「坂本龍一」と一致するもの

三田格 - ele-king

裏アンビエント・ミュージック・チャート


1
David Behrman - Leopday Night - Lovely Music (87)

2
Jean Guerin - Tacet - Futura Records (71)

3
Biosphere / Deathprod - Nordheim Transformed - Rune Grammofon (98)

4
Flotel - Wooden Beard - Expanding Records (05)

5
Queen Elizabeth - Queen Elizabeth - Echo (94)

6
Oophoi - The Spiral of Time - Aurora (98)

7
坂本龍一 - Comica - Warner (02)

8
Iasos - Inter-Dimensional Music - Unity (75)

9
Stephan Mathieu - Die Entdeckung Des Wetters - Lucky Kitchen (02)

10
Mother Mallard's Portable Masterpiece Company - Like a Duck in Water - Earthquack Recordings (76)

Emeralds- Emeralds - Wagon (09)

Alva Noto - ele-king

 90年代後半からノト名義でミニマル・ミュージックに手を染め、すぐにも実験的な体質を顕わにするようになったカールステン・ニコライは、いわゆるサイン波とパルス音の鬼と化し、00年代を通じてエレクトロニカからミュージック・コンクレートへの移行を促した重要人物のひとり。自身のラスター・ノートンから『プロトタイプス』(00年)でミル・プラトーへ移り、続いて01年にリリースした『トランスフォーム』ではリズム感でも優れたところを見せたにもかかわらず、そちらに歩を進める気配はなく、ミカ・ファイニオや池田亮司とのサイクロ、あるいはトーマス・ナック(元ジェイムズ・ボング!)とのオプトや坂本龍一とのジョイントを通じて試行錯誤の範囲をいまでも拡大し続けている。

 オピエイトとの『オプト・ファイル』(01年)など、彼の抽象表現のなかにはアンビエントへと向かう感覚もなかったわけではないものの、この方向性が全開になったといえるのが(テイラー・デュプリーの〈12K〉がサブ・レーベルとしてスタートさせた)〈ライン〉から06年にリリースした『フォー』からだった。トッド・ドックステイダーズとの共作で知られるデヴィッド・リー・マイヤーズ(アーケイン・ディヴァイス)まで借り出してきた〈ライン〉は、ミニマルを基調としてきた〈12K〉に対してサウンド・インスタレイションのレーベルとして位置付けられているようで、その筋の先駆といえるスティーヴ・ローダンからマーク・フェル(SND)のソロなど、抽象表現のセンスは非常に幅広く設定されている。つまり、レーベル・カラーがアンビエント表現へと誘ったわけではなく、彼の実験的な感覚が自然と辿り着いたものがそれだったということになるのだろう。しかも、『フォー』の翌年にはアレフ-1の名義でアンビエント専門のプロジェクトもはじめられ、サンプリング(=コピー)を主体とした『ゼロックス Vol.1』(07年)、『ゼロックス Vol.2』も同傾向の作品としてカウントすることができる。

 『フォー』から4年が経過した『2』は、ニコライ流の実験音楽がアンビエント・ミュージックの文脈に近接することで、まるでクラシック・ミュージックのような響きを帯びるに至っている(いわゆるクラシック・ファンには無理だろうけれど)。抑制されたシンセーストリングスや繊細で優しいメロディの繰り返しは即物的な音響表現がすべてだった過去とは(表面的には)まったく異質に感じられ、シルヴァン・シャボーやヨハン・ヨハンソンといった自意識の低いポスト・クラシカルとも距離を置いている。あくまでもエレクトロニカの発展形であり、その成熟したフォームといえる。この穏やかさは癖になる......『フォー』とは「葛飾北斎」や「ジョン・ケージ」などに向けられた「フォー」を意味していた(なぜかコイルのジョン・バランスまで含まれている)。『2』では、しかし、その対象は拡散し、完成度とは裏腹にこれといった焦点は持っていないようである。

 国内盤は『フォー』(06年)とのカップリングで〈インパートメント〉から。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

 プラスティック・オノ・バンドが、去る2月16日(木)に〈BAM〉で再結成しプレイした。「●●がゲストに来る」......など、私のまわりでもさまざまなうわさが回っていて、ショーはあっという間にソールドアウト! あまりにも早くて、この1日前にはリハーサルをパブリックに公開するショーも追加で催された(こちらもかなり競争率が激しかったらしい)。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!
(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

このショーは、現在のオノ・バンド・メンバー(コーネリアス、ショーンレノン、本田ゆか)に加え、曲ごとに豪華なゲストが登場した。エリック・クラプトン、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードン、ポール・サイモン、ベティ・ミドラー、マーク・ロンソン、シザー・シスターズ、細野晴臣......この上ない豪華なショーである。年齢(77歳!)をまったく感じさせないパワフルなパフォーマ ンスはもちろん、彼らをこの場所に一同に集めることができるYoko Onoの存在はさすがというしかない。このショーを見た人は一同に「彼女はすごい!」と言うし、このゲストたちが、最後に一列に並んであいさつした時は、ニューヨークにおけるYoko Onoと言う存在を重要さを再確認した。

mi-gu
mi-gu
Ghost Of A Saber Toothed Tigers
Ghost Of A Saber Toothed Tigers

 ところで、私が今回ピックしたいのは、数日後に行われたmi-guのショー。mi-guはコーネリアスのドラマー、あらきゆうこさんのバンドで、昨年は〈HEARTFAST〉のCMJショーケースにも出演して頂いた。ショーン・レノンとガールフレンドのバンド、Ghost Of A Saber Toothed Tigers(Sean Lennon & Charlotte Muhl)の前座として出演。ギターのシミーとドラム&ボーカルのゆうこさんの息もぴったりなショーは、数日前のプラスティック・バンドと比べるとこじんまりして、タイプは違うが、雰囲気がとてもよく、観客もアットホームな感じで、声援を送ったりして盛り上げる。観客には、坂本龍一の姿もあり、私の友だち(アメリカ人男)は大興奮して、一緒に写真を撮ってもらったりしていた。最後の2曲にはゲストとしてショーン・レノン、本田ゆか、そしてコーネリアス本人が出演。そして次のバンド(Ghost~)が登場すると、先ほどと、メンバーがシャーロット以外全て同じ! ただ、そのシャーロットが、この世のものとは思えない程かわいい。ショーン・レノンが自慢したくなる気持ちもわかるが、かわいいだけでなく歌も歌えるしベースも弾ける。基本ショーンとシャ―ロットふたりのバンドなのだが、今回はメンバーがいたのでバンド編成になっている。フォーキーなロックで、サウンド的にはショーンのソロに女の子ヴォーカルが入った感じだ。

 2月、NYはファッションウイークでもある。うちの近所のウィリアムスバーグにもファッション・ショーが存在する。NYファッション・ウイークエンドに対抗したウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)だ。ローカルの若いデザイナーたちが斬新なアイディアや手法で洋服を作り、個性あるファッション・ショーを作っていく。 洋服はもちろんのこと、とくに面白いのはデザイナーのプレゼンの仕方。NYファッション・ウイークのように、洋服がメインで、モデルがキャット・ウオークをするだけではなく、こちらは、どちらかというとパフォーマンスがメイン。

フラウク
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドにおけるフラウク
トータル・クラップ
トータル・クラップ
ロボット・デス・カルト
ロボット・デス・カルト

 今回の2010年春夏のショー は、WFWでは初のサンフランシスコのデザイナーで、テクノロジーv.s.自然をテーマにしたライン、フラウク、グラムとパンク、アヴァンギャルドをミックスしたライン、トータル・クラップ、Lace & Voidをテーマにし、普段も着れるドリーミーさが売りのデシラ・ペスタ、主催者のラインであるKing Gurvy等々......。

 個人的にいちばん好きだった、ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティはリーズ・ア・パワーズのミュージック・ヴィデオ"イージー・アンサーズ"のデザインも担当していて、メンバーはモデルで登場したり、アフター・パーティではDJをしたり大活躍。2010年の冬をイメージした野生の冒険のキャラクター、ガチョウ、イルカ、カエルをモチーフとし、カラフルな色を切り貼りしてリサイクルした洋服を着たモデルたちがラッパーに合わせてダンス・パフォーマンスを展開。ホットドッグやアイスクリームを、ウエブサイトの入ったフライヤーと一緒にオーディエンスに投げたり......。

 アートギャラリーでもある、シークレット・プロジェクト・ロボットのライン、ロボット・デス・カルトは、モンスター(ドラキュラ、フランケンシュタインなど)メイクのモデルたちが、ロボット・デス・カルト印の旗を持って、ステージに突如現れ大騒ぎ、そしてすぐに去る。5分ぐらいのショーだったが、存在感とインパクトは圧倒的。

 どのデザイナーもいまあるものを使い、いろんなアイディアを組み込んで、新しいものに変えていく。レイヤーだったり、コラージュだったり、リサイクルだったり。NYファッションウイークと規模はまったく違うけれど、DIY精神の面白いファッションショーだと毎回感心する。

 最後に、このファッション・ショーの主催者のアーサー・アービットに話を訊いてみた。彼は、元ツイステッド・ワンズという名前で、ライトニング・ボルト、ブラック・ダイス、ヤーヤーヤーズ、ライアーズなどを初めてウィリアムスバーグでブッキングした人で、最近では、DJ、イラストレーターとしても活躍している。また、普段もスーツでびしっと決めている人だ。


RNY:ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)はいつ、どのようにはじめたのですか。

アーサー・アービット:3年前、これから出てくる若手デザイナーにプラットフォームを作ってあげたいと思った。

RNY:NYのファッション・ウィークとは、どの辺が異なりますか?

アーサー・アービット:デザイナーたちはデザインをプッシュすること、それを創造する工程にとくに興味を持っていて、ビジネスは透明になっている。

アーサー・アービット
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドの主催者のアーサー・アービット

RNY:当日いろんなメディアのインタヴューを受けていましたが、WFWはどのようにプロモートしているのですか。

アーサー・アービット:いつも同じだけど、主要なメディアやブログサイト、ファッション業界の人たちだね。

RNY:WFWで何が大変で、何が楽しみですか。

アーサー・アービット:いまは楽しいことしか思いつかない。これが自分のやりたいことだからね。

RNY:あなたは主催者でもあり、デザイナーでもありますが、あなたの洋服ライン「King Gurvy」を紹介して下さい。

アーサー・アービット:エクスペリメンタル!

RNY:2010年おすすめのデザイナーは。

アーサー・アービット:フラウク(Flawk)だね!

Massive Attack - ele-king

 ロバート・デル・ナジャ......3Dによれば彼が『ヘリゴランド』のポスターのために描いた絵は、ロンドンの地下鉄では使えないそうで、何故ならそれがあまりにも"ストリート・アート"すなわちグラフィティに見えてしまうからだという。もっともそれはマッシヴ・アタックにとって今回のアルバムが成功していることの証左でもある。しばしデヴィッド・リンチを引き合いに出して語られるマッシヴ・アタックの"暗さの芸術(art of dark)"は、ごくありふれた日常のなかの暗い予感を拡大してみせる。「嵐を予感すると人は背を向ける/不安だから」、と『ヘリゴランド』の"パラダイス・サーカス"でホープ・サンドヴァルが歌っているが、これは彼らの不朽の名曲"アンフィニッシュド・シンパシー"でシャラ・ネルソンが歌った「夜も知らないでどうやって昼を過ごせると思うのか」というフレーズとまあ同じようなもので、マッシヴ・アタックはこの世界の負性のようなものと向き合うことで自らのアートを磨いてきた。彼らは闇を友とし、雨を祈願した。コミュニケーションよりもディスコミュニケーションを、笑みよりも無愛想でいることを選んだ。そうした暗さの芸術家たる姿勢がいまやお馴染みとなった3Dの政治活動にも繋がっているのだろう。

 ただ、ファンにとって複雑だったのは、3Dが積極的な反戦デモ活動をおこしていた時期にマッシヴ・アタックが発表した『100th・ウィンドウ』が実に不可解な出来となっていたことだった。彼らのそもそもの武器――つまり、彼の地の音楽における二大要素=パンクとレゲエを繋ぐことのできた彼らの方法論――それは言うまでもなくヒップホップである。バンドからマッシュルームが去ったとき、多くのファンがマッシヴ・アタックから離れたのは無理もない話なのだ。彼らの暗さの芸術に眩い光沢を与えていたのはマッシュルームのブレイクビートであり、サンプリングのセンスだったのだから。『100th・ウィンドウ』にはそして、ダディー・Gすら関わっていない。豊富な音楽の知識を持つブリストルのベテランDJも離れ、音楽からは"ソウル"が消えてしまった。3Dは明らかに孤立し、そしてマッシヴ・アタックは長い冬眠に入った。もちろん誰一人としてそれを責めなかった。彼らは1990年代にクラシックと呼べる最高のアルバムを3枚(+1枚)も発表しているのだから。

 そんなわけで昨年の先行シングルを聴くまでは、僕はこのブリストルの大物の新作に何の期待もなく、注目もしなかった。だが、2008年にポーティスヘッドの10年振りの『サード』が素晴らしかったように、7年振りの『ヘリゴランド』も見事だった。3Dとダディー・Gはふたたびタッグを組んだ。多くの協力者が集まり、マッシヴ・アタックはソウルを取り戻したようだ。

 昨年リリースされて先行シングル「スプリッティング・ジ・アトムEP」を聴いてあらためて感心したのは、彼らの"暗さ"だった。中毒性の高いスカンキング・ビートをバックに、地上に釘付けにされたようなダディー・Gの(音程をキープできるギリギリの低音の)歌ではじまり、続いてホレス・アンディの高く甘い声、そしてまたダディー・G、そしてまたホレス・アンディ、それから3Dの妖艶な声へと代わっていくそのタイトル曲は、不機嫌というよりは恐怖の領域で鳴っている。そしてタチの悪いことに、曲も歌詞も魅惑的なのだ。「ドープなしではホープはない。失業者のお帰りだ」――とても他人事とは思えないだろ? 結局"スプリッティング・ジ・アトム"はアルバムのなかでもベストな1曲で、曲のモチーフは昨年の、G20金融サミットときの銀行を粉々にしたロンドンにおける反資本主義の暴動ではないかと思われる。(筆者による『SOOZER』誌のための取材で3Dは、暴動はコンサートよりもマシだと大いに肯定している)

 『ヘリゴランド』の1曲目となった、TV・オン・ザ・レイディオのヴォーカリスト、トゥンデ・アデビンペをフィーチャーする"プレイ・フォー・レイン(雨乞い)"の不気味なパーカッションによる墓場のダンスホールもたまらない魅力がある。が、マルティナ(トリッキーの初期の名作におけるヴォーカリスト)の個性あるパンキッシュな声をフィーチャーした蜃気楼のダブステップ"バベル"、アシッディなミニマリズムとマルティナの歌による"サイケ"、あるいはホレス・アンディが歌い、ブレイクビートと震動するベースラインがしなやかな絡みを見せる"ガール・アイ・ラヴ・ユー"のような曲こそファンが待ち望んでいるマッシヴ・アタックかもしれない。これらの曲は『ブルー・ラインズ』へと接続する。そして、エルボウのガイ・ガーヴェイをフィーチャーしたドラッギーな悲歌"フラット・オブ・ザ・ブレード"、西海岸から参加したホープ・サンドヴァルの妖艶な声とピアノ・サンプルのループが目眩を生む"パラダイス・サーカス"は『メザニーン』へと接続する。

 3Dが歌う"ラッシュ・ミニット"もまた『メザニーン』的な――つまりヴェルヴェット・アンダーグラウンド的な暗いトリップで、これが『ヘリゴランド』のハイライトである(残念なことに日本盤ではこの曲の訳詞が割愛されている)。盟友デーモン・アルバーンのソウル・ヴォーカルをフィーチャーした"サタデー・カム・スロー(土曜日はゆっくり来る)"は、エリザベス・フレイザーによる"ティアドロップ"をはっきりと思い出させる。

 3Dによれば、アルバムの歌詞にはあらゆる位相において政治的な問題提起がされているとのこと。なお、日本盤には"フェイタリズム"の坂本龍一と高橋幸宏によるリミックスが収録されている。昨年マッシヴ・アタックがメルトダウン・フェスティヴァルのキュレーターを務めたときに、3Dいわく「政治的な理由から」YMOを呼んでいる。また、ブリアルによるリミックスも近い将来に聴くことができそうである(グレイト!)。

それが劇的に変化した方法を教えましょう。
00年と09年の音楽を比較することです。
本書を開いて、このゲームに参加してください。
あなたは"いまの音楽"をもっと好きになるれはずです。
(ゼロ年代を象徴する150枚のアルバム・レヴュー)

目次
 00年代の孤独(野田 努)
 ノーティーズ・ミュージック(野田努/松村正人/三田格/水越真紀)
  9.11とポップ・カルチャー/坂本龍一、忌野清志郎、そして槙原敬之/フィッシュマンズははたしセカイ系か?/ゆらゆら帝国が電気グルーヴに与えた影響/音楽雑誌はメジャー・レーベルのカタログなのか?/そしてメジャーはなくなった....../"ソフトに死んでゆく"はアンセムとなった/ポップ・ミュージックは平均率から逸脱する、と菊池成孔は言った/そしてみんな日本から出なくなった/で、つまりドローンというのは....../ジョイントを捲く女/相対性理論の反骨精神とは?/未来はない、という感覚/オーガニック系は勉強不足でしょう/ザゼンボーイズとECDは似ている/これから言葉は変わってくるかもしれない
 Loop Finding Myspace(松村正人)
 焼け野原からのやり直し(磯部涼/二木信/野田努)
 サウンド・デモと銀杏ボーイズ/MSCからシーダへ/ヤンキーの思想とは?/日本の痛さから目を逸らすな
 失われた場所を求めて(磯部 凉)
 アルバム・レヴュー
 失われた中年、00年代ノー・リターン(三田格)

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