「IO」と一致するもの

Basic Rhythm - ele-king

 Imaginary Forces としてドラムンベースの黎明期から活動を続けてきた Anthoney J Hart が、別名義 Basic Rhythm で突然USのレーベル〈Type〉からデビュー・アルバム『Raw Trax』をリリースしたのは昨年のことだ。『Raw Trax』は、ソリッドなドラムにベース、そして女性ヴォーカルのサンプリングが駆け抜ける。初期ジャングルの感覚を現代にアップデートし、140bpm に落とし込んだアルバムとも言えるだろう。
 リリース後はベルグハイン出演や初来日など、ツアーなどでも精力的に活動している。Radar Radio では Kwam や Darkos Strife といったグライムMCが参加する回もあれば、彼のダブプレートを含むジャングルを詰めた2時間もある。彼はUKの音物語(*)を自由自在に行き来しているように見える。

 ロンドンに帰ってきた彼から届けられた2枚目のアルバム『The Basics』は、BPMの幅を広げながら個性を存分に聴かせてくれた。

 前半の02.“E18”(東ロンドン郊外 Woodford 周辺を指す)ではグライムMCの声がサンプルされ、03.“Fake Thugs”では、Mobb Deep の口撃が使われ、MCのエネルギーが抽出される。04.“Silent Listener”、05.“Cool Breeze (Summer In Woodford Green)”では、サイン波の低音に混じってヒップホップ的なサンプリング・カットアップが織り込まれる。06.“Blood Klaat Kore”は、Basic Rhythm 版の攻撃的なグライム・トラック、そして最後のトラック08.“Night Moves”は、キックとベースと1発の効果音だけで4分攻め切る。

 来日時に彼と話したとき、もっとも衝撃を受けたのは「ドラムを組んで、ノイズを乗せて、それでよければ曲は完成だ」と話していたことだ。
 構造的にはけっして4×4ビートではないが、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのダンスの機能性に忠実すぎるほどで、それがかえってアヴァンギャルドな作風を作り出している。女声ヴォーカルと男声MC、ドラムマシンとサイン波、一瞬の静寂。テクノ、グライム、ジャングル、Basic Rhythm はどの呼び名にもハマりきらない、モダンで荒いダンス・ミュージックを鳴らし続ける。

(*) Simon Reynolds による、UKの90年代の音楽に関する理論では、「UKハードコア連続体」の言葉で説明される。
The Wire 300: Simon Reynolds on the Hardcore Continuum: Introduction

5年目のJOLT in Japan ! - ele-king

 熱心な弊媒体読者はJOLTの見出しに一昨年の〈JOLT TOURING FESTIVAL 2015〉を思い出されたかもしれない。PHEWと灰野敬二+大友良英がトリを飾った豪華きわまりないあの2デイズは、現在進行形の音楽の切っ先の鋭さをうかがわせただけでなく、日豪両国のシーンの厚みというか深みというか、そのようなものを垣間見せた。オーストラリアのソニックアーツ組織「JOLT Arts INC.」の継続的な活動が成熟をみせた場面だったと記憶するが、2017年のいま、JOLTの試みはさらに加速している。
 日本では5年目に入ったJOLTはこのたび、女性アーティストに特化したプログラムを披露する。豪州からは、JOLTのディレクターでもあるジェイムス・ハリック、そのハリックが率いるボルト・アンサンブルからダブルベースのミランダ・ヒルとチェロのカーウェン・マーティンが本ツアー用の編成で来日。メルボルンのノイズ・トリオ、タイパン・タイガー・ガールズのギタリスト、リサ・マッキニーは単独でドローン以後のフィードバック・ノイズを聴かせるという。迎え撃つ日本勢は箏の八木美知依とヴォイスのヒグチケイコ。箏と身体に潜在する響きをあますところなくひきだす両者のパフォーマンスが、オーストラリア勢とどうかさなりあうか、ここでしかお目にかかれない瞬間を目撃できるのが、何度もいいますがJOLTのたのしさでありおもしろさです。前日には野毛アンダーグラウンドと共催で、横浜のツァルトでも関連イベントもあるようです。両日ともぜひ! (松村正人)

2017年4月14日(金)
JOLT Presents The Book of Daughters
六本木SuperDeluxe

開場:19時/開演:19時30分
料金:予約2300円/当日2800円(ドリンク別)
出演:
八木美知依(electric 21-string koto, 17-string bass koto, electronics, voice)
BOLT ENSEMBLE(Miranda Hill: bass, Caerwen Martin: cello)
Lisa MacKinney(guitar, feedback)
James Hullick(voice, electronics)+Keiko Higuichi(voice/electronics)
Akiko Nakayama(Alive Painting)
DJ Evil Penguin
https://www.super-deluxe.com/room/4285/

2017年4月13日(木)
Noge Underground and JOLT Presents The Book of Daughters
桜木町ZART(横浜市中区花咲町2丁目67-1)

開場:19時/開演:19時30分
料金(当日のみ):1000円
出演:
a qui avec Gabriel(accordion)
Lisa MacKinney(guitar, feedback)
BOLT ENSEMBLE(Miranda Hill: bass, Caerwen Martin: cello)+Cal Lyall(banjo)


八木美知依


Lisa MacKinney

special talk : BES × senninshou - ele-king


BES - THE KISS OF LIFE
ILL LOUNGE

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes


仙人掌 - VOICE
Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 BESと仙人掌というふたりのラッパーがいなければ、少なくとも2000年代中盤以降の東京の街から生まれるラップ・ミュージックはまた別の形になっていただろう。ふたりは恐縮して否定するかもしれないが、これは大袈裟な煽りではなく、厳然たる事実である。BESと仙人掌はそれぞれ独自のラップ・スタイルを発明して多くのフォロワーも生んだ。どういうことか?

 作品や彼らのキャリアや表現について個人的な論や説明を展開する誘惑にも駆られるが、ここでは多くを語るまい。ひとつだけ端的に言わせてもらえれば、余計な飾りつけなしの、1本のマイクとヴォイスとリズムのみでラップの表現を深化させたのがBESと仙人掌だった。ここにその両者の対談が実現した。ふたりを愛するヘッズはもちろん、彼らをまだよく知らない『ele-king』読者の音楽フリークにもぜひ読んでほしい。そして、仙人掌が2016年に発表した一般流通として初となるオリジナル・ソロ・アルバム『VOICE』、BESが3月に出したサード・アルバム『THE KISS OF LIFE』を聴いてみてほしい。『THE KISS OF LIFE』のプロデューサー、I-DeAにも同席してもらった。ふたりのラッパーの物語は、今年20周年をむかえた池袋のクラブ〈bed〉からはじまる。


ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。 (BES)

BES from Swanky Swipe feat. 仙人掌, SHAKU“Check Me Out Yo!! Listen!!”

ふたりの最初の出会いをおぼえてますか?

BES:〈bed〉ですね。仙人掌は昔からラップが上手くて、初めてライヴを観てすげぇ食らったのをおぼえてる。それで気づいたらウチに来て遊んだりするようになってた。メシア(the フライ)がまだDOWN NORTH CAMP(以下、DNC)にいたときで、CENJU(DNC)もTAMUくん(DNC)もいた。

仙人掌:最初に遊んだのはその4人だったかもしれないっすね。SORAくん(DNC)もちょっといたと思う。そのとき俺は〈bed〉でライヴしてて、気づいたらタカさん(BES)が「そうとう酔っぱらってらっしゃいますね」みたいな感じでいきなり肩組まれて、「お前、とにかくウチ来い」って。俺、まだ高校生だった。

BES:ははははは。17とか?

仙人掌:そうっすね。タカさんの自由ヶ丘の家にいそいそと遊びに行って、それからホント全部教えてもらいましたね。

BES:教えてもらいましたよ、俺も。ENYCEの読み方とかね。俺が「エニシー」って読んでたら、仙人掌に「いや、違います。エニーチェです」って言われてさ。

仙人掌:ははははは。〈bed〉で〈ELEVATION〉(2001年にスタート、2012年にファイナルを迎えた)っていう長く続いたパーティがあったんですけど、そのパーティの第4月曜日にSWANKY SWIPEと俺らが出てたんですよね。当時はまだSWANKYじゃなくて、SPICY SWIPEって名前でやってましたっけ?

BES:そうそうそう。

仙人掌:SWANKY SWIPEに名前が変わったころになると、〈bed〉の人たちはみんな「ヤバいラッパーはBESでしょ!」みたいな感じだった。DJのサイドMCでバリバリカマしているタカさんをフロアで観てましたね。

BES:〈ELEVATION〉がはじまる前に〈bed〉で〈URBAN CHAMPION〉(1999年スタート、現在まで続く)っていうパーティがあったんですよ。そこで“煽りMC”って言うんですか? それをやりまくって盛り上げまくってた。そこにPorsche(SWANKY SWIPEのDJ)もDJ MOTAI(〈URBAN CHAMPION〉のオーガナイザー)もいた。あとIKDくん(NOISE2 SOUND SYSTEM)もいたね。

仙人掌:Gatchaくん(〈bed〉でおこなわれているパーティ〈the River〉のオーガナイザー)もいましたね。〈bed〉がとにかくヤバいラップの見本市だった。そのなかでSWANKYは俺にとって特別だった。SWANKYが新曲をやると、当たり前にフロアのいちばん前に行っていた。突発的に出演者同士がライヴでヴァースに混ざったり、次のライヴでサイドMCやりあったり普通にありましたね。

BESさんの曲のなかでいま思いつく印象的な曲はありますか?

仙人掌:1曲にしぼるのはなかなか難しいですね。ただ、『Bunks Marmalade』(SWANKY SWIPEのファースト・アルバム。2006年)の前にもたくさん曲があって、“Check Me Out Yo!! Listen!!”でも当時の曲のフックを引用させてもらったりしてますね。ライヴもいちばん観ていたし、当時の印象が強いんですよね。タカさんもEISHINくん(SWANKY SWIPEのビートメイカー/ラッパー)もステージでふらふらで壮絶でしたね。

BES:ははははは。

2006年にSEEDA & DJ ISSOの『CONCRETE GREEN.1(改)』がリリースされて、あのコンピ・シリーズが本格的に動き始めますね。そういうなかで、BESと仙人掌というラッパーはそれまでの日本語ラップとは異なるラップのスタイルを打ち出していったと思うんです。自分たちのスタイルをどのような意識で作り上げていきましたか?

仙人掌:『CONCRETE GREEN』は俺らにとっては“第2段階”って感じなんです。その前があるんです。いちばん最初にタカさんの家でラップの話をしているときに、タカさんが強調していたのは「とにかくノれるラップ、フロウなんだよ」ってことです。「いかに“フロウを崩せるか”なんだ」って。それで、ブーキャン(ブート・キャンプ・クリック)とかいろんなダンスホール・レゲエとかを見て、聴いて、学んでいった感じですね。

BES:昔、レゲエの現場に行ったね。バスタ(・ライムス)もメソッドマンもレッドマンもフージーズもみんなレゲエを使うじゃないですか。俺もレゲエが大好きだったからヒップホップとレゲエのふたつを押さえときゃ間違いないと考えてた。だから、ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。あと、SIMONだね。「こういうことするヤツいた! 見つけた!」って。

仙人掌:SIMONは俺と同い年で、18、19のころに出会ってるはずですね。SIMONも当時からずば抜けてヤバかった。

BES:USの流行にただ流されるんじゃなくて、自分の好きなことをやっていたよね。〈SON〉(〈SON OF NINJA〉という〈ニンジャ・チューン〉傘下のレーベル)っていうアンダーグラウンド・レーベルがあって、そういうレコードを〈ギネス・レコード〉とかで買ったりもしていたね。

仙人掌:〈ギネス・レコード〉で日本人のブレイクビーツを2枚買いしたりもしてましたよね。

BES:知らないレコードでも試聴して「かっけー! これ2枚買いだ!」って買ってDJにライヴで2枚使いしてもらってたね。

仙人掌:「このビートはヤバイ!」って反応したときのタカさんの体の動きはすぐわかった。SWANKY SWIPEはライヴで使ってるビートも他と違ってた。俺らの周りでネプチューンズやカニエ、ジャスト・ブレイズなんかにいちばん最初に反応してたのもタカさんだった。ユニークなビートに対しての嗅覚がありましたね。ブーキャンとかの裏ノリを維持しつつ新しいビートのフォーマットにハメていくフロウを作り出していったラッパーは、俺の知る限りでは間違いなくタカさんですね。EISHINくんの存在もデカかったですよね。

BES:超デカかった。EISHINは俺よりもアンテナを広げてるヤツで、のちにヒップホップ以外も大好きになっていって、ソウルを聴きながらチルしてゆっくりする時間を設けたりするようなヤツだった(笑)。ネプチューンズがプロデュースしたバスタの曲が流行ったときにEISHINとふたりでトライトンでビートを作ったりもしたね。

仙人掌:EISHINくん、J・ゾーンが超好きでしたよね。何かと言うと、「J・ゾーン、聴いたか?」って言っていた記憶がある。そういうセンスがすごく面白かった。

BES:グレイヴディガズのアルバムに入ってる、(体を捻らせながら)こんなんなっちゃうようなリズムのビートが超好きで、そういうのをDJでかけたりしてたよね。

仙人掌:俺、EISHINくんとタカさんとの会話でいまでもおぼえていることがあるんですよ。Shing02が『400』(2002年)を出したときに、EISHINくんが「Shing02のラップはキレてる。上手いよね」みたいなことを語っていたんですよ。そういう、変わったリズムへの嗅覚のあるEISHINくんのShing02の聴き方とかも新鮮だった。ラップやリズムの捉え方が圧倒的に独特だった。

BES:俺ら、韻の数とか数えてたしね。例えば「あいう」の母音の単語でヴァースをはじめたら、ヴァースの最後も「あいう」の母音の単語をもってくるとかね。そういう作業もしていたから当時はラップを作るのに超時間がかかった。

SEEDA feat. 仙人掌“山手通り”

SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。 (仙人掌)

ふたりが共作した曲はいくつもありますが、いちばん最初はどの曲でしたか?

仙人掌:盛岡のDJ R.I.Pさんとの曲ですね。

BES:あれ? 何だっけなぁ。俺、超ド忘れしてるぞ(笑)。

仙人掌:未発表曲だけど、俺も盛岡の人たちもみんな持ってますね。IKDくんの家で録りましたね。

BES:今度聴かせて。俺が当時の仙人掌でおぼえてるのはファボラスの曲のトラックに乗せてラップしてて超かっこよかったことだね。

仙人掌:ああ、ありましたね。それはたしか、〈ELEVATION〉の6周年か7周年のときに作ったエクスクルーシヴ音源ですね。あのときはエクスクルーシヴをかましまくってましたよね。やっとラップを録ることをおぼえたぐらいじゃないですか。

BES:そうそうそう。いまはRECの仕方もリリックの書き方も当時とは変わっちゃってるけど、あのときが基礎になっているね。『CONCRETE GREEN』ぐらいからちょっとスタイルや描写の仕方も変わって、スキル的にも上手くなっていった。

仙人掌:『CONCRETE GREEN』からタカさんもラッパーとして加速していったと思う。レコーディングの仕事も増えていきましたね。〈bed〉の人たちだけじゃなくて、メジャーでやっているようなアーティストからも「BESとSWANKYがヤベえぞ」という雰囲気が出てきた。そこで俺はちょっとさびしい気持ちになるというね(笑)。

BES:ははははは。俺も行く先々でDNCの宣伝をして歩いてたんだよね。「仙人掌っていうヤバいラッパーがいる」ってさ。

仙人掌:SEEDAくんを紹介してもらったのもタカさんの家でしたね。元々SEEDAくんはTAMUくんを昔から知っていて(SEEDA、TAMU、EGUOでMANEWVAというグループを組んでいた)、俺が会ったのはそのときが初めてだった。

BES:SEEDAと仙人掌はその後“山手通り”(SEEDAのメジャー・デビュー作『街風』収録。2007年)を作ったりしたよね。

仙人掌:そうですね。タカさんにはいろんな人を紹介してもらった。

BES:あのカナダ人に会ったことおぼえてる?

仙人掌:え? え? ああぁぁぁー、わかります! うわー!(笑)

BES:俺とSEEDAといっしょに会いに行ったでしょ。

仙人掌:あの双子のラッパーの! 彼に「ラップ持ってないか?」って訊いたら、「ラップ? いまやってやろうか?」って答えてきて、「違ぇ、違ぇ、そのラップじゃなくてサランラップだよ!」って(笑)。

BES:そんなこともあったね(笑)。

仙人掌:タカさんがマックスで危ないときにもいっしょにいたりもしましたしね。3、4日寝てないのも普通だったり、テーブルにアサヒのビールの空の缶がブーーーワーーーッと積んであって、灰皿もブーーワーーーッて山盛のタバコだったり。

BES:鼻地獄だったみたいっすよ。

仙人掌:ははははは。そういうダークな時期もありましたね。タカさんとラップしたり遊んでいるうちに謎の状況に巻き込まれていっしょにタクシーに乗って向かうと、「俺がいるべきじゃない場所にいるかもしれないぞ。ヤベえ……」ってこともありましたね(笑)。そういう意味でもホントにいろんな貴重な経験させてもらいましたよ。タカさんはそういう時期を経て、『REBUILD』(2008年)をリリースしていったんですよね。

BES:『REBUILD』を出したあともまた俺はいろいろ食らっちゃったけどね(笑)。

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俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。 (仙人掌)

SEEDA feat. BES, 仙人掌“FACT”

『CONCRETE GREEN』と言えばいわゆる「ハスリング・ラップ」をシーンに認知させて、定着させたコンピでもありましたね。一方で、BACHLOGICがプロデュースした、BES、仙人掌、SEEDAの共作曲“FACT”(『CONCRETE GREEN.3』収録。2006年)も重要な曲ですよね。

BES:そのころの俺はもうファックドアップでしたね。金があるときとないときが激し過ぎて山あり谷ありで大変だった。子どももできて育てなくちゃならなかったですしね。“FACT”を作ってるときはまさにそういう時期ですね。あの曲は現実を目の前にして困惑する自分も出ている。

仙人掌:あの曲をI-DeAさんの家で録ってるときにちょうど子どもが産まれそうな時期でしたね。「(録音中に)嫁が産気づいちゃったらすみません」みたいなことをSEEDAくんに話してたのをおぼえてます。

BES:“FACT”は思い浮かぶリリックをそのまま書くっていうテーマがあった。『REBUILD』に入ってる仙人掌との“Get On The Mic”は、俺が「そろそろコレじゃダメだ。マイクとラップで生きていこう」という気持ちで作った曲でもありましたね。

仙人掌:だから実際、ハスリング・ラップがどうこうでもないと思うんですよ。SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。リリックの言葉遣いに迷っていたり、そのころになるともう韻の数を数えてやっていたら……

BES:追っつかないよね。

仙人掌:そう、ぜんぜん追っつかないじゃないですか。そういうスピードが『CONCRETE GREEN』1枚1枚の、あのヴォリュームにもなってると思う。とにかくラップをビートに乗せて、ヤバい表現があって、それが作品なんだっていうラップとヒップホップの捉え方なんですよ。ホントにずーっとフリースタイルしてましたからね。それで作品も作っていく。そういう物事の捉え方とアウトプットとスピードが俺には衝撃的だった。

BES:しかも世に出す作品としてのクオリティが問われはじめるときだよね。

仙人掌:ホントにそうですね。俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。もちろんこれからも。

BES:もう最初に会ったときにすでに認めてるけどね。

“FACT”はI-DeAさんの自宅スタジオで録音したということですけど、当時のことをおぼえてますか?

I-DeA:俺が中目黒に住んでいたときの部屋に2時間おきとかにラッパーが来て録ってました。『CONCRETE GREEN』の1、2、3あたりのSCARS関連の録音は全部俺ですよ。アカペラをインストに乗せて、エディットして、別バージョンを作ったりしていた。でも、ぜんぜん金が入ってこなかった(笑)。「遊びましょうよ」って連絡があって『ウイニングイレブン』をやって、俺が負けたらタダでRECしてましたから(笑)。そうやってRECしていって気づいたら『CONCRETE GREEN』が出てた。『SEEDA'S 27 SEEDS』(2005年)なんかもまさにそうですね。

ラッパーたちの録音の仕方とか、曲で印象に残っていることってありますか?

I-DeA:DNCやSD JUNKSTA周りのラッパーと一気に知り合って、彼らが入れ代わり立ち代わり俺の自宅スタジオに来てひたすら録音していったから、その記憶しかないんですよね。あと、ビートがかかるとみんなでずーっとフリースタイルしている光景は鮮明におぼえてる。俺はラップしないから、「うぜぇなあ」とか思いながら見てましたけど(笑)。でも、いま10年ぐらい経ってあらためて思うのは、お世辞抜きに『CONCRETE GREEN』に入ってるラッパーたちのクオリティやスキルが高かったことですね。関係も近くて当時はそのことにあんまり気づいてなかったけど、レベルが高かったんだなって。

ちょっと前に田我流くんに『別冊カドカワ DIRECT』という雑誌の日本のラップ特集で取材させてもらったんですよ。仙人掌くんも同席してもらって。そこで田我流くんが、『CONCRETE GREEN』はひとつの「ムーヴメント」だったと言っていて、「いまの俺らがあるのは、『CONCRETE GREEN』の勢いがあったから。いままであのジェットコースターの勢いに乗ってやってきたと言っても過言じゃない」って強調してたのがすごく印象的でした。

BES:俺もそうっすね。それに乗っかった感じですよね。当時はずっとみんなと遊んでいたんですけど、生活が変わればサイクルも合わないし遊ぶ時間もなくなる。だから、いま会うのは〈bed〉ですよね。そういえば、当時、SCARS全員が俺らの下でワチャワチャ遊んでた高校生の卒業式のアフター・パーティみたいな会に呼ばれて行ったことがありましたね。親御さんもいて、「これでどうやっていつも通りライヴしろっていうの?」って雰囲気だった。案の定ライヴ後にシーンとなりますよね。親御さんが「いったい、これは何なの?」みたいな顔してたな(笑)。

一同:だははははっ。

辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。 (BES)

JUSWANNA feat. BES & 仙人掌“Entrance”

BESさんは、「勘繰り」や「バッド・トリップ」の複雑な精神状態をラップの表現に落とし込んで、それを他に類を見ないひとつのスタイルにまでしましたよね。

BES:それをやると絡まれるから誰もやらないんですよ(笑)。“かんぐり大作戦”を作って実際に3、4人に絡まれてますしね。

仙人掌:ヤバい(笑)。

BES:まあ、ハスってると勘繰りがたぶんすごいっす。みんなそうだと思います。

勘繰りって物事の裏の裏まで読んでしまうことだと思うんですけど、本人が意図しないものも含めて、そのことによってラップの中にダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングといくつもの意味が発生していってそれが独特のドープさになったのかなと思うんです。BESさんと同じ経験をしていなくても、聴く側はそのラップからいろんな想像力を喚起させられる余地を作るというか。

仙人掌:たしかに。それはまさにそうかもしれないですね。

しかも、スラングはあったりしますけど、特別に難しい言葉や単語をそこまで使わないですよね。

BES:そうですね。国語辞典を引いたりしていたのは初期だけですね。パトワ語の辞典も引いてましたね。でも、辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。

仙人掌:タカさんの表現はアメコミっぽい部分もあると思うんですよ。俺とメシアくんとタカさんで作った“Entrance”(JUSWANNA『BLACK BOX』収録。2009年)もそうですよね。現実をただありのままに描写しているんじゃなくて、自分たちが何かと格闘しているというある設定を頭のなかに描いてラップしたりしている。それで、あの曲の最後に「火のついたマイク飛ばす」って表現が出てくる。

ああ、なるほど。

仙人掌:やっぱり人と違う言語感覚がありますよね。例えば、金色(キンイロ)をあえて金色(コンジキ)って発音することで言葉のハネやリズムを良くするとか、そういう感覚を当たり前につかんでるんですよね。仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。俺が最初観たときからそういうセンスや感覚がずば抜けていたんです。

BES:ありがとうございます(笑)。仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。

仙人掌:ははは。それはホントに勘弁してくれって思いますけどね(笑)。

仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。 (仙人掌)

仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。 (BES)

仙人掌 feat. ISSUGI & YUKSTA-ILL“STATE OF MIND”

それぞれの最新作を聴いてお互いどんな感想を持ちましたか?

BES:仙人掌は選ぶトラックがやっぱりオシャレだなっていうのはありますよね。

仙人掌:タカさんの選ぶビートは俺にはつねに驚きがありますね。『THE KISS OF LIFE』もかなりヴァリエーションがあるっすよね。

BES:そうだね。作り始めたときは振れ幅があってまとまりのないアルバムにしようと思って。最終的には起承転結のついたアルバムとしてまとまっているけれど、まずはそこまで意識しないで曲作りをしようと思った。次に作る曲のことを考えながらいま作ってる曲をやらないようにした。まず、目の前にある曲に対して思ったことを書いて、完成したら次の曲を録る。そうやって作ったね。(I-DeAを見ながら)先生もそれを手伝ってくれましたね。昔からレコーディングのときに的確なアドバイスをいただいているんで。

仙人掌:B.T.REOくんのビートの曲(“ピキペキガリガリ”)、おもしろいっすよね。ディストーションがかかったようなミックスにしてますね。あれは自分のアイディアですか?

BES:あれは先生のアイディアでしたね。

I-DeA:あれはBESくんのアイディアじゃなかったでしたっけ? BESくんがそういう感じにしたいって言ってたと思う。

BES:もう忙し過ぎておぼえてないっすね(笑)。

一同:ははははは。

MVもアップされている“Check Me Out Yo!! Listen!!”のRECはどうでしたか?

仙人掌:ビートが決まるのもRECも早かったですよね。ふたりでMalikのビートを聴いて「これだ!」って決めて、スタジオ行く前に駅前のマックで1時間ぐらいでリリックも書いた。即行作らないと緊張するんですよ。これまでタカさんと曲を作るとき俺のほうが待たせたこととか多いから。俺も無意識に力が入っちゃうんですよ。でも、俺、タカさんとやるときはラップ、キレてると思うっすね。

BES:たしかにキレキレですね。この曲のアナログも出しますよ。

仙人掌:だから、タカさんとやるときは「このフロウで食らわしてやろう」みたいな気持ちっすね。

SHAKUもかっこいいですよね。

BES:かっこいいっすよね。JOMOさん(〈bed〉のマネージャー/ヒューマンビートボクサー/DJ)に「最近〈bed〉でいい若いラッパーいます?」って訊いたときに名前が挙がったのがSHAKUだったんですよ。自主でCDも出しててかっこいいんですよ。今日、持って来れば良かったな。

仙人掌:このアルバムもそうだし、『REBUILD』も『Bunks Marmalade』も何がヤバいって、ほとんどのメンツが〈bed〉で完結してるんですよ。そうやってフッドを上げることはヒップホップのなかでいちばんかっこいい行為だと思うんですよね。それは何にも代えがたい行為でもあるし、そういうタカさんを尊敬してますね、俺は。

BES:ラッパーとしてのノウハウをおぼえていろんな勉強をして、お世話になってきた場所が〈bed〉だからね。すべてのきっかけとなったのが、俺はあそこだから。俺のホームなんですよ。だから、リリパは〈bed〉でやるって決めてる。今日もこれから〈MONSTER BOX〉でライヴがあるしね。

仙人掌:今日あらためて、普通に、冷静に、タカさんとこうやって話せるの、自分的にヤバかったです。ありがとうございました。

仙人掌“Be Sure”

Stormzy - ele-king

 ロンドンのバッド・ボーイ、Stormzy のギャングスタ・ラップは強さと弱さを曝け出す。

 ロンドンの地下鉄のいたるところに、真っ黒の最後の晩餐のポスターを見る。〈#MERKY〉 という Stormzy 自身のレーベルから、『Gang Signs & Prayer』(以下、『#GSAP』)がリリースされ、巨大なジャケット・ポスターがロンドンの地下鉄のプラットフォームに貼られていた。しかし、そんな「メジャーな」アルバムのタイトルが「ギャング・サインと祈り」というのもかなり意味深である。
 Stormzy はリリースはミックステープ作品を除けば、5枚のシングルのみで、初のスタジオ・アルバムである。公園でラップしたビデオ“Shut Up”、Stormzy のお母さんまで登場する“Where You Know Me From”など凝ったミュージック・ビデオで人気を獲得してきた。そして発表された『#GSAP』は、彼の人生そのものを描こうとする野心に溢れている。

 アルバムの序盤、“First Things First”はこのアルバム全体のイントロにもなっている。

 一言あるカラード(意:有色の)のブラザー
 だが、スマッシュするぜ
 俺が銃をぶっ放そうとするときに逃げるんじゃねぇぞ、
 俺たちが祈りを捧げる前には、ギャング・サインがあったんだ

 A coloured brother with a bone to pick
 But I still get to gunning, don't be running when I bang mine
 Before we said our prayers, there was gang signs (Gang signs)

 ギャングが用いるハンドサインである「ギャング・サイン」と祈りがどのような関係を結んでいるか物語る。
 ギャングスタで暴力的な一面を見せる一方で、彼は自分の弱さも曝け出す。

 お前が彼女と喧嘩している間に、俺は鬱と戦ってたんだ

 You was fighting with your girl when I was fighting my depression, wait

 彼はこのラインで、単にマッチョなゲームや時間を無駄にすることに没頭するMCではないと宣言する。彼自身を曝け出すこと、そしてそれを克服したことをラップすることで、彼の本当の強さを獲得する。続く“Cold”、Ghetts(ゲッツ)をフィーチャーした“Bad Boys”、そしてグライムのヒットメイカー Sir Spyro のプロデュース・シングル曲“Big For Your Boots”は一貫して「俺の方が優れている」というテーマを、コミカルかつストレートにラップしている。MCの聞き取りやすさは、エンターテイナーとしての成長を示している。チキン・ショップでラップする姿は、リアルで面白くもある。

 6曲目のインタールード以降は、彼のストーリーがより前面に出る。Kehlani(ケラーニ)との“Cigarettes & Cush”では、Lily Allen のバック・コーラスとともに「俺が遅れて電話を取れなくてごめんね」と優しく謝り、“21 Gun Salute”では友の死にマリファナとともに祈りを捧げる。“100 Bags”ではお母さんへの愛と感謝を伝える。

 「ママは10万ポンドを見たことがなかったかもしれないけど、今の俺なら100個のバッグを買ってあげるよ」

 'Cause mummy ain't never seen a hundred bags Now I'm like 'Mum, buy a hundred bags'

 14曲目で伝説的なギャングなグライムMC Crazy Titch のシャウト(終身刑に服役中で、なんと7年ぶりに声を届けてくれた)から、Stormzy のヒット曲“Shut Up”になだれ込む。アルバムの最後に作られたという、“Lay Me Bare”では、

 銃を取り主張する、痛みを撃ち、恐怖を殺す
 死ぬ前には祈りの言葉を捧げる。

 Grab this gun and aim it there
 Shoot my pain and slay my fear Before I die, I say my prayer

 アルバムのタイトル「ギャング・サインと祈り」は、“First Things First”とのコントラストでさらに意味深いものとなる。ギャング・ライフとの決別、亡くなった古き仲間への祈り、鬱の克服、Stormzy は『#GSAP』でその全てをグライムというアートフォームで表現している。

RAINBOW DISCO CLUB 2017 - ele-king

 GWの5月3日~5日にかけて伊豆の稲取で開催されるRAINBOW DISCO CLUB 2017の魅力について、渡辺健吾と野田努が語り合いました。詳しいラインナップと入場料、アクセスなどはホームページを見ていただくとして、ここでは何故2人がこの野外フェスを推すのかを読んでいただけたら幸いです。

野田:昨年初めてRAINBOW DISCO CLUB(RDC)に行ったんだけど、行って良かった。いろいろな意味で。
健吾:僕は晴海でやってた時代は何度か行っていて、ビル群や海がすぐそこに見えるロケーションでさっと行けるし、割りと好きだったんだよね。夕暮れの雰囲気とか、海風が気持ちいいとか、いい点もたくさんあった。だけど、やはり伊豆で開催になってまるで違うパーティというくらいよくなったと感じたなぁ
野田:昨年のが伊豆になってから1回目なの?
健吾:いや、2回目だよね
野田:健吾は2年連続だったんだ?
健吾:いや、僕も去年が初なんですよ。伊豆の初回がすごくよかったという話をあちこちでたくさん聞いていて、これは行くしかないだろうと
野田:なんだよぉ~、すっかり行き慣れたベテラン面してるからさー、「ヨロシクお願いします」なんって言っちゃったじゃない。
健吾:いやいや、そうだっけ?
野田:もうすっかり、場慣れしてたじゃん。水道場で食器とか洗っててさ。なにがプチアウトドアだよ。俺なんか、民宿だぜ。
健吾:春先から秋までは、キャンプ含めて子供連れで楽しめる野外のパーティによく行くようになっていて、毎年数ヶ所の野外パーティやフェスに行っているからね。そういう中であそこは楽しいぞ、雰囲気いいぞ、とか、そういう嗅覚は結構磨かれてるんじゃないかと。
野田:俺なんか、多摩川に釣りに行くぐらいだからなー。それはともかく、RDCは素晴らしいよね!
健吾:素晴らしいですね! 噂以上だった。
野田:じゃあ、お互い、どこが良いと思ったのか、理由をいくつか挙げていこう。まずはロケーションだね。これ、重要。
健吾:そうですね。あんな場所よく見つけたなと思うけど、ただの山の中でもないし、かといって日常の空間でもないから、不思議な魅力がある。
野田:公共の交通手段を使って、2時間ぐらいで行けて、山と海がある。ホントによく見つけてくれたって感じ。
健吾:そういう会場だと、他にいくつも違うイベントが開催されて、スペシャル感が薄れるケースもあるけど、あそこはRDCだけだからな
野田:日本の初夏の青々しい風景、そして伊豆の小さな港町……子供がいようがいなかろうが、行きやすいし、場所だけでも気持ちが上がるね。
健吾:突飛な場所でやりすぎて、1年でできなくなっちゃうっていうケースもたくさん見てきてるから、3年続けてやって年々よくなっているという継続ができたらすごくいいなと思うしね。前に千葉のビーチであったパーティに行って、感動するくらいロケーションよかったんだけど、ビーチだから夜中になったらみんな勝手に入ってきちゃって、大変だったらしい(笑)。
野田:野外パーティの難しさってやつか。ぼくが泊まった民宿では、民宿だから共同風呂なんだけど、風呂に入ってくる人がみんなRDCのバンド捲いてんだよ。で、「同じっすね」とか言うと、「去年も来たんですよー」なんてね。今年もリピーター多いんだろうなぁ。
健吾:あれは口コミで広がるタイプの良さだから、そう思う。
野田:そもそも健吾は野外フェスに何を求めているの? なんで、いまも行き続けているの?
健吾:一言では言い表せないけど、遠慮会釈なくいい音、でかい音で踊りたいっていうのがいちばんかな。クラブという日常の延長にある場所では、なかなかそういうことができなくなってしまった。
野田:野外フェスなら家族で行けるのは、たしかにオレら世代にとっては魅力だよね(笑)。でも、オレが野外に目覚めたのはまだ自分がギリギリ20代のときの1993年、最初はグラストンベリーだったんだよね。
健吾:いきなりグラストンベリーか。インパクトがすごそう。僕はあまりロック・フェスで楽しかった記憶がないんだけど、グラストンはどこが良かったの?
野田:どこがって……とにかくカルチャー・ショックだよ。なんていうか、ヘッドライナーがスピリチュアライズドだろうがオーブだろうがヴェルヴェッツの再結成だろうが、そんなことは最終的にはどうでもいいわけ。自分たちがその場にいて、その場にいることを楽しんでる。多様な人間がそこはいたし、年齢層もヒッピーからインディ・ロック、レイヴ世代までと幅広い。そして、その場にいる人たちもそのフェスの重要な要素なんだよ。あの感じ……クラブやライヴとは違った、過激なまでの「ゆるさ」とでも言おうか、あれがオレのなかの理想としてあるんだ。つまり、出演者のタイムテーブルに合わせて客も移動するみたいな、あの感じはまったくないよ(笑)。とことんレイドバックしてるのよ。
健吾:なるほどね。RDCでいいと思ったポイント、僕が嬉しいのは「ゆるさ」なんですよね。もちろん、歴史あるイギリスのグラストンベリーとは違うタイプのものだろうけども、運営サイドと客が信頼しあっていて、ゆるく運営されているっていうのは日本においては貴重だからね。
野田:あのゆるさは素晴らしい。しかもさ、良い音楽が良いオーディエンスを集めるってことを実践してるジャン。
健吾:うん、そう思う。日本だとクラブ系のDJやアーティストがたくさんでるフェスですら、「出演者のタイムテーブルにあわせて客が大移動」みたいなことが起きるから。そうすると、どうしても有名で、たくさんファンを呼べるような人中心のブッキングになってしまったりして。ポスターにずらずら名前が並んでいるのを見るとすげえって思っても、実際にその場に行くと、楽しめないっていうことも多いんだよね。RDCの場合は、たぶん敢えてその逆いってるという。
野田:ヨーロッパのフェスっぽいんだよね。極端に言えば、ライヴを見ずにただテントで生活して帰ってく人も珍しくないっていう感じ。そういう場を作るってホントに難しいと思うんだよ。さっき健吾が言ったように、雰囲気って、オーディエンスや出演者なんかとの信頼関係で築かれるものだからね。その信頼関係をうながすかっていうと、音楽愛じゃない? RDCはそこがしっかりしているよね。
健吾:そこまで裏話やなんかを知ってるわけではないけど、ステージや楽屋の写真を見たり、発言を読んだりしていると、出演者にもRDCという場やコンセプトが愛されているんだと感じるね。
野田:ハンモックとかさ、ああいうのが並んでいるのもいいよね。キッズ広場まであるし。適度に逃げ場もあるし、適度に散歩もできるし。
健吾:キッズ・スペースはだいたいどこの野外パーティでも設けてるけど、ちゃんと遊び場として機能してると感じたのは数少ないね。RDCのキッズ広場はあってすごく助かった。
野田:絵本もいっぱいあるしさ。
健吾:そういえば去年、結構早い時間帯だったけど、瀧見さんがプリンスかけたの覚えてる? まだ昼くらいでそんなに客もいなかったし、皆のんびりした雰囲気で座ったり寝そべって見ていたら、セットの最後の方でいきなりプリンスかけたんだよね。たしか、「Sometimes It Snows In April」だったかな。
野田:それってプリンスでオレがいちばん好きな曲!
健吾:去年は4月の終わりだったし、気がきいてるよね
野田:さすがベテラン。今年も出るんでしょ。彼みたいなのがいるのは心強い。
健吾:僕はハンモックのあたりでそれ聴いてて、少し立ち上がって、高いところからフロアの様子を見ていたら、皆「プリンスだ!」とか騒ぐ感じでもなくて、ゆっくりそこここで立ち上がって、レクイエムみたいにゆらゆら踊る人が増えるのがわかったんだよね。なんかすごく心にしみた。
もちろん瀧見さんの、あそこであのタイミングでプリンスのしかもあの曲っていうのがすごいと思ったけど、客もそれに応えてる感じだったなぁ
野田:あんな良い天気のなかで、あんな切ない曲を……。そういう、その場の物語が生まれるんだよね。クラブでもそうなんだけど、良い野外フェスにはとくにそのときでしか経験できない物語が生まれる。これから2日後にはどうなっているんだろ? っていうワクワクした感じがあって、わずか3日のあいだにいろんなことが起きるんだよな。
健吾:ほんとそう。で、ワガママかもしれないけど、子持ちだと、ピークタイムが深夜~明け方に設定されてるフェスでは、いちばんいいところを絶対に経験できないんだよね。夜通し踊った皆が休みにテントに戻りだす朝はやくにようやく活動し始める。RDCの場合は、夜は平等にみんな寝るというタイムテーブルだから、みんなと同じようにいい経験ができるチャンスがあるのよ。
野田:なるほど。で、テント生活はどうよ?
健吾:もちろん、楽しいよ。半分それが目的だからね。
野田:夜はまだ寒いだろ?
健吾:装備によると思うけど、うちは冬用のシュラフ持っていくからそうでもないね。もちろん、民宿とかホテルでもいいと思うし、お風呂は入れたほうが体も休まるんだけど、テントの場合、子連れだったら一度寝かせてからまたちょっと踊りに行くとかもできるしね。テントサイトからフロアまでそんなに距離がないのもいいね。野田さんもテント張ったらいいのに(笑)。
野田:オレは今年も民宿ですが、稲取の金目鯛はぜひ味わって欲しいですね。港の近くに市場があってさ、そこにもRDCに来た人たち大勢いたぜ。
健吾:実は、今年は前日の夜から行こうかなと思ってて、その日は民宿に泊まる予定なの。だから、金目鯛も食べられるかな(笑)。そうそう、テントと言えば、去年は風がすごく強かったんだよ
野田:いいじゃない。風が強いくらいがちょうどいい。
健吾:いやいや、どこの人気フェスもそうだけど、テントサイトはそんなに広くないし普通よりくっついてちょっと無理にテント張ってるから、きちんと張れてないのね。ペグダウンしてないとか。それで、去年の2日目は奥さんが踊って僕子供の世話っていう担当になってたので、夕飯食べて子供連れてテントに帰ったら、強風でテントが崩壊しそうになっててさ。子供と2人で協力して、1時間以上かけてなんとか風でテントが吹っ飛ばないように張り直して、事なきを得たけどちょっと泣きそうだったよ。深夜に周囲でバンバン物が飛んだりテント崩壊したりしてたから、みなさん自然をなめないようにしましょう、という話はしておいたほうがいいかな。
野田:野外っていうのはリスクもあるから。しかし渡辺家は前泊とは、すげー気合いを感じるな。
健吾:なはは。民宿も楽しそうだなぁと思ってね。気合入ってます。
野田:出演者も相変わらずイイよね! 日本人の出演者だけでも充分なメンツですよ。
健吾:そうだね。個人的には、ここ5年位ずっと気になっていたヘッスル・オーディオの3人が揃って来るのが本当に嬉しい。でも、それ以外のメンツもRDCらしさもあり、とても楽しみだわ。
野田:ベンUFOは、ベース世代を代表するもっとも人気/評価の高いDJだしね。しかし今回は、いろんな世代が混じっている感じが出たね。
健吾:日本だとああいうダブステップ以降のものが混沌としてるパーティあまりないし、今の彼らがどういうプレイするか興味ある。
野田:欧米は、数年前からベース世代とハウス世代が混じり合ったじゃない。日本ではまだその溝があるけど、これからはどんどん溝が埋まっていくと思う。だから今年のRDCは、チャレンジしているよ。
健吾:NOBUくんと一緒にB2Bでやる、フレッドPは、どんな感じか知ってる? NOBUくんは、去年のブラック・マドンナとのスペシャル・セットがすごくよかったから、今年も期待してるんだけど。
野田:フレッドPは作品しか知らないけど、ずっと評価高い人だよね。とくにブラック・ジャズ・コンソーティアム名義の作品はディープ・ハウスが好きな人にはたまらないものがある。
健吾:だよね。僕も彼の曲いくつか聴いたくらいだけど、DJも良いといいな。普段やらない人と一緒にやってしかもいいプレイが聴けるって、フェスの醍醐味だから
野田:しかしフレッドPとNOBUくんのB2Bというのは、まあ音楽を追究して好きでなきゃ、まず思い付かないよ。RDCは、いまでもちゃんとレコード店に行ってる感じが出ているもんな。
健吾:ふふふ。野田さんの注目アーティストは?
野田:さっきも言ったように、主催側のセンスを信用しているんで「おまかせ」って感じなんだけど、敢えて他に名前を挙げるとしたら、寺田創一さんとKUNIYOKIとsauce81のライヴ、野外が似合う井上薫、あとはフローティング・ポインツかね。野外であれを聴くのは楽しみ。
健吾:寺田さんとKUNIYUKIさんとSauce81のセッションってすごそうだよね
野田:今年はディープ・ハウス色が強いね。
健吾:とは言っても、その場にならないとどんな音が出てくるのかわからないのがRDCの楽しさでもあると思う。去年も、ウェザオールが急遽キャンセルになって、マット・エドワーズ (aka レディオ・スレイヴ)が代役で出たでしょう。以前、RDCにマットが出たときはかなりディスコ寄りのセットだったから、去年もパーティのテイストにあわせてそういう感じになるかと思ったら、完全にレディオ・スレイヴ・モードで、ゴリゴリのテクノだったしね。
野田:いずれにしても、良いメンツだよ。話をぶった切るようだけど、弘石君たちがどさくさに紛れて、マッサージ屋を出していたよね。あのお店のエリアに古本屋さんも出店していたの憶えている? ああいうのもナンかイイよね?
健吾:弘石くんの会社がやってるマッサージ屋は、結構老舗だよ。晴海でやってた時代からRDCに出店てしてたんじゃないかな。とはいえ、たしかにRDCでは他ではあまり見ないような出店があるんだよね。他のフェスで食事しようとして、だいたいいつも同じような、フェスに行くたびに目にする店ばかりで食傷気味になるところ、RDCは地元の店が多いよね。
野田:弘石マッサージテントの隣で、地元の魚屋さんが焼き魚と定食売っていたのが良かったな。野外フェスで魚って、なかなかないでしょ(笑)。
健吾:そうだね。少し店のおばちゃんと話したけど、もろに地元の人って感じだった。
野田:さあ、これで、まだ行っていない人も、だいぶイメージが湧いてきたんじゃないのかな。良いダンス・ミュージックも聴けて、伊豆の魚も味わえるなんて……。あとはテント組は自然を舐めるなと。
健吾:3日だからガツガツしないで気候や音楽や景色の移り変わりも楽しめるといいよね。あと5分〜10分ほど歩いたところにあるレッドブル・ミュージック・アカデミーのキュレーションする体育館の会場も、雰囲気違っておもしろいよね。今年はNORIさんや、サファイア・スロウズ、アキコ・キヤマなんかもでる。去年はあまりにメイン会場が良すぎて、ほとんどレッドブル側に行けなかったから今年はあっちでも踊りたい。
野田:最近UKでは、レイヴ・カルチャーが見直されているっていう話だよ。あの暗い時代における、ひとつの抵抗のカタチとして再評価されているんだって。
健吾:そうなのかぁ。まぁわかる気がするなぁ。
野田:オレらもまだまだ伝えていかないとね! なーんて。
健吾:そうですねぇ
野田:じゃあ、オレは伊豆踊り子号の指定席でビールを飲みながら駆けつけるわ! 現地で会おうぜ!
健吾:ははは、飲み過ぎないように(笑)。今年もひとりで来るの?
野田:昨年も家族で来てるって! 今年も子供連れて行くつもりでーす。ダンス・ミュージックを愛するみなさん、当日お会いしましょう!
健吾:あれ、そうなんだ。ひとりで楽しそうにフラフラしてる姿しか見なかったから、てっきりひとりで羽を伸ばしているのかと!
野田:いや……
健吾:ふふふ。まぁ今年も去年以上に盛り上がるでしょう。今から楽しみ!
野田:です!


RAINBOW DISCO CLUB 2017

日程:
2017年5月3日(水・祝日)9時開場/12時開演 ~
2017年5月5日(金・祝日)19時終演(2泊3日)予定

会場:
東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ
(〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3348)

出演:
FLOATING POINTS / RDC EXCLUSIVE: DJ NOBU B2B FRED P
HESSLE AUDIO (BEN UFO / PANGAEA / PEARSON SOUND)
20 YEARS OF RUSH HOUR: SPECIAL GUEST: SADAR BAHAR
RUSH HOUR ALLSTARS (ANTAL / HUNEE / SAN PROPER)
LIVE SESSION: SOICHI TERADA × KUNIYUKI × SAUCE81
LIVE: FATIMA YAMAHA / DJ DUSTIN From GIEGLING
KENJI TAKIMI / KAORU INOUE / KIKIORIX / SISI

GERD JANSON / PALMS TRAX
SKEME RICHARDS B2B DJ NORI / KEITA SANO
AKIKO KIYAMA / 77 KARAT GOLD × KASHIF
SAPPHIRE SLOWS / WONK / MISO

料金:
一般発売チケット(3日通し券)(16,000円)

場内キャンプ券(3,000円)
*炭を使用するBBQは禁止。コンロ、バーナーのみ可能。
*アルコール類、瓶、缶の持ち込みは固くお断り致します。

駐車券(2,000円)
*駐車場出入庫は1回1000円別途必要。

当日券(18,000円)
*前売券が規定枚数に達しましたら当日券の販売はございません。
*20歳未満の入場は保護者同伴の場合のみご入場いただけます。
*中学生以下はチケット不要。

チケット購入:
https://www.rainbowdiscoclub.com/#ticket

店頭販売
テクニーク 03-5458-4143
JETSET 03-5452-2262
ライトハウス 03-3461-7315
GAN-BAN/岩盤 03-5391-8311

ディスクユニオン取り扱い店舗

ディスクユニオンclub music online
渋谷クラブミュージックショップ 03-3476-2627
新宿クラブミュージックショップ 03-5919-2422
下北沢クラブミュージックショップ 03-5738-2971
お茶の水駅前店 03-3295-1461
池袋店 03-5956-4550
吉祥寺店 0422-20-8062
町田店 042-720-7240
横浜西口店 045-317-5022
千葉店 043-224-6372
柏店 047-164-1787
北浦和店 048-832-0076
立川店 042-548-5875
高田馬場店 03-6205-5454
大宮店 048-783-5466
大阪店 06-6949-9219
中野店 03-5318-583

RAINBOW DISCO CLUBとは?
東京を拠点に2010年にスタートした音楽とアートを結ぶフェスティバル「RAINBOW DISCO CLUB」は、良質なダンス・ミュージックを届ける日本の都市型イベントとして、世界的な音楽情報サイト「Resident Advisor」の「世界TOP 10フェスティバル」に毎年選出され、国内外から注目を浴びていました。

その「RAINBOW DISCO CLUB」が、2015年からは伊豆半島 稲取高原の「東伊豆クロスカントリーコース」で大自然に囲まれた野外フェスティバルへと大きく姿を変え、ダンスミュージックの本質を捉えた豪華ラインアップはもちろん、ハンモックカフェ、焼きたてパン、東伊豆の地元食材など充実のフードコート&バー、キッズエリアも備えており、のどかな環境の下、子供から大人までが一緒に楽しめる野外フェスティバルとして心機一転、生まれ変わりました。

https://www.rainbowdiscoclub.com


Ulapton(CAT BOYS) - ele-king

なつかしの90年代HIP HOP

昨年リリースしたセカンドアルバムのカセットバージョンが3/24リリースされます。

CAT BOYS new7inch "LOVE SOMEBODY"
Release 0422

Shobaleader One - ele-king

 スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン。3月8日にアルバム『Elektrac』をリリースしたばかりのかれらが、昨日3月23日、ボイラー・ルームにてライヴをおこないました。そのときの映像が YouTube に公開されています。いやー、バカテクですね。来日公演が楽しみです。下記よりチェック。

超 必 見!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、
ショバリーダー・ワンが
3月23日23時にBOILER ROOMに登場!
衝撃のパフォーマンスを披露!
待望の来日ツアーはいよいよ3週間後!

ライヴ・バンドのコンセプトを根底から改革すべく、スクエアプッシャーが招集した、凄腕ミュージシャンたち:STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)擁するショバリーダー・ワンが3月23日23時にBOILER ROOMに登場! 衝撃のパフォーマンスを披露します!

Shobaleader One @ Boiler Room
https://blrrm.tv/squarepusher

東京公演が即日完売で大きな注目を集めるジャパン・ツアーはいよいよ3週間後! 大阪公演も完売ペース! 東京公演のチケットをゲットできなかったファンは名古屋へGO!

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン待望のデビュー・アルバム『Elektrac』は、3月8日日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットも販売中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック
cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD(¥2,500+税):オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
国内盤2CD+Tシャツセット(¥6,000+税)

Ryuichi Sakamoto - ele-king

 坂本龍一のオリジナル・ソロ・アルバムが3月29日にリリースされる。オリジナル・アルバムとしては、2009年の『アウト・オブ・ノイズ』以来、実に8年ぶりである。

 とはいえ、久しぶりという気はしない。むしろ、2009年以降の坂本は(2014年に癌治療による休養という予期せぬ事態に見舞われてはしまったものの)、その活動は00年代以上にアクティヴな印象ですらあった。
 Ustreamによるコンサートのライヴ映像配信と、コンサート直後の音源配信、2011年3月11日の東北大震災と原発事故以降の社会運動、「NO NUKES」の開催、「箏とオーケストラの協奏曲」(2011)の発表、ジャキス・モレレンバウム(チェロ)、ジュディ・カン(ヴァイオリン)らとのピアノ・トリオでのコンサート・ツアー、このトリオによるスタジオ録音アルバム『THREE』(2012)のリリース、数々のソロやオーケストラ・コンサート、そのライヴ音源のリリース、また、アルヴァ・ノト、フェネスら電子音響アーティストらとの継続的なコラボレーションとアルバム『Summvs』(2011)、『フルミナ』(2011)のリリース、未発表音源集『イヤー・ブック』シリーズのリリースなどなど、じつに多角的に展開していたのだ。病からの復帰以降も、山田洋次監督の『母と暮せば』(2015)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)、李相日監督の『怒り』(2016)など、いくつもの映画音楽を精力的に手掛けている。アルヴァ・ノト=カールステン・ニコライらと作り上げた『レヴェナント: 蘇えりし者』の映画音楽は、グラミー賞ノミネートも果たしたほど。同サントラは〈ミラン・レコード〉から全世界にむけてリリースされヒットを記録した。

 そう、この8年、坂本の姿は常にメディアを賑わせていたのだ。そのような状況の中、彼の姿は作曲家のみならず、「芸術とは何か?」「音楽とは何か?」という視点を、リスナーに分かりやすく提示する21世紀型のソーシャル・アーティストのようにすら見えるときもあった。NHKの音楽教育番組『スコラ』、東京都現代美術館『アートと音楽――新たな共感覚をもとめて』のディレクション、病気治療のため開催は見届けられなかったものの明確なコンセプトを提示した『札幌国際芸術祭 2014』のゲスト・ディレクター、「東北ユースオーケストラ」の音楽監督などは、まさにそんな「21世紀型のソーシャル・メディア=芸術」を提案するような活動ともいえる。
 とはいえ、である。世界中の坂本ファンが待ちわびていたものは、やはり「教授」のオリジナル・ソロ・アルバムであったことも事実だろう。だからこそ、今回のリリースは、大きなニュースなのだ。

 さて、まさに待望の新作だが、リリース前の現在、試聴音源の1秒たりとも耳にすることはできない。坂本自身が「好きすぎて誰にも聴かせたくない」と語ったことが発端(?)となってかどうかは知らないが、現状、試聴音源の類は公開されていないのだ。しかし、リスナーにとっては、まったくの白紙の状態でアルバムを聴ける可能性もあり、ある意味で理想的な聴取環境を提供されているとすらいえる。リリース前にティーザー動画や音源によって、何らかが「とりあえず」聴けてしまうこの時代において、これは挑戦的な告知方法といえる。坂本はアルバムの聴取環境すらも創造しようとしているのだろうか。
 そんな状況のなか、つい先だって、アルバム・タイトル、曲名、アートワークが発表された。アルバム名は『async』。録音は主にニューヨーク。日常の物、彫刻、自然からインスピレーションを得たようで、それは高谷史郎による印象的なアートワークにも象徴されているように思える。また、「アンドレイ・タルコフスキーの架空の映画音楽を書く」というコンセプトも浮かんだらしい。
 と、ここで公開されたトラック・リストを眺めてみると“solari”という曲もあり、なるほど「ソラリス」=『惑星ソラリス』を思い浮かべてしまう。くわえて「アルバム完成記念関連イベント」として、2017年4月4日TOHOシネマズ 六本木ヒルズにおいて、坂本セレクションのタルコフスキー監督作品『鏡』『サクリファイス』のムジーク・エレクトロニクガイザインのスピーカーを使って、最高の音響環境での上映会も予定されているのだから、やはり本作の「ウラテーマ」はタルコフスキーなのだろうか。

 ここでアルバム名『async』に立ち戻ってみたい。これは「Asynchronous=非同期」を表すネットワーク用語である。この非同期という言葉=概念はコンピューターのみならず、人間や、いや自然界もまた非同期といえるだろう。アルバムのアートワークに見られる小さな盆栽のような植物もまた同様だ。ミクロ・コスモスのなかで、非同期的に生成し、そのズレが、さらに大きな反復と生成を生んでいくこと。つまりは差異と反復である。となると、坂本はここで、ジル・ドゥルーズという20世紀を代表する哲学者の代表的な書物の書名を、ネットワーク用語から言い換え=変奏しているのであろうか。アルバムでは“ZURE”という曲が、“solari”の後に、さりげなく置かれていることにも注目したい。

 確かに、タルコフスキーの映画は崇高であり、宗教的であり、大きな救済のメッセージを持っているのだが、同時に、自然界の小さな蠢き、つまりは非同期の集積でもある。たとえば『惑星ソラリス』の冒頭は、小川のせせらぎであり、水の音が非同期的に流れてゆくカットであった。async。非同期。自然=現象。差異と反復。タルコフスキー。水の音。非同期。差異と反復。豊穣なズレ。世界。人間。水。生命。ライフ。そう、前作『アウト・オブ・ノイズ』の「北極三部作」においても表現されていた自然界の豊穣な差異と反復。1999年のオペラ『ライフ』で追求されていた20世紀の歴史と生命の起源。それらの先に生成する、小さな盆栽のごとき豊穣なミクロ・コスモスのようなサウンド? そんな21世紀のサカモト・サウンドを思わず夢想してしまった。
 むろん、聴いてみるまでは何もわからない(まったく違う可能性もある。だが、そのズレもまた重要のはず)。しかし、その音が、清流のように濁りなく、美しく、しかし繊細な逸脱と、豊穣なズレを伴うミニチュアールの美しさを伴った音楽/音響であることに違いはないように思える。いわば「音響作曲家・坂本龍一」の真髄が、慎ましく、美しく、そこに「ある」かのような音楽……。
 そんな「async」な夢想ができる今も、実は坂本龍一のニュー・アルバムを「聴かずして体験している」という豊穣な時間とはいえないか。ともあれ、リリースまであと少しだ。

 本作の日本盤は〈コモンズ〉から3月29日に、海外盤は『サ・レヴェナント』のサウンドトラック盤などをリリースした〈ミラン・レコード〉から4月28日にリリースされる。3月29日には〈コモンズ〉より、『Year Book 1980 -1984』もリリース。また、4月4日から東京のワタリウム美術館では高谷史郎が会場構成を手掛けた「設置音楽展」が開催される。 (デンシノオト)


Ryuichi Sakamoto
async

01 andata
02 disintegration
03 solari
04 ZURE
05 walker
06 stakra
07 ubi
08 fullmoon
09 async
10 tri
11 Life, Life
12 honj
13 ff
14 garden
15 water state 2 [vinyl-only bonus track]

CD盤
発売日:2017.03.29
品番:RZCM-86314
価格:¥3,780 (税込)

アナログ盤
発売日:2017.05.17
品番:RZJM-86312~3
価格:¥7,020 (税込)

https://www.skmtcommmons.com/

CAT BOYS - ele-king

 先日、平凡社から刊行された著書『新 荒唐無稽音楽事典』もあらためて話題になっている音楽家/文筆家の高木荘太。最近まだ目立ってますな。カセット・ストアデイでもひときわ人気を博したのが、高木壮太率いる「CATBOYS」だった。3月24日にはそのセカンド・アルバムがリリースされる。現代の音楽キーワードをシニカルに解説した『新 荒唐無稽音楽事典』の刊行と「CATBOYS」セカンドのリリースを祝して、ここに茨城県の植田氏から届いたライヴレポも掲載しましょう。

 CAT BOYSはラウンジを這い出たのか!  浦元海成(Dr,Vo)、高木壮太(Key,Vo)、NO RIO(Bs,Vo)からなる“午前3時のラウンジ・ファンク・トリオ”CAT BOYSの新作『BEST OF CAT BOYS vol.2』(以下『vol.2』)を一聴して、そう思った。青山の老舗クラブ蜂のハウス・バンドでありながら、思い出野郎Aチーム主催の「SOUL PICNIC」や吉祥寺のローカル・バンドM.O.J.Oのリリース・パーティに出演しキッズも交ざるライヴハウスのフロアを沸かせ、ファースト・アルバム『BEST OF CAT BOYS vol.1』(以下『vol.1』)発表後の3枚の7インチ・シングルでは手練のクラブDJたちにもその名を知らしめた。だから、と結論づけるのはいささか乱暴だけれど、『vol.2』には『vol.1』になかった楽曲の幅があり、密室のラウンジだけでは生まれ得ない緩急がある。そう、この音盤には、彼らのライヴをそのまま再現したような一夜のドラマが刻まれているのだ。ライヴ・レポートを書くように、以下にこのアルバムのレヴューを試みたい。
 

 ごあいさつとばかりにイントロから鍵盤が唸る“Fanfare”で夜の幕が開く。そのままミーターズ・スタイルのファンク・チューン“Switch Back”へと繋ぐ展開は完璧な導入だと言っていい。ここまでですでに身体は温まった。Sly&The Family Stoneの“Somebody's Watching you”をさらりと挿み、浦元による自作曲“Strawberry 2 U”でねっとりと揺らされる。まとわりつくようなグルーヴ、メンバーによる軽妙なコーラスもどこか怪しい味付けだ。そして迎える“Last Tango in Paris”。軽業師、高木壮太ここにあり! と思わず合いの手を入れたくなるこのセンス、白眉のカバーであるのは間違いない。『ラストタンゴ・イン・パリ』劇中の性描写を再現するような、なまめかしい鍵盤の調べは見事の一言。さて、この熱演でライヴは中入り。いまのうちにカラカラになった喉をビールで潤しておこう。
 気を取り直して後半戦。人が散り散りになったフロアに呼びかけるように、Booker T.&the MG's“Melting Pot”、Chic“Everybody Dance”とファンク&ディスコ・クラシックを畳み掛ける。グッとフロアの熱を上げたところで披露するのが、“Take Me To the Mardi Gras”。「ねえ、マルディグラに連れてってよ!/そこでは、みんなが歌い演奏してるの/ダンスも素敵なんだって」と呼びかける、ポール・サイモンによるニューオリンズ讃歌でリズムを変える。いきなりのギア・チェンジに戸惑う聴衆を気づかうように、ゆるやかに熱を保つこの選曲はハウス・バンドしての役割を担ってきたCAT BOYSの懐の深さを顕著に示しているように思う。つづく“Stay Cool”はこの夜いちばんのメロウ・チューンだ。ここまで来ると心はホカホカ、短い映画を見終えたような心持ちである。だけれど、まだ夜は終わらない。幻のバンドManzelのカバー“Space Funk”で、彼らはもう一度フロアの熱を上げていく。じっくりと愛撫をするように聴衆の身体を温めるレゲエ調のアレンジが絶妙だ。さあもう一回! もう一回だけ愛し合おうじゃないか。
 もっともっと! と欲しがる相手がいるならば、遠慮はいらない。当然最後はこの曲、文句なしのパーティ・チューン“Funka de Janeiro”――ただしここではリアレンジされ、より都会的に洗練された“Arabella”として演奏される。原曲の野蛮さを流麗なグルーヴに置き換えた創造的な再構成だ。アンコールは大貫妙子“都会”のカヴァーで涼やかに。まるでボーナス・トラックのような演奏になぜだか少しだけセンチメンタルな気分になる。あれだけ熱くなったのに、あんなに激しく踊ったのに。どうしたって夜は終わるのだ。分かっているのに虚しくなる。頼む。朝よ、来ないでくれ。このままずっと酔いつづけていたいんだ……。

 このレヴューを依頼され、『vol.2』を聴き込むほどに浮かぶのはなぜか性的なイメージばかりだった(まったくもって稚拙ですが!)。CAT BOYSはきっとその夜いちばんの女を落とすための演奏をしているんだろう。だから彼らはまた密室に帰る。彼らに、陽の光はまぶしすぎる。酔いの抜けない身体をずりずりとひきずって午前3時のラウンジに這い戻り、懲りない面々の乱痴気騒ぎのアシストをする。そういうバンドであってほしい。2017年にリリース予定の『BEST OF CAT BOYS vol.3』ではどんな夜が描かれるのか、いまから楽しみに待っていよう。


植田浩平(茨城県のつくば市でPEOPLE BOOKSTOREを営んでいます。
https://people-maga-zine.blogspot.jp/


"BEST OF CAT BOYS VOL.2 DIGEST SAMPLER MOVIE"
https://youtu.be/KdVk6FRGQnA"FRGQnA

"MASTERED HISSNOISE"
https://www.msnoise.info/

"新 荒唐無稽音楽事典"
https://www.heibonsha.co.jp/book/b272188.html

La Femme - ele-king

 なんだかよくわからない。なんだかよくわからないが、強烈に惹きつけられる。3月21日、フランスでいま最も注目を集めるバンド、ラ・ファム(La Femme)が昨年リリースされた新作を引っさげて来日する。ジーン・ヴィンセントやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、クラフトワークやステレオラブといった名前が引き合いに出されるかれらの音楽を一言で表わすと……ロカビリー? シンセ・ポップ? なんだかよくわからないが、かれらの音楽がエキサイティングであることは間違いない。ジャケも独特の雰囲気を醸し出しているし、何よりこのフランス語のヴォーカルは英米のポップ・ミュージックに慣れ切ってしまったわれわれの耳に新鮮に響く。とにもかくにも3月21日、原宿のAstro Hallへ足を運んでかれらの正体を突き止めよう。

ヴィンテージな雰囲気と尖ったサイケ感が混在する
ローファイ・サーフ・サウンドに世界が大注目!
フランスの異才サイケ・パンク・バンド、ラ・ファムが
待望の2ndアルバムをリリース! 来日も決定!

■フランス屈指のサーファーの聖地ビアリッツでサーフ・ミュージックとヴィンテージ・ロック好きのSacha Got(ギター)とMarlon Magnee(キーボード)が出会い結成、パリ移住後、Sam Lefevre(ベース)、Nunez Ritter(パーカッション)、Noé Delmas(ドラム)、そしてフランス・ギャルやフランソワーズ・アルディなど往年のフレンチ・ポップ・シンガーを彷彿させるClémence Quélennec 嬢が加わり今の布陣となったラ・ファム(フランス語で「女、女性」)。2013 年のデビュー・アルバム『Psycho Tropical Berlin』がフランスのデジタル・チャート1位に登りつめ、多くの雑誌の表紙を飾り、数々の有名フェスにも出演、CMに楽曲が使用されるなど、フランスでいま最も注目を集めるバンドのひとつとなった。
■セカンド・アルバム『Mystère』でもその音楽的多様性は健在だ。シンセ・ポップからサーフ・ロック、ステレオラブっぽいインディ・ロック、バロック調に近いギター・チューン、西部劇のサントラ風、そして牧歌的なサイケ・サウンドまでが溶け合う独特の音世界を作り上げている。セクシャルなキワドイ歌詞も刺激的、そのスタリッシュなレトロ調のヴィジュアル、エネルギッシュでトリッピーなライヴ・パフォーマンスも相まって、パリのインディ・シーンで絶大な人気を誇る彼ら。3月には新作を引っ提げてアジア・ツアーを敢行、ついに来日も実現!

『Mystère』は今年度ベスト・アルバムの1枚。最近のインディ・バンドでは滅多にないクールなヴァイブを本作で放っている。
—『The Guardian』誌

大胆で、想像力に富んだ、そして時には、とても楽しいほど奇妙だ。
— 『Uncut』誌

【来日公演】
■3月21日:東京:Astro Hall


ASIA TOUR 2017 - LA FEMME JAPAN DEBUT
(powered by Kaïguan Culture)

2017年3月21日
HARAJUKU 『ASTRO HALL』
https://www.astro-hall.com/
〒150-0001 
東京都渋谷区神宮前 4-32-12
ニューウェイブ原宿B1
https://www.astro-hall.com/schedule/6001/

18: 00 - Door open - DJ nAo12xu (†13th Moon†)
19:00 - 19:30 : Who the bitch
20:00 - La femme - Live start
ADVチケット: 6,000円 (数量限定) Include 1 DRINK
DOORチケット: 6,500円 Include 1 DRINK

チケット取扱店リスト:
https://la-femme-live-in-tokyo.peatix.com

https://www.lafemmemusic.com

アーティスト:LA FEMME
タイトル:Mystère
レーベル:Disque Pointu
フォーマット:CD / 2LP
品番:ZOD-006 (CD) / BB-086 (2LP)
バーコード:3700551781911 (CD) / 3521381539325 (2LP)

[TRACK LIST]
1. Sphynx
2. Le vide est ton nouveau prénom
3. Où va le monde
4. Septembre
5. Tatiana
6. Conversations nocturnes
7. S.S.D
8. Exorciseur
9. Elle ne t'aime pas
10. Mycose
11. Tueur de fleurs
12. Always In The Sun
13. Al Warda
14. Psyzook
15. Le chemin
16. Vagues

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