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Album Reviews

fragment

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NARROW COSMOS 104

術ノ穴

野田 努      Mar 06,2012 UP

 朝からずっと降っている雨が環八を洗浄している。マンションの点検のため、たばこ臭い作業員が部屋に入って、ベランダに出る。車の排気ガスが冷たい風に紛れて部屋の窓から侵入する。僕は大きな音でフラグメントのアルバム『ナロウ・コスモス104』をかけている。音は僕の鼓膜には響いても、横にいる作業員には聴こえないようで、表情ひとつ変えない。
 雨に濡れた道路の上を走る車の音に混じって電子音がなる。フラグメントは、山梨出身のkussyと熊本出身のdeiilのふたりが埼玉の大学で出会って生まれた。DJプレミアとオウテカという北アメリカ大陸で生まれたヒップホップとブリテイン島で生まれたIDMが埼玉の学生の耳を通過して、そして再生された。いろいろなレーベルに音源を送っても返事は来なかったので自分たちでレーベル〈術ノ穴〉を作って、2004年に最初のアナログEP「繋」をリリースする。レーベル名の由来は、「その数日前に見た映画『マルコビッチの穴』とたまたま聞いてた『Art of Noise』のもじりで、『芸術性に欠けてる人たち』ぐらいな意味」だそうだ。それ以来彼らは環ROY、ツジコノリコ、撃鉄などのプロデュースやリミックスを手がけている。『ナロウ・コスモス104』は彼らにとって初めてのインストゥルメンタル・アルバムである。「narrow cosmos 104=狭い宇宙/104号室=術ノ穴事務所ということで僕らが毎日いる空間をタイトルにしました」と、メンバーのkussy君はタイトルの意味を教えてくれた(kussy君とは......まさかクシー君の発明から?)。

 

 三田格情報によれば最近は日本にもフライング・ロータス以降と呼べるようなシーンがあるという話で、新しいトラックメイカーが続々と登場しては面白い作品を出しているようだ。フラグメントはフライング・ロータス以前からやっているので、厳密に言えばその流れには入らないが、『コスモグランマ』ではなく『ロサンジェルス』が自信を持たせたベッドルーム・ミュージックの延長に『ナロウ・コスモス104』を並べることは可能だ。彼らはボーズ・オブ・カナダとも似た茫洋とした夢と同時に平和主義を説いている。アルバムにはリミキサーとして、ogiyy、Geskia、Quarta330の3人が参加しているが、フラグメントの面白さを伝えるのは、"Crossing World"や"Winter Girl"のような、彼ら自身が自分たちのサウンドに夢中になっている曲だ。僕がもしベスト・トラックを選ぶなら、安っぽいピアノが山小屋のなかで板を軋ませながら鳴っているような"Wednesday"。が、しかし彼らは、自分たちの音楽が生活や仕事で疲れている連中の頭を一時期的に気持ちよくさせてあげるだけのもの、たとえば夜の9時に冷蔵庫から取り出すビール、そうしたもの以上であることをこのアルバムで言っている。いや~、いよいよ日本のクラブ・ミュージックが面白くなってきたぞ!
 彼らは3月24日渋谷wombにて、ゲストにShing02、Chim↑Pomを迎えてのイヴェントを主宰する。

野田 努