Home > Interviews > interview with Gonno & Masumura - テクノ、アフロ、そして喋るリズムとは?
このアルバムを作るときも、モーリッツのあのアルバムを目指そうとかということはまったく考えていなかったです。 ──Gonno
どうせトニー・アレンにやってもなれないし、違うし、みたいな諦念があるわりに、お気楽で、俺がやればどうせなんないし、みたいな。
──Masumura
Gonno & Masumura In Circles Pヴァイン |
■増村くんはバンドで他者と一緒に共同作業をするということをずっとやってきているけど、ゴンノ君はひとりでやってきているからね。制作の現場に他者がそこにいるというのは、きっと違うよね?
G:人と音楽作るって良いですね。
一同:(笑)。
G:もうシンプルに、自分が思いもつかないようなことが出てくるということが素敵ですよね。
■アルバムの1曲目に、最初にできた5拍子の曲にトーン・フォークと岡田くんのギターが入るんだけど、これはディレクションしたんですか?
M:してないです!
G:岡田くんに関してはしてないですね。これ5拍子なんだけど、ちょっと入れてくれる? みたいなリクエストを増村くんが送ったその日にパッと。
M:音源をいきなり送り付けて、5拍子なんて弾いたことないよと言っていました。10分の曲なんですけど、3周分即興で弾いて素材としてどうぞと返ってくるという(笑)。さすがだなと思いましたね。即興して素材としてどうぞって。音楽のこと良くわかっているなって(笑)。
G:トーン・ホークの方は、締め切り1週間前くらいに僕がギターを入れてくれないかとコンタクトを取ったんです。5日間くらい返事がなくて、もう諦めようかなと思ったら……締め切り2日前くらいに、いまから録るからいつ送ればいいんだという返事が返ってきたんです(笑)。明後日までなんだけど、録れる? とメールをしたら、次に返ってきたメールで10パターンくらいギターパートが送られてきた(笑)。
一同:(笑)。
G:アメリカのミュージシャンってやっぱりすごいなと思って。10パターンくらいポーンと送って来ちゃうから(笑)。
■ミックスするのに困っちゃうね。
G:まさしくその通りで、しかもトーン・ホークの音が個性的なので、10パターンのどれを載せてもトーン・フォークの曲になっちゃうんですよ。
M:最初、食われる感ありましたよね。
G:けっこう調和させてミックスさせるということにだいぶ集中しましたね。締め切り当日の朝に(笑)。
M:すごい馴染みましたよね。
G:表情豊かになりましたよね。
M:加えて言うと岡田のギターも馴染んで。岡田とトーン・フォークのギターちょっと似ていて。元々ちょっと似ていますよね。けど、ゴンノさんが混ぜたことが大きいのかな。
■そこはやっぱり、DJミックス。
M:さすがっすね! 入れ替わりがすごいスムーズな感じで、どこからどこまでかわからないですよね。
G:岡田くんのギターにディレイやワウっぽいエフェクトはちょっとかけたりしました。それがトーン・ホークの音と上手くマッチしてるのかも?
M:そうなんですね。あれはスムーズですごいですね。
G:トーン・ホークはもちろんNY在住なので当然そうなんですけど、ふたりともアメリカの音楽とかの影響が出てるんじゃないかな。わからないけど。もしかしたらそういう共通言語があるのかもしれない。
M:ふたりとも5拍子をなぞるのを最初から放棄してくれていたんで、それが良かったですよね。またがない感じが。ドラムがあれだけ5拍子で来ているから、5拍子のカッティングがくるよりはマニュアル・ゲッチングみたいなものもナチュラルならハマるんでしょうけど、ちょっとドローンが入っているあのギターは良かったですね。
G:じつはマニュアル・ゲッチングをサンプルではめてみたヴァージョンがあるんですよ。
M:しかもすげー良いんですよ! 岡田がこれでいいじゃんって言ってましたもん。
G:やっぱマニュアル・ゲッチングすごいんだなっていう話をしましたね。
M:4拍子の曲をゴンノさんがちょこちょこっと5拍子のループにその場でしてくれて。
G:アシュラ名義の何曲かを使ったんですよ。
M:めっちゃよかったですよね(笑)。
G:相当精巧に弾いていたんだなっていうのがよくわかりました。スクエアに、延々と15分間も……。そういう発見が今回本当にたくさんあったんですよ。普通にミニマル・ミュージックとして、アシュラは僕なんかからするとトランスの祖先みたいなふうに聴いていたので、もっと構造としてこんなふうに鳴っていたんだとかという発見ができたので。とくに今回はリズムがそうだったし、そういった発見が自分にとってとても収穫でした。
■このジャケットとか、『イン・サークルズ』というタイトルがすごく合っているなと思ったんだよね。
G:それは嬉しいですね。タイトルは増村くんが命名したんです。ジャケットは新谷テツヤさんという方のドローイングです。
M:本当は『ファースト・サークル』にしようと思ったんですけど、めっちゃメセニーやなと思って。探していたら『イン・サークルズ』に。
G:楽曲は基本反復の音楽なので、“サークルズ”という言葉はすごいしっくりくるなと僕も思いましたね。
M:あと、“堂々巡り”みたいな意味があるらしくて、日本人がアフロをやるっていうその……
G:矛盾しているというか。
M:悩みながら覚えてきたんで。
■でもね、ふたりともあえて違うことをやろうとかそういう感じでもなかったじゃない? わりと自然体でやってたし。
G:例えば僕にモーリッツ・フォン・オズワルドのミニマル・テクノを追及できるかというと絶対できないですからね(笑)。
■あれはやっぱりドイツって感じだよね?
G:そうですね。僕のなかではもう、あんな風にはなれないっていう諦念みたいなものもありますし、逆に自分は日本らしくてよかったなということも結果としてままあるので。このアルバムを作るときも、モーリッツ・ヴォン・オズワルド・トリオ&トニー・アレンのアルバムを目指そうとか、そういうことは考えていなかったです。
M:ドラムもまったく一緒で、どうせトニー・アレンにやってもなれないし、違うし、みたいな諦念があるわりに、お気楽で、俺がやればどうせなんないし、みたいな。でも、気持ちよさだけは残れば、新しいものというか作品にはなるなという。諦めているわりにお気楽みたいなところはありましたね。
G:もともと漠然としていたんですよね。トニー・アレンぽいドラムが欲しいというよりも、もっと広義にアフロ・ミュージックのドラム、ファンク・ミュージックのドラム、僕が聴いてきた増村くんのドラムっていうのに、自分の音が重なったらどんな感じになるだろうというシンプルな感じだったので。もう具体的にこの音を目指そうみたいな感じよりも、増村くんから出る音を掬い取って何かやろうという感じだったんで。
■まさに、ゴンノ&増村だからね(笑)。
G:とにかく完成してよかったな……
■目的地がわからず出発したわけだから。
G:ロジカルに考えてアレンジとかいうんじゃなく……。もちろん最初に録音したドラムありきですけど。本当に考えないで最終的に落とし込んだので、良くできたなと思いました。
M:素晴らしい。僕はドラムを叩いていただけなんで(笑)。
G:いえいえ。ドラムが歌っていたので、あとは無意識に落とし込んでよかったみたいな部分もあるのかもしれないですね。わざとらしくないというか。本当に完成してよかった……こういう実験的なことをこのペースで20年間とか続けてたら10年目くらいで死んじゃいそう(笑)。でも実験はミュージシャンとして大事ですね。
以上、もうわかると思いますが、ふたりは、コンビとしてじつに気が合っているというか、こりゃあこのプロジェクトはまだまだ続くなと思った次第です。
※レコ発ライヴ情報!
7月8日(日曜日)代官山ユニットにて。詳細は追って告知します。
取材:野田努(2018年5月09日)