騙されてた! サン・アローことキャメロン・ストーローンズは黒人......ではなかった。よく見ると、『ボート・トリップ』(08)のジャケットはO・V・ライトの写真をそのまま貼ってあるだけ(こんなヒドいジャケットはほかにない!)で、『ヘヴィ・ディーズ』(09)はスティーヴィー・ワンダーがうっすらと合成してあるだけ。手塚るみ子風にいうならば「あっちゃー」(「阿川佐和子との対談で泣いたんでしょ?」と聞いた時の返事)、宇川直宏風にいうならば「お返事まってますー!!!! 野際陽子より」(いつでもどこでもそんな感じ)。
実際にはサン・アローはスウェーデンのサイケデリック・ロック・バンド、マジック・ランターンのメンバーで、バリバリの白人もいいところ(ワルシャワ情報によると、自分ではニコラス・ケイジに似ているといっていたらしい)。まー、騙されていたといっても、ほんの数ヶ月のことです。むしろ、もうしばらく騙されていたかった......かもなーとか。
サン・アローとしては08年に『ビーチ・ヘッド』をリリースしてから早くも4作目のソロ・アルバム。マッシヴ・アタックから重量感を除いたような独特のダブ・スタイルを確立させ、なおかつ技術面でも格段の進歩を見せた『ヘヴィ・ディーズ』をそのまま受け継ぐダブル・アルバムで、タイトルに仮託された通り、それとなくストーリー性も有し、使用目的もかなり明確に(笑)。あッつー間に売り切れた先行シングル「バンプ・アップ」は、しかし、入ってません(いまのところアナログには)! 聴きたかった!
基本となるのはソニック・ブームやジミ・ヘンドリックス風のサイケデリック・ロックをダブ風に処理し、ロック的なエッヂを強調することなく、ひたすら煙に巻こうとするスタイル。リズムで人を持っていこうという気はまったくなく、かといってドローンでもないところがほかとは決定的に違う。むしろミニマルが基調で、ベーシック・チャンネルのロック・ヴァージョンというのがいちばん近いだろうか。抑え込もうとしてもロック的な欲望がどうしても噴き出してしまい、その過剰さなり、子どもっぽさが発展の余地として感じられるところが強い。
導入からふわふわとしたギターのループを繰り返すだけのチル・アウト・モードに始まり、"ビート・コップ"から本格的な旅(=パトロール)が始まる。気がつくとヘンなところにいるようなタイプの曲が多く、集中力があった方が楽しめるのか、そうでもないのかはよくわからないままに曲が進んでいく。それでも最後にサイドD全体を使った"ホロデック・ブルーズ"では足元からどんどん景色が変わっていくようなクライマックスに連れ去られ、目くるめくスピードの世界にやられてしまう。この人はまだいくらでも伸びるような気がするなー。












フランスと言う国は、「優雅で艶やか、華々しく華麗」などとイメージしてしまう。実際、表面上はそう見える。筆者はフランスという国の思想、国民性、感性がとても好きで、すでに5~6回は訪れたのだが、毎回その裏の顔に驚かせられる。コスモポリタンならではの荒んだ一面が随所にあるからである。貴族階級の華々しさとコスモポリタンが融合した何かそのフランス独特のギャップに魅了されるのかもしれない......ビューティ&ダーティの反面性が違った形で自身を共鳴しているようで。フランスのようにもっとも芸術産業が国民的支持を得ている国柄で創られるダブステップ......まさにエフのサウンドはこの影響下に培われた産物だ。
今日のベース・ミュージックにおけるニューウェイヴ="ダブステップ"の発展に大きく貢献しているのが〈テクトニック〉である。UKにおけるピュア・ダブ・カルチャーの音楽都市であるブリストルを拠点に、レーベル・モットーの「If your chest ain't rattling, it ain't happening」(胸が高ぶらなければ何も起こってない証拠)が示す通りの活動を続け、すでに数々のビック・アンセムを世に送り出している。ダブステップが南ロンドンにてガラージの突然変異的に誕生してから、それを先導したアーティストたち(デジタル・ミスティック、シャックルトン、ホース・パワープロダクションズ、ローファーなど)が、こぞってダークなガラージ・サウンドを土台とするダブステップに傾倒していったなか、ピンチはダブ、ミニマル、グライム、ガラージをシャッフルしたニュー・フォーム・サウンドで大きな支持を集めている。彼の音楽的バック・グラウンドにおいて、ダブと同等に大きな影響を与えたのが"ディープ・ミニマル"だ・ベルリンのベーシック・チャンネルやチェーン・リアクション、そしてリズム&サウンド......。いわゆるミニマル・ダブである。その影響は現在でもレーベルに色濃く反映されている。
いまや奇才として名高いアントールド主宰の〈ヘムロック〉。UKベース・カルチャーを最先端ニュー・ガラージ・サウンドで引っ張る彼だが、レーベルの起源は2008年「Yukon」に遡る。独特の変拍子によるビート・パターンとミニマルが持つ無機質な静寂性、ガラージが持つヒプノティックで柔軟な高揚性、どこかポスト・ロック的アプローチも垣間みれるサウンド・コントロールによって、ダブステップのシーンのみならず他ジャンルからも注目されているプロデューサーである。今作は、〈ハイパーダブ〉からのリリース「CCTV/Dream Cargo」やアントールド自身の「Walk Through Walls」のリミックスを手掛けたダビー・エレクトロの旗、LVとタッグを組んでいる。フリップサイドには〈ホットフラッシュ〉から「Maybes」、「Sketch On Glass」を発表したUK3人組のホープ、マウント・キンビー(Mount
Kimbie)がリミキサーとしてセットアップする。遊び心を取り入れつつエレクトロ色の強いダブステップで、まさにたコンテンポラリー・ニュー・ガラージといったところ。リリースされるごとに〈ヘムロック〉の歴史が塗り替えられ、吸収した先に......また生まれる。

〈クランチ・レコーズ〉というディープ・アトモスフェリックなドラムンベース・レーベルを率いていたバース(Verse)がペンデュラムの一員としてのビッグ・ヒットを成し遂げて早2年......そのあいだ、ダブステップの末恐ろしい躍進が破竹の勢いで進行......誰も止められない速度で世界中で感染し続けている。その勢いはいろいろなプロデューサーやDJを巻き込んでいるが、彼らも例外でなく、いち早くペンデュラムのアルバムなどで取り入れていた。そしていま、エヌ-タイプ(N-Type)の〈ウィール&ディール〉からベン・バース名義でダブステップ界におけるソロ・デビューを果たす。
先日発表したダーク・サイバー/ニューロ・ファンクの集大成的コンピレーションアルバム『Bad Taste Vol.3』でサイバー・シーンをリードする最後の大物伝道師マルディーニ&べガス(Maldini & Vegas)。長らくバッド・カンパニー名義で活躍していた彼らだが、音楽性の違いなどにより、フロントマンであったDJフレッシュとDブリッジが立て続けに離脱し、ソロ・アーティストとして成功を収めるなか、彼らは一貫してバッド・カンパニーの強力サイバー・サウンドを守り続けている。




















