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![]() プラスティック・オノ・バンド!(photo: Kevin Mazur/ Wire Image ) |
プラスティック・オノ・バンドが、去る2月16日(木)に〈BAM〉で再結成しプレイした。「●●がゲストに来る」......など、私のまわりでもさまざまなうわさが回っていて、ショーはあっという間にソールドアウト! あまりにも早くて、この1日前にはリハーサルをパブリックに公開するショーも追加で催された(こちらもかなり競争率が激しかったらしい)。
![]() プラスティック・オノ・バンド! (photo: Kevin Mazur/ Wire Image ) |
このショーは、現在のオノ・バンド・メンバー(コーネリアス、ショーンレノン、本田ゆか)に加え、曲ごとに豪華なゲストが登場した。エリック・クラプトン、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードン、ポール・サイモン、ベティ・ミドラー、マーク・ロンソン、シザー・シスターズ、細野晴臣......この上ない豪華なショーである。年齢(77歳!)をまったく感じさせないパワフルなパフォーマ ンスはもちろん、彼らをこの場所に一同に集めることができるYoko Onoの存在はさすがというしかない。このショーを見た人は一同に「彼女はすごい!」と言うし、このゲストたちが、最後に一列に並んであいさつした時は、ニューヨークにおけるYoko Onoと言う存在を重要さを再確認した。
![]() mi-gu |
![]() Ghost Of A Saber Toothed Tigers |
ところで、私が今回ピックしたいのは、数日後に行われたmi-guのショー。mi-guはコーネリアスのドラマー、あらきゆうこさんのバンドで、昨年は〈HEARTFAST〉のCMJショーケースにも出演して頂いた。ショーン・レノンとガールフレンドのバンド、Ghost Of A Saber Toothed Tigers(Sean Lennon & Charlotte Muhl)の前座として出演。ギターのシミーとドラム&ボーカルのゆうこさんの息もぴったりなショーは、数日前のプラスティック・バンドと比べるとこじんまりして、タイプは違うが、雰囲気がとてもよく、観客もアットホームな感じで、声援を送ったりして盛り上げる。観客には、坂本龍一の姿もあり、私の友だち(アメリカ人男)は大興奮して、一緒に写真を撮ってもらったりしていた。最後の2曲にはゲストとしてショーン・レノン、本田ゆか、そしてコーネリアス本人が出演。そして次のバンド(Ghost~)が登場すると、先ほどと、メンバーがシャーロット以外全て同じ! ただ、そのシャーロットが、この世のものとは思えない程かわいい。ショーン・レノンが自慢したくなる気持ちもわかるが、かわいいだけでなく歌も歌えるしベースも弾ける。基本ショーンとシャ―ロットふたりのバンドなのだが、今回はメンバーがいたのでバンド編成になっている。フォーキーなロックで、サウンド的にはショーンのソロに女の子ヴォーカルが入った感じだ。
2月、NYはファッションウイークでもある。うちの近所のウィリアムスバーグにもファッション・ショーが存在する。NYファッション・ウイークエンドに対抗したウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)だ。ローカルの若いデザイナーたちが斬新なアイディアや手法で洋服を作り、個性あるファッション・ショーを作っていく。 洋服はもちろんのこと、とくに面白いのはデザイナーのプレゼンの仕方。NYファッション・ウイークのように、洋服がメインで、モデルがキャット・ウオークをするだけではなく、こちらは、どちらかというとパフォーマンスがメイン。
![]() ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドにおけるフラウク |
![]() トータル・クラップ |
![]() ロボット・デス・カルト |
今回の2010年春夏のショー は、WFWでは初のサンフランシスコのデザイナーで、テクノロジーv.s.自然をテーマにしたライン、フラウク、グラムとパンク、アヴァンギャルドをミックスしたライン、トータル・クラップ、Lace & Voidをテーマにし、普段も着れるドリーミーさが売りのデシラ・ペスタ、主催者のラインであるKing Gurvy等々......。
個人的にいちばん好きだった、ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティはリーズ・ア・パワーズのミュージック・ヴィデオ"イージー・アンサーズ"のデザインも担当していて、メンバーはモデルで登場したり、アフター・パーティではDJをしたり大活躍。2010年の冬をイメージした野生の冒険のキャラクター、ガチョウ、イルカ、カエルをモチーフとし、カラフルな色を切り貼りしてリサイクルした洋服を着たモデルたちがラッパーに合わせてダンス・パフォーマンスを展開。ホットドッグやアイスクリームを、ウエブサイトの入ったフライヤーと一緒にオーディエンスに投げたり......。
アートギャラリーでもある、シークレット・プロジェクト・ロボットのライン、ロボット・デス・カルトは、モンスター(ドラキュラ、フランケンシュタインなど)メイクのモデルたちが、ロボット・デス・カルト印の旗を持って、ステージに突如現れ大騒ぎ、そしてすぐに去る。5分ぐらいのショーだったが、存在感とインパクトは圧倒的。
どのデザイナーもいまあるものを使い、いろんなアイディアを組み込んで、新しいものに変えていく。レイヤーだったり、コラージュだったり、リサイクルだったり。NYファッションウイークと規模はまったく違うけれど、DIY精神の面白いファッションショーだと毎回感心する。
最後に、このファッション・ショーの主催者のアーサー・アービットに話を訊いてみた。彼は、元ツイステッド・ワンズという名前で、ライトニング・ボルト、ブラック・ダイス、ヤーヤーヤーズ、ライアーズなどを初めてウィリアムスバーグでブッキングした人で、最近では、DJ、イラストレーターとしても活躍している。また、普段もスーツでびしっと決めている人だ。
RNY:ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)はいつ、どのようにはじめたのですか。
アーサー・アービット:3年前、これから出てくる若手デザイナーにプラットフォームを作ってあげたいと思った。
RNY:NYのファッション・ウィークとは、どの辺が異なりますか?
アーサー・アービット:デザイナーたちはデザインをプッシュすること、それを創造する工程にとくに興味を持っていて、ビジネスは透明になっている。
![]() ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドの主催者のアーサー・アービット |
RNY:当日いろんなメディアのインタヴューを受けていましたが、WFWはどのようにプロモートしているのですか。
アーサー・アービット:いつも同じだけど、主要なメディアやブログサイト、ファッション業界の人たちだね。
RNY:WFWで何が大変で、何が楽しみですか。
アーサー・アービット:いまは楽しいことしか思いつかない。これが自分のやりたいことだからね。
RNY:あなたは主催者でもあり、デザイナーでもありますが、あなたの洋服ライン「King Gurvy」を紹介して下さい。
アーサー・アービット:エクスペリメンタル!
RNY:2010年おすすめのデザイナーは。
アーサー・アービット:フラウク(Flawk)だね!
10年前に(紙の)エレキングで追悼文を書いたビリー・マッケンジー(アソシエイツ)はその後も発掘音源がぽつぽつとリリースされ、なかではクラブ・トラックばかりを集めた『オーフターマティック』(04)は仕事から離れたいときにはよく聴いていた。イエロと組んだ"リズム・ディヴァイン"は歌詞が丸ごと差し替えられた"ノーマ・ジーン"に、パスカル・ゲイブリエル(元ボム・ザ・ベース)のプロデュースによる"サワー・ジュエル"やユーリズミックスのカヴァー(ポール・ヘイグによるプロデュース)など、聴いたことのない曲も多く収録され、壮大極まりないルームとのトランス・ページェント"アナコスタ・ベイ"はフルで採録。バリー・アダムスンのプロデュースによる"アチーヴド・イン・ザ・ヴァレー・オブ・ドールズ"や元ラグジュリアのノコによるアポロ440がプロデュースした"ペイン・イン・エニー・ランゲージ"などマガジン周辺とのセッションが2曲も聴けちゃうし、ピーター・アッシュワースによるボツ写真のようなカットもファンにはたまりません(B.E.F.やスティフン・エマーなど、レイヴ・カルチャー以前のものはナシ)。生前の作品としてリリースされた他のアルバムよりも聴き応えのあるところは少々、複雑だったりもするけれど。
......そこに送られてきたジ・イレプレッシブルズ。インフォメーションだのなんだのは読まずにいきなりサンプル盤を聴き始める僕は「えッ」と驚いた。声がまるでビリー・マッケンジーだし、歌い方もサウンドもそっくりで、プレス・シートにあるように、なるほどスコット・ウォーカーを参考にしてるというのはわかるものの、それにしても......やはりビリー・マッケンジーにしか聴こえない。たしかにデヴィッド・ボウイやケイト・ブッシュと比較されることが多いというのも頷ける。しかし、僕にとっては、これはビリー・マッケンジーのそっくりさんである。その陰を払拭して聴くことは、僕には一生不可能だろう。時々、死んだ妻に酷似した女性を見かけて、内面はまったく違うのに、また再婚してどうの......というドラマがあったりするけれど、いきなりその主人公にされたような気分である。妙だ。延々と妙な気分が続いている。何度、聴いてもその気持ちに変化はない。そして、その気分をたしかめるためにまた何度も何度も聴いてしまう。
実際には10人組でバロック・オペラを基調とした現代音楽のグループだと資料には書いてある。ビリー・ホリデイがパンク・バンドで歌うという設定ではじまったニュー・ロマンティクスの変り種だったアソシエイツとはどこも重なるところがない。アントニー&ザ・ジョンソンズとも比較されることが多いらしく、そうだよなー、いまだったらそうなんだろうなーとも思うものの、頭がちっとも現在形の音楽シーンには染まってくれない。この人たちには悪いけれど、アソシエイツのファンと「どーなの、コレ?」とかいう会話がしたい(せっかく7年間の活動を経てメジャー・デビューに漕ぎ着けたというのに......)。ビリー・マッケンジーに大きな影響を受けたといっていたビヨークは、そして、どう思うんだろうか。「ビリー・マッケンジーは本当に空虚だ」と歌っていたモリッシーは。あー、また、いま、高音がそっくりに張り上げられた......。
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STRUGGLE FOR PRIDE
『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD
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ECD
『ライブ30分』CD-R
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CE$
『Steal da city』
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STRUGGLE FOR PRIDE
BRAND NEW T-SHIRTS
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ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA)
『DUB CITY OF CURSE』
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UG KAWANAMI
『DROP SCENE』
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CARRE
『SONIC BOOM』
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MEDULLA CAP
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K-BOMB
『TRIPLE SIXXX!-OLIVE OIL REMIX-』
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Eternal B
7inch
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いやー、本当に、ぶっ飛びすぎ!......てか、笑えてくる。壮大な"エイリアン・ミュージック"に出会ってしまったのかもしれないな。黒光りするシンセが痛いくらいにまぶしいぜ。
ハウスを借り物にブラック・ジャズの更新をはかるサンフランシスコの奇才――それがデイブ・アジュだ。ベルリンのマイマイやモントリオールのギヨーム・アンド・ザ・クーチュ・デュモンツのリリースで知られる〈サーカス・カンパニー〉を拠点にしているため、いわゆるモダン・ミニマル/ディープ・ハウスの文脈から語られることが多いプロデューサーだが、彼のポテンシャルはそんなものではない。あのマシュー・ハーバートが期待をよせるヴォイス・パフォーマーのひとりでもある。
少し振り返ろう。2007年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされた「Love Allways」はアリス・コルトレーンに捧げられたものだった。ルチアーノのリミックスが収録された、2008年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされたシングル「Crazy Place」はフロアヒットした。同年にリリースされた自身のスキャットとヴォイス・サンプルのみで作られたアルバム『Open Wide』はビート・ポートの年間ベストのうちの1枚にも選ばれた。サン・ラー、セロ二アス・モンク、バニー・ウォーレル、カール・クレイグ、グリーン・ヴェルヴェット......これらは彼がリスペクトするアーティストのほんの一部だが、彼の曲には必ずと言っていいほどブラック・ジャズの意匠が散りばめられている。
そんな才人が、〈ディープ・メディ〉などからサイケデリックなエレクトロニカ/ダブステップをリリースするヘルシンキのユニット、クラウズが2008年にイギリスの〈ランプ・レコーディング〉に残したトラックをハウスに再構築する。オリジナルはメランコリックなヴィブラホンに優しいトーンのアコーディオンが絡むヒップホップ調のトラックで、ラス・ジーによるリミックスは当時コード9やフライング・ロータスのプレイリストにもあがり、ダブスッテップの側からの支持も得ていた。
原曲のアコーディオンとジャジーなフィーリングは生かされているものの、もはやオリジナルといってもよいほどの出来だ。冒頭から入るローファイでぎらついたシンセサイザーの音色はまるでシカゴのジャマール・モスか、あるいは初期のラリー・ハードを髣髴とさせる。単純で無機質なアジッド・ハウスかと思えばブレイクで突如モーダルなジャズに変化して、原曲で使われているアコーディオンの調べがゆったりと流れだす。構成、展開もドラマチックで面白い。加工されているためわかりづらいが、シンセのリフを良く聴いてみるとファラオ・サンダースとレオン・トーマスがモダン/フリー・ジャズの最重要レーベル〈インパルス〉に残した名曲"The Creator Has A Master Plan"のピアノが元ネタになっていることがわかる。この曲もまさにモダン・ミニマルのふりをしたブラック・ジャズというわけだ。彼はあらかじめクラブを体験してしまったがためにハウスをやっているアーティストであって、前の世代とは逆のプロセスを辿ってジャズに行き着いている。
DJワダの〈イグナイト〉でのアンビエント・セットを終え、天狗食堂で開かれていたDJサチホがオーガナイズする〈リリース・シット〉に駆けつけると、週末の朝に特有のとても良い空気が流れていた。DJはサチホ~スポーツ・コイデ~イナホ~リョウ・オブ・ザ・デックス・トラックスの面子でのローテーションだった。グルーヴがキープされたまま新旧のディープ・ハウスがたんたんと続く。朝の9時をしばらく過ぎると天狗食堂のイナホがロングミックスを聞かせる。足の運びが軽やかだ。スネアに引っかかりがあるが、スマートなミ二マル・ハウスがじょじょに子供の声と水の音、透明感のあるシンセとともに広がっていく。誰も声を上げず首を振りながらその音楽をきいていた。そのトラックここに挙げた。ミルコ・ロコのリカルド・ヴィラロヴォスによるリミックスである。
レイジー・ファット・ピープルのメンバーとして〈プラネット・E〉からヒットを飛ばし、ソロでは現在のプログレッシヴ・ハウスのリーディング・レーベルであるロコ・ダイスの〈デソラ〉からも傑作を放った期待の新星ミルコ・ロコ。その彼のリミックスがルチアーノの〈カデンツァ〉からリリースされた。リミキサーは言わずとも知れたデトロイトのテクノ・ゴッド、カール・クレイグとベルリンのテクノ・ゴッド、リカルド・ヴィラロヴォスである。
カール・クレイグのリミックスはプリミティヴな質感の力強いダンス・トラックで躍動感のあるパーカッションにローランドの名器JUNOの音色と思えるシンセが絡んで、全体がじょじょにビルドアップしていく。まるで音のなかに吸い込まれるようだ。美しく、しかも引きが強いトラックだ。彼が何枚かに1枚だけ見せる本気のトラックなのだろう。デリック・メイの名曲"To Be Or Not To Be"(ゴースト・イン・ザ・シェルのサントラに収録)にも近い感覚とでも言えよう。
いっぽうリカルド・ヴィラロヴォスのリミックスはメランコリックで美しいアンビエント・ハウスだ。スティーヴ・ライヒのミニマリズムを彷彿とさせるような自然音と子供の声が螺旋を描いていく。リカルドらしい抜き差しとダブ処理も効果的だ。ジェームス・ホールデンによって解体されたプログレッシヴ・ハウスのドラマ性とスピリチュアリティはこの曲をきっかけに見事に復活を遂げるのではなかろうか。両面とも大事に使いわけることができる盤だ。
エルサレム出身でニューヨーク在住のパレスチナ人パーカッショニスト、ラズ・メシナイが率いるバダウイのニュー・シングルを紹介しよう。ラズ・メシナイとは......その名前とバダウイ、サブ・ダブ、ベドウィンといった4つの名義を使い分け、DJスプーキーのホームである〈アスフォデル〉、ビル・ラズウェルのリリースでも知られる〈リオール〉、DJワリーが率いる〈アグリカルチャー〉等から数々の傑作を放ってきた男だ。ニューヨークのアンダーグラウンドを象徴するアーティストであり、ユダヤの政治と宗教をテーマにしたサウンドと彼の芸術、そしてその超絶的なパーカッションのテクニックは多方面で高い評価を得ている。最近ではクロノス・カルッテットやジョン・ゾーンとの競演も話題になった。
今回は自身が立ち上げた〈ザ・インデックス〉からの第1弾である。昨年リリースされたコード9とのスプリットで見せたダブステップへのアプローチはさらなる進化を遂げ、"ElTopo"では抜けの良いタブラとばっつり出た低音が絶妙にマッチしたダブステップを展開している。そして"Dstryprfts"のリミックスではシャックルトンがブライアン・イーノのリミックスとはまた違うところで興味深いトラックを響かせる。〈パーロン〉からのリリースでみせたミニマルへのアプローチはさらに研ぎ澄まされ、キックとハット、メロディではなく飛び音として使われるシンセとノイズがかったアシッド・ベースがトランシーにうごめき、時折入るディレイがかかったシンバルがリスナーの意識を遠くに飛ばす。原曲からのサンプルとトースティンによるポエトリーが最小限にキープされたグルーヴのあいだでゆらめいている。僕もよく経験することだが、暗闇のなかで右も左もわからなくなったユーザーに襲い掛かる強烈なバッド・トリップである。
リッチー・ホーティンが2003年にリリースした"Closer"をダブステップに変換したようでもある。アシッド・ハウスのオリジンであるフューチャーの"Acid Tracks"そしてその裏面に収録されている"Your Only Friend"にも共通するような独特のムードを持った曲でもある。まー、手短に言うとこの曲こそが最先端のミニマル・テクノであると僕は思う。
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明るい未来にツバを吐く男として知られる田中宗一郎はゼロ年代の重要項目の5本のうちのひとつにLCDサウンドシステムを選んでいたが、ジェイムス・マーフィのコンセプトにはポスト・パンク期におけるニューヨークのディスコ・カルチャー、通称ミュータント・ディスコがあったことは間違いない。70年代から80年代にかけてのニューヨークの創造的な不協和音めいたシーンの盛り上がりについては、長いあいだ気にはなっていた。だいたい......〈パラダイス・ガラージ〉がある一方で〈CBGB〉があり、ロフト・ジャズのシーンがある一方で〈キッチン〉のシーンがある。ディスコ、パンク、前衛、ジャズ、ミニマルとドローン、そしてサルサ......これらがマンハッタン島内部で交錯していたのが70年代のニューヨークだった。それは戦後の好景気が崩壊し、白人の中産階級が郊外逃亡を加速させ、アフリカ系やラテン系などの移民であふれ、そして商業施設が衰退した時代の産物でもあった。カネのないアーティストや音楽家などは、産業施設としては使い物にならなくなった天井の高い(しかも家賃が安い)ロフトに住むようになると、アメリカ中からも似た者たちが集まるようになった。むしろボロボロの都市だったからこそ、そこには移民もゲイも、貧しいアーティストも暮らしていけたのである――と、ティム・ローレンスはそんなようなことを綴っている。
そうした文化的な猥雑性の高まりのなかで、ディスコは冒険心に富んだ異端児たちの使い勝手のよろしいフラスコとなって、まるで小学生が理科の授業を楽しむように、そのなかにいろんなものを放り込んでは掻き混ぜたのだった。ただしそれは、素人が意味もなくやったわけではない。音楽のスキルを持った連中が、そう、子供のように無邪気に遊んだのだ。それが今日で言うところの"レフトフィールド・ディスコ""ディスコ・ノット・ディスコ"、そして"ミュータント・ディスコ"と呼ばれる一群である。
こうした急進的なディスコの遺産をこの10年のあいだ蘇らせたのは、ロンドンの〈ストラット〉レーベルが2000年に仕掛けた『ディスコ・ノット・ディスコ』シリーズなるコンピレーションだ。これを契機にいっきに再評価(というかようやっと評価)の機運が加速したのが、かのアーサー・ラッセルである。翌年にはシリーズの第二弾がリリースされているけれど、そこにはカンやイエローがアレキサンダー・ロボトニクスやザ・クラッシュとともに収録され、その後の〈DFA〉的な折衷主義の青写真といえる内容となっている。当時は異端視された"レフトフィールド・ディスコ"だが、現代の耳で聴けばエクレクティックなこちらのほうがソウルフルなオリジナル・ディスコよりむしろ親しみやすく感じるのである。
このところ〈P・ヴァイン〉から〈ZE Records〉のバックカタログが再発されている。Z=ジルカとE=エステバーンによる〈ZE〉は、広くはジェイムス・チャンスやザ・コントーションズなどノーウェイヴで知られている。が、他方でレーベルはレフトフィールド・ディスコとも交錯していた。ありていに言えば、〈ZE〉はパンクとディスコを繋げたレーベルである。
『ディスコ・ノット・ディスコ』の第一弾にはウォズ(ノット・ウォズ)のクラシック"ホィール・ミー・アウト"が収録されていたが、あたかもこのチャンスを逃すまいと、〈ZE〉は2002年に再活動をはじめ、2003年には自らも『ミュータント・ディスコ』と名乗ったコンピレーション(CD2枚組)を発売している。〈Pヴァイン〉からの再発では、すでに『Vol.1』と『vol.2』がリリースされ、そして最近は『Vol.3』も発売された。『Vol.1』と『vol.2』は......実は2枚組で発売された2003年の『ミュータント・ディスコ』の評判があまりにも良かったので、レーベルが2005年に2枚に分けてさらに再リリースしたものだと思われる。この2枚には、キッド・クレオール&ザ・ココナッツやウォズ(ノット・ウォズ)をはじめ、ガール・ディスコの先駆けとなったリジー・メルシエ・デクルーやクリスティーナ(......そしてマニアが喜ぶであろうオーラル・エキサイターズ)といったレーベルの顔役たちのフロア・ヒット曲が収録されているわけだが、結局のところ――良い悪い好き嫌いは抜きにして――ジェイムス・チャンス関連のニヒリズムよりもエクレクティックなこちらを掘ったほうが現代的だったのだ。だいたいレフトフィールド・ディスコにおける最大のヒット・メイカーと言えばトーキング・ヘッズであり、ここ数年のシーンの動向を見ていればデヴィッド・バーンとリディア・ランチとではどちらが必要とされているのかは問うまでもないだろう。
『Vol.1』と『vol.2』は捨て曲なしの好コンピレーションだったが、今回発売された『Vol.3』も前2作に劣らぬ良い内容だ。なによりアルバムの最後にスーサイドの"ドリーム・ベイビー・ドリーム"が収録されているだけで価値があるってものだ。石野卓球から中原昌也、はてやブルース・スプリングスティーンまでもが愛する"ドリーム・ベイビー・ドリーム"は、深い闇のなかで錯乱するニューヨーク・アンダーグラウンドにおいて宝石のように輝けるトランス・アート・パンクの名曲である。また、アラン・ヴェガ(スーサイドのヴォーカリスト)の"アウトロー"のオーガスト・ダーネル(キッド・クレオール&ザ・ココナッツ)によるリミックス・ヴァージョンもある。これがまたロカビリーとディスコの煌びやかな融合となっている。
オーラル・エキサイターズとボブ・ブランクによる"ラ・マラディ・ダムール"の退廃的なガール・ディスコも魅力的だ。マニアックなところではデトロイト・テクノのオリジナル世代からリスペクトされている先駆者ケン・コリアーとウォズ(ノット・ウォズ)とのコラボ、スウィート・ピア・アトキンスの"ダンス・オア・ダイ"もある。また、キッド・クレオール&ザ・ココナッツの"サムシング・ロング・イン・パラダイス"のラリー・レヴァンによるリミックス・ヴァージョンもある(それほど褒められた出来とは思えないが......)。レーベルのピークが過ぎた1983年以降に発売されたトラックが何曲か入っているけれど、ロン・ロジャースの"ノーティ・ボーイ"(1982年)や"ヤーヤ"(1983年)、ないしはコーティ・ムンディの"シー・ヘイ"(1984年)のような当時を物語るディスコとヒップホップのふたつからの影響を反映した曲もまた面白い。とはいえ、下手くそな日本語ラップをフィーチャーしたデイジー・チェインの"ノー・タイム・トゥ・ストップ・ビリーヴ・イン・ラヴ"は......ちと恥ずかしい。
「?」と言うキーワードを使うとき、決まってマーク・プリチャードの〈Ho Hum〉からリリースされた10インチ「?」を思い出す。2008年9月20日、 DBS〈DRUM & BASS x DUBSTEP WARZ〉にて筆者とユニットフロアで共演したマーラが1曲目にスピンした鮮烈な作品だ。何故ならこれは......ノンビートだからである。漆黒アンビエントが5分以上続くそのオープニングに会場は一時......静まり返った! 「なんだ、この曲は!?」、みんなそう思ったに違いない......文字通り「?」であった。そこからのマーラのプレイは言うまでもなく素晴らしいものであったが、いろんな意味を含めて話題をさらったセンセーショナルな作品が「?」だ。
マーク・プリチャードは、UKエレクトロニック・ミュージックの巨匠として古くはグローバル・コミュニケーション、リロード、ジェダイ・ナイツ名義などで活躍していたベテラン・プロデューサーである。最近では〈WARP〉からアルバムを発表したハーモニック313(HARMONIC 313)名義としても名高い、エクスペリメンタルな孤高のサウンド・クリエーターだ。無限とも言えるその懐深いサウンド・スケープは、どのシーンにおいても抜きん出ており、数多くの名作をリリースしている。
マーラの〈Deep Medi Musik〉からついにリリースした"Elephant Dub"は、彼の無限の創造性による産物となった。ダーク・サイドな音楽像の根底を掘り下げたかのようなヒプノティック・サウンドで、硬質にリヴァーブするビートと底知れぬ深いべースラインが共鳴している。まったく彼ならではのサウンド・オリジナーションである。"Heavy As Stone"だが、美しくも切ない女性ヴォーカルがトライバルでアトモスフェリックなトラック群と交感し、さらにポエトリーがよりいっそう全体像を際立たせたハイブリッド・ジャズ! 彼のサウンド・クリエーションはまったく無限であるとあらためて感じた。時代性を超越した作品である。
UKダブ・カルチャーの拠点"ブリストル"でもダブステップは刻々と進化を続けている。90年代初期のジャングルがレイヴを席巻していたように......。その進化の過程とともに、ピンチの〈Tectonic〉と双璧の如く歩んで来たのがぺヴァーリストの〈Punch Drunk〉。90年代のジャングル/ドラムンベース・ムーヴメントを通って来たであろう彼らブリストル・ダブステッパーたちは、UKダンス・ミュージックの特性である"ハイブリッド"を巧みに取り入れた全く新しいブリストル・サウンドの提唱者となった。
その〈Punch Drunk〉からエレクトリック・ミニマルと称され、傑作の呼び声高い「Pixel Rainbow Sequence」を〈Reduction〉から発表したブリストルの新星ハイタルとポスト・ガラージ/ファンキー・クリエーターで〈Ramp〉からの「Rustling/Stuff」が記憶に新しいショートスタッフがタッグを組んでのリリース。アーバンなガラージ・テイスト溢れるエレクトリックなファンキー・ダブステップで、現在巷で話題のアントールド(UNTOLD)やゲーオム(GEIOM)などのミニマル X ガラージを混合させたニューフォーム・サウンドである。試行錯誤の末、細分化されてきたダブステップのなかでも今年もっとも注目されるであろうこのサウンドは、ジャンルを越えて脚光を浴びるポテンシャルを有す存在になろうとしている。その動向、その先の化学変化は刮目に値するムーブメントであり、今後のシーンにおいて最重要に位置づけられるひとつであろう。
筆者は、とにかくクリプティック・マインズのダブステップ・サウンドが大のお気に入りである。〈Tectonic〉からの「768」、ピンチ&ムーヴィング・ニンジャ「False Flag -Kryptic Minds RMX-」や〈Osiris〉の「Life Continuum/Wondering Why」、〈Disfigured Dubz〉から「Code 46/Weeping」など......最近のリリースすべて注目している。
遡ることドラムンベース時代〈Defcom〉から数多くのダーク・サイバー・ドラムンベースを量産してシーンに一時代を築いて以来、一遍も変わらない硬質なビート・プロダクション、実に重く太い漆黒ベースラインとテッキーな音色――ドラムンベース・サウンド・クリエーションをそのままダブステップに変換してしまったと言っていいくらい一貫したサウンド・スキルが大いに繁栄されている。さらに素晴らしいのが、ミックスした時のその状態だ。ブレンドの最中でも己の主張性を損なわないそのグルーブ感満載のサウンド・ポテンシャルは実に素晴らしく、特にミニマルとのブレンド・ミックスをオススメしたい。スライトリー・ミスティック・ダブステップとも捉えれる唯一のプロデューサーだ。
今回もダブステップのオリジネーターのひとりであるローファー〈Loefah〉主宰〈Swam P81〉からのリリース。前作にあたるアルバム『One Of Us』でその存在感を遺憾なく発揮した崇高なるダーク・ダブステップそのままに、今作も続編的アプローチを見せている。
ダブステップ界でも現行のクラブ・ミュージック・トレンドである"エレクトロ"ムーヴメントに触発された作品が目立つなか、彼ら自身の音楽性を常に貫くその姿勢が真のダブステップ・プロデューサーとして認知されようとしている。今後も変わらないであろう確信がある。そう、昔と変わらず、彼はずっとこのサウンドを貫いてきたのだから。
サブトラクト(Sbtrkt)。脅威のニューカマーとして昨年のデビュー以来、破竹の勢いで上り詰めた天才エレクトリック・ダブステッパー。すでにベースメントジャックス、フランツ・フェルディナンド、モードセレクター、ゴールディといった大物達のリミックスを手掛け、ミニマル~ガラージ~ファンキー~エレクトロと縦横無尽に行き来している今年その動向がもっとも期待されている大注目株である。
今作「Laika」は、ゾンビー(Zomby)のエレクトロ・スケープの傑作「Digital Flora」やアントールド〈Untold〉のミニマル・ガラージ「Flexible」に続くように〈Brainmath〉からの限定リリース。このトラックもすでにポスト・ガラージとして注目され、シーンで話題をさらっている。近い将来、その才能でシーンを掌握するであろう彼のサウンド・コンダクトから目が離せそうにない.......。
イーピーロム(Eprom)は、サンフランシスコ在住の新進気鋭ウエスト・コースト・ベース・テクニシャン。ファンキーの要素とテッキーなカッティング・ビート、ハッシュされた女性ヴォーカルにアトモスフェリックな上ものを巧みにコントロールした、これぞニュー・テック・ファンキーだ。アメリカやカナダでも大盛り上がりを見せているダブステップやベースライン・ミュージックだが、アメリカでその代表格と言えば、ファルティDL(Falty DL)、6ブロック(6Blocc)、スターキー(Starkey)、ノアD(Noah D)等々だ。今回の"Never"のリミックス・ワークを担当したのがファルティー・DLだ。
〈Planet Mu〉から発表した傑作アルバム『Love Is A Liability』やシングル「Bravery」、〈Ramp〉からの「To London」等々......名門レーベルからの信頼も厚い才能豊かなプロデューサーだ。もちろん今回のリミックスも名門レーベルに恥じぬ秀逸なディープ・ファンキーに仕上がっている。この先もアメリカ/カナダ・ダブステップ・シーンのホットな動向も追走しなければならない。刻々と独自の進化を遂げているのだから。
来月の連載はサウンドパトロールと合わせて、先日大盛況で幕を閉じた2月13日のDBS〈2010ゴールティ VS ハイジャック〉のパーティ・リポートもお送りしますので乞うご期待!
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