石原洋+中村宗一郎(ゆらゆら帝国~オウガ・ユー・アスホールでの仕事で知られる)がいる!
 6月2日には、アルバムの発売に先駆けて、渋谷の〈渋谷O-NEST 〉にてライヴもある。行きましょう。

■新作CD 『N』、7月2日(火)発売!

にせんねんもんだい
『N』
bijin records
曲目:
1. A
2. B-1
3. B-2 
価格: 1,800円 (税別)

■12inch vinyl:「NISENNENMONDAI EP」Produced by 石原洋

2013年夏発売予定
にせんねんもんだい
「NISENNENMONDAI EP」
zelone records
曲目: SIDE A: B-1 (You Ishihara Mix)
SIDE B: appointment (You Ishihara Mix)
価格: 1,200円 (税別)

■CD完成記念LIVE
6月2日 (sun)@渋谷O-NEST

■NISENNENMONDAI EUROPE TOUR 2013

JUNE 14 FR-Notre Dame de Monts@West Side Festival
JUNE 15 FR-Paris@Maroquinerie
JUNE 16 NL-Rotterdam@Worm
JUNE 17 BE-Kortrijk@De Kreun
JUNE 19 NL-Tilburg@013-Incubated night
JUNE 20 GER-Hamburg@Cloud Hills
JUNE 21 GER-Schiphorst HH@AVANT GARDE FESTIVAL
JUNE 22 GER-Berlin@Urban Spree
more info: nisennenmondai official HP: https://www.nisennenmondai.com/
official twitter: https://twitter.com/nisennenmondai0
official tumblr: https://nisennen.tumblr.com/

zelone records official HP:www.zelonerecords.com
official twitter: https://twitter.com/zelonerecords
official face book: https://www.facebook.com/zelonerecords


Christopher Owens - ele-king

 開演前のSEで、アトラス・サウンドとビーチ・ハウスの曲が会場で流れた。クリストファー・オウエンスが選曲をしたのだろう。僕はそれを聴き、ガールズの"ラスト・フォー・ライフ"で歌われている、「 I wish I had a beach house」という一節を思い出しながら、そういえばあの歌を聴いてから約4年が経過したんだなぁ~と物思いに耽っていた。

 クリストファー・オウエンスはその4年のあいだに、2枚のアルバムをガールズからリリースしたのち、去年、自らバンドの活動に終止符を打った。

 新しい道を歩みはじめるべく、彼が選んだ選択はソロ活動で、デヴュー・アルバム『リサンドレ』の発売は、これまでの暮らしや、自分が窮屈だと感じてしまうバンドでの日々との決別であった。
 今作の、これから先に待っているものが、これまで以上に輝かしく、愛に溢れる自由で希望の道なんだと言わんばかりのソングライティングは、新しい決意に溢れ、4年という歳月のなかで彼が培った、音楽への底知れない深い慈しみと、彼自身の成長とが落とし込まれた作品でもあった。

 そんなアルバムを引っ提げての来日公演。アメリカまでガールズを観に行っちゃう僕からしてみれば、楽しみでないはずがない! それに、作品を盛り上げていたフルートやピアノ、さらにはサックスなどの楽器を取り入れたスケールをどこまでライヴに反映させることが出来るのか、とても興味深かった。

 ステージに登場したクリストファー・オウエンスを含む7人のサポート・メンバーは、アルバム同様『リサンドレ』のテーマ・ソングであるAマイナーのインストゥルメンタルから、曲順通りに次々とライヴを進行させた。"ニュー・ヨーク・シティー"や、"ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン"などのアップテンポなロック・チューンで会場は盛り上がりはじめたが、その後はしっとりと聴かせるナンバーが続き、アンコールで5曲のカヴァー・ソングを披露してライヴは終了。......あっという間だった。

 ライヴは50分あまりの、わりと「あっさりしたもの」だったが、キャット・スティーヴンス、ドノヴァン、サイモン&ガーファンクル、エヴァリーブラザーズ、ボブ・ディランなどの、往年のアーティストの名曲を披露したアンコールはとても盛り上がった。そして、アルバム録音メンバーと同じサックス奏者の演奏は常に素晴らしかった。
 良いライヴだっただけに、次回は是非、会場から汗が出るほどぎっしり埋まって欲しいし、僕と同世代の人にもっと来て欲しい。
 ちなみに、当日会場に来られた坂本慎太郎さんは、ママギタァと日本の古いミュージシャンのCDをいくつか渡したそうです。
 また、後日談として、坂本慎太郎さんの歌詞を萩原麻理さんに英訳してもらったクリストファー・オウエンスは、"まともがわからない"の歌詞をえらく気に入ったそうだ。ハハハハ。良い話。

 クリストファー・オウエンスは優しさを語れる、数少ないアーティストなのかもしれない。ライヴを見ながら、そんな大きなことを思ってしまった。

HDを捨てレコ屋に行こう - ele-king

坂本慎太郎 - 幽霊の気分で(Cornelius Mix)/悲しみのない世界(You Ishihara Mix)
zelone records

噴水プールのまわりをアシッドの浮き輪で浮かんでいる音響。コーネリアスと石原洋のリミックス収録のレコードストア・デー(4月20日)限定の7インチ。音もアートワークも良い。早い者勝ち。

PychedelicPop

Baio - Sunburn EP Greco-Roman

あれもハウスこれもハウス。これは、昨年、配信で発表したヴァンパイア・ウィークエンドのベーシストによるハウス、そのアナログ盤。初期のベースメント・ジャックスを思わせるバレアリックで、出すなら夏前しかない。パーカッション、メロウなギター、キックドラム、うねるベースライン、美しいメロディ......新しくはないが良い曲に違いない。

House

Disclosure Feat. AlunaGeorge - White Noise PMR Records

7インチ時代のガラージ風のアプローチはどこに行ったのだろう。

House

A/T/O/S - A Taste Of Struggle Deep Medi Musik

曲調からは初期のトリッキーを思い出すが、リズムにはUKガラージが入っている。B面にはスクリームとコモドーのリミックス収録。どちらも格好いい。

DowntempoR&BDubstep

TOWA TEI - Licht(リヒト) ワーナー

テイ・トウワによるクラフトワーキッシュな新曲。リズムも音色も、細かいエディットも可愛らしく、後半のメロウな展開も良い。何かしながら家で聴くには最高。

https://itunes.apple.com/jp/album/id630063567

KroutrockTechnoPop

Rainer Veil - Struck EP Modern Love

インダストリアルと呼ばれているシーンが、実験とレイヴの激突であることを告げている1枚。新人だが、この先が楽しみ。

JungleExperimental

Mark Ernestus presents Jeri-Jeri with Mbene Diatta Seck - Xale Ndagga

Mark Ernestus presents Jeri-Jeri - Bamba Ndagga

昨年から続いているマーク・エルネストゥスのこのシリーズはまったく外れ無し。セネガルのアフロ・トライバル・ファンク+ベルリン・ダブ、録音の良さがハンパない。芸術的な領域。素晴らしいポリリズム。2枚とも推薦。

AfricanDubFunkMinimal

Aoki Takamasa - Constant Flow Svakt

スイスのアナログ盤専門レーベルからの第二弾。欧州では圧倒的な評価をほこるアオキ・タカマサ。20分を越えるテクノ旅行、じっくり時間をかけて景色が変わる。題名曲のみ収録。

TechnoMinimal

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