「UR」と一致するもの

ISSUGI 、格好良すぎるぜ! - ele-king

 ISSUGIや仙人掌って、夜の10時の取材にスケートに乗って来るような連中で、で、12時過ぎに、「じゃ」「お疲れっす」と言って、スケートに乗って帰って行くんですよ。なんかこう、その感じが格好いいんだよね。で、そんなライフスタイル、そんなアーバン・リアリティが彼らの音楽にはよく出ている。
 ヒップホップの文化には、でかいところを相手にぶんどるっていうのがあって、“ペイド・イン・フル”とか、持って行くだけ持って行く金銭闘争というか上昇志向というか、90年代はとくにヒップホップといえばメジャーを相手にそんな格闘をしていたようなところがあるんですけど、DJシャドウ周辺のインディ・ヒップホップと呼ばれるような連中は、パワーゲームには参加せず、好きなことを好きなようにやっていく潮流を作っていった。DOGEAR RECORDS/DOWN NORTH CAMPも大きくはそんな流れにあると思う。過剰にはならない。ビートは黙々と刻まれ、言葉が自然と溢れてくる。
 さて、そのクルーのひとり、ISSUGIやが待望のニュー・アルバム『DAY and NITE』をリリースする。5lack や仙人掌、KID FRESINO、BES が参加。プロデューサーはブルックリン在住のGRADIS NICE。ストリート系とはまさにこのこと。ひとりでも多くの人に聴いて欲しい。

ISSUGI FROM MONJU - DAY and NITE
DOGEAR/Pヴァイン・レコード
Amazon

<トラックリスト>
1. Intro Cut by DJ Scratch nice
2. Navy Nubak
3. Flowr(album version)
4. Skit(PM)
5. Time feat Kid Fresino, 5lack Cut by DJ K-flash
6. Heat Haze feat Mr.Pug
7. How Ya Livin feat BES
8. Water Point(Remix) Cut by DJ Bress & DJ Shoe
9. Midnite Move feat. 仙人掌
10. Interlude(AM)
11. Nite Strings
12. Outro(In the evening)
All Track prod by Gradis nice
#3 "Flowr" prod by Gradis nice & Kid Fresino

ISSUGI - Profile

 MONJU / SICKTEAM / DOWN NORTH CAMP のメンバー。仙人掌、 Mr.PUG と共に MONJU として『CONCRETE GREEN』を始めとする数々の CD への参加で注目を集め、2006 年にファースト EP『103LAB.EP』、2008 年 にはセカンド EP『Blackde.ep』をリリース。2009 年にはソロとしてのファースト・ア ルバム『Thursday』をリリース。16FLIP と共に作られた音楽性は ISSUGI のス タイルや空気を一枚で浮かび上がらせ、音源を通して各地に届くようになる。
 以降は東京内外でライブする中、繋がっていった BEATMAKER達と 2010 年にセカンド・アルバム『The Joint LP』をリリース。BUDAMUNKY(a.k.a. BUDAMUNK)、MASS-HOLE、PUNPEE、Malik、K-MOON as Gradis Nice をプロデュースに迎えた『The Joint LP』は自身の内面をより深く 投影した作品で着実に強度を増した音楽性を示した。2011年にはJAZZYSPORTからBUDAMUNK、S.L.A.C.K.(5lack)とのユニット、SICK TEAMとしてのアルバムや現在NYに渡っているDJ SCRATCH NICE とのミッ クステープ『WHERE OWN WONDER』をドロップ。SICK TEAM のアルバム 『SICKTEAM』では BUDAMUNK、S.L.A.C.K.、ISSUGI、この3人での化学反応や feat に EVIDENCE、ILLA J、ROC MARCIANO を起用するなど話題を集め、海外の HipHop サイトなどでも紹介されることとなった。
その後2013 年 2 月にリリースしたサード・アルバム『EARR』は再び全曲16FLIP と共に作り上げ、ALBUMとしての世界観や中毒性のある BEAT達が高く評価され、Complex UK のサイトでは「The Best Of Japanese Hip-Hop: 25 Artists You Need To Know」の記事に ALBUM とともに記載され、同作は「驚異的な作品(Phenomenal)」とも評された。同年 11 月には以前から数々のJOINTを生み出してきた盟友 BUDAMUNKとのタッグ、ISSUGI & BUDAMUNK名義(II BARRET)でフルアルバム『II BARRET』をリリース。2014 年には SICK TEAM 名義で『SICK TEAM 2』をリリ ースするなどマイペースながらも精力的に活動。2015 年 4 月には ISSUGI & DJ SCRATCH NICE 名義で待望の 4th ALBUM 『UrabanBowl Mixcity』をリリース。2016 年、2 月には ISSUGI×JJJ 名義の FREEMIXTAPE“LINK UP 2 EXPERIMENT"を Dogearrecords の homepage で公開している。そして現在サイゾー動画と連動した自身の番組、"7INCTREE"(毎月 7inch をリリ ースするプロジェクト)を開始。すでに7枚の7inch をリリース中。
https://soundcloud.com/issugi

GRADIS NICE - Profile
アメリカ合衆国 ニューヨーク市 ブルックリン区を拠点に活動するプロデューサー。 近年では IO『Soul Long』、C.O.S.A.×KID FRESINO『Somewhere』、KID FRESINO『Conq.u.er』、ISSUGI & DJ SCRATCH NICE『UrbanBowl Mixcity』、 仙人掌『Be in ones element』、5lack『5 sence』、B.D.『BALANCE』、 Flashbacks『Flyfall』等の ALBUM にプロデューサーとして参加している。
https://soundcloud.com/gradisnice
https://www.instagram.com/gradisnice/

VINYL FOREVER - ele-king

 今度のele-kingの12インチ・アナログ盤シリーズ、通算4枚目は、自分たちで言うのもナンだけどすごいよ。ジジ・マシンの美しき傑作「Clouds」の世界初アナログ・シングル化/B面にはインナー・サイエンスによるリミックス。すごいでしょ。

 イタリアのアンビエント・ミュージシャン、ジジ・マシンが1989年にリリースした『Les Nouvelles Musiques De Chambre Volume 2』は、まさに“E2-E4”のように、後からクラブ系で再評価され、リスペクトを込めてサンプリングされた名曲“Clouds”を収録していることで知られている。1999年のトゥ・ロココ・ロットのヒット・アルバム『The Amateur View』に収録された“Die Dinge Des Lebens”を発端に、2002年にはビョークが“It's In Our Hands”で使い、2003年にはヌジャベスが“Latitude”のネタにしている。2011年にはドーリーミーなヒップホップで話題となったメイン・アトラクションズにもサンプリングされたり、あるいはここ数年、入手困難だったジジ・マシンの過去の名盤『Wind』や『Tsuki』が続けざまに再発されたりと、静かにブームとなっている。

 そんなわけで、彼の代表曲、“Clouds”を世界初の12インチ・シングル・カット! Bサイドにはインナー・サイエンスによる、オリジナルの美しさ/気持ち良さを見事なまでに継承したスペシャル・リミックスを収録。発売は、10月26日発売。再プレスの予定は一切なしです!

Inner Science Profile

 西村尚美によるソロ・ユニット。浸透するように透明できらびやかな音色とメロディー、そこに拮抗する振り幅の広いリズムを操り、色彩豊かで独特な世界観のインストゥルメンタル/エレクトロニック・ミュージックを産み出す。それら自作楽曲の音色がフロア中を満たす没入感あふれるライブと、様々な楽曲を大胆に紡ぐスタイルのDJプレイを各地で展開中。
 自作音によるサウンドコラージュ集の二作目「Assembles 5-8」を2015年12月に、アンビエント・ミュージック集の新作『Living Ambient』を2016年2月に、オリジナル楽曲を2曲収録したデジタル・シングル『Single Compression 1』を2016年6月にそれぞれリリース。

cinnabom - ele-king

 君はsugar plantを知っているかい? 90年代の豪華絢爛たるオルタナティヴにおける月光ないしはシェイクスピアで言えばオフェリアのごとき存在、死んだように静かなサウンドと蝋燭の炎のような声……
 sugar plantのヴォーカル、ショウヤマ・チナツのソロ・ユニットcinnabom(チナボン)が『in the garden』以来10年ぶりにソロ・アルバムをリリースした。現在、sugar plantとしてもライブ活動に勤しんでいると聞くが、このタイミングでのソロ・アルバムのリリースは嬉しい。
 ちなみにショウヤマ・チナツはDJ NOBUやYOGURT & KOYASなどの作品にも参加している。
 さて、待望の今作ではボサノバと自身のルーツであるUSインディ的な要素をミックス、ジュリア・ホルターにも通じる深みのあるサウンドが反響する。参加アーティストはギタリストたち青芝和行、石垣窓、井上新、ドラマーとしてkujunを、またパーカッションに高田陽平を迎えている。この機会にぜひ彼女の世界に触れるように。

https://cinnabom.blog.jp

■cinnabom[ちなぼん] 
 1993年オガワシンイチとともにバンドsugar plantを結成。ベースとヴォーカル、作詞作曲担当。2003年までに日本、アメリカ、ヨーロッパで6枚のアルバムをリリース、3度のアメリカ・ツアーを行う。松本大洋原作の映画『ピンポン』のサントラに"rise"(ALBUM「happy」収録)を提供。1994年 詩集「忘却セッケン」で第十回早稲田文学新人賞受賞。2005年、伊藤ゴローのプロデュースで1stアルバム「in the garden」(333DISCS)をリリース。HMV渋谷ワールドミュージックセールスチャートで1位をマーク。2009年、FUTURE TERROR主宰DJ NOBU率いるDAZZ Y DJ NOBUのオリジナル・トラック・アルバム「DIARY」に作詞とボーカルで1曲参加。また曽我部恵一主宰ROSE RECORDSのコンピレーション「Perfect!」に1曲参加。他参加アーティストは七尾旅人、やけのはら、環ROYなど。2010年、The KLF「CHILL OUT」のDJ YOGURT&KOYASによるトリビュート・アルバムにヴォーカルとして参加。

Bonnie 'Prince' Billy - ele-king

 ケンタッキー州はルイヴィル出身。ボニー・プリンス・ビリーの名称以外にパレス・ブラザーズ、パレス・ソングス、パレス、パレス・ミュージック、ひいては本名のウィル・オールダム名義で着々と出しつづけた音盤を、私なぞ日々くりかえしくりかえし聴きつづけてきたせいで干支がひとまわりするまでナマの彼を拝んでいなかったとはにわかに信じられないが来日公演は12年ぶりである。
 米国インディの中堅どころでありフォークロアをたっぷり吸った歌心をもつ楽曲がどこか輪郭がひしゃげた聴き心地なのは、その風貌のせいもあるとの意見を否定するつもりはありませんが、それをしのぐ音楽のナゾめいたものがボニー・プリンス・ビリーの音楽には秘められている、それを確認するかっこうの機会だろう。さらに今回は新作『Epic Jammers and Fortunate Little Ditties』〈Drag City〉を共作したビッチン・バハスが帯同するという。トータスしかり〈オネスト・ジョンズ〉からのトレンブリング・ベルズとの共作しかり、コラボレーターとしても無類の柔軟性と順応性をみせるボニー・プリンス・ビリーが在シカゴのクラウトロック・バンドとどのようにわたりあうか、フリーフォーキーな弾き語りとハルモニア的な天上のドローンとが重なり合い、アシッドでありながらときにローリー・アンダーソン風のアヴァン・ポップ(おもに“You Are Not Superman”の印象です)を思わせる新作に耳を傾けつつ、首を長くして待ちたい。(松村正人)

Bonnie 'Prince' Billy & Bitchin Bajas Japan Tour 2016
ボニー・プリンス・ビリー&ビッチン・バハス ジャパン・ツアー2016

10月26日(水)京都 アバンギルド(075-212-1125)
京都府京都市中京区木屋町三条下ル ニュー京都ビル3階
出演:ボニー・プリンス・ビリー、ビッチン・バハス、風の又サニー
開場 6:30pm/開演 7:30pm
料金 4,500円(予約)/5,000円(当日)*ドリンク代別

10月27日(木)金沢 アートグミ(076-225-7780)
石川県金沢市青草町88 北國銀行武蔵ヶ辻支店3階
出演:ボニー・プリンス・ビリー&ビッチン・バハス、ASUNA quintet(ASUNA+宇津弘基+黒田誠二郎+ショーキー+加藤りま)
出店:喫茶ゆすらご
開場 7:00pm/開演 7:30pm
料金 3,500円(予約)/4,000円(当日)/2,500円(学割)
*学割:学生証など証明となるものをご持参ください。

10月28日(金)名古屋 KDハポン(052-251-1324)
愛知県名古屋市中区千代田5-12-7
出演:ボニー・プリンス・ビリー、ビッチン・バハス、Gofishトリオ(テライショウタ+黒田誠二郎+稲田誠)
開場 6:30pm/開演 7:00pm
料金 4,500円(予約)/5,000円(当日)/3,500円(学割)*ドリンク代別
*学割:学生証など証明となるものをご持参ください。

10月29日(土)東京 O-Nest(03-3462-4420)
東京都渋谷区円山町2-3 O-Westビル6階
出演:ボニー・プリンス・ビリー、ビッチン・バハス、井手健介と母船(墓場戯太郎+清岡秀哉+石坂智子+山本紗織+羽賀和貴+岸田佳也)
開場 6:30pm/開演 7:00pm
料金 5,000円(予約)/5,500円(当日)*ドリンク代別

10月30日(日)東京 7th FLOOR(03-3462-4466)
東京都渋谷区円山町2-3 O-Westビル7階
出演:ボニー・プリンス・ビリー&ビッチン・バハス with 馬頭將器(The Silence / ex: Ghost)、ダスティン・ウォング
開場 6:30pm/開演 7:00pm
料金 5,000円(予約)/5,500円(当日)*ドリンク代別
チケット:予定枚数が終了しましたので、予約受付を終了いたしました。当日券の有無につきましては、公演当日、会場に直接お問い合わせください。

企画・制作:スウィート・ドリームス・プレス
(詳細は以下をご参照ください)
https://www.sweetdreamspress.com/2016/08/bonnie-prince-billy-bitchin-bajas-japan.html

Grischa Lichtenberger - ele-king

 2010年代的「グリッチ以降・電子音響/テクノロジカルな先端的音楽」は、さまざまな「ノイズ」を誤用することで生まれるスタイリッシュ・エクスペリメンタル・ミュージックであった。この場合の「ノイズ」とは、いわゆる楽音以外のさまざまな音のマテリアルを意味し、俗にいう「轟音」とか「雑音」としてのノイズのみを意味するわけではない。社会から溢れ落ちた諸々の音の残滓を掬い上げるかのように、「ノイズ」をエクスペリメンタル・サウンドとしてコンポジションしていったのだ。
そのような先端的音楽の系譜にあって、90年代中期からグリッチやサイン派を用いたモダン・テクノ(ロジカル)な音響作品のプレゼンテーション/リリースを繰り返してきた〈ラスター・ノートン〉の存在は、とても大きい。現在はカールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)とオラフ・ベンダー(バイトーン)を中心に運営されているこのレーベルは、20年にわたり最先端の電子音楽を見出し、われわれリスナーの知覚にむかって新しい電子音楽を提示している。
彼らのキュレーション能力は常に研ぎ澄まされており、近年は日本人アーティストのキョーカのアルバムも〈ラスター・ノートン〉から発表された(本年11月にレーベル20周年を記念するジャパン・ツアー「ラスター・ノートン 20th Anniv.」が開催される。東京公演は日本初開催「MUTEK」にて!)。
そして2012年、(事実上の)ファースト・アルバム『アンド IV [イナーシャ]』をリリースしたグリーシャ・リヒテンバーガーもまた〈ラスター・ノートン〉によって、その才覚を見出された電子音楽アーティストである。

 ベルリンのビーレフェルトの農村で生まれ育ったグリーシャ・リヒテンバーガーは、インターネット上の「マイスペース」でトラック/楽曲を発表していた。その「マイスペース」を通じて、カールステン・ニコライからコンタクトを受けたというのだ。その結果、2009年にEP『~トレイブギュット』、2012年にアルバム『アンド IV [イナーシャ]』をリリースするに至った。
リリース当時、『アンド IV [イナーシャ]』は、いわゆるオウテカ以降のサウンドとして高く評価されたが(じじつ彼は90年代においてオウテカやトータスなどから影響を受けたという)、しかし、4年が経過した現在の耳で聴き直してみると、先に書いたような極めてスタイリッシュな10年代的ノイズ・モダン・コンポジション・サウンドであったことに気が付く。
『アンド IV [イナーシャ]』には「ノイズ」を通して社会・科学・歴史を考察するような知的な営み、つまりは「コンセプト」を強く感じた。じっさい『アンド IV [イナーシャ]』は、「ニュートリノ観測装置の後継器のことをテーマ」にした作品でもあった。グリーシャは当初、「小説」として、同テーマの作品にとりかかろうとしたようで、彼は音楽を含めて「芸術」を総合的な思考/認識する媒体として認識しているのだろう。

 裏を返して考えれば、彼は創作にあたって常にコンセプト=言葉を必要としているともいえる。1983年生まれのグリーシャは、スタイルの新奇さや実験的手法の目新しさを追及すれば、「新しい」音楽が自動的に生まれるとは考えてはいないはず。あらゆるものは出尽くした。だからこそそれらをいかにリ・サイクルし、そこに新しいコンセプト=思考を見出していくのかが重要なのだ。
そして、昨年2015年に発表されたアルバム『ラ・ドゥムール;イリヤ・ペリル・アン・ラ・ドゥムール(La Demeure; Il Y A Péril En La Demeure)』では、「ドゥムール=「住居」は、親密性や、隔離とその可能性ともいえるが、隔離されて、経済、時間、社会の制約から自由になって作業や探求、実験をする喜びが本作の着目点の中心となっている」アルバムであった。これは20世紀的な技術/居住空間=公共圏の問題に連なる問題ともいえ、いわばテクノロジカルな音楽を通じて、20世紀のモダンの問題(とその限界)を「イメージさせること」が目的なのだろう。
また、この『ラ・ドゥムール;イリヤ・ペリル・アン・ラ・ドゥムール』は、全5部作のシリーズの最初の作品としてもアナウンスされていた。アルバム『ラ・ドゥムール;イリヤ・ペリル・アン・ラ・ドゥムール』を発表し、その後に3部作のEPをリリース、最後にアルバムで締めるという壮大な計画である。いわばグリーシャ・リヒテンバーガーによる20世紀技術史/思想史の音による論文/著作といった趣のシリーズとでもいうべきか。
ちなみにこの隔離された居住空間から社会へのこだわりは、彼がビーレフェルトの農村出身であり、都市の喧騒から距離を置きつつ、創作を始めたことと無縁ではないかもしれない。

 そして本年2016年。シリーズの中核「EP3部作」がセットとしてリリースされた。それが本作である。EPといってもアルバム2枚から3枚分の曲が収録されており、もはやアルバムといってもいいボリュームだ(フィジカルはヴァイナル3枚組の限定500セットで発売され、グリーシャ自身による美しいシルクスクリーンも封入されている)。
このEP3部作は、『シュピールラウム』、『オールゲーゲンヴァルト』、『シュトラルンク』と名づけられ、それぞれ6曲、5曲、8曲のトラックを収録している。グリーシャのサイトでは、『シュピールラウム』には「目に見えない自由」、『オールゲーゲンヴァルト』には「目に見えない存在」、『シュトラルンク』に「目に見えない力」という副題が付けられている。私見だが『シュピールラウム』では、20世紀的な直線的なクロノス時間の問題、『オールゲーゲンヴァルト』ではファシズムに至る群集心理の問題、『シュトラルンク』では原子力などの科学技術の問題が内包されているように思えた。それぞれのEPは、著作でいえば、ちょうど本文の核となる各論といった趣であろうか。くわしくはグリーシャのサイトをご覧頂きたい。彼の手によるシルクスクリーンによるアートも閲覧することができる。

 じっさい、『シュピールラウム』に収められた電子音響的なグリッチなテクノ・トラックは、いやがおうにも進展的な時間を実感させるし、『シュトラルンク』のさまざまな音素材を用いてコンポジションしたミュージック・コンクレート的テクノ・トラックは、人の「声」まで引用しつつ、大衆の無意識にアジャストするように、社会の残滓・残骸を感じるトラックを収録している。『シュトラルンク』は、シンセ音や、細やかな音のレイヤーなどがアンビエンス感覚を助長し、目に見えない原子力のアトモスフィアを表象しているようにすら感じられた。
「映像的でサウンドトラックのような音楽」とはよくいわれる比喩だが、本作のように「思考/思想をトレースするような音」は、あまりない。本作(本シリーズ)でグリーシャは、「思想のサウンドトラック」を実現しようとしているのではないか。先のサイトでは、ヴァルター・ベンヤミンの「複製技術時代の芸術作品」、エリアス・カネッティ『群集と権力』、モーリス・ブランショの『文学空間』なども援用しており、20世紀的な(人文学的な?)問題を、ドイツ人として追求していることは明白だ。以前のインタヴューなどでレヴィナスからハイデガーの問題まで語っていたほどである。

 あえて私なりに本作を語るならば、1909年に「未来派宣言」を発したルイジ・ルッソロによる「イントナルモーリ」を用いた元祖(ノイズ)音響作品の系譜につらなる2010年代的な先進的電子音響作品に思えた。「未来派」は、ファシズムの魅惑=危険性と同時に神経的芸術の幕開けを予言した芸術運動でもあったわけだが、この『シュピールラウム | オールゲーゲンヴァルト | シュトラルンク』は、21世紀的な世界的不穏の只中におけるアフター・モダン・ミュージックとして、戦争と技術の時代たる「20世紀」を総括し、不穏と崩壊の世紀である21世紀中葉にメッセージを発している……。そんなふうに思えてならないのである。時代の節目と境目に鳴る音響?
そう、本作こそ「マテリアルな素材=ノイズをスタイリッシュにコンポジションする2010年代のエクスペリメンタル・グリッチ・テクノ」の「ひとまずの完成形」ではないか。ビート/リズム・トラック面での進化=深化がみられ、ジャズ的なビートの断片をサンプリングし導入している点も聴き逃せない。ジェシー・オズボーン・ランティエとの共作『C S L M』(こちらも傑作)とともに、電子音楽/音響の「現在」を体感することができるアルバムといえよう。

Jameszoo - ele-king

 〈ブレインフィーダー〉の勢いが止まらない。
 ジョージ・クリントンと契約を交わしたことでも話題沸騰中の同レーベルだが、5月にリリースされたジェイムスズーのデビュー・アルバムも、後世に長く語り継がれることになるだろう珠玉の1作である。まだフローティング・ポインツほどの知名度はないけれど、少なくともそれと同等か、場合によってはそれ以上のポテンシャルを秘めたオランダ出身の青年――それがジェイムスズーことミシェル・ファン・ディンサーだ。
 この期待の新星が、なんと11月に来日しちゃいます。11月25日(金)@CIRCUS TOKYO、11月26日(土)@CIRCUS OSAKA。ちなみに両公演にはSeihoも出演予定とのこと。
いまのうちに彼のパフォーマンスを堪能しておけば、将来お友だちに自慢できますYO!

〈Brainfeeder〉の現在の勢いを体現する怪作にして、
ジャズとエレクトロニック・ミュージックとを融合した音楽の1つの頂点ともいうべき傑作
『Fool』をリリースして大注目のJAMESZOO来日公演が決定!!

Lorenzo Senni - ele-king

  去る10月11日、UKの名門レーベル〈Warp〉は、ミランを拠点に活動しているサウンド・アーティスト、ロレンツォ・セニ(Lorenzo Senni)と契約を交わしたことを発表した。まだ具体的なリリース予定などは明らかにされていないが、契約を記念した招待制パーティの日程が公開されている。
 1983年生まれのロレンツォ・セニは、これまで〈Editions Mego〉や〈Boomkat Editions〉などから作品をリリースしており、昨年の4月11月には来日公演もおこなっている。これまでに二度『FACT』誌の年間ベスト・アルバム50にアルバムが選出されたり、アクトレス(Actress)のミックスCD『DJ-Kicks』にトラックがフィーチャーされたりと、すでに各所からの評価は高い。また彼は、自身の主宰するレーベル〈Presto!?〉からフロリアン・ヘッカー(Florian Hecker)やシェラード・イングラム(DJ Stingray)、ゲイトキーパー(Gatekeeper)などの作品をリリースしており、キュレイターとしての眼識も併せ持っている。
 〈Warp〉は昨年、エヴィアン・クライスト(Evian Christ)やケレラ(Kelela)、ラファウンダ(Lafawndah)といった新世代をファミリーに招き入れ、今年に入ってからもダニー・ブラウン(Danny Brown)やガイカ(Gaika)と契約を交わすなど、近年は主にベース・ミュージックやヒップホップ方面の開拓に力を注いできたが、実験的な電子音楽家であるロレンツォ・セニとの今回の契約は、ある意味で本流回帰的な側面もあり、同レーベルの今後を占うものでもあるだろう。
いつも少し遅い。だがそれゆえポイントは外さない。それが〈Warp〉のやり方である。

LORENZO SENNI LIVE DATES

OCTOBER
14 – Glasgow, GB @ RBMA Numbers, The Savings Bank
24 – Montreal, CA @ RBMA, Olympic Pool
27 – New York, NY @ Umbrella Factory

NOVEMBER
6 – Turin, IT @ Warp To Warp, Club To Club Festival
10 – London, GB @ LN-CC (Launch Party)
19 – Milan, IT @ Dude Club (Launch Party)

AHAU - ele-king

最近作業中に聴いていた音楽の中から

AHAU(tomoaki sugiyama)
グラフィックアーティスト、グラフィックデザイナー
1976年横須賀生まれ、東京在住
https://www.instagram.com/ahau_left/

10月16日から、BnA HOTEL Koenjiで展示します。
16日にオープニングパーティーやります。
ぜひ遊びに来てください。


Ahau Exhibition
“The Flyer”巡回展
BnA HOTEL Koenji
2016.10.16[sun] - 11.5[sat]
19:00 - 24:00
Entrance Free
※Close 10.29[sat]、10.30[sun]

Opening Party
10.16[sun] 18:00 - 22:00
LIVE
cinnabom + ARATA(チナボラータ)
DJ
MOODMAN
MINODA
Sports-koide
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Sunday Afternoon Party
10.23[sun] 14:00 - 22:00
DJ
ヤマベケイジ
Q a.k.a. INSIDEMAN
pAradice
弓J
nnn
町田町子
ぬまたまご部長
来夢来人
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Closing Party
11.5[sat] 14:00 - 22:00
DJ
bimidori
THE KLO
do chip a chi
Sports-koide
otooto22
hitch
LIVE
HELIOS
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BnA HOTEL KOENJI
https://www.bna-hotel.com
東京都杉並区高円寺北2-4-7
(JR Koenji Station - 30 seconds)
2-4-7 Koenjikita, Suginami, Tokyo, Japan 166-0003

 ミュージック・テープスを追っかけて早20年。1996年、初めてLAで見たショーはまだはっきり覚えている。アップルズ・イン・ステレオ、オリヴィア・トレマー・コントロール、そしてミュージック・テープスというラインナップだった。
 当時のミュージック・テープスのメンバーは、ジュリアン、アンディ(マシュマロー・コースト)、ジェレミー(ハック・アンド・ハッカショー、ニュートラル・ミルク・ホテル)。アップルズ・イン・ステレオは知っていたが、時間もわからないので、早めに来た。最初のバンド(=ミュージック・テープス)を見て、いままでにない衝撃を受けた。中心人物(=ジュリアン)は、バンジョー、ノコギリ、トランポリン、ギターなど様々な楽器(のようなもの)を演奏し、まるでチンドン屋と遊園地を合体させたようなカラフルなショーで、温かい気分になる。ショーが終わり、まったく会話にならないなりに(英語が喋れない)、どれだけ良かったか、衝撃だったかを説明し、向こうも全身で喜びを表現してくれ、気がついたら彼らの住むジョージア州、アセンスに来ていた。
 彼らと寝食を共にし、生活を知り、夢を具体的に語ってくれた。移動遊園地のサーカス・テントで、シアトリカルなショー(=オービティング・ヒューマン・サーカス)を実現すること。

 ミュージック・テープス(=ジュリアン・コスター)は、すでに5回以上、このオービティング・ヒューマン・サーカスを公演している。その間、ジュリアンは、ララバイ・キャロリング・ツアー、人の家でクリスマス・キャロルを演奏するツアーをしたり(著者は2回参加)(https://vimeo.com/33672614)、無音映画で演奏するワードレス・ミュージック・オーケストラにミュージックソウ奏者として参加したり(https://www.wordlessmusic.org/blancanieves-2012/)、ニュートラル・ミルク・ホテルのリユニオン・ツアーに参加したり(https://pitchfork.com/news/47783-neutral-milk-hotel-reunite-for-tour/)、ちなみに、ニュートラル・ミルク・ホテルの『In The Aeroplane Over The Sea』は1998年リリースに関わらず、10年後の2008年にはもっとも売れたヴァイナル・アルバムの6位に入り、『NME』ではオールタイム・ベストアルバムの98位にランクインしている。
 そんななか、ジュリアンは確実に自分のサーカス・プロジェクトを進行させ、去年の夏は、ハドソンリバー・パークでメリーゴーラウンドでのショーを開催した。

 今回はポッドキャストになって登場。たまたま地下鉄で、メンバーにばったり会い、今回のプロジェクトを教えてもらった。

https://www.orbitinghumancircus.com/

 エピソードは、10/12にスタート、2週間に1回水曜日に配信で、2月の末まで続く。11/9からツアーがはじまり、11/18にはNYにやってく来る。
「ジュニター(門番=ジュリアン)を中心に繰り広げられるオービティング・ヒューマン・サーカスの世界。神秘的に歌う鳥、トロンボーンを演奏する北極グマ、合法な時間旅行(いえ、本当に)、そして、並外れた展示達が貴方を迷わせる」
 2016年11月、周りの雑音から離れて、このマジカルな世界を体験してみよう。ジュニターの切ない摩訶不思議な世界は、現実の世界への新しいアイディアを届けてくれるようだ。

https://www.orbitinghumancircus.com/phone/the-music-tapes.html

The Pop Group - ele-king

 ザ・ポップ・グループが、35年振りのスタジオ・アルバムとなった『CITIZEN ZOMBIE』に続く、通算4作目のスタジオ・アルバム『HONEYMOON ON MARS』をドロップする。注目すべきは、1979年に発表され、いまなおポストパンクの名盤として語られる彼らのデビュー作「Y(邦題:最後の警告)」以来、37年振りにデニス・ボーヴェル(UKレゲエの最重要人物)とタッグを組んだことである。
 さらに、PUBLIC ENEMYの初期3作品のプロデュースを務めたプロダクション・チーム、ボム・スクワッドの一員であったハンク・ショックリーも3曲のプロデュースに関わっている。
 ボーヴェル曰く「再び彼らと仕事ができて、とても光栄だった。彼らは真に善悪を超越しているんだ」、とのこと。
 また本作のレコーディングとミックスは、2016年の初夏に、いくつかのスタジオに分かれて行なわれた。メンバーのマーク・スチュワートはこう語る。「これは造られた憎悪への反抗であり、異質なる遭遇とSF的子守唄で満たされた暗黒の未来への超音速の旅だ」

 『ハネムーン・オン・マーズ』は2016.10.28世界同時発売 / 日本盤ボーナス・トラック収録。日本盤ボーナス・トラックの“Stor Mo Chroi”は、アイルランドの伝統的な楽曲。バンドのメンバー全員でアレンジを施し、カヴァー曲として収録している。

HONEYMOON ON MARS / ハネムーン・オン・マーズ
1. Instant Halo / インスタント・ヘイロー
2. City Of Eyes / シティ・オブ・アイズ
3. Michael 13 / マイケル13
4. War Inc. / ウォー・インク
5. Pure Ones / ピュア・ワンズ
6. Little Town / リトル・タウン
7. Days Like These / デイズ・ライク・ジーズ
8. Zipperface / ジッパーフェイス (※1stシングル)
9. Heaven? / ヘヴン?
10. Burn Your Flag / バーン・ユア・フラッグ
11. Stor Mo Chroi / ストール・モア・クリー

Tr.11: 日本盤ボーナス・トラック

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