「Man」と一致するもの

Sun Araw - ele-king

 2012年は奇妙な年だった。バランスは崩れ、何人かの人たちは東京から脱出した。ものごとは二元化され、逃げることも組みすることもできない中途半端な人間はサン・アロウを聴いた。『ジ・インナー・トリーティ』はコンゴスとの共作『アイコン・ギヴ・サンク』に続くリリースで、昨年の『Ancient Romans』に次いでのソロ・アルバム。ファラオ・サンダースのカヴァーをやっている。1970年に〈インパルス〉から発表されている『Summun Bukmun Umyun - Deaf Dumb Blind』というアルバムのA面の最初のパートをやっているわけだが、しかし、なんという、まったく、なんという気の抜けようだろうか......。

 先日、紙エレキングの年末座談会のために、木津毅、田中宗一郎、松村正人、三田格という面々と1年を振り返った。そのとき、結局誌面には載らなかったのだが、「アメリカの終焉」という話が出た。ラナ・デル・レイの繰り返されるアメリカン・ドリーム用語集をはじめブルース・スプリングスティーンの新作のメッセージ、同性婚と大麻合法、そして白い子供たちのレイヴ三昧......まあ、戦後アメリカの繁栄とそれを支えた価値観が壊れているのだろう。そもそも僕には、木津毅や倉本諒のように、アメリカが良い国だなんて、まあ、とてもじゃないが思えない。もちろん、彼らが賞揚するような良い部分はあるにはある、が、僕が何度も何度もアメリカに行くたびに感じたのは、より露骨な格差社会、日本の格差社会などかわいいものだと不謹慎に思えてしまうほど生々しく視覚化され、都市の構造と化した貧富の差。ああいう社会でサヴァイヴするのは、自分には無理かもな......と思った。

 そういうなかにおいてサン・アロウのファンク(恐怖)のないファンク、気が抜けたダブはちょっとした突然変異に思える。昔ながらの、アメリカ的なレイドバックな感じではない。ただ、とにかく、腰が入っていない。覇気がない。サン・アロウは、そのずっこけ感を極めつつある。
 かつてリー・ペリーがプロデュースを手がけたキングストンの伝説のコーラス・グループ、コンゴスとの共作は、サン・アロウのキャリアにおけるピークかと思えたが、新作『ジ・インナー・トリーティ』は、彼のジャマイカ体験が無駄ではなかったこと、それどころか体験が彼の養分となったことを明らかにしている。「こんなユルくていいんですか」と、僕は、1曲目の"アウト・オブ・タウン"の隙間だからけのリズム、ベース、ギターを聴きながら感心した。これは......ザ・スリッツにもブリストルにもアレックス・パターソンにも(もちろんベーシック・チャンネルにも)思いつかなかった、間抜けなダブの真骨頂だ。
 ダブという技法、スタイル、ジャンルは、もうたいがいのことがやられているけれど、サン・アロウを聴いていると、まだ次の一手が残っていたことを思い知らされる。徹底的に脱力すること、気合いなど入れないこと。マスタリングをソニック・ブームが担当しているように、これをEARのダブ・ヴァージョンと位置づけることもでるかもしれない。小刻みなリズムが気持ち良すぎる。全体的にだらしないが、バランスを失っていはない。

 ああ、疲れた。肩が凝る。サン・アロウを聴こう。嬉しいことに日本盤には訳詞がついている。そして、キャメロンの歌詞が、興味深いダブルミーニングの言葉遊びとナンセンスであることを知る。それでこの音楽性か......ますます好きになったわ。

Chart JET SET 2012.12.03 - ele-king

Chart


1

Slow Motion Replay Presents Dunk Shot Brothers - Love Me Tender Ep (Smr)
早くも、HikaruやMr.Melody、やけのはら等がプレイするなど、前作同様のヒットを予感させるエディット集が到着しました。様々なシチューエーションでばっちりハマるレコード・バック内のスタメン確定な1枚です。

2

Maxmillion Dunbar - Woo (Rvng Intl.)
Beautiful Swimmersの片割れにして、Future Times主宰者のAndrew Field

3

Greg Foat Group - Girl And Robot With Flowers (Jazzman)
これまでの作品は全て即完売で先行シングルも大ヒット。エレガントでサイケデリックでグルーヴィーな独自の世界を進化させた、待望のニュー・アルバムが遂にリリース!!

4

七尾旅人 - サーカスナイト (felicity)
2012年リリースの最新作『リトルメロディ』より名曲「サーカスナイト」がアナログ盤で登場!!名曲オリジナルVerに加えて、向井秀徳、Mabanua、Luvraw&btb、Grooveman Spotによるリミックスも収録!!

5

Will sessions - Xmas Break (Funk Night)
素晴らしく骨太な楽曲に加え、今回は赤と緑のラベルで完全クリスマス仕様です!!

6

Lusty Zanzibar - Empress Wu Hu Remixes (Glenview)
100枚限定で先行リリースされたVakula & Oeによるリミックスに加え、気鋭Volta Cabによるリミックス+オリジナル・トラックを追加収録した話題の一枚が到着。

7

Pepe California - Yureru - Dj Nozaki's Pure Pleasure Control Mix (10 Inches Of Pleasure)
Mick「Macho Brother」のカルト・ヒットも記憶に新しい"10 Inches Of Pleasure"から話題沸騰の新作第二弾が無事到着。2010年に自主レーベルからリリースされたPepe California最新アルバム『White Flag』収録曲をレーベル首謀Dj Nozakiがリミックス!!

8

Star Slinger - Ladies In The Back Feat Teki Latex (Pias)
フィジカル12"第1弾『Dumbin'』のメガヒットも記憶に新しいマンチェスターのStar Slinger待望のソロ第2弾には、シカゴのベース人気者Chrissy Murderbotによるジューク・リミックスも搭載です!!

9

Dntel / Herbert - My Orphaned Son - Die Vogel Remix (Pampa)
音響ハウス帝王Lawrenceのリリースでもお馴染み、天才Dj Koze率いる越境ミニマル・ハウス名門Pampaから、看板デュオDie Vogelと主宰による極上リミックスを搭載した特大傑作が登場です!!

10

Echocentrics Feat. Grant Phabao - Echocentrics Remixes (Ubiquity)
名門Ubiquityお抱えの人気バンドEchocentricsの1st.アルバム収録曲をGrant Phabaoがジャマイカン・リミックス!!

ROOM FULL OF RECORDS主宰のパーティ@吉祥寺 - ele-king

 先日DOMMUNEでも訴えさせてもらったヴァイナルの新しい流れ。今年になってその流れを牽引するROOM FULL OF RECORDSがいよいよレーベルとしては初のコンセプト・パーティーを開催。世界流通の道もはじまり、いよいよ今後の活動が楽しみになった同レーベルの最初のパーティの開催場所がこれまた東京ローカルとして近年良質なトラックメーカーを多数排出している吉祥寺。以下レーベルより頂いた熱いメッセージをどうぞ!! (五十嵐慎太郎)


 データ音源が主流になった現在だからこそ、実際に手に取れるアナログ・レコードの魅力に取り付かれた亜流な連中が世界にはわんさかいます。"ライブ・パフォーマンスが出来るアーティストのオリジナル曲とそのダンスリミックスというカップリングにてアナログ・レコードをリリースする。そして、その全てを日本人アーティストで行う。"こんなコンセプトを引っ提げて誕生した「ROOM FULL OF RECORDS」はリリース3枚目にして世界への流通を開始。日本人の作品が世界への足掛かりを掴みました。

 中央線沿線に脈々と流れるバンド熱、渋谷、青山といったクラブ発ダンスミュージック。レーベルコンセプトとしてのこれらの融合を、井の頭線、渋谷からの帰着駅"吉祥寺"にて、おこないます。ジャーマン・ロックを語る上で外すことのできない最重要バンドのひとつ、CANのボーカルダモ鈴木との共演は勿論、先日のDOMMUNE出演でも"マニュエル・ゲッチング再来?!"とのつぶやき多数だった今まさに世界へ向けて発信すべきイツザイMandog !!!

 アウトドアブランド"コロンビア"のイメージソング提供から、ロサンゼルスのネットラジオ局"dublab"とアメリカの"Creative Commons"によるプロジェクト、"Into Infinity"への参加と実力のほどは間違いのないスリリングで荒削りなサウンドと、繊細なメロディーメイクに定評のある札幌発スリーピースバンド、The Olololop。

 そして地元吉祥寺の夜を牽引する弁天通り発、dextraxのryo of dextraxとAutoPilotのUZNKによるThe Dubless。キャリア満点、引っ張りダコの人気DJであるYOGURT氏の胸を借りて、上記3バンドとともにおこなうレーベル初のショーケース・パーティ。

 普段はあまり吉祥寺に足の向かない、遊び場が渋谷周辺の方、ダンスミュージックはちょっと......という中央線沿線の方、このパーティーで、そんな皆さんもレーベルコンセプト同様に融合出来たら最高です。

Manhattan Records Presents
「ROOM FULL OF RECORDS Show Case 2012」
2012.12.08 SAT @ STAR PINES CAFE
23:30~5:00

LIVE : MANDOG, Olololop, The Dubless
DJ : Yogurt, DJ hiroki onodera - lil - Olololop
VJ : Tajif (FORTE / VIDEO ORCHESTRA), Satoshi (BLIND ORCHESTRA)
FEE : 2500yen (1D) / with Flyer 2000yen (1D)

URL : https://www.roomfullofrecords.com/


vol.5 『Hotline Miami』 - ele-king

 みなさんこんにちは。一年は早いもので、もう年末です。海外ゲーム市場も10月~12月はホリデー・シーズンといって、その年の目玉を中心に、数多くのゲームが集中的にリリースされる時期です。当然ゲーマーとしてもいまは一年でいちばん遊びまくる時期。それもあってこれから数回は新作を連続で紹介していくことになりそうです。

 今回ご紹介するのは10月にPCゲームとして発売された『Hotline Miami』。知り合いに薦められて遊んでみたのですが、これがすごく良かった。ゲームプレイ、物語、ビジュアルや音楽ともに文句なしで、今年遊んだなかでも屈指の満足度でした。ただ暴力表現が激しい作品なので、そういうのが苦手な人は注意です。

 この『Hotline Miami』は区分としては前回ご紹介した『Fez』と同じくインディーズのゲームなのですが、『Fez』がいわばインディーズ内におけるメジャーな立ち位置なのに対し、本作はインディーズ内においてもマイナーな存在と言えるでしょう。かくいう自分も本作を開発した〈Dennaton Games〉なんて知らなかったし、同スタジオの中心人物のひとり、“Cactus”ことJonatan Söderström氏のことももちろん知りませんでした。

  Cactusはスウェーデンで活動するゲーム・クリエイター。猛烈な多作ぶりで知られており、その数なんと40作以上! とはいえ、それらには一般的な意味での作り込みは皆無で、とにかくワン・アイディアのプリミティヴなゲーム・デザインをそのまますばやく形にすることを信条にしているのだとか。彼の公式HPを訪れると、荒削りのドットと極彩色で形成されたゲームの数々に触れることができます。


Cactusの過去作の映像。後の『Hotline Miami』につながるセンスを感じさせる。

 もっともこれまでの知名度はインディーズ・ゲーム界でも知る人ぞ知るという感じで、大舞台に出てくることはなかったようです。しかし今回の『Hotline Miami』の開発では、かつて上記映像にもある『Keyboard Drumset Fucking Werewolf 』をともに作ったDennis Wedin氏と合流し、〈Dennaton Games〉を設立。パブリッシャーにDevolver Digitalを据えて、満を持しての商業デビューを飾ったのです。

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■現代に蘇った暴力ゲーム

 そんな経緯から生まれた『Hotline Miami』は、これまでの下積みの厚さを感じさせるすばらしい出来栄えです。とくに過去作で多々見られた極彩色のエフェクトと偏執的な作風が、「80年代風サイコスリラー」というコンセプトに結実しており、その明快さが全体の完成度の高さにつながっていると言えます。今回はそれをさらに暴力表現、ゲームプレイ、物語の3点に噛み砕いて見ていきましょう。

 ゲームのタイプとしては8ビット・スタイルの見下ろし型のアクション・ゲームで、ひたすら敵を倒していくだけのシンプルなもの。この部分だけ抜き出して見れば、凡百のレトロ調インディーズ・ゲームと大差ありません。しかしながら血出まくり・惨すぎ・殺しまくりな猛烈なヴァイオレンス表現は近年見ない異質なもので、さらに眩いネオンやゆらゆら揺れるエフェクト、それにハイテンションな音楽が加わると、その体験はまさにサイコ或いはドラッギーという形容詞で言い表す以外にない強烈なものとなります。

ゲーム序盤の様子。ハイスピードで展開されるゲームに血とネオンと音の洪水。

 このような作風を見て真っ先に思い出すのが、かつて〈Rockstar Games〉が開発した『Grand Theft Auto: Vice City』か、あるいは『Manhunt』という作品。とくにタイトルからして物騒な『Manhunt』はスナッフ・フィルムの都市伝説をゲーム化した作品で、残虐な方法で敵を殺せば殺すほど高得点が得られるという狂った内容。シチュエーションから映像表現、ゲーム性まで『Hotline Miami』が影響を受けていることは明らかです。


『Manhunt』より。いままさに人を狩らんとするところ。ここから先はグロ過ぎるのでお見せできません!

 少し話が逸れますが、この手の作品は暴力ゲームと呼ばれ、ひと昔前までは少数ながらつねに存在していたジャンルです。しかし発売されるたびに世界各国で発禁処分になったり、ゲームは犯罪を助長する云々の論争の槍玉に挙げられたりと、なにかと物議をかもすジャンルでもありました。

 ここにはゲーム表現の限界や、超えてはならない倫理の壁といった命題がつねにあり、単なる愉快犯的な作品もあれば(大半はそれなんだけど)問題提起的な側面を備えた作品も存在して、独特の熱さがあったのです。ただ近年はそういった従来の事情とは別に、元々のニッチさが開発規模の巨大化の割に合わなくなってきたという商売上の問題から、廃れてきてしまっているように思えます。

 〈Rockstar〉もいまでこそ落ち着いた感がありますが、かつては『Manhunt』にしろ『Grand Theft Auto IV』以前の同シリーズにしろ、容赦ないセクシャル&ヴァイオレンス表現の常習犯だったのです。ただ〈Rockstar〉の場合はそんな暴力表現のなかに、いまの作風にも見られるセンスの良さが共存していて、それが独特の魅力やブランド性をかたち作っていました。

 『Hotline Miami』はそんな途絶えつつある文脈の上に立っている作品です。パッと見こそ荒削りの8ビット調ですが、それでも過剰な暴力は確かに表現されており、むしろ見た目の抽象性があらぬ想像力を掻き立てさえします。そして数々のエフェクトと音楽、80年代風で妙にハイ・テンションな雰囲気が織り成すインモラルなクールさは、まさにかつての〈Rockstar〉を引き継いでいると言えましょう。

■目くるめく殺しのルーティン・ワーク

 暴力ゲームと呼ばれるものは、実際のところそのセンセーショナルさに頼ってゲーム性をおざなりにしてしまったり、暴力表現の必然性の証明、ゲーム・プレイとの一致という部分で問題を抱えることが多いです。しかし『Hotline Miami』はその命題に、たしかな完成度と巧妙なトリックで応えています。

 本作のゲーム・ルールについて改めて説明すると、これは建物内にいる敵を倒していくアクション・ゲームで、プレイヤーは敵の落とした近接武器や銃器をとっかえひっかえしながら殲滅を目指します。具体的な様子は前項の映像にあるとおりで、幕間の日常シーンを含めても1ステージ3分に満たない、非常にハイ・スピードでインスタントなゲーム性が特徴です。

 ただしそれはノー・ミスでクリアできればの話であって、よっぽど慣れた人でもないかぎり、まずゲーム・オーヴァーになりまくります。なにせ敵の攻撃はすべて一撃死。反応もはやいし、複数人固まっているのが普通なので、何も考えずに突っ込めば間違いなく死ぬし、考えてもやっぱり死ぬ。


殺っては殺られてまた殺って・・・

 なので、プレイヤーは幾度となくゲーム・オーヴァーになりながら敵の配置を覚え、パターンを構築してクリアを目指すことになります。こういうゲームを一般的には”覚えゲー”と言いますが、クリア時の達成感とゲーム・オーヴァーの連続によるストレスとのさじ加減が難しいゲーム・システムでもあります。

 しかし本作はチェック・ポイントの感覚が絶妙で、且つやられても本当に一瞬、0.5秒ぐらいでやり直せるのがうまいストレス緩和になっていますね。敵を倒すのが爽快なのも、リトライのモチヴェーションになってくる。

 また敵を倒すというシンプルな目的ながら、発見されずに近づくというステルス要素もあれば、見つかった後どう捌くかというアクション要素もあり、そのアクションも近接武器を使うか銃器を使うかで事情はまったく変わってきます。そして何よりこれらがハイ・スピードなゲーム・プレイのなかで渾然一体となっているのがとてもおもしろい。

 ステルスとアクションのハイブリット作品というのはいまではなんら珍しいものではありません。ただ僕がいままで遊んできた作品はどれも、敵に見つかるまではステルス、見つかった後はずっとアクションという具合に、両者の境界とゲーム・プレイの差異は明確に線引きされていました。

 しかし『Hotline Miami』にはそのゲーム・プレイがシフトする境界というものがありません。と言うよりも目まぐるしく変わりまくる。映像を見ていただくとわかりますが、敵への接近から攻撃までが本当に一瞬の出来ごとで、ステルスしている1秒後には殴り合いになり得るし、さらにその1秒後には倒した敵の銃を奪って遠方の敵を狙い撃っていることも普通にあるのです。これらが継ぎ目なくシームレス移行しつづけていくゲームというものは、いままでにない体験でした。

 当然、操作中はなかなかの忙しさになるので、パターン化が重要になってきます。敵を殺しまくっては殺されて、より最適なパターンを導き出すため、さらに殺して殺されまくる。殺されまくってイライラが募ろうとも、それさえも糧にして再び挑む。それだけの中毒性が本作にはあるのです。

 そしてこの何度もリトライをする、せざるを得ないゲーム・メカニックが、じつは本作の物語、ひいては暴力表現の正当化につながる巧妙なトリックにもなっているのです。

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■『Hotline Miami』はプレイヤーを道づれにする

 なぜ何度繰り返してでも殺しをつづけるのか、その果てに何を求めているのか、またなぜ何度も繰り返すことができるのか。これが『Hotline Miami』の物語における、重要なテーマになっています。

 本作の物語開始時の設定は、ガール・フレンドを殺された主人公が復讐のため留守番電話の謎のメッセージに従いながら、暗黒街の殲滅を行っていくというもの。しかし程なくして殺されたというガール・フレンドとの出会いの場面が出てきて(上記プレイ動画の後半)設定に矛盾を感じさせたり、中盤以降は日常パートで頻繁に幻覚が出てくるなど混迷の色を濃くしていきます。


ステージ前後に挟まれる日常パートはストーリーを読み解く重要な場面だ

 その末にどのような結末をたどるのかは、ネタバレになるのでここでは書くことはできません。しかしたしかに言えることは、主人公が終始抱いていた復讐願望に、何度リトライしてでもクリアしたいプレイヤーの願望が重ね合わせられている節があるということですね。

 要はプレイヤーは主人公の共犯者に仕立て上げらてしまうわけです。本作は主人公のことを最終的に哀れで空虚な存在として描いている。それはつまり、クリアを妄執するプレイヤーのことをも同様に断罪しているのです。否定しようにも、何度もリトライを重ね、その度に暴力が振るわれることを是認し、その末にクリアしたという事実が言い逃れを許さない。お前もこの主人公と同じ、妄執に生きる哀れな存在だ、このゲームの暴力に意味があろうがなかろうが、ここまでクリアした時点でお前に意見する資格はないんだ! という具合です。

 容赦なくプレイヤーの努力を踏みにじるこの結末は、かつての『BioShock』でAndrew Ryanに対峙する場面、あるいはもっと古い作品なら『たけしの挑戦状』でクリア後に「こんなげーむにまじになっちゃってどうするの」と言われることに匹敵するメタな手のひら返しと言えましょう。

 それでも、いやそれだからこそ、僕はこの作品の物語が好きなんです。プレイヤー自身を当事者として巻き込んでしまうこと。これはゲームでしか成立しないストーリー・テリングのひとつです。それも丁寧なお膳立てをしてプレイヤーに能動的に没入させるのではなく、プレイヤーの無意識に働きかけて気づいたときには取り込まれてしまっていた、という状況を作る。これは相当至難の技のはず。僕も本作の仕掛けに気づいたときには、これは一本取られたと、痛快な気分になりました。

■まとめ

 傑作です。恐らく暴力表現とゲーム・プレイがひとつでもわずかに欠けていたら、本作の物語は成立しなかったことでしょう。それは他ふたつの要素を個々に見ていった場合でも同じです。暴力表現、ゲーム・プレイ、物語の3本柱がそれぞれを絶妙に補完し合い、それが”80年代風サイコスリラー”としての総体を抜群の完成度でかたち作っています。

 いまさらですが唯一欠点らしきものを挙げれば、ステージ・クリア後に手に入るマスクや武器の性能がイマイチ差別化できていないことが挙げられますが、そんなの些細な枝葉の要素に過ぎません。根幹のデザインが非常に優れているため、小技に頼らなくても十分すぎるほどおもしろい。この点は小技に頼りすぎで根幹が空っぽな最近のメジャー・ゲームはぜひ見習ってほしいところ。

 過激な表現の数々から、人をものすごく選ぶ作品なのは否定できませんが、最近の主流のゲームにはないアナーキーさを求めている人、または単純に完成度の高いゲームを求めている人に強くお薦め。このレヴューでひとりでも多くの人に興味を持っていただければ幸いです。



Chart JET SET 2012.11.27 - ele-king

Chart


1

三田格 / 野田努 - Techno Definitive 1963-2013 (P-vine)
およそ全250 ページ・カラー、テクノの名盤600枚以上のアートワークを掲載。各年代毎、最重要アルバムと最重要シングルを選びながら、エレクトロニック・ミュージックの歴史も読み取れます。

2

Atoms For Peace - Default (Xl)
Modeselektor率いる50weaponsからのデビュー12"は数分で完売。1st.アルバム『Amok』から、最前線Ukベースを消化した話題沸騰トラックが先行カットされました!!

3

Ame - Erkki (Rush Hour)
Kristian Beyer & Frank Wiedemannからなる"Innervisions"お馴染みの才人デュオAmeによる新作12"。"Running Back"主宰のGerd Jansonが監修したコンピ・アルバム『Music For Autobahns』の冒頭を飾る話題作が先行12"カットにて限定リリース!!

4

Juk Juk - When I Feel / Wars (Nommos)
Four Tetに見出され、主宰レーベルTextからデビューを飾った謎の新鋭Juk Juk。過去2作も爆裂ヒットした自主レーベルNommosからの第3弾12"が遂に登場しました!!

5

Poolside - Harvest Moon / When Am I Going To Make A Living (Poolside Music)
A面は『Pacific Standard Time』収録のNeil Young大傑作カヴァー。そしてB面はネット上で大人気を博していたSade名曲のメロウ・ディスコ・リエディット!!

6

Letherette - Featurette (Ninja Tune)
ご存じFloating Points率いるEgloのオフシュートHo_tepからデビューを飾ったUkベース・ディスコ人気デュオLetheretteが名門Ninja Tuneへと電撃移籍して放つハウスDjも直撃の1枚です!!

7

Slugabed - Wake Up (Ninja Tune)
お馴染みNinjaの天才Slugabed。名曲"Sex"を収めたアルバム『Time Team』に続いて、淡雪の如く舞う美麗シンセをまとったフィメール・ヴォーカル・ベース・ポップ歴史的傑作を完成です!!

8

Auntie Flo - Rituals (Mule Musiq)
チリアン・ミニマル新鋭Alejandro Pazのリリースでも注目を集めるHuntleys & Palmersの代表格Auntie Flo。傑作1st.『Future Rhythm Machine』に続く新作がなんとMule Musiqから登場です!!

9

Luciano - Rise Of Angels (Cadenza)
Mirko Loko Remixを収録、世界各地のフロアを盛り上げた"Rise Of Angels"が遂にシングル化!!

10

Miracles Club - U & Me / Ocean Song (Cutters)
エクスペリメンタル通過後のインディ・シンセ・ハウスの先駆者、Miracles Club。通算4枚目、Cut Copy主宰Cuttersからは2枚目となる12インチ!!

ICHI-LOW (Caribbean Dandy) - ele-king

偶数月第二月曜@The ROOM、奇数月第四火曜@虎子食堂等々のレギュラーでCaribbean Dandyはプレイ中。その他個人活動はTwitterの@ICHILOWをチェックしてください。

X'mas間近で毎年ヘビロテのアルバムの中からベスト10


1
JOHN HOLT - Happy Xmas (War Is Over) - Trojan

2
JOHN HOLT - Last Christmas - Trojan

3
JOHN HOLT - A Spaceman Came Travelling - Trojan

4
JOHN HOLT - Santa Clause Is Coming To Town - Trojan

5
JOHN HOLT - White Christmas - Trojan

6
JOHN HOLT - Blue Christmas - Trojan

7
JOHN HOLT - I Believe In Father Christmas - Trojan

8
JOHN HOLT - Auld Lang Syne - Trojan

9
JOHN HOLT - Lonely This Christmas - Trojan

10
JOHN HOLT - My Oh My - Trojan

Bat for Lashes - ele-king

 全裸のナターシャ・カーンが、生気のない全裸の青年を抱えて立っている。
 それは例えばお姫様抱っこの男女転換版みたいなよくあるフェミニズム的構図ではなく、だらり。と肩から提げているのである。
 青年は、33歳の彼女よりかなり若く見える。ということは、交際していた年下の男を殺して、その死体をこれから埋めに行くところなのだろうか? それとも、自分が若い頃に恋に落ち、別れてしまった男のことを、三十路になったいまでも心情的に引きずって生きているということのメタファーなのだろうか?

     *************

 「このアルバムでもっともブリリアントなのはジャケットだ」
 英国にはそういう趣旨のレヴューを書いたメディアもあった。
 まったくこの国の批評というやつには慈悲もへったくれもありゃしない。と思うが、ブライトンで保育士をしていたナターシャには、個人的に思うところもある(という情が入って来るあたり、わたしは生粋の日本人だが)。それに、本国での彼女のポジショニングを考えれば、もうちょっと日本で認知されても良いお嬢さんではないかと思う。
 デヴェンドラ・バンハートやトム・ヨークを魅了し、ビョークに「ブリリアント」と言われ、ベックともコラボ済み。というブライトン在住のナターシャ・カーンことBat For Lashesのサード・アルバムは、良い意味でも悪い意味でも洗練されている。「ビョークっぽい」と言われることの多いお譲さんだが、アーバン・エレクトロ・ヒッピーみたいだった1作目や2作目に比べると、今回のアルバムはぐっと方向性が絞られてエレガントになり、ケイト・ブッシュに接近している。"Laura"などはエキセントリックなファルセットでケイトに歌わせたくなるし、"All Your Gold"や"Oh Year"を聴いていると、これは21世紀版『魔物語』なのか。と思う。ケイト・ブッシュが1979年生まれだったらこんな曲を書いていただろうと思うほど、どの楽曲もビューティフルで才気に溢れているのだ。

 「彼女のアルバムは、ビョーク、ケイト・ブッシュ、PJハーヴェイなどの女性アーティストを髣髴とさせ、その事実が最大の弱点にもなっている」と書いたのはBBCのサイトのミュージック欄のレヴューだ。
 我が祖国で彼女の知名度が低いのも、この二番煎じ感が災いしているのかも知れない。二番煎じであるならば、同時代に同じ場所で生きているという連帯感を持つことのできない海外の人びとは、オリジナルの方を聴く。時代のギャップと、地理的・社会的ギャップは、距離感であることには変わりないからだ。

     *************

 ナターシャ・カーンはパキスタン人の父親と英国人の母親の間に生まれた雑種ブリティッシュだ。
 「世界に何か新しいものが生まれるとすれば、それはハイブリッドだ」と言った我が祖国の文人、坂口安吾の提言の通り、英国の大衆音楽がネタ切れすることなく新たな「何か」を生み続ける理由は、この国が単一民族の国ではないからだと思う。
 とは言え、混血化が進む国では、その反動としての人種差別が活発化するのも必然のプロセスであり、ナターシャも十代の頃に「ファッキン・パキ」といじめられ、それが原因でヴァイオレントになって問題児になった時期もあったらしい。そんなバックグラウンドを持つ彼女が、ケイト・ブッシュのような真っ白なサウンドを志向しているという事実は、わたしにとっては全裸のジャケット写真よりよほど衝撃的だ。
 「主流と迎合するのは嫌」と言う彼女の音楽に、彼女自身の中に半分流れている(この国における)少数民族の血の匂いが全く感じられないのは何故なのか。
 やはり雑種である子を持つ親として、この辺はなかなかディープなサブジェクトである。

 裸のナターシャがだらりと肩から提げて立っているのは、本当は死んだ男ではなく、彼女が11歳のときに去って行ったという父親から受け継いだムスリム民族の血なのではないか。
 彼女の肩で生気を失っているのは、ロマンスの相手としての男ではなく、抹殺しようとして抹殺することのできない父方の血の呪縛ではないだろうか。

「夕べは眠れなかった 
あなたのことを忘れようとしたから
老いた男と海が歌っているのが聞こえた
銀色の感触 彼女は泣く 
忘れはしない 消えたわけでも 死んだわけでもない」
"The Haunted Man"

 彼女が前述の女性アーティストたちを超えるのは、彼女がこの亡霊を肩から下ろし、ハグを交わして一緒に踊りはじめるときだろう。そのときこそ、ナターシャは堂々と自らの個性を打ち出し、雑種ブリティッシュ・ミュージックを代表するレジェンドになる。
 そこに到達するまでの、並外れた才能を持つ女性の道程を示しているという点で、彼女のアルバムは1枚1枚がプレシャスな里程標である。

Alex from Tokyo - ele-king

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twitter: @alexfromtokyo

Alex from Tokyo timewarp ele-king chart 11/2012


1
Brawther-Sexy thing remix (My Love Is Underground) from paris underground trax vol.1

2
Deetron featuring Hercules & Love Affair - Crave (Music Man)

3
Land Of Light-Land of Light (ENESP) LP

4
Free Disco featuring Naive Sound Boogie Band-Ghost Boogie 1977 (curved)

5
Dj Kaos-Crosswindlanding (Jolly jams)

6
Henrik Schwarz-Take words in return (Watergate)

7
Jeff Mills-Sequence (Axis records) COMPILATION

8
Brisa-Stay Gold (aubele)

9
L.U.P.O.-Hell or Heaven (Gigolo records)

10
坂本慎太郎-死者より From the dead (zelone records)

DJ mew (恥骨粉砕) - ele-king

2012.12.15 恥骨粉砕@Star Pine's Cafe!!!!!
久々やります!皆様どうぞよろしくお願いします!
more info https://chikotsu-funsai.tumblr.com/
blog https://djmew.exblog.jp/

今秋のベストヒット 2012.11.07


1
Laid Back - Cosyland - Brother Music

2
Traxman - Itz Crack - PLANET MU

3
LV feat. Ruffest - Ultando Lwaka - Hyperdub

4
Junip - Howl - MUTE

5
blur - She's So High - EMI / PARLOPHONE

6
Jon Hassel - Toucan Ocean - Lovely Music

7
Coldplay - High Speed - EMI

8
DJ Krush - 蒼い雨 - Es.U.Es Corporation

9
Nick Cave & The Bad Seeds - Red Right Hand - Mute Records

10
DJ Rashad - Kush Ain't Loud - Lit City Trax

Chart JET SET 2012.11.12 - ele-king

Chart


1

Visitors - Night Fever - Idjut Boys Rmx (Disques Sinthomme)
Dj Harvey, David Mancuso, Prins Thomasら大御所が挙ってプレイ中!!姉妹レーベル"Ghost Town"と共に注目が集る"Disques Sinthomme"からの最新作。未だ謎多きユニットVisitorsによるリリース第二弾。Idjut Boysによるリミックスを収録した注目の一作が遂に解禁!!

2

Lusty Zanzibar - Empress Wu Hu Ep (Glenview)
Nangや"Bear Funk"といったニューディスコ・レーベルからのリリースで知られるUkプロデューサーAlex Cordiner A.k.a. Lusty Zanzibarが"Glenview"初参戦。収録4作品漏れなくお薦めです!!

3

Fudge Fingas - Untytled Ep (Firecracker)
エジンバラのプロデューサー/キーボードディストFudge Fingasによるオリジナルトラックと、レーベル・オーナーLinkwoodによる作品をリミックスした作品をコンパイルした大注目Ep作品!

4

Aeroplane Feat. Jamie Principle - In Her Eyes (Aeropop)
ベルギー名門"Eskimo"を拠点に素晴しいリリースを繰り広げてきたAeroplaneによる最新作。ヴォーカルにシカゴ・レジェンドJamie Principle、リミキサーにはTiger & WoodsとChopstick & Johnjon (Suol)の人気アクト2組を抜擢。ニューディスコ・ファン必聴の一枚が遂に解禁です!!

5

Falty Dl - Straight & Arrow (Ninja Tune)
ご存じNinja Tune/Planet Muが誇るNy在住の美麗Ukベース人気者Falty Dlがジャズ薫るコードワークを散りばめて完成させた、Swindle越えアーバン・ベース名曲がこちら。素敵過ぎます!!

6

Darkstar - Timeaway (Warp)
Hyperdubからの'10年作『North』が超ロングセラーとなった大人気トリオがWarpから挨拶代りにお届けする極上美麗なポスト・ダブステップ・ポップ名曲です!!

7

Kidkanevil & Daisuke Tanabe - Kidsuke (Project Mooncircle)
ご存じNinja Tuneが誇るバンドStatelessのトラックメイカーKidkanevilと、Mike Gaoとのスプリット盤も爆裂ヒットしたDaisuke Tanabeによる電撃コラボ・アルバムが登場しました!!

8

Amen Brother Disco Band - Volume 1 (Amen Brother)
まるでIncredible Bongo Bandなパーカッシヴ&ブレイキン・ファンク!!アイルランドから大注目ファンク~ディスコ・バンドが登場です!!

9

Ital - Dream Pn (Planet Mu)
もはや説明不要のインディ・シンセ・ダンス最重要アクト。Daniel Martin-Mccormickによるソロ・ユニットの2枚目のアルバム!!前作同様Planet Muからのリリースです!!

10

Azymuth - Avenida Das Mangeurias / Partido Alto (Far Out)
今も高い人気を誇る孤高のブラジリアン・フュージョン・バンド、Azymuthの1979年作『Light As A Feather』収録の2曲を、Theo ParrishとLtj Xperienceがリミックス!!
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