「K Á R Y Y N」と一致するもの

GOKU GREEN - ele-king

 イーグルスが1976年にリリースしたロック・スタンダード“ホテル・カリフォルニア”はいわくつきの1曲だ。その幻惑的なサウンドもさることながら、問題はストーリーテリング風の歌詞にある。主人公はロスの砂漠のハイウェイでコリタスの匂いに誘われて美しいホテルにチェックインするが、そこでしばらく過ごすうち、ドラッグとセックスに溺れて退廃的な暮らしを送る滞在客たちに嫌気がさし、ついにホテルを立ち去ろうとする。が、いつのまにか出られなくなっている……。「好きなときにチェックアウトできても、けして抜け出すことはできない」。そんな謎の殺し文句で曲は終わる。
 それをオルタモントの悲劇以降のヒッピーイズムの敗北を歌っているのだという人間もいるし、アメリカはもとより西洋の物質文明全体の没落を表現しているのだという人間もいる。最近ではあのフランク・オーシャンのデビュー・ミクステ『NOSTALGIA, ULTRA』の“AMERICAN WEDDING”がそのカヴァーというかリメイクだった。なんにせよ、ベトナム戦争以降、斜陽を迎えた帝国アメリカの頽落をイメージさせる曲なのは間違いない。北米大陸西海岸とは、アメリカのフロンティア・スピリットにとっての永遠の約束の地であると同時に、その退廃と狂気を象徴する場所なのだ。

 GOKU GREENの新たなアルバムのタイトルは『HOTEL MALIFORNIA』。「MALIFORNIA」はウィードとカリフォルニアをかけ合わせた造語で、カタカナ表記すれば「マリフォーニャ」。おそらく架空の地名か国名だ。「ニュー・ヒッピー」を自称する彼が、“ホテル・カリフォルニア”について囁かれる都市伝説を知ったうえでこのタイトルをつけたのかはわからない。ただ、タイトルとしては完璧にハマっている。
 ジュヴナイル的な少年の面影はすっかり消えた。いまは太平洋の両岸を行き来する20歳の天才は、成熟を軽く飛び越えて、もはや退廃の域にまで達してしまっている。成長のストーリーというよりは、快楽に溺れる日々の断片的なスナップショット。サウンドはときにハードかつアグレッシヴだ。傑作EP『ACID & REEFER』を特徴づけていたPRO ERA以降の90’Sリバイバルのビートとともに、トラップやチルウェイヴ的なアプローチが目立つ。ウィードに加えてアシッドのテイスト。ナチュラルなだけじゃなく、どこかケミカルなトリップ感だ。アルバムまるごとが、まるで永遠に続く一晩の夢のように鳴っている。

 プレイボタンを押してLiL’ OGIプロデュースの“あいつは知らないけど”のイントロが勢いよく鳴り出した瞬間、アルバムの空気はストレートに伝わってくる。前のめりにリードするベースと跳ねるジャジーなピアノのリフレイン。ゆったりと鼻歌を歌うような甘い歌声が、危険な遊びの続行を宣言する。DOGMAを迎えた“THE SAME MOFOS”も、テーマは女とウィードと洋服、そして金。導入から完全にビートに同期していたエレピが、「高いクルマ美味いクサにデカいhouse/高い服を脱いで女の子とbounce」というロクでもないラインとともにキラキラと砕ける一瞬に、真夜中の解放感が宿る。“ヤング・ストーナー”や“マイレベル”ではYOUNG THUG以降の奇声コーラス、“REAL NINJAS”ではオリエンタル・フレイヴァなど、最近のUSシーンのトレンドも鮮やかな手つきで次々とトライされる。
 退廃的なムードがぐっと深まるのは中盤。“STRANGERS IN PARADISE”は、たぶんミュージカルの古典『キスメット』の劇中歌からそのタイトルを引用しているけれど、愛する者がいなければたとえ楽園にいてもよそ者なのだ、という原曲の純愛的なテーマは確信犯で裏切られ、ドラッグとカジュアルなセックスに溺れるドロリとした快楽が、むしろポジティヴに迫ってくる。直後の“今夜は来ない”も、夜の底に落ちていくような墜落感のベースが鳴りっぱなしの、スペーシーなトリップ・ソング。“NEVER SOBER GANGIN”なんて曲もある通り、とにかく酩酊感が半端じゃない。ペン型のヴェポライザーはひっきりなしにクッシュの煙を噴き続け、ボングで弾ける泡音は鳴り止まない。ドレスアップした女たちが影絵のように行き交い、赤いパッケージのピルが知らぬ間にポケットに滑りこむ。

 知り合ったばかりの相手とジョイント巻いてファックしてたらもう朝の6時、みたいなユースのリアリティは、ゲットー・ハリウッドが製作した“FACE IT”のミュージック・ヴィデオによく表れている。これは1995年のラリー・クラーク監督作『KIDS』をMxAxDリミックスしたものだ。コデイン色に染められてチョップドされた20年前のニューヨークのティーネイジャーたちの群像劇は、セックスとドラッグに明け暮れる無軌道な青春が、時代も都市も超えた普遍的な物語であることを伝えてくる。
 『KIDS』にはブランド立ち上げ直後のSUPREMEのクルーやクロエ・セヴェニーが出演していて、当時19歳のハーモニー・コリンが脚本を書いていた。20年後のいま、SUPREMEは文字通りのワールド・フェイマスとなり、クロエも女優として大成、ハーモニーはカルト的な人気を誇る映画監督になった。けれど、主演の一人だったジャスティン・ピアースは謎の自殺を遂げ、同じくカリスマ的なスケーターだったハロルド・ハンターもオーヴァードーズで死んだ。あの映画に濃い死の影がつきまとっていたように、青春の衝動にはそれなりの代償がともなう、ということだ。
 永遠に続くかのようなパーティや青春にも、必ず終わりは来る。GOKU GREENはそのことに自覚的だ。アルバム後半、“HIBISCUS”で描かれるどっぷりとした孤独感や、”歩き出せ”のブルーな倦怠を吹っ切るような前向きな決意を聴けばわかる。I-DeAプロデュースのラスト・ナンバー“CHILDISH ~ I’LL FEEL SORRY FOR MY G THANG”までのレイドバックした終盤は、忍びよる現実の影を感じつつ、まだ夢から覚めないでいる自分の姿をなかば自嘲的に歌っている。そして、アートワークの最後を飾る「OVERSEEN BY $HO SATO」の文字。その短い追悼クレジットは、あえて夢の終わりを子供っぽく拒否するエンディングに降りそそぐ、いつかの雨の理由を教えてくれる。

 パーティの終わりの虚しさやセックスの後の寂しさ。それを知ることを成熟と呼び、知ってなお快楽に溺れることを、退廃と呼ぶ。だから退廃とは、快楽の追求それ自体ではなく、精神のあり方だ。過剰なセックスやドラッグの乱用は、フィジカルな中毒症状とは別なレベルで、人間のメンタリティを決定的に変えてしまう。快楽を拒否することはできても、一度知った退廃から逃れるのは難しい。『KIDS』の監督のラリー・クラークは元々フォトグラファーで、オクラホマ州タルサ郊外の田舎町で覚せい剤中毒の仲間たちの写真を撮ってデビューした人物だ。1971年にたった三千部だけ自費出版された彼の最初の写真集『TULSA』の扉には、こんな言葉が置いてある。「一度針が刺さったら、それはけして抜けない(ONCE THE NEEDLE GOES IN, IT NEVER COMES OUT)」。ちょっとだけ、“ホテル・カリフォルニア”の殺し文句に似ている。

 ちなみにイーグルスが“ホテル・カリフォルニア”を発表した1976年、日本では村上龍が『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞を受賞して華々しくデビューし、日本版のヒッピーイズムの終わりを乾いた散文で描き切っている。学生運動とベトナム戦争の裏側で繰り広げられていた、日本のドロップアウターによるヘロインの乱用と米軍基地の黒人兵たちとのオージー・セックス。いまはエスタブリッシュメントっぽいイメージが板についた村上龍も、当初は「クリトリスにバターを」という原題だったその草稿を書きながら、これは発禁処分をくらうかもしれない、と考えていたそうだ。その退廃的な青春の終わりは、タイトル通り、夜明け前の一瞬、透き通るようなブルーに染まる空の色に喩えられていた。

 デビュー当時の村上龍しかり、ラリー・クラークしかり、若い芸術家の大きな役割のひとつは、秘密の暴露だ。新たなアートによるアンダーグラウンドな現実の告発が、古びたモラルをダイナミックに上書きし、社会の風景を変えていく。けれど、現代というのは秘密が成立しにくい時代でもある。ドラッグの使用や奔放なセックスはすでにありふれたものだし、高性能カメラを内蔵したスマートフォンを誰もが持ち歩き、SNSやブログではみんな露出狂みたいに自分語りを披露している。写真も映像も音楽も文章も、もはや表現はべつに芸術家の特権じゃない。人が人になにかを伝えたがっているのは昔と変わらなくても、いまはそれを手軽にアウトプットできる。秘密は秘密になる前にすべて暴かれて、情報の残骸だけがタイムラインの彼方に流れ去っていく。
 同時に、世界のフラット化は憧憬の場所を奪ってしまった。日本だってずっと昔は東京がロマンティックな憧れの対象だったわけだし、それがアメリカやヨーロッパだった時代もあった。最近ならアフリカ、南米、アジア。だけど、どこに旅に出ようが、どんな快楽を経験しようが、そのトリップが終われば退屈な日常が待っていることを、みんなもう知っている。未知の場所への旅も、薬物の使用や性的な冒険も、それらはただ現実の倦怠や痛みから逃れるために消費される、チープな余興に過ぎない。かつてヒッピーたちが夢見たオルタナティヴな世界はついに実現しなかった。革命の理想とユートピアの夢に裏切られて、それでも人は「ここではないどこか」への想いを捨てきれない。

 どこでもない架空のホテルの名を冠したこのアルバムの、すべて赤裸々に曝けだしてまったく悪びれない態度というのは、やはりすぐれて現代的な感覚なのだ。スキャンダラスというのでもない。まるでInstagramを平然と流れていく危険なパーティの写真のように、あくまでドライでクールにスナップショットされる、退廃と倦怠の記録。往年のヒッピーたちが革命の挫折として迎えた退廃は、現代のニュー・ヒッピーにとっての原風景だ。あらかじめ愛と平和を拒絶した世界に生まれついた彼らは、いくら現実に手ひどく痛めつけられようと、楽しげにタブーを犯して刹那を生きる。

 『HOTEL MALIFORNIA』は平成生まれのニュー・ヒッピーが案内する、アンモラルな夢のホテルへの観光ガイドだ。かつて故郷旭川でまだ見ぬカリフォルニアの美しい夢想を描いたGOKU GREENは、そのたぐいまれな想像力で、今度はこの世に実在しない退廃のプライベート・リゾートを築きあげた。地上の楽園は存在しない。青春の刹那は永遠には続かない。そんなありふれた、だがとても深い絶望が、この退廃の夢を紡いでいる。ストロベリー・ピンクの煙の雲に、透明なブルーのボンベイ・サファイアの海、女が脱ぎ捨てた赤いハイヒール、それにカナビスの葉とナイフ。スイートの滞在期間は無期限だけど、あんまりハマると抜け出せなくなる。

 いまじゃ国家がテロリストとの戦争を宣言する時代だ。海の向こうで戦争が始まる……どころか、この社会もその火元になりかねない、そんな現実感のない緊張が日常に溶けこんでいく。どこかで爆弾が炸裂する。いつか大地震が起こる。わけもわからず死んでしまう前に、最高にトリップしてセックスしよう。それはとてもリアルで、切実な本音に思える。社会がどうとか知らない。吹けば飛ぶようなチャチな快楽もいらない。どうせうるさくて憂鬱な現実しか待ってないのなら、ここでずっと夢を見てればいい。たとえそれが退廃と隣り合わせでも、昔と違って、誰もが望んでこの危険な場所に来る。夢が終わればひとりきりで、そばには誰もいない。それでもきっと、いまはこの夢から覚めたくない。


interview with YOLZ IN THE SKY - ele-king


YOLZ IN THE SKY
HOTEL

Bayon Production/felicity

IDMJunkPost-Punk

Amazon

 ヨルズ・イン・ザ・スカイ……この、一度聴いたら忘れらないバンド名から、人はどんな音を想像するのだろうか。なんとなく広々したイメージを掻き立てるかもしれない。あるいは、“ヨル”、“ソラ”という言葉から、なんとなくロマンティックなものを重ねるかもしれない。しかし、残念。ヨルズ・イン・ザ・スカイは密室的で、アンチ・ロマン的。
 ヨルズ・イン・ザ・スカイ・ウィズ・クレイジー・ダイヤモンドは、柴田健太郎(G)と萩原孝信(Vo)を中心に大阪で結成されている。最初のアルバムは2007年で、その頃は騒々しいギターとハイトーンのヴォーカルのハードなロックをやっている。それが長い歳月をかけながら変化を遂げて、最新作『ホテル』では、アシッド・ハウス・ロックとでも呼ぶべき、微妙にシュールな世界を繰り広げている。
 ベースとドラムが居なくなり、トラックは柴田がひとりで作ることになった。すると……ストラヴィンスキーを愛するこの青年のどこかの回路が1987年のシカゴのDJピエールに通じてしまったのだろう。それはロックの予定調和もハウスの快楽主義も拒否した、世にも奇妙な音楽となっていま存在する。
 地図を描いてみよう。いま、日本には、アンチ・ロック的雑食性としてのポストパンク……とも呼べそうな徒が散在している。広義では、オウガ・ユー・アスホールもゴートもにせんねんもんだいもその部類に入るだろう。メインストリーム(なんてないという意見もある。が、まあ、ここでは敢えて)への対抗勢力になり得ていないのは、良くも悪くも彼らがバラバラにそれぞれやっているし、残念ながらリスナーも重なっていないからだ。もったいない。徒党を組めばいいのにとまでは言わないが、ぼくたちは注視してみよう。いま、1979年のUKのような局面が日本に生まれつつあることは事実であり、それは、売れようが売れまいが、とにかく、自分たちの鳴らしたい音を貫き通している連中がいるということでもある。
 ヨルズ・イン・ザ・スカイはそうしたポストパンクな時代のなかのひとつのバンドではあるが、彼らのジャンクな感覚は、実に独特な空間を創出している。昔、バットホール・サーファーズがザ・ジャックオフィサーズ名義でサイケデリックなエレクトロニクスに挑戦したものだが、もちろんそれとも違う……いったい彼らは……何者……なのか……ああ、たしかに悪ふざけもできない世のなかなんて、冗談じゃないよね。マイノリティとは、屈辱でも蔑称でもない。楽しみ方だ。柴田健太郎に話を訊いた。

【バンドのバイオ】
2003年結成。Less Than TVから1stアルバムをリリース後、Fuji Rock、SXSWなどに出没。2009年にはfelicityより2ndアルバム『IONIZATION』を2012年には3rdアルバム『DESINTEGRATION』をリリース。その後もライヴ活動を中心に、多種の音楽性を吸収しながら進化を続ける。たった2人よって作り出される音世界は自由自在、無機質なビート、ロック、テクノ、ミニマル、現代音楽、クラシックなどをブラックホールのように吸収に作り出される自由に踊るための音楽。
https://yolzinthesky.net/

Q:ますますヨルズ・イン・ザ・スカイのアイデンティティがわからなくなってきました。

A:ぼく自身もわからないんですよ。

印象的なバンド名なので、名前は知っていたんです。ぼくみたいに名前は知っているけど聴いたことがないって人は多いと思いますよ。

柴田健太郎(以下、柴田):バンド名を決めるときに、ずっと続けるつもりはまったくなかったんです。とりあえずバンドをやろうという感じでした。だいぶ前なのでこの名前をつけた理由は忘れましたけど、やりはじめたのは大学の3回生のときやから、13、4年前ですかね。

今日は、ヨルズ・イン・ザ・スカイがどういうバンドなのかをしっかり紹介したいと思っているので、よろしくお願いします。まずは、柴田さんが音楽をはじめる、あるいは音楽を続けているモチベーションはどこにあるんですか?

柴田:音楽にしか興味がなかった。他のことをやっていても、結局は音楽に繋がっているような生活スタイルだったというか。音楽をやりたい、というよりも、音楽をやっていました。

このいかにも大阪にいそうな雑食性というか……。

柴田:それは言われたことないな。大阪っぽくないと言われます。そう言われるのは初めてといってもいいくらい、珍しい。

大阪って、独創的なものを生む土壌があるじゃないですか。いろんなものが混ざって、名付けようのないものになってしまった、みたいな。やっぱり東京にはスタイルがありますからね。

柴田:そういう意味では大阪かもしれないですね。やっぱりひとと被ったらいかんみたいな文化がありますからね。ちっちゃいときからそうですね。ひとのマネをしてたらダサい、みたいな。

しかし、いったいどんな人たちが聴いているんでしょうね。基本、ライヴハウスで活動されていたんですよね?

柴田:基本はそうです。

どんなお客さんを相手にしていたんですか?

柴田:あんまり見てないからわからないですね。

音楽をやるときに、自分たちのパッションが掻き立てられるのはどんなところですか?

柴田:自分のなかで新しいものができて、それが積み重なっていくところですかね。

どんな音楽を聴いていたんですか。

柴田:一貫して好きなのが、ストラヴィンスキーの『春の祭典』です。クラシックや現代音楽をよく聴きます。バレー音楽が好きで観に行ったりしてましたよ。

しかし、実際は、どちらかというとジャンクな音楽をやっていますよね。

柴田:どちらかといえばジャンクな音楽はあんまり好きじゃないんですけどね。いうたら、関西でできた音楽もそんなに好きじゃないんですよ。

じゃあ関西人と言われるのは心外ですか?

柴田:そんなことないですよ。まず、あんまり関西人っていわれないですからね。

曲の発想はどんなところから?

柴田:現代音楽の作曲方法で使われる、図形や数列から作曲するやり方に興味があるんですよね。そのすべてがよいとは思わないし、ぼくはけっして詳しいわけじゃないんですけど。

感覚で作るよりも、理屈で作っているんですか?

柴田:いまはそっちの方が多いですね。昔は感覚だけだったんですよ。でもやっていくうちに、決められたうえでやっていく方へシフト・チェンジしていっていますけどね。

ますますヨルズ・イン・ザ・スカイのアイデンティティがわからなくなってきました。

柴田:ぼく自身もわからないんですよ。

現代音楽からの影響は新作のなかに反映されているんですか?

柴田:新作にはまったく反映されていないです。新作は、どちらかといえば感覚的な面も少なからずあって。いや正確に言うと、感覚で良いと思った素材を緻密に作り上げ構築していくというか。その昔、パソコンのデータが消えてしまったときに、それを復元させるソフトを使ったんですよ。そうしたら音楽データがぶつ切りになっていたり、変に復元されていたんですよね。それを思い出して、データを一度消して、また復元させて、意図的にデータをバラバラにしたんです。それでこれは使えるなと思って今回のアルバムで音源として使ったりしました。ギターの音とかでも勝手にバラバラになっているのは、僕もどういう仕組みでそうなっているかはわからないんですけどね。全体ではないんですが、そういう素材を組み立てていったりしました。勝手に離散フーリエして音を分解したみたいな感じになってるのが面白いと思いました。

それをたまたま今回のアルバムでおこなったと。

柴田:そうですね。いま現在は理詰めでやっているんですが、このアルバムに関してはその一歩手前です。

ファースト・アルバムは何年なんですか?

柴田:えーと。ファーストはLESS THAN TVから2007年にリリースされてます。 セカンドが2009年で当時はハードコアやクラウトロックも感じさせるバンドでした。

たしかにヴォーカルにはハードコアの名残があるのかな。

柴田:最初はヴォーカルがいなかったんです。あるとき曲を聴かせたら「俺、コレ歌える」と。ぼくは普通に歌うかと思ったんですよ。それに、普段のあいつはまさかなことをするようなヤツでもないんですよ。そしてたら、まさかの裏声で歌うという。それを聴いて「あ、これはいっしょにやろう」となりました(笑)。

3枚目のアルバムではデザインに『メタル・ボックス』を模していますが、パンクについてはどうなんでしょう?

柴田:初期のパンクも聴いていましたし、好きでした。でもポストパンクの方が雰囲気は好きだったというのもあって、そういう影響が音楽には入っているんですよ。

柴田さんからすると、ポストパンクの魅力って何ですか?

柴田:空気感。熱いんだけれども同時になんか冷たい感じもするんです。それが音の処理とかに出ているんだと思うんですけれども、殺伐とした無機質なイメージがぼくのなかでは強いというか。テクノとはまた違いますよね。テクノも無機質ですが、ポストパンクの場合はひとが関わっているにもかかわらず無機質なのがいいというか。

聴いていてPILがよかったんですか?

柴田:他にどんなのがいましたっけ(笑)?

ディス・ヒートとか、スロッピング・グリッスルとか、たくさんいますよ。

柴田:あー、そのふたつはけっこう近いですね。

当時は、ポストパンクないしはニューウェイヴという、ひとつのムーヴメントとしての括りがあったんです。そのなかにスリッツもポップ・グループもニュー・オーダーも全部入っていたわけです。そのポストパンクの船にたくさんのアーティストが乗っていた時代だった。でも2000年代には大きな船はなくて、みんな小さなボートに乗っている。このひとはインディ・ロック、このひとはポストロック、このひとはディスコとかね。こういう状況で、ポストパンク的なアプローチをするっていうのは空しくないですか? 

柴田:ポストパンクは6、7年前に聴いていたけれど、いま意識しているわけではないですからね。あんまりジャンルを意識しないんですよ。

ジャンルにこだわることによって、未知なるリスナーとの出会いがあると思うんです。例えばテクノにこだわっていれば、どんなに無名な人間でもテクノ好きのところへたどり着ける。あるいは、ポストパンクやニューウェイヴという大きな船があって、ぼくはその船が好きだったからスリッツもスロッピング・グリッスルも聴けた。でもいまそういう聴き方はない。だからヨルズ・イン・ザ・スカイを見ると、「いやぁ、よくやってるなぁ」って思うんです。

柴田:たしかにライヴもやりにくいですからね。

自分たちでムーヴメントを作ってやろうという気持ちにはならないの?

柴田:そういう気持ちにはならないですね。ホンマにひとりよがりというか。周りのことはあんまり考えていない。ひとといっしょに何かをやってよくなりたいとかも思わないですね。そこで誘われて興味をもって何かをやりたくなることはあるんですけれども、自分自身ではただ単に曲を作ったり、こんなライヴができたらいいなとか、そういう発想しかない。

そういう意味では時代に挑戦しているのかな?

柴田:全然意識はないんですけどね。

アップル・ミュージックはだって「あなたの好きなジャンルは?」って最初に質問してくるじゃん。ヨルズ・イン・ザ・スカイは、テクノでもないし、パンクでもない。いまの音楽市場のニーズ分けに当てはまらないことをやっているわけじゃないですか。

柴田:いま言われて、「あっ、そうやな」と思いました。

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Q:友だちがほしいなとは思わないんですか?

A:まったく思わないですね。喋りかけてくれたら話すんですけど。

話題を変えましょう。柴田さんが音楽で一番気持ちよくなくところって、どんなところなんですか?

柴田:やっぱり自分がやりたい理想があって、それができたときがベストですかね。

機材は何を使われているんですか?

柴田:昔はいろんな機材を買っていろいろ試していましたね。

最初の楽器は何だったんですか?

柴田:ギターですね。

そこからエレクトロニクスへいったんですね。転換期は何だったんですか?

柴田:転換期はまさにこのアルバム(『DESINTEGRATION』)を作ったあとです。最初はギターだったんですが、ぼくの世代ってギターの機材にこだわって、ヴィンテージとかを集めてるやつってそこまでいなかったんですよ。だからそこで真新しさを求めることもできたわけです。でもいまってそうじゃない。これはぼくが勝手に思っているんですけど、ギターという表現方法に行き詰まっているからみんな機材の方向に目が向いているように見えるんです。新しく出てくる機材も変なものが増えていったので、ぼく自身はそこに興味がなくなっていったんですよ。ギターやアナログ機材でニュアンスを表現するよさもあるんですけど、数字でピッタリ表現するんだったらパソコンとかで自分で作るしかなくなってしまうんです。

パソコンを使いだしたのはいつからなんですか?

柴田:ちょうどこのあと(『DESINTEGRATION』リリース後)ですね。

じゃあ新作がその変化のあとなんですね。音的には完全にそうですもんね。

柴田:そうなんですよ。機材に関しては自分でプログラミングしてやってます。C言語から作っていったりとか。ひとが作った機材よりも、自分でこうしたいという方向に興味が移っていったんです。

プログラミングは誰かに習っていたんですか?

柴田:独学ですね。自然のなりゆきで勉強も進んだというか。トラックは基本的にぼくが作ってます。

エレクトロニクス・ミュージックをやっていて、C言語というのはまだ少数派でしょうね。

柴田:大変なのはたしかですよ。ノイローゼになるかもしれないです。でもギターはけっこう好きで、まだその可能性を模索しています。今回もビート以外は基本的にギターで作っているんですよ。

ゴート(goat)とは繋がりはないんですか?

柴田:喋ったことはあります。

オウガ・ユー・アスホールとの接点はないんですか?

柴田:対バンをしたことはありますけど、接点というところまではないです。

日本のバンドで共感しているひとたちはいますか?

柴田:あんまりつるまないので、音楽友だちがいないんですよ。

友だちがほしいなとは思わないんですか?

柴田:まったく思わないですね。喋りかけてくれたら話すんですけど。

相当なへそ曲がりですね。その感じが音にも出ているというか。

柴田:そうかもしれないですね。

ヨルズ・イン・ザ・スカイはどこにカタルシスを感じているんですか?

柴田:考えたこともないな……。基本的に飽き性なんですよ。自分で面白いと思ったことにしか興味がいかないんです。これをやったら受けるちゃうか、みたいなことは一切考えないですね。世間的に流行っている作り方があったとしたら、それは絶対にやらないです。

じゃあいまも世の中なんて気にしないで今日もストラヴィンスキーを。

柴田:単純に好きですからね。もちろんそれだけじゃないですけど。

どういうひとがファンなのか気になりますね。

柴田:ハードコアっぽいアルバム出したときのファンは、今回みたいな音を求めてはいないですよね。もちろんずっと好きでいてくれるひともいるんですけど、聴くひとも移り変わっているので、そこでどなっているかはまったくわからないです。

PCを取り入れてギター・サウンドを押し広げたりとか、今回のアルバムを作る上での重要なポイントがいくつか出ました。それに加えて、さっきも言ったように、ぼくはダンス・ミュージックっぽくなっていると感じたんですが……

柴田:ちょっとずつそうなっている感じはあります。それは何かを軸に作っているからかもしれないですね。やっぱりギターなので、基本はドラムありきで考えるんです。最初はスタジオへ行ってあわせるとか。その名残でドラムが主体のノリで作っていることが影響しているのかもしれないですね。とくにダンス・ミュージックを意識しているわけではないんですよ。

過去の作品も抽象的なデザインで、曲のタイトルもアブストラクトなものが多いといいます。新作も……何で『ホテル』というタイトルなんですか?

柴田:よくホテルに泊まっているからです。

ほぉ、ラブホテルに。

柴田:いや……。

ホテルの清潔感というか、無菌室的な感じでしょう? そういうのはサウンドにも出ていますけど。

柴田:ラブホテルばかりに行っているわけじゃないです。

柴田さんのなかには自分のサウンドに対して映像的なものがあるんですか?

柴田:映像はないんですけど、イメージはあります。無菌室的な感じとおしゃっていましたが、音楽の博士が誰とも喋らずにやっているようなイメージがありましたけどね(笑)。

昔の作品だと歌詞カードがついていますけど、メッセージみたいなものをヴォーカリストの萩原さんはもっていらっしゃるんですか?

柴田:あんまりもっていないみたいですよ。

歌詞に関してはおまかせなんですか?

柴田:ぼく、歌詞を知らないんですよ。ぼくが曲を作ったらそれを相手に丸投げするんです。それでヴォーカルが歌詞と歌をつけてくれる。

シュールな世界ですよね。ヴィジュアルにしても、シュールレアリズムですよ。ジャケのインナーには爆弾があって電球がある。これはいったいなんだろう……で、ここに共通を見出せっていわれてもね(苦笑)。

柴田:そこに数式はないですね。最近は音楽の「楽」が「学」になっているんです。ずっとこういう音ばっかりを考えていますからね。ノイローゼになりそうになる。

メンバーのなかで、柴田さんの作業が一番多いんですよね?

柴田:そうですね。ずっと部屋に閉じこもってます。人とも喋らないですからね。

精神のバランスを失いながらやるんですね。

柴田:それはあんまりないですね。どっちかっていうといつも躁状態なんですよ。うつにはまったくならないんです。

サウンドがうつじゃないから。

柴田:悩みごともないんです。今日の飯どうしようかとか、小さい悩みはありますよ。

大きな悩みを抱えている音楽には思えないです。

柴田:だからメッセージを発したくもないというか。

ぼくなんか悩みだらけですけど……。しかし困ったなぁ。読者にヨルズ・イン・ザ・スカイを紹介したくていろんな質問を投げているんですけど、ますますわけがわからなくなってきました。

柴田:すいません。

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Q:大きな悩みを抱えている音楽には思えないです。

A:だからメッセージを発したくもないというか。

目標にしている音楽ってありますか? 理想というかね。

柴田:理想ですかぁ……。

「(理想は)ヨルズ・イン・ザ・スカイに決まってるだろ!」とかって答えないんですか?

柴田:それいいっすね。

志しているところがきっと高いんですね。目標意識というか、自分が作りたいものというか。ぼくはは計り知れないな。ぼくはエレクトロニック系のミュージシャンにインタヴューすることが多いんですが、そういうひとって大体ひとりでやってるんですよね。だからひとりで音をコントロールできる。でもヨルズ・イン・ザ・スカイはバンドじゃないですか? ヴォーカリストもいるし、そこが他とは違いますよね。

柴田:ちょっと気持ち悪い話なんですけど、ヴォーカルは一番の親友なんですよ。

愛し合っているんですね。

柴田:そうなんですよ……っていってみたりして。一番の親友であるところはすごくデカい気がしますね。いっしょに音楽をやりたいっていうところが一番デカい。ひとりだと寂しくなるみたいな。

大阪はどちらにお住まいなんですか?

柴田:天王寺に近いところに住んでます。ヴォーカルの萩原は点々としていて、いまは京都にいます。

大阪の方が住みやすいですか?

柴田:比べたことはないんですけど、住みやすいですね。まぁ、どこでもいいんですけどね。思い入れが強いわけでもないし、大阪を好き嫌いっていう基準で見たことっもないです。

地元でもライヴをやるんですか?

柴田:イベントに誘われたら出るくらいですね。あんまり自分らでやることはないです。4人のときは企画をやったりしていましたけどね。

その当時はどんなイベントをやっていたんですか?

柴田:もう辞めたメンバーがいろいろやってくれていたので、何ともいえませんね……。

マネージャー・タイプの方だったんですね。

柴田:そうですね。経理とかもやっていました。残ったメンバーは何もしません。

ヴォーカルの方も柴田さんと同じようにあんまり音楽を聴かないんですか?

柴田:聴かないですね。まずふたりで音楽の話をしないですね。

どんな話をするんですか?

柴田:どんな話だろう……。

「空がきれいだ」とか?

柴田:まぁ、たわいもない話ですね。家族間で喋るような脳みそをまったく使わない話です。

今回のアルバムでいろんな実験をやっていると思いますが、とくにこだわったところがあれば教えて下さい。

柴田:ギターにはやっぱりこだわっています。ギターってフレットが決まっているじゃないですか? それで弦が6本あって、チューニングがあって……。だから普通に弾いても面白くないんですよ。響きも結局は同じになってくるから、妙なコード進行をしても真新しさは感じられなくて……。そこから数学的に分解していくことを考えて、出る音の組み合わせを増やしていくというか。それはコンピュータでやるしかないんです。伝わりにくいかもしれないんですが、自分でリズムマシーンみたいなものを作って、そこにギターの音を当てはめているんです。それをランダムに鳴らして音を抽出したりもしていました。ずっとランダムなままでも流れができないから、そこでプログラムをしてランダムの範囲を指定したりとか。そうすると結果的に違った響きになるんです。

正直にいって、これまでのアルバムのなかで一番好きです。でも最初の質問に戻ると、この音楽はいったい誰が聴くんだろうとも思いました(笑)。

柴田:そうですよね(笑)。自分の世界を作っていただけですからね。

さて、何か言い残したことはありますか?

柴田:何かあるかな……。

「とにかくこの内ジャケットの謎を解け」とか? 

柴田:うーん。

マスタリングはPOLEなんですね。

柴田:大阪のレコ屋のナミノハナ・レコーズの方に教えてもらったんです。ちなみに、アルバムのタイトルはラブホテルとは関係ありません。

外国人から見るとラブホテルってすごいんですよ。海外にはないものだから、町中にこんなものがあるのかって驚くんです。ヨルズ・イン・ザ・スカイも、ワシントン・ホテルというよりも、そのいかがわしさから言えば、ラブホテルの方が近くないですか?

柴田:なるほど(笑)。

前のアルバムから3年ぶりだから、すごく時間がかかっているんですよね。

柴田:やっぱりドラムが抜けたことが大きかったかもしれないですね。作品の目的に到達するためのプロセスよりも、時間を縦軸で考えるようになったといいますか。決められたことだったら排除してもいいんじゃないかというか。それでいまの瞬間でできることを重要視するようになりました。メンバーが3人から2人に減ってから、そこも考えるようになりましたよね。バンドでやりつつもコンピュータも導入して、面白いことができないか模索してましたね。それで時間がかかりました。

この先はどんな活動をしていくんですか?

柴田:ぼんやりしかないんですけど、先に何かを作って時間差で出して、いまやっていることが次の小節に出てくるというか……。本当にぼんやりなんですけどね。押したら何か音がでるタップゲームみたいなものがあるじゃないですか? それをギターでやってみようかとか、違ったアプローチを考えてますね。

よくわからないですが……。

柴田:それでどうなるかわかんないけどね。普通にギターをジャーンと鳴らすことには興味がないですね。どんどん人気がなくなっていくでしょう。誰が聴くねんっていうか(笑)。


2015年1月31日(日)京都・METRO
僕の京都を壊して~YOLZ IN THE SKY『HOTEL』RELEASE PARTY
OPEN 18:00 / START 18:30
前売 ¥2,500 / 当日 ¥3,000 +1D
LIVE : YOLZ IN THE SKY / group_inou / FLUID
チケット : ぴあ(P:284-164) / ローソン(L:57371) / e+
info:METRO https://www.metro.ne.jp/

2015年2月4日(木) TSUTAYA O-nest 03-3462-4420
YOLZ IN THE SKY『HOTEL』RELEASE PARTY
18:30OPEN 19:00START
前売¥2,800 ドリンク代別途 当日¥3,300 ドリンク代別途
LIVE:YOLZ IN THE SKY / skillkills / 快速東京
チケット 11月14日発売開始
ぴあ(281-981) / ローソン(74125) / e+ / O-nest店頭
info:TSUTAYA O-nest 03-3462-4420



 「千葉という街を"フューチャー・テラーのために行く街"へと変貌させてしまった」。かつてDJノブのプロフィールにあった強力な一文だ。2015年、その勢いは衰えることなく、千葉や日本のローカル・シーンを旅しつつ、DJノブは世界的にも活動の幅を広げている。先日公開されたオランダの〈デクマンテル〉での彼のミックスは、今年のベスト・ミックスのひとつだろう。
 東京で開催されているフューチャー・テラーは、DJノブが世界で出会った音を体感できるチャンスだ。前回はベルリンを拠点に活動し、レーベル〈モーフィン〉を主宰する鬼才テクノ・プロデューサーのモーフォシスと、電子音楽のレジェンド、チャールズ・コーエンを招いた。そして今回、そのモーフォシスによって見出されたジャワ島を拠点に活動する、セニャワ(今年出たアルバム『Menjadi』は最高)と、ベルリンで知らないものはいないラシャッド・ベッカーを迎え、フューチャー・テラーが東京に再度襲来する。
 もちろん日本勢もフューチャー・テラーならではの素晴らしい組み合わせだ。DJノブ、ハルカらFTクルーに加え、EYヨ、Shhhhh、ゴンノといったDJたちや、ライヴ・アクトではゴートやNHK'Koyxenらが東西から集結。日本のローカルと世界のローカルが繋がる今年の大晦日は、忘れられない一晩になるだろう。やってくる2016年という未来は恐怖なのか、是非その目と耳で確かめてほしい。

FUTURE TERROR 2015-2016
代官山UNIT/ Unice / Saloon

日時:
2015.12.31 (THU)
OPEN/START 22:00

料金:
Advance 3,000yen
Door 4,000yen With Flyer 3,500yen
More info UNIT 03-5459-8630
www.futureterror.net www.unit-tokyo.com

出演:
[UNIT]
goat (HEADZ | UNKNOWNMIX) (live)
NHK'Koyxen (PAN | Diagonal | Mille Plateaux) (live)
SENYAWA (Morphine) (live)

DJ Nobu (Future Terror)
EYヨ (Boredoms)
Haruka (Future Terror | Twin Peaks)
Iori (Prologue | Bitta)
Shhhhh (SUNHOUSE)
Takaaki Itoh (WOLS | RESIDENCE)

[Unice] supported by terminus.
So Inagawa (Cabaret Recordings) (live)

Gonno (WC | Merkur Schallplatten | International Feel)
KABUTO (LAIR)
SO + Matsunami B2B (TRI-BUTE)
TAI T. RAM (terminus)
Takahashi (Veta)
You Forgot (UGFY)

[Saloon]
Rashad Becker (PAN) (live)

Fabio Lazaro (FLOPPY)
KEIHIN (Maktub, Prowler)
KURI (BLACK FOREST)
KURUSU (Future Terror)
Wata Igarashi (Midger)
WORD OF MOUTH (Partizan25)
YAZI (BLACK SMOKER | Twin Peaks)

DJ NOBU (Future Terror, Bitta)
https://futureterror.net

Future Terror、 Bitta主宰/DJ。Nobuの活動のスタンスをひとことで示すなら、"アンダーグラウンド" ──その一貫性は今や誰もが認めるところである。とはいえそれは決して1つのDJスタイルへの固執を意味しない。非凡にして千変万化、ブッキングされるギグのカラーやコンセプトによって自在にアプローチを変え、 自身のアンダーグラウンドなリアリティをキープしつつも常に変化を続けるのがNobuのDJの特長であり、その片鱗は、[Dream Into Dream] (tearbridge), [ON] (Musicmine), [No Way Back] (Lastrum), [Creep Into The Shadows] (Underground Gallery), そして最新作 [Nuit Noir] (Ultra-Vybe) など、これまでリリースしたミックス CDからも窺い知る事が出来る。近年は抽象性の高いテクノ系の楽曲を中心に、オーセンティックなフロアー・トラック、複雑なテクスチャーを持つ最新アヴァン・エレクトロニック・ミュージック、はたまた年代不詳のテクノ/ハウス・トラックからオブスキュアな近代電子音楽など、さまざまな特性を持つクセの強い楽曲群を垣根無くプレイ。それらを、抜群の構成力で同一線上に結びつける。そのDJプレイによってフロアに投影される世界観は、これまで競演してきた海外アーティストも含め様々なDJやアーティストらから数多くの称賛や共感の意を寄せられている。最近ではテクノの聖地 “Berghain" を中心に定期的にヨーロッパ・ツアーを行っているほか、台湾のクルーSmoke Machineとも連携・共振し、そのネットワークをアジアにまで拡げ、シーンのネクストを模索し続けている。

NHK'Koyxen (PAN | Diagonal | Mille Plateaux)

大阪出身のサウンドアーティスト。現在、大阪とベルリンを拠点に活動中。PAN、ラスター ノートン、SKAM/ラフ トレード、ワードサウンド、インポータントレコード等の海外レーベルから作品を発表し, 近年は毎年40回を超える海外公演を行う他、ペン画のインスタレーションや個展等を開催している。テクノ、ブレイクビーツ、ダブ、グライム等をクロスオーバーした即興的で歪なポリリズムパターンを駆使したライブセット展開するNHK yx Koyxenは、海外で非常に高い評価を得ており、2013年に現代美術の金字塔MoMAがキュレートし毎年NY行われているPS1 Warm Upに日本人初の出演を果たした。

Senyawa (Morphine)

SENYAWA はルリー・シャバラとヴキール・スヤディーによる実験的音楽のデュオ・プロジェクト。彼等はジャワ島のジョグジャカルタという街を活動拠点としている。ジャワの伝統音楽を実験的手法、自作楽器やアヴァンギャルドなアプローチによって唯一無二なオリジナル音楽と昇華させる手腕に、観る者は圧倒される。西洋音楽と伝統音楽の融合は、彼等の手腕によってまったく新しい境地に到達した。
幅広いヴォーカルテクニックで叙情豊かなポエトリーを吠える、ジャワの吟遊詩人ルリー。楽器発明家としても知られるヴキールは長い竹に弦を張った自作楽器を自在に操る。美しく精密なその楽器は、アコースティックサウンドからエフェクターを駆使したエレクトリックサウンド、優美な弦楽からパーカッシブな打撃音まで自由自在に往来する。

RASHAD BECKER (PAN, DE)

先日初のレーベル・ショーケースを成功させたベルリンの先鋭レーベルPANから、2013年に各所でその年のベストに選出された歴史的問題作『Traditional Music Of Notional Species Vol.1』をリリースした希有なサウンド・アーティストにして、テクノ~エクスペリメンタル界隈のみならず様々なジャンルのアーティストから支持されているベルリンの名門Dubplates & Masteringの天才マスタリング/カッティング・エンジニア、Rashad Becker。彼の構築するメロディやリズム、それらを構成する制約から解き放たれた蠢くようなノイズ/音像/残響が有機的に絡み合うこの上なくストレンジなサウンドは、これまで体験した事のない不気味な衝撃を聴く者全てに与えると同時に、耳の肥えたコアなリスナーをも虜にする中毒性は実験音楽の金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない。


Zodiak - ele-king

2015 Best 10

 2015年はスペシャルな1年。いままで活動を共にして来た盟友であるDJ HIGHSCHOOLが1stアルバム 『MAKE MY DAY』 を、ERA、BUSHMINDは3枚目となるアルバム『LIFE IS MOVIE』、『SWEET TALIKING』をそれぞれリリース。SEMINISHUKEI、D.U.O.TOKYO……凄く近くでそれでいてそれぞれの色が際立つ3アーティストは、12/22の夜にトリプル・リリース・パーティを開催する。
 こんな素晴らしいタイミングは無い! と思い、3人の対談をセッティングしてもらった。少し前にFALSECRACKで合流したCENJUはこの3作品全てに参加している、
 というのをふと思い出して進行を手伝ってもらった。いつもの感じとスペシャルな感じの両方が伝われば嬉しいです。

MERCY = M
BUSHMIND = B
CENJU = C
DJ HIGHSCHOOL = H
ERA = E

M:簡単な自己紹介と、馴れ初め的なエピソードを教えてください。

E:どうも、ERAです。所属はD.U.O TOKYOです。お願いします。この3人の馴れ初め的なことを話すと、名前をERAに変えて表立って活動する時にBUSHMINDはアルバムもリリースしてて、名前はもちろん知ってて。ファースト・アルバム『3words my world』を自分が出すときに初めてコンタクトをとらせてもらった。

M:DJ PKが横浜でやってるイベントにこの3人がいた記憶があるんだけど。

B:挨拶だけは多分イベントでしてると思います。そのアルバム( * 『3words my world』)の時に呼び出しがかかったんすね。トラックをくんないかって、場所は新宿のマックですね。

E:BUSHMINDは間違いないんじゃないかってところで、トラックを欲しいと頼んだんですね。それが最初ですね。 DJ HIGHSCHOOLとの出会いは新宿アンチノックのライブの帰りに飯を食ったってのが最初なんだよ。WOB( *当時ERA、MERCYが活動の拠点としていた2ヴォーカルのHARD CORE BAND)の最後のライヴの時。

B:タコデリオ( *STARRBURSTが当時働いていたタコス屋)ですね。あの時みんな時間差でいたってことすね。

H:で、ずっとERAは無言だったんすよ。それで最後STARRBURSTとあの人たち怖くない? みたいな。

B:俺もいた。WOB怖いってなった(笑)。

E:当時、もしかしたらDREAD EYEを知ってたかもしれない。

H:ライヴとかも来てくれたんすよ。その時ちゃんと話したんすよ。

E:DREAD EYEはその時デモデープを聴いたことがあったのかな。MERCYの家にあった。

B:てかみんなそのライヴの時に会ってたんだね。

M:あの時、みんな来てくれて凄く嬉しかった。WOBはみんなは見た事あるのその1回だけじゃないかな。

H:えっ??? 俺、気が付いたんだけど、自己紹介が1人で終わってる。ということで、トラックメイカーのDJ HIGHSCHOOLです。所属はD.U.O TOKYOとSEMINISHUKEIです。あとUNDER$TABLE、宜しくおねがいします。俺とBUSHMINDとの馴れ初めは、滋賀県にThemselvesを観に行った時。全然お互い知り合いじゃないのに。

C:Anticonを滋賀に観にいったの?

H:なぜか滋賀の学園に来るっていう。そこでしかやらないっていう。今里さんに行こうって言われて、俺とタク( *TAC-ROC)と田中君( *SONIC)とで車出してて、渋谷集合にしたんだけど、なんかバンズ履いて待ってる人がいて、俺らに近い感覚の人が。あれさぁ、俺らと一緒に行く人っぽくない? ってなって。

C:派遣のバイトの待ち合わせみたいなのりだ。Goodwillの人ですよね?(笑)

H:BUSHMINDから近づいてきて、もしかしてゼム行く人たちですか? って。残りの人たちが全然来なくて、俺らずっと無言で、牽制したまま別れて、その後初めて話したライブってcommonでしたっけ?

C:俺もいた!common行ってた!!

M:CENJUはとりあえず話はのらなくていいから。

C:危ない危ない。話したくなっちゃった。そうだ、聞き役に回らないといけないんだった。

B:そのときも挨拶くらいしかしてないよね。

E:2人ともナードだったんすかね。

B:だいぶナードだった。Themselvesを滋賀まで観に行く位だからね。

H:ナード過ぎて全員バリア貼ってて、なかなか近づけない的な。ということでそんな感じですね。

B:そのBUSHMINDは僕です。SEMINISHUKEIとD.O.DとROCKASEN、HIMCASTあたりですね。所属を言い過ぎると、もはや動いてるのかわからないグループも入ってきちゃうから。

M:これでもうなれそめエピソードは出切りましたね。次は、それぞれ2015年にアルバムが出ましたよね。それぞれの作品の自分的なコンセプトを教えてください。

H:1日っていう時間軸で曲を入れていくって感じで、明け方からスタートして目覚めて起きて、用意して家を出て、昼になって夕方になってまた夜明け前までっていうのをトラックとして作って、あとはその時間帯の情景をラッパーに語ってもらうっていうのがコンセプトですね。

B:俺のアルバムは、実験室ってかんじですね。BUSHMIND LABOみたいな感じで。調合と化学反応を見るって感じです。1日の流れとか時間軸でっていうのもやりたかったんだけど、HIGHSCHOOLに先にやられたってのもあって、俺は実験に特化したアルバムを作ろうと思った感じです。

E:自分はラッパーなんすけど、自分の尺度でカッコいいラップができるかっていう。そこですね。あまり自分の尺度でダメな部分は出さないように作りました。

H:お前も俺のアルバムは? って言ってほしかったですけどね……タイミング逃したね。絶対逃すっておもってたけどね(笑)。

C:ありがたき。また後で来ます。

M:それぞれのアルバムに対して、思ったことを聞かせて下さい。

H:俺だけファーストじゃないですか。2人はサードか。だから俺からしてみると、2人っぽさがより研ぎ澄まされて出した形かなって感じに見えたっすね。BUSHMNDもERAも音的には違うけど、出すテンションというかアーティストの過程として時間軸の上での作品としては凄い似てるなって。スタイルが確立されてて、いままでも、もちろん確立されてたんすけど、それが一番色濃く出てる感じかなっていう。

M:両者とも、いままでの作品では一緒にやってないアーティストと一緒にやってる。そういう部分もいまHIGHSCHOOLが言った部分に通じると思いますね。

H:洗練されたというか、選別が厳しくなってるじゃないですか。前に比べて。BUSHMINDだったら 『BRIGHT IN TOWN 』( *1stアルバム)があって、『Good Days Comin'』 ( *2ndアルバム)があって、けっこう周りの近い人たちだったりするけど、サードはそういうものをいれつつ、さらに違う部分もいれてて。ERAはいままでは俺らのやってる D.U.O.が入ってたけど、今回は入ってなくて。バッサリ切ってフィーチャリングを自分が本当にやりたいって人とやってる。何かアーティストとしてやりたいことが確立してる上で作ってるように凄く感じる。

M:アーティストとして確立したBUSHMIND,ERAがやりたいことをやるという感じですよね。

B:夢は何個も今回叶いました。NIPPSさんとやること。小島麻由美さんとD.U.O.を絡めるのも、俺しか出来ないだろうなって。いい感じで出せたかなっていう。ERAのニュー・アルバムに関してはより色が濃くなったんじゃないかと思います。3 WORDS MY WORLDは自己紹介的な感じもあったけど、もっとプライヴェートな感じで。

E:そんな感じっすかね。俺がOS3と俺のとBUSHMINDのと聴き比べた時に、OS3も言ってたけど、たしかに俺らは3枚目でけっこう成熟してきてるみたいな。OS3はラフさが残ってるんだけど、それが軽く聴ける感じでいまのストリートなのかなって。結構俺とかは考え込んで作ってる部分があったりとか。フレッシュさみたいなのは感じたかな。

C:OS3のアルバムは聴きたい時に選べる感じだって俺は思ったっす。

B:あと、勢いはスゲェある。持って行かれる感みたいな、ガーッて勢いよく曲にしても並んでる感じが俺も思うっすね。。やってるところも他にはないところではあると思ったし、OS3のサイケデリックさも俺とはまた違うから。そこは凄いわかったね。同時期に出してみて。

C:ラッパーのくっつけ方が俺は面白いなと思いましたけど。

H:俺のはけっこう正当な感じなんだけどね。

M:アルバム制作の過程でJUCEとCOOKIE CRUNCHは自分が紹介してそれから直ぐにサクッと曲作ってたから、そういう意味でもけっこう勢いがあったと思う。

H:その2人もけっこう勢いよかったし。

M:勢いやのりっていう部分での1枚目感はたしかにあるよね。

H:そこまで意識してなかったすけど、勢いのあるやつを並べたなってのはあるかもしれないっすね。GO DUMBとかもけっこう勢いあるし。

B:GO DUMB ( "MAKE MY DAY"収録曲、ILL-TEE、CENJUが参加。)はリリース前から盛り上がっちゃってたからね。(*リリースされる前にライヴでMOSHが起こったりしてました)

H:そんな感じっすかね。俺も3枚目とかそういう感じでやりてぇなって思うし。

B:2枚目でしょ。とりあえず(笑)。

H:2枚目すっ飛ばしたけどね。2枚目を出さずに3枚目は絶対に作れないけど(笑)。

B:『JEWELS』も最初2枚目(*2ndアルバム)って体じゃなかったしね。

E:そうですね。EPみたいな感じだったすけど、一応あれはボートラを3曲追加してたんすよ。そうすると11曲になるからまぁいだろうと(笑)。

C:俺もインターネットで調べたんすけど、8曲からフルアルバムって言っていいらしい。フルって言えばそこで金額を上げられるって。最初の『THANKS GOD, IT'S FLYDAY! 』( CENJU & QROIX名義での1stアルバム)は8曲しか入ってなくって1,500円で考えてたんだけど、フルってことにしようってなって、1,800円に上げたんだよ。

M:でもあれはアルバム感ある作品だ思うよ。今調べたけど、オリコンの定義で言うとオリジナル曲5曲以上の場合はアルバムみたいですよ。

B:HIGHSCHOOLとりあえず出しちゃえ。5曲で出せばセカンドだよ。俺は3枚目が早く作りたいんだって。

C:5曲で3曲スキット入れたら8曲だからアルバムだよ。

H:そうだけど……もうアルバムの定義はよくね? 俺らが定義しなくて良くない? こんなちっちゃい部分でアルバム定義しててもしょうがないよ。

C:革命を起こすかっていう。

B:いや起きないって。曲数で革命は起きない!

E:ところで、BUSHMINDは4枚目は出そうと思ってますか?

B:4枚目も出したいけど、その前に何やるかかな、みたいな。ROCKASENもあるし、テクノとかハウスとかでもやりたいし。いきなりインストモノを出すとか、一旦そこで積み重ねというか、選択肢が増えるような動きをしたいすね。3枚目は現状の俺の積み重ねとか考えは相当出せたんで。

E:BUSHMINDとしてはラップがのってるのはフル・アルバムとして出して、テクノの音源に関してはまた別の形ということ?

B:いまの現状ではテクノとかは別って感じですが、そこは絡められるっていう可能性も見えてきたんすよね。

M:アルバムでもそういうアプローチを感じる曲はありますよね。

H:FRIDAY ( *SWEET TALKING"収録曲。O.I.、LUNAが参加。)もかなり4つ打ち色が強いし。
B:この間DJ PKが聴かせてくれたんだけど、ヨーロッパのラップは、バース部分がトラップビートで、フックで4つ打ち、それが定番化してて、ハードコアのDJのやつらもトラップとドンドン融合してるみたいなんだよね。

C:バースのラップは繰り返し系? 言葉は?

B:トラップだよ。ドンドカみたいな。言葉はいろいろで普通にラップもある。ブレイクっぽいところで4つ打ちになる。150くらいのビートで。ヨーロッパならでは。かなり融合しているところもあるから、そういうところも見つつ聴きつつ吸収しつつでまた新しいことが出来るかなって。

E:俺はBUSHMINDをリスペクトしてるところがあって、OS3もそうだけど、常に制作し続けてるじゃん。そこのモチベーションというか、そういうのがスゲェなみたいな。

H:やらないときもあるんすよ。普通にYouTube見入っちゃって。

B:全然あるっす。ベッドから出ないでずっと漫画読んでるっていう。

H:あんまり別に構えてないですね。やれるときにやろうかなみたいな。

B:締め切りがあると変わりますかね。

E:でも作り続けてるわけでしょ、常に。依頼がなくても。

H:普通に生活のサイクルの中に入っているっていうか。

E:それがスゲェって。

B:たぶんラップとトラック制作でまたちょっと違うところもあるんじゃないかと。

E:うん。俺はラップでいわせてやろうかなっていうのはある。トラック的にはそういうのはないのかな?いわせてやろうみたいなの。

H:その時の気分だと思う。言葉がない分、その時に言いたいこととか特にないから、トラックは表しやすいのかもしれない。

M:トラックを作っていく時に最初にこういうのを作ろうというヴィジョン的なものを持って作り始めて、そのままゴールに行けたことってありますか。

H:無い。

B:無いかな。あったとしてもたまにかな。

H:だいたいそれで想像してそのまま作って出来たの聴いたらダセェなって思うんだよね。

M:プランありきでも予想外の方向に行った方が良いのができたりする時も多いと感じますもんね。もう一回戻ったりして、予想してたやつより良い方向のものを再構築するというか。

C:俺、一時期トラックを作ってた時期があって、始めないとゴールが出来ないんですよ。ゴールありきでやってないから……

B:このネタをこう使って、こういうビートを作って、っていうのもあるし、そういう人も、作り始めてからゴールが見える人もいると思いますし。

H:俺は普通に作りはじめちゃって、それから当て嵌めていくっていう感じかな。前はこれをサンプリングで使ってって思ってたけど、作ってみてそういうのに飽きちゃったっていうか。

C:スタートのほうがクリエイティブってことですよね。

M:ストックしても一生使わないストックたくさんありますよね。これ絶対いいんだけどとは思ってストックするんですけど。

E:こういう、これ風のスタイルがあって、一回やってみるかみたいな感じでやってみたけど、クソださくなっちゃったみたいな。それは使わないもんね。

H:ラップって結構現実じゃないですか言葉だから。トラックって空想の世界だと思うんですよ。でも自分の経験したことじゃないと、何か重みがでないじゃないですか。トラックは空想のものだからポンポン俺は作れる。ラップになると色々考えちゃうからたじろく。

C:これは言ってもいいのか。それとも言っちゃいけないのかって。でも最近の俺はGOするようにしてる。たじろかないで、言ってしまったもん勝ちなんじゃないかって。

M:KNZZ( *来年遂に1stアルバム『Z』がリリース。『SWEET TALKING』に参加)のレコーディングをこの間見てて思ったんですけど、トラックとラップって音的には似てると思うんすよね。いちばん最後の煽りとかまで5本入れてて、全部出来るとそれが機能してるみたいな。

B:うん、そうそう。KNZZ君は作り方が似ているとおもう。やっぱ彼はトラックメイカーもやってるから、話していると確実にそう感じる。

H:けっこう行き当たりばったりなんすよね。トラック。このネタ使いてぇって時はあるけど、1から作るときもけっこう増えてきたからその時は行き当たりばったりで。

M:どういうペースで作れているときに、いいものが作れてると思いますか? 気持ちよくできたなって思う瞬間とか?

B:ラストピースが嵌った時。最後の1音、もう一個ちょっと足りねぇなって思って、これとかかなって投げてピタって嵌った時。

M:具体的にアルバムだとどの曲ですか。

B:アルバムはROCKASENとかのそうかな。だからラップがそれだったりもあるのね。

H:俺は全部それなんすよ。ラストピースがラップ。

C:トラック7割、ラップ3割。

E:じゃあぶっちゃけた話、ラップをのっけてガッカリすることもあるみたいな。

B:それはあるっすよ。

E:ここまで来てて、イメージしてて、要するに共同作業じゃないですか。

B:ラップがのってまだ完成じゃないんだって思った時はあるっすね。そん時に今度はもう一個サンプルとかを足す。

M:それがラストピースになるときもあるということですよね。

B:ROCKASENのとかたしかそうだったんだよね。ラップ乗っかっても、もうちょっとだったんだよね。

C:なんかトラック100%で作ってくるトラックメイカーいるじゃないですか、渡されて、これラップのっけなくて、このまんまでベストじゃんっていうのがあるんすよ。たまに。そうするとラップする隙間が無いから100%が逆に下がるんすよね。

C:それに対して俺はなんて言えばいいの……。すいません。本当に……。

M:それって制作の距離もありますすよね。ラップとトラックとのやりとりの投げ合いが一回しか出来ない場合もあれば無限に出来たりする場合もあるし。どこが最後のピースになるかはそういう結果だったりするのかなと。

B:人によってそれがラップだったりパースだったり。

H:出されたものを完全にこう乗りこなすやつもいるわけじゃないですか。

B:そうそう。それは相性次第だよね。

E:そこで考えさせられたのが、今回のBUSHMINDの作ったシャッフル音源なんだよ。 (*12/22のリリース・パーティで限定販売される予定のこの3者のアルバムがシャッフルされた音源 ↓下記にその音源よりまずはBUSHMINDから1曲公開 )
DJ Highschool feat. D.U.O / Rise And Shine ( Loose Set Remix )
https://soundcloud.com/bushmind/dj-highschool-feat-duo-rise-and-shine-loose-set-remix

C:俺は『SWEET TALKING』のトラックは、100%だからどう乗っけたらいいのか、邪魔しないようにって思って作ったんですけど。

H:じゃあGO DUMBに関してはどうなの。

C:GO DUMB、隙間がいっぱいあるからラップしないといけないんじゃないかって。

M:HIGHSCHOOLのアルバムは、こういう風にやってっていう指定ありきで作ってるから、感じ方が少し違うのかなって思うんだけど。

C:BUSHMINDの時はラップのっけて、さらに上がったよって送られてき音源が自分が聴いたときの音源と全然変わってるからスゲェなって思って。ここまで進化させられるんだみたいな。俺が100%って思ってたのがそうじゃなくって。

B:100%いってなかったから。俺が補正したの。

C:だから、それは人によって全然違うと思いますね。。俺とQROIXで作る時、HIGHSCHOOLで作る時、ラップののせかたの違いは出てくる。トラックメイカーによって。

B:シャッフル音源は思ったんすけど、ほとんど俺とOS3のトラックだからそこの相性もあんのかな。ごちゃごちゃにしたけど、あれだけ嵌るところが多いっていうのは、OS3のトラックはHIGHSCHOOLのトラックもあるし、俺のを入れ替えてもだけど、日頃の積み重ねというか、共通項がやっぱりあるんだなっていうのはやってて思ったっすね。

E:こっちとしてはトラックをもらって、トラックに合わせてじゃないけど、トラックを聞いてラップを書いたりするわけじゃないですか、それに対して真面目にやってたわけだけど、それをシャッフルしてみてシャッフルしたほうがカッコいいっていうのは結構考えさせられるなって。

H:逆にあんまりないですよ。あそこまで嵌ることはそんなにないです。それは俺とBUSHMINDの温度感だったり、そういう、なんかやっぱ常に制作ってなると絶対にこの3人は関わるから、そういうのもあると思うんすよ。クセをわかってるから。

B:ERAのラップは一番合いやすいから。トラックまとまったら、とりあえずERAのアカペラをのっけてみようって良くやってる。

H:自分はBUSHMINDに普通に影響を受けているからそういうのもあると思うんすよね。

B:フィードバックが起きた結果、あれだけいろんなことになってる。

H:全然別のところから来た3人で、じゃあシャッフルしましょうってなると、そりゃあ無理あるよなって思います。

M:不自然さがなかったですよね。普通に他の人に、これ曲って聴かせたら、これで録ったんだろうなって思うくらい。

H:いままでもそうじゃないですか。リミックス系でSeminishukeiでやってきたけど、やっぱりラップしてる奴も知ってるしみたいな。だからやりやすい。

E:自分は聴いて、根本から揺さぶられたんすよ。作り方的に。

B:俺もラッパーにあまり聴かせないほうが良いんじゃないかと思っちゃったんすよ。嵌りすぎてて。作った人に申し訳ないと思って。

H:でもそれって、リミックスなんだから当たり前じゃない?

M:ここまで当人達も問題作だと思っているシャッフル音源は聴いた人のお楽しみという事で、それぞれアルバムをリリースしてからはどんな感じで活動していました?

B:俺はかなりDJで呼んでもらってたかな。夏くらいからは毎週位のペースで。

M:アルバムの再現的なセット以外でのDJプレイの時はどういう感じですか?

B:イベントのオーガナイザーにどういうプレイをやってもらいたいか、基本ヒップホップかテクノかみたいな感じで聞いて。

M:イベントに呼んでもらった時に聞くんですか?

B:そう。「どっちがいいっすか」みたいな感じで聴く。基本2択かな。その中で、DJ APRILさんに呼んでもらったときは、オリジナルビートセットでお願いしたいということだったから、その2択以外だったけど。けっこうやったかな。8週くらい連続で呼んでもらってた。

M:ERAは?

E:アルバムをリリースした後に、現実とぶち当たりまして、それでまぁ、考えさせられることもあり、ちょいちょい休みつつも、制作しないとなって訳じゃないけど。そういうのでなんかBUSHMINDとかOS3とかやり続けてるから、そのモチベーションていうのか、そういうのが気になったっていうか。今回の制作に関しても次に向かってるんだけど、ちょっと離れてみて、色々聴いてみたりとか。2枚目まではすぐ行けたんだけど、今回は.……

M:2枚目作った後は、直ぐに曲作ってましたよね。

E:まぁ、そんな感じっすよね。はい。

H:俺は、もうちょっとこうできたなとかそういうのがあったんで、その反省点とかを見つめ直したり。今までミックスCDとか『Bed Time Beats』っていうビート集とか、結構出してたけど、アルバム制作してからストップしてたんで、それをまた再開して。ちょっと違ったアプローチでやってみようとか、ERAのアルバムにも1曲入れてますけど、RAMZAと一緒に曲を作ったり。

B:あれは完全にアップデート感があったね。あの曲は凄いよね。

H:今までやらなかった事とか、人と何かやってみようとか、そういう感じで。これからですけど。Bed Time Beatsの5も作ってたりとかします。

M:UNDER$TABLE ( * NERO IMAI, MIKRIS, J.COLUMBUS, OS3によるグループ)もはじめましたもんね。ラップをけっこうやってますよね。

H:でもトラックに対するアプローチが、いままでハードで作ってたのをアルバムからはガッツリPCに移したりとかして、その操作とかも慣れてきたってのはあるから、それでちょっと変わってきたというか。『SWEET TALKING』とか聴いたりして、トラックをもっと突き詰めるっていう部分ではかなり影響を受けたなっていうのはありますね。

E:同じクルーにいながら、BUSHMINDとHIGHSCHOOLはライバル的な……

B:そこは間違いないっすね。『Make My Day』は相当影響を受けたし、刺激にもなった。自分のやるべきこともそれで見えた部分もあるし。

H:そうっすね。向き合い方が、著しく変わったわけじゃないけど、伸びしろをもうちょっと自分で見つけてやってみようかなっていう感じではありますね。

M:ここ何年かみんな一緒に活動してきてるなかで今年みたいに近いタイミングでリリースしたことって無かったですよね。

B:まさかって感じだったよね。

M:そういうことお互いに影響とかどうですか?

H:SEMINISHUKEIとかD.U.O.とかもそうだけど、BUSHMINDがいて、ERAがいて、2人ともアルバムっていうか、一歩離れたところで、大げさですけど責任を背負ってじゃないけど。外に向けて何かをやってる人が自分の周りでその2人がいちばんやってるなって感じだったから、そこに俺も参入するみたいな。俺もそこで勝負したいなって。

B:フィードバックもデカくなるしね。

E:決まった。間違いないっす。

H:じゃないと面白くないかなって思う。

M:それぞれ音源の部分でそれぞれの作品で印象的なところはありましたか。

H:ERAのアルバムに関しては、スタイルというかERAというものを完全に確立したっていう感じは凄い思ってて、BUSHMINDに関しては、すげぇミクロの部分まで音を見てるなっていうのは思いましたね。音数も多いし、凄い細かいところまで見てるな。そこがBUSHMINDらしさだし。俺は大雑把だから。

B:その大雑把ぶり、初期り具合に俺は影響を受けてます。

H:逆にアルバムを出してから、もうちょっと細かいところを見てみる感じになったっていうところですかね、俺は。そこはトラックメイカー同士のあれかなって。

E:じゃあ、トラックメイカーとして、2人で最終目標までいかないにしても、何かしら目標みたいなもの...やりたいことはありますか。

B:近場の人間にうわぁーって思わせられるように、そこは変わらず。一番重要かなって思う。

M:そこは一番重要っすよね。

B:そこだね。常にそこは考えてる。

H:俺はヒップホップから離れてもいいかなって。トラックを作ってラップをするっていう図式じゃないですけど、ヒップホップのビートだからラップがのるとか、そういうのは別になんか……もともと俺はヒップホップばっか聴いてきた奴じゃないから。

M:とくにDJ HIGHSCHOOLは、アルバムが出る前まではラップがのるっていう想定でトラックを作ってるっていう話を良く聞いてたんで、アルバム通してその変化もあるといいですね。

H:アルバムを作るってなって、本当は歌モノも入れたかったんだけど、上手く嵌るやつもいなくて、研究して、今回はラップ・アルバムをやろうって思って、全部そういう感じにして。次はもっとやりたいことを……もちろん、ラップするトラックも作っているうえで、別の動きも独自でやりたいみたいな感じになりましたね。

B:インストもの?

H:インストものはずっとやってたから、次はもうちょっと歌とか、ラップじゃなくて。インストもあって、歌っすよね、歌。

B:それはやりたいよね、歌。

H:『SWEET TALKING』 の"FRIDAY"みたいなことっすよ。

B:あれはやっと一歩踏み出せたって感じだもん。

H:なんだっけ、Prince Paulの1曲目とか。こういう単語を出すと何かうわぁ...って思われるかもしれないけど、トリップホップとか(笑)。

(全員爆笑)

H:Portisheadとか聴いちゃったりとかして、かっけぇってなったから。だから、R&Bとか好きで、ミックスCDとかもインディな方向に行ってて、それだったらもろにインディに寄せてもいいんじゃないかなって思う。日本人だし。

B:ERAはオーバーなところでtofubeatsとかと絡んでやってるじゃないですか、その辺はどう考えてるんすか。

E:やれるならばやりたいってのはあるけど、メジャーの有名なアーティストだし、それに対して向こうがOKしてくれるのかなって。それが正直なところかな。

B:俺ははオーバーに通用するものを作りたいって思う。

E:その欲求はあるけど、向こうがOKしてくれるのかなってのはあるし、それにこたえられるだけのオーバーっぽいものってあるじゃん。

B:ERAは他の周りのラッパーと比べて、そこは一歩上にいってると思うんすよ。今回のアルバムでもそれは感じたし。

E:でもまだまだかな。なんか、最近足りねぇ部分も見えてきたってのはある。

B:そこで勝負できるような曲を作りたいってのはあるってことですか。

E:っていうのはある。

C:ERAはそれがあると思う。ERAが突破してくれないと俺ら居場所作れねぇじゃん。

B:俺、本当にERAのラップは可能性あると思う。

C:ERAの曲は本当にグッモーニーング ( *『LIFE IS MOVIE』収録"HEART BEAT"のこと)って歌っちゃうから。

M:BUSHMINDのアルバムがあって、そっからでて、ERAのアルバムにあの曲が入って、流れが良かったっすね。そういう、流れでいったらあの曲はトドメみたいな感じだったっすね。

E:BUSHMINDのトラックでヒップホップなのにギターを使ってるってのが新しかった。ギターっていうかアコギみたいなフレーズ。

B:あれ誰ももらってくれなかったんだよ、あのトラック。だからCIAの"DOWN SOUTH" ( CIAZOO 『logic work orange』収録)のっけて遊んでた。そしたらERAがこれいれるって。

C:あの曲はトラックとして100%だから難しいんすよね。

B:ERAは他にも選択肢があったもん。最初にのっけてたラップのフローと違ったもんね。俺は、それヤバいってなったんだけど、そしたらまた全然違うのがきた。だからまぁ、他にも選択肢があったってことですよ。

E:あのギターフレーズが良くて。

H:何とかの日曜とか……あれはけっこうビックリした。中途半端だよなーって。来たーみたいな(笑)。

M:ポップスって鼻歌で歌えるかどうかって思うんですよ。みんなが無意識に歌ってるのって、そういう事じゃないですか。鼻歌で歌っててもみんなこの曲が何か分かるっていう。そういう要素がある曲だと思うんですよね。

H:あの曲に関してはBUSHMINDとERA節なんですよね。

E:だから俺ってアングラなんだよね。

H:違うって。そういうことじゃなくて、Linkも近いっていうか。だから別にディスってないから(笑)。

M:OS3はERAとD.U.O.で曲を作ることが多いから、そっちのイメージの曲のほうが多い思うんすよ。で、ERAとBUSHMINDとで作った曲はまた違うイメージがあって、ソロというのもあるし。D.U.O.はD.U.O.のイメージがあるし。

C:ERAはどっちのほうがやり易いですか。

E:どっちがどっちってのはないけど、BUSHMINDはスゲェBUSHMIND節があると思う。

H:BUSHMINDと対峙してるERAみたいなのはある。

E:うん。相性は良いと思う。

B:俺も思うんす、そこは。

H:それぞれ、違った良さを引き出してる。俺と作っても、BUSHMINDと作っても引き出してる感はある。Link ( * 1stアルバム『3words my world』収録 )から始まってって感じなんですよ、俺は。BUSHMINDトラックはこうだよなって、壮大じゃないけどおおらかな。ラップってものを取り払って……

E:だからラップが足りなかったんだよ。

(*ERAとHIGHSCHOOLでラップに関して議論に……)

H:これだけは言わせて。ラップっていう概念をBUSHMINDのトラックでやると、1回取り払えるんですよERAは。

B:アングラ感からの脱却がテーマなんだよね。

H:いや、アングラじゃないってたぶん。アングラってポップスがあるからアングラって言葉があるわけで、俺は別にアングラなことをやってるとは思ってない。

E:ぶっちゃけ、D.U.O.の俺の最初のコンセプトはあったんだ。ポップスとか売れてぇなじゃなくて、ヒップホップとして最大級のデカイものを。アメリカのヒップホップってデカいものじゃないですか、メインストリームは。だからそういうものをやってみたいっていうのはあったから、D.U.O.はメジャーのトラックジャックしてガンガン曲作ってたし。

H:まあ、アングラかアングラじゃないかは、対照で。もうひとつデカい勢力とかジャンルがあってアングラってなってるだけだから。でもしょうがないんだよ。自分らで音楽を作っててやってる訳だから。いわゆるメジャーのさぁ……予算もかけられないわけじゃないですか。自分らでやってる訳だし。

E:じゃあ負けないようにしようぜ。英才教育を受けたやつらに。

H:だから、それはやり続けるしかないよ。こういうのがあるっていうのを提示し続けないと、聴いてる奴らからしたらやってないのと一緒だから。俺らがどんな思いでこういう音楽をやってるのかっていうのは、一生伝わらないからさ。

E:MERCYさん、これ思ってる以上にディープ談義になってしまいました。

M:いいじゃないですか。

E:絶対CENJUは才能あると思うし、余力が残ってると思うんだよな。余力があるように見える。

C:……なんか怒ってる。

E:まじ怒ってないけど、何か日本語のラッパーとして日本語の深さをOS3と語りてぇなって。

C:何かコーラ、タダでもらえるって……

E&H:おい逃げんなよ。ラッパー。

H:だから纏めると、みんな音楽が好きなんですよ。

E:たしかに。超マニアックになってた。やばい。

H:音楽が好きだっていうところで、リスナーに納得がいってないっていう。

E:リスナーに届いてないんだ。

H:だから、リスナーに納得してないからそう思うんだよ。大半の奴が軽薄なものしか聴いてないっていう。

E:たしかにね。だから日本がもっとそういう風になってくれたら、もっと俺らも満足してるよね。

H:それでいうと、俺もBUSHMINDもERAもみんな音楽が好きっていう。だからそれを聴いている人にも求めるからこそ、それだけじゃないけど、そういう部分もあって作ってるってのはあると思うんですよ絶対。

M:ポップスと言われる音楽の音楽性が底上げされるとですよね。

B:でもトラックもなんだけど、クオリティの差は超デカいと思うんだよね。ポップスやりたくてもクオリティがある程度……機材というよりも技術。全然俺は届いてないと思うんだよね。

M:一音一音の鳴りとかってことですよね。

B:そう鳴りとか。ある程度のラインを行かないと、メジャーで。そこには全然届いてない。

H:全部そうだけど、ミキシングっていう部分においては日本はかなり遅れてるんですよ。ジャンルに特化したミキサーが、各ジャンルにいないっていう時点で。

M:音の特徴ってあるじゃないですか。バランス、声の処理、結構似てるから。ジャンルによって。

E:クラウ・ドラップとかで音が超ショボいけど、カッコいいのもあったりする。

B:それはもちろんあるし。俺らもまぁそうだし、そこは……ってのはあると思うんだけど、ポップスとして、音が成立しているラインていうのがあると思うんですよ。アメリカとかだったらそのラインにいってなくても売れちゃうことがあるかも知れないけど、日本の音はまだラインがあると思うんですよ。

M:アメリカとかだとクラウド・ラップがメジャーのクオリティーの凄いものに対するカウンターとして機能してると思うんですが、日本だとそういう構図にはなってないというか。

B:カウンターとしても成立してないと思うんだよね。

M:海外でミキシングをすることですげぇ音が良くなったと思ってたけど、いろいろと聞く上で最高に良いものではないというか。平均値よりはいってるのかもしれないけど、日本のミキシングと比べたらめちゃくちゃ良いけど。もうちょい大きい中でみると、自分が評価しているところまでの感じではないのかなって、最近思うんすね。

C:答え。結果負けてられねぇ。

H:ってことで次のお題っすね。

M:年末にリリース・パーティはどんな感じにしたいですか?

H:俺は、ヒップホップのパーティにはそんなにしたくないかなってのはありますね。SEMINISHUKEIはずっとそういういろんなジャンルで単純に面白いって思ってきた人を引っ張ってきてるから。たまたまいまラップをやる奴の比率が増えてきたっていうだけで。ずっとそこでやってたけど、1回立ち返っていろんな音楽が聴けるっていう場所が俺は良いかなって思うんすね。

M:ですね。そういういろんなものがあって、そのなかで強いものをみんなでやるっていうのが本来の自分たちがやってきたことかなって思って。だからもう1回立ち返ってみて、バンドとか出すとかじゃなくて、それぞれの感じでそういうのが出来るのが一番いい感じだし。本当は色々パーティとかやってても、実際問題ヒップホップのパーティに寄ってきちゃってたけど、そこかなって思うから、そういうのできたらいいなって思うというか。

H:どこがホームとか俺らはいままでなくて。形がないままずっとやってきたっていうのが俺らのスタイルだから、そこかなっていう。

M:ジャンルでホームは作ってない。ホームって言える場所はあるけど、ジャンルでヒップホップ、ハードコア、テクノ……そういうのではない感じを、俺も最近思うことがあるから、そういうのが出来ればいいですよね。

H:そうですね。古い、新しいとか、そういうのは関係なしに面白いってただ思っただけで、動機としては完全に成立してると思うんで、それをもっとやんないと俺らじゃねぇなって思ったから。俺らはこうだからって、そんなのは別に1人1人が固めていれば別にいいと思うんすよ。全体としてみんなで固める必要はないっていう。

M:特に音的にそういうのは無いと思うから、それをもっと形として見せられるようなことが出来れば一番いいよね。

H:それこそ普通にイケてるからってテクノのDJ呼んで、ヒップホップのラッパーでこいつイケてるから呼んでって、一緒にパーティやったら面白いんじゃないかっていうのとは違うじゃないですか。人間レベルで繋がってるから、そこで初めて成立するからやっぱり。全然やってることが違くても。じゃないとやってる意味ないけど、そのレベルでやってるのってあんまりいないと思うんすよね。

M:そこを強化したものを今回も出せればいいと思うんすよね。HIGHSCHOOL、ERA、BUSHMINDのアルバムを全部聴いてる人は多いと思うけど、それぞれを聴いてる人が3つのなかからどれが好きって選ぶとしたら、それぞれまた違う人たちなんだと思う。

B:バラバラになって欲しいよね。

H:最終的にさっきの話に繋がるんですけど、こういう奴もいるよっていう提示になってるっすよ。俺らは意識してないけど、無意識的にいままでしてて、二軍感だとかオーバーグラウンドだとか、そういうのばっかり聴いてる奴にも、こういう奴もいるっていう提示。

M:そこでのクオリティの違いを出したいなって思う。そういう人たちってけっこういると思うし、そういうことをやろうと思って、そういうのではないよっていう提示が出来たらいいかなと俺も思うっすね。

H:いままで俺らが影響を受けてきたのって、全部そういう奴らだと思うんですよ。例えばさっきの話に戻るけど、俺とBUSHMINDでThemselves観に行ってJelがDystopia聴いてるってなって、まじで? って上がって。

B:一緒に住んでたんだって。笑 JelがDystopiaのドラマーと一緒に住んでて。っていうのをその場で知って。M AGENTS OF MAN ( *NY, NJのHARD CORE BAND)のベースがMr.LEN(COMPANY FLOWのメンバー)とルームメイトで、Mr.LENのアルバムにバンドで1曲入ってたり。

B:それに上がってた。

H:そういうのを形として提示してるのってあんまりいないじゃん。

M:最近その形が薄れてるって訳じゃないけど。そのことを今いま、もう1回提示したいと思ってますね。

B:そこは強みだしね。

E:じゃあ、MERCYたちは提示する派、じゃあ俺はグラサンを外せよみたいな(笑)。まぁ、そういうのやってるよ、俺らのルーツはそれだよ、しょうがねぇよ。それは好きなんだから……

M:そう思ってる奴はグラサン外せよって。

E:そのグラサン外して聴いてくれよって、どうなんだよって。そこなんですよ。

H:結局やり続けないといけないんですよ。新しい、古いなんて第三者が決めることだから。俺らは普通にやっててそれが新しいって勝手に言って、勝手に盛り上がって、ワーってなってるかもしれないけど、別に普通じゃない?って。友だちとして会ってやってんだから。新しいことやろうぜって言ってやってる訳じゃないっすよ、俺ら。

C:でもそれはもろ刃の剣でさ、その人の内面を知っちゃうとさ、あんまり良くない曲でもさ、アツい! みたいになっちゃうじゃん。聴き方変わらない?

H:そんなことないっすよ。

C:俺、けっこうあるんだよ。

H:それ、お前がサングラス外せよ。

C:音楽だけね、好きじゃなかったものが、その人を好きになることによってありになるっていうのはあるじゃん。

H&B:それはあるよ。

M:でもそれって音楽があって、フィルターをもう一回通してるからだと思う。

H:だから本当に良くなかったら、良くないと思うんだよね。人は好きだけど、いまいちなんだよねみたいな。っていうのはあるじゃん。

B:音楽やんなきゃいいのにあの人みたいな……

H:CENJUもこのラップは良いけど、このラップはいまいちでしょっていうのはあるからさ。そういう感じでしょ。そこの線引きは結構厳しく言ってるよ。交流はあるけど誘わないって奴はいますもんね。あるじゃんそんなの。

E::そういう人間性とか抜きにして気にいってもらいたいっすね。そういうのを求めてる。

B:そこまで届きたいよね。ライトリスナーが、そういう人間性とか噂とか気にせずに、音源だけ聴いて、うわやばいってなるところまでいきたいんだよね。

M:そのDJが聴きたいだったり、ライヴが観たいだったり、それだけで呼んでくれる場所を作らないと、その先のフィールドには……

B:そう。そこまでまだいけてないと思うから。

H:ちょっとまって、これさぁ後ろ向きなことしか言ってないでしょ。だからこれはちょっと自分らのなかで。

B:そうだね。これは第三者に聴かせるべきじゃなかったね。

M:それはもうコミュニティ・ミュージックで流してって感じでいきます。

C:質問良いですか? 俺、3人から参加オファーを受けたんですけど、どういう気持ちでオファーしたの。

H:俺は下衆い曲ができるってのは、こいつとILL-TEEしかいないって思って。下衆い曲作りてぇなって思って、下衆いと言えばこの2人だろみたいな。

E:俺は、CENJUがその時シーンでイケてたから、やべぇ使うべみたいのもあったし、そういうのかな。CENJUにフィーチャーされたってのもあるし、けっこう面白いなみたいな。

H:俺とBUSHIMDとERAの違いは、シーンでイケてると思ってないから。下衆い奴だなこいつは、って思って。内面知るほうが早かったから。

E:たしかに下衆い。

B:俺も“world end” ( CENJU"CAKEZ"収録BUSHMINDトラックでCENJU/ERA/J/COLUMBUSのRAPによる曲)があったからっていうのも。スタジオの後だったらオファーしてなかったかな。

E:下衆いでいいの?

B:直接言ってるんだから大丈夫だよ。

M:CENJUさんはどんな感じでラップやってるんですか。

C:出されたものは全部肥やしとしてやっていくわ。

H:下衆いね(笑)。

M:肥やしにして、何が生まれるんですか。

C:新たな名が生まれるというか。

H:ちっちゃいCENJU? LITTLE CENJU(笑)? 真似してよって思うんすけど、誰もここまでの下衆は出てこない。下衆って言うのはあれだから、人間味があるっていう。

C:言われなくてもそう受け取ってる。下衆の極みって酒を出そうと思ったんですけど、日本酒を大五郎で割った……3口くらい飲んだらベロベロになるっていう最低の酒。

H:最低な酒だからね。

E:下衆いほうが人間味があるっていうことだな。

C:下衆いラインのほうが面白いじゃないですか。人と話してても。

H:アルバム作っていて何が一番楽しかった? 何が一番上がったっすか。

B:うーん。曲が出来た時だね。レコーディングした瞬間が多いかな。あと、あれだね。好きな人から感想を頂いた時。

E:そういうの、上がるんすね。

B:うん。上がる。尊敬する人から、それはもう上がるっすね。

E:おれは、完成した時。ミックスが上がった時とか。

H:作ってる過程での、ラップやってる奴とのやりとり。

B:フィードバックが起きてひとつにまとまった瞬間ていうか。

H:コミュニケーションを取って、自分はブースにいないけど、一緒に作ってる感じが、音楽作ってるなっていう感じがして、俺はすごい面白かったっすね。そういうのをずっと続けて行きたいなって思ったし。トラックメイカーだから一人で作れるけど、1人で作ってない瞬間のほうが面白い。1人で作るのは当たり前の作業だから、来たものに対して新しい作用がある。別の、そいつの視点が入って来るっていう瞬間が一番面白いですね。

 ──この3人と仲間の続きの話を聞きたい方は是非とも12/22の恵比寿TIME OUT CAFE & KATAのトリプルリリースバッシュに是非とも足をお運び下さい。

BETWEEN THE BORDERS
- BUSHMIND"SWEET TALKING" x DJ HIGHSCHOOL"MAKE MY DAY" x ERA"LIFE IS MOVIE" TRIPLE RELEASE PARTY –

RELEASE LIVE:BUSHMIND / DJ HIGHSCHOOL / ERA
RELEASE LIVE GUEST:B.D. / C.O.S.A. / CAMPANELLA / CENJU / COOKIE CRUNCH / ILL-TEE / J.COLUMBUS / JUCE / KNZZ / LUNA / MASS-HOLE / MIKRIS / NERO IMAI / NIPPS / O.I. / R61BOYS / ROCKASEN / TOSHI MAMUSHI / YUKSTA-ILL / 仙人掌
BEAT LIVE:JJJ / RAMZA
DJ:BISON / ETERNAL STRIFE / KILLA TURNER / MAMIMUMEMOSU / MAMUSHICK SELECTER / NO RULE / OVERALL / RYOSUKE / STARRBURST / THE TORCHES

日時:2015年12月22日(火曜日/祝前日)開場/開演 23:00
会場名:KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
前売券(発売中):2,500円
前売券取り扱い箇所:チケットぴあ[Pコード 277-952]、ローソンチケット[Lコード 75769]、イープラス<https://eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002170426P0030001>、DISK UNION(SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP/KICHIJOJI)、JET SET TOKYO、LOS APSON?、MATABOND、TRASMUNDO、リキッドルーム
当日:3,000円


“Love Together ハイになるまで” - ele-king

 ラヴァーズ・ロック・ミーツ・ダブ──ヴァイナルの表と裏にて配膳されてしかるべきシュガー&スパイスがワンプレート上でユニゾン。レシピ配合に3年を要し、その間、表舞台から姿を消していたdUb MaFfia(ダブ・マフィア)が再始動する。

 ルーツ・ロック・レゲエにおいて最重要度を誇る女性ヴォーカルモノ。キングストンの埃っぽく危険な雰囲気を漂わせるダビーなリズムに、トウキョウ的なシティポップ・ムード溢れるラヴァーズ・ロックの融合を果たしたバンド、dUb MaFfiaより3年ぶりに届けられたシングル「Love Together ~ハイになるまで~」は12月16日配信開始!

 2012年にファースト・アルバム『No More Nukes Use Hemp』を発表し、そして今作品が3年ぶりのリリースとなる。ついに爆発するか?

dUb MaFfia – “Love Together ハイになるまで”


interview with Roots Manuva - ele-king

 彼女は俺の心を開き
 俺をウィードのように巻いて吸い
 そして、もぬけのからにする
“ミー・アップ!”


ROOTS MANUVA
Bleeds [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録]

BIG DADA/Beat Records

Hip HopReggaeUK Soul

Amazon

 あの爆音、あのベース、あのバリトン、そして、あのヘビー・プレッシャー(重圧)……
 デビュー作『ブランド・ニュー・セカンドハンド』のリリースから16年、ロドニー・スミスが最新アルバム『ブリーズ』と共に帰ってきた。このアルバムは、1999年以来6枚目、もしくはコンピレーション・アルバムの『ダブ・カム・セイヴ・ミー』、『オルタネイトリー・ディープ、スマイル&ヴァージョン』、『ダッピー・ライター』をカウントすると9枚目の作品となる。ロドニー・スミスとは、レフトフィールド、ゴリラズのアルバムに参加した男であり、ビートルズ『イエロー・サブマリン』の自身のヴァージョンを発表した男であり、そして、ニュー・アルバムでバリー・ホワイトとマックス・リヒターの両方をサンプルしている男のことだ。

 UKでは、ディジー・ラスカルがヒットを放ち、ワイリーがドンと構え、クレプト&コナンが大西洋をまたぎ、JMEは暴走、そしてストームジーとスケプタが勢いを増している。そんな中、ルーツ・マヌーヴァは崇高とリスペクト、そしてルーツを兼ね備えている。ルーツ・マヌーヴァとはroots manoeuvre 、つまり、ルーツを巧みに操る男ということ。
 その名が全てを語っているのだ。自分よりも8年先にデビューしたマッシヴ・アタックのように、ルーツ・マヌーヴァはサウンドシステムの精神を引き継いでいる。スラム街で育まれ、あらゆる音楽がその周辺に漂うサウンドシステム。ジャマイカン・ファミリーの歴史におけるその精神と崇高の全てが、彼が放つ音とラップに注ぎ込まれているのだ。

俺はいまだに、“ジャマイカ生まれのイギリス人としての自分とは何か”を定義しようとしているし、それがいったい何なのかを追求している。アメリカのラッパーたちは、自分たちが一体どんな存在なのかを即座に答えることが出来るだろう。例えばカニエ・ウエストは“俺は中流階級のパプテスト派だ”と答えると思う。でも俺は、自分が労働者階級のペンテコステ派だと明言は出来ないんだ。何故なら、俺は教会に行かないからね。

 「ひとりひとりバックグラウンドが違うだけで、俺たちは皆、同じスピリットのなかに生きているんだ」
 ゆったりと腰掛け、サウスロンドンの冬の空をサングラス越しに見上げながら彼は言う。「俺はいまだに、“ジャマイカ生まれのイギリス人としての自分とは何か”を定義しようとしているし、それがいったい何なのかを追求している。アメリカのラッパーたちは、自分たちが一体どんな存在なのかを即座に答えることができるだろう。例えばカニエ・ウエストは“俺は中流階級のパプテスト派だ”と答えると思う。でも俺は、自分が労働者階級のペンテコステ派だと明言はできないんだ。何故なら、俺は教会に行かないからね。でも同時に、ペンテコステ派の教会に通っていたバックグラウンドはある。自分が一体何者なのかを定義出来るようになるには、あと15年はかかるだろうな」

 瞑想的でありながらも自信に満ちた歌詞を通して、ロドニーは、彼が与えられるもの、もしくは、自分が与えることを許されたものを人びとに提供している。そして大抵、それはありふれた風景の中に潜んでいるのだ。彼は“敢えて”お茶目でワルな部分を前面に出しながらも魅力とユーモア溢れるラッパーであり、皆を招き入れつつも“俺を怒らせるなよ”と警告している。その内容は、普遍的でありながらもパーソナルなものでもあるのだ。パトワによって暗号化された言葉の数々は、意識の流れとして届けられる。懺悔、信仰、信念、正義、救済、贖罪、倫理、誘惑、疑念、不正、罪……その全てがニュー・アルバムという1枚の布に織り込まれているのである。
 
 「この作品は、経験の数々が織りなす多層構造。ダークなユーモアがありながらも明るいユーモアもあり、悲劇もあるが安息もある」と彼は語る。「俺は痛みを表現するのが好きなんだ。痛みを感じるというのは良いことだし、痛み以外にも喜びや愛だって表現されている。俺はライターだから、ただただ書き続けるんだ。でも、その書いている内容が、一体どこから来たものなのかは俺にはわからない。大抵の場合、自分とその内容に繋がりさえ感じないんだ」

 これまでにリリースされたアルバムからのトラックを聴いてみよう。 “ウィットネス(ワン・ホープ)”、もしくは、まるでペンテコステの教会でダブル・ブッキングされてしまい、同じ空間の後ろでドレクシアが同時にプレイしているような“レット・ザ・スピリット”のドクドクと脈打つベース音。そこには光と暗闇、昼と夜といった感情のミックスとコントラストが常に存在し、これでもかという重低音、深いローエンドの周波数がそれを支えている。
 「俺はいまだに「ダブ・カム・セイヴ・ミー」を聴くんだ」
 自身の過去の作品を聴くかという質問に、彼はこう答えた。「昔、『ブランド・ニュー・セカンドハンド』が大好きな女友だちがいて一緒にアルバムを聴いていたんだけど、聴くたびに最高だと思ったね。でも彼女と一緒に時間を過ごさなくなってから、あの素晴らしさを感じることができずにいるんだ(笑)」

俺は運が良かったわけじゃないんだ。働いて働いて、働きまくってきた。いま手にしているものは、得るべくして得たもの。何をするか、いくら稼ぐかは問題じゃない。凛とした態度で、尊敬の念を持ちながら働くことが大切なんだ。適当にダラダラとやっていれば、リスペクトなんてこれっぽっちも得られないさ。

 最新アルバムのクリエイティヴ・チームには、フォー・テット、ウィズ・ユー(スウィッチ)、マシンドラム(日本盤)といったメンバーが名を連ねている。フレッド・ギブソンもそのひとりであり、彼は、ブライアン・イーノ/カール・ハイドのアルバム『サムデイ・ワールド』への貢献でもっともよく知られている。
 「ルーツ・マヌーヴァ(というプロジェクト)は、ロドニー・スミスだけで成り立っているわけではない」と彼は言う。「このレコードには、俺のヒーローたちが集まっているんだ」
 〈On-U sound〉との繋がりがアルバムによりまとまり感を与えているのには頷ける。プロジェクト・マネージャー的役割を果たしたエイドリアン・シャーウッドは、多くのトラックにおいて、タックヘッドのキース・ルブラン、スキップ・マクドナルド、ダグ・ウィムビッシュ(“俺はただのベース・プレイヤーではない。俺はサウンドシステムなんだ”と自身のウェブサイトで語っている)のサウンドをレコーディング。このトリオは、〈Sugar Hill Records〉からリリースされた「ザ・メッセージ」と「ホワイト・ラインズ」でも共演している。

 「エイドリアン・シャーウッドは、このアルバムの制作担当だった」と彼は説明する。「俺は14トラックのアルバムを作ろうと提案したんだ。でも彼らが、“ダメだ。14トラック・アルバムは作らない。お前が作るのは10トラック・アルバムだ。気持ちはわかるが、そうした方がいい”と言ってきた。結果、UKではアルバムに10曲が収録されて、日本盤にはそれに2曲が追加されたんだ」
 「アルバムを聴いたとき……」と彼は続ける。「作品としては仕上がっていた。でも、あれは俺のチョイスではなかったんだ。もし俺に決定権があれば、15曲は収録されていただろうな(笑)」
 
 「アルバムはワンテイクでレコーディングした。天才だよな(笑)。それに、何よりも満足したのは、ローファイに仕上げたこと。このアルバムはなんというか……」
 ここで彼は一旦口を休め、微笑み、セールスマンの声を真似て、両腕を大きく広げた。「“スタジオへようこそ。ここで何が出来るのかをお見せしましょう! この上下にスライドする78チャンネルをご覧あれ。0.17秒の箇所のステレオ・エフェクト、お次にコーラスの最初の箇所に入ってくるエフェクトをご試聴下さい”。座っていられるから良いんだ。俺はただ、自分が好きなサウンドが出てくるまで待っていればいいだけだからね」

俺のひい爺さんが俺たちに何を望んでいたかっていう話をいまでも聞くんだ。俺の爺さんが俺たちに何を必要としていたかという話も聞く。俺のお袋が1年半前に亡くなったから、いろいろな話が出てきたんだ。おかしな話だよな。母親が死んでから、生きていたとき以上に彼女を知るようになった。

 アルバムは、“ハード・バスターズ”の「Most broke cunts are all true bastards. And most rich cunts are even more bastards(金のないアホどもの殆どが真の出来損ない。そして金持ちのアホどもの殆どは、それにも増して出来損ない)」という歌詞ではじまり、「この曲は号泣のツールキットだ」と彼が微笑みながら語る“クライング”に続く。
 そして3曲目、フォー・テットがプロデュースした“フェイスティ2:11”で、リスナーは奇妙で風変わりな、そして不思議な世界に引き込まれていく。この曲を、彼は「“ウィットネス(1ホープ)”の従兄弟のようなトラック」と表現している。「ボートレース」という言葉を優雅にリピートするコーラスが特徴的なこの曲では、「フロウェトリー」という動きの流れが表現されている。スラング、ジャマイカ語、英語という遊び場を言葉が駆け回り、文化を絡め、つなぎ合わせているのだ。「これはラップについてのラップで、俺はラップに関してラップするのが好きなんだ」と彼は言う。「フェイスティ」は、ジャマイカ語のスラングで無礼で横暴な人を意味する。
 「俺には、スペインに住んでいる息子がいるんだ。今朝彼と話をしていた時、息子と話す時の言葉に気をつけなければと本気で思った。スラングを使って話したら、息子は俺が何を話しているのかさっぱり分からないだろうからね。彼に理解してもらうには、言葉をハッキリと発音しなければならない。一方で、イギリスに住んでいる長男に対しては、自分の両親が俺に話していたのと近い話し方で会話するんだ。イギリス訛りをより多く使う。息子はあまりその訛りを理解してはいないけど、俺は理解出来るようになって欲しいんだ」
 “ドント・ブリーズ・アウト”の歌詞には美しい感受性と楽観性が含まれ、“ワン・シング”では「When I shake my tambourine, I shake that ever so keenly/I do my best to get a Lamborghini/My girlfriend love snakeskin bikinis(タンバリンを振る時は、精一杯振りまくる/ランボルギーニを手にするためなら何だってやる/俺の彼女はヘビ皮のビキニが好きなんだ)」という笑いを誘う歌詞もあり、言葉のリズムが、ペンテコステのタンバリンのピュアな精神と消費者主義の増強した誘惑を結びつけている。
 「ランボルギーニは欲しいよ」と笑いながら彼は言う。「でも、100万ポンド貯まるまでは買わないだろうな。そんな大金程遠い(笑)人生で100万ポンドなんて手にすることはないだろうし。金ができたら絶対に買うけどな」
 微笑みながら彼は続けた。「でも、必要ってわけじゃないんだ。俺はそんな考え方はしない。自分が得てきたもののために仕事がしたいし、それを得るために仕事をしてきた。俺は運が良かったわけじゃないんだ。働いて働いて、働きまくってきた。いま手にしているものは、得るべくして得たもの。何をするか、いくら稼ぐかは問題じゃない。凛とした態度で、尊敬の念を持ちながら働くことが大切なんだ。適当にダラダラとやっていれば、リスペクトなんてこれっぽっちも得られないさ」

息子たちといるとき、俺がラガ・ミュージックを聴いていると、あいつらが毎回「親父、頼むから俺たちの言語の音楽をかけてくれない?」と言ってくる。いつも文句を言っているんだ。「何で俺の両親はこんなダサい音楽が好きなんだろう!?」ってね。

 「俺のひい爺さんが俺たちに何を望んでいたかっていう話をいまでも聞くんだ」と彼は続ける。
 「俺の爺さんが俺たちに何を必要としていたかという話も聞く。俺のお袋が1年半前に亡くなったから、いろいろな話が出てきたんだ。おかしな話だよな。母親が死んでから、生きていたとき以上に彼女を知るようになった。お袋若かったときの話、彼女が何をしてきたかという話を聞いた。苦労したけど、彼らは同時に人生を楽しんでいたんだ。お袋はいつも、俺が彼女ほど苦労というものを理解していないと言っていた。でも俺は、彼女が素晴らしい人生を送っていたということを知ったんだ。俺と違って、彼女にはポケットマネーがあったからな(笑)
 俺のひい、ひい、ひい爺さんは、運良くキューバへ引っ越した。彼は、ジャマイカから初めてキューバへ行ったジャマイカ人のひとりだったんだ。そこでせっせと働いて、金を稼いだ。俺たちの出身地からすると、その場所はかなり田舎で、何の変哲もないところだった。でも、いま自分のルーツを振り返ると、彼らは昔よりも断然裕福なんだ。いまや、俺の家族は何軒か店を持ってるんだぜ! すごいよな。店のオーナーなんだ。なかには違法なことをやってる親戚もいるけど、そのことに関してはあまり話さないでおこう(笑)」

 アルバムのラスト・トラック“ファイティグ・フォー”を、彼は「家庭内での葛藤、家族の人間関係」についてだと表現している。何度か結婚し、息子も数人いる彼にとって、家庭内での葛藤は、“ファイティング・フォー”の境界を余裕で超えているのだ。
 「息子たちといるとき、俺がラガ・ミュージックを聴いていると、あいつらが毎回“親父、頼むから俺たちの言語の音楽をかけてくれない?”と言ってくる。いつも文句を言っているんだ。“何で俺の両親はこんなダサい音楽が好きなんだろう!?”ってね」
 しかし彼は、息子たちがルーツ・マヌーヴァとして活動する父親を誇りに思っているのは知っている。「(ルーツ・マヌーヴァの音楽を)好きは好きなんだ。でも、あいつらは、いまのままじゃ物足りないらしい。“親父、そろそろアデルとコラボしたほうがいいぜ。デイヴィッド・ゲッタとか! 期待してるんだから、頼むよ!”だってさ」
 これこそ“ヘビー・プレッシャー”(重圧)だ。


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