「S」と一致するもの

Ducktails - ele-king

 みんな大好きダックテイルズ。唄心のあるリヴァーブ・ポップとゆるゆるしたギター・アンビエントでUSシーン最大のローファイ・コロニー〈ウッディスト〉を代表するバンドとなったリアル・エステイトのギタリスト、マシュー・モンダニルのソロ・プロジェクトがダックテイルズだ。リアル・エステイトは先日ウッズとともに来日公演も果たし、両者の日本での人気ぶりから推しはかるにこんな説明は不要かもしれない。だが、なぜリアル・エステイトやダックテイルズが支持されるのかということについてはもう少し注意を払う必要があると感じる。リアル・エステイトやダックテイルズを聴くということは、モンダニルのあのとろみのあるギターを聴くということだ。いや、「聴く」というよりはそれに「浸かる」「浴する」と表現したい。初めて耳にしたときから、筆者はあの音と「温浴」のイメージとを切り離すことができない。「ヒプナゴジック・ポップ(入眠ポップ)」という、なかば揶揄を含んだ形容もわからなくはない。しかしただ眠りに就くというよりは、温浴のように、治癒とかデトックスといったフィジカルな効能を想像してしまう。岩盤浴で身体の芯から温まってさらさらの汗が大量に出る、とか、ゲルマニウム温浴で体内の老廃物を排泄する、といったイメージがあの穏やかな熱と光源を持った音から湧いてこないだろうか?

 曲の骨だけを取り出せば変哲のないゆかしきアメリカーナである。これを当世風に仕立てているのが彼のサウンドのとろみに他ならない。リヴァーブでもフィードバック・ノイズでも、昨今のインディ音楽はクリアさを嫌う傾向が基調となっている。ドリーミーだったりシットだったり、音の濁り方はアーティストによってさまざまだが、ダックテイルズの場合は養分がたっぷりと溶かし込まれているようなとろみがついている。色でいえばはちみつ色のギター・サウンド。そして少ない展開のなかに、短く印象的な旋律が押し込まれる。わずかなフレーズの繰り返しやアルペジオによって、ゆるくスウィングするようにリズムが形成される。心地よいことこの上ない。USのインディ・ポップの伝統を高度に消化しているにも関わらず、なんとなく、これは音楽ではないんじゃないか、音楽ではなくて効果なのじゃないかと思えてくる。

 本作は、2009年〈オールド・イングリッシュ・スペリング・ビー〉からリリースされ、バンドの評価をいっきに高めた『ランドスケープス』に続くアルバムで、〈ウッディスト〉からは最初となる通算3枚目。非常に肌細かいリズム感覚を備えている。ペイヴメントからディアハンターまで、優れたローファイ・バンドがタイトなリズム感を有しているというのは筆者の持論であるが、ここでも大別すれば3種類のトラックがバランスよく乗り入れてアルバム全体に大きなうねりを与えている。アンダンテ、モデラート、ブロークン、と名付けよう。アンダンテはその名の通り、歩く速さのトラックだ。"ハミルトン・ロード"や"ドント・メイク・プランズ"、"キリン・ザ・ヴァイブ"など、CSNYやバッファロー・スプリングフィールドをフィルム栽培したような、ひょろついた足取りながらしみじみと唄を聴かせる数曲。モデラートはそれよりやや速く、切ないエモーションを垣間見せるトラック。"スプリンター"や"サンセット・ライナー"、"リトル・ウィンドウ"などがこれにあたり、作品に動きを与えている。今作でくっきりとしてきた方向性ではないだろうか。そしてブロークンは、それらの曲のつなぎ目に破れやほころびを生じさせるアンビエント寄りのトラック。リズムはあるが跳ねたり躍動したりはしない。ところどころに口を開けた穴のように配置されていて、"ザ・レイザーズ・エッジ"の定まらないピッチや"ポーチ・プロジェクター"のフィールド・レコーディングに重ねられた即興を聴くともなく聴いていると、足裏デトックスのように身体からどろどろとした毒素が流れ出してくるかに感じられる。

 インディ・シーンにおいて大きな信頼と支持を得ているアーティストのうち、少なからぬものが音楽の意味性にではなく機能性にフォーカスしているように見えるのは興味深いことである。〈ウッディスト〉周辺は、おおむねそうだ。チルウェイヴ/グローファイ批判なども、じつはその逃避的傾向以上に、音楽が気持ちよさや心地よさに支配されてしまってよいのだろうかという年長世代からの危惧が反映されているのではないか。個人的にはそれもよく理解できる。早晩このグローファイ・バブルも弾けるだろう。しかし、その後に意味性への揺り戻しが来るのかといえばそれも安直な想像である。〈ウッディスト〉たちが未来に何を残すのかしかと見届けたい。

KURANAKA 1945 (ZETTAI-MU) - ele-king

ROOTS and DUB CHART 2010


1
Twilight Circus ft. Gregory Isaacs - Touch Not - M Records

2
Twilight Circus ft. Sugar Minott - Take It Slow - M Records

3
Creation Steppers - King Nebuchadnezzar - Jah Tubbys

4
Shanti-Ites with Emanuel Joseph - Psalms From The Heart - Falasha UK

5
The Disciples - Return To Addis Ababa ft. Dixie Peach - Disciples Vintage

6
Iration Steppas - Dub Arena - Dub (Soon Come)

7
King Alpha feat Turbulence - For Life - King Alpha

8
Zion Train - Rainbow Children - Dub (Soon Come)

9
Masamatix ft. icchie - Vitamine P - Dub

10
Vibronics feat. Cha Cha - Dub (Soon Come)

DIGITAL SOUNDBOY CHART 2010


1
Benga - Ghetto Story - Dub

2
Don Carlos - Favourite Cup (Juju & DJG Remix)- Narco.Hz

3
Tes La Roc - We Nah Run - Dub

4
RSD - Dance Hall Rock - Zettai-Mu (Mar. 2011 On Store !! )

5
Andreya Tariana - A Town Called Obsolete (Mala Remix) - Ninja Tune

6
DJ Trax - Opening Shot feat KJ Sawka (Fanu Remix) - Dub

7
Uncle Sam - Thoughts (Japan Remix) - Dub

8
DJG - Spacecakes - Wheel & Deal

9
Donaeo - Riot Music - Digital Sound Boy

10
Last Jungle - Sub Focus - Pilse Recording

NO AGE - JAPAN TOUR 2011 - ele-king

 LAのインディ・ロック・シーンのもっともクールな連中、ノー・エイジがやってくるんだけど、これ、見逃さない手はないね。知っていると思うけど、LAにおける現代版CBGBとも言えるユース・アート・スペース、〈THE SMELL〉の運営に関わるオピニオン・リーダー的バンドがノー・エイジである。徹底したDIY精神を貫きながら、音楽のみならずヴィジュアル~パフォーマンス・アートの領域にまで影響を及ぼしてている連中だ。
 英〈ファット・キャット〉からリリースされたコンピレーション『WEIRDO RIPPERS』に収録されたのがはじまりだった。で、2008年に強力なデビュー・アルバム『NOUNS』を〈サブ・ポップ〉から発表、これが"ロックの新しい音"を代表する1枚となって、また、ネオシューゲイザー/シットゲイズ・ブームともリンク、さらにレディオヘッドやコーネリアスがNO AGEのTシャツを着用するなどいちやく時代の寵児となった。
 2010年は素晴らしいアルバム『Evetything in Between』をリリースしているし、今回は待望の再来日ですよ!

【公演詳細】

2.15 tue @ 大阪 SUNSUI
NO AGE
Special Guest : A-ron the Downtown Don
Open 18:00 Start 19:00
¥5,000 (Advance) 1 drink charged @ door
Info: 06-6535-5569 (SMASH WEST),
06-6243-3641 (SUNSUI)
TICKETS: ぴあ (P: 122-581) 0570-02-9999
ローソン (L: 51998) 0570-084-005
e+ (epuls.jp)

2.16 wed @ 東京 CLUB QUATTRO
NO AGE
Special Guest : A-ron the Downtown Don
Open 18:00 Start 19:00
¥5,000 (Advance) 1 drink charged @ door
Info: 03-3444-6751 (SMASH)
03-3477-8750 (CLUB QUATTRO)
TICKETS: ぴあ (P: 122-721) 0570-02-9999
ローソン (L: 71941) 0570-084-003
e+ (epuls.jp)
岩盤 (03-3477-5701)

Daniel Steinberg - ele-king

 エレクトロクラッシュにノれなかった......と松村正人はいう。そのような極度のマイナー体質のせいで、結局は『スタジオボイス』が休刊になったという言葉を僕が呑み込んだり、呑み込まなかったりしていると、何かを説明し終えたような表情で松村正人は実験音楽の話をはじめる。あいつは実験音楽の話をしていれば機嫌がいいのである。そして、メルツバウを意識してベースを弾きはじめる。僕にはなぜかそれがヒルビリー・バップスに聴こえてしまう。あはは。
 かくゆう、僕がフロア・ミュージックから離れたのはプログレッシヴ・ハウス・リヴァイヴァルが原因だった。エレクトロクラッシュはまだしもレイヴ・カルチャーを通過した80年代のリモデルだったところがあるのに対し、ボーダー・コミュニティだとかなんだかはまったく同じことの繰り返しにしか思えなかった。あれをもう一度、頭からリピートするのかなと考えただけで、面倒くさくなってしまったのである。ゴールド・パンダが昨2010年のベスト・アルバムにルーク・アボットを挙げていたりすると、別に無駄な動きだったわけではなく、次につながるものだったのかなとは思ったりもするけれど、まー、大して好きな曲がかからないダンス・フロアにわざわざ足を向けようという意欲が低下しはじめていたことも少なからずではあった。
 そのうち気がつくと僕はヒップホップとドローンばかり聴くようになっていた。前者はともかく、イエロー・スワンズやマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンが描き出すイメージは明確なビートを伴わないだけで、テクノやハウスが発揮していた機能とそれほど違うことをやっているとは思えなかった。DJにそれらを混ぜても反応する人もいなかったわけではないし、一時期まではDJカルチャーの範囲でそれらを扱うことは可能だとも考えていた。いまとなってはそのように考えていた自分を甘かったと反省するしかないけれど。

 ドローン系のミュージシャンに話を聴いてみると、彼らが一応にクラブ・カルチャーを否定しているという事実に行き当たる。マイ・キャット・イズ・アン・エイリアンがジャッキー・オー・マザーファカーのトム・グリーンウッドと組んでブラック・マジック・ディスコを名乗ったのはクラブでしか演奏させてもらえないことに対する皮肉だったというし、バーニング・スター・コアが出版名にドローンディスコと付けているのも単なる悪い冗談に違いない。その当時はほとんど聴かなくなっていたとはいえ、レイヴ・カルチャーと過ごした日々がそうあっさりと記憶から消え去るわけでもないので、ダブル・スタンダードというのか、多重人格的というのか、とにかく気持ち的にはややこしいことになっていく。KTLのライヴにある種のグルーヴを感じたりすることで、そのややこしさはさらに複雑なものになっていく。
 ドローンが変化しはじめたのはやはりグローイングからだろう。06年にリリースされた『カラーウィール』で、彼らはリズムへの興味を示しはじめる。いわゆるドゥーム・メタルを原型としていた彼らが試行錯誤の鬼と化した結果、フィールド・レコーディングをカット・アップ的に差し挟んだりして「ドゥーム・メタルのファンに嫌われるようなことがやりたかった」という感覚が全体の意志を反映し、それを先取りしたのかどうかはわからないけれど、ダブル・レオパーズやローブドアーが同じことをやり続けるのはいささか難しい状況を召喚し、マウサスやイエロー・スワンズが解散するという符号まで呼び寄せている。あのときから5年。ドローンの普及に一役買ったといえる〈ノット・ノット・ファン〉が今年に入って、傘下にダンス・レーベルをスタートさせた。〈100%シルク〉と名付けられた12インチ・シリーズは、イタロ-ディスコを意識したようなイケてないデザインで、それこそドローンディスコを体現しようとするような奇妙なグルーヴを弾き出す。セックス・ワーカーの変名であるアイタルはいささか既存のダンス・レコードに擦り寄り過ぎた印象もあるけれど、トロントのダブ・バンド、ザ・ディープによる「マディ・トラックス」は明らかにサン・アローやLAヴァンパイアーズの次に来るものを予感させる。この動きは〈100%シルク〉にとどまらず、もっと大きなものになっていくだろう。すでにハニー・オーウェンズが華麗なる転身を果たしているように。

 ......と、こんなことを書いていたらたまにはプロパーによるダンス・アルバムを聴いてみたくなり、今年の初めに来日していたらしいダニエル・スタインバーグのソロ1作目に手が伸びた。スウィング・ミニマルと称されるエレクトロ・ハウスの洒脱な才能が躍る『シャラップ』は能天気になりまくったジェフ・ミルズのようで、ヴィラロボスやリッチー・ホーティンが回しまくっているという情報にも頷ける仕上がり。その昔、ハリー・AXTの名義で珍作を連発していたプロデューサーです。なるほど、これは腰が軽い。

20 Guilders - ele-king

 ユーロ貨幣がなかった時代のオランダ旅行のとき、ギルダー紙幣の鮮やかなデザインに感心した。20ギルダーで何が買えたか思い出せないが......とにかくギルダーのお札は綺麗だと思った。とくにヒマワリがデザインされた黄色い紙幣が好きだった。やけにサイケデリックに見えた。
 日本では、サイケデリック・ロックはあらかじめアンダーグラウンドであることを強いられている。いま思えば90年代が特別だったのかもしれない。ボアダムス、コーネリアス、あるいはスーパーカーなど、彼らはポップフィールドでそれをやったものだった。が、基本的にサイケデリック・ロックは表舞台には出てこない。例えばの話、ドラッグ・カルチャーに関しては語ることさえ気兼ねされ、そうならざる得ない空気がこの国にはたしかにある......が、しかし、そんな抑圧のなかでもサイケデリック・ロックへの情熱がこの国からなくなったことはない。

 これは田畑満とスズキジュンゾによる20ギルダーズによる正式なファースト・アルバムだ。そのアートワークが60年代の、ローリング・ストーンズやスモール・フェイセイズで有名なUKのレーベル〈デッカ〉のパロディになっていて、CDの盤面にもモノラルが一般的だったあの時代の「STEREOPHONIC SOUND」という表記がデザインされている。実際アルバムの音はザ・バーズ(というか、ストーン・ローゼズといったほうが若い人には通じるか......)を思わせる"片翼の影"や"エマニュエルは別"、西岡由美子(Americo)のコーラスをフィーチャーした、60年代のローリング・ストーンズを彷彿させる"ストロベリー・キッス"など......キャッチーな曲が並んでいる。ふたりのギタリストは打ちひしがれながらおかしみのある言葉で60年代後半のサウンドを21世紀の日本の風景に落とし込むが、それはこのアルバムの前菜である。
 メインディッシュは、それぞれが演奏するギターが黄昏時の雲のように柔らかく重なる"デアー・パピ"、あるいは息を呑むほど美しいアコースティック・ギターの掛け合いによる"震える声、沈む部屋"あたりだろう。これらは......喩えるなら、大衆居酒屋をコーヒーショップに変換するかのような、素晴らしい陶酔を運んでくれる。とくに"震える声、沈む部屋"は最高のアシッド・フォークで、この曲が収録されているだけでもアルバムには価値があると言えるだろう。そして真のクライマックスは"風が"という曲だ。ラッパーが描写する都市生活者の孤独な叙情を彼らはサイケデリック・ロックによって表現していると思われるこの曲は、本物のボヘミアンとして生きる彼らのコズミック・ブルースのようだ。エモーションを全開にしたギターが、街を吹き抜ける風のように舞っている。最後の"母の日のアダム"はアルバムの締めくくり相応しい、チルアウトなフィーリングのフォーク・ソングである。ちなみにCDのインナーには居酒屋でポーズを取るメンバーの写真があるが、これは......間違ってもパブ・ロックの類ではない!

 アシッド・マザーズ・テンプルSWR&梅津和時による『サックス&ザ・シティ』も、この国のサイケデリック・アンダーグラウンドの底力を見せつける1枚だ。AMT&SWRは、ボアダムスと並んでアニマル・コレクティヴやブラック・ダイスなどブルックリンのシーンに影響を与えたルインズの吉田達也、想い出波止場のベーシストであり、赤天やZoffyなど多数のユニットに参加している(夏の間は山小屋の管理人をしてるという)津山篤、そして(ATMの中心人物として知られる)河端一という強力な3人によるプロジェクトで、サックス奏者の梅津和時を加えたここでの演奏は、リスナーをフリー・ジャズとサイケデリックのカオスの海へ放り投げる。
 その恐るべき『サックス&ザ・シティ』は2009年のライヴ演奏を吉田達也が編集/カットアップした作品で、全8曲にはその緊張感が巧妙に刻まれているようだ。いわばコズミック・ミュージックのハードコア・ヴァージョンのような趣があり、アルバムのアートワークには20ギルダーズ同様にユーモアがあるものの(2ndアルバム『Stones, Women & Records』のエロティックなジャケの続編)、それって猫を被っているんじゃないのかと疑いたくなるほど音からはすさまじい熱量を感じる。あるいはそれは、ストラッグル・フォー・プライドのエネルギーとも交わるような激しさを持っているけれど、とにかく僕がこのアルバムを聴いて鼓膜に焼き付けられるのはビートだ。それはバンド全体が醸し出すうねるようなリズムで、若い人がこれを聴いたらバトルズでさえも可愛らしく思えてしまうかもしれない。音が怪物のように暴れているのである。

 情報筋によれば、現在はサイケ奉行というバンドが注目株のひとつだそうだ。ギター&ヴォーカルに津山篤、ベースが20ギルダーズをリリースした〈Gyuune Cassette〉レーベルの須原敬三、鍵盤がPARAの西竜太、ドラムがボガルタ(元ZUINOSIN)のNANIというメンツで、サイケデリックと時代劇との華麗なる融合が聴けるという。そのコンセプト自体がサイケデリックとも言えるのだが、僕は昔、ロックの醍醐味とはサイケデリックにあると信じ、そしていまでもそう思っているところがあって、まあ、なにはともあれ、この殺伐とした国でもサイケデリック・サウンドがこうして動いていることを素晴らしく嬉しい事実であると感じます。裸のラリーズの膨大なコレクションを自慢する松村正人を差し置いてこんなことを言うのもおこがましいのですが......。

Gil Scott-Heron - ele-king

 ギル・スコット・ヘロンでもっとも好きなアルバムは、僕の場合は『ウインター・イン・アメリカ』(1974年)だ。コモンをはじめ多くのアーティストに引用されたアップリフティングな『イッツ・ユア・ワールド』(1976年)や名曲"ウィ・オールモスト・ロスト・デトロイト"を収録した『ブリッジ』(1977年)も大切なレコードだし、初期の3枚は言うまでもなく捨てがたいけれど、1枚だけ選べと言われたらブライアン・ジャクソンといっしょにやった"冬"を選ぶ。理由は、9.11直後に初来日を果たしたムーディーマンがライヴにおいてこのアルバムを引用したからで、そのときの強烈な印象がある。世界は本当に冬を迎えている。お先は真っ暗である。シスターズ&ブラザース、この世界は最悪である。ギル・スコット・ヘロンとムーディーマンは執拗にそう語りかける。しかもタチの悪いことにそのダウナーな音楽は、おそろしくユーフォリックである。

 『ウィ・アー・ニュー・ヒア』は、1年前にリリースされた16年振りのアルバム『アイム・ニュー・ヒア』のリミックス盤だ。リミックスを担当したのはザ・XXのDJ/トラックメイカー、ジェイミー・XX。『アイム・ニュー・ヒア』が、『イッツ・ユア・ワールド』のようなジャズ・ファンクのスコット・ヘロンなどではなく『ウインター・イン・アメリカ』的な低空飛行だったから、そのアルバムとザ・XXの音楽を知っている者からすれば決して突拍子のない人選ではない。"私は新しくここにいる"という言葉を思えば、20歳を越えたばかりの才能あるロンドンのDJにリミックスを託すというのは、未来があるという意味において良い企画だと思う。スコット・ヘロンは好きだがザ・XXなど知らないというオジサンたちには刺激が強過ぎるかもしれないけれど、ザ・XXは好きだがスコット・ヘロンを知らない若いリスナーにとっては興味深いアルバムとなっている。実際のところ昨年末、このサイトで"ニューヨーク・イズ・キリング・ミー"の(リミックス・ヴァージョンの)PVを流したらずいぶんと反響があった。「ニューヨークは私を蝕んだ/私は生きながら死んでいた」と回想するその孤独な曲のバックは、ポスト・ダブステップ的な展開のビートに差し替えられ、カウンター・カルチャーの時代を生きた詩人による『アイム・ニュー・ヒア』はブリアル以降の最新の"冬"の音楽と接続した。

 結論から言えば、『ウィ・アー・ニュー・ヒア』は素晴らしい......本当に格好いいアルバムだ。情熱的で、ファッショナブルでもある。ジェームス・ブレイクのデビュー・アルバムにとって最強のライヴァルがいるとしたらこのリミックス盤かもしれない。アルバム冒頭の"アイム・ニュー・ヒア"はポスト・レイヴ・カルチャーの廃墟のなかでずしんと重たいベースを響かせる。"ホーム"の暗いダブ、"ラニング"の重量級のダブステップ、スコット・ヘロンがかすれた声で歌う"マイ・クラウド"ではゲットー・テックめいたビートを試み、"ザ・チャーチ"はブレイクビーツ、"ユア・ソウル・アンド・マイン"ではミニマル・テクノの高揚感を取り入れている。つまりアルバムは、昨年のドミューンでみせた見事なDJプレイそのもので、タイトルが主張するようにすべてが"新しくここにいる"。

 2009年5月の『ガーディアン』に「私たちが忘れた反抗と政治の歌」という記事があった。そのなかの1曲に、スコット・ヘロンのもっとも有名な"ザ・レヴォリューション・ウィル・ノット・ビー・テレヴァイジット"が紹介されている。当時の北米の街中で勃興したブラック・パワーと深く共振したその曲は、本当に切実な民衆蜂起はテレビでは放映されないと告げた。つい先日のエジプト市民による民衆蜂起がリアルタイムで伝えられなかったように......ある意味、いまでもテレビほどアテにならないものはない。およそ40歳も年下の青年の手によって再構築された『ウィ・アー・ニュー・ヒア』を聴いていると、スコット・ヘロンの言葉は21世紀になっても必要とされているのだと痛感する。

いつも走りたくなる
逃げてるんじゃない
逃げ場なんてない
あるのならとっくに見つけていた
なぜ走るのか、走ることのほうが容易いからだ
"ラニング"

Twin Shadow - ele-king

 チルウェイヴと呼ばれる動きに自分はやや微妙な距離を置いているのだが、やはり気になることには変わりない。本来ならばどんな好きな音を鳴らしても許されるであろう現在のアメリカのシーンに、これだけシンセ・ポップが溢れかえっているのはちょっと異様なことであるように感じつつ、しかしひょっとしたらこのなかから飛び抜けた存在が現れるかもしれない......という予感も覚えるからだ。

 ツイン・シャドウを名乗るドミニカ共和国生まれでフロリダ育ちのジョージ・ルイス・ジュニアも、そんな期待を抱かせるひとりである。そのファッションとか作っているヴィデオ(とくに"スロー")とかを見て、これはゲイ的なセンスではないだろうか......と勝手に思っていたのだが、ガールフレンドがいたとかいるとかでどうもそうでもないらしい。意識的に参照しているということかもしれない。ゲイ的な感性の持ち主のノンケというのはときどきいるが、とにかく乱暴に言えば、ツイン・シャドウはそのキャラの濃さにおいても目立っている。実際のところ、チルウェイヴには音の厳密な定義がないわけで、このような個性を何となくそこに埋もれさせてしまう危険性があるとも言える。

 宅録による80s風シンセ・ポップという観点から言えばまさしくチルウェイヴそのものなのだが、グリズリー・ベアのクリス・テイラーがプロデュースをしていることもあり、もちろんハイファイではないがロウファイであるようにもさほど感じない。リズムの音の質感や音の強弱がしっかりと際立たせられており、ポップ・ソングとしての体裁がきちんと整えられているのだ。洗練されてもいる。そしてシンセ・ディスコ・ビートが刻まれるなか、ジョージ・ルイス・ジュニアがアクの強い歌声でエモーショナルに歌い上げる......それはよく言われるようにたしかにモリッシーを連想させるものだが、音域によってはデーモン・アルバーンのように聞こえる箇所もある。いずれにせよ、フロリダの明るい空ではなく、英国の曇天を思わせる歌である。モリッシーがザ・スミスと同時代のシンセ・ポップで朗々と歌っているようなものだ。それがブルックリンから出てくるというのが、実に2010年らしい話である。
 物憂げにシンセの和音が漂うオープニング"タイタンド・デストロイド"では恋人との別離を嘆き、うっとりするように心地良い"ホエン・ウィ・アー・ダンシング"では「お願いだから私たちが踊っているあいだは放っておいて」とコミュニケーションを拒絶し、ニューウェイヴ色がかなり強い"スロー"では「僕は愛なんて信じたくない、恋もしたくない」と歌い上げる。ファンキーな"シューティング・ホールズ"も同様にアンニュイで......かなりの部分でアルバムはメランコリーやセンチメントに支配されている。それは伝統的な〈4AD〉の音とも繋がっているものだ。それを雰囲気に流されることなく、当たり前にポップ・ソングとしてエモーショナルに響かせることに徹していることこそが本作の魅力だろう。そう、失恋や別離の悲しみに耽溺するための、昔ながらのポップ・ソング......。少なくとも僕にとって、これはチルアウトのための音楽ではない。気持ち良くまどろむのでもなく、もちろん現実に向かっていくのでもなく、それとはまた別のところで、自分のか弱さや後ろ向きな感情を許すためにこういう音楽を欲するときがたしかにある。

 なかには"イエロー・バルーン"のように比較的明るさを感じるナンバーもあるが、それにしても「さあみんな 思い切りハメを外すんだ/太陽の光に顔をさらさないようにして」という、夜の月の光のもとでの明るさなのだ。あるいは、"フォー・ナウ"における「君が去っていった日よりも晴れていた日なんてあっただろうか?」という呟きのように、晴天はむしろ悲しみを助長するものとして呼び覚まされる。それらの感傷は、このツイン・シャドウに辿り着くまでに彼が失った様々なものを反芻したことの表れだろう。ベストはラストのタイトル・トラック"フォーゲット"。穏やかな温かさに包まれたこのバラッドで、彼は「これがそのすべて/これが僕の忘れたいと思っているすべてだ」と、過ぎ去ったものをゆっくりと葬送することを願望しながらアルバムを終わらせる。このデビュー作は、ジョージ・ルイス・ジュニア個人のベッドルームでの感傷に決着をつけるものとして本人に機能するのではないだろうか。そしてそれは、聴き手にも作用するかもしれない。
 とすると、ツイン・シャドウはチルウェイヴに片足を突っ込みながらも、完全にそこにいるとはやはり断定しにくい。ヴァリエーションのひとつだと言われてしまえば現時点ではそれに反論しきれない音ではあるが、今後は80s風のシンセ・ポップを離れる可能性も十分に考えられるし、別のところに向かうべき人だと思う。他の音を手に入れることで、もっと複雑なエモーションを歌う術を身につけていくことだろう。それまでは、僕たちはこの『フォーゲット』を聴きながら己のセンチメントに浸ることを許されている。新しい場所に進む前の、最後のモラトリアムのようなアルバムだ。

HAIIRO DE ROSSI / Goodbye Kidz HipHop - ele-king

 2011年、音楽における"プロテスト"は何処にいった? 何処にもいかない。ここにある。シミ・ラボに引き続き、ele-kingが注目する若手ラッパー、ハイイロ・デ・ロッシの新曲。昨年末話題となったポリティカル・ラップ「WE'RE THE SAME ASIAN」以来の新曲で、彼は今日の日本のドラッグ・カルチャーのネガティヴな側面を容赦なく浮き彫りにしている。
 今週末に、二木信による彼のインタヴュー記事がupされます。乞うご期待!

DRUM & BASS SESSIONS 2011 "BUKEM IN SESSION" - ele-king

 ドラムンベース・シーンのビッグパーティー"BUKEM IN SESSION"が2年振りに日本で開催決定! ドラムンベースの神様と称され、90年代にエレクトロニック・ミュージック界を席巻した歴史的名曲"ミュージック"、"ホライズン"でその絶対的地位を確立した超大物が待望の再来日を果たす。ジェフ・ミルズと双璧を成すその圧倒的な存在感とテクニックを要し、DJシーンの主流がデジタルに移行するなか、ひたすらアナログ、ヴァイナルにこだわり続ける孤高の天才ブケムがMCコンラッドと繰り広げる究極のDJパフォーマンス、それが"BUKEM IN SESSION"。当日は、"DBS"15周年カウントダウン第一弾目の幕開けに相応しくブケムの4時間を越す東京オンリー・プレミアム・ロングセットを披露。前回の公演では、すさまじい集客動員を記録、DBSの新たなレジェンド・ナイトに記憶され、今回も最高の一夜になること間違いなし。
 脇を固めるのが、UKの人気ドラムンベース・レーベル〈W10〉主催でアジムスをリミックスした「The Brazil Project」(Far Out)も話題のダニー・ウィーラー、日本からはシーンを代表するDBSのトップレジデントDJで本サイトの連載でもお馴染みの3デックス・マスター、テツジ・タナカが強力サポート。
 さらにサルーンでは"AUDIO SUTRA SOUND"主催でジャズ・ブラザーズの"ヤマ"主導によるメインフロア級のラインナップを揃えたダブステップ・ナイトを開催。テクノ層のみならず、全エレクトロ二ック・ミュージック・ファンにオススメする必見のユニット公演。混雑が予想されるのでお早めにご来場を!
experience for the next level....free spirit!

Drum & Bass Sessions 2011
"Bukem in Session"

feat.
LTJ BUKEM feat. MC CONRAD
DANNY WHEELER
TETSUJI TANAKA

vj: laser : SO IN THE HOUSE

B3/SALOON : AUDIO SUTRA presents
SAHIB A.K.A.YAMA/DJunsei/DJ Nu-doh /Nick Stone + MILI / MAMMOTHDUB

https://www.dbs-tokyo.com
https://www.unit-tokyo.com

2011. 2.12 (SAT) @ UNIT
open/start 23:30
adv.3500yen door 4000yen


LTJ BUKEM (Good Looking, uk)

"Music"、"Horizons"をはじめとする歴史的名曲を生み、ドラム&ベースを創造したパイオニア、そしてオリジナルなサウンドと超絶的なテクニックで進化を続ける至高のDJ。91年の設立以来、スピリチュアルかつエモーショナルな独自の音楽宇宙を創造するGood Looking Recordsを主宰し、多くの才能を世に送り出す。2000年の1st.アルバム『JOURNEY IN WARDS』は偉大なるブラックミュージックのエッセンスをテクノロジーで昇華し、21世紀のソウル・ミュージックを逸早く提示する。レーベル運営においては『EARTH』シリーズ、サブレーベルCOOKIN'等、ドラム&ベースにとどまらない多様なアプローチを見せ、LTJブケムの世界は拡がり続ける。そしてDJとしてMCコンラッドと共に世界各国をツアーし、今日のグローバルなドラム&ベース・ムーヴメントに最大級の貢献を果たし、シーンの最前線に立ち続けている。08年の"Switch"、09年の"Atmospherical Jubilancy"と新曲の発表もあり、アルバムリリースが待たれる。最新MIX CDは『FabricLive 46』(09年)。
またGood Lookingから新たにMIXシリーズ『MELLOW YELLOW』がはじまる。
www.myspace.com/therealdannyltjbukem

MC CONRAD (Good Looking, uk)

ヒップホップ・シーンでの活動を経てLTJブケムと知り合い、以来20年近く活動を共にしてきたMCコンラッド。絶妙にコントロールされたハイテンションなMCでクラウドに深いインスピレーションを与える彼の存在は〈Good Looking〉のパーティ"PROGRESSION SESSIONS"に不可欠なものとなり、世界各国で熱烈な支持を受けている。自身のプロジェクト/レーベル、〈WORDS 2 B HEARD〉を主宰し、ドラム&ベースにおけるMC/ヴォーカルをアートフォームに進化させている。 代表的なレコーディング作品に『VOCALIST01』、『LOGICAL PROGRESSION -LEVEL4』があり、彼のオリジナル・スタイルが堪能できる。MAKOTOとの"Golden Girl"、TOTAL SCIENCEとの"Soul Patrol"、FURNEYとの"Drum Tools"等のコラボレーションも話題を集めた。
www.myspace.com/mcconradw2bh

interview with Alex Paterson - ele-king


オーブ
メタリック・スフィアーズ[Limited Edition]

ソニー・ミュージック・ジャパン

Amazon

 「コケコッコー」からはじまるのが『アドヴェンチャー・ビヨンド・ジ・ウルトラワールド』だ。もういちど言うが、あれは、不衛生なレイヴ会場のラヴインにとっては完璧なBGMだった。"リトル・フラッフィ・クラウズ"は20年後のいまも名曲であり続けている。
 ハウスとヒップホップのブレンドで設計されたその音楽は、当時、いちぶの批評家からは「レイヴ世代のピンク・フロイド」などと評されていた。『ウルトラワールド』が発表された1991年の前の年には、アレックス・パターソンが関わったザ・KLFの『チルアウト』が話題となっているが、そのアートワークはピンク・フロイドの『原子心母』のパロディだった。また、『ウルトラワールド』では『アニマルズ』のジャケットのモチーフとなったバターシーの発電所が極彩色に染まっている(ガトウィック空港から電車でロンドン市内に入るとその脇を通るので、初めて見たときは「お、ピンク・フロイド!」、と思ったものだった)。さらにまた、リミックス・アルバムの『ジ・ウルトラワールド・イクスカージョンズ』では発言所が宙でひっくり返っている。"バックサイド・オブ・ザ・ムーン"という曲名もある。ライヴ・アルバム『ライヴ93』では羊が空を飛んでいる。つまり......人がオーブとピンク・フロイドを関連づけてしまうのも無理のないことだった。
 だが、多少なりともオーブの音楽に遊んだことのある人なら、アレックス・パターソンの背後にあるのがパンクとダブ、ハウスとテクノ、もしくはヒップホップであることを知っている。彼はスティーヴ・ヒレッジと何度も共演しているが、基本的に彼はヒッピーが嫌いな元パンク野郎だ。ゆえにオーブにとって11枚目のオリジナル・アルバム『メタリック・スフィアーズ』にデヴィッド・ギルモアが参加しているという事実は、すんなり納得できるものではないけれど、充分に興味を抱かせる話ではある。
 もうひとつ『メタリック・スフィアーズ』において興味深いのは、アレックス・パターソンにしては珍しく、ストレートに政治性が出ていることだ。そもそもデヴィッド・ギルモアに誘われて参加したという、アメリカ政府に告訴されたイギリス人のハッカーを支援するチャリティ・ソング"シカゴ――チェンジ・ザ・ワールド"を契機にはじまったのが今回のプロジェクトだ。こうした経緯を思えば当たり前かもしれないけれど、どちらかといえば世界を斜めに見ていたオーブのアルバムから「君が正義を信じるなら/君が自由を信じるなら/人間はそれぞれ人間らしい暮らしをすればいい」などという直球な言葉が聴けるのは、感慨深いといえば感慨深い。ピンク・フロイドからの誘いには乗りたくなかったけれど、その政治的な目的において同意し、その結果、オーブとデヴィッド・ギルモアのコラボレーションは実現したと、それが本当のところだろう。そしてそれは悪くない結果を生んだ。前作の『バグダッド・バッテリーズ』と比べると、欧米のメディアの評もすこぶる良い。
 
 『メタリック・スフィアーズ』の音楽には、10年以上におよぶオーブの音楽旅行(ダブ、サイケデリック、エクスペリメンタル、ドラムンベース、デトロイト・テクノ、ポップス、ミニマル・テクノ......)において、昔ながらのチルアウト部屋に戻ってきたようなレトロな感覚がある。全2曲のなかでは、アレックス・パターソンが得意とするダブのベースラインが響き、ハウスの催眠ビートが脈打っている。ドアを開けると汚いレイヴァーがストーンしている......まあ、自分もそのなかのひとりだったわけだが、その懐かしいレイヴな感じは、デヴィッド・ギルモアのメロウなギターの音色によってさらに強度を増している。
 あるいはこういう言い方もある。『ウルトラワールド』はポップ・アート的だったが、『メタリック・スフィアーズ』はエモーショナルな作品だと。メランコリックなはじまりがあり、平和な場面があり、アップリフティングな展開がある。それがこのアルバムの魅力で、部屋でかけていると気分を上げてくれる理由だ。
 去る1月20日、ライヴ公演のため日本に到着したばかりのアレックス・パターソンに会って、話を聞いた。肝心なところのいくつかは、例によって、曖昧にされてしまったけれど、少々疲れ気味だったアンビエント・ハウスのドクターは、基本的には最後まで真摯に語ってくれた。

『メタリック・スフィアーズ』は棺桶に釘を刺すための釘のうちの1本。帽子に付ける羽根のうちの1本である。もしくは、終わりのはじまりで、はじまりの終わりでもある。そしてギタリストをフィーチャーしたトリロジーのひとつでもある。

最初にオーブで来日したときにホテルで会っているんですけどね。細野晴臣さんのイヴェントに出たときです。およそ20年前ですかね。

アレックス:そのときのライヴのことはよく覚えていないんだけどね。

僕はよく覚えているんですけど、昼過ぎかな、あなたとスラッシュ(当時のメンバー)がジャックダニエルのボトルを片手に現れたことを(笑)。

アレックス:ジャックダニエル? 

覚えてない?

アレックス:覚えてない。

その次は『UFOrb』の頃かな。ポリドールというレコード会社の一室で取材して......。

アレックス:ジャックダニエルは?

そのときのあなたはコーヒーを飲んでいましたよ(笑)。

アレックス:それは良かった。ちなみに今日はジンジャエールだから。

ハハハハ。

アレックス:たまにジャックダニエルも飲むんだけど、日本ではほとんど飲まない。ちなみに僕の本当の最初の来日はジャックダニエルの前だよ。リヴェンジで来たのが最初だ。

ああ、そうでしたね。

アレックス:知ってるでしょ。ジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダーのベーシストだったピーター・フックのバンドだよ。

DJとして来たんですよね。

アレックス:僕は覚えているよ。なぜかって、そのとき僕は病気で、調子が悪かったから。だから覚えているんだよ。

なるほど。それでは質問をはじめたいと思います。あらためてお伺いしますが、『メタリック・スフィアーズ』は長いオーブの歴史のなかでどんな意味をもつ作品ですか?

アレックス:棺桶に釘を刺すための釘のうちの1本。帽子に付ける羽根のうちの1本である。もしくは、終わりのはじまりで、はじまりの終わりでもある。そしてギタリストをフィーチャーしたトリロジー(3部作)のひとつでもある。

トリロジーというと?

アレックス:ロバート・フリップ(1994年、FFWD名義の作品)、スティーヴ・ヒレッジ(1992年の「ブルー・ルーム」、1997年の『オーブリヴィオン』、2007年の『ザ・ドリーム』)、そして最後がデヴィッド・ギルモアになるわけだ。

なるほどー。棺桶の釘であり、帽子の羽根という比喩は、それだけ『メタリック・スフィアーズ』が重要な作品であるということを意味しているんでしょうか?

アレックス:違うね。もっとも重要なのはファースト・アルバム(『アドヴェンチャー・ビヨンド・ジ・ウルトラワールド』)だ。オーブとして自信を持って名作だと言えるのは、1991年に発表したファースト・アルバムだね。バンドがはじまるとき、デビュー作はつねにベストでなければならない。『ウルトラワールド』がなければ『メタリック・スフィアーズ』は生まれていなかった。『ウルトラワールド』にはクリエイティヴ面における100%の自由があった。レコード会社の人間から「ああいうのを作れ」「こういうのを作れ」などと指図されなかった。しかし、その後はいろいろと指示されるようになった......。

[[SplitPage]]

1992年、ブリクストン・アカデミーでピンク・フロイドがライヴをやるときに、ニック・メイソンが「オーブもいっしょにやらないかい?」と誘ってくれたんだけど、僕は「ファック・オフ」と言って断った。「死ね」と。「俺はパンクなんだ」と言った。


オーブ
メタリック・スフィアーズ[Limited Edition]

ソニー・ミュージック・ジャパン

Amazon

あなたがプロダクションに関わったと言われているザ・KLFの『チルアウト』と『メタリック・スフィアーズ』を関連づけることは可能ですか?

アレックス:『チルアウト』はKLFだよ。

部分的なんですけど、『メタリック・スフィアーズ』で、あなたのアンビエント・サウンドのうえにメロウなギターが入る箇所を聴いていると、『チルアウト』を思い出すんですよね、『チルアウト』はジャケもピンク・フロイドだし。

アレックス:オッケー、そういうことね。でも、『チルアウト』はサンプリング・ミュージックだよ。そういう意味では『メタリック・スフィアーズ』とぜんぜん違う。だから今回は、余計な(著作権をめぐる)トラブルも起きなかったからね。

なるほど(笑)。まったく違いますか?

アレックス:うん。アンビエントという点では同じだけど、『チルアウト』はサンプリング・ミュージックで、『メタリック・スフィアーズ』は演奏している。そしてKLFはビル・ドラモンドとジミー・コーティによるもので、オーブは僕だ。僕はDJとして彼らにネタを提供した。そういう観点で言えば、2枚は完璧に違う。『メタリック・スフィアーズ』ではサンプリングによってプレスリーが歌うことはないけれど、ギルモアが本当に歌っている。

アレックス:(日本盤のライナーをしげしげと眺めながら)あれ、ここにもKLFと書かれているぞ!

歴史について書いているんですよ。『チルアウト』はたしかにKLFの作品だけど、あなたの存在が大きかったからですよ。

アレックス:実はわりと最近、KLFが100万ポンドのギャラを得て、その自叙伝が出版されたんだけど、本のなかで「どうやって『チルアウト』という名作が生まれたのか」という章があってね、そこに詳しく記されている。ビルとジミーから頼まれて、僕も当時の話を細かく喋ったから読んでみてよ。DJとしてトランセントラル・スタジオに招かれて、ひと晩10時間のセッションをやった。それをカットアップして、そして名作が生まれたという、その伝説が描かれているんだよ。ちなみに本のなかには僕とスティーヴ・ヒレッジとの出会いについても描かれているよ。ある晩、僕は6枚のレコードを同時にかけていたんだけど、そのなかの1枚がスティーヴ・ヒレッジのレコードだった。その場にスティーヴもいて、それでいい友だちになったんだよね。

なるほど。『メタリック・スフィアーズ』に戻しましょう。

アレックス:そうだね。

作品がリリースされて時間が経ちますが、反応はいかがでしたか? 

アレックス:ポジティヴで良い反応を得ているよ。

とくに面白かった感想があれば言ってください。

アレックス:メディアの評判も良かったんだけど、マイスペースを通して知った、購入者からの意見が面白かった。興味深いことに、北欧、あるいはチェコやポーランドのリスナーからの感想が多くてね......これもピンク・フロイドのおかげかな?

ハハハハ。

アレックス:ガイ・プラットってわかる? 

誰でしょう?

アレックス:ファースト・アルバムでベースを弾いている旧友だが、ロジャー・ウォーターズがピンク・フロイドを脱退したあとにベースを弾いたのが彼だった。今回のアルバムでキーパーソンがいるとしたら、彼だ。ユース、ガイ・プラッド、そして僕の3人は、子供の頃からの連れで、同じ学校に通っていたんだ。そんな彼がオーブのあとにピンク・フロイドに入って、今回のデヴィッド・ギルモアに繋がるわけだよ。

なるほど。

アレックス:実は、いちどだけピンク・フロイドをサンプリングしたことがあって、ジョン・ピール・セッションで"ア・ヒュージ・エヴァー・グローイング・パルセイティング・ブレイン"をやったときに"シャイン・オン・ユー・クレイジー・ダイアモンド"を使ったんだよね。当時その演奏がすごく好評で、リクエストは最多だったそうだ。で、サンプリングの許可を得なければならなかったんだけど、そのときもガイ・プラットが話を付けてくれた。そして......1992年、ブリクストン・アカデミーでピンク・フロイドがライヴをやるときに、ニック・メイソンが「オーブもいっしょにやらないかい?」と誘ってくれたんだけど、僕は「ファック・オフ」と言って断った。「死ね」と。「俺はパンクなんだ」と言った。これはいままで誰にも言ったことがない秘話だよ。面白い話でしょ?

ハハハハ。たしかに面白いですね。それでは、あなたとピンク・フロイドの関係をはっきさせたいので、敢えて訊きますね。あなたは子供の頃、ヒッピーが嫌いなパンクスでしたよね。パンクに傾倒し、ダブやレゲエが好きで、デトロイトやシカゴのアンダーグラウンドな音楽に関する知識が豊富なDJでした。しかし、『ウルトラワールド』では、ピンク・フロイドの『アニマルズ』のアートワークを引用しました。

アレックス:あの発電所は、たまたま同じ駅だったんだ。同じ街(バターシー)に住んでいたからああなったのであって、ピンク・フロイドの真似じゃないよ。クラフトワークだって発電所をアートワークに使っているよ。

"バックサイド・オブ・ザ・ムーン"という曲もあります。そして、多くの人はその音楽のなかにピンク・フロイドと共通するものを感じました。90年代初頭は、オーブはレイヴ世代のピンク・フロイドなどど形容されていましたよね。

アレックス:20年前の話だね。

そう、20年前の話。で、実際はどうなんですか? あなたとピンク・フロイドっていうのは。

アレックス:まったく興味がなかった。もし関連性があったとしても、それが売りになるとも思えなかった。しかし......当時乗らなかったボートに僕は19年目にして乗ってしまったわけだ。『メタリック・スフィアーズ』で残念なことは、すべてを自分でコントロールできなかったことだよね。

[[SplitPage]]

地球をテーマに......どうやって地球ができたのかをテーマに僕がオペラを書いているんだけど、それと関連している。そのことがあって、『メタリック・スフィアーズ』というタイトルに惹かれたんだよね......そう、つまり......ああ、僕はパンク野郎じゃなく、ヒッピーだったんだ! いま気がついたよ!


オーブ
メタリック・スフィアーズ[Limited Edition]

ソニー・ミュージック・ジャパン

Amazon

アルバムにおけるデヴィッド・ギルモアの役割はどんなものだったのですか?

アレックス:ギターを弾いた。

はい。

アレックス:あとヴォーカル少々、そして......消えた。

ハハハハ。

アレックス:アルバムがリリースされてから数か月後、(ギルモアと)共通の知り合いのサッカー選手と話す機会があったんだよ。そうしたら、彼がこう言うのさ。「デヴィッド・ギルモアがいままで作ったアルバムでいちばん楽だったと言っていたぞ」って。僕は「そりゃあ、当たり前だ。あいつは3時間しかいなかったんだから」と言ってやった。「1日もいなかったんだぜ。それは楽だろう」ってね。

あなたが彼にディレクションしたことがあれば教えてください。

アレックス:いいや、何も......ていうか、僕はスタジオには立ち会ってないから。ユースは立ち会っていたよ。とにかくミスター・ギルモアはピンク・フロイド的なギターを弾いた。弾きまくった。まあ、マニュエル・ゲッチング的なミニマルな箇所もちょっとだけあるけどね。

コンセプト的にはデヴィッド・ギルモアが入る前からあなたのなかではできあがっていたんでしょうけど、前作『バグダッド・バッテリーズ』からの連続性はあるんですか?

アレックス:あるよ。

それは環境問題とリンクしているんですか?

アレックス:ていうか......『バグダッド・バッテリーズ』は、2000年前のバグダッドの話がモチーフになっているんだけど、『メタリック・スフィアーズ』は2800年前の南アフリカに実際にあったメタリックな造形物なんだよ。ググればすぐにわかるよ。500個も出てきたらしい。

あなたは、そのメタリック・スフィアのどんなところに興味を抱いたのでしょう?

アレックス:それは子供に名前を付けるようなもので、今後のオーブの方向性を表すようなものとして『メタリック・スフィアーズ』と名付けた。いまはまだ詳細を話せないんだけど、ロンドンのコヴェント・ガーデンにあるオペラハウスで、僕が関わるプロジェクトが進んでいる。それは地球をテーマに......どうやって地球ができたのかをテーマに僕がオペラを書いているんだけど、それと関連している。そのことがあって、『メタリック・スフィアーズ』というタイトルに惹かれたんだよね......そう、つまり......ああ、僕はパンク野郎じゃなく、ヒッピーだったんだ! いま気がついたよ!

ハハハハ。ちなみに"メタリック・サイド"が何を意味し、"スフィア・サイド"は何を意味しているのでしょうか? 

アレックス:とくに意味はないけど、Aサイド、Bサイド、Cサイド、Dサイドと分けるよりはふたつに分けたほうがいいだろうと。CDでは1面しかないんだけど、こうすればふたつに分けられる。もっと詳しく話そう。実はアルバムには10曲入っている。しかし、iTunesでそれをバラにダウンロードすると、アルバムという作品の意味がなくなってしまう。アルバムとして聴いてもらえなくなる。レンブラントやピカソの絵が1枚ではなく、部分部分を切り取ったら作品として成立しないでしょ。そういうこともあって、"メタリック・サイド"に5曲、"スフィア・サイド"に5曲収録した。で、1曲の値段で5曲を売るという、これなら買う人にとってもハッピーでしょ。それにピンク・フロイドは長年、iTunesと闘ってたよね。彼らもアルバムとして聴いて欲しいからそうしたんだけど、これはそういう意味で良いアイデアだと思った。

ふたつの世界観を表しているわけではないんですか?

アレックス:とくにない。半分に分けているだけで、中間点とも言える。"メタリック・サイド"の曲が"スフィア・サイド"でまた出てきたりしているだろ。

グラハム・ナッシュの"シカゴ"のような曲を現在取り上げることの意義をどう考えますか?

アレックス:"シカゴ"は僕たちのカヴァー・ヴァージョンだよ。

"ヒム・トゥ・ザ・サン"では、サンプリングされていますね。この曲は当時の新左翼(シカゴ・エイト)への共感を歌っているそうですが、アルバムのメッセージを代弁していると言えますか?

アレックス:代弁している。つまり希望だ。

希望?

アレックス:よりよい世界への希望だよ。

なるほど。

アレックス:ミスター・ギルモアならアルバムのタイトルを"ヒム・トゥ・ザ・サン"にしたかったろうね。まあ......今回はミスター・ギルモアとは電話やメールでしかやり取りしてないからね。もしこんどいっしょにやる機会があれば、時間を作ってじっくり会ってからやりたいよ。

会ってないというのはびっくりですね。

アレックス:会ったことはあるんだけど、今回のプロジェクトでは会っていない。21世紀のファイルシェアリングのお陰だ。

[[SplitPage]]

僕にとって自由はとても重要な意味を持つ。そういう意味で、ゲイリー・マッキノンのハッカーとしての活動に共感するのさ。イギリス人の彼は、アメリカ政府から政治的に「とんでもないヤツ」という話になって、逮捕された。そして逆に洗脳されて、アメリカ政府のためにハッキングさせられたりもした。


オーブ
メタリック・スフィアーズ[Limited Edition]

ソニー・ミュージック・ジャパン

Amazon

ちなみに今回のプロジェクトの契機となった、ゲイリー・マッキノンというハッカーを支援するチャリティ・ソングへの参加について話してもらえますか? あなたは政治的な事柄に関しては、それなりに慎重な態度で接してきたと思いますが、あなたをその気にさせた理由はどこにあったのでしょうか?

アレックス:僕も歳を取ったってことさ。

なるほど。

アレックス:もともとはチャリティー・ソングに参加して欲しいとミスター・ギルモアから話があった。そして彼はギターを弾いて帰っていった。しかし、そのあと僕とユースは余った音源を使ってアルバムを作ってしまった。ミスター・ギルモアはとてもびっくりした。なんでこんなことになっているんだ、と彼は思った。それをマネージャーが入って、なんとか話を付けた。その9ヶ月間、いろいろ僕たちのあいだで話があった。

ゲイリー・マッキノンというハッカーに関してはどうなんですか? どんなシンパシーがあったんですか?

アレックス:共感があった。やりたいことを自由にやるという点に共感するんだよ。僕にとって自由はとても重要な意味を持つ。そういう意味で、ゲイリー・マッキノンのハッカーとしての活動に共感するのさ。イギリス人の彼は、アメリカ政府から政治的に「とんでもないヤツ」という話になって、逮捕された。そして逆に洗脳されて、アメリカ政府のためにハッキングさせられたりもした。

なるほど。自由......ですか。先ほど、あなたの口から「希望」という言葉を聞いたときもびっくりしたんですよね。

アレックス:ありがとう。

昔のあなたはそういう言葉をユーモアで包み隠すところがあったじゃないですか。

アレックス:んー、はははは、そうだっけ?

逆に、あなたのなかで世界に対する危機感が募っているということでもあるんでしょうね。世界はどんどん悪くなっているっていう。

アレックス:いまの時代、希望はより持ちにくくなっていると思う。イギリスの政府を見てもそうだよ。税金をいくら使っても世のなかはよくならない。それなら国民にお小遣いとしてばらまいたほうがよほどマシだ。あと僕は音楽家だから、できれば人びとに希望を与えるようなことをしたいと思っているんだ。それが今回の方向性を決定づけているね。

なるほど。そういえば今回トーマス・フェルマンが参加してませんね。

アレックス:彼はいまバンクーバーだかモントリオールのシンフォニーの仕事で忙しいからね。でもまたいっしょにやる可能性はあるよ。

ユースといっしょにやった理由を教えてください。

アレックス:うん、彼は素晴らしい仕事をしてくれたな。

あなたは20年以上にも渡ってコンスタントに作品を出し続けていますが、なぜ、それができるのでしょうか?

アレックス:この世を去ったときに、自分が生きてきた証として作品を残したいんだ。家族のためにもね。

では最後の質問ですが、ジョン・ライドンが昨年『ガーディアン』の取材で「実はピンク・フロイドは好きだった」と告白していますよね。読みました?

アレックス:知ってる。その記事は僕も読んだ。まさか......だよね。パンクがヒッピーの音楽をぶっ壊したんだと思っていたから、その記事のジョンの発言にはホントにがっかりしたよ。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026