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Album Reviews

V.A

V.A

CUZ ME PAIN Compilation #2

CUZ ME PAIN

野田 努      Mar 08,2012 UP

 今週だけで4枚目の、日本のインディ・シーンからの新作で、今月後半には老舗の〈クルーエル〉のコンピレーション・アルバムのリリースも控えているとはいえ、こうして新しい名前が続けざまに出てくることは嬉しい話である。昨年はフォトディスのデビュー・アルバム『言葉の泡』やトーフビーツの「水星」が意外なほどの好セールスを果たしていることからも、どうやら新世代への関心もしっかり高まっているようで、こうした前向きな機運を感じてきっとさらにまた新たな作り手も出てくるんじゃないだろうか。良かった良かった。

 2010年に始動した〈コズ・ミー・ペイン〉は、原宿の〈BIG LOVE〉や下北沢の〈Jet Set〉ないしは〈Warszawa〉あたりで、たった1枚の7インチまで注意深くチェックするような、東京においてもっともマニアックにインディ・ミュージックを聴いている連中である。もし渋谷にまだ〈Zest〉があったら、彼らは間違いなく常連だっただろう。早い話、彼らは20年前の瀧見憲司なのである(といっても若い人にはわからないか......)。
 昨年はザ・ビューティが〈クルーエル〉から12インチ・シングルをリリースしている。また、ジェシー・ルインズがUKの〈ダブル・デニム〉を通じてインターナショナル・デビューを果たし、ブルックリンの〈キャプチャード・トラックス〉から『Dream Analysis』をリリースしたばかり。この勢いのなかでリリースされるのが、レーベルとしては2枚目となるこのコンピレーション・アルバムである。

 『Compilation #2 』には、4人のメンバー(ナイツ、ヴィジット、ザ・ビューティ、ツッカ)の他、新人のアトラス・ヤングとスカム・ボーイズ、〈ノット・ノット・ファン〉からデビューしたサファイア・スロウズも1曲提供。リミキサーとして〈セカンド・ロイヤル〉からホテル・メキシコ、マジカル・ギャングも参加している。
 〈コズ・ミー・ペイン〉の音楽性は主として同時代のUSインディ・シーンに触発されたもので、ことシンセサイザーのリフにおいては、チルウェイヴ/ダークウェイヴあたりと深い関係を持っている。とはいえ、『Compilation #2 』のオープニングに選ばれたマスキュイン(ツッカ)による"エクスタシー"が、まずはその曲名からして涙で水浸しの日本の音楽シーンに対するアンチテーゼであるかのように、いままでの彼らにはない太いダンス・ビートを打ち鳴らしている。
 手短に言えば『Compilation #2 』は総じてエネルギッシュである。ジェシー・ルインズもまたアグレッシヴに突き進んでいる......が、ディスコの力強いベースラインが唸っているとはいえファロン・スクウェア、そしてアトラス・ヤングは意図的にであろう、その深いエフェクト、籠もった音質、80年代的なシンセサイザーのリフ、喉元を締め付けられながら歌っているかのような聴き取りづらいヴォーカル・パートなど、チルウェイヴのクリシェをちらつかせている。
 あらためて思うのは、彼らのトラックにおいてヴォーカルは装飾ないしひとつの音に過ぎないということだ。歌詞を重視するロック/フォーク・リスナーにとっては苛つく限りだろうが、歌は彼らにとって何か意味のある言葉を伝達する手段ではなく、空間を演出するいち要素なのだ。こうした装飾としての歌は、欧米の模倣品という危険な領域とも隣り合わせであるわけだが、サファイア・スロウズは美しいミニマリズムによって彼女の茫洋とした歌をある種のムードへと転換させることに成功している。ヴィジティッドの"タッチ・ユア・ハート"における歌もそれらと同様に言葉を聴かせるものではないが、80年代テイストを引用しながらのメリハリのあるファンクな展開はレーベルにとっての新しいポップないち面をかいま見せている。
 いずれにせよ"ダンス"という大きなコンセプトに向かっているのが『Compilation #2 』で、ザ・ビューティの"ザ・ソロウ・オブ・パーティング"やナイツの"MO-メンツ・ライク・ディス・フルート"もまた今回の方向性を華麗に脚色し、彼らの躍動を際だたせている。それでもベスト・トラックをひとつ僕が選ぶとするなら、ナイツの"ホワイル・ユー・ワー・スリーピング"のホテル・メキシコによるリミックスだ。女性ヴォーカルがフィーチャーされたダウンテンポのこのトラックは、チルウェイヴにおけるMOR路線、つまり毒にもならないラウンジ・ミュージックというこれまた微妙な領域をしっかり忌避しながら、新しい夢に向かっている気がする。

野田 努