好評につき重版出来
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音楽からなぜ未来が消えたのか
過ぎ去ったものたちの残滓から現れる幽霊という希望
21世紀の終わりなき倦怠感をいかにして打破しようというのか
──イギリスの気鋭の現代思想家が『資本主義リアリズム』に次いで著した文化論
そして、加速主義にたいする応答
解説:髙橋勇人/註釈:坂本麻里子+野田努
【本書で取り上げられている音楽】
ジョイ・ディヴィジョン、ベリアル、ザ・ケアテイカー、ゴールディー、トリッキー、ジョン・フォックス、ジェイムス・ブレイク、カニエ・ウェスト、ダークスター、ジュニア・ボーイズ……ほか
【映画およびTVシリーズおよび小説】
『シャイニング』、『メメント』、『裏切りのサーカス』、『ライフ・オン・マーズ』、『コンテント』、『土星の環』、『ハンズワース・ソングス』、デイヴィッド・ピースのヨークシャー四部作……ほか
■『わが人生の幽霊たち』に寄せられた声
あの傑出した『資本主義リアリズム』のあとで、『わが人生の幽霊たち』は、マーク・フィッシャーが、幽霊や亡霊や、過去や現在や未来のあいだにあり、戦慄と不和に貫かれた、さまざまな蝶番からはずれた時間の、もっとも偉大でもっとも信頼にたる案内人であることを確証するものだ。
──デイヴィッド・ピース(著書にヨークシャー四部作、『レッド・オア・デッド』など)
マーク・フィッシャーは、その惨めさや狂気や道徳についての他のどんな分析者とも異なるかたちで現代世界を解釈する。彼を駆りたてるのは怒りである。だが得がたいことに彼はまた、そうした反応が理にかなったものであることを広く知らしめるのも忘れない。彼の仕事はひとを鼓舞し、活気づけ、ふかく魅了するもので、そしてなにより、徹底して生気に満ちている。われわれが生みだしてきたこの世界は、彼のこの本なしではさらに酷いものになるだろう。
──ニール・グリフィス(著書に『シープシャガー』など)
ポップ・カルチャーは、政治学や、デジタル資本主義によって感情を管理された個人の生活とどのように結びついているのか。『わが人生の幽霊たち』は、マーク・フィッシャーがこうした問いにたいするもっとも洞察に富んだ探求者であることを確証している。フィッシャーの仕事のなにより感嘆すべき点は、その明晰さにある。だがその明晰さは、ポピュラー芸術がもつ挑戦し啓蒙し治療する力によせる彼の大きな期待や、妥協することにたいする断固たる拒否といった発想を伝達していくことにたいする、彼の義務感が生んでいる衝動を反映したものである。
──サイモン・レイノルズ(著書に『ポストパンク・ジェネレーション 1978-1984』など)
モダニストたち、そして未来を恋しがる者たちの必読書。この本は、「憑在論」と称されてきた発想の曖昧さを真にあきらかにする最初の著者である。『わが人生の幽霊たち』はたんじゅんに読んで面白く、新しく、そして刺激的だ。
──ボブ・スタンリー(セイント・エティエンヌ/DJ)
■『資本主義リアリズム』にたいする称賛の声
「はっきりいっておこう。断固として読みやすいこのフィッシャーの本は間違いなく、われわれの苦境にたいする最良の診断だ。日常生活やポピュラー・カルチャーからとられた例をとおしつつ、しかし理論的な厳密さを犠牲にすることのないままに彼は、われわれのイデオロギー的な惨めさについての、容赦ない肖像を提示している。この本はラディカルな左派の視点から書かれたものだが、フィッシャーは安易な解決を示してはいない。『資本主義リアリズム』は、理論的かつ政治的な忍耐強い仕事への真剣な呼びかけである。この本は、この時代のべとついた大気のなかで、自由に呼吸することを可能にする」。
──スラヴォイ・ジジェク
「われわれの未来になにが起きたのか。マーク・フィッシャーは最上の文化の診断者であり、『資本主義リアリズム』のなかで彼は、目下の文化的な病理の徴候を調査する。われわれは、何度も何度もくりかえし〈オルタナティヴはありえない〉と聞かされつづける、そんな世界のなかで生きている。「ジャストインタイム」な市場の過酷な要求は、われわれのあらゆる希望や信念を枯渇させてしまった。〈永遠のいま〉を生きるなかで、現在とは異なる未来を創造することはもはやできそうにない。われわれは泥沼にはまり、なすすべはもうなにもないように見える。この本は、そうした広く普及したシニシズムにたいする、卓越した分析を提示している」。
──スティーヴン・シャヴィロ
「厳密な文化の分析と尻込みすることない政治的な批判が組みあわさった、現代資本主義にたいする分析がようやくあらわれた。教育現場における「ビジネス存在論」と公共生活のなかでの「市場スターリニズム」が生みだしている有害な影響を描きだしつつ、フィッシャーは、資本の新たな文化的ロジックを暴露している。刺激に満ちた必読の本、とくに教育における政治の問題について真剣に語りたいと願うひとにとっては必読の本である」。
──サラ・アムスラー
【著者】
マーク・フィッシャー(Mark Fisher)
1968年生まれ。ハル大学で哲学を専攻、ウォーリック大学で博士課程修了。ロンドン大学ゴールドスミスで教鞭をとりながら自身のブログ「K-PUNK」に音楽論を展開する。これが多くの学生およびミュージシャンのあいだで評判となる。『ガーディアン』や『ファクト』に寄稿しながら、2009年に代表作『資本主義リアリズム』を発表。2017年1月48歳のときに自殺する。彼の死は、サイモン・レイノルズ、ジョン・サヴェージ、ポール・モーリーといったUK音楽評論界の大御所たちから惜しまれ、また彼の業績への讃辞や回顧がさまざまなメディアで展開された。
【訳者】
五井健太郎(ごい けんたろう)
1984年生まれ。現在、東北芸術工科大学非常勤講師。翻訳にマルグリット・デュラス「ただ狂人たちだけが完璧に書く」(『マルグリット・デュラス』河出書房新社、2014年)、ヴァージニア・ウルフ「壁のしみ」(『HAPAX』7号、夜光社、2017年)など。専門はシュルレアリスム研究。
目次
〇〇:失われた未来
「緩やかな未来の消去」
わが人生の幽霊たち──ゴールディー、ジャパン、トリッキー
〇一:七〇年代の回帰
もはや喜びはない──ジョイ・ディヴィジョン
スマイリーの計略──『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』
過去はエイリアンの惑星である──『ライフ・オン・マーズ』の初回と最終回
「世界はその見かけほどに惨めなものになりうるか」──デイヴィッド・ピースとその翻案者たち
さあさあ、それはおいといて──ジミー・サヴィルと「係争中の七〇年代」
〇二:憑在論
レイヴ以後のロンドン──ベリアル
うつむいた天使──ベリアルへのインタヴュー
ザ・ケアテイカーのライナーノーツ
記憶障害──ザ・ケアテイカーへのインタヴュー
家庭は幽霊のいるところ──『シャイニング』の憑在論
憑在論的ブルース──リトル・アックス
モダニズムへのノスタルジー──ザ・フォーカス・グループとベルベリー・ポリー
ノスタルジーのアーチ──ジ・アドヴァイザリー・サークル
他の誰かの記憶──アシェル、フィリップ・ジェック、ブラック・トゥ・カム、G.E.S、ポジション・ノーマル、モーダント・ミュージック
「別の時間と別の人生から射しこむ古い太陽の光」──ジョン・フォックスの『タイニー・カラー・ムーヴィーズ』
電気と霊たち──ジョン・フォックスへのインタヴュー
もうひとつの灰色の世界──ダークスター、ジェイムス・ブレイク、カニエ・ウエスト、ドレイク、そして「パーティー憑在論」
〇三:場所の染み
「じぶんたちから逃れていった時間にずっと憧れている」──ローラ・オールドフィールド・フォード『サヴェッジ・メサイア』への序文
ノマダルジー──ジュニア・ボーイズの『ソー・ディス・イズ・グッドバイ』
曖昧な部分──クリス・ペティットの『コンテント』
ポストモダンの骨董品──『ペイシェンス(アフター・ゼーバルト)』
失われた無意識──クリストファー・ノーランの『インセプション』
『ハンズワース・ソングス』とイギリスの暴動
「知覚できない未来の震え」──パトリック・キーラーの『廃墟のなかのロビンソン』
解説
開かれた「外部」へ向かう幽霊たち──マーク・フィッシャーの思想とそれが目指したもの (髙橋勇人)
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