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Album Reviews

Various Artists

Various Artists

Shangaan Shake

Honest John's

三田 格      Mar 21,2012 UP
E王

 シャンガーンという音楽を初めて聴いたのはちょうど30年前。マルカム・マクラーレンのデビュー・アルバム『ダック・ロック』からそれは聴こえてきた。「ブロンクスもソウェトーも同じストリートだ」というのが南アの音楽を取り上げた理由だそうで、それはフライング・リザーズやトーキング・ヘッズといったニューウェイヴ・バンドがワールド・ミュージックに手を染めた時期ともほぼ重なっていた。その頃はそれがシャンガーンと呼ばれる音楽だとは知らなかった。

 シャンガーンに再び巡り合ったのは元ベイシック・チャンネルのマーク・エルネストゥスが南アに渡り、『シャンガーン・エレクトロ』と題したコンピレイション・アルバムを企画したからで、ベースが入っていないのにエレクトロを名乗る同編集盤はとにかくBPMが早く、のんびりとした曲調で扱われていたマクラーレンのそれとはまったく趣が変わっていた(なので、同じ音楽だとは気がつかなかった)。

 〈ファインダー・キーパーズ〉がタイやインド、〈サブライム・フルクエンシーズ〉が途上国全域の音楽を掘り起こし、最近では〈アタ・タック〉がアフガニスタンや沖縄の音楽に目をつけるなど、先進国以外の音楽がどこもかしこも掘りまくられているなか、長らくダブにかかわってきたエルネストゥスもコンゴの変り種であるコノノNo.1との共作がきっかけなのか(リミックスを手掛けただけなのか)、唐突にアフリカに向かい、モードセレクターやロボット・コッチがケニアとの交流を深めているのと同じく、いつの間にかシャンガーンを広める立場になっているように見える。同編集盤は、昨年、イギリスではかなりの評判を呼び、その結果なのか、こうしてリミックス盤までつくられることに(コノノNo.1やスタッフ・ベンダ・ビリリをヨーロッパに紹介したのも、80年代からワールド・ミュージックにアンテナを張っていた〈クラムド・ディスク〉のマーク・ホランダーだった)。

 この企画はとにかくリミキサーの人選が素晴らしい。シャンガーンがまったく原型を留めていないのは残念だとも思えるけれど、現在のダンス・カルチャーから新人もビッグ・ネームも問わずにフロントラインばかりが集められたことで、そのままフロア・ミュージックの最新カタログといえるようなものになっているし、ダブステップやチルウェイブはもちろん、ジュークやドローンからもエントリーがあり、クリック・ハウスやデトロイト・テクノといったスタンダードとも見事に調和させた堂々の仕上がりである。全16曲(2CD)。

 オープニングとクロージングはマーク・エルネストゥス。ソロではイェリ-イェリ・ウイズ・ンビアネ・ディアタ・セーとモロにアフリカン・ミュージックの制作もはじめているエルネストゥスがここではBBCのオリジナルをあっさりとダブ・テクノに変換しているだけ。ふわふわと宙を漂う感じが彼なりにアフリカン・イメージを反映させたものなのだろう。シングル・カットもされている。

 同じくドイツからザ・ナイフのメンバーとして知られるオロフ・ドライヤーの変名、オニ・アイフンはエレクトロクラッシュがどこかでコジれたような避暑地の落語モード(なんとなくなく伝わらない笑いのこと)。スミスン・ハックからMMMもかなりオーソドックスな仕上がりで、テシュハ・ボーイズから疾走感だけを抜き出した印象か。この辺りからスリーヴとインナーでクレジットが異なっているために、どっちが正しいのか心許ないものの、スリーヴの表記に従えば、ペヴァーリストも同じくテシュハ・ボーイズをダブステップとエレクトロの折衷作として展開し、DJラシャド&スピンもまた(いじりやすいのか)テシュハ・ボーイズをアグレッシヴなジュークにリ-モデルさせている。これはマクラーレンのいう「ブロンクスもソウェトーも同じストリート」というやつだろう。ジュークとシャンガーンはBPMも踊り方も似ているし、妙な符号であることはたしか。混沌としたアクトレス、ダブ色の強いオールド・アッパレイタスとダブステップが続き、前半の締めはセオ・パリッシュがマンサンゲラーニを丁寧に料理。このリミックスがもっともシャンガーンの原型を留めたものになっている(阿波踊りみたいではあるけれど)。

 後半はもっと実験的で、デムダイク・ステアは(ナース・ウイズ・ワウンドがマンボのペレス・プラードに捧げたような )ドロドロとしたアブストラクト調、デトロイト・ヴェテランのアンソニー・シェイカーはエルネストゥスと同じくBBCをダンサブルなミッド・ファンクに、ジャズ寄りのバーント・フリートマンまで借り出されてザンヤ・フルンガニをごちゃごちゃとしたアフロ・ファンクにしたかと思えば、ジュークの開祖だとされるRP・ブーはスタンダードなジューク、2回目の登場となるアクトレスはシンセ-ポップ風ダブステップとでも言えばいいのだろうか、これもある意味でシャンガーンの本質を上手く抜き出したようなリミックスを完成させている。さらにハイプ・ウイリアムスはレイジーなシンセ-ポップ、リカルド・ヴィラロボス&マックス・ローダバウアーはお望み通りのクリック・ファンクと続く(ラマダンマンのミックスCDにも使われていたティアイセラーニ・ヴォーマシはその後のシングル展開もよかったのに、誰も取り上げていないのはちと残念)。

 アメリカではすでにディプロやM.I.A.はまったく人気がないそうで、先進国と途上国をダンスフロアで結びつけるという試みもオーヴァーグラウンドでは有効性を失いつつあるのかもしれない。OWSが主張する通り、戦争と金融危機を世界中に輸出して、返す刀で自分たちも傷ついてしまったアメリカ人は『ツリー・オブ・ライフ』や『マージン・コール』といった映画でも観ながらしんみりとするだけで、またしても内向きを決め込んでいるわけだから、それも仕方がないといえるだろう。ヨーロッパとアフリカがその間に音楽で絆を強めようという展開は、90年代にDJカルチャーがアメリカ抜きで進んでいた姿を再現しているようにも思えなくはない。これは終わりなんだろうか、はじまりなんだろうか。

三田 格