この映画に関してはコラムで何度か書かせていただいてますが、最近はエロくてグロい音楽活動もなさっておられるという菊地凛子さんと、わたし(注:ブレイディみかこ)の息子がなぜか母子役で共演。などという市井の地べた民の身にとんでもないことが起きてしまった奇跡の作品であり、それが遂に東京開催のイタリア映画祭で上映されることになりました。
で、日本の事情を知らないレオという監督さんが、水曜日の午後2時半なんて中途半端な時間に入れられたんだけど誰も来なかったらどうしよう。とビビっておられるので、「4月29日は日本のバンク・ホリデーです」と伝えるとちょっと安堵されたようですが、なにしろ若き新人監督のこと、「遠い極東の国でガン無視されたらどうしよう」と不安を募らせておられるようなので、こうして母ちゃんがニュース欄にまではみ出して来てしまいました。
本作の見どころは何と言っても、エキセントリシティやオブセッションを芸風にしてきた菊地凛子が、幼い子供との悲しい別れを体験する母親の役を地味&静かに、ある種のぬくもりさえ漂わせながらナチュラルに演じておられる点で、これは彼女のファンにとっても新たな顔の発見になるのではないでしょうか。共演者には、ハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』でルーニー・マーラを手籠めにして大復讐される極悪非道な変態弁護士を演じた(映画ファンの方々には「あー、あの人」と膝を打っていただけるでしょう)ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン(本作では善人役です)や、BBCドラマ『ロビン・フッド』で乙女マリアン役を演じた(こちらも英国在住歴が長い方々には膝を打っていただけるでしょう)ルーシー・グリフィスらがいます。また、オスカー受賞のエディ・レッドメインはイートン校出身でウィリアム王子のご学友、ベネディクト・カンバーバッチも名門私立ハーロウ校出身でリチャード3世の血縁、などと俳優の上流階級化が叫ばれる現代のUKにあって、子役のケン・ブレイディは底辺託児所卒園という輝かしい経歴の持ち主であり、ASDAの3ポンドTシャツを着て出演しております。
さらに、本作の美術&衣装を担当したミレーナ・カノネロは今年『グランド・ブタペスト・ホテル』の衣装デザインで4度目のオスカーを受賞しました。菊地凛子演じる日本人女性の心情の変遷と衣装の色彩の変化が美しくシンクロしていることに注目していただきたい。
また、編集はミヒャエル・ハネケ監督の長年のコラボレーターであるモニカ・ヴィッリ(『愛、アムール』『ピアニスト』)が担当し、統括プロデューサーのエルダ・フェッリはジョン・ライドンの唯一の主演映画『コップキラー』のプロデューサーというだけでなく、第71回アカデミー賞で外国語映画賞、主演男優賞、作曲賞を受賞したイタリア映画『ライフ・イズ・ビューティフル』のプロデューサーでもあります。
こっそりすごい人たちが集まって作った映画なのですが、如何せん宣伝力がありません。日本の配給会社も決まっておりません。ご興味をお持ちの方は母ちゃんにご連絡ください。まずはイタリア映画祭でお会いしましょう(って、わたしは現地におりませんが、監督と菊地凛子さんはおられます。舞台挨拶もあります。また、会場でいかにも場違いな感じの肉体労働者風の爺さんを見かけたら、それは95%わたしの博多の親父です)。
イタリア映画祭2015
『ラスト・サマー』特別上映 4月29日(水・祝)14:30~
https://www.asahi.com/italia/2015/works.html#z
東京会場:有楽町朝日ホール
東京都千代田区有楽町2-5-1 マリオン11階
https://www.asahi-hall.jp/yurakucho/access/
※有楽町マリオンの映画館チケット売場横のエレベーターで11階までお越しください。
※東京会場チケット情報はこちらへ
https://www.asahi.com/italia/2015/tickets_tokyo.html


高校卒業後、ザ・ウィザードという名称でラジオDJとなりヒップホップとディスコとニューウェイヴを中心にミックスするスタイルは当時のデトロイトの若者 に大きな影響を与える。1989年にはマイク・バンクスとともにアンダーグラウンド・レジスタンス(UR)を結成。1992年にURを脱退し、NYの有名 なクラブ「ライムライト」のレジデントDJとしてしばらく活動。その後シカゴへと拠点を移すと、彼自身のレーベル「アクシス」を立ち上げる。1996年に は、「パーパス・メイカー」、1999年には第3のレーベル「トゥモロー」を設立。現在もこの3レーベルを中心に精力的に創作活動を行っている。


Terrence Parker
