「ZE」と一致するもの

Flashback 2009 - ele-king

写真左:旅人&やけのはら。七尾旅人は年明け早々の1月9日に恵比寿リキッドルームでライヴあり。
写真右:モーリッツ・フォン・オズワルド・トリオ。こちらは七尾の前日の1月8日に恵比寿リキッドルームでの来日ライヴが決まっている。

  整合性というのはつねづね僕のテーマのひとつである。が、気が変わるのは人間の性分であるし、だいたい雑誌というのはせっかちだ。2009年のベストを選ぶのに、早いところでは11月前半にその締め切りを言い渡される。12月初旬に売られるからだ。だから下手したら最後の2ヶ月はその年から除外されることになる。2ヶ月もあれば、人間、恋に落ちることもあるだろうし、死にたくなることだってある。運命を変えるには充分な時間だ。こういうとき、webは良い。本当に年末になって、それを書くことができるのだから。

 2009年は自分にとって、僕の長いようで短い人生の平均値を基準に考えた場合、ずば抜けて最低レヴェルの経験をするという忘れがたい年となった。非常ベルは鳴りだし、事態は臨界点に達した。デヴィッド・クローネンバーグの映画に放り出され、未知の絶望を感じするほか術がなかった。事態が信じられなかった......なんて惨めな! ときに自虐的で、まるで『地獄の季節』の最初の10ページのような呪いに満ちた茫洋たる暗黒大陸においても、僕にとって幸いだったのは、信じるに値する友人知人が何人もいたことだった。ありがたいことだ。

 いまこれを書きながら、僕はイギリスのプロト・パンク・バンドとして知られるザ・デヴィアンツのリーダーであり、『NME』の名物ライターでもあったミック・ファレンの著書『アナキストに煙草を』を読んでいる。ちなみにこの素晴らしい本を、こともあろうかこのご時世に刊行している「メディア総合研究所」は、他にもここ数年、『アメリカン・ハードコア』や『ブラック・メタルの血塗られた歴史』といったとんでもなく喜ばしい本を出している。このように、政権が代わっても思ったよりアッパーにはならない世のなかにおいて、貴重な光を届けてくれている稀な出版社だ。で、そう、60年代のカウンター・カルチャーから70年代のパンクにいたるまでの現場感覚に満ちたその『アナキストに煙草を』読みながら、僕はどこの国においてもいつでも同じことは同じなのだなと確認したことがある。そのひとつ、60年代の回想の下りだ。「特筆すべきは、我々全員の頭の中を独占していたひとつのこと、すなわち自分の人生がこれからどうなっていくのか、何が起こるのか、そういう類のことはほとんど話題に上がらなかったことである。地球の未来について語ることはあったかもしれないが、自分個人の未来について話すことはめったになかった。この点において我々は、十年以上経って出現するパンクと似ていた」(赤川夕起子訳)

 まったく......僕のまわりにいる連中はたいがいそうだ。個人の人生の未来など、考えていないわけではないだろうが、まず語らない。それがゆえに勝ち負け社会の確固たる敗者として生きているのかもしれない。我々は結局のところ「政治理論などほとんどどうでもよかった。それが我々の魅力であり同時に没落した原因」(前掲同)だった。

 しかし......、ところが僕はこの夏、自分の将来――といっても半年後だが――についていろいろ考えた。せこい未来だけれど、事態は思ったより深刻だった。さすがに考えざる得なかった。ど、ど、ど、どうしようか? と妻に訊いた。し、し、静岡に帰ろうかな? 僕は焼き鳥を焼いている自分を想像した。臆病な僕はしばらく妻の顔を直視できなかった。が、妻は、考えてみれば僕のようなデタラメな人間と結婚するくらいであるから、それなりの覚悟はできていたのかもしれない。まあ、そんなわけで、ずーっと家にいるようになって肩身の狭い思いをすることはなかったけれど、とりあえずできる仕事はぜんぶした。5歳の息子は「なんで仕事いかないの?」と訊いたが、「これが仕事だ」と言った。

 河出書房新社の阿部さんのおかげで1冊の本を作ることもできた。三田格、松村正人、磯部凉、二木信というひと癖もふた癖もあるライターと一緒に作った『ゼロ年代の音楽――壊れた十年』という本だ。「壊れているのはお前だろ!」と言われそうだが、それはまったくその通りで、しかしそうした個人の属性とはまた別の次元で、我々はこのゼロ年代の音楽ついて語り、書いた。150枚のアルバムも丁寧に紹介した。僕は編集者としてバランスを整えようと努めたが、結局はいくぶん偏ってしまった。それは二木信がネプチューンズやミッシー・エリオット他3枚のレヴューを辞退したからではなく、まあ著者全員が偏執的といえばそうだし、言い訳すればそもそも時代がそういう時代である(断片化されている)、と僕はその本のなかで解説した。欠点もあるが、それを補うほどの長所もある本が完成した(1月末に刊行します!)。

 つまりそんな事情もあって、僕は12月のある時間を集中的に、ゼロ年代というディケイドについて頭を使い、スケジュール管理に神経をすり減らしていたので、クリスマスのこの時期、正直言えば2009年という1年についていまさら強い気持ちがあるわけではない。たしかに2ヶ月前まではあった。が、いまはもう薄れてしまったのだ。

 僕は11月上旬に『EYESCREAM』誌でまずそれをやって、半ば過ぎに『CROSSBEAT』誌でアンケートに答え、続いて『SNOOZER』誌の特集に参加した。ところがこの2ヶ月は年末ということもあってやけにバタバタしていた。清水エスパルスは悪夢の5連敗を喫して、坂道をゴロゴロ転がった。僕はそれにいちいち打ちひしがれている暇もなく、原稿を書いて書きまくって、そして音楽を聴いていた。

 10月30日にユニットでiLLのライヴを見終わった後そのままクワトロで湯浅湾のライヴに行って、11月に入って2本のトークショーをこなし、静岡でDJ(もどき)をやって、七尾旅人のライヴに行って、新宿タワーレコードでXXXレジデンツの発売記念トークショーを宇川直宏とやった。12月は〈ギャラリー〉に踊りに行って、中原昌也のライヴに行って、で、その数週間後に毛利嘉孝の司会で中原昌也と東京芸大で話した。そしてそれから......久しぶりに"締め切り"という名の絶対的概念に苦しめられた。もちろんこの2ヶ月、僕はこの「ele-king」に情熱を注ぎつつ、と同時に、いま平行して作っているアーサー・ラッセルの伝記本の編集もしている(これがまた面白いのよ)。ここに記したすべてが僕にとって刺激的で、思考の契機となる。

 そしてこの数ヶ月というもの、僕は自分でも信じられない量の音楽を聴いている。まだ文字にしていないものを含めると自分の限界まで挑戦したと言っていい。寝ている時間と人と会っている時間以外は、ほとんど聴いていた。僕の長いようで短い人生の平均値を基準に考えた場合、ずば抜けて最高レヴェルの密度だろう。もうそうなると、2009年を回想することなど、ホントにどうでもよくなってくる。

 せっかくなので、いくつか気になったことを書き留めておく。2009年の最高の曲のひとつは七尾旅人+やけのはらによる"Rollin' Rollin'"だ。奇しくも、東京NO1ソウルセットとハルカリが90年代のバブルな感覚を懐かしむように"今夜はブギーバック"をカヴァーするかたわらで、"Rollin' Rollin'"は"現在"を表現した。この曲の良さは水越真紀さんがレヴューで書いている通りだと思う。つまりこれは、この10年、バブルな思いとは無縁だった世代の素晴らしい経験が凝縮されたアーバン・ソウルだ。

 RUMIの3枚目の『HELL ME NATION 』もこの2ヶ月で好きになったアルバムだ。彼女は、このハードタイム(厳しい時代)を生きる女性のひとりとしてのリアリズムを追求する。30歳という自分の年齢まで歌詞にしながら、彼女の意気揚々とした姿はこの国の女性アーティストたちが手を付けてこなかった領域に踏み入れているように思える。とても元気づけられる作品だ。もしクレームを入れるとしたらジャケのアートワークだけ。それ以外はほぼパーフェクトだ。ラップものでは、他にも何枚か素晴らしいアルバムに出会えた。『EYESCREAM』にも書いたが、S.L.A.C.K.は最高だ。言葉も音も良い。そこには不良少年の毒と清々しさの両方がある。2009年に彼は発表した2枚、『MY SPACE』と『WHALABOUT』はどちらとも良い作品だ。出勤や登校で異様なテンションを発する朝の駅に、遊び疲れた身体を引きずりながら友だちや恋人と一緒にいた経験がある人ならこの音楽を身近に感じるだろう。疎外者たちのメランコリアだ。ファンキーという点ではTONO SAPIENSが良かった。嗅覚の鋭い連中が集まる下高井戸のトラスムンドやSFPの今里君、あるいは磯部涼が絶賛するSTICKYはまだ聴いていない。

 SFPも、4曲だが新録を発表した。リリース元の〈Felicity〉は、もともとはポリスターでフリッパーズ・ギターやコーネリアス、〈トラットリア〉をやっていた櫻木景という人物だ。例の「Rollin' Rollin'」も〈Felicity〉からのリリースで、いわば90年代前半の渋谷系に思い切り関与していた人間がいまこうして七尾旅人やSFPを出しているところが"いまの時代"を物語っていると言えよう。

 とまれ。僕は、いまこの日本にはふたりの強力なパンクがいることを知っている。真の意味での反逆者と言ってもいいし、彼らはこの国の"自由"の境界線を探り当てているという点においてパンクなのだ。そのひとりは中原昌也。彼はいわば、映画『If...』のマイケル・マクドウェルで、グレアム・グリーンが『ブライトン・ロック』で描いた17歳のピンキーだ。いずれ校舎の屋根に上って散弾銃をぶっ放すかもしれない。そしてもうひとりがSFPの今里。SFPの「Cut Your Throut」は興味深い作品で、ここがイギリスなら〈リフレックス〉や〈プラネット・ミュー〉から出ていてもおかしくない。SFPのハードコアは、いまとなっては誰もが思い描けるようなハードコア・サウンドで統一されていない。ポスト・モダン的にスキゾフレニックに展開されている。「Cut Your Throut」にはラウンジとサイケデリックとノイズコアが同居しているが、そういう意味でSFPはこのシングルで新しい領域に踏み入れたと言える。当たり前だがハードコアやパンクとは様式(スタイル)ではない。サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』もまたハードコアであるように。

 電気グルーヴが彼らの20周年を祝うアルバムを発表したのも2009年だった。これを書いているたったいま(12月25日)も、僕の5歳になる息子は電気グルーヴの「ガリガリ君」を聴いている。僕が奨励したわけではない。能動的に、しかも繰り返し何度もだ。「2番がちょっと恐いんだよね」と感想を言っている。ちなみに「2番」とはオリジナルの次に入っている別ヴァージョンのこと。まあ、電気グルーヴにしてもクラフトワークにしても、何が素晴らしいかと言えば、あの罪深きトランス性によって3歳児から40歳児までをも興奮させるところだ。この年代になってわかることだが、それはエレクトロニック・ミュージックの"強み"のひとつだ。石野卓球からは、90年代に彼が体現した危うさはなくなってしまったけれど(誰も彼を責められない、あのまま突っ走っしることなんか誰にもできない)、彼の芸は円熟の領域に入ろうとしている。『20』を聴きながら、僕はそう思った。

 2010年にはマッシヴ・アタックの5枚目のオリジナル・アルバムが待っている。ヴァンパイア・ウィークエンドのセカンドも控えている。自分たちがいまどの方向性を選べばいいのか理解しているという意味において、どちらも良い内容だった。時代の空気は変わろうとしている。日本の音楽も面白い方向に転がっていくかもしれない。

 

■Top 25 Albums of 2009 by Noda

1. Atlas Sound / Logos(Kranky/Hostess)
アニコレがビーチ・ボーイズならこちらはビートルズ。毒の詰まったポップ。
2. S.L.A.C.K. / Whalabout(Dogear Records)
21世紀の薬草学におけるビートと日常生活のささやかな夢。
3. Girls / Album(Fantasy Traschcan/Yoshimoto R and C)
素晴らしきバック・トゥ・ベーシック。ここにも夢と星がある。
4. Volcano Choir / Unmap(Jagjaguwar/Contrarede)
ポスト・ロック時代の山小屋のロバート・ワイヤットといった感じ。
5. Major Lazer/Guns Don't Kill People...Lazers Do(V2 /Hostess)
ダンスホールにおけるスラップスティック。
6. Animal Collective / Merriweather Post Pavilion(Domino/ Hostess)
サイケデリック・ポップとエレクトロニカの華麗な融合。
7. The XX / XX(Young Turks/Hostess)
アリーヤとヤング・マーブル・ジャイアンツとの出会い。
8. V.A. / 5 Years Of Hyperdub(Hyperdub/Ultra Vibe)
アンダーグラウンド・サウンドにおける最高のショーケース。
9. Mortz Voon Oswald Trio / Vertical Ascent(Honest Jon/P-Vine)
『ゼロ・セット』から26年。1曲目を聴くだけで充分。
10. Grizzly Bear / Veckatimest(Warp /Beat)
ポール・サイモンが『キッドA』をやった感じ。"Two Weeks"は最高。
11. Micachu / Jewellery(Accidental / Warnner Music Japan)
批評精神に満ちたポスト・モダン・ポップのレフトフィールド。
12. Flying Lotus / L.A. EP CD(Warp/Beat)
レフトフィールド・サウンドにおける期待の星。
13. Rumi / Hell Me Nation(Pop Group)
リアリズムと世俗的だが素晴らしいファンクネス。
14. Bibio /Ambivalence Avenue(Warp/Beat)
エクスペリメンタル・ヒップホップの甘い叙情詩。
15 鎮座DOPENESS / 100% RAP(W+K東京LAB /EMI)
植木等とラップとダンスホールの出会い。
16. Moody /Anotha Black Sunday(KDJ)
アンダーグラウンド・ブラック・ジャズ・ファンク・ハウスの底力。
17. Dominic Martin / The Annual Collection(BeatFreak Recordings)
ジャングルの知性派によるエレクトロニカ・ポップ。
18. Toddla T/Skanky Skanky(1965)
モンティ・パイソンによるダンスホールといった感じ。
19. Speech Debelle / Speech Theory(Big Dada/ Beat)
取材してがっかりしたが、良いアルバムだと思う。
20. Fuck Buttons / Tarot Sport(ATP/Hostess)
スタイリッシュかつダンサブルに変貌。次作で化けるでしょう。
21. Dirty Projectors / Bitte Orca(Domino / Hostess)
NYのアート・ロックのお手本のような1枚。
22. Antony and the Johnsons / The Crying Light
(Secretly Canadian / P-Vine)
現代のディープ・ソウル。EPのみの"Crazy In Love"も最高。
23. 2562 / Umbalance(Tectonic /AWDR/LR2 )
ダブステップにおけるフューチャー・ファンク。
24. Juan Maclean / The Future Will Come(DAF / P-Vine)
ヒューマン・リーグ・リヴァイヴァルを象徴する作品。
25. Beak> / Beak (Invada /Hostess)
ポーティスヘッドによるクラウトロック賛歌。

Flashback 2009 - ele-king

the techno of the year! ルシアーノ。

 いよいよゼロ年代も終わろうとしてる。あっという間すぎて、とりとめがなさすぎて、消化しきれてないこの10年。その様相をギュッと凝縮したようにまったくもってカオスで行く末もなにも不明瞭だった今年。いろいろ話していく中で"テクノはNGワード"というショッキングなトピックすら出てきたが、こうなったら行くとこまで行ってしまえという思いも湧いてきたのだった。

 そもそも40すぎのおっさん一個人が体験できることなんてたかが知れてるし、「それで総括なんてちょっとおこがましいだろ」わたしの中のガイアがそう囁く。実は去年も某ではなく亡R誌の総括企画でいろいろ違う立場、違う世代のひとたちと語らって結構収穫があったのを思い出し、さっそく身近で現場にいちばん近いひとたちに声をかけた。ひとりは〈ageHa〉で積極的に旬のアーティストを招聘し、日本のDJたちもバシバシ登用してるパーティ〈CRASH〉のオーガナイザーの荒木くん、もうひとりは貴重なアナログを試聴して買える店舗として渋谷でがんばっている〈Technique〉のテクノ担当バイヤー佐藤くん。ふたりとも、それぞれの視点でなかなか外からは見えないことを語ってくれた。その貴重な発言を織り交ぜながら、09年を振り返ろう。

 今年意外だったリヴァイヴァル現象のひとつは、ハード・テクノが復活の兆しを見せたこと。ちょっと前までは"最も需要のないジャンル"とまで言われたハードテクノ/ミニマルが、息を吹き返した。

 「自分がテクノを好きになるきっかけのアーティストのひとりで、ルーク・スレイターは毎年呼んでるんですけど、今年はPlanetary名義のアルバムも出て、ヨーロッパでも評判が良くて調子も戻ってきてるって話を聞いて、すごい嬉しかったですね。一時低迷してる感じもあったでしょう。実際好調だっていうのを反映するように、DJプレイ自体すごく良かったし。このあいだ〈Drumcode〉のパーティで来たAdam Beyerもハードだったけどテクノ! って感じのプレイで、燃えました」(荒木)

 ベルリンで"世界一"との称号を得るクラブ〈Berghain〉が核となったこの動き、ルークのPlanetary Assault Systems名義のアルバム『Temporary Suspension』 が〈Berghain〉の運営するレーベル、〈Ostgut Ton〉からリリースされ、またWIRE09のハイライトになったLen Fakiが同クラブの公式盤としてリリースしたミックスCDも素晴らしかった。両者とも、クリック~ミニマルの流れは意識しつつも、図太いキックを響かせハードなサウンドの復活を象徴していた。

 「レーベルだと〈Blueprint〉とか〈Downwards〉が復活して、リイシューも含めると結構な数がリリースされる状況です。硬質なテクノはきてますね。ただ、シーンがハウス的なものばかりになってしまった反動で、30歳前後のかつてのハード・ミニマルの隆盛を知ってる層がまた聴きだしたという印象で、若いひとが新鮮に感じてるということはないんじゃないかなぁ。このあいだのSurgeonのDJでもフロアの年齢層高かったし」(佐藤)

 昨年のリーマン・ショック以降の世界恐慌一歩手前という経済状況は、もちろんクラブ/音楽業界にも寒風を吹かせた。特に欧州では意識変革や時流とも相まってアナログ盤のセールスの激減という事態に結びつく。Native InstrumentsのDJ用ソフト開発に関わっている人物によると、ドイツでのヴァイナルの販売数は今年1/3にまで落ち込んだそうだ。しかし、日本の状況はどうかというと、意外に市場全体の規模としては急激に縮小してるわけではないという。

 「レーベルだと〈Cadenza〉、もしくはリカルド(・ヴィラロボス)絡みのものだと、100~200枚売れることもありますが、それが最大。昔はウチだけで数百なんてよくある数字だったんですけどね。普通のものは10~30枚とかですよ。ただリリースの数がものすごく増えて、だから全体としてはそこまでセールスが落ち込んでない。ドイツのディストリビューターのひとと話したら、やはり多くのレーベルがアナログは全世界で300枚くらいしか売れないと言ってますね。そうなると日本はマーケットとしてすごくでかいし、次の展開としてアジアをどうにかしようと考えてるみたいです。ただ、そこまでプレス枚数が減ると値段上げて売り切りでもペイできないだろうし、DJとしてブッキング増やすためのプロモーション・ツールになってきてる」(佐藤)

 実際のところアナログ盤を買うというのは、ある種の贅沢行為もしくは奇特な趣味になりつつあるのかもしれない。今年はまったく面識ない若い子と一緒にDJする機会が何度かあったけど、PCかCD-Rでやってるケースが大半で、ターンテーブルはもう物置場と化してるわ、カートリッジもついてないわ、隅のほうに縦置きされてるわで、なんとも悲しいブースだった。もっと名の知れたメジャーな箱でプレイしてるDJたちにしても最近は「アナログ使いますか?」と事前に確認されるとか、そうでなくてもデジタル・ソースで良く聞こえるようにPAが調整されていてアナログだとイマイチというケースも増えているそうだ。そして、11月末にはついにオーストラリア発で「パナソニックがテクニクスのターンテーブルの生産を中止する!」という噂までネット中を駆け巡り大騒ぎになった。ひとまずそれはガセと否定されたが、いつそんな状況になってもおかしくない、というのが現実か。

 09年の最大のフロアヒットがリカルドのレーベル〈Sei Es Drum〉から出たRebootの"Caminando"もしくはルシアーノが半年以上かけてプッシュし続けたMichel Cleis"La Mezcla"であることは疑いないだろう。両方とも、フォルクローレ・ミニマルという今年の一大潮流となったトレンドを規定するような仕上がりで、実際南米の楽曲をもろにサンプルしたトラックだが、目の付け所やループの組み方など絶妙でまさに時代にフィットした感があった。リカルドは現在もアナログ・オンリーでDJしているし〈Sei Es Drum〉はデジタル・リリースをやってない。ルシアーノは現場ではPCを使っているが〈Cadenza〉は大半のリリースでアナログ重視の姿勢を貫いている。日本でも石野卓球や田中フミヤといった影響力のあるプレイヤーがいまだアナログにこだわっているといったように、ロールモデルになるトップDJたちの姿勢によってなんとかまだ最後のエリアは死守しているという状態だろうか。なにせ、Loco DiceやChris Liebing、Josh Wink等の例を持ち出すまでもなく、ほとんどのインターナショナルDJはすでにデータでのプレイに移行しているからだ。

 「でも例えばDaniel Bellとか、Sascha Dive、Cassy、それとレーベル〈OSLO〉周辺のアーティストなんかはみんなアナログが大好きで、影響力あると思います。うちにも来るけど、ユニオンで中古盤買うのが楽しみみたいですね。ドイツだといい中古盤はあまりなくて、値段も高いからって。DBXなんて、ユニオンに行くために東京をツアーに組み込んでるんじゃないかな(笑)」(佐藤)

 さらに09年は、完全にインプロビゼーション的な手法を持ち込んだライヴを行うアーティストが成果を見せ始めた年だったとも言える。テクノのライヴというと、ラップトップとにらめっこというのが普通だったが、ついにそこから大きくはみ出すことをテクノロジーとアイデアが可能にした。例えば、年明け早々に日本でも見られるMoritz Von Oswald Trio(モーリッツ翁とマックス・ローダーバウワー、ヴラディスラヴ・ディレイのユニット)が数々のステージでの実験を発展させて素晴らしいアルバムに結実させたし、ルシアーノはレーベルの若手Reboot、Lee Van Dowski、Mirko Loko、Digitaline、そしてアルバムにも参加したハン・ドラムのOmri Hasonがそれぞれ演奏する音の要素、さらにはシンクロする映像をMac上のソフトで自在に操り、誰の音が流れているか一目でわかるように光でアイコン化するという画期的なステージAEtherを展開。世界中をツアーして驚かせた。ラップトップを使いながらもその場で自由に音を組み立て、多人数で空間を作りあげるという実験はほかにもRichie Hawtinが多くのプロデューサーたちと積極的に行っている。

[[SplitPage]]

 さて、ele-king的にはあまり注目されない部分ではあると思うが、無視できない人気と勢力を維持しているのがエレクトロのシーンである。ベルギーで毎年行われている巨大テクノ・フェス"I ・ Techno"の公式コンピCDで、昨年Boys Noize、今年はCrookersがミックスを担当しているのは衝撃的だ。"テクノ"と銘打ってはいるが、実際のところメインどころで鳴っている音は巷でいうところのエレクトロが大半という事実。ある意味行くところまで行ってしまった"テクノ"のストイックすぎる音の対極にある派手で下世話でエネルギッシュなこの手の音が、昔でいうならレイヴ、ハードコアと同じような文脈で若いクラバーに支持されているのはよくわかる。〈WOMB〉が幕張メッセに出張して行う大規模イヴェント〈Womb Adventure〉は、2年目となる今年も、Richie HawtinとDubfireのユニットClick 2 ClickとDigitalismやDexpistolsが隣り合ってプレイするという普段のクラブ・イヴェントではなかなかお目にかかれない取り合わせを実現していた。

 「DEXのやってるレーベルの若いアーティストでMYSSっていう2人組がいて、まだ22歳くらいですっごい若いんです。ここ数年でDJはじめてガーッと人気が出てきたっていうヤツらなんですが、去年の〈Womb Adventure〉に行ってリッチー知らなかったですからね! でも、かけてる曲聴いてると結構テクノなんですよ。あれは衝撃的だったな。僕らとは全然成り立ちが違うんだなと思って。曲は耳で聴いて採り入れてても、それをテクノとは認識してないんでしょうね」(荒木)

 レコード店に足を運ぶのも、テクノのパーティで踊るのも、30歳から下というのが極端に減っているという。一方で、どんどん若い世代が飛び込んで育ち始めているのがエレクトロだと。極端ではあると思うが、同じ音でもテクノとラベルづけされるといきなり「暗い・難解」的なイメージで、人が呼べないという危惧があるからだって。なんたることだ! 今のエレクトロのDJやアーティストすべてが敬ってもいい"I'm a Disco Dancer"と"Popper"の生みの親であるChristopher Justさんなんて、いつのまにか「エレクトロの人気アーティスト」と宣伝されるようになっていたからなぁ......。

 では、テクノの文脈でまったく新しいひとたちが出てきてないのかというと、そんなことはない。ロンドンとベルリンを拠点とする世界最高峰のエレクトロニック・ミュージックのサイト「Resident Advisor」が先日発表した読者投票によるトップ100DJのリストをみれば、多くの大御所たちを押しのけてたくさんのフレッシュな名前を見つけることができる。Marcel Dettmann、Magda、Ben Klockといったミニマル勢、Dixon、Nick Curly、Omar-Sといったハウスを新しいカタチで提示する連中も元気だ。では、日本のアーティストは......?

 「海外でレコードでてるアーティストはたくさんいるんですよ。でも、日本のリスナーやDJはあまり日本人の作品プッシュしない印象ですね。メディアも取り上げないし、レコード出たからといって人気に火がつくわけでもなく、積極的にリリースしてるレーベルも〈Mule〉くらいですからね」(佐藤)

 う~ん、たしかに。〈Poker Flat〉からもリリースするRyo Murakami、〈Minus〉や〈Immigrant〉などからリリースするRyoh Mitomiなどポツポツと新しいアーティストはいるが......。「ベルリンでプレイと言ってもギャラもあまり出ず、帰ってきてからのプロモーションになるかなという感じでやりに行くというケースも多いですよね。自費でいいなら来いよ、みたいな。やはり向こうに住むくらいでないと、難しいかも」(佐藤)。Akiko KiyamaやDen等のように拠点をベルリンに移すアーティストも中にはいるが、やはり距離と言葉の問題、それはITがこれだけ発達して、世界が狭くなったと言っても20年前と変わらず大きな壁なのだ。「ただ、店という場所があるし、アーティストのサポートしたいんで、どこのレーベルにアプローチしたらいいかとかいろいろ相談にものるし、レコードが出たらバックアップできるように多めにストックして在庫切らさないようにするんです。そうやってうまくリリースにつながったり、少しでも活動しやすくなれば嬉しいですよね」(佐藤)

 今冬は気候も懐もずいぶん寒さが厳しい感じ。ついつい引きこもってぬくぬくしてても楽しいかもなどと自分をごまかしてしまいがちだ。特に今年後半一気に日本でもブレークしたTwitterのようなひととひとのつながりをうながす属人性の高いウェブサービスのおかげで、再会やあらたな出会いそんなもろもろが楽しい(テクノに限らずDJやクラブ音楽関係者もたくさんいる!)けれど、それでなにかを「わかった」気になってしまうのはいちばん危険。最後に、先日アルバムのリリース・ツアーを終えたDJ Tasakaがつぶやいていたツイートを転載しておこう。

 「各地で会った皆さんありがとう。どこもそれぞれかなりの手応え。特に印象的だったのは神戸と大分。09年の日本のテクノ・パーティに関しては"東京が中心でその他の都市はそれを追う地方"的図式で見てしまうと、本質を完全に見誤るだろうことがよくわかりました」

 「各地でパーティに熱意を持っている人達同士がリンクできる余地、まだまだありそうです。伝えて、広めて、続けるための環境作りに関して、みんな同じベクトル向いてる」

※ 月イチで国内外の旬なDJをフィーチャーする日本最大規模のテクノ・パーティ〈CRASH〉、来年一発目のオススメは2月に、〈Yellow〉や〈Unit〉を揺らし続けてきた〈REAL GROOVES〉との共催で、アルバムをリリースしたばかりのサンフランシスコのClaude VonStrokeなど多数のゲストを迎えてのフェス仕様で行うパーティ。詳細情報は〈ageHa〉もしくは〈REAL GROOVES〉公式サイトでチェックを!

 

■hot techno releases 2009

(ALBUM)
Moritz von Oswald Trio / Vertical Accent (Honest John's)
Planetary Assault Systems / Temporary Suspension (Ostgut Ton)
Len Faki / Berghain 03 (Ostgut Ton)
Mirko Loko / Seventynine (Cadenza)
Luciano / Tribute To The Sun (Cadenza)
Josh Wink / When A Banana Was Just A Banana (Ovum)
DJ Tasaka / Soul Crap (Ki/oon)
Laurence / Until Then, Good Bye (Mule Electronics)
Telephone Tel Aviv / Immorate Yourself (Bpitch Control)
Shakleton / Three EPs (Perlon)
Crookers / Put Your Hands on Me (Southern Fried)
Reboot + Sascha Dive / From Frankfurt to Mannheim (Cecille)
Mihalis Safras / Cry For The Last Dance (Trapez)
Tiga / Ciao! (Last Gang)
Peaches / I Feel Cream (Warner)
La Roux / La Roux (Polydor)
Jesse Rose / What Do You Do If You Don't? (Dub Sided)
Ben Klock / One (Ostgut Ton)
2000 and One / Heritage (100% Pure)

(SINGLE)
Cesar Merveille & Pablo Cahn Speyer / Descarga (Cadenza)
Mistress Barbara / Dance Me Till The End of Love (Iturnem)
Depeche Mode / Wrong (Magda's Scallop Funk Remix) (Mute)
Laurent Garnier / Gnanmankoudji (PIAS)
Nick Curly / Series 1.1 (8Bit)
Timo Maas / Subtellite (Cocoon)
Radio Slave / Koma Koma (No Sleep Part 6) (Rekids)
Electric Rescue / Devil's Star (Cocoon)
Sis / Mas O Menos (Titbit Music)
Felipe Venegas & Francisco Allendes / Llovizna EP (Cadenza)
Orlando Voorn feat. Obama / Yes We Can! (Night Vison)
Michel Cleis / La Mezcla (Cadenza)
RV feat. Los Updates, Reboot / Baile, Caminando (Sei Es Drum)
La Pena / 004 (La Pena)
Steve Bug / Two of A Kind (Pokerflat)
Markus Fix / It Depends On You (Cecille)
Bloody Mary / Black Pearl (Contexterrior)
Gavin Herlihy / 26 Miles (Cadenza)
DJ T / Bateria (Get Physical)
Sebo K & Metro / Saxtrack (Cecille)
Click Box / Wake Up Call (M_nus)
Chris Liebing, Speedy J / Discombobulated , Klave (Rekids)
The Mountain People / Mountain People 08 (Mountain People)
Deetron / Zircon+Orange (Music Man)
Tiga / Beep Beep Beep (Soulwax+Loco Dice Remixes) (Different)
Paco Osuna / Lemon Juice (Plus 8)
Proxy / Who Are You? (Turbo)
Adam Port / Enoralehu (Liebe Detail Spezial)
Jesper Dahlback / Roda Rummet EP (Acid Fuckers Unite)
Massimo Di Lena / Gypsytown (Cadenza)

#1:ベルグハインの土曜日 - ele-king

ベルリンのダンス・ミュージックの歴史、狂気、快楽、自由、そして懐の広さ......その全てが凝縮されていると言っても過言ではないクラブ、それがベルグハイン/パノラマ・バーだ。世界最高、現代のパラダイス・ガラージと称され、世界中のDJやクラバーたちが憧れる場所。これが存在していることが、ベルリンがどれほど特別な街なのかをよく物語っていると思う。

 以下は今年ドイツで出版された本、『Lost and Sound: Berlin, techno and the Easyjetset』からベルグハインに関する記述の一部を抜粋したものである。この本の英語翻訳版をベルリンのレコード・レーベル、Innervisionsが発売*するにあたり、Resident Advisorに掲載されたものを和訳した。行ったことのある人はうんうんと頷ける、行ったことのない人にはかなり妄想を掻き立てられる的確な描写なのでここにご紹介したい。

*英語版は限定のハードカバー(予定販売価格:22ユーロ)が12月15日にInnervisionsウェブショップといくつかのセレクトショップで、ペーパーバック(予定販売価格:14ユーロ)が2010年2月に全世界に向けて発売予定。

  正確には、土曜日とはいつのことを指しているのだろうか? ほぼすべてのクラブは深夜にオープンするのだから、常に土曜の夜のクラビングはすでに日曜日になっている。クラブに出かけるまでの時間は、どうにかして潰さなければならない ―― バーに行くなり、街をブラつくなり、家で待つなりして。1時前にクラブに到着してしまおうものなら、空っぽのダンスフロアに迎えられるだろうし、DJもこの時間に踊る人などいないことを良く知っているので、たとえ誰かがいたとしても踊らなそうな曲をプレイしている。そう、まだお客さんは中ではなく、外にいるからだ。外の行列に。

 これはどこのクラブでも変わらないことだが、〈ベルグハイン〉では特に顕著だ。行列は砂の地面にヘビのように長く伸びている。後方は建設現場用のフェンスで区切られ、前方のドア付近ではS字に組まれた鋼鉄の柵に囲い込まれていて、まるで違う国に入国しようとする人々の列のように見える。ある意味、彼らは違う国に入ろうとしているとも言える。一般的には、ドアの外で待たされる時間が長ければ長いほど、そのクラブの特別さが増すと信じられている。この考えは恐らく1970年代に、20世紀で最も有名なディスコテックだったニューヨークの〈スタジオ54〉に入るために並ばされていた人たちから継承されてきたものだろう。ここでもドアマンの恐怖政治によってセレブリティー、カネ、美、若さの見事なミクスチャーが形成されていたわけで、その影響は今も残っている。中に入れと手招きされるか ―― もしくはされなかった場合は、外に突っ立って見ることしかできない。そんな光景が一晩中繰り広げられることもある。誰に強要されたわけでもないのに待ち続けるのは、富と名声とセンスがナイトライフを支配する街で、人気が人気を呼ぶクラブに少しでも足を踏み入れたいという欲求があったからだ。

 しかし、ベルリンはそういった類いの街ではない。

 それどころか、こうした考えで90年代にクラブをオープンさせたプロモーターたちは皆大失敗に終わった。ベルリンでは、アート・シーンを除いて、カネとセンスは別ものだからだ。90年代以降、このシーンはかつて親密な関係にあったテクノ/ハウス・クラブから完全に離れてしまい、ただエキジビションのオープニングにだけはDJを欠かしてはならないという考えだけが残った。今日アーティストやギャラリー・オーナー、アート・コレクターに批評家たちは、ベルリン=ミッテ地区のレストランやバーで内輪に集まることを好んでいるようだ。またこの地区には、〈スタジオ54〉のドア・ポリシーを僅かに思わせる唯一のクラブもある。ウンター・デン・リンデンの〈クッキーズ〉だ。

[[SplitPage]]

 〈ベルグハイン〉外の有名な行列に並んでいると、そんなあれこれが頭を巡るが、この行列が他の行列と決定的に違うのは全員が体験するという点だ。ゲストリストも存在するが、決して長くはないしそれ以上の重みはない。リストに載っていても待たなければならず、支払いが免除されるというだけである。行列を飛び越すことができるのは、その夜出演するDJとその取り巻き、そして極一部の〈ベルグハイン〉関係者だけだ。行列の進み具合にはほとんど影響がない。1時間の間に3~4組が通り過ぎる程度で、それ以上はない。彼らを眺めながら待つのだ。1時だろうが、朝の6時だろうが、待たされることに変わりはない。ときには行列半ばのところにドアマンが立っていることがあることがあるが、彼の役目は誰もが同様に見定められる〈ベルグハイン〉のドアにおいて、なぜか自分だけは例外だと思い込んでいるワナビーたちを追い返すことなのである。

「今夜は追い返されるんじゃないか?」

 このポリシーの徹底ぶりは、かすかにジャコバン派(フランス革命期の政党)の恐怖政治を連想させるものがある。女王だろうが農民だろうが、誰にでもその恐怖が降り掛かるからだ。つまり、ここのドアは何よりも第一に民主主義的なのである。それでいて第二に、何年間通っていようとも、行く度に自分に「今夜は追い返されるんじゃないか?」と問いかけ続けなければならない独断的な面もある。

 この疑問は〈ベルグハイン〉の行列の全員によぎるものだ。そわそわしないようにお互い注意し合っているカップルも、ベルリンのクラブ・ファッションを地元の雑誌で研究してきたかのようなイタリア人グループも。彼らは大振りのサングラスにこれでもかとアシンメトリーにしたヘアカットという、ニュー・レイヴ・ルックできめてきている。女の子たちはパープルのレギンスに毒々しいグリーンのトップス、男の子たちは脱アイロニック・スローガンがプリントされたTシャツを着ている。ある女性は追い返されるかもしれないという恐怖心からか、故郷のヴッパータール(ドイツ西部の町)のことを延々と喋っている。彼女が行列で知り合った2人のオランダ人男性は、何とか彼女との会話からフェードアウトしようと、たまに「んー」、「あー」と相づちをうつ。別の2人組の男は追い返された人たちを笑いものにしながらも、あまり声が大きいと今度は自分たちが同じ目に遭うと牽制し合っている。
 
〈ベルグハイン〉は建物自体が大聖堂を思わせる造りになっているだけでなく、実際にテクノの教会そのものだ。どこまでが意図的に仕組まれているのかは定かではないが、行列に並ぶところから儀式は始まっていて、ドアに近づくに連れてお腹の中に蝶が舞うような感覚を味わうことになる。前に並んでいる人たちが追い返されるのを見つめながら、入店条件を割り出そうと必死になる。大抵の場合はシンプルである。若い男性のグループは苦労することが多い。それが観光客で、ストレートで、さらに酒に酔っていようものならなおさら難しい。しかし、これはかなり大ざっぱな分析でしかない。入れなかった若者が「ファック・ユー、ドイツめ! このスカムどもが! 俺はウィーンから来たんだぞ!」と怒鳴るのを聞いて、みんな小さな声で笑う。

 パーティする相手は誰でもいいという訳にはいかない。だから、追い返された人たちに同情する者はいない。それと同時に、その独占権を得るためには、自分も追い返されるリスクを追わなければならないのだ。

 冷酷なドアマンとの関係性には期待と不安が入り交じる ―― 〈ベルグハイン〉までの道のりには、矛盾する様々な感情が駆け巡る。そう、それでいいのだ。クラブの中に最初の一歩を踏み入れた瞬間の解放感を味わうために、その緊張感があるのだから。入店の儀式は、次にレジ横のエントランス・エリアで行われる、念入りなドラッグ検査へと続く。清めの儀式だ。そしてお布施を納め、クロークルームへの通過が許される。その広々としたスペースにはいくつかのソファがあり、ポーランドの芸術家ピョートル・ナザンによる「The Rituals of Disappearance」(消滅の儀式)と名付けられた巨大な壁画がそびえている。

 照明がまた儀式の雰囲気をしっかり演出している。真っ暗な屋外から、薄暗いエントランス・エリアを通り、明るいクロークルームに入る。そして最後の敷居をまたぐと、低音が轟くホールはまた真っ暗なのである。ホールを横切って大きな鋼鉄の階段を登っていき、ダンスフロアを前に立って雷のような音を浴びると、何のために何時間もかけてここに来たのかわかっていても、毎回同様の鋭い衝撃を味わう。そして数秒、ストロボに目が順応しようとするまでの間、半減した視覚にしばし彷徨う。少し顔を殴られた時の感じに似ている ―― まだ素面状態の自分よりも、2時間ほど長くここにいたと思われる汗ばんだ身体をかき分けて自分の行く手を進まなければならないだけでなく、音楽の波動による身体的な攻撃も受けるからだ。

 まずは一杯飲もう。

 〈ベルグハイン〉と〈パノラマ・バー〉には、合計6つのバーが全三階に渡って設けられている。ひとつは〈ベルグハイン〉のダンスフロアの右側、ゴシック教会の側廊のようなイメージの空間にある。かつての建築家たちが窓や細い柱の視覚効果を上手く使って天国との繋がりを強調したように、ここでもスポットライトの巧みな配置によって天井が実際以上に高く感じられる。もうひとつのバーはダンスフロアの左側、"ダークルーム"付近に隠れている。近くにある階段を上ると、〈ベルグハイン〉よりも少し小さくて明るめの〈パノラマ・バー〉がある。上の階はハウスでストレート、下の階はハードでゲイ、となっているのだ。

[[SplitPage]]

「上の階はハウスでストレート、下の階はハードでゲイ、となっているのだ。」

 〈ベルグハイン〉には遅めか、場合によってはとても遅い時間に行く。ベルリンっ子は観光客のピーク時間を避けて、家で寝ながら朝8時まで待つこともある。そして長時間滞在する。そんな長い間自分が何をやっていたのか、思い出せないことがほとんどである。それはその間に摂ったかもしれない気分を変えるお薬やおやつの影響だけでなく、〈ベルグハイン〉特有の時空間に入り込んでしまったからだ。他のクラブの場合は、中に入ってしばらく滞在したら、また他の場所に移動する。だが、ここではみんな残る。外の世界は消滅してしまう。〈ベルグハイン〉に入ると、地図上から消えてしまうのだ。ここは、その意思がある人だけが来る場所。何百人という完全に出来上がったパーティ・ピープルが盛り上がっている中で自分だけが素面だと、置いて行かれたような気分になることもあるだろう。これほど巨大な ―― 多い日は延べ3000人以上が入場する規模のクラブでは、なおさらだ。その一方で、それぞれに完璧に調和のとれた各スペースでは、まるで自分の家のような ―― というと言い過ぎだが、「魚の水を得たるが如し」とでも表現すべき居心地の良さがある。何しろ、みんな自分の家とは違うからこそここに集っているのだから。

 写真撮影は〈ベルグハイン〉内では許されず、携帯のカメラでさえも禁止されている。理由を尋ねたところ、多くのお客さんは自分のセクシャル・ファンタジーを実体験しているところを撮られたくないからだ、とドアマンは言っていた。それもあるだろうが、それ以上に写真は中と外界とを繋ぎ、外の世界を思い出させてしまうからだろう。〈ベルグハイン〉ほど外界を切り離すことに成功したクラブはない。外では太陽が空高く昇っていようとも ―― 常に店内は早朝の薄暗さに覆われているようなのだ。

 もちろん、ここでは暗い隅っこでなければできないことをしている人たちもいる。ここに来たことがある人ならみんな、バーでセックスをしている人を見たことがあるか、話には聞いているはずだ。もしくはソファーで。あるいはダンスフロアの横で。より露骨なセックス・パーティは隣接する別の店、〈ラボラトリー〉で(広義のゲイに含まれるあらゆる性的趣向に合ったテーマのイベントが夜な夜な行われている。「Yellow Facts」に「Fausthouse」、「Beard」に「Slime」、バイカー専用のパーティ「Spritztour」まで)開かれているが、〈ベルグハイン〉内にも"ダークルーム"がふたつ存在する。そしてその中では、あらゆる抑制から解放され、あんなことやこんなことが繰り広げられているという話がいろいろある。

 しかし、これら〈ベルグハイン〉の逸話のほとんどは、こんな変な人がいたとか、こんなにぶっ飛んだ人がいたといった体験談ばかりだ。誰かが別の誰かと一緒にトイレの個室に入り、その後極端に気分が良くなって、あるいは悪くなって出て来たとか。だいたいのエピソードは2~3日は笑いのタネになるようなものだが、ちょっと笑えないものもある。

 いずれにせよ、こうした物語は勝手に広まっていく。〈オストグート〉(同じオーナーが経営していた〈ベルグハイン〉の前身となったクラブ)や〈ベルグハイン〉に何年も通っているような常連は、逸話が次々と生み出されては、このクラブの伝説を塗り替えていることを実感しているはずだ。大勢がその週末の出来事を振り返っては話題にし、誰かがこんな体験をした、自分はどんな光景を見た、あんな話を聞いていたが実際にはこうだった、といった会話があちこちでされている。物語の数々が繰り返し話題となり、強調され、膨れ上がり、検証され、説明されていく。そして、みんなお互いにこんなことばかり続けていてはダメだよねと言い合いながらも、密かに次に行く機会を待ちわびるのだ。

 これらはクラビングにまつわる当たり前の物語で、他のクラブでも起こることばかりだ ―― ただし、ここ以外の場所では現実世界に戻るのが日曜の夕方5時ということは滅多にない。他と異なるのは、これらの物語が常に〈ベルグハイン〉そのものの話題性を築き上げているところである。〈ベルグハイン〉のダンスフロアでパートナーに拳を突っ込んでいた男は、二の腕にセンチメートルの目盛りを入れ墨していたとか。友人ががトイレで出会った見知らぬ女は、彼を見るなり「今すぐファックして、早く」と言ってきたが、気が進まなかったので断ったらパンチをくらわしてきて何日も目の周りのアザが残ったとか。あるいは、ある男がトイレで小便をしていると、隣に立っていた男がいきなり丸めた手のひらでそれを受け止め、飲み干したかと思うとまた消えて行ったとか......「せめて一言断ってからにして欲しいよね!」といった具合に。

 〈ベルグハイン〉の伝説はそうやって築き上げられ、維持されている。さらに、そうした話題はベルリンの電話ネットワークを遥かに超えた規模に広がっている。体験談がニュースグループで議論され、中国からの発言がストックホルムやミラノにまで伝わる。メルボルンの人たちの耳にも届いていたりする。『New Zealand Herald』紙がベルリンにはダンスフロアでセックスするのが当たり前だというクラブがあるらしいと書き立てたかと思えば、それを読んだ何人かのニュージーランド人がベルリン行きの航空券を予約するのだ。

[[SplitPage]]

"調子のいい夜の〈ベルグハイン〉と〈パノラマ・バー〉のダンスフロアは、世界で一番だ"

 伝説を築くという意味においては、それらの出来事が本当に起こったことなのか否かはさほど重要ではない。そんな逸話が存在し、語り継がれているというだけで十分なのだ。

 そして〈ベルグハイン〉は〈バー25〉ともまた違う。シュプレー川のほとり、カラスが飛び交える数百メートル程度しか離れていない距離にあり、ここも奔放なパーティ伝説が先行している場所ではあるが、〈バー25〉はさらにエクストリームでグロテスクだ。ある逸話では、女の子が芝生に寝転び、自分の携帯をヴァイブレーター代わりに使って「ヴァギナ会話中! ヴァギナ会話中!」と叫んでいたとか。それと比較すると、〈ベルグハイン〉の営みはまだ文明的に思える。確かに〈パノラマ・バー〉の横にある金属製の棚スペースのところでセックスする人たちは存在する。でも、基本的にここに来ている人たちは自分の行動をわきまえているのだ。もしくは、ちゃんと一言「ごめんね、しばらくどうでもいいことを喋りたいんだけど、いいかな?」と断りを入れる礼儀を持ち合わせている。

 そう言ってもらえれば、我慢するのもそれほど苦にならない。

 中を歩き回ってみて、あちらやこちらで何が起こっているか把握しつつ、一杯飲み、トイレに行って〈パノラマ・バー〉背後の小便器越しに、窓の外の荒れ地に奇妙に伸びた行列を眺める。知り合いや、全くの他人や、多種多様な人々に会う。バーで順番を待っていると、20代前半のフランス人青年が、モンペリエでテクノDJをやっている自分にとってベルリンに来ることは、イスラム教徒がメッカに巡礼するようなものだと説明してくる。階段では半裸でスキンヘッドの大男が、笑顔でこんなクラブは他にない、「ロシアでさえも」と話しかけてくる。ダンスフロアの隅っこでは、数週間前に途絶えていたダブ・レゲエについての議論がまた始まっている。

 そして、踊る。

 調子のいい夜の〈ベルグハイン〉と〈パノラマ・バー〉のダンスフロアは、世界で一番だ。ハウスとテクノ20年の歴史の集大成を作り上げているかのように。客の音楽的理解も素晴らしいが、盛り上がってくればそんなこととは無関係に思いっきり楽しむという姿勢もあるところがいい。その客層のユニークさは、ゲイとストレート、若者と年配者、男性と女性、ベルリンっ子と観光客といった多文化が混在しているというだけではなく、独特のダイナミズムをもたらす能力にある。ベルリンのテクノのベテランたちに埋め尽くされたダンスフロアでは、みんなパーティを知り尽くしている。だから、DJが8ビートのブレイクを挿んだ後にベースをぶち込んでも、期待通りの熱狂が得られないこともある。このようなトリックは聴き慣れているからだ。これが、初めて〈ベルグハイン〉に来て思いっきりはしゃいでいる若きゲイのイタリア人相手だったとしたら、トリックの善し悪しなどはどうでもいい ―― 毎回必ず盛り上がってくれるはずだ。でも、そうした客のバランスが素晴らしいのである。何年もかけて形成された、どのDJに何を期待すべきか知り尽くしたダンスフロアに勝るものはないが、場合によっては通常のパターンを打ち破る柔軟さも備えているのだ。

[[SplitPage]]

「ドアマンに別れの会釈をしてしまうのは、
何か彼らに恩義があるような気持ちになるからだ」

 そして、目の前に霧がかかったようなおぼろげな意識の中、エレクトロニック・ダンス・ミュージックにおける行動学があることを確信することになる。それはダンスフロアにおける人々の関わり方に表れているのがわかる。ここでは行動をわきまえ、自分のスペースを確保し、他者の邪魔にならないよう気をつける。これらは自らの経験で学んでいくことで、誰かが教えてくれることではない。

 心得ておかないと、かなり強烈な憎悪を向けられる瞬間がある。例えば、ドアからバーへの最短距離がダンスフロアを横切るルートであると思っている集団に押しのけられたとき。もしくは、踊りながらどうしてもタバコも吸わなければならないと思い込んでいる隣の男に、腕に根性焼きされたとき(残念ながら、今では喫煙室以外の場所では喫煙することができなくなってしまったが)。あるいは、人を押しよけてまでそのスポットで踊りたいという欲求をコントロールする経験を持たない2人組の男が目の前で踊りはじめ、しかもしばらくして別の場所に移ったかと思えばまた戻ってきて、押しよけてきたとき。

 このような状況下に置かれたとき、クラブにもある種のグッドガバナンスの必要性を感じる。優れたダンスフロアでは、そこにいる全員が、どんな状態であれ自分が何をやっているか把握している。好きなだけ酔っぱらい、ぶっ飛んでいても、周囲に対するリスペクトは失わない。スペースが足りなくても、みんなが必要以上にスペースを取り過ぎないことを暗黙の了解としている。

 ここで踊っていると、そんなことを意識するのである。

 〈ベルグハイン〉と〈パノラマ・バー〉では、他のクラブとは異なる次元の高揚感がある。パーティの山場は、日曜の午後まで上がり続ける。これは、パラレル社会のような世界がクラブ内に作り上げられていることと関係している。ここでは、外の世界を完璧にシャットアウトすることに成功している。それどころか、パーティを盛り上げる刺激として、それをエフェクトとして活用しているのだ。〈パノラマ・バー〉の照明係が窓のブラインドを数秒感開け、太陽の光でフロアを照らすと、ダンスフロアが高揚感の波に飲み込まれるのを身体で感じることができる。人々が喝采し、両手を振り上げると ―― あまり急激に太陽の光をあて過ぎると世界が消滅してしまうんじゃないかという気になる。ヴァンパイアのように、客が全員灰になってしまうんじゃないかと。

 でもいつかは、終わりがやってくる。何しろ、〈ベルグハイン〉はクラブであって、アフター・パーティの会場ではないのだから。クロークに行って、タグを手渡す ―― これも細かい気遣いがよく表れている部分だ。他の店のような番号の書かれたチケットではなく、紐の付いた金属製のタグになっているので、首から下げたりどこかにくくり付けておくことができるのだ。だから店を出るときがどんな状態であれ、必ずコートを返してもらうことができる。ここではそういったところまで考え抜かれているのである。そこまで落ち着いた精神状態の人ばかりではない状況下では、とても重要なことだ。

 そして、ドアから光の下によろめき出る。ドアマンに別れの会釈をして ―― 彼らと知りだからというわけではないのだが、何か彼らに恩義があるような気分になってしまうからだ。その一晩の終わりを締めくくるような動作が欲しくなるのだ。周りを見渡し、新鮮な空気を肌に感じ、自分がどれほど汗をかいていたのか実感する。耳の奥のかすかな残響が小鳥のさえずりや、その辺りでビールを飲みながらお喋りしている人々の声や、建物から僅かに漏れてくるサウンドシステムの音が聴こえている。

 やっと家に帰る時間だ。それとも、〈バー25〉に寄って行こうか。

トビアス・ラップ
著者について

この記事は、トビアス・ラップの素晴らしい著書、『Lost and Sound: Berlin, techno and the Easyjetset』からの抜粋である。複数の短い章から成る本著書では、ラップはベルリンのクラビングの歴史を掘り下げ、客観・主観両方の観点から詳細に取り上げている。それも、彼のジャーナリストとしての経験に裏付けられたもの。この本の執筆中、現在38歳の彼は左傾の日刊紙『taz』の音楽エディターだった。英語版の紹介文の表現を借りれば、彼は「年老いたロッカーやアンダーグラウンド・トレンドを興味本位で追いかけるブルジョワとは一線を画す」視点で原稿を書ける人物だと評価されている。本著の成功と『taz』紙での仕事ぶりが認められ、現在ラップはより大きな舞台、ドイツで最も高い売上を誇るニュース雑誌『Der Spiegel』で、ポップ・ミュージック・エディターとして活躍している。

Flashback 2009 - ele-king

■ドラムンベースは、リアル・アンダーグラウンド・ミュージックそのものだった

 2009年を代表する作品といえば『Sub Focus』だ。このアルバムがシーンにもたらした功績は計り知れない。プロディジーが先導した初期レイヴ・シーンの影響をフラッシュ・バックさせるかのような"恍惚的な"インスピレーション、類まれなるプログラミング技術によるダンス・ミュージック本来の軸、まさに"あるべき姿"を体現しているサブ・フォーカスは現代のプロデューサーの最高峰に位置すると言っても過言ではない。そう、これが皆が思い描いた現代のレイヴ・ミュージックの夢であり、すなわち、それが"エクストリーム・レイヴ・ドラムンベース"なのだ。

 そのサブ・フォーカスと双璧をなすかのようにアルバムを待望されていたダーク・サイバーの伝道師、エド・ラッシュ&オプティカルがダーク・サイドという名の観点を貫く大作『Travel The Galaxy』を発表した。前作『Chameleon』から3年ぶりとなる今作もエレクトロニック・ダーク・ドラムンベースの最先端を走る話題の作品となって、近年のダーク・サイバー/ニューロ・ファンクの急先鋒として捉えられていたオーストラリア/ニュージーランドのアーティストたちにも多大な影響を及ぼすことになった。

 オセアニア地区ではドラムンベースのシーンが年々活発化している。オーストラリアのパースが誇るモンスター・ドラムンベース・バンド 、ペンドラムが世界を席巻しているのは記憶に新しいが、同じくパース出身のショック・ワン(SHOCK ONE)やフェスタ(PHETSTA)、レギュラ(RREGULA)などの才能溢れる若手プロデューサーも台頭している。オセアニアは2009年のエレクトロ/ニューロ・ファンク、ドラムンベースのムーヴメンにおける主要拠点にまで成長しているのだ。

 ちなみに2009年は、ショック・ワンのメイン・リリースでもあるリバプールのレーベル、フューチャーバウンド(FUTUREBOUND)の主宰する〈VIPER〉が、エレクトロ・ドラムンベース・コンピレーション『Acts Of Mad Men』をリリースしている。すでにこれは最高傑作の呼び声高い。『Acts Of Mad Men』には、ショック・ワンの他に〈BREAKBEAT KAOS〉から傑作『Act Like You Know』を発表し、ダブステップ・アーティストとしても知られている奇才ネロ(NERO)、ブルックス・ブラザーズ(BROOKES BROTHERS)との共作『Drifter』が記憶に新しいリキッド・ローラー、ファーロング(FURLOUNGE)、〈VIPER〉におけるエレクトロの異端児メトリック(METRIK)、オーストリアの新世代カモ&クルックド(CAMO & KROOKED)等々、こうした若手プロデューサーを起用したところにレーベル未来が見える。そして200年は、レーベル主宰者であるマトリックス&フューチャーバウンドマスターが「Fallin'」などの素晴らしいシングルで、プロデューサー並びリミキサーとして大活躍した年でもあった。

 ドラムンベースの本国UKでは様々なジャンルとの交流が活発した年でもあった。ドラムンベースが初期から持っているハイブリッドかつフレキシブルに交感し合うタクティクスが再燃したのだ。ダンス・ミュージックの固定観念に一石を投じる"付加価値"がより多く見受けられた。それは、UKアンダーグラウンド・ミュージックの最先端をひた走り、リードするダブステップとの交流によってより顕著に表れている。ドラムンベースが共存の道を選ぶことはシーンの活性化を思えば必然的行為で、ダブステップのほうでもまたドラムンベースの背中を追いかけている。このように、影響を互いに吸収しあって、グローアップしたからこそ、ふたたびビック・ムーヴメントに発展しようとしているのだ。

 そもそも、このふたつには互いに"雑食性"としてのリレーションシップがある。そしてその雑食性こそ、UKアンダーグラウンド・ダンスミュージックの特性だ。だから当然の成り行きとも言える。ドラムンベース界のビッグ・レーベルである〈RAM〉や〈BREAKBEAT KAOS〉、あるいは〈DIGITAL SOUNDBOY〉や〈HOSPITAL〉までもがダブステップのリリースを活発化させている。これによってチェイス&ステイタス(CHASE & STATUS)やネロ(NERO)、ブリーケイジ(BREAKAGE)などいったふたつを行き来する新しいタイプのスター・プロデューサーも数多く生まれたのである。

 ドラムンベース界のトップ・リキッド・ファンク・レーベル〈HOSPITAL〉からもエレクトロ色をふんだんに盛り込んだニュー・コンピレーション、『Sick Music』が世に送り出されている。これは時代性を見据えた内容によって大ヒットとなった。ロジスティックス(LOGISTICS)のニュー・アルバム『Crash Bang Wallop!』も驚異的なクオリティだった。〈HOSPITAL〉は相変わらず、素晴らしく刺激的なリリースを続けている。

 2009年は、メインストリームのドラムンベースとは一線を画したもうひとつの"トレンド"も生まれた。ディープでアトモスフェリックで知的なそのシーンは、いまやまるで成熟した果実のようである。その代表は、カリバー(CALIBRE)による『Shelf Life Vol.2』(Signature)、リンクス(LYNX)による『Raw Truth』、コミックス(COMMIX)や〈SHOGUN AUDIO〉クルー......。かつてLTJブケムが提唱した"アートコア"という異端的な感覚は、レイヴ・ジャングル/ハードコア・ジャングル全盛のいまではそのサブジャンルとして展開しているのだ。こうしたシーンは、どちらかと言えば、お決まりのパターンに陥りやすい作曲や、DJのスキルばかりが評価されがちなドラムンベースにおいて、マンネリズムを免れるべく、つねに刺激的なアイデアを出している。いわばシーンの陰の功労者的な動きである。

 すっかり停滞してしまったクラブ・ミュージックにあって、ドラムンベースはいまだに変化や展開が起きているシーンだ。このジャンルがいまでもまだ、まるで終わりなき道をひた走るように走っていることを再認識させられた1年でもあった。ドラムンベース/ジャングルの革新者たちが訴え続ける一体感がもっといろんな場面でもその意義が認められて、またさらなる発展を求め、いつかまた初期のレイヴ・シーンのように劇的に躍動することを願っている。

■DRUM&BASS 2009

SUB FOCUS/Sub Focus(RAM)
ED RUSH & OPTICAL/Travel The Galaxy(VIRUS)
V.A./Acts Of Mad Men(VIPER)
AGENT X FT.MUTYA & ULTRA/Fallin -MATRIX & FUTUREBOUND RMX/SHOCK ONE RMX- (VIPER)
CONCORD DAWN/Take It As It Comes(UPRISING)
DJ FRESH FT STAMINA MC & KOKO/Hypercaine(BREAKBEAT KAOS)
ZARIF & DANNY BYRD/California(FULL ENGLISH)
V.A./Sick Music(HOSPITAL)
DRUMSOUND & BASSLINE SMITH/10 Years Of Technique(TECHNIQUE)
GOLDIE & COMMIX/Envious(METALHEADZ)
CALIBRE/Shelf Life Vol.2(SIGNATURE)
SPOR/Aztec(SHOGUN AUDIO)
LYNX/Raw Truth(SOUL:R)
ORIGINAL SIN/Grow Your Wings(PLAYAZ)
SERIAL KILLAZ/Mash You Down(GANJA)

[[SplitPage]]

■"プログレス"こそ、いまのダブステップを象徴するキーワードだ

 南ロンドンで産声を上げたシーンは現在、もっともホットで最先端なジャンルとなった。当時これほど大きなムーヴメントになると誰が想像してただろう。

 2009年のダブステップにおける、ミニマル・サイドには2枚の大きなリリースがあった。2枚とも革新と確信の両方を秘めたエポック・メイキング的なものだった。マーティン(MARTYN)による『Great Lenghs』、2562による『Unbalance』だ。マーティンは、元々はドラムンベースのプロデューサーだった。マーカス・インタレックスが主宰する〈SOUL:R〉のサブ・レーベル〈REVOLV:ER〉や〈PLAY:MUSIK〉からのリリースを重ねているが、いまではすっかりダブステップのアーティストとして人気が出てしまった。実際、彼の才能を遺憾なく発揮したのが『Great Length』だった。それはパーカッシブかつハイブリッドな次世代のダブステップで、『MIXMAG』誌の「TOP50 ALBUM OF 2009」にも選出されるなど、実に広く賞賛されたアルバムとなった。

 2562=デイヴ・ハイスマンス(DAVE HUISMANS)、この空間音響処理系天才オランダ人にはいくつかの顔がある。2562ではミニマル・ダブステップ、ア・メイド・アップ・サウンド(A MADE UP SOUND)名義では漆黒のビートダウン、ドッグデイズ(DOGDAZE)名義ではブロークンビーツ/ブレイクビーツ。彼はこのように、自分の音楽性を面白いように使い分けている。彼はそのメイン・プロダクションである2562は、ベルリン・ダブとダブステップの融合を実現したと評された1stアルバム『Aerial』から1年後の2009年に発表されたセカンド・アルバムで、さらに研ぎすまされた硬質なビートスケープを見せつけた。まさに2009年の象徴的存在のアーティストだ。

 ミニマル・ダブステップもうひとりの異端者、ダークヒーローことシャックルトン(SHACKLETON)も忘れてはならない。彼はアップルブリム(APPLEBLIM)とともに〈SKULL DISCO〉レーベルをスタートさせ、クリック/ミニマル界のスターリカルド・ヴィラロボスによってリミックスされた「Blood On My Hands」で異例のカルト・ヒットを実現し、そして瞬く間にファンを増やしている。その後レーベルを〈MORDANT MUSIC〉に移すと同時に、活動の拠点もベルリンに移している。そして、あのクリック/ミニマルの最重要レーベル〈PERLON〉から驚愕のダーク・ベースラインが唸る独創的ミニマル・ビーツ・アルバム『Three Eps』をリリースしたのである。

 数年前のダブステップのシーンはまるで初期ドラムンベース/ハードコア・ジャングルのシーンのように大きくふたつに分類するに過ぎなかった。そう、ダークサイバー・ドラムンベースとアートコア・インテリジェンスのふたつのように。だが、そこからサブジャンルがいくつも生まれたのは周知の通りで、ダブステップにも同じことが起きている。いまはすごいスピードで多様化しているのだ。2009年の傾向のひとつに、4つ打ちを取り入れた作風が目立った。その象徴がスキューバ(SCUBA)の「Aesaunic EP」(HOT FLUSH)やラマダンマン&アップルブリム(RAMADANMAN & APPLEBLIM)の「Justify RMX」だ。また、ジョイ・オービジョン(JOY ORBISON)などのUKガラージから派生したポスト・ガラージ・アンセムの「Hyph Mngo」やアントールド(UNTOLD)による「Gonna Work Out Fine EP」のようなミニマルの静寂性とUKガラージの高揚感を混合し、効果的にハイブリッドさせたまったく新しいサウンドも生み出された。マーラ(MALA)の〈DEEP MEDI MUSIK〉からは美しくも繊細なシルキー(SILKIE)の『City Limits Vol.1』がアーバン・アートコア・ダブステップとしての歴史的傑作となった。

 ダブ・カルチャー/ジャングル・シーンにおいての聖地ブリストルでもダブステップは発展を遂げている。ロブ・スミスがRSD名義で『Good Energy』(PUNCH DRUNK)をリリース。ピンチ(PINCH)が自身のレーベル〈TECTONIC〉から発表した『Tectonic Plates Volume 2』も話題となった。フライング・ロータス、マーティン、2562......はたまたスクリームやベンガといったメインストリームの怪人たちや、ブリストルのウォブリー・マスターであるジョーカー(JOKER)、あるいはベルリンのミニマル・レーベル〈OSTGUTーTON〉のシェド(SHED)といった幅広いメンツが参加している。そして〈PUNCH DRUN〉を主宰するペヴァーレリスト(PEVERELIST)が満を持して1stアルバム『Jarvik Mindstate』を発表。スライトリー・ダブとしての観点からきらびやかなコズミック感覚やミニマル感覚を注入し、なんとも素晴らしい先品が誕生したものだ。

 ウォブリー・ダブステップに話を移そう。スクリームがドラムンベースのビック・レーベル〈DIGITAL SOUNDBOY〉から、まるでロブ・プレイフォードの2バッド・マイス、そう、〈MOVING SHADOW〉さながらの初期レイヴ・ジャングルなアーメン・ビートを用いた「Burning Up」をリリースしている。もちろんこれはダンス・アンセムとなった。いっぽう、ベンガは「Buzzin'」(TEMPA)をリリース、ウォブリー・アンセムとなり、その健在ぶりを知らしめた。この両雄の活躍がシーンの生気を確認させ、また、ふたりの底力をみせつけたとも言えるだろう。

 その両雄とも並ぶとも劣らない活躍を見せたのがブリストルのジョーカーだった。ミニストリー・オブ・サウンド主宰のレーベル〈DATA〉やメジャー・レーベルのリミックス・ワークを立て続けに発表したジョーカーには、今後も大注目である。そして、忘れてはならないのがコード9(KODE 9)の〈HYPER DUB〉からレーベル5周年を記念してリリースされた12インチのシリーズ「Hyperdub 5.1~5.5 EP」だ。その先進的サウンドは、縦横無尽に動き回るダブステップ本来の雑食感が詰まっている。いわばダンスフロア・シンフォニーとしてのオルタナティブ・ダブステップだ。

 2009年は、さまざまなドラムンベースのアーティストがダブステップへと転身した。数年前、その先駆けとなったのが、もともと〈RAM〉でリリースしていたサイバーステッパーのエディ・ウー(EDDY WOO)である。彼は現在、セヴン(SEVEN)名義でダブステップ・プロデューサーとして良質かつキャッチーなトラックで、フロアヒットを飛ばしている。他にも、自らドラムンベースのレーベル〈DEF COM〉を主宰し、ダークコア・ステッパーの区リプティック・マインズ(KRYPTIC MINDS)、アーメン・マスターであったブリーケイジ(BREAKAGE)、〈NON PLUS〉のインストラ:メンタル(INSTRA:MENTAL)らも、現在トライバル・ステップ・リーダーとして活路を見いだし、その存在意義を証明している。

 そして〈RAM〉からの大ヒット・アルバム『More Than Alot』も記憶に新しいドラムンベースのプロデューサーとしてはトップに君臨するチェイス&ステイタス(CHASE & STATUS)やネロ(NERO)が、ダブステップ・アンセムからリミックス・ワークまでをもこなし、なおかつビック・チューンを生み出せる数少ないマルチ・プロデューサーとして注目されている。

 UKレイブ・カルチャーの象徴であるドラムンベースの雑食性を見事に受け継ぎ、90年代初期から中期にかけてのレイヴ・ジャングルさながらの熱狂と凶暴性も兼ね備えた、まさに21世紀の代表的クラブ・カルチャー/ムーブメントに成長したダブステップ。先進的エレクトリックなプログラミング、他の追随を許さない圧倒的な雑食性を武器に、すべてを飲み込む貪欲さが他との類似性を拒み、柔軟な思考回路とともに歩む最先端サウンド。この先も予想不能なミステリアスに包み込まれた、誰も想像できない可能性に満ちた音楽性でもある。これが現在のダブステップのすべてだ。この魅惑的なリズムは音を変え続けていく。未来である明日にも、すぐに。

■DUBSTEP 2009

MARTYN/Great Lengths(3024)
2562/Unbalance(TECTONIC)
SHACKLETON/Three Eps(PERLON)
SCUBA/Aesaunic(HOT FLUSH)
RAMADANMAN & APPLEBLIM/Justify(APPLE PIPS)
ELEMENTAL/Messages From The Void(RUNTIME)
JOY ORBISON/Hyph Mngo(HOT FLUSH)
UNTOLD/Gonna Work Out Fine EP
PEVERELIST/Jarvik Mindstate(PUNCH DRUNK)
PINCH FEAT.YOLANDA/Get Up -RSD RMX-(TECTONIC)
SILKIE/City Limits(DEEP MEDI MUSIK)
INSTRA:MENTAL,BREAKAGE/Futurist,Late Night(NAKED LUNCH)
KRYPTIC MINDS/One Of Us(SWAMP 81)
SKREAM/Burning Up(DIGITAL SOUNDBOY)
V.A./Hyper Dub 5.1~5.5 EP(HYPER DUB)
BENGA/Buzzin'/One Million(TEMPA)
LEE PERRY WITH SAMIA FARAH vs KODE 9/Yellow Tongue(ON-U)

[[SplitPage]]

■ベース・ミュージックにおける色気、UKファンキー

 ファンキーはUKガラージから派生し、変容を遂げたコンテンポラリー・ソウル・ダンス・ミュージックである。それはラテン、アフロビート、コンテンポラリー・R&Bを吸収したニュー・ガラージ・サウンドだ。この目覚ましい発展のフロントラインには、コード9が仕掛けた「Black Sun」がある。そして同じく〈HYPER DUB〉のフィメール・プロデューサー、クーリー・G(COOLY G)によるドリーミーかつムーディーなアトモスフェリックが心地よいトリッピーな「Narst/Love Dub」。この2枚がシーンの拡大に多大な貢献を果たすこととなる。

 新星ロスカ(ROSKA)による「Twc EP」のリリースも忘れがたい。彼はゼド・ビアス(ZED BIAS)の「Neighbourhood -ROSKA 2009 RMX-」の成功によってシーンの代表的なアーティストとしてすでに認知されている。そしてドネーオー(DONAE'O)がUKアーバンにおける至高のガラージ・アルバム『Party Hard』でUKファンキーとしてのデビューを飾った。さらにUKガラージ/2ステップ界のスター、MJコールがUKファンキーを本格化させるなど、フレッシュな話題が続いている。

 大御所のジンクがドラムンベースを離れて早数年が経過し、現在、"Crack House"と銘打ったモダン・アーバン・エレクトロ・ハウスの提唱者として各地での布教活動に勤しんでいる。タイトル名「Crack House EP」は、もともとは初期の〈BINGO BEATS〉のアーティストたちがトラック・メイクしていたハーフ・ステップ主体のベースライン・サウンド直系のもので、現在のクラブ・シーンのトレンドであるエレクトロ、フィジット・ハウス、ダブステップ、ブレイクスなどをハイブリッドにミクスチャーしたファンキーなダンス・ミュージックだ。ブレイクステップのテイストまで取り入れた4つ打ちのダンスフロア・アンセムとして、UKファンキー/ガラージ界から、さらに広くエレクトロのシーンにまでその名を轟かせているジンクはやはり生粋のベース・マスターであり、いつかまたドラムンベースに復帰することを願っている。

■UK FUNKY/CRACK HOUSE 2009

ZINC/Crack House EP(BINGO BASS)
FLORENCE & THE MACHINE/You Got The Love -JAMIE XX REWORK FT THE XX- (FLOXX)
COOLY G/Narst , Love Dub(HYPER DUB)
KODE 9/Black Sun(HYPER DUB)
ATTACCA PESANTE FT SHEA SOUL/Make It Funky For Me(DIGITAL SOUNDBOY)
ROSKA/Twc EP(ROSKA KICKS & SNARES)
V.A./Fantastic 4 EP(FANTASTIC 4)
ZED BIAS/Neighbourhood -ROSKA 2009 RMX-(SIDESTEPPER)
DONAE'O/Party Hard(MY-ISH)
MJ COLE FT.DIGGA/Gotta Have It -MJ'S FUNKY DUBB-(PROLIFIC)

Flashback 2009 - ele-king

DJはいまや渡り鳥のように全国をまわっている。吟遊詩人のように旅を続ける。まるでフウテンの寅さんのように列車に揺られている。ベテランDJの高橋透が、1年を回想する!

1976年からDJ活動をはじめ、1980年にNYへ移住、1981年に一時帰国、〈椿ハウス〉、〈玉椿〉、〈CLUB-D〉などの80年代を代表する箱のメインDJを務める。1985年にNYへ戻り、DJとして活動する。1989年に帰国。その後も芝浦〈GOLD〉でのレジデントをはじめ、数多くのクラブ、パーティに関わる。現在は宇川直宏、MOODMANと主催するディープ・ハウスパーティ〈GODFATER〉のひとりとして活躍。ミックスCDとして『GODFATHER 10th ANNIVERSARY SPECIAL MIX VOL.1』、また自身の半生を綴った著書『DJバカ一代』がある。

  有名アナログ店舗の相次ぐ閉店にはじまり、日本のクラブ・シーンを長年牽引してきた老舗クラブ〈YELLOW〉のクローズ、音楽専門誌やカルチャー誌の激減など、2008年から2009年にかけてクラブ・シーンを取り巻く環境が大きく変化し「この先この業は大丈夫なのか?」って考えさせられた年初めではありましたが、終わってみれば「さほど心配する必要がなかったのか」って、例年通り数多くのパーティーが各地で開催されていたし、仲間内でのいつも通りのパーティ談義やイヴェントの評判を直接聞いたりネットで見たりね。今年の後半にはメディアもクラブもアナログ店も来年に向けて活発な動きがあることも知り、例の「サイバーノリピー事件」を除いては少しもネガティヴな状況じゃないのかな、っていうのが実感です。

  2009年を振り返ると、個人的には長年行きたかった沖縄を初体験できたことがまず嬉しかった。呼んでくれた友人ミーパンやリュウジ君クルーに熱く迎えられ、数ヶ月前から仕込んでくれたという特設のダンスフロア、ブースの前に設えられた銀色に光り輝く鳥居には沖縄の熱いエネルギーを感じさせられた。他にも、広大な庄内平野の田んぼのなか、看板もネオンも何も無く営業を続ける知る人ぞ知る山形屈指のアンダーグラウンド・パーティ〈ハーモニー〉"も相変わらずコアなクラウドだった。瀬戸内海の荒波が打ち寄せるファンキーなロケーションで毎年お盆に開催される姫路〈彩音〉も忘れるわけにはいかない。GODFATHERとしては3年連続で出演、年々進化し続けている。そして......DJ WADAくんと行った群馬桐生〈レベル5〉が10周年というのははっきり言って驚かされた。坂田頑張ってるわ! GODFATHERで最多出場を果たしている博多〈デカダン・デラックス〉に至ってはなんと21周年! 凄いのひと言だ。博多のクラウドは今年もタフだったしね(ナベさん、西やんありがとう)。初登場させてもらった神戸〈トゥループカフェ〉も16周年、楽しくプレイさせていただきました。で、青山〈ループ〉が14周年(望っチャン、花チャン、スタッフ全員お疲れ様)。野田さんの実家〈のだや〉を皮切りに〈ラジシャン〉と〈フォー〉でスタートした静岡〈フォー〉の4周年では静岡パワーを見せられた感じ。五十嵐&海野くんお疲れさまでした。文田に行けなかったのは残念だったけれど! 

  とにかく2009年はレギュラー参加しているパーティやイヴェントのほか、初めて呼ばれるクラブやパーティも多くて、たくさんの人たちとの出会いやその地域のダンス・ミュージック・ファンに僕のプレイを体感してもらえたこと、音楽好きが集まる小さなバーからライヴ・ハウス・パーティまで数多くのダンス・ミュージック・ファンと素晴らしい時間を共有できたことが最高に楽しかったし、嬉しかった。もちろんすべてのパーティに全力投球してきたし、それが自分の使命であり、自分にとってもっとも幸せなことだなと今年関わったすべての人に感謝しています。

  ここ数年、新たに生まれた店が多いことや無事に○周年を迎える店も多く、日本のクラブ事情を見る限り、バブル期の派手さは無いけれど着実に新たなアンダーグラウンド領域に入ってきているような気がして、これからまた面白くなりそうな感があります。だいたい僕が虜になったダンス・ミュージックの世界はそんなに簡単に無くなるはずはないだろうし、ヨーロッパでもアメリカでも基本的にはメディア以外何も変わってないと思います。その証拠にダンス・ミュージックのデータ配信ビートポートなどはますます元気だし、それは配信される音楽の多様性を見てもうなずけるでしょう。

  だから僕はダンス・ミュージックの先行きに関して何の心配もしてないし、来年以降がますます楽しみになっているくらいですから。僕らができることはまだまだあるように思うし、チャレンジすることもいっぱいある気がして、ワクワクしていますね。宇川くん野田さんタッグが『エレキング』のネット配信をそろそろスタートする予定もあるし、JEYPEGの修平くんたちはネットラジオで面白いことやっているようだし、マンハッタン・レコードもネットでの動きを活発にすると聞いて、新たな時代に突入しているんじゃないかなって強く感じます。

  ずいぶん長いこと海外に出ていないなーって最近思うのですが、よく考えてみると、とくに行かなくても国内で満足させられているのかな~て、つまり昔ほど海外への憧れが無くなってしまったということです。海外が遠かった当時と比べ、ネットで海外と日本の時差が無くなった今日、当然と言えば当然でしょうが、何年か前から自分の感覚がディスカバージャパンになっていることも作用しているようです。歳かもしれませんが、たぶん70年代に憧れたアメリカや80年代に憧れたニューヨークより、現代は日本のほうが面白いことをやっているんじゃないかってね、もちろんダンス・ミュージックの配信ではヨーロッパものが俄然多く、音楽を通じてヨーロッパの活気を知ることはできますが、それでもそこへ行って滞在したいという気にあまりならないんですね。それよりも日本人として、日本のダンス・ミュージック文化を大事にしようと思うのです。僕にとっていまは日本がピッタリくるというか、居心地よくなっているのかもしれません。

  僕は日本の歴史が大好きで、これまでずいぶんと歴史小説を読みあさってきました。とくに史実に基づいた物語が好きで、なかでもお気に入りの作家は司馬遼太郎です。歴史小説を読んでみて日本の優れた歴史上の人物に出会う度に、日本人として生きるということに魅力を感じて、この二度と来ないいまという時代のなかで日本人のためになるオリジナルな生き方をしたいって考えるようになっているのです。生意気なことを言うようですが、これも歳のせいかも知れません。

  いずれにしてもダンス・ミュージックの世界は経済に関係なく、確実に前を向いているから2010年は2009年よりも必ず面白くなるはずだし、僕らひとりひとりがそうしなくてはいけないって思っています。踊るという行為は、人類が誕生したはるか昔から受け継がれて来た尊い文化で、お祝いごとや悲しい出来事が起こる度に人間は踊ることで喜びを分かち合い、悲しみを発散してきたんです。僕らの時代になって、サブカルチャーとしてディスコが流行し、若者の心を捉えていまに至っていますが、これは世界的な潮流でもあるし、僕らにとって重要な文化なんです。僕はDJという職業に出会えたことは本当に幸せだと思っています。なぜならば皆がハッピーになれる時間を作り出せる側にいるからです。踊らせること、楽しませることが何よりも好きだからなんです。

  真剣にこの文化に取り組んでいる側からすれば、ノリピー事件は怒って当たり前の残念な出来事で、一般社会から見れば同じに見えるかもしれませんが明らかに異なる文化を作り出してきているはずです、それももう何年ものあいだです、でも世界には、黒服とV.I.Pと軟派がセットになったお金の匂いがするキラキラしたディスコ文化というのが僕らの世界と平行してずうっとあるし、そこへ集う人たちも多いという事実もあります。言ってみればそれもひとつのディスコ文化と言えるから比較はできませんが、心情的には一緒にしてほしくないわけです。

  ちょっと横道にそれましたが、2009年全般を考えると、クラブ・シーンにとっては過渡期だったと思います。各地のクラブにとっても厳しい年であった事は否めませんが、それでも僕らと同じようにダンス・ミュージック文化が大好きな人たちがこの日本には多いという事実がこの1年で確認できたし、実感しました。2010年も楽しみましょう。

Top 20 of 2009 by Toru Takahashi

1 Sharam / She Came Along feat Kid Cudi -Sharams Ecstasy Of Ibiza Mix- (DCI)
2 Destination Danger / Du Rififi Au Katanga(Circus Company)
3 Argy / What Time Is It (These Days)
4 Jona / Freefall (Resopal Schallware)
5 Fuse / Dimension Intrusion -Layo Bushwacka Fuze Remix-(Plus 8 Records)
6 Crash Course In Science / Flying Turns(From Jupiter)
7 Danny Fiddo、Affkt / P oints -Mathias Kadens Chalet De Verano Remix-(Barraca Music)
8 Will Saul_Tam Cooper / Where Is It ? feat Ursula Rucker -Lazersonic Remix-(Simple records)
9 Marc Houle / Single Cell -Original Mix- (Minas)
10 Luna City Express / Diamonds Pearls(Moon Harbour Recordings)
11 Guy J / Ballroom Sians Vernacular Mask Remix (Bed Rock Records)
12 dOP / The Dust -dOP Mix-(Enliven Music)
13 Collabs, Chris Liebing, Speedy J / Magnit Express feat Speedy J & Chris Liebing (Electric delaxe)
14 Michel Cleis / La Mezcla feat Toto La Momposina (Strictly Rhythm)
15 EP1 B2 / Hauntologists (Hauntologists )
16 Mirko Loko / Tahktok (Cadenza)
17 Seth Troxler / Panic Stop Repeat ! ( Spaxtral Sound)
18 Alexi Delano / Adjust the Frequency (Clink)
19 LosUpdates,RicardoVillalobos / Driving Nowhere_Audio George Remix(Nise Cat Records)
20 Michael Jackson / Heal The World

Chart by LOS APSON? 2009.12 - ele-king

Shop Chart


1

ORANGE SUNSHINE

ORANGE SUNSHINE BULLSEYE OF BEING MOTORWOLF / Leaf Hound / 12月 »COMMENT GET MUSIC
1970年春にレコーディング?されるも2007年までお蔵入りし、1stプレスはジャケなし黒ラベルでLTD.300リリースされたが即完売。続いてこの2ndプレスが、A面別ミックス(A1.中盤にシタールのチャンネル/A2.のアウトロにディレイが差し込まれた程度)でジャケありLTD.300でリリースされたのですが、ある事情でその後出回らずにいたブツ。

2

AXEL KRYGIER

AXEL KRYGIER PESEBRE Los Anos Luz Discos (ARG) / 12月 »COMMENT GET MUSIC
現代アルゼンチン音楽シーンのキーパーソンにして、'10年代以降のメジャーもアンダーグラウンドも関係ない、ポップも実験行為すら乗り越えた、パラレルな時間を楽しむ為の音楽の在り方を示唆するアクセル・クリヒエール待望の!充実の!4作目。

3

CHUCHO VALDES TRIO

CHUCHO VALDES TRIO JAZZ BATA & TEMA DE CHAKA Malanga / 12月 »COMMENT GET MUSIC
その後、ラテン・ファンク集団イラケレを率いることになるチューチョ・バルデースが、1973年に発表した豊潤な意欲作にして異色作!革命後キューバン・ジャズの出発点とも言える記念碑的アルバムがコレなんです!!!!! ジャケット、オリジナルのアートワークでリリースしてほしかったなぁ?。

4

HUGO FATTORUSO

HUGO FATTORUSO CAFE Y BAR CIENCIA FICTIONA SJAZZ / 12月 »COMMENT GET MUSIC
一聴してみて今作は地味かな、、、なんて思わせるのですが、いやいやどうしてどうしてっ!!! 聴き込むほどに愛聴盤になってしまう一枚です!!! 前作の言葉どうりの→NEW ROOTSなカンドンベ大傑作「emotivo」のような熱いリズム太鼓隊との掛け合いはここにはありませんが、ソロ・ピアノを中心とした熟れたインプロバイズに触れることが出来ます!!! 歳を取ってしてもなお、決して枯れることにおもむきを置いていないフレッシュな息吹に勇気づけられます!!! Shhhhhお気に入りのドラムがユルい四つ打ちを打つ"LA PARTIDA"なんかも収録しています。

5

GRUPO FOLKLORICO Y EXPERIMENTAL NUEVAYORQUINO

GRUPO FOLKLORICO Y EXPERIMENTAL NUEVAYORQUINO Concepts In Unity Clave Latina / 12月 »COMMENT GET MUSIC
あのダンス・クラシックス名門レーベル=SAL SOULのサルサ部門からからオリジナル・リリースされた、SAL SOULダンス・サウンドのルーツ、キューバやプエルトリコの音楽(グアグアンコー/アバクア/グアヒーラ/プレーナ/マスルカ etc.)を全面に押し出した、'70s N.Y.のストリート・サウンド!ハード・サルサ(デスカルガ)隆盛期、名盤中の名盤!!!!! メンバーに名を連ねたのは、エディー・パルミエリの門下生アンディ&ジェリー・ゴンサーレス。彼らと共に後、キップ・ハンラハンのアメリカン・クラーヴェの中心アーティストとなるミルトン・カルドーナ。コンフント・リブレのドン、マニー・オケンド。アルセニオ・ロドリーゲスのバンドでも活躍したチョコラーテ・アルメンテロスなどなど、伝統音楽の進化系を都市で楽しむ為のチャレンジ・バイブスで塗り替えた、言葉どおりの実験NEW ROOTS的ラテン・サウンド!!!!!

6

HIKARU

HIKARU for life dub / 12月 »COMMENT GET MUSIC
BLAST HEADのDJ HIKARUが一番最初にリリースした、幻のフェイバリット・レゲエ/ダブMIX盤!!!!! 次から次へとイイ感じの名曲が繰り出される大スイセン作!!!!! ライフ・ダブ→島と都市でみがかれたナイス・バイブが充満してます!!!!!

7

HIKARU

HIKARU To Home CD / 12月 »COMMENT GET MUSIC
DJ KeNsEi、三重eleven.のAPOLLOとの吉祥寺スターパインズカフェでやった「ゆるいツアー」で初売りしソッコー売り切れてしまった、ブラストヘッドのHIKARUによる幻の名作人気MIX CDが、やっとで復活!!! お待たせしました!!! ぜったい買い逃さないで下さい!!! 「ゆるいツアー」用にMIXしただけあって全編まった?り&ほっこ?りとナイス・バイブが隅々まで充満しています!!! ほんと飽きのこないHIKARUの魅力満点の大スイセン・ロングセラーMIX!!!

8

ALTZ

ALTZ Get It Down ! ALTZMUSICA (JP) / 12月 »COMMENT GET MUSIC
ライブやDJでの活躍はもちろん、WOODMAN主宰のRARE BREEZE、山辺圭司の時空レーベルからリリースを軸に、BEAR FUNK(UK)、DFA(US)、LUNAFLICKS(NORWAY)といった海外からのリリースでも人気。リミキサーとしても引っ張りだこのアルツが、自らレーベルを始動!第1弾は、アルツ本人の新曲となる3 TRACKS EP!! 12インチ、アナログ・リリース!

9

DU BARTAS

DU BARTAS Fraternitat! L'autre distribution (FRA) / 12月 »COMMENT GET MUSIC
高音質で強烈なリズム・サウンドが登場!!! 録音状態がほんと素晴らしく、音の粒立った大勢の太鼓隊が目の前に出現します!!! クラブ・プレイもまったく問題なくイケル大スイセン盤!!! これかかったら踊るしかないでしょ!!! これで踊らなかったら、まったくもって音楽インポだぞっ!!!

10

戸張大輔

戸張大輔 ドラム BUMBLEBEE (JP) / 12月 »COMMENT GET MUSIC
やっぱ、とんでもなく素晴らしい!!!!! ロスアプが、初期のカセットテープ時代から追っかける孤高の音楽家!戸張さんの待ちわびていた新作!!!!! '09年の辺境音楽を探究してきた耳にも、やたら新鮮に響くこの極プライベートなギターと声のみの音楽は、今年の着地点なのだっ!!!!! そしてこれを聴くと「永遠の時」の住人なのだっ!!!!! ここへ立ち戻り、また辺境探索へと旅立てばいいのさ。。。いろんなことがあっても、ここに戻ってくればだいじょうぶだよ。。。

『SNOOZER』でお馴染みの「のだなカンタービレ」、そのライヴ・ショーをやることになりました! 時間帯が昼なので、野田も前回のリキッドルームのときのように泥酔することはないと思います。また、田中宗一郎が高校時代に撮った映画を見せられることもないと思います。どうぞ、お気楽に遊びに来てください!! 


「人類の青春時代が敗北感とともに終息した70年代。成熟と爛熟と享楽の80年代。絶望と諦念と内向の90年代」、例えばこのようなストーリー性の成立が困難となり、あらゆるものが「ネタ」と化したゼロ年代に、ロックはどのように展開したのでしょうか。2008~09年を軸にゼロ年代ロック・シーンを総括し、来る2010年代に成立可能なロックの姿を占います!さらに、ロックのみならず「ロック雑誌」というメディアは今後どのような存在意義を持つのか、いま「レビュー」と「ポップ」の集積としてではなく「ロック」という命題について語ることにどのような意味があるのか、またそのようなことは未来において可能なのでしょうか!? 永遠の「リアル・リスナー」田中宗一郎氏と野田努氏をお招きして開催するロック・タウン・ミーティング!「のだなカンタービレ」withディスクユニオン渋谷ロック館!!

日時:1月23日(土) 15:00~(終了17:30予定)
場所:リキッドルーム2Fギャラリー
入場料:1,500円(ドリンク付き)
チケット取り扱い場所:ディスクユニオン渋谷ロック館(03-3461-1809)、リキッドルーム(03-5464-0800)

CHART by MarginalRecords 2009.12 - ele-king

Shop Chart


1

Delano Smith & Norm Tally

Delano Smith & Norm Tally Untitled Sushitech / GER / »COMMENT GET MUSIC
LTD. 300!いまやベルリンでも引っ張りだこだというデトロイトのDelano SmithとCassyも大ファンだというNorm Talley、2人によるスペシャルなスプリット10インチ。渋く枯れたフレーズと、粗いリズム打ちがクールなDelano、そして煙たいサックス吹きとファンキーなクラップ、低いバスドラがめちゃ黒くて格好良いNorm、どちらも最高の出来映え。おすすめです。

2

Lee Jones

Lee Jones Yoyo EP Cityfox / GER / »COMMENT GET MUSIC
Villalobos play!MyMyなどで活躍するLee Jonesが、スイスのCityfox4枚目に登場。単なるジャズサンプルをはめただけではない、より有機的なグルーヴを獲得した本気ジャズ・トラック。ジャズ要素控え目のB2も、渋いベースグルーヴで引っ張る構成がめちゃ格好良い。

3

Moritz Piske

Moritz Piske Real One, Daniel Kampf, Remixes/Roberto Rodriguez Rmxs Opossum / GER / »COMMENT GET MUSIC
当店でも大好評だったMoritz Piske [Real One]のリミックス盤が到着!リミキサーにはベルリン出身のニューカマーDaniel KamfとRoberto Rodriguez。共にオリジナルのパーツをしっかり活かしつつ、よりファンキーなクラブトラックに仕立て上げた、ナイス・リワーク。

4

Frozen Border

Frozen Border Frozen Border 004 Frozen Border / UK / »COMMENT GET MUSIC
どうやら地下UK発だという噂の(しかし音はベルリンよりもベルリンらしい)Frozen Borderシリーズ4枚目。このレーベルらしい、ストイックでタフなムードが濃厚に刻まれた2トラック。A1の非4/4リズムのトラックがド渋!今回も300枚限定らしいので、おはやめに。

5

Makam

Makam The Hague Soul Soweso / GER / »COMMENT GET MUSIC
2009 HIT !!!! ヨーロッパのシーン全域に浸透したとも言えるディープハウス回帰志向を決定づけた2009年の重要作のひとつ。ラフエッジなドラム打ちに柔らかく黒いベースライン、ミニマルな構成が格好良い。リミックスにはArea RemoteのKabale Und Liebe&Lauhausが参加。

6

Kez Ym

Kez Ym Butterfly Ep Yore / GER / »COMMENT GET MUSIC
Cassyも自身の最新MIX CDに収録するほど気に入っているという、Kez Ym aka ヤマグチ・カズキによる2作目!Alton Millerあたりを彷彿とさせる、かなり渋好みなデトロイト・ハウス。音色のセンスの良さも並外れたものを感じさせます。

7

Ghosts On Tape

Ghosts On Tape Predator Mode Wireblock / UK / »COMMENT GET MUSIC
今回も当たり!ファンマスト!のWireblockレーベルからこれまた泣き!のセンチメンタルなシンセメロディーが交差するエレクトロの登場!さらにFunky の使い手としてシーンで引っ張りダコのROSKA が立体パーカッションを響かせるヒプノティックなFunky REMIXを披露!B1のど変態な支離滅裂ミッドテンポ・トラックも非常に貴重なマージナル感を墳出しております。おもしろいですねぇ?。

8

Baobinga & I.D

Baobinga & I.D Tongue Riddim Build / UK / »COMMENT GET MUSIC
ブレイクス?ブレイクステップの職人コンビが今度はFunky に挑戦!これが大当たり!ブレイクステップでしかと学んだ絶妙のシャッフル感をまんまFunky に応用したグルーヴィーでカッコイイ"FunkyStep"ともいうべき新たな切り口の作品をドロップ!さらに本家ROSKA による何とも奇怪な南米クンビア風味な曲調のREMIXも収録!今回は完全にベテランの凄みを見せつけられた感じでしょうか。必聴!

9

SHUT UP AND DANCE

SHUT UP AND DANCE HOW THE EAST WAS WON SHUT UP AND DANCE / UK / »COMMENT GET MUSIC
UKブレイクビーツ?ベースミュージックの歴史そのものSHUT UP AND DANCE がついにここにきて89年から始まり、今日この日2009年までの恐ろしく長いキャリアの集大成として今ここにベスト盤をリリース!初期のブレイクビーツ曲から、ハードコアレイヴ、ブレイクス、ブレイクステップとUKベースミュージック界で別格とされてきた個性豊かな楽曲群を是非聴いて頂きたい。当時を知らない世代にはなおさら新たなヒントがあるかも。

10

Lucio De Rimanez

Lucio De Rimanez Crash Bang Wallop / Rising Of Rhinos Future Sickness Records / UK / »COMMENT GET MUSIC
ハードコア・ドラムンベース・シーンの鬼子Future Sicknessの第8弾、ロシア出身のLucio De Rimanezの新作は、DonnyもCurrent Valueも上等、といわんばかりの超・変態系!!ホントに半端なく"キ"印です!!! スノッブ気取りの音楽マニア諸氏、「北欧のブラック・メタルがどーたら」なんて賞味期限切れの講釈はもういいから、早くこの辺のヤバさに気づいてくれ!!

DISCSHOPZERO 2009.12 - ele-king

Shop Chart


1

PINCH ft YOLANDA GET UP [TECTONIC / UK / 2009.11.30] »COMMENT GET MUSIC
2007発表のアルバム収録曲を、RSD、GUIDO、JACK SPARROW、LVがリミックス。王道のステッパーズなノリのビートから、GRACE JONESなニューウェイヴ・ダブ調まで、各人の個性が発揮された仕上がり。PVを作ったり、ダブステップとしては異例のオリジナルから2年経ってのリリースでも全く古く感じないの楽曲も見事だし、CDEPとしてリリースするあたりにも気概を感じる。

2

PEVERELIST JARVIK MINDSTATE [PUNCH DRUNK / UK / 2009.12.04] »COMMENT GET MUSIC
PINCHと共にブリストルのダブステップ・シーンを作り上げ、その震源地とも言えるレコード・ショップ、さらにはレーベルも運営する重要人物の満を持してのアルバム。収録曲「Yesterday I saw The Future」がジャングルとダブステップを繋ぐように、過去に聴いた音の記憶を呼び起こしながら、全く新しい感覚を聴かせてくれる、正直いまははっきりと対象化することはできない"その先の音"を感じる作品。

3

ELEMENTAL MESSAGE FROM THE VOID [RUNTIME / UK / 2009.11.24] »COMMENT GET MUSIC
02年からリリースを続けるプロデューサー。アシッド・ハウスとデトロイト・テクノとレイヴィなジャングル、アフロなトライバル・リズムの融合......という、最近ではUNTOLDが先んじている未来への扉を、よりベース重視で展開している意欲作。CD1で耳を更新させられてからCD2収録の過去曲(02~09年作)を聴くと、これがまたあり得ないくらいに新鮮に聴こえるから不思議。

4

SA BAT' MACHINES NO MONEY / VALIUM GITANS [KIOSK / FR / 2009.11.17] »COMMENT GET MUSIC
フレンチなムードにブラジリアンなサウダージのムードが混ざりつつ、ヘヴィでグルーヴィなダブステップ・ビートでドライヴするA面。スカにも通じる裏打ちと哀愁のフィドルを使った導入部から始まり、ウォブリーなベースと大太鼓のように打つキックが生むズンドコなノリも◎なジプシー・ダブステップB面。

5

unknown THE DAWN [SETH / FR / 2009.11.30] »COMMENT GET MUSIC
あるシーンの変革のときには必ず作られているような気がする、NINA SIMONE「FEELIN' GOOD」のダブステップ・リフィックス。魔力を持った歌声とインナーなサウンドのグルーヴがバッチリと噛み合った名ヴァージョン。

6

RUSKO COCKNEY THUG (BURAKA SOM SISTEMA REMIX) [SUBSOLDIERS / UK / 2009.12.05] »COMMENT GET MUSIC
フロアを狂熱の渦に巻き込んだ大キラー・チューンを、クドゥロの人気アーティストがリミックスした片面プレスの限定盤

7

HELIXIR CONVULTIONS / LET ME DRIVE NOW [7EVEN RECRDINGS / FR / 2009.12.02] »COMMENT GET MUSIC
No Comment

8

KROMESTAR HEAD NO GOOD / INSIDE [DUBSTAR / UK / 2009.11.30] »COMMENT GET MUSIC
No Comment

9

SOOM T DIRTY MONEY EP [JAHTRI / GE / 2009.12.05] »COMMENT GET MUSIC
No Comment

10

QUARTA330 / LV HYPERDUB 5.3 EP [HYPERDUB / UK / 2009.11.24] »COMMENT GET MUSIC

CHART by TECHNIQUE 2009.12 - ele-king

Shop Chart


1

ALTZ

ALTZ GET IT DOWN EP Altzmusica/JAPAN / »COMMENT GET MUSIC
Bear Funk、DFA等世界各国のレーベルからのリリースや、「Roland P Young / Isophonic Boogie Woogie」のリコンストラクト・アルバムの制作、「Cro-Magnon / 逆襲のテーマ」のリミックス等、見逃せない活動を続ける、日本が世界に誇るアンダーグラウンド・ヒーローAltzが自身のレーベルAltzmusicaをスタート。記念すべき第1弾は、Altz自身による新曲3トラックを収録!!

2

HOUSE OF HOUSE

HOUSE OF HOUSE RUSHING TO PARADISE (WALKIN' THESE STREETS) House Of House/US / »COMMENT GET MUSIC
DJ Harveyリミーックス!Still Goingの片割れOlivier SpencerとSaheer UmarによるユニットHouse Of Houseが、Quiet Villageのリリースでも知られるカルト・レーベルWhatever We Want Recordsに残した名曲「Rushing To Paradise (Walkin' These Streets)」が、ニュー・リミックスを加えて再登場。

3

THE COUNT & SINDEN

THE COUNT & SINDEN STRANGE THINGS Domino/UK / »COMMENT GET MUSIC
「Beeper」の爆発的ヒットでもお馴染みの、Herveの変名プロジェクトThe Countと、Sindenの最強コンビによる待望の新作がホーム・レーベルのDominoより遂に到着。今回は、な、な、なんとJohn Holtによるレゲエの名曲「Strange Things」がネタとして使用された激ヤバな1枚です。

4

MANOLO

MANOLO LOSE MYSELF Delusions Of Grandeur/UK / »COMMENT GET MUSIC
UKの新鋭ハウス・レーベルDelusions Of Grandeurからの待望の第6弾シングルが到着!!今回はFuture Beat Investigatorsのメンバーとしても知られるヘルシンキのプロデューサーRoberto RodriguezによるプロジェクトManoloによる1枚。LucanoのCadenzaなどでも活躍の三人組Wareikaによるリミックスを収録。

5

CARLO LIO

CARLO LIO BREAKFAST IN BAG Quartz Music/France / 2009/12/7 »COMMENT GET MUSIC
躍進する鬼才Paul RitchがスタートしたレーベルQuartz Musicの最新作は、Rawthenticや4Kenzo、PBR Recordingsなどで活躍のカナダの新鋭Carlo Lioによるニュー・シングルがリリース。100% PureやIntacto Recordsなどで大人気のAnton Pieeteによるリミックス収録。

6

LOSOUL

LOSOUL CARE REMIXE PT. 1 Playhouse/Germany / 2009/12/7 »COMMENT GET MUSIC
ここ最近積極的な活動を再開しているジャーマン・テックハウス・シーンの草分けLOSOULが、古巣のPlayhouseレーベルからりりーすしたヒットアルバム「CARE」のリミックス・シングル。リミキサーにはデトロイト・テクノ・シーンのMike Huckabyと、あのMusic For FreaksのLuke Solomonをフィーチャー。

7

MOEBIUS-PLANK-NEUMEIER

MOEBIUS-PLANK-NEUMEIER ZERO SET Sky/Germany / »COMMENT GET MUSIC
大名盤!あのジャーマン・テクノ、クラウト・ロック、最近はディスコ・ダブ方面にまで再評価高まる歴史的大傑作MOEBIUS-PLANK-NEUMEIERによる「ZERO SET」が再入荷。Ricardo VillalobosからKen Ishiiまでもが愛すドイツのエレクトロニック・ミュージックの最高傑作の一枚。

8

JEFF MILLS

JEFF MILLS THE DEFENDER Axis/US / 2009/12/2 »COMMENT GET MUSIC
限定プレスもの!おなじみJEFF MILLSが、超限定シリーズ「The Drummer」が話題を呼ぶ中、自身のレーベルAXISから新作のリリース。『ロボットと人類』、失われがちな 『伝統や長年培われてきた価値感』と言った、発展するテクノロジーと、共存する人間の進化の在り方を問う、「The Good Robot」シリーズの続編となる、そのタイトルは「 The Defender 」。

9

BARBARA & JOHN THOMAS

BARBARA & JOHN THOMAS THE UNLIMITED EXPERIENCE REMIXED Ethique/France / 2009/12/13 »COMMENT GET MUSIC
あのTechnasiaのレーベルEthique Recordingsから、中心アーティストのJohn ThomasとBarbara Goesによるニュー・コラボレーション・シングルが登場。今年リリースされたヒット・アルバム「THE UNLIMITED EXPERIENCE」からのリミックス・シングル・カット。奇才Jens Zimmermann、Tom Ellis、Arkリミックス収録。

10

MODESTE

MODESTE A MOUNTAIN OF CONVENIENCE Sthlmaudio/Switzerland / 2009/12/4 »COMMENT GET MUSIC
スイスのAgnesによる先鋭ディープ・ハウス・レーベルとしてDJに高い人気を誇るSthlmaudio Recordingsから、レーベルのボスAgnesの変名Modesteによる全編アンビエントで構成されたデビュー・アルバムがリリース!!!
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151