「K Á R Y Y N」と一致するもの

 15年間NYに住んでいるが、今年ほど涼しいNYの夏はない。原稿を書いているのが8月20日だから、これから新たな熱波が来るのかもしれない。しかし、現時点で、野外コンサートに野外映画、ビーチ、BBQ、車で小旅行などしても「夏だー」という感じがない。地下鉄もオフィスも店もホテルも、冷房効き過ぎで、夏でも長袖が手放せないし、先週の今年最後のサマースクリーンは、スカーフをぐるぐる巻いたり、ブランケットを被ったりしている人が多数いた。

 サマー・スクリーンは、 ブルックリンのウィリアムスバーグ/グリーンポイントにある大きな公園、マッカレン・パークで開催される『L・マガジン』主催の野外映画である。過去にも何度もレポートしている

 映画の前には毎回、ショーペーパーがキュレートするバンドが演奏。彼らがピックするこれから来そうなバンドが、見れるので、毎年通っている。と言っても今年見たのは、ショーン・レノンのバンド、ザ・ゴースト・オフ・サバー・トゥース・タイガーだけだった。その他はこちら
 クリネックス・ガール・ワンダーは、インディ・ポップ世代には懐かしいが(90年代後期)、最近はNYポップ・フェストも復活し、エイラーズ・セットのアルバムが再リリースされるなど、インディ・ポップも盛り返している模様。ラットキングは去年も出演していたし、これから来るバンドと言うよりは、彼らの友だちのバンド(20代前半から40代中盤の中堅まで)を安全にブックしているように思えた。

 映画と謳っているが、野外ピクニックを楽しむ感じなので(公園内ではアルコールもOK)、映画自体は重要でないかもしれないが「あれ、この映画去年もやってなかった?」と言う回が何度かあった。

 ライセンスの問題なのかネタ切れなのか、オーディエンスは毎年変わっているからよいのか、などと思い何回か通った後、最後の回の盛り上がりが凄かった。毎年最後の週の映画はオーディエンスが投票で選ぶのだが、今年はスパイス・ガールズの映画『スパイス・ワールド』が選ばれた。いつもは映画がはじまってもおしゃべりが止まらない観客が、この映画がはじまると、「ひゅー!!! わー!!!」と言う大歓声。ただでさえ、映画の音が、後ろから前から横から立体的に聞こえるのだが、歌がはじまるともっとすごい。さらに3D、と思っていたら、なんとオーディエンスが一緒に歌っているのである、しかも大合唱。さらに映画のクライマックス、スパイス・ガールズがステージに駆けつけ、いざ、曲がはじまるシーンでは、座っていたオーディエンスが立って、歌いながら踊りはじめた! 先週、先々週見た映画『ヘザーズ』や『ビッグリボウスキー』でも、クライマックスや決めのシーンではヤジが飛んでいたが、実際に立って踊りだしたのは、サマースクリーン史上(著者の記憶では)この映画が初めて。映画の前にプレイしたバンド(今回は、ガーディアン・エイリアンのアレックスのソロ・プロジェクトのアース・イーターとDJドッグ・ディックと言うインディ通好み!)よりも何倍も盛り上がっていた。恐るべきスパイス・ガールズ世代。映画の前にはスパイス・ガールズ・コスチューム・コンテストまで行う気合の入れよう。オーガナイザーも観客も、スパイス・ガールズを聞いて育った世代なのね。


photos by Amanda Hatfield

 野外ライヴと言えば、前回レポートしたダム・ダム・ガールズと同じ場所、プロスペクト・パークで行われたセレブレイト・ブルックリンで、今年最後のショーを見た。最後を飾ったのは、アニー・クラークのプロジェクト、セント・ヴィンセント。元イーノンのトーコさんがバンドに参加しているということもあり、期待して見に行った。
https://www.brooklynvegan.com/archives/2014/08/st_vincent_clos.html

 公園内では、家族でBBQしている人や、ピクニックしている人などたくさんいるが、それを横目に見ながら、目的地のバンド・シェルへ(いつも通り)。最後ということと、天気が良かったこともあり、バンドシェル内はあっという間に人数制限超え。このショーにお昼の12時から並んでいる人もいたとか(ドア・オープンが6時のフリーショー)。非常口の柵に集まりぎゅうぎゅうになってみる人、公園の周りを走る一般道路からバンドを見る人など、シェルに入れない人続出。なかには見るのを諦め、道路に勝手にブランケットを引いて飲み会を始める輩もいた。

 ライヴは、ピンク色の3段の階段をステージのセンターに配置し、シルバーヘアに、白のトップに黒のタイト・ミニスカートにハイヒールのアニーと、バンドメンバー(キーボード2人とドラム)の合計4人。10センチはあると思われるハイヒールで飄々とステージを練り歩き、階段の上に登ってそこでプレイしたり、バンドメンバーと絡み、ヘビーメタル・ギターテク、ギクシャク動くロボテック・ダンスをみると、魂を乗っ取られた(もしくは乗っ取った)妖精に見えてくる。ダムダム・ガールズが感情を剥き出しにする「痛さ」だったら、セント・ヴィンセントは「超絶」だ。が、その仮面の下の本性はまだ見えない。人工的で、妖艶で何にでも化けそう。パフォーマンス は有無も言わさず圧倒的に素晴らしく、曲が終わる度に「オー!!!」と感嘆の嵐、思わず拍手せずにはいられない。新曲中心に、新旧ミックスしたセットで、アンコールにも悠々と答え、轟ギター・ノイズで最後を飾った後、時計を見ると10:28 pm。最終音出し時間10:30pmのところ、完璧主義でもこれは凄くない?

この日のセットリストは以下:
 Rattlesnake
 Digital Witness
 Cruel
 Marrow
 Every Tear Disappears
 I Prefer Your Love
 Actor Out Of Work
 Surgeon
 Cheerleader
 Prince Johnny
 Birth In Reverse
 Regret
 Huey Newton
 Bring Me Your Loves

 Strange Mercy
 Year Of The Tiger
 Your Lips Are Red




photos by Amanda Hatfield

 テクニックといいパフォーマンスといい、彼女の才能は際立っている。 「ソロアーティストの良いところは、いろんなミュージシャンとコラボレートできること」と言う彼女は、2012年にデヴィッド・バーンとの共演作品『ラブ・ディス・ジャイアント』をリリースし、ニルバーナが表彰されたロックン・ロール・ホール・オブ・フェイムでは、ジョーン・ジェット、キム・ゴードン、ロードらと一緒にヴォーカルを取り、セレブレイト・ブルックリンでプレイした次の週では、ポートランディアでお馴染みのフレッド・アーミセン率いる、レイト・ナイト・ウィズ・セス・メイヤーズのTVショーのハウス・バンド、8Gバンドでリーダーも務めるなど、さまざまなミュージシャンと積極的に共演している。

 最近このコラムは、女性ミュージシャンのレヴューが多いが、ブルックリンではTHE MEN,、HONEY、THE JOHNNYなど男性(混合)バンドも、新しくて面白いバンドがたくさんいる。彼らも機会があれば紹介していくつもりだ。

8/20/2014
Yoko Sawai

Aphex Twin - ele-king

 勘のいい人は、もう気がついていたでしょう。リチャード・D・ジェイムス、エイフェックス・ツイン名義での13年ぶりのオリジナル・アルバム、『SYRO』が9月24日にリリースされます。
 2001年の『Drukqs』以来の(エイフェックス・ツイン名義での)アルバムですから、それはもう、ワクワクしますよね! 90年代リアル世代にとっては、テクノと言ったとき、クラフトワークより身近な存在でしょう。非リアル世代にとっても、初のリアルタイム体験に胸躍らせることでしょう。非ギークからも、ギークからも愛された、ベッドルーム・テクノ(非チルウェイヴ/非ヴェイパーウェイヴ)のヒーローの帰還。これを良いことに、すでにネット上では、偽AFXが「コレが新作だ」と自分の音源を発表しているようです(笑)。
 しかし……〈ワープ〉というレーベルは、10月8日(先に1日と表記されてましたが間違いです。申し訳ございません)にフライング・ロータスの果敢とも言える問題作のリリースを控えながら、その前にエイフェックス・ツインの新作リリースだなんて……無茶です。日本支部のビートインクにお盆休みはないようです。

 19時から24時まで5時間ノン・ストップのヒップホップ・プログラム! 明日のDOMMUNEに心のいいね!が止まらない。いまシーンを語る上で外せない面々が3部にわたって登場し、それぞれのテーマのもとにライヴやトークを繰り広げる。アーカイヴなしというのはDOMMUNEならではのあまりに悩ましい魅力だ。ダッシュで学校・職場を離脱してスマートフォンを、そしてスーパーやコンビニもそこそこに、「もうはじまってるー?」とばかりに玄関に駆け込んでPCを立ち上げてほしい。たとえ遅れても、24時までは何かしらの出会いが待ち受けているだろう。

会場での観覧は下記リンクから
https://www.dommune.com/reserve/2014/0821/

2014/08/21 (木)
■JAPANESE HIPHOP STYLE WARS / Presented by P-VINE&DOMMUNE

 「Style Is Everything」と改めて個の重要性を説いた100%Skateborder「JAY ADAMS」の突然の訃報に、改めて弔いの意をこの場を借りて。

 群雄割拠の音楽シーンにおいても、そのスタイルの重要性は言わずもがなであり、卓越した表現をいかに繰り出すか、その術に長けた猛者共が集まるジャパニーズ・ヒップホップにスポットをあてたプログラムが明日DOMMUNEにて開催される。

 3部構成の第一部は、Fla$hBackSからfebbのソロアルバム「THE SEASON」、今夏リリース予定jjjのソロアルバム「YACHT CLUB」Wリリース・パーティ「LEGIT SUMMER」の前哨戦的プログラム。
 第二部は、未だ謎多き集団「T.R.E.A.M」によるプログラム。SHOという渋谷界隈ではお馴染み!?のラッパーをクローズアップしたスペシャル・タイム。
 第三部は、8月にデビューアルバムを発表し勢いに乗るJAZEE MINOR。アルバム発売を記念したスペシャル・ショウケースを放送。Y'S、KOHHといった今のヒップホップシーンを語る上で必ず話題に上がるラッパーのライブから、DJ NOBU aka BOMBRUSH!、DJ CELORYのDJプレイも披露予定。
 アーカイヴ予定はありません。何が起こるか分からない、スタイルの応酬を見逃すことなかれ。

<第一部>19:00 - 21:00
Road to "LEGIT SUMMER"
[Talk & Live] febb, CAMPANELLA, ERA, DJ HIGH SCHOOL and more...
[司会] MARIN, Lil MERCY

<第二部>21:00 - 22:00
"T.R.E.A.M." Presents S.S.Time - SHO SPECIAL TIME -
[出演] SHO、小林雅明, wardaa and more…

<第三部>22:00 - 24:00
"Black Cranberry" Time
[Live & DJ] JAZEE MINOR, Y'S, KOHH, DJ NOBU aka BOMBRUSH! , DJ CELORY and more...

DOMMUNE>>>https://www.dommune.com/reserve/2014/0821/

jjj & febb - ele-king

 みんな知っていると思うけど、新風を巻き起こす、テン年代のヒップホップ・シーンの最大のインパクト=Fla$hBackS。とにかく、格好いいよね! 最近では、中島哲也監督による話題の映画、『渇き。」への楽曲提供など、活動の場も広がりつつある。
 そのメンバーのjjjとfebb、それぞれのソロ・アルバム発売を記念してのWリリース・パーティが今週末日曜の渋谷で開かれる。

 febbと言えば早い時期から噂が噂を呼んでいた、今年1月リリースのファースト・アルバム『THE SEASON』が記憶に新しい。アルバムを一聴したD.L氏が「ここ10年で最高の邦楽ヒップホップ・アルバムである」と発言するなど、識者からの賛辞の声も後を絶たないけれど、新世代の勢いを感じる1枚であることは間違いないので、まだ聴いてない人はぜひチェックを。
 で、jjj。彼も12インチ・シングルが春にリリースされたことで、アルバムへの期待感は日増しに強まっている。今週末には、いち早くアルバム曲も聴けるかもしれない!

 豪華な出演者もヘッズにはたまらない。B.DやONE-LAW、ERA、ISSUGI、KNZZといった東京ストリートの一角・池袋bedホームボーイたち、名古屋からはアルバム『VIVID』が評判のCAMPANELLA、YUKSTA-ILLによるTOKYO ILL METHOD SET、MARINやPRIMALの名前もある。
 DJ49、DJ HIGHSCHOOLによるエクスクルーシヴ・セットは必聴だし、DJ BUSHMINDはより幅の広い選曲で、普段ヒップホップの現場に行かないオーディエンスさえも虜にするだろう。
 そして、この日のメンツには、FILLMOREやKZA、PUNPEEの名前もクレジットされていて、ここまでくると“真夏の白昼夢"とでも言いたくなる。フードコーナーやスペシャル・マーチャンダイズの販売も予定されている。昼過ぎ15時スタートっていうのも良いね。年齢制限なしのオープンなパーティの気概を感じる。

 さらに、8/21(木)には、DOMMUNEにて「Road to "LEGIT SUMMER"」と題した前哨戦プログラムの放送も決定。こちらは〈WDsounds〉よりLIL MERCY、そしてシンガーのMARINをMCに迎え、当日出演者による生ライヴやスペシャル音源のOAも予定されている。是非チェックして、日曜日の当日に備えていただきたい。

イベントトレイラー映像


『jjj & febb solo album W release party LEGIT SUMMER』

日程:2014.8.24 (sun)
会場:SOUND MUSEUM VISION
Open / Start 15:00
Advance:2,800yen+1d
Door:3,500yen+1d

release live : jjj / febb

LIVE : B.D. / CAMPANELLA / DJ HIGHSCHOOL (Exclusive SET) / DJ ONE-LAW
(Chronic SET) / ERA / ISSUGI / KNZZ / MARIN / MEDULLA / PRIMAL /
YUKSTA-ILL(TOKYO ILL METHOD SET)

DJ : BUSHMIND / DJ49 / DJ BEERT / FILLMORE / GRINGOOSE / KZA /
MASS-HOLE /MS-DOS / PUNPEE / RYUJIN

FOOD : BEARS FOOD / GINZA SUKIBAR

■前売りチケット好評発売中
プレイガイド:
チケットぴあ:Pコード:235-703
ローソンチケット:Lコード:72791
e+(イープラス)

取扱店舗:
Disk Union
TRASMUNDO
Jazzy Sport
FEEVER BUG
SKARFACE

主催:AWDR/LR2 / SPACE SHOWER NETWORKS INC.
協力:WDsounds / P-VINE, Inc.
協賛 : TANNUS / NIXON / Us Versus Them
問い合わせ先:Global Hearts (03-6415-6231)

https://www.vision-tokyo.com


■DOMMUNEでも特番あり!

『2014/08/21 (木)JAPANESE HIPHOP STYLE WARS / Presented by P-VINE』
19:00~21:00 「Road to "LEGIT SUMMER"/ BROADJ♯1392」
TALK & LIVE:febb、CAMPANELLA、ERA、DJ HIGH SCHOOL and more... 司会:MARIN、Lil MERCY

DOMMUNE>>>https://www.dommune.com/reserve/2014/0821/

Takafumi Noda aka Mystica Tribe - ele-king

どうもこんにちは、MYSTICA TRIBEのノダです。
自分好みのダブを10曲選んでみました。
以下、近況報告。
先日レーベルを興しまして、その第一弾として自分の12インチ
「LIZARD EP」をリリースいたしました。どうぞ御贔屓に。
日本最強のラテンジャズバンド、OBATALA SEGUNDOの曲をリミックスしました。その音源は8月末に「LA DECISION NUEVE ALBUM SAMPLER & Mystica Tribe remix」としてFIRST CALL RECORDINGSよりアナログでリリースされます。限定100枚とのことなので、ひとつよろしくお願いいたします。

MYSTICA TRIBE HP https://mysticatribe.com/

Dub Chart(順不同)


Zion Train / Shining Light Steppers

Jah Warrior / Unity Dub

Alpha & Omega / It Hurts

Twilight Circus Dub Sound System / Salma

Dennis Bovell / Scientific

Augustus Pablo / Upfull Living

Israel Vibration - Licks and kicks

Black Uhuru / Ion Storm

Peech Boys / Don't Make Me Wait (Dub Mix)

Man Friday / Love Honey, Love Heartache (Instrumental)

Diva - ele-king

 厳しい残暑がつづくなか、みなさんはサイケデリック・サマーをお過ごしであろうか。
 ときに先月発売されたマシューデイヴィッドの『イン・マイ・ワールド』は聴かれましたか。まだ未聴のかたもヘヴィロテのかたも、マシューの独自のグルーヴと世界観を深める2本のテープが、自身が主宰する〈リーヴィング・レコーズ〉より届いたのでお知らせしよう。

 マシューDの嫁、ディーヴァ・ドンペ(Diva Dompe)と出会ったのはたしか2009年頃だ。当時の彼女は妹のローラとの超絶美人姉妹バンド、ブラックブラック(Blackblack)で、現ベスト・コーストのベスが抜けてバンド編成として新生したポカホーンテッド(Pocahaunted)で、その類い稀な美貌をふりまきながら完璧なファンク・ベースラインで偽物のリッケンバッカーを鳴らしながら歌ったりしていて、貧乏臭い風貌で冴えない演奏をだだ漏らすヘボベーシスト(俺)の存在意義を華麗に全否定していた。それでいて彼女は全く気取らない、LAの自由を象徴するようなオープン・マインドの持ち主でもあったわけで、僕にとってまさしく未知との遭遇であった。彼女やマシューDはまさしくエイリアン(ALIEN。タイプできないのだけどドジャーズのLAロゴを左右反転して頭に置く感じ)、ラスG風に言えばエル・エーリアン(EL-AYLIEN)だ。彼女の世界観のひとつであるガチなチャネラー感もここに説得力を持つ。
 そういえば何年か前まで彼女は月イチでゴス・パーティを主催していて、そこにはLA中のカワイイ女子エイリアンがハシャギながらノイズをまき散らし、LA中の男子ローカル・アーティストが群がっていた。レジデントDJはディーヴァのお父さん(バウハウスのケヴィン・ハスキンス)というハイ・レヴェルな内容。

 彼女がホストを務める〈ダブラブ〉の同名番組をサブ・タイトルに冠するこのテープ『イアルメリック・トランスミッション』は、彼女いわく、愛に満ちた楽園、別次元異空間世界イアルメリックへサウンドを通じてアクセスする行為のようだ。彼女のソングライティングは年々インプロ色を増し、いつのまにか溶けてしまった。近年の彼女は超絶レアなシンセ等を用いた(お父さんのおふるのEDPワスプデラックス)映画、狩人の夜のセットのようなきらめくトラックにスピリまくったポエトリー・リーディングをのせて、聴者の精神の内と外を反転させる。ローズ・クオーツ付きの可愛らしいパッケージはスピり気味の彼女へのプレゼントに最適! ……って普段ならファーック! と言うところですがディーヴァなので許しちゃいます。

 もう一方はビート・メーカー/ラッパーとしてのマシューDではなく、アンビエント・ミニマリストとしてのマシューDと彼の元ルームメイトであったエリック・ミカエル・ヴァリーことEMVによる超ニューエイジ・インプロ・コラボレーション。EMVの過去作『リソリューションズ(Resolutions)』は個人的には〈リーヴィング・レコーズ〉の過去リリースの中でもピカイチなテープで、彼もまたマシューDと同じくゼロ年代のドローンじみたサイケ・フォークに感化されながらもよりダークに、オピウムっぽいズブズブな美意識のビートを構築していた。
 このジャムはじつは2010年9月22日に録られたもので、その日が20年に一度とやらのスーパー・ハーヴェスト・ムーンだったそうで、とにかく何かがメガ・パワーだったとか。詳しくはNASAに書いてあったので興味のあるあなたはこちらへ。
https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2010/22sep_harvestmoon/

 これを読むかぎり、おそらくはふたりがそれぞれ太陽と月を演じ、360度に広がる夏から秋への黄昏の神秘をサウンドで形にしようと試みたのだろう……とか勝手に想像しながらパッケージを作ってみた。パッケージは僕です。手前味噌で申し訳ないけど。

 どちらも限定のデジタルなし。正直に言えば、近年の〈リーヴィング〉はビート色も薄れていて、好きじゃないバンドもけっこういてアレだなーと思うところもあるのだけれども、この夫婦はホント、雰囲気じゃなくて完全に本気でやっているので素晴らしい。過去5年間のLAのインディー・ロック/ビートを溶かしてつくったおいしい飲み物みたいな2本でした。

「音楽」の「出口」とは何か? - ele-king

 まだまだ追加のオーダーが止まらない佐々木敦さんの『「4分33秒」論』。先日はアルテスパブリッシングから、『ex-music〈R〉テクノロジーと音楽』『ex-music〈L〉ポスト・ロックの系譜』という2冊となって名著『ex-music』の新編集版が復刊されるなど、佐々木さんのリリース・ラッシュがつづいています。9月には、この3冊の刊行を記念して、ジュンク堂池袋本店にて批評家の小沼純一さんを迎えてのトーク・イヴェントの開催が決定しました。テーマは“「音楽」の「出口」とは何か?”。このイヴェントだけで一冊の本が生まれそうですよね! お早めのご予約をおすすめします。

ジュンク堂池袋本店 詳細ページ
https://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=6509


佐々木敦
「4分33秒」論 
──「音楽」とは何か

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佐々木敦
ex-music〈R〉
テクノロジーと音楽

アルテスパブリッシング

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佐々木敦
ex-music〈L〉
ポスト・ロックの系譜

アルテスパブリッシング

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■「『「4分33秒」論――「音楽」とは何か?』『ex-music〈R〉テクノロジーと音楽』 『ex-music〈L〉ポスト・ロックの系譜』刊行記念
「音楽」の「出口」とは何か?

ジュンク堂書店 池袋本店
開催日時:2014年09月08日(月)19:30 ~
佐々木 敦(批評家)
小沼 純一(音楽・文芸批評家)

 文学、演劇、映画などさまざまな分野で批評活動を行っている佐々木敦さんですが、数年ぶりに音楽についての新刊が立てつづけに刊行されました。
 まずは2014年5月、自身の長年のテーマであったジョン・ケージ『4分33秒』について様々な角度から語りつくした『「4分33秒」論――「音楽」とは何か?』(P-Vine)を刊行。そして続く7月にはポストロック、テクノ、電子音楽といった先端的な音楽を論じた名著『ex-music』が2分冊『ex-music〈R〉テクノロジーと音楽』『ex-music〈L〉ポスト・ロックの系譜』(アルテスパブリッシング)の新編集版で復刊。
 これらの刊行を記念して、小沼純一さんをゲストにお招きし、トークセッションをおこないます。ひとつの分野にとどまらならい横断的な批評活動を展開するおふたりに、「音楽」、そしてさまざまな「芸術」が持つ本質について縦横に語り合っていただきます。

【講師紹介】
佐々木 敦
1964年生まれ。批評家・早稲田大学教授・HEADZ主宰。映画・音楽から文学・演劇・ダンス・思想など多彩な領域で批評活動を展開。著書:『即興の解体/懐胎』『テクノイズ・マテリアリズム』『(H)EAR』(青土社)、『「批評」とは何か?』『小説家の饒舌』(メディア総合研究所)、『ニッポンの思想』(講談社現代新書)、『シチュエーションズ』(文藝春秋)ほか多数。

小沼 純一
1959年東京生まれ。音楽を中心にしながら、文学、映画など他分野と音とのかかわりを探る批評を展開する。現在、早稲田大学文学教授。音楽・文芸批評家。著書に『武満徹 音・ことば・イメージ』、『バカラック、ルグラン、ジョビン 愛すべき音楽家たちの贈り物』『ミニマル・ミュージック その展開と思考』『魅せられた身体 旅する音楽家コリン・マクフィーとその時代』『映画に耳を』他多数。詩集に『しあわせ』『サイゴンのシド・チャリシー』ほか。編著に『武満徹エッセイ選』『高橋悠治対談選』『ジョン・ケージ著作選』ほか。

★入場料はドリンク付きで1000円です。当日、会場の4F喫茶受付でお支払いくださいませ。
※トークは特には整理券、ご予約のお控え等をお渡ししておりません。
※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願い致します。(電話:03-5956-6111) 

■イベントに関するお問い合わせ、ご予約は下記へお願いいたします。
ジュンク堂書店池袋本店
TEL 03-5956-6111
東京都豊島区南池袋2-15-5


ENA - ele-king

 2012年のとある木曜日の深夜、初めて行ったバック・トゥ・チルでのこと。ダブトロ、100mado、そして中心人物ゴス・トラッドによる硬派なダブステップに続いたENAのステージは、まさに異色そのものだった。音が溶け出しているかのような抽象的なリズムと、緩やかに跳ね上げるベースライン。期待していた「いわゆる」ダブステップは流れなかったものの、素晴らしいミュージシャンを発見した喜びで僕は包まれていた。
 2006年にログ・エージェント名義で参加した〈FenomENA〉から出された日本のドラムンベース・コンピレーション『Tokyo Rockers: The Best of Japanese Drum & Bass Vol.1』がENAの公式なデビューになる。翌年には自身のレーベル〈イアイ・レコーディングス〉を立ち上げ、7インチ・シングル「アダウチ/ カントリー・ダブ」をリリースした。現在のENAのスタイルとは違ったものだが、和太鼓の音色や空間使いに見いだされる自由さと奇抜さは今日まで受け継がれている。
 フェイスブックやサウンドクラウドによってパソコン一台で世界と繋がれる時代だが、ENAは早い段階から海外のシーンとも交流を持っていた。ロンドン、ベルリン、さらにはイスタンブールまでその交遊域は広がり、それは2011年にフランスの〈セヴン・レコーディング〉からのリリース「サイン/インスティンクティヴ」へと結実する。“サイン”で虚ろに響くヴォイス・サンプリングや切り刻まれた低音は多くのコアなリスナーを引きつけた。その後も〈セヴン〉からのリリースを続け、2013年にはそれまでの総括でもあるかのような傑作『バイラテラル』を世に送り出した。今年の3月には新天地の〈サムライ・ホロ〉から「バクテリウム EP」を発表。現在は10月に同レーベルから出されるアルバムに向けて準備を進めている。
 ユニークであり続けることはアーティストのある種の宿命だが、ENAは自身の活動でそれを体現してきた。ベース・ミュージック界隈で頭角を表し、やバック・トゥ・チルのレジデントDJとしても認知されるが、果たしてそれが彼のすべてなのだろうか? 彼が何を考え、これからどこへ向かうのか。ENAは存分に語ってくれた。
(高橋勇人)

90年代に音楽を聴いているとドラムンベースもやっぱり逃げられないものでしたね。アンダーグラウンドにもヒット・チャートにもあったし。

野田:DJは何年くらいやっているんですか?

ENA(以下、E):何年くらいかな。まぁ、でも俺は10代からDJをやっているわけじゃないんですよ。今年34歳なんですけど、10年くらいじゃないですかね?

野田:ちなみにジャングルやドラムンベースから入ったと聞いていますが、本当のところはどうですか?

E:もともとの始まりは70年代とかのロックで、DJカルチャーはヒップホップで入りましたね。世代的に90年代ってどんな音楽を聴いていてもヒップホップって避けられないじゃないですか? ビギーとかD.I.T.C.とかモロでしたね。

野田:なるほど。90年代中期のギャング・スターが全盛期のときですね。

E:特にD.I.T.C.が好きだったんですよ。音がすごくダークだったし。あの頃はウェスト・サイドもちゃんとブラック・ミュージックに根ざしたパーティ・ミュージックでしたからね。そのあとチャラくなってからのはちゃんと聴いてないんですけどね。
 それでヒップホップに入ったきっかけは、はっきりとはしてないんですけど、コーンとかレイジとか。さらに言えばアンスラックスとかパブリック・エネミーとかのミクスチャーだと思います。

野田:“ブリング・ザ・ノイズ”とかリアル・タイムですか?

E:10代で一気に掘ったせいもあって、何がリアル・タイムなのかわからないんですよね。あの時代はなんでもかっこ良かったですよね。

野田:MTVですごかったですよね。

E:もう録画しまくってましたね(笑)。

野田:その頃はもう音楽活動はされてたんですよね?

E:そのころはバンドでジャミロクワイみたいなアシッド・ジャズをやってましたね。それが高校から20歳くらいまでかな。そのもとには自分のジミ・ヘンドリックス好きがあって、ブートとかも集めまくってたくさん持ってるんですよ。

野田:それはENAさん世代にしては変わっていますね。

E:完全に頭おかしかったっすよ。友だちいなかったっすもん(笑)。

野田:そりゃ話が合わないでしょ(笑)。

E:その代わり、友だちの親父とすごく話が合ったんですよね。

一同:(笑)

E:ジミヘンからって色々派生するじゃないですか? アシッド・ジャズにもファンクにも、マイルス・デイヴィスにも繋がったし。中学のときはもうマイルスを聴いていましたね。ジミヘンはプリンスとも繋がるから、それで80年代のとかもたくさん知りましたね。結果的に10代のうちで全方向に進んだ感じがします(笑)。

野田:そこからDJミュージックへはどうやっていくんですか?

E:ヒップホップからDJクラッシュにいくんですよ。歌ものだけではなくてインストものも結構好きだったんですよね。それでヒップホップっていうと、クラッシュ、シャドウ、カムの3人とかヴァディムとかってなるじゃないですか?
 クラッシュさんの周りを聴いていると、マイルスのビル・ラズウェルが監修しているやつとかでドック・スコットがリミックスしていたりして、ドラムンベースにも広がっていくんですよ。
 90年代に音楽を聴いているとドラムンベースもやっぱり逃げられないものでしたね。アンダーグラウンドにもヒット・チャートにもあったし。

高橋:否応なくドラムンベースが流れるなかでそれを率直に好きになれましたか?

E:やっぱりインパクトが強かったですからね。エイフェックスやスクエア・プッシャーは当時ドラムンベースとは呼ばれていなかった。だけど、何もない所にそれがやってくるとかっこよかった。それが結局ドラムンベースの入り口になってますね。で、例のごとくDBSがある。リキッド・ルームでDBSに行ってドラムンベースを聴けば、そりゃ好きになるでしょ(笑)。

野田:一番最初に行ったDBSって覚えてます?

E:いやー、覚えてないですね。10代の終わりか20歳くらいだったと思うけど。

野田:その頃にはターンテーブルは揃えてましたか?

E:俺はバンドをやっていたせいもあってスクラッチがやりたかったんですよね。だから1台だけ持っていました。

野田:ヒップホップの人は最初1台だけ買って練習しますもんね。

E:そうですね(笑)。金がないのもあったんですけど、それで練習してました。その辺のタイミングを覚えてないのは、やっぱりその頃に一気に聴きすぎたからですね。

野田:ちなみに生まれは東京ですか?

E:そうですね、某多摩地区です。レゲエの街ですね。レコード屋さんも多かったです。
 うちはクラシック一家だったんですけど、親の世代は60年代のロックを通っているので、そのレコード・コレクションを聴いていたのもデカいと思います。コレクションにはビートルズもクリームもドアーズもありましたね。

野田:それを子供の頃に聴いていたんですね。

E:聴いていましたね。YMOとかもあったんですけど、俺はあんまり入れ込みませんでした。

野田:親がそういうのが好きだったりすると反発しませんでしたか?

E:いや、なかったですね。やっぱりドアーズとか普通にかっこよかったですからね。例えば、俺が10代のときは小室とかが全盛だったと思うんですけど、あれが好きになれなくて。それで、ドアーズとかを聴いたらこっちの方がいいじゃんってなりますよね。そう思う中学生もどうかと思うんですけどね(笑)。

高橋:一方で小室はジャングルやドラムンベースを取り込んでいったりもしてましたよね。

E:あれでドラムンベースは殺されたっていう人もいるけど、まぁ、何とも言えないですね。

野田:そういった意味でも世代的にはドラムンベース直撃なんですね。

E:そうですね。でも結局マーラとかピンチも同じじゃないですか。〈メタル・ヘッズ〉直撃世代で。〈コールド・レコーディングス〉も〈メタル・ヘッズ〉を130BPMでやっているニュアンスがあるし。
 だから、アブストラクト・ヒップホップからジャングルにいくって王道と言えば王道なんですよ。なぜかテクノにはいかなかったんですけどね。

野田:最近の作風はテクノっぽいと思いますよ。最新作の「バクテリウム EP」なんか、テクノが好きな人は絶対に好きな音だもん。

E:テクノにはまったのはここ3、4年なんですよ。それまではヒップホップの人にありがちなキックを4つ打つとつまらないっていう感じでしたね。ドラムンベースは違ったからはまったっていうのはありますね。テクノのイーヴン・キックは強いなって思いますけど、それ以外のリズムのほうが好きですね。

野田:アブストラクトな感じからは、ベーシック・チャンネルとか好きだと思ってました。

E:たぶんディープなドラムンベースを作りはじめて、「テクノっていろいろあるんだ」って気付いた部分はあります。もちろんベーシック・チャンネルは知ってましたけど、良さをあらためて再認識した感じですね。
 最近は自分の曲がテクノの層に受け入れられてるっていう実感も少しあります。この前、ルーラルに出ていたアブデュール・ラシムに「俺は一度もドラムンベースにはまったことがないけど、お前の音楽は好きだ」って言われて嬉しかったです。自分はドラムンベース以外のところで支持されるのかもしれない(笑)。
 自分みたいな音楽って隙間じゃないですか? フェリックス・Kみたいな人もいるけど、数は少ないし。まだまだ可能性はあると思います。

野田:最初がアブストラクト・ヒップホップのDJっていうところがゴス・トラッドと近いですね。

E:そうですね。ゴス・トラッドは俺のひとつ上だから聴いている音楽は多少違えど、被っている部分は多いですね。

野田:彼はテクノ・アニマルの方へいきましたよね。

E:俺はそっちじゃなかったんですよ。俺が10代の終わりから 20代のころ一緒にやってたのが、この前〈サミット〉から出たBLYYの連中なんですよ。あいつらもアブストラクトが好きで、D.I.T.C.みたいに音響系をサンプリグしたトラックを作ってましたね。

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シャドウとかもレア・グルーヴのほうへいったし、カムはよくわからなくなったし。その中でクラッシュさんだけ我が道を行く感じだったじゃないですか? だから一番好きでしたね。

野田:人前でDJをやるようになったのはいつ頃からなんですか?

E:さっき忘れたとか言ってたけど、ちょうどその頃だから20歳くらいですかね。池袋のマダム・カラスとかに出てました。あのホント怪しいとこで(笑)。BLYYのパーティとかで DJ してましたね。

野田:ENAさんは本質的にダンス・ミュージックのDJというイメージがあるんですが、ダンス・ミュージックにのめり込んでいったきっかけは?

E:うーん、まずバンドってひとりじゃできないじゃないですか? 人が必要だから、それが嫌になってひとりで完結するものをやりたかったんです。その頃はラップトップでライヴをするっていうのいが一般的ではなくて、DJがそれに取って代わる表現方法だった。最初から自分のトラックをかけたりしてました。

野田:曲を作るのとDJをはじめたのが同時期ですか?

E:俺の場合は曲を作りはじめた方が先ですね。

野田:ちなみに最初はやっぱりサンプラーから?

E:そうですね。DJクラッシュが使ってたからアカイのS1000とかですね(笑)。まだ持ってますよ。いろいろ高かったな。メモリが8メガで10万しましたからね。いまはパソコンだけで作ってます。

高橋:それで最初のリリースが2006年になるわけですね。ドラムンベースの作品でした。

E:そうですね。〈FenomENA〉から出た、SoiのDxさんが母体のコンピレーション『Tokyo Rockers: The Best of Japanese Drum & Bass Vol.1』に参加しました。それにはマコトさんも入ってたし、レーベルからはブンさんとかも出してましたね。
 そのころカーズとかと出会ってログ・エージェント名義で出したりしてたかな。

野田:そのころ目標にしていたDJとかはいますか?

E:それはやっぱりクラッシュさんですよ。結局あのあとに続いた人ってだれもいなかったじゃないですか? シャドウとかもレアグルーヴのほうへいったし、カムはよくわからなくなったし。そのなかでクラッシュさんだけ我が道を行く感じだったじゃないですか? だから一番好きでしたね。

野田:ちなみクラッシュさんの作品で一番好きなのは?

E:うーん、やっぱりセカンド(『ストリクトリー・ターンテーブライズド』94年)ですかね。

野田:当時のクラッシュさんですごいと思ったのが、“ケムリ”みたいな遅い曲をセットのクライマックスに持ってくるところですよね。

E:リキッドみたいなキャパのあるハコでもあれでピークが作れるのがすごいですよね。

野田:テクノやハウスのDJにはパーティをサポートするっていう意識が多かれ少なかれあると思いますが、クラッシュさんはそうじゃなくてDJを自分の表現だと捉えていました。

E:だから正式にはDJじゃないかもしれないけど、あのスタイルでレコードを使って表現するっていうことからのインパクが強かったんですよ。

野田:ENAさんの目指すべき方向はいまでもそこにありますか?

E:いまもパーティの一部でDJをしているかって言われるとそうでもないですね。たぶん、いま認知のされ方が好き勝手やる人って思われている節があると思う。

曲を作る人なら誰しもそうだと思うけど、人と違うものを作ろうっていうのが基本のスタンスだと思うから、いわゆるダブステップを作ることはしなかったんですよ。

野田:自分のDJスタイルはダブステップによってできあがったと思いますか?

E:そう思います。ダブステップのダブプレート・カルチャーだったりとか、そこで一気にのめり込んだ感じです。ただ、ダブステップがピークの2008、9年とかも俺は普通にドラムンベースをやっていました。ドラムンベースをやめた時期ってないんですよ。だから、自分のスタイルができつつあったときにダブステップが出てきた印象です。
 去年の『バイラテラル』とか140BPMのダブステップ的なことをしてるけど、その頃もドラムンベースを継続的にリリースしていますね。〈サムライ・ホロ〉から出たEPもドラムンベースのアプローチで作ってます。

野田:自分のスタイルが確立しはじめたのはいつですか?

E:たぶん、〈7even Recordings〉から出しはじめたときからですかね。でもその前にロキシーとかと仲良くなりはじめてから徐々に変わりはじめました。「これって多分、だれもやってないよな」って思うようになったのは2010年くらいです。コンスタントにDJをするようになったのもそのくらいです。

野田:ENAさんは海外にも積極的に出向く数少ないミュージシャンですが、初の海外はいつですか?

E:2008年とかですね。当時はただ行こうっていう感じでした。DMZのアニヴァーサリーとかでハコの前の公演を2周くらいまわって人が並ぶとか、そういう情報だけがネットで入ってくる状態だったからそれを見なきゃダメでしょって思ったんですよ。子供の頃に旅行とかはしましたけど、音楽目的で行ったのは2008年ですね。とにかく現場はすごかったです。コイツらアホだって思いました(笑)。

野田:(笑)。どのへんがですか?

E:やっぱり人のパワーですよね。ディープなものをかけてもベースが入った瞬間のフロアは、はっきり言って狂ってた。それでゴス・トラッドがそこでやっていたりするわけだし。サージェント・ポークスがMCしないで酒ばっかり作ってるとか(笑)。その頃はもうネットで海外と交流もあったから行きやすかったですね。

野田:最初に気に入ったダブステップのプロデューサーは誰ですか?

E:誰ですかね……。エレメンタルとかはずっと好きでした。もちろんスクリームやデジタル・ミスティックズといった定番とされるアーティストも聴いていました。

野田:作っている曲にも表れているように、そういったアーティストの曲にはあまり入れ込んでいない印象でした。

E:曲を作る人なら誰しもそうだと思うけど、人と違うものを作ろうっていうのが基本のスタンスだと思うから、いわゆるダブステップを作ることはしなかったんですよ。ゴス・トラッドも自分が作ったものがダブステップになったわけだし、自分の音楽をやっているという感じですよね。〈サムライ・ホロ〉みたいなディープなドラムンベースも、もちろんオートノミックみたいなものもあったけど俺は前から勝手に作っていて、それがいまシーンから出てきているだけなんですよ。ブームに乗って曲を作ったことはないですね。

野田:ドラムンベースでは誰が好きなの?

E:俺はロキシーがずっと好きですね。DJとしても、プロデューサーとしても。

野田:UKガラージはどうでした?

E:俺はあんまりなんですよね。

野田:ギャングスタ・ラップが好きだったらワイリーみたなのもOKなのかと。

E:もちろん聴くには聴くんですけど、そんなにはまってないんですよね。インストになってからのほうが好きです。アブストラクトが好きだったから、やっぱり音響っぽさを求めてたんですよ。だからピンチやムーヴィング・ニンジャとか初期の〈テクトニック〉が好きです。UKガラージになってくると、音響っぽさがなくなってくるじゃないですか? 

野田:中学時代に聴いていたジミヘンやドアーズから、歌ものとかでなくて音で表現する方向へいってるのはどうしてですか?

E:うーん、全ては話せるわけではないけど、俺は仕事でJポップとかTVCMを作っていたりするんですよ。大物と言われるような人のアレンジとかも担当してます。だからENAとしての活動では歌ものをやりたくないんですよね。
 そういうのもあってギターだったり楽器の音は使い尽くされているって思いはじめて、これは自分が追求する音ではないかなって思ったのもありました。いまのプロダクションの基本スタンスとして、現存する楽器っぽい音を使わないようにしてるんですよ。わかりやすい音を使うのにちょっと抵抗がありますね。

野田:そういうパーソナルなことを抜きにして、能動的にアブストラクトなものが好きだというのもあると思うんですが、アンダーグラウンド・ミュージックはどこがいいんだと思いますか?

E: 音が単純に好きっていうのもありますが、アーティストがコントロールできる部分が多いことにも共感しますね。自分でレーベルをやっているやつもいるし、リリースまでの流れがダイレクトで早いじゃないですか? 

野田:ちなみにDBSに行って踊っていたほうですか?

E:あー、全然踊ってましたよ。汗かいてました(笑)。

一同:(笑)

高橋:想像できないな(笑)。ENAさんといったらいつもフロアの後方で腕を組んで音を聴いているイメージです。

E:もう10年くらい酒は飲んでないんですけど、その前は結構な飲んべえでしたからね。いまは酒もタバコもやらないです。

野田:それは音楽がその代わりになってるってことですか?

E:基本的に音楽がいいときって何もいらないですよね。また個人的な話ですけど、俺はフリーランスなんで急ぎの仕事に対応できるかって重要なんですよ。これをストイックと取るか、急ぎの仕事は割りがいいと取るかはお任せしますけれども(笑)。

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もちろん、表現するっていう意味で自分の音楽もパーソナルだとは思うけれど、ダンス・ミュージックの範疇で実験的なことをやってもグルーヴが存在している限り受け入られやすいっていうのがあります。

野田:すごいですね(笑)。なぜダンス・ミュージックっていう点は?

E:ノイズのような実験的なものも好きなんですけど、そういう音楽はパーソナル過ぎる面があるじゃないですか? もちろん、表現するっていう意味で自分の音楽もパーソナルだとは思うけれど、ダンス・ミュージックの範疇で実験的なことをやってもグルーヴが存在している限り受け入られやすいっていうのがあります。だから、音響的よりもグルーヴを優先して作ってます。グルーヴがあってDJで使えるっていうのが前提ですね。
 あと、俺はライヴはやらないんですよ。音響っぽいやつを作っていると「なんでライヴやんないの?」って聞かれるんですけど、ライヴってダンス・ミュージックから離れやすいんですよね。DJをやっているとBPMも限定されるし、選択肢が少なくなるじゃないですか? だからあくまでダンス・ミュージックのためにDJ用の曲を作っているっていうのもあります。
 まあ、とはいえ踊りやすいとは思わないですけどね(笑)。

野田:踊りやすいとは思います。〈7even〉から出したときはレーベルのディレクションはありましたか?

E:何もないです。自由にやってくれって言われました。

イスタンブールにはフラット・ライナーズの紹介で呼ばれて行ったんですよ。2年くらい前かな? DJしてたらモニター・スピーカーが落ちてきて、荷物を置く台がぶっ壊れたりして面白かったです(笑)。

野田:2010年にダブステップが日本でも脚光を集めました。そのときにゴス・トラッドと共にシーンの先頭をきっていたこともあるじゃないですか? そうなるとシーンのことも気にせずにはいられなかったと察しますが。

E:そこまで気にしていたわけではないですけどね。もちろん、シーンができて根付くのが一番いいんだろうけど、難しいだろうなとも思ってました。あと、2010年の段階で東京もそこまで悪くはないと思ってました。

野田:UKのダブステップのピークが2008年だとしたら、それを境にジェイムズ・ブレイクとかが出てきてアンダーグラウンドだったものが知れ渡って、シーンの中心にいた人たちが抜けていくってことがありました。ここ数年のシーンの移り変わりはどう思いますか?

E:こういうときはいずれ来るだろうなって予想してたのもあります。ドラムンベースが十数年でやったことをダブステップは5、6年でやってしまっただけじゃないですか? 小室とジェイムズ・ブレイクは違うけど、歌ものになってメジャーになって終わるっていうのはドラムンベースも経験しましたからね。
 だから、割と冷静に移り変わりをみてました。ジェイムズ・ブレイクは普通にかっこいいと思って聴いていたし(笑)。

野田:次号の紙ele-kingは、「コールド」という言葉で現在のシーンを括って特集を組む予定で、アクトレス、ミリー&アンドレア、テセラ……それからアコードやENAさんみたいな音楽が入ると思います。ジャングルとテクノが混ざっていて、なんか、盛り上がるようで盛り上がらないというのがよいとされている感じがあります。EDMへの反動からきているのかなと思う部分も。

E:ディープなドラムンベースのプロデューサーにはペンデュラムみたいなものにうんざりしているやつも多いですよ。反動はやっぱりあると思います。

高橋:ENAさんはやっぱりディープな流れと同調していますよね。フェリックス・Kの〈ヒドゥン・ハワイ〉からリリースされた943っていうアーティストは別名儀のプロジェクトなんですよね?

E:そうですね。フェリックス・Kとのコラボレーションで2曲参加してます。

高橋:定期的に海外とコラボしていてすごいと思います。ベルリンやイスタンブールにも行ってますもんね。

E:イスタンブールにはフラット・ライナーズの紹介で呼ばれて行ったんですよ。2年くらい前かな? DJしてたらモニター・スピーカーが落ちてきて、荷物を置く台がぶっ壊れたりして面白かったです(笑)。ちっちゃなハコでしたけどみんな踊ってましたね。たまたまフラット・ライナーズやガンツがいるだけでベース・ミュージックのシーンとかはないみたいですけどね。レゲエのシーンはあって、友だちがザイオン・トレインを呼んで野外で千人くらい来たって言ってました。それがダブステップとリンクはしていないみたいです。

野田:トルコは政治的にはEUに加盟させてもらえないけど、〈ディープ・メディ〉がガンツをフック・アップすると大ヒットして、アンダーグラウンドは外へ外へと開けているなと思いました。日本の、サウンド的にウチにウチに向かうポップスとは逆ですよね。中東やアフリカ、南米とか、民主化されていない外側へとアプローチしている。ガンツなんか、エイフェックス・ツインもDJでかけているし。

E:やっぱりガンツはインパクトありましたからね。去年くらいから三連系のダブステップがたくさん出てきたけど、それを最初にやったのはガンツなわけだし。前から曲をもらってたけど、リズムに対して光るものがありましたね。

野田:ダブステップに限らず、オマール・スレイマンが脚光を浴びたりとかアラブ圏内のビートが人気な流れがアンダーグラウンドにはあるじゃないですか? 彼らのなかにはリズムに対するそういう文化があると思いますか?

E:パーカッション的なところではあると思います。トルコの民族音楽のリミックスもあったりしますからね。

野田:TPPみたいなものとは逆の、いわばアンダーグラウンドにおけるグローバリゼーションの流れには可能性を感じますか?

E:それがやっぱりアンダーグラウンドの面白いところじゃないですか? 新しい国のアーティストをリリースする事によって、その国でブッキングされるかもって邪な考えもあるかもしれないけど、〈ディープ・メディ〉がガンツをフック・アップしたのは、単純に音が良かったからだし。音が良ければ国を越えて繋がって作品が出せるのは利点ですよね。これが大きな会社だとそうも言っていられないわけじゃないですか。

野田:どのくらいの頻度で海外へはDJで行っていますか?

E:毎年行っていますね。多分2009年からやってます。今年は9月末からツアーの予定です。〈サムライ・ホロ〉から10月に出るアルバムが出るんですが、そのリリース・パーティを兼ねたイベントにも出ます。ロンドン、パリ、ベルリン、マンチェスターやブリストルにも行きますね。今年は場所が多いです。

高橋:マンチェスターの知り合いが、ENAさんが出るイベントには人がたくさん来るって言ってましたよ。

E:ケース・バイ・ケースですけどね。ベルリンではDJがやりやすいです。セットでピークを作らなくていいんですよ。ゆっくり盛り上げて、波で引っぱれる。これがイギリスになると、ドーンって一発やらないといけないんですよ(笑)。ゴス・トラッドはUKのほうが合ってるって言ってましたけど。

サンプリングもしません。自分のコピーもしません。それは自分のキャリアを殺すことになっちゃうんですよ。

高橋:ENAさんは現在もヴァイナルをリリースしているわけですが、ヴァイナルについてどう思いますか?

E:賛否両論色々あるけれど、ヴァイナルを出さないとキャリアになっていかない感じがありますね。デジタルだけだとサラッと終わっちゃうというか。
 いまはCDJをメインで使っているけど、家ではヴァイナルでも聴くし、もちろん物自体も好きっていうのもあります。現場でレコードを使わないのは、デジタル向けにハコがセッティングされていることが多いので、ハウリングの問題もデカいです。レコードでハウリングを起こす低域も現場では出したいんですよ。だから音を優先してデジタルでやっているのが現状です。
 レコードでDJするほうがかっこ好いのは間違いないですけどね(笑)。

野田:DJやトラックメイカーとしての信念みたいなものはありますか?

E:そんなにすごい信念があるわけではないんですけど、好きな音楽をやるってことですかね。ものすごくお金になるわけじゃないのに、どうして好きじゃない音楽をやるのかっていう裏返しみたいなものですけど。
 プロダクション面に関しては、聴いたことあるような曲は作らない。気をつけている程度のことですけどね。さっきも言った仕事の反動かもしれないです。
 数年前にあったJハウスの流れもそうですけど、コピーする能力ってJポップの職業作家ってすごいんですよ。みんな職人なんですよね。そうやってコピーされる音楽は消費されるわけです。それで、そういう職人たちがアンダーグラウンドの曲をお金をかけて作ると、アンダーの人たちが食われちゃうんですよ。新興のインディ・レーベルがふたを開けてみたら、メジャーの会社がお金をかけてやってたりなんてこともありました。そういうのを踏まえて、コピーされ難い音楽かなと思っています。
 あと、自分のシグネイチャー・サウンドができると、その音を使い回す人も多いんですよ。型ができた結果、それはコピーされる音楽になってしまうわけです。ダブステップのハーフ・ステップとかもそうだった。だから、俺は毎回全てのサウンドをゼロから作ってます。サンプリングもしません。自分のコピーもしません。それは自分のキャリアを殺すことになっちゃうんですよ。
 そういうことをする反面、わかりづらくなっているのかもしれないけど、そこはリスナーが頑張ってくれって感じです(笑)。

高橋:容易にマネされない音楽だからこそ、ENAさんの音楽は多くの人に聴いてもらいたいっていうのはあります。ジャンルを越えてリスナーに届く音楽を作っているとも思いますし。

E:さっきも言ったけど、ルーラルにこの前出演させてもらったことは本当に嬉しかったです。あのメンツの中で周りはテクノやハウスの人たちで、ベース系のミュージシャンは俺だけでしたからね。それでアブデュール・ラシムみたいな土壌が違うアーティストが気に入ってくれたりしたわけで。自分のことを評価してくれる層がどんどん広がっていけばいいなと思ってます。

高橋:将来の構想はあったりしますか? 

E:ひたすら精度を高めるだけですかね。それ以外は邪な考えを持たないようにしてます(笑)。あんまり良い結果にはならないと思うから。
 強いて言えば、自分を刺激してくれるようなプロデューサーがたくさん出てきてくれたら嬉しいですね。日本にはいいDJはたくさんいるけれど、プロデューサーはあんまりいないんですよ。マコトさんやゴス・トラッドはさすがなんですけれど、なかなか次に繋がらないのが現状です。テクノ界隈ではすごいと思える人が多いんですけどね。
 あとはとくにないです。海外に比べて東京の音楽シーンそのものが悪いとは思わないんですよ。海外だとイベントにもよるけど、オーディエンスの要求が強かったりする。だけど日本のアンダーグラウンドの人たちは俺の音楽を理解しようとしてくれるんです。日本はいいところですよ(笑)。

ENA
BIRATERAL

7even Recordings/Pヴァイン

Tower HMV Amazon


ENA-All Time Favorite Chart

01.Jimi hendrix - Red House (live at Winterlnad) - Polygram

02.King Crimson - Red - Island

03.Allan Holdsworth - Home - Enigma

04.BB King - How Blue can youget?(Live in Cook County Jail) - MCA

05.Black Sabbath - Children of the grave - Vertigo

06.Company Flow - The Fire In Which You Burn - Rawkus

07.DJ Krush- Escapee - Sony

09.Showbiz & AG - Next Level (DJ Premier remix) - PayDay

10.DJ Vadim - Headz Still Ain't Ready - Ninja Tune

11.Savath + Savalas - Paths In Soft Focus - Hefty Records

DJまほうつかい - ele-king

 みんな大好き西島大介、音楽をやるときはDJまほうつかい、が、「All those moments will be lost in time EP」以来の1年ぶりとなるEP「Ghosts in the Forest EP」をリリースする。8月13日発売だから、お盆中のリリース。
 ここに貼り付けたYoutubeに「おや」と思った方は、聴いてみましょう。サックス奏者の吉田隆一、弱冠19歳の椎名もた、Moe and ghostsのラッパー、MOEも参加。

DJまほうつかい「Ghosts in the Forest」(short version)
アニメーション:西島大介×子犬


DJまほうつかい 「All those moments will be lost in time」featuring 吉田隆一(blacksheep)& MOE(Moe and ghosts)from“Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)
監督:西島大介×たけうちんぐ
撮影:竹内道宏


西島大介(にしじま・だいすけ):
 
1974年東京都生まれ、広島県在住。2004年に描き下ろし長編コミック『凹村戦争』でデビュー。同作は平成16年度第8回文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品となり、またこの年の星雲賞アート部門を受賞。代表作に『世界の終わりの魔法使い』、『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行うなど、活動は多岐に渡る。
 
最新刊は宝島社より8月27日刊行される初の画集・作品集『くらやみ村のこどもたち』。8月31日からワタリウム美術館オンサンデーズにて「くらやみ村のこどもたち」展を、広島READAN DEATにて「くらやみ村のこどもたち展mini」を同時開催。

DJまほうつかい:

DJまほうつかいはターンテーブルを持っていないDJです。まほうのちからで音楽を作ります。MIX CD『世界の終わりmix』(2005)や自作のサントラ盤『ディエンビエンフー・サウンドトラック』(2007)、ヘヴィ・メタルをエレクトロニカの文法で再構築した『Metaltronica』(2011)など、その音楽性は常に変化。相対性理論presents「実践III」や、フリー・ジャズの聖地、新宿PIT INNなどで演奏を行い、アイドル・プロデュース、サウンド・インスタレーション、CM音楽までを手掛ける異端の音楽家。最新のプロジェクトはシンプルなピアノ曲の譜面による作曲と生演奏。2013年HEADZよりピアノ曲集『All those moments will be lost in time EP』をリリース。2015年にはピアノ曲だけを集めた初めてのフル・アルバム『Last Summer』をリリース予定。


HP:https://simasima.jp/
Twitter:https://twitter.com/DBP65
Soundcloud:https://soundcloud.com/djmahoutsukai

 世界中で静かな盛り上がりを見せているコールドウェイヴ/ミニマルシンセ・シーン。とくにカナダにはさまざまなレーベルが存在し、イヴェントも多彩、独自の発展を築いている。とりわけ〈Visage Musique(ヴィサージュ・ムジーク)〉がリリースするシンセ・ウェイヴ・ポップ・デュオ、Violence(ヴァイオレンス)は、音楽ブログ「Weird Canada」や「Silent Shout」などで特集が組まれたり、NYの老舗イヴェント〈Weird Party〉の後継である〈Nothing Change〉への出演などによって注目を集める存在だ。

 そんなViolenceが初めて日本にやって来る。おもに楽曲を担当するエリックと、どこか懐かしいメロディを耽美でキュートなウィスパー・ボーカルでなぞるジュリー。ふたりの来日を記念して、話をきいた。

文:寺尾拓也
翻訳:高橋美佳

Violenceはどうやって結成されましたか。

エリック:2010年頃、カナダのモントリオールからイギリスのオックスフォードに移った。ジュリーはオックスフォード大学でポスドクの職を得ることができたんだ。
 海外でたくさんの自由な時間と少しのシンセサイザーがあったということは、音楽を制作するという意味で、結果的にはとてもクリエイティヴで生産的な時間を与えてくれたんだ。そんな頃、家族や友だちに会いにカナダに帰った際に、僕らの初めてのコンサートをロフト・パーティで行った。
 自分たちの美学は当然として、そういった音楽や芸術、パフォーマンスやダンスのイヴェントが僕らの音楽を形づくった。Violenceは、そういったやりとりやフレンドシップの中で成長してきたし、いまだコンスタントにこのときの友だちやアーティストからフィードバックをもらったり交流することで成り立っているんだ。
 たぶん共通の知り合いからかな、どういった経緯か詳しくは知らないんだけど、〈Visage Musique〉の人たちが僕らの作品を聴いて、いっしょにやらないかと言ってきたんだ。

「Silent Shout」で“EP of the Year”に選ばれたり、「Weird Canada」で特集されたり、とても順調に思えます。

エリック:音楽のことをキャリアという視点で考えることはまずないんだけど、専門のブログにいいことを書かれるのは気持ちがいいね。このプロジェクトをはじめてから、とても興味深い人たちに出会えたし、素晴らしいアーティスト集団とステージを共有したり、見知らぬ人とアートや音楽について興味深い議論をすることになったんだよね。

どういった音楽に影響を受けましたか。また、最近気になっているバンドやミュージシャンはいますか。

エリック:作曲するときは無意識に影響を受けるのが好きなんだ。でなければ、単に自分を訓練する文体練習(※1)になってしまう。
 僕はグルックやバッハ、ロッシーニといった、クラシックやバロック音楽が本当に好きなんだ。現代の音楽だと、最近は90年代初期のテクノやハウスをたくさん聴いているよ。

※1 フランスの小説家、レーモン・クノーによる一つの物語を99通りの文体で書いた作品

最近よく聴いている5曲はなんですか。

ジュリー:わたしはつねに5曲以上好きな曲があるの。でも最近ではAutomelodi(オートメロディ)(※2)のLPをよく聴いているわ。

※2同じくカナダのダーク・シンセポップ・バンド。〈Wired Records〉などからのリリースがある

どんな音楽を聴いて育ちましたか。最初に影響を受けた曲は何ですか。

エリック:最初の音楽の記憶は、おじいちゃんが弾いてくれた自作のフォークかな。そのあと5歳の誕生日にレコード・プレーヤーをプレゼントにもらったんだ。ちょうどその頃、ディスコが終焉を迎えて恥ずかしくなった僕のおばさんたちが、その当時流行ってたディスコのレコードを100枚近くくれたんだ!
 僕とイタロ・ディスコの親和性は、絶対そこから来ていると思うんだよね。あとは、フランスのコメディやイタリアの映画、日本のアニメの音楽を楽しんでいた覚えがあるな。

ジュリー:わたしがまだ小さかったとき、叔父がピアノを勉強していて、バッハやモーツァルトみたいな有名なクラシックの曲を、ジャズにアレンジして弾いてくれたのにとても感動したし、何よりうれしかったのを覚えているわ。
 自分でかけた最初のレコードは、Angèle Arsenault(アンジェレ・アルセノ)の『Libre(リブレ)』。

機材は何を使っていますか。作曲はどのように行いますか。

エリック:80年代と90年代初期の、アナログ・シンセとデジタル・シンセを合わせて使っているよ。最近は僕たちがいままでに持っていたシンセサイザーの中で、プログラムの可能性という意味ではもっとも複雑なRoland MKS 80を買ったよ。
 僕らはゼロから自分たちの音を作るのが好きなんだ。普通どうやって曲を作りはじめるかっていうと、シンセサイザーのパッチを組むとその音が自分たちの気分を決めてくれるんだ。それを作り込んでからレイヤーと歌詞を足していく。僕らは普段、タッグを組んでいっしょに作曲している。

〈Visage Musique〉やレーベルメイトについて教えてください。カナダには〈Visage Musique〉や〈Electoric Voice〉、〈Pretty Pletty〉などのシンセ系のレーベルがいくつかありますが、最近のカナダの音楽業界についてどう思いますか。

ジュリー:創造を広めるための道具が増えて、生産を縮小できるという事実は好きよ。わたし個人としては〈Visage Musique〉のように、人をベースとした環境の中でともに創り上げて行くっていうやり方がうまくいくの。彼らは長年にわたって成長してきたし、世界中にいるわたしたちのアートを理解してくれているだろう人にどんどん近づいているのよ。これってこれまでの音楽業界と比べて、すごくいまっぽいことよね。

他の国にもアンダーグラウンドなシンセ・シーンがありますが、他の国のバンドに興味はありますか。影響を受けていますか。

エリック:もちろん興味があるし、海外の音楽シーンにも触れようとしているよ。僕はその出所よりも音により注意がいくから、どんな言語で歌われた歌を聴くのも楽しいんだ。

どういったファッションが好きですか。カナダのお勧めの店を教えてください。

ジュリー:たまに意外なとこですごく素敵なモノを見つけたりするけど、アクセサリーだけは「Missy Industry」っていう友だちがやってるお店で買うわ。あとはAmélie Lavoie っていうとてもおもしろいパターンを描く友人がいるんだけど、その子の作るシャツが本当に最高なの。

東京に来たらどこに行きたいですか。またなぜ東京に来ようと思ったのですか。

ジュリー:地元のアーティストがインスピレーションを受けている場所や、若い人たちが、自分を出せたり、実験できたり、生きてるなあって感じられるような……というのもわたしは専門的に都市にいるハシブトガラスを観察することにも興味があって、どうやって鳥が都市に適応するか、特別に賢い鳥が人間と同じように自然環境無しにどうやって餌を食べることができるのかというようなことをとても興味深く見ているの。(※3)

※3 ジュリーはオタワ大学の助教授で認知学の研究をしている

エリック:東京の代表的な建築物とか、インディ・レコード・ショップ、あとは中古の楽器屋でシンセが見たいかな。

東京でライヴをするのは楽しみですか。

ジュリー:待ちきれないわ! ライヴをはじめたときから、いつか東京でやりたいって思ってたの。モントリオールやロンドン、ニューヨークみたいな都市が好きだから、東京には一度も行ったことがないけれど、きっと東京も一瞬で好きになっちゃうわ。

いっしょに出演するJesse RuinsとNaliza Mooはどう思いますか。

エリック:つい最近彼らを見つけたんだけど、僕らの聴いたものは好きだよ。彼らといっしょにライヴするのが楽しみだ!

質問に答えてくれてありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いします。

エリックとジュリー:わたしたちといっしょに踊りに来て!


Violence来日公演

■The Invention of Solitude - Chapter 4
8月24日 日曜日 18:00 at 渋谷HOME
Charge: ADV. 1,500 / DOOR 2,000 (+1D)
LIVE: Violence (from Canada), Jesse Ruins, Naliza Moo
DJ: Yanagiszawa, Tack Terror, Naohiro

来日公演に先立ち DOMMUNEでのライヴ配信も決定
■The Invention of Solitude - Chapter 3.141592
8月20日 水曜日 21:00 at DOMMUNE
Live: Violence (from Canada), Jesse Ruins, Naliza Moo
DJ: Naohiro Nishikawa

 来日公演を記念して、海外のインディ・シーンともリンクする東京のアーティストによるViolenceのリミックステープのリリースが決定。リミキサーは初来日公演でもプレイするJesse Ruins、Naliza Mooに加えリミックスワークは初めてとなるギーク系轟音ギターバンドSlowmarico。都会の孤独に翻弄された一人シンセバンドLSTNGTの計4組。そこにViolenceの未発表曲、その名も『Violence』を加えた計5曲。タイトルはViolenceのエリックの入力によるGoogle翻訳を駆使したViolenceの日本語訳「すさまじさ」のローマ字表記で『Susamajisa』。東京の新レーベルSolitude Solutionよりリリース。

『Susamajisa - Violence Remixes』
A-1 Dernier Cri - Slowmarico Remix
A-2 Halo - Jesse Ruins Remix
A-3 Violence - Violence feat. William Crop
B-1 The Curse of Dimensionality - Naliza Moo Remix
B-2 Disappearances - LSTNGT Remix
Solitude Solition - KDK-1
価格: 1,000円(限定77本)
8月20日発売予定
soundcloud: https://soundcloud.com/solitudesolutions

Violence プロフィール
 カナダで活動するシンセ・ウェイヴ・ポップ・男女デュオ。男エリックによるミニマルでダークウェイヴでありつつも時折ディスコに接近するシンセサウンドに乗るどこか懐かしささえ覚える美メロを唄う女ジュリーの冷淡でありながら耽美でキュートなウィスパー・ヴォーカルが魅力。地元カナダのVISAGE MUSIQUEよりEP『VIOLENCE EP』と LP『ERLEBNIS』とをリリース済み。
bandcamp: https://violence.bandcamp.com/
soundcloud: https://soundcloud.com/violence-2/


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