
反骨と愛。
NORIKIYOのリリックが紙に書きつけても光るのは、骨身を削って刻んだ生身(リアル)な言葉だからだ。
──後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
メディアの人たちはヒップホップを単純に掻い摘んで見せるのがおもしろいのかもしれないけど、本当に、そこは思ってるよりもっと深い。 (本文より)
「さあBLAZIN立ち上がる時だ/仲間は日本人ラテンにコリアン」(“Do My Thing”)。神奈川・相模のヒップホップ・ポッセ、Sag Down Posse(SDP)のラップ・グループ、SDジャンクスタに所属するノリキヨは、ソロ・デビュー・アルバムでそう高らかに宣言する。これまでの日本語ラップにおいて、“敵”か“他者”として描かれることが圧倒的に多かった外国人に連帯を呼びかける姿に、新世代のBボーイのオープンマインドな感覚を感じた。それは、ライター、ブレイカー、ラッパー、DJという4つのエレメンツを持つSDPというヒップホップ・ポッセの、もっと言えば、地方都市でグローバリゼーションの最前線を生きるBボーイのリアリティなのだろう。ノリキヨはプリミティヴなビートの隙間に、英語、日本語、ローカル・スラング、スパニッシュを交えたリリックを打ち込んでいく。とはいえ、複数の人種から成るコミュニティ意識をロマンチックに語れるほど現実は甘くない。たとえば、在日米軍キャンプが隣接する川沿いの街、相模の殺伐とした風景は次のように描写される。「死んだ商店街 駅前通り/WALKIN粋がるARMY 百姓SHADYツレか?/ケツ振る阿婆擦れポン人 シケたピンサロ呼び込み冴えなぇサンピン/うだつあがらん389のパシリか?/まだまし売人 鶴間のラン人」(“In Da Hood”)。これは紛れもなく現代日本の風景であり、いま、タフなヒップホップが生まれる現場のひとつだ。 ──二木信(『EXIT』レヴューより)
私鉄沿線上の名もない街の風景を描き、その名もなき人生を語り、さまざまな感情、ときには臆することなくポリティクスも述べる。予見的な内容だった2007年の『EXIT』から10年、ヒップホップとの出会いやハスリング、通常歩行が困難となる大怪我、ラッパーとしての活動開始、SD JUNKSTA、 SEEDAやPUNPEEとの出会い……
この10年のあいだ発表してきたNORIKIYOの詩の数々とその回想録。
ここに並んだ言葉の数だけ現実がある!
NORIKIYO
1979年、神奈川県相模原市生まれのラッパー。
1999年、相模原市にて地元の仲間たちとSD JUNKSTAを結成。
2005年、SEEDA & DJ ISSOのMIXCD『CONCRETE GREEN』に参加して注目される。
2006年にSEEDAの『花と雨』に参加(「ガキの戯れ言」)、
翌2007年1stアルバム『EXIT』を発表し、ヒップホップ系メディアで高評価。
以降、『OUTLET BLUES』(2008)、『メランコリック現代 ~秘密~』(2011)、
『花水木』(2013)、『雲と泥と手』(2014)、『如雨露』(2015)、『Bouquet』(2017)
と、現在までに7枚のソロ・アルバムをリリースしている。
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