「Low」と一致するもの

 昨年『ノーザン・ソウル』という映画が公開された。この映画でわたしが一番ウケたのは、リアルなノーザン・ソウル・ファッションである。どうも日本でノーザン・ソウルというと、どちらかと言えばスウィンギング・ロンドンやモッズ系の格好をした人びとのイメージがあったのだが、この国に住むようになって「ノーザン・ソウル同窓会」みたいな催しに行った時、わたしは度胆を抜かれた。
 おっさんたちが履いているあのフレアと呼ぶにはあまりにも幅広のズボンは、ありゃ何だっけ、ほら中学校でヤンキーが履いてたやつ。あ、ボンタン? いやボンタンは裾が締まってたし、そうじゃなくてなんだっけほら、ああドカンだ、ドカン。しかもよく見れば青いドカンに白エナメルのベルトを締めた人なんかもいるし、上半身はランニング一丁でその上からサスペンダーでドカンを吊ってたりして髪型さえ違ったらこれはまるで……。と訝っていたら、おばはんたちは裾が床につきそうなフレアースカートでくるくる回っていて、これもまさに昔のヤンキーの姉ちゃんたちの制服のスカート丈である。なんのこたあない。ノーザン・ソウラーズは70年代の日本のヤンキーだった。そしてそのファッションを忠実に再現していたのが『ノーザン・ソウル』である。
 またこのUK版ヤンキーたちの集団ダンスシーンの野太さというかマッチョさが圧巻でブリリアントなのだが、どうやら日本ではヤンキー文化は反知性主義などと言われているらしく、その文脈で言えば『ノーザン・ソウルl』なんかはもう反知性主義大爆発である。

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 5月7日の投票日を控え、UK総選挙戦がたいそうおもしろい。アナキー・イン・ザ・UKとはこのことかと思うほどのカオスである。二大政党だった保守党と労働党はどちらも不人気でマジョリティーを取れそうになく、右翼政党UKIPが台頭していたかと思えば、その勢いをスコットランドのSNPが奪った。昨年スコットランド独立投票で敗けたこの政党のシュールなまでの大躍進と、現代にあっては「極左」と呼ばれてしまうスタンスが、保守派からは危険視され、左派の心を躍らせている。それはまるでUKIPが出現したときの逆ヴァージョンのようだ。下層の人びとが右から左にまたジャンプしはじめている。
 うちの近所でもその現象は見られる。もともとブライトンはアナキストやエコ系の人が多いので以前からみどりの党が強い。が、みどりの党の支持者といえばミドルクラスのインテリと相場は決まっていたのに、今年は貧民街の家の窓にもみどりの党のステッカーが貼ってある。
「スコットランドのSNPの候補者がブライトンにいればSNPに投票するけど、いないからSNPと協力体制を組んでいるみどりの党に入れる」と言っている人がわたしの周囲にも多いのだ。
 この右からいきなり左に飛んでしまう軽さは識者に「小政党のつまみ食い」とか「危険な愚衆政治」とか言われる。彼らはこれを政治危機と呼び、「英国だけじゃない。欧州の有権者は長期的な目線でしっかり物を考えて大政党に投票しなくなった」と嘆く。
 が、大政党は何年も前から下層を存在しないものとして国を回している。はなから相手にされてない層の人たちが大政党のマニフェストを聞いていったい何を長期的に考えろというのだろう。

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 昨年、『ノーザン・ソウル』とほぼ同時期に公開されたのが『ライオット・クラブ』だ。こちらは前者とは正反対の特権階級のポッシュな青年たちを描いた作品だ。オックスフォード大学でも両手で数えるほどのトップエリートしか入れない架空のクラブが、田舎のパブでチャヴも真っ青の反社会的行為を行う話なのだが、これはオックスフォードに実際に存在しているブリンドン・クラブをモデルにしている。実際このクラブにはあの映画の若者たちのように正装してレストランでディナーし、その後で店舗を破壊して店主に金を握らせる伝統があるそうだ。クラブ出身者の若者たちが政界に入り、国を支配する立場になるのも映画と同じである。ブリンドン・クラブの元メンバーには英国首相デヴィッド・キャメロンやロンドン市長ボリス・ジョンソンがいる(彼らは同期)。 
 ある日本のサイトを読んでいたら、「愛」、「夢」、「友情」、「仲間」などはヤンキー用語であり、よって反知性主義の言葉でもあると書かれていた。なるほど『ノーザン・ソウル』にもたしかにこのヤンキー概念はすべてあった。が、『ライオット・クラブ』ではこれらの概念は片っ端から否定されている。代わりにポッシュな青年たちが叫んでいる言葉は「レジェンド(伝説)」と「パワー(権力)」である。「愛」や「夢」を下層のコンセプトと否定し、「伝統」と「権力」を奉ずる青年たちは、自分たちが借り切ったパブの(店主と従業員が一生懸命に装飾した)一室をゲラゲラ笑いながら破壊し、庶民階級の女学生を呼び出して「3年分の学費を払ってやるから俺たち10人に口淫しろ」と言い、「もう金はいらないから出て行ってくれ」というパブの店主に暴行を加える。で、その店主が瀕死の状態になるので警察沙汰になるのだが、「出て行け」と言った店主にクラブのメンバーが札束をちらつかせながら言う台詞が印象的だ。「君たちは僕たちを嫌いだと言う。でも、君たちは本当は僕たちが大好きなんだよ」
 だがパブの店主はふふんと笑い「あんたたちはそこら辺でストリートを破壊しているガキどもと何の変わりもないじゃないか」と言うものだから死ぬ寸前までボコられるという、はっきり言って胸糞の悪い映画だ。この映画は選挙前の年に公開されたアンチ保守党プロパガンダ映画として物議を醸した。

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 いま「英国の政界で最も危険な女」と呼ばれているスコットランドのSNPの女性党首は、「希望の政治」と「オルタナティヴな政治」という言葉をよく使う。
 ホープ。なんてのもまたいかにもヤンキーな響きだし、オルタナティヴという言葉だってけっこうヤバい。引用文献や歴史的&数字的裏付け等々の証拠を見せてから代替案を説明することもなく、大雑把に「オルタナティヴ」なんて言葉を投げるのはいかにも反知性的ではないか。「知識」より「感じ」を重んじるのはヤンキーの専売特許だ。
 こう書いてくるとロックなんてのもまた相当ヤンキーであり、「転がる石のように生きる」なんつうのも何の石がどの角度の傾斜で転がり、どの水準におけるライフを生きるのかグラフ化して解説しない点でフィーリング本位だし、「僕はドリーマーかもしれない。でも国なんてないとイマジンすれば僕たちは一つになれる」に至ってはもう「夢」とか「一つになろう」とかヤンキー概念の連発だ。
 かくしてロックは単なるバカと見なされ衰退し、伝統という名の世襲のものや、権力、財力といった計測可能な目に見えるものだけが世間で幅を利かすようになり、社会を牛耳ることになる。ロックというヤンキーが没落すると共に、息苦しいほど社会に流動性がなくなったのは偶然のことなのだろうか。
 『ライオット・クラブ』では特権階級の青年たちが「あいつらは上向きの流動性のことばかりバカの一つ覚えのように語っている」と言ってゲラゲラ笑っていた。
 一方、『ノーザン・ソウル』ではランカシャーの工場に勤める労働者階級の青年たちが下から上に向かって拳を突き上げながら力強く踊っている。

                
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 下側にいる人間が拳を上に突き上げられない時、その拳はどこに向かうのだろう。
 行き場のない拳はさらに下方に振り下ろされたり、横にいる人びとの中でちょっと毛色が違う者に向かうことになる。
 が、そんな鬱屈しきった救いのない社会で「希望」や「オルタナティヴ」といった言葉を恥ずかしげもなく口にし、本当に拳を向けるべき方向を指す者がいれば時代の空気は豹変する。ということを示しているのがいまのUKのムードではないだろうか。
 とはいえ、社会は下層だけで構成されているわけではないから、今度の選挙でも再び『ノーザン・ソウル』は『ライオット・クラブ』に負ける可能性もある。
 「反緊縮だの核兵器撤廃だの一昔前のロック・ミュージシャンのようなことを言っている。そんなことをすれば財政は崩壊するし、自国の防衛もできなくなる」
大政党のSNPに対する批判もワンパターンの様相を呈してきた。
 が、では現代の知性というやつは要するに喧嘩に強くなることと金勘定に長けることを意味するのかと思えばそれはそれでまたずいぶんと反知性主義的である。少なくとも貧困に落ちる家庭の数を増やし、飢えて汚れた子供たちをストリートに放置している為政者たちのエモーショナル・インテリジェンスの低さは、ヤンキーやチャヴに劣りこそすれ勝るものではない。

Prurient - ele-king

 ドミニク・フェルノウ(Dominic Fernow)がやり過ぎなのは誰の目にも明らかだ。レインフォレスト・スピリチュアル・エンスレイヴメント(Rainforest Spritual Enslavement)やヴァチカン・シャドウ(Vatican Shadow)としてあいも変わらず怒濤のリリースを続けるなか、プリュリエント(Prurient)とエクスプローリング・イザベル(Exploring Jezebel)の新作も発表。一体どうやって〈ホスピタル・プロダクション(Hospital Production)〉代表を務めながらこれだけの制作をこなすことができるのか、完全に理解を超えているとしか言いようがない。

いまでこそUSインディの先端を担う〈ホスピタル・プロダクション〉も元をたどればドミニクが若干16歳でスタートさせたDIYノイズ・レーベルであったわけで、ドミニク自身から止めどなく溢れんばかりに湧出する、かたちを成さない感情であるノイズをひたすらにアーカイヴ化することでその複雑な自身の表出にコンセプトを見出し、ラベリングすることが当初の目的であったと言える。

ノン及びボイドライスやデス・イン・ジューン、カレント93やコイルにSPK、ナース・ウィズ・ウォンド等のニューウェーヴ/インダストリアルからの多大な影響とブラック・メタルへの偏執的な傾倒をノイズ/エクスペリメンタルといった実験的な手法で自身の表現を模索してきたドミニクにとってプリュリエントはつねに彼の主たるプロジェクトであった。

シンセ・ダークウェーヴとパワー・エレクトロニクスの融合を試みてきたプリュリエントが、ドミニクのコールド・ケイヴへの参加を機に劇的な変化を迎えたのが2011年に発表されたバミューダ・ドレイン(Bermuda Drain)である。それまでになくメタル、もといロック的な起承転結が明快なダイナミズムとシーケンス/ビートにプリュリエントの手法を落とし込んだ意欲作であった。BEBからの前作、スルー・ザ・ウィンドウ(Through The Window)で90年代ハード・テクノを骨抜きにしたような作風を披露し、ヴァチカン・シャドウのサウンドと重複したことを危惧したのか、本作フローズン・ナイアガラ・フォールズ(Frozen Niagara Falls)ではドラマティックな展開を強調して再びプリュリエントの明確な差別化を意識したように聴こえる。ツインピークス風の不穏かつ幽玄なダークウェーヴからアコースティック・サウンドを基調とした激情、お馴染みの激昂とパワエレは以前より洗練された形でヴァリエーション豊かなトラックと共存している。活動歴約20年に及ぶ彼のプリュリエントな(卑猥な)試みの集大成として放つロック・アルバムだ。USインダストリアルの今後を占う90分近い圧倒的ヴォリュームの意欲作。


 今週末、ファッション・ブランドC.Eとレーベル〈ヒンジ・フィンガー〉共同の主催のイベントで来日する、ウィル・バンクヘッドとピーター・オグレディことジョイ・オービソン。当日を待ちわびている皆さんのために、なんと今回が初来日のジョイ・オービソンがインタヴューに答えてくれました。
 ここで簡単に彼の経歴の説明を。音楽のバックグラウンドはジャングルのミックス・テープにあるというロンドン在住のジョイ・オービソンのデビューは2009年。そのトラック“Hyph Mngo”はいわゆるダブステップが「ポスト」へ移行した時代の象徴的な曲として記憶されており、ジャンルを越え本当に多くのDJたちがプレイしました。
 ですがその後ドラムンベースの鬼才ユニット、インストラメンタル(Instra:mental)の元メンバーであるボディカ(Boddika)とレーベル〈サンクロ(SunkLo)〉の立ち上げなどを経て、深淵なハウスやテクノの方面に舵を取りました。ツアーでヨーロッパを回るようになった彼は、デザイナーとしてのキャリアやレーベル〈ザ・トリロジー・テープス〉で知られるウィル・バンクヘッドとベルリンで出会い、よりロウなトーンを突き詰めたレーベル〈ヒンジ・フィンガー〉をふたりで始動させ現在にいたります。
 インタヴューには普段はあまり応じていないという彼ですが、最近買ったベスト・レコードから、一緒に来日するウィル・バンクヘッドについてまで、激多忙なスケジュールのなかシンプルにそして丁寧に答えてくれました。

いまどちらにいらっしゃいますか? ロンドンの自宅でしょうか?

ジョイ・オービソン(Joy Orbison、以下JO):うん。ロンドンのエレファント・アンド・キャッスルにある家の予備部屋兼スタジオの椅子に座っているよ。

あなたの来日が決定して、多くのファンが喜んでいます。が、ここにひとつ問題があります。ロンドンと東京って結構遠くて、片道10時間くらいかかるんですよね。どうやって時間を潰す予定ですか? やっぱり本を読んだり映画を見るんでしょうか? それともひょっとして機材を持ち込んで作曲ですか?

JO :ウィル・バンクヘッドと僕の彼女の間に座ることになったから、めちゃくちゃお酒を飲むことになりそうだ。少しは眠れるといいなぁ。いつもは飛行機のエンタメ・サービスを使ってチェスをするんだ。小さな子供に連敗しないように練習しないといけないからね(笑)。

今回はしかも初来日です。DJノブといった日本のDJたちもこの日は出演しますが、日本の音楽シーンや文化に関心はありますか?

JO :日本のシーンは全然知らないんだけど、いつも耳にする音楽と日本文化の関係性にはわくわくするよ。C.Eの素晴らしいスタッフたちの協力のおかげでDJノブと同じイベントへの出演が決まったことが単純に嬉しい。最高の初来日になるといいね!

最近買ったベストのレコードは何ですか?

JO :Automat & Max Loderbauerの“Verstärker”だね。

それでは最近注目しているプロデューサーは?

JO :Herronかな。

さて、あなたのキャリアを少々振り返ってみようと思います。2009年にあなたはスキューバの〈ホット・フラッシュ・レコーデイングス〉からのシングル “Hyph Mngo”でデビューを飾り、この曲はいわゆるポスト・ダブステップのアイコンのひとつとしてみなされています。ですが、あなたは〈ドルドラム〉から “BB / Ladywell”のリリース以降、テクノやハウスの方面へシフトし現在に至っています。この転機のきっかけとはなんだったのでしょうか?

JO :個人的にはその流れを変化だとは思っていなかったんだよ。でも当時の自分が周りからどうやって見られていたのかは理解できる。 “Hyph Mngo”はそれまでの僕の曲のなかでDJやオーディエンスに一番サポートされたものだったけど、同時に僕はたくさんの曲を作っていた。当時作った曲を見てみても、ハウスやテクノっぽいものもあれば、ドラムンベースみたいなものもある。そういう曲は世間が僕に抱いていたイメージとはかけ離れているだろうね。そんな感じでこれからも縛られないスタイルで曲を作っていこうと思うんだけど、その課程でシーンや時代性の呼吸が合っていたら最高だよ。

Joy Orbison – Hyph Mngo

あなたはボディカとの共作でも知られていますが、彼とのレーベル〈サンクロ〉からの最新リリースは2014年の2月にリリースされた“モア・メイム / イン・ヒア”なので、それから1年以上が経っています。最近はボディカと曲を作っていますか? 〈サンクロ〉は日本でもすぐにソールド・アウトになってしまうので、ファンは新作を期待していますよ。

JO :ボディカとは少なくとも週に2、3日はスタジオに入るように心がけていて、しばらくの間この作業を継続していたよ。おかげで本当にたくさんの曲が完成したね。実はもうすぐ新曲がリリースされるんだ……!

ウィル・バンクヘッドは何度かDJとして来日しており、去年もアンソニー・ネイプルズやレゼットと東京でプレイしました。彼は才能溢れるデザイナーであると同時に、違ったジャンルで活動するプロデューサーをつなぎ合わせる重要な役割も果たしていると思います。そして現在、あなたはバンクヘッドとともに〈ヒンジ・フィンガー〉を運営しているわけですが、アートワークやDJスタイルを含めて彼の「作品」をどのように評価しますか?

JO :彼の作品の大ファンだよ。ユニークなものの見方をしているから、いつも僕は驚きっぱなしさ。僕の音楽やレーベルのコンセプトを可視化してくれるひとは彼くらしかいないから、出会えてすごくラッキーだ。
 それに彼のDJも本当にヤバいんだよね。たぶん僕がいままでで出会ったなかで、飛び抜けて強烈なレコード・コレクションを彼は持っているんじゃないかな。あのレコードの壁を探索するのにかなりの時間を使ったよ。あそこでは必ず特別な曲が見つかるんだ(いまそのレコードは地下室にしまってあるんだけどね)。自分自身の知識をワクワクさせるような何かに変換させることに関して、彼の右に出る者はいないと思う。なんせブジュ・バントンからフランソワ・ベイルに繋いだりするんだからね!

ウィル・バンクヘッドの作品でお気に入りを挙げるとしたら何でしょうか?

JO : うーん、難しいね……。T++の「ワイアレス」かブラワンの「ヒズ・ヒー・シー&シー」ってことにしとこうかな。

様々なスタイルを経てあなたは現在に至るわけですが、2015年に私たちはどんなことを期待できるでしょうか?

JO :目標はたくさんリリースをすることだね。とにかく目の前のことに集中しなくちゃいけないな。

それでは最後に日本のオーディエンスにメッセージを!

JO :(日本語で)「トリッキーは、お茶を作ります」

 最後のひと言がどういう意味なのか質問してみたところ、英語では“Tricky, you make the tea”と打ったようです。 “Tricky’s Team”という似た名前のタイトルの曲をボディカとリリースしていますが、それから察するにインタヴューで触れている次なる新曲の名前なのでしょうか!? 週末に期待!

Joy Orbison & Boddika – Tricky’s Team


The Trilogy Tapes, Hinge Finger & C.E presents
Joy Orbison & Will Bankhead

2015/04/24(Fri)
@ Daikanyama UNIT & SALOON

[UNIT]
Joy Orbison(Hinge Finger)
Will Bankhead(The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
DJ Nobu(Future Terror / Bitta)
[SALOON]
Edward Occulus
Toby Feltwell (C.E)
1-Drink
Koko Miyagi
Bacon
Open/Start 23:30
Early bird 2,000yen(Resident Advisor only) / Adv. 3,000yen / Door 3,500yen
Ticket Outlets: LAWSON / diskunion 渋谷 Club Music Shop / diskunion 新宿 Club Music Shop / diskunion 下北沢 Club Music Shop / diskunion 吉祥寺 / JET SET TOKYO / TECHNIQUE / DISC SHOP ZERO / Clubberia / Resident Advisor / UNIT / min-nano / have a good time
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)
More Information : Daikanyama UNIT
03-5459-8630 www.unit-tokyo.com https://goo.gl/maps/0eMrY

2015/04/28(Tue)
@CLUB CIRCUS

Joy Orbison (Hinge Finger)
Will Bankhead (The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
AIDA
Matsuo Akihide
qands
Open/Start 22:00
Door 2,500yen
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)
More Information : CLUB CIRCUS
06-6241-3822 https://circus-osaka.com

当日は東京と大阪の両会場にてイベントの開催を記念したC.EのTシャツの販売が決定!
CETTT T #2 (イベントTシャツ)
Price: 4,000yen (Tax incl.)
問い合わせ先: Potlatch Limited www.cavempt.com

Joy Orbison
2009年にHot Flush から〈Hyph Mngo〉をリリースしデビューを飾ったのち、〈The Shrew Would Have Cushioned The Blow(Aus Music)〉や〈Ellipsis(Hinge Finger)〉、Boddikaとの共作による〈Swims(Swamp81)〉など精巧かつ念密に構築された楽曲を次々とリリースし続ける傍ら、Lana Del ReyやFour Tet、José Jamesといったアーティストのリミックスを手がけている。ハウスや2ステップ、ジャングル、テクノ、ダブステップ、これらの要素が融合し生まれた〈ガラージハウス〉とはJoy Orbisonの作り出した“音”だと言っても過言ではないだろう。レーベル〈Hinge Finger〉 をThe Trilogy TapesのWill Bankheadと共に立ち上げるなど異質かつ独自な動きを行う中、最近ではBBC RADIO 1の人気プログラムである〈Essential Mix〉に登場するなど、トラックメーカー/プロデューサーとしてはもちろんDJとしても高い人気を誇っている。
https://soundcloud.com/joy-orbison
https://www.residentadvisor.net/dj/joyorbison

■Will Bankhead
メイン・ヴィジュアル・ディレクターを〈Mo’Wax〉で務めたのち、〈PARK WALK〉や〈ANSWER〉といったアパレル・レーベルを経て、〈The Trilogy Tapes(TTT)〉を立ち上げた。現在、前述したTTTやJoy Orbisonとのレーベル〈Hinge Finger〉の運営に加え、〈Honest Jon's Records〉や〈Palace Skateboards〉などのデザインを手がけている。2014年10月には、渋谷ヒカリエで行われた〈C.E〉のプレゼンテーションのアフターパーティでDJを行うため、Anthony NaplesとRezzettと共に来日した。
https://www.thetrilogytapes.com

■DJ NOBU(FUTURE TERROR / Bitta)
FUTURE TERROR、Bitta主宰/DJ。NOBUの活動のスタンスをひとことで示すなら、"アンダーグラウンド"――その一貫性は今や誰もが認めるところである。とはいえそれは決して1つのDJスタイルへの固執を意味しない。非凡にして千変万化、ブッキングされるギグのカラーやコンセプトによって自在にアプローチを変え、 自身のアンダーグラウンドなリアリティをキープしつつも常に変化を続けるのがNOBUのDJの特長であり、その片鱗は、 [Dream Into Dream]〈tearbridge〉, [ON]〈Musicmine〉, [No Way Back] 〈Lastrum〉, [Creep Into The Shadows]〈Underground Gallery〉など、過去リリースしたミックス CDからもうかがい知る事が出来る。近年は抽象性の高いテクノ系の楽曲を中心に、オーセンティックなフロアー・トラック、複雑なテクスチャーを持つ最新アヴァ ン・エレクトロニック・ミュージック、はたまた年代不詳のテクノ/ハウス・トラックからオブスキュアな近代電子音楽など、さまざまな特性を持つクセの強い楽曲群を垣根無くプレイ。それらを、抜群の構成力で同一線上に結びつける。そのDJプレイによってフロアに投影される世界観は、これまで競演してきた海外アーティストも含め様々なDJやアーティストらから数多くの称賛や共感の意を寄せられている。最近ではテクノの聖地〈Berghain〉を中心に定期的にヨーロッパ・ツアーを行っているほか、台湾のクルーSMOKE MACHINEとも連携・共振し、そのネットワークをアジアにまで拡げ、シーンのネクストを模索し続けている。
https://futureterror.net
https://www.residentadvisor.net/dj/djnobu

■Edward Occulus
イラストレーター・グラフィックデザイナー。2011年にToby Feltwell、Yutaka.Hとストリートウエアブランド〈C.E〉を立ち上げた。www.cavempt.com

■Toby Feltwell
英国生まれ。96年よりMo'Wax RecordsにてA&Rを担当。
その後XL Recordingsでレーベル を立ち上げ、Dizzee Rascalをサイン。
03年よりNIGO®の相談役としてA Bathing Ape®やBillionaire Boys Club/Ice Creamなどに携わる。
05年には英国事務弁護士の資格を取得後、東京へ移住。
11年、Sk8ightTing、Yutaka.Hと共にストリートウエアブランドC.Eを立ち上げる。
https://www.cavempt.com/

■1-Drink
TECHNO、HOUSE、BASS、DISCOの境界を彷徨いながら現在にいたる。 DJユニット"JAYPEG"を経て現在は個人活動中。 ときどき街の片隅をにぎわせている。
https://soundcloud.com/1-drink


Vinnie Who - ele-king

 エール・フランスがエール・フランスのCM曲をやってるらしいぞとききつけて「まさか」と思ったが、はたして真実は真実らしいかたちをしていた。

 スタイリッシュでガーリー、透明感にあふれるこの話題のCMで使用されているのはグラス・キャンディ。まあ、そうですよね。しかし勘違いがもつれてそれがエール・フランスだという誤情報に置き換わったことにはどこか得心がいって、また、それがコンピュータ・マジックではなくてグラス・キャンディだというところには、出資側の感性がアンダーグラウンドに寛容であることを垣間見る思いがする。スウェディッシュ・“バレアリック”・ポップと喧伝され、涼やかなシンセジスに甘くけだるい北欧ポップ節をくるみながら、こっそりと世間に中指をたてていたデュオ、エール・フランス。同郷のザ・タフ・アライアンスやエンバシーなどを挙げるまでもなく、2010年をまたぐ前後数年のインディ・シーンにおいて北欧のエレクトロ・ポップはひとかどの存在感を示していた。折しも、エイティーズ・リヴァイヴァルや、チルウェイヴに象徴されるサイケデリックとチルアウトの大きな機運が交差するタイミングでもあった。
 いまその頃の音を聴くとインな感じよりもむしろ懐かしさを覚えてしまうが、ヴィニー・フーのポップ・ソングにもその懐かしさを、そしてまた、おそらくは時代が経っても変わることのない、インディ・ポップというものが常温的に持っている輝きを感じずにはいられない。それは、彼自身が愛している音楽がそうであるように、だ。

 デンマークのシンガー・ソングライター、 ヴィニー・フーことニールス・バゲ・ハンセン(Niels Bagge Hansen)。本作は2010年のデビュー・アルバムから数えて3枚め、〈EMI〉からの2作に次ぎ、ザ・レイト・グレイト・フィツカラルドスなどデンマークのシーンをリードする〈フェイク・ダイアモンド・レコーズ〉から初のインディ・リリースとなる。女性かとまごうほどのアンドロジニーなヴォーカル(メモリー・テープスを思い出す)がまず印象的だが、丁寧なソングライティングには筋の通った音楽好きの表情がありありとうかがわれる。深めのリヴァーブには、ヴィンテージなフォーク・ロックの響きやソフト・サイケの系譜、あるいはセブンティーズの都会的なシンガー・ソングライターたちの仕事がにじむ。冒頭の“マッチ・マッチ・モア”や“セヴン”などがその嚆矢で、“イマジネーション”のタイトなスネアや小作りなストリングスのアレンジも瀟洒で奥ゆかしい。“ファンタイム”“オンリー・ドリーミング”他は〈クレプスキュール〉などエイティーズのインディ・ギターポップ・マナーに及び、イェンス・レクマンの諸作にも比較したくなるだろう。
 ジャケットのアートワークを並べてみればわかるけれど、声におとらず中性的なその容姿を耽美なアート・センスで過剰に押し出す前2作やシングル(メジャーらしいコレクトネスにのっとっている)にくらべて、本作のそれはよりパーソナルで等身の本人像を写しだすかのように感じられる。楽曲のスタイルやプロダクションについてもそうで、ヒット・ナンバーである“39”や“レメディ”などを筆頭としたエレクトロ・ポップはすっと影をひそめ、『ハーモニー』はその中からソウルやオールドなロック・マナーだけを抽出してきたかのようなたたずまいである。
 どちらがいいという話ではなく、彼にはそのいずれにおいてもブレることのない芯──彼が体現する音が彼の愛する音であるという──があるのだから、われわれは今作のよりロウな感触と表出を楽しむだけだ。飛行機の宣伝になるようなキャッチーなシンセ・ポップでこそないが、後期2000年代インディとして理想的な年の積み重ねがあり、北欧ポップ・シーンが湧出のやまない泉であることをあらためて感じさせる良盤ではないだろうか。

interview with QN - ele-king


QN
New Country

SUMMIT

Hip Hop

Tower HMV Amazon iTunes

 以下に掲載するのは、紙版『ele-king Vol.7』(2012年10月20日発行)のQN(現・菊地一谷)のロング・インタヴューの後編、あるいは番外編である。雑誌のほうでは、自身がリーダーを務めていたヒップホップ・ポッセ、シミラボからの脱退の真相やノリキヨとのビーフ、これまでの彼自身の歴史といったディープな話を赤裸々に語ってくれている。

 そういうこともあって、ここに掲載するインタヴュー記事は音楽的な話題に絞ることができた。新しい作品を作るたび、変化と成長を楽しむようにフレッシュなサウンドに挑戦しつづける、ラッパー/プロデューサー、QN/菊地一谷。当時21歳だった若き音楽家が語った言葉は、過去・現在の彼の音楽をより深く聴くための手助けになるのではないだろうか。

 デート・コース・ロイヤル・ペンタゴン・ガーデン(以下、DCPRG)が2012年に発表した『セカンド・リポート・フロム・アイアン・マウンテン・USA』へのゲスト参加や彼らとのライヴ、同年6月に発表したサード・アルバム『New Country』やラウ・デフとのニュー・プロジェクト〈ミュータンテイナーズ〉の興味深いコンセプトについて語ってくれている。最新インタヴューとあわせて楽しんでほしい。

■菊地一谷 / きくちかずや
またの名をQN。2012年までヒップホップ・クルーSIMI LABに在籍。数多くのストリート・ネームを持ち、楽曲も多数手掛けてきた異才にして、理解され難い行動や言動でも記憶されるプロデューサー/ラッパー。前作『DQN忠臣蔵~どっきゅんペチンス海物語~』リリース後、菊地成孔プロデュースによる女優・菊地凛子の「Rinbjö」名義でのデビュー・アルバム『戒厳令』へも参加。2015年、音楽活動を再スタートさせることを宣言し、客演にSEEDA、菊地成孔、NORIKIYO、MARIA、RAU DEF、GIVVN(from LowPass)、田我流、菊丸、高島、北島などを迎えてのアルバム『CONCRETE CLEAN 千秋楽』をリリースした。

きっかけはトロ・イ・モワでしたね。あそこから、アニマル・コレクティヴとかムーとかヤー・ヤー・ヤーズを聴くようになって。あと、ジ・エックス・エックスとか。


DCPRGの『セカンド・リポート・フロム・アイアン・マウンテン・USA』のなかの2曲に、シミラボはゲスト参加してますね。“UNCOMMON UNREMIX”、あれはラップを録り直してますよね?

QN:あれは録り直してますね。

DCPRGは、70年代初期のエレクトリック・マイルスに強く影響を受けているバンドですよね。QNくんやシミラボのラッパーの柔軟なリズム感がDCPRGのポリリズミックなリズムとハマってて、すごいカッコイイですよね。実際やってみて興奮しました?

QN:すげぇ興奮したっすね。〈ageha〉のライヴ(2012年4月12日に行われたDCPRGのアルバムの発売記念ライヴ)も良かったですね。 “UNCOMMON UNREMIX” と“マイクロフォン・タイソン”はもちろんやったんですけど、最後にアンコールで、“Mirror Balls”の生演奏に“The Blues”のラップを乗っけたのがとにかく記憶に残ってますね。あれは、テンション上がったっすね。

それは菊地さんのアイデアだったんですか?

QN:そうっすね。

菊地さんから録音やライヴのときに、「こうやってほしい」みたいなディレクションはありました?

QN:いや、とくに何も指示されてないっす。すげぇ自由にやらせてくれたっすね。「もう好きにやって」みたいな。

オファーのときに、シミラボへの熱いメッセージはなかったんですか?

QN:それはもちろんあったっすね。でも、ちょっと覚えてないっす(笑)。とにかく、シミラボをすごい気に入っていて、応援してるっていうのは言ってくれてましたね。で、オレらもなんとなくイヤな気がしなかったんです(笑)。直感ですね。

菊地さんのことは知ってました?

QN:いや、ぜんぜん知らなくて。

はははは。そうなんだ。シミラボの他のメンバーも?

QN:知らなかったですね。

じゃあ、DCPRGの音楽を聴いて、やろうと決めた感じですか?

QN:そうですね。音を聴いて、これだったらおもしろいものができるなって。ただ、個人的にはもうちょっとできたかなとは思いますね。

なるほど。ところで、『New Country』はこれまでの作品に比べて、ベースとビートが強調されて、よりグルーヴィになった印象を受けました。すごくいいアルバムだなって感じましたし、はっきりと音楽的飛躍がありますよね。

QN:そうですね。まぁ、シリアスなアルバムだとは思いますけど。なんて言うか、ヘイトしているわけじゃないんですけど、ヒップホップがすごい好きだったぶん、それ以外の音楽にもっと触れたくて、去年はずっとロック系の音楽を聴いてました。最近のロックは普通にMPCが使われていたりするから、それは自然な流れでしたね。チルウェイヴとかオルタナティヴ・ロックとかを聴くようになったんです。きっかけはトロ・イ・モワでしたね。あそこから、アニマル・コレクティヴとかムーとかヤー・ヤー・ヤーズを聴くようになって。あと、ベタですけど、ジ・エックス・エックスとか。ヒップホップだと、キッド・カディですね。すごいいいですよね。こういうやり方もあるのかって、影響受けましたね。キッド・カディはヒップホップだけど、なにかちょっと他の音楽も入ってる感覚があって。

キッド・カディはオルタナティヴ・ロックとかサイケデリックの要素もありますもんね。あと、歌詞が内省的ですよね。

QN:そうっすね。かなり内省的ですね。そうやっていろんな音楽を聴いていたのもあって、ネタ掘りが変わってきたんです。有名どころですけど、マイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』にもハマって。『エクソシスト』の主題歌の原曲を弾いてるイカれてる人ですよね。あと、カンとかキャプテン・ビーフハートとか。オカモトズのレイジと彼の友だちの副島ショーゴっていうまじ熱いDJといろいろ情報交換してたんですよね。そのDJはオレの1コ下でとにかくヒップホップが詳しくて、オレはその頃ロックに興味持ってたんで。


結果的に、トーキング・ヘッズにたどりついて。

それは、前作『Deadman Walking 1.9.9.0』を制作しているぐらいの時期ですか?

QN:そうすね。で、結果的に、トーキング・ヘッズにたどりついて。

トーキング・ヘッズ! どのアルバムですか?

QN:アルバムはひととおり持ってるんですけど、衝撃だったのは、『ストップ・メイキング・センス』っていうDVDでした。あれを観て、「わおー!」って思って。とくに好きな曲は“ジス・マスト・ビー・ザ・プレイス (ナイーヴ・メロディ)”ですね。わかります?

いや、その曲、わからないです。

QN:あとはトム・トム・クラブとかにやられましたね。『New Country』を作るきっかけは、わりとトーキング・ヘッズにありますね。

それは興味深い話ですね。トーキング・ヘッズのどこに魅力を感じました? ファンクとロックを融合した音とか、いち早くアフリカ音楽にアプローチしているところか、いろんな側面がありますよね。

QN:そうっすね。いろいろありますけど、これはもうヒップホップだなって思ったんです。だから『New Country』は、オレの勝手なイメージですけど、質感的には、トーキング・ヘッズを意識したんです。そういうのもあって、バンド編成みたいなニュアンスでトラックを作ろうって考えたんです。

Talking Heads “This must be the place (Live: Stop Making Sense)”


『Deadman Walking 1.9.9.0』にもコーラスの女性ヴォーカルや、ヴァイオリン奏者、ギタリストが参加していますよね。シンセを弾いてるサドラーズ・ウェルズっていうのは、たぶんQNくん本人じゃないですか?

QN:あれはオレですね。サンプリングで作っている以上は、要はある意味で、他人の音楽をパクッてるのに近いじゃないですか。これまでは、まあ、盗むっていう発想だったんです。『New Country』は、ギター、ドラム、シンセ、ベースがいて、ラッパーのオレが前に出ているっていう大体5人組ぐらいのバンド編成のつもりで作ったんすよ。そこに、フィーチャリングでたまにホーンが入ってきたりするっていう。でも、基本的にはギター、ドラム、シンセ、ベースをイメージしてサンプラーをいじってましたね。あとちょっと、オレのひねくれが出ちゃって、昔のドラム・マシーンみたいな荒れてる音にしたりもしてますね。


ヒップホップから離れようと思ったら、逆にヒップホップでありたいと思ったというか。

トーキング・ヘッズをはじめ、いろんな音楽に耳を傾けたのが大きかったんですね。ジ・XXを聴いてるってことは、UKのベース・ミュージックも聴いてました?

QN:それは大きかったっすね。去年はもうUKに行こうかなぐらいでしたよ。

そこまでだったんだ。UKのベース・ミュージックのどこに魅力を感じました?

QN:「踊れるなー」ってとこがデカかったっすね。

でも、『New Country』はそこまで思いっきりダンサンブルでもないよね。

QN:まぁ、そうっすよね。1、2、3曲めまでは踊れる感じだとは思いますけど。ヒップホップから離れようと思ったら、逆にヒップホップでありたいと思ったというか。いざ離れてみたら、やっぱヒップホップだなっていう感じになって。『New Country』はバンド編成のイメージといっても、すげぇヒップホップに向き合いましたね。向き合ったって言うと堅苦しいんですけど、思い出して作ったっていう感じですかね。1年間、ロックばっか聴いてきたぶん、なんかちょっと振り返るじゃないですけど。

『New Country』は全曲、QNくんがプロデュースしてトラックを作っていますよね。これははじめてのことで、ひとつの変化ですよね。理由はあったんですか?

QN:そうっすね。シンプルに考えて、必要だと思ってる人だけを呼びましたね。いろんなラッパーに参加してもらってますけど、ビートは全部自分で作りたかったんです。コンセプトが自分の中に強くあったのと、自分の等身大のアルバムを作りたかったので。

QNくんはほんとにハイペースで作品を発表しつづけてますけど、『New Country』はいつから作りはじめたんですか?

QN:『Deadman Walking 1.9.9.0』のリリースが去年の12月だから、『New Country』のビートは12月から4月ぐらいまでに作りましたね。マスタリングの日までレコーディングしてて、超やばかったっす(笑)。『Deadman Walking 1.9.9.0』を作ったあと、思った以上にイメージがわいてきて、リリースする予定はなかったんですけど、1月の段階で7曲ぐらいできちゃったんです。なんかすげぇミニマルっていうか、音数が少ないものができてきて。

音数が少ない、ミニマルというので思い出したんですけど、『New Country』のいくつかの曲を聴いて連想したのは、バスタ・ライムスの“プット・ユア・ハンズ・ホウェア・マイ・アイズ・キャン・シー”だったんですよね。

QN:あー、なんとなくわかります。

Busta Rhymes “Put Your Hands Where My Eyes Can See”

あと、古くて新しい音の質感とかちょっとひねくれたサンプリングのセンスとか、RZAのソロ作の『バース・オブ・ア・プリンス』とかRZAの変名のボビー・デジタルに近いものがあるなぁと。

QN:もしかしたら、それは近いっぽいっすね。わりと。そうかもしれないっすね。『ボビー・デジタル・イン・ステレオ』はたまたま聴いてたっすね。フランス語かなんかのスキットがすげぇ好きで。

『New Country』にはこれまでの作品に比べて、ファンクを強く感じたんですよね。個人的に僕はいままでのQNくんのアルバムでいちばん好きです。本人的にはどうですか?

QN:ほんとっすか。うれしいっすね。ただ、ファンクももちろん好きっすけど、でも意外とファンクっていう気持ちはなかったかな。うれしいことなんですけど。


オレは大人にはならないんで。それはもう考えないようにしてる。

ところで、QNくんはこれまで大人なることを拒絶するような態度をラップで表現してきたと思うんですけど、いまはどうですか? “Better”でも「まだ自分はクソガキだ」ってラップしてますけど。

QN:ああ、『Deadman Walking 1.9.9.0』までは、もう大人になんのか、なっちゃうのか、みたいな感じだったんですけど、『New Country』ではもう開き直ってますよね。“DaRaDaRa”でも「誰がオレをこんなにした? 誰がオレをこんなにアホにした?」とか言い出しちゃってますし(笑)。けっこう開き直ってるんすよ。

QNくんにとって大人になるっていうのはどういうことですか?(笑)

QN:いやー、難しいっすねー(笑)。オレは大人にはならないんで。それはもう考えないようにしてる。

大人になるというのは、QNくんにとってネガティヴな意味合いがあります?

QN:いや、ぜんぜんネガティヴだとは思ってないっすけど。

でも、大人に対する反発心みたいのを強く感じますけどね。

QN:それは、自分にウソをつきたくないっていうのがいちばん近い感覚かもしんないっすね。もちろん尊敬できる大人もたくさんいるんですけど。いままでは、普通や常識をいちおう見て知っておかないと自分がいい方向に行かないんじゃないかって思ってたんですよ。でも、シミラボを辞めるタイミングあたりで、「それは違うよな」って思ったんです。ありのままの自分を認めていかないと、どうすることもできないなって。だから、オレはいまヒップホップもすげぇわかりやすいものが好きですね。自分が好きな90年代のヒップホップがあらためてフィードバックしてきてる感じがありますね。


これまでの自分は何かを演じていないと自分を維持できないタイプの人間だったのかなーって思うんです。でも、このアルバムあたりから、普通に自分のいろんなものを認めてやれるようになった気がしますね。

それと、『New Country』のクライマックスの、“Better”“船出~New Country~”“Flava”の3曲がとくにそうかもしれないけれど、リリックも明瞭に聴き取れて、言葉を伝えようという意識を感じました。

QN:自分の言葉でラップするというのを意識して、それができたのかなとは思います。やっと自分の言葉に消化して表現することができはじめてきたかなって。まだまだ煮詰められるとは思いますけど。『New Country』は、ほんとにすっげー勢いで作ったんですよ。朝から夜まで1日で3曲とか作って。ほんと余計なことを考えなかったっていうことっすね。

勢いもあるんでしょうけど、コンセプチュアルなアルバムでもありますよね。

QN:ほんとそうだと思うんす。でも、ぶっちゃけ後付けですけどね。というか、後付けもなにも、2、3ヶ月の間に自分に起きた現象が全部の曲に自然とはまったんです。それはじつは自分でもけっこうびっくりしてるっていうか。それだけ歌詞がたぶんスマートに出てきたってことだと思いますね。

アルバムのタイトルを直訳すると、“新しい国”ですよね。この言葉が意味するところはなんですか? QNくんのなかにイメージとかあったりします?

QN:そうっすね。どうなんだろ? タイトルどおり、自分の理想郷の話っすね。「ほんとはこうだったらいいのに」みたいな話でもありますね。ただ、『New Country』は、自分で言うのもなんですけど、ほんとにヒップホップのアルバムだと思ってて。ラップもフッド・ミュージックに近づいたっていうか。ラップのフロウの取り方も雑って言えばすごい雑で、細かいって言えば細かいっていう。そういう感じとか、ちゃんとオリジナルのヒップホップに近づいたのかなっていう気はしてますね。いちばん自分らしいアルバムになったんじゃないかなって。これは超イルな発言なんですけど、これまでの自分は何かを演じていないと自分を維持できないタイプの人間だったのかなーって思うんです。でも、このアルバムあたりから、普通に自分のいろんなものを認めてやれるようになった気がしますね。大げさなこともたぶん言ってないし、自分の中にあるもので表現できたかなって。

なるほど。

QN:あと、『New Country』を制作してるあいだ、人との関係とかいろいろシャットアウトしてたっていうか。それぐらいの気持ちになっちゃって。他の音楽とかぜんぜん聴かなくなって。そうじゃないと自分がもたないぐらいの現象が起きてて。とにかくアルバムを作ることしか考えられなかったですね。しかも、自分が作ったものに納得できなかったりもして。まあ、生々しい感じでした。


もう変えてますね(笑)。ヘルメスって名前に。でも、もう変えないっすね。次の名前で終わりっす。それを末永く使おうかと。

ところで、QNって名前を変えるって話を聞いたんですけど、ほんと?

QN:いや、もう変えてますね(笑)。ヘルメスって名前に。でも、もう変えないっすね。次の名前で終わりっす。それを末永く使おうかと。でも、なんかいま、女の子に訊くと、たいがい「QNの方がいいよ」って言われるんですよ。「ヘルメスっていうのヘルペスみたい」って。

はははは。じゃあ、変えないほうがいいよ。名前を変えると、せっかくQNで有名になったのにもったいないよ。

QN:そうですよね。だから次で最後かなって。名前を変えたら、ツイッターのフォロワー200人ぐらい減っちゃって(笑)。

このタイミングで普通はQNって名前は捨てないですよね。

QN:そうっすよね。でも、オレが新しい動きをして、それについて来れなかった人だけがたぶんフォロー外してるんだろうから、それはそれでいいかなって。完全強気っす。

強気だなぁ。

QN:はい。あと、オレら界隈でいま、ミュータントっていう言葉が流行ってるんですよ。シミラボも最初は街に黒いシミができて、その黒い液体が人の形になって、音楽を作りはじめるっていうストーリーがあったんです。要はSFなんすよね。ミュータントって突然変異体って意味ですけど、もともとは差別用語だったと思うんです。奇形児とかをミュータントって呼んだりして。べつにオレはハードな環境で育ったわけじゃないけれど、社会不適合者っていう意味ではミュータントなんじゃないかなって。でも、社会不適合者とかミュータントは特別な能力を持ってる人たちなんじゃないのかなって。

なるほどー。

QN:で、ミュータントとエンターテイナーを掛け合わせて〈ミュータンテイナーズ〉ってレーベルを立ち上げたんです。俺とラウ・デフがまとめたグループ名でもあるんです。いまはその新しいプロジェクトでアルバムを制作中っていう感じですね。


Afrikan Sciences - ele-king

 フラング・ロータス、さもなければシカゴのディープ・ハウスおける最重要プロデューサー、90年代後半のロン・トレント──、アフリカン・サイエンスのアルバム『Circuitous』を聴いたとき、そのように感じました。アフロで、コズミックで、スピっているようです。
 とはいえ、こちらは、ベルリンのもっともクールなレーベル〈PAN〉からのリリースです。アフリカン・サイエンスはよりモダンで、実験的で、フリーキーです。音楽の向こう側には、ブラック・サイエンス・フィクションが広がっているかもしれません。ケオティックです。何かが起きているようです。アクトレスを思い出して下さい。この音楽は、どきどきします。
 まったく……これは注目の初来日です。

AFRIKAN SCIENCES Japan Tour 2015

Afrikan Sciences x DE DE MOUSE
4.24 fri @ 大阪 心斎橋 CONPASS
Live Acts: Afrikan Sciences(PAN, Deepblak - New York), DE DE MOUSE
DJs: T.B.A.
Open/ Start 19:00
¥ 3,000(Advance), ¥ 3,500(Door)plus 1 drink charged @ door
前売りメール予約: https://www.conpass.jp/mail/contact_ticket/
Ticket Outlets: PIA, LAWSON, e+(eplus.jp)
Information: 06-6243-1666(CONPASS)
www.conpass.jp

UBIK
4.25 sat @ 東京 代官山 UNIT
Live Acts: Afrikan Sciences(PAN, Deepblak - New York), N'gaho Ta'quia a.k.a. sauce81(disques corde)
DJs: Shhhhh(SUNHOUSE), MAMAZU(HOLE AND HOLLAND)
Open/ Start 23:30
¥3,000(Advance), ¥3,500(Door)
Ticket Outlets: LAWSON(L: 76745), e+(eplus.jp), disk union CMS(渋谷, 新宿, 下北沢), TECHNIQUE, Clubberia Store, RA Japan and UNIT.
Information: 03-5459-8630(UNIT)
www.unit-tokyo.com


Afrikan Sciences(PAN, Deepblak - New York) https://soundcloud.com/afrikan-sciences
オークランド出身、 NY拠点のエリック・ポーター・ダグラスのソロ・プロジェクト。DJとして80年代のヒップホップをルーツに持ち、90年代後期の電子音楽のプロダクションに自身のサウンドを見い出し、2007年にオークランドの盟友 Aybee主宰の〈Deepblak〉からデビュー、同レーベルからEPとアルバムをリリース、 Gilles Peterson主宰の〈Brownswood〉のコンピレーションにも参加。Afrika Bambaataaの私生児、SF作家Octavia Butler、 Sun Raの孫息子とも言及され、90年代の東海岸のハウス、40年代のジャズ、 西ロンドンのブロークン・ビーツ、土着的なアフリカやラテンのリズムから掻き集め、蓄積されたビートの感性は様々な音楽のフォームとサイファイ・ビジョンと結びつきながら独創的なプロダクションへと発展。AybeeとのMile Davisトリビュート・プロジェクト『Sketches Of Space』ではアシッド・ハウス先駆者Ron Hardyとアフロ・ビートかけあわせたような作品を披露。 長年先人達によって育まれ、更新されて来たアフロ・フューチャリズムの前衛としても異彩を放つ電子音楽家である。

N'gaho Ta'quia a.k.a. sauce81(disques corde) https://soundcloud.com/sauce81
プロデューサーsauce81の変名プロジェクト。sauce81としては、2008年、バルセロナにて開催されたRed Bull Music Academyに招待され、Sonar Sound Tokyoなどの国内フェス、海外でのライヴパフォーマンスも行っている。生々しいマシン・グルーヴとラフで温かみのあるシンセ使い。雑味たっぷりの楽器演奏と時折表すファジーでメローなボーカルワーク。ディープなソウルとファンクネスをマシンに宿すプロダクション・スタイルで、数々のリミックス、コンピへの楽曲提供を重ねてきた。これまでに『Fade Away』EP、『All In Line / I See It』EP、77 Karat Gold(grooveman Spot & sauce81)『Love / Memories In The Rain』7inch、『It's About Time』EP などのオリジナル作に加え、Shing02脚本・監督のショートフィルム『BUSTIN’』のために書き下ろした楽曲が、UKの〈Eglo Records〉から『Natural Thing / Bustin'』7inch レコードとしてリリース。N'gaho Ta'quia(ンガホ・タキーア)では、自身のルーツである 70's ジャズ、ファンク、ソウル・ミュージックをヒップホップ/ビート・ミュージックのフィルターを通してアウトプットすると共に、アルバム制作へと繋がるコンセプチュアルな世界観を表現している。

Shhhhh(SUNHOUSE) https://twitter.com/shhhhhsunhouse https://shhhhhsunhouse.tumblr.com/
DJ/東京出身。オリジナルなワールドミュージック/伝統伝承の発掘活動。フロアでは民族音楽から最新の電子音楽全般を操るフリースタイル・グルーヴを発明。オフィシャルミックスCD、『EL FOLCLORE PARADOX』のほかに『ウニコリスモ』ら2作品のアルゼンチン音楽を中心とした、DJ視点での南米音楽コンピレーションの編集/監修。ライナーノーツ、ディスクレビューなど執筆活動やジャンルを跨いだ海外アーティストとの共演や招聘活動のサポート。 全国各地のカルト野外パーティー/奇祭からフェス。はたまた町の酒場で幅広く活動中。

Mamazu(HOLE AND HOLLAND)https://mamazu.tumblr.com/
SUPER X 主催。90年代中期頃からDJとして活動を始める。今は無きclub青山MIXの洗礼を浴び、音と人、空間に触発され多種多様な音を吸収。小箱から大箱、野外まで独自の視点で形成される有機的なプレイを続け、国内外数多くのDJ、アーティストとの共演を果たす。トラック制作ではSkateDVDの『007』や『LIGHT HILL ISM』、雑誌『TRANSWORLDJAPAN』付録DVD、代々木公園にて行われる伝統ダンスパーティー『春風』のPVなどに楽曲を提供。2011年HOLE AND HOLLANDから発売されたV.A『RIDE MUSIC』の収録曲「ANTENA」ではInterFMなどでも放送され、日本が宇宙に誇るALTZもPLAY!、BOREDOMSのEYEもMETAMORPHOSE 2012でPLAYし、REDBULL主宰の RBMA RADIO にて公開され大きな話題となる。2012年5月には『RIDE MUSIC』から待望のアナログ・カット、MAMAZU - ANTENA - YO.AN EP EDITをリリースしこちらもALTZ、INSIDEMAN aka Q(Grassroots)、箭内健一(Slow Motion Replay)、YAZI(Blacksmoker)などなど様々なDJがPLAY中!2013年は自身初となるMIXCD『BREATH』をリリースし、最近ではアパレルブランドSON OF THE CHEESEの2015F/WのイメージMIXを提供。HOLE AND HOLLANDからリリースが予定されている。またCOGEEとのB2Bユニット『COZU』やSUNGAを加えたライヴユニット『DELTA THREE』ではBLACK SHEEPによるコンピレーションLP『ANTHOLOGY』に曲を提供するなど、活動は多義に渡る。

interview with Kikuchi Kazuya - ele-king


菊地一谷
CONCRETE CLEAN 千秋楽

Pヴァイン

Hip Hop

Tower HMV Amazon iTunes

 アニマル・コレクティヴ、ムー、ヤー・ヤー・ヤーズ、マイク・オールドフィールド、ジ・エックス・エックス、トーキング・ヘッズ、プリンス……、QN改め菊地一谷の口からは年代もジャンルも雑多なミュージシャン、バンドの名前が出てくる。人騒がせな行動のおかげで、筆者が彼に出会ったときの大切な第一印象を忘れそうになっていたことに気づく。菊地一谷は音楽好きのラッパー/プロデューサーで、レコードを掘るのも大好きな男だった。一時は音楽への情熱が薄れたのかと思わせる発言も耳にしていただけに、再び音楽への情熱を取り戻したと聞けてうれしかった。

 菊地一谷はQN名義で昨年リリースした『DQN忠臣蔵~どっきゅんペチンス海物語~』からMPCとトライトンでの制作へ移行している。そこで彼は、スウィズ・ビーツのミニマリズムとエッジの効いたコールド・ファンクが合体したようなヒップホップ・サウンドを展開した。菊地一谷名義のファースト・アルバム『CONCRETE CLEAN 千秋楽』のサウンドはその深化形であり、さらに本作にはプリンスやトラップ・ミュージックや90年代ブーム・バップの要素も多分に含まれている。ちょっと未来的な感じだ。
 また、SEEDA、NORIKIYO、菊地成孔、田我流、北島、高島、MARIA、RAU DEF、菊丸、GIVVN(LowPass)といったゲスト陣が参加しているものの、菊地一谷が彼らに食われていない、というのがもうひとつのポイント。ゲスト・ラッパーに頼りっぱなしでお茶を濁したような作品ではない。謙虚に見せつつも主役は俺だというエゴを出しているのがいい。さらにさらにこの男、どこか放っておけないという気分にさせるさびしげな詩情を持っているからズルイ。

 取材場所へ登場した彼は筆者にドトールのコーヒーと茶菓子を手渡し、「どうぞよろしくお願いします」と言った。ん? あれだけ拒絶していた大人になったのだろうか。仕事をして、飯を食って、仲間とチルして、音楽を作る。そういう日常のサイクル、菊地一谷流のヒップホップ的ライフ・スタイルからこの最新作はできあがっている。そのように菊地は語った。さて、その真意とは?

■菊地一谷 / きくちかずや
またの名をQN。2012年までヒップホップ・クルーSIMI LABに在籍。数多くのストリート・ネームを持ち、楽曲も多数手掛けてきた異才にして、理解され難い行動や言動でも記憶されるプロデューサー/ラッパー。前作『DQN忠臣蔵~どっきゅんペチンス海物語~』リリース後、菊地成孔プロデュースによる女優・菊地凛子の「Rinbjö」名義でのデビュー・アルバム『戒厳令』へも参加。2015年、音楽活動を再スタートさせることを宣言し、客演にSEEDA、菊地成孔、NORIKIYO、MARIA、RAU DEF、GIVVN(from LowPass)、田我流、菊丸、高島、北島などを迎えてのアルバム『CONCRETE CLEAN 千秋楽』をリリースした。

“CLEAN”という言葉が出てきたのは、これまでのちょっとイリーガル感のある作品じゃなくて、ヒップホップであっても若い世代に悪影響のない音楽を作りたかったからなんです。

まずやはり『CONCRETE CLEAN 千秋楽』というタイトルですよね。

菊地一谷(以下、菊地):最初からシンプルかつライトな聴きやすい音楽を作ろうというコンセプトがあって、タイトルも菊地一谷の頭文字を取って『KK』にしようと考えてたぐらいなんです。でも、客演を集めていくなかでSEEDAくんのフィーチャリングが決まって、俺がふざけて『CONCRETE GREEN』をもじったりしていたら、『CONCRETE CLEAN』にたどりついた。“CLEAN”という言葉が出てきたのは、これまでのちょっとイリーガル感のある作品じゃなくて、ヒップホップであっても若い世代に悪影響のない音楽を作りたかったからなんです。

“イリーガル感”のある作品とは、『DQN忠臣蔵~どっきゅんペチンス海物語~』のこと?

菊地:それもそうですけど、僕自身がいま普通に働いてクリーンな生活をしていたから、そこからもきてますね。あとなにより、『CONCRETE GREEN』は僕の憧れのアルバムだったんですよ。僕らの世代にとってあのコンピはすごく大きい。『CONCRETE GREEN 5』以降、とくに『CONCRETE GREEN 8』や『CONCRETE GREEN 9』ぐらいになると、若い世代もかなり収録されていたから、「俺にもいつかオファーがくるんじゃないか」と思ってたんです(笑)。でも自分は入ることができないまま終わってしまった。だったらもう自分で作るしかないなと。だから、このアルバムは『CONCRETE GREEN』のパロディと思っていただきたいです。

ということは、『CONCRETE GREEN』監修者であるSEEDAと“神奈川ハザード”で共演できたのは感無量なんじゃないですか?

菊地:それはめっちゃありますね。SEEDAくんとNORIKIYOさんといっしょに曲を作れたのは大きいです。“神奈川ハザード”は、SEEDAくんが川崎出身で僕が相模原出身なんで、神奈川つながりで曲を作りましたね。

実際いっしょに制作してみてどうでしたか?

菊地:SEEDAくんのヴァースはフリースタイルなんですよ。じつは僕が半分騙したんです(笑)。

どういうこと?

菊地:最初はレコーディングと言わないで、「家に遊びに来てください」って誘ったんです。それで自分の部屋やリヴィングで遊びながらいい感じになってきたところで、「フリースタイルでいいんで俺のアルバムに入ってほしいです」ってお願いしたんです。SEEDAくんには、「お前、ハメたっしょ?」って言われました(笑)。そう言いながらもSEEDAくんは、30分ぐらいフリースタイルしてパリッと作ってくれました。

だからなんですね。SEEDAのリラックスした、隙間の多いフロウがすごい気になってたんですよ。“神奈川ハザード”の2人のラップには中毒性がありますね。

菊地:そうですね。でも僕はリリックを書きましたね。

NORIKIYOとの共作はどうでしたか? NORIKIYOをディスした曲以降、2人の関係について気にしているファンやヘッズもだいぶいますよね。

菊地:自分のいまの考えではビーフはよくないです。自分がNORIKIYOさんをディスったことを振り返ると、自分のやり方は間違っていたと思いますね。ああいうディスやビーフにヒートアップしてくれた人もいますけど、人のことをおとしめる音楽はやっぱりよくないなと。とはいえ、NORIKIYOさんをディスったのには理由があって、相模原の地元でずっと憧れ続けてた存在だったからなんです。単に営業妨害や邪魔をしたかったわけではなくて、音楽的に勝負したかったんです。だけど、それがああいう形になってしまった。そういうことを今回NORIKIYOさんに話したら理解していただけて、あらためて音楽的な部分で勝負させてもらいましたね。


人のことをおとしめる音楽はやっぱりよくないなと。

今回の作品で僕がまず素晴らしいと思ったのは、豪華なゲスト陣に菊地一谷が食われていないところなんです。フィーチャリングの多い作品の場合、聴く側からすると主役のラッパーがゲストのラッパーに負けていないかというのはいちばん気になるポイントでもあるじゃないですか。そこは考えてアルバムを構成したんじゃないんですか? ヴァースをラップしてる人たちに食われてないだけではなくて、菊地成孔や田我流はフックで歌ってもらうだけにとどめてますよね。

菊地:そこはゲストのみんなに無理のない程度に際立ってもらうようにお願いしたんです。それもありますし、僕がキチキチに気張った音楽が好みじゃないのもあって、さっぱり作ってほしいって依頼したんです。田我流くんは、「ヴァースも書きたいしフックもやる」と言ってくれたんですけど、フックで歌ってもらうだけにしました。田我流くん、SEEDAくん、NORIKIYOさん、それに菊地(成孔)さんはみんな大御所ですし、そのほうが高級感も出ると思ったんです。だからメインの役割は僕がやって、ゲストの人たちにはちょっと食べてもおいしいキャビアみたいな感じになってもらいましたね。ただ、MARIAにはヴァースまで書いてもらった曲(“続BETTER”)とフックだけの曲(“SLAVE ROCK”)をそれぞれ作ってもらって、RAU DEFにもかなり協力してもらってますね。

菊地一谷 feat. 菊地成孔“成功までの道のり”

菊地一谷 feat. MARIA“SLAVE ROCK”


名前に頼らないで自分の音楽とスタイルが評価されればいいし、それで存在感を示せればおもしろい展開が作れるんじゃないかと思って名前を変えました。

ところで、このタイミングでまた名前を変えたのはどうしてですか? 

菊地:QNっていう名前にいろんなバックグラウンドがついてしまったから、それに収拾をつけるために名前を変更したのがまずありますね。それと、しょっちゅう名前を変える人間が作品をポンポン出して、その上で注目されるのはそれなりのハードルだと思うんです。だから、自分への試練ですね。名前に頼らないで自分の音楽とスタイルが評価されればいいし、それで存在感を示せればおもしろい展開が作れるんじゃないかと思って名前を変えました。

それでなぜ菊地一谷?

菊地:菊地凛子さんからオファーが来たときに(菊地一谷はRinbjö『戒厳令』に参加)、「ハリウッド女優からオファー来た!」ともう舞い上がってしまって、しかも菊地成孔さんからもオファーが来てるし、もう菊地一派に入れてもらおうと完全な独りよがりでこの名前にしました。

なんだそれ……(苦笑)。

菊地:菊地一派に入りたいがためだけにこの名前にしましたね。

おふたりは何か言ってましたか?

菊地:いや、複雑な顔してたっすね。「ま、いいよ。勝手にやれば」みたいな感じだったと思います(笑)。

そりゃ反応のしようがないですよね。ぜったいまた名前変えるでしょ?

菊地:ファッションでも大人ラインと自由度の強いキッズのラインがあったりするじゃないですか。菊地一谷はそういう意味では大人路線ですね。

ただ少し前に話したときは、音楽への情熱が薄れているような発言をしていたけど、音楽への興味や探求心も復活してきたんじゃないですか?

菊地:そのとき言ったことは撤回したいですね。

それはよかった!

菊地:いまは音楽は宇宙の世界で、キリがないほどいろんな構成が作れると思ってますね。あとけっきょくレコーディングがすべてなんです。ただ日々ダラダラと生活してる人間がレコーディングのときだけ急にちゃんとできるはずがないんです。毎日の生活があってはじめてレコーディングがあるということにようやく気づいたんです。たしかに音楽への興味がなくなったときはあって、そのときはファッションに興味が行ってましたね。そういう時期があったのもいまはよかったと思ってますね。


ただ日々ダラダラと生活してる人間がレコーディングのときだけ急にちゃんとできるはずがないんです。毎日の生活があってはじめてレコーディングがあるということにようやく気づいたんです。

たしかに服は超持ってそうだよね。見るたびにちがうファッションだもんね。

菊地:服や靴の量はヤバいですね。(取材場所のP-VINEの会議室を見回して)ここが埋まるぐらいありますね(笑)。


トラップ・ミュージックをヒップホップでクラシックとされてる90年代のサウンドに混ぜたような音が作りたかったですね。

なるほど。もう少しアルバムの話をしたいんですけど、『CONCRETE CLEAN 千秋楽』は『DQN忠臣蔵~どっきゅんペチンス海物語~』の延長線上にありますよね。サウンドのひとつの核は電子ファンクですよね。

菊地:それもあるし、グッチ・メインのプロデューサーだったり、ウェスト・コーストのヒップホップだったりにけっこうハマってたので、そういう要素もあると思いますね。それと自分としてはわりとクラシック路線を狙っていきましたね。

たしかに菊丸との“菊エキシビション”とか菊地流のGファンクですよね。クラシックな路線を狙ったというのはもう少し具体的に言うとどういうこと?

菊地:最近のトラップ・ミュージックも聴き慣れると悪くないなっていう感じがあって、そういうトラップ・ミュージックをヒップホップでクラシックとされてる90年代のサウンドに混ぜたような音が作りたかったですね。

『NEW COUNTRY』を出したあとのインタヴューでは、トーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』にインスピレーションを受けたと話してましたけど、そこに関していまはどうですか?

菊地:トーキング・ヘッズはいまも好きですけど、当時ほどは熱が入っていないですね。どちらかと言えば、最近は新しい音楽を聴いてる感じですね。

たとえば?

菊地:最近はプリンスのアルバム(『Art Official Age』)がおもしろいと思いましたね。

Prince“Breakfast Can Wait”

あのアルバムはよかったよねー。

菊地:あと、昔はレコードで音楽をかなり聴いてたんですけど、いまはMixcloudを再生したりしてさっぱりした感じで音楽を聴いていますね。音楽を聴くのもそうだし、音楽の制作もさっぱりやってますね。午前中に仕事して、夜は友だちとお酒飲んだりしてチルして、その流れで音楽をさくっと作ると。だから、今回はパラデータのやり取りもしてなくて、ミキシングもマスタリングも自分でやってますね。スタジオに入ってレコーディングするっていう気張った制作の仕方ではなくて、ライフ・スタイルの一環として音楽を作るようになりましたね。

生活の流れで作ってパッと出すと。そういう制作がいまの菊地一谷の考えるヒップホップらしさなんですか?

菊地:そういうふうに思ってますね。

ラテンにはラテン、ジャズにはジャズのコード感があるのもなんとなくわかってきていて、もちろん専門的なことを言いはじめたらちゃんと勉強した人にはかなわないけど、独学ミュージックでそのあたりも追及していきたいですね。

いまもMPCとトライトンで制作してますか?

菊地:『DQN』からトライトンを導入しましたね。

しかしマスタリングまで自分でやったんですね。

菊地:全部〈ミュータント・エンパイア・スタジオ〉っていう自宅スタジオで作ったっすね。MARIA、RAU DEF、SEEDAさん、菊丸、GIVVNもそこレコーディングしてます。やっぱりお金をかけてスタジオを借りて作業して、毎回パラデータを作って制作すると、どうしても1、2年に1枚のペースが限界になる。もっとはやいスパンで僕の音楽を聴きたい人に自分の音楽を提供したいと考えたときに、今回のようなスタイルがいちばんでした。

そうすると、これからだいぶ制作のペースが上がる感じですか?

菊地:いちおうペースは上がる予定です(笑)。『CONCRETE CLEAN』のシリーズは今年中に最低でももう2作完成させようと思ってます。

へええ。音楽にたいして再びピュアになってきたんじゃないですか?

菊地:そうですね。そう言っていただけたらありがたいです。

“コンクリート・ピュア”なんじゃないですか?(笑)。

菊地:はははは。だと思いますね(笑)。

ところで、今回作りたい理想の音というのはありました?

菊地:作りたい理想の音はたしかにあるんですけど、言葉で説明するのは難しいし、今回はあんまりそういうことを考えなかったですね。今回のトラックはここ1年ぐらいで作ったもののなかから選んでいて、このアルバムのために新しく作ったのは“アチチチ”と“SLAVE ROCK”ぐらいです。今回の菊地一谷のファーストはこれまで作ってきたビートがメインで、次の作品で自分の理想に近づけたいですね。個人的にはMARIAとの“続BETTER”のビートや“アチチチ”のラテンっぽい感じが気に入ってますね。

“アチチチ”はラテンだよね。

菊地:意外とラテン音楽とか好きなんですよ。

そうなんだ。レコードを掘ってる?

菊地:ラテン系の音楽はかなり掘って聴いてます。ラテンにはラテン、ジャズにはジャズのコード感があるのもなんとなくわかってきていて、もちろん専門的なことを言いはじめたらちゃんと勉強した人にはかなわないけど、独学ミュージックでそのあたりも追及していきたいですね。

なるほどー。なんか話をきいてると、大人になってきた感じですか?

菊地:はははは。やっぱりバレてるんすね、そういうこと(笑)。自分のライフ・スタイルって考えたときに、こだわりを持っていくうちにいまの形に近づいていますね。

2012年のインタヴューでは大人になりたくないと言っていましたもんね。

菊地:いまもずっとキッズでいたいと思ってるし、僕の音楽を聴いてくれるリスナーのことも考えてますけど、ただ好き勝手やるだけでは意味がないと思うんです。菊地一谷はファッションで言う大人ラインとして、音楽を大事にしていきたいと思いますね。




本インタヴューにつながる“QN”時代のお蔵出しインタヴューを公開中!

Black Zone Myth Chant - ele-king

 昨年11月にヒッソリと再来日を果たしていた流浪のフレンチ・サイケ・クラウト・ドローン・ドリフター、ハイウルフ(High Wolf)の公演に行かれた方はおられるだろうか。もはや遥か昔のようだが、初来日ツアーでのサポートにてさんざんタカられたトラウマから僕は彼ことマックスに顔を合わせていない……というのは半分ウソで、多忙にかまけて彼の今回のライヴ・セットをすべて見逃してしまったのを悔やんでいる。オフの日は普通にいっしょに遊んでいたのだが……。

 そもそものハイウルフのコンセプトはアマゾン出身の謎のミュージシャンという設定で、当初は仮面なんか付けちゃって、出来もしないライヴ・パフォーマンスをデッチ上げて強引なツアーを敢行していた完全なベッドルーム・ミュージシャンであった彼は、しかしその圧倒的な量のツアーをこなすことによって次第にリアルなスキルを身につけ、てか仮面とか被ってたら演奏しづらいしってことでコンセプトが有耶無耶になりながらもミュージシャンとしてめざましい成長を遂げたと言っていい。アナプルナ・イリュージョン(Annapurna illusion)と、このブラック・ゾーン・ミス・チャント(Black Zone Myth Chant)は異なるコンセプトの下に活動する彼の変名プロジェクトである。これも本人的に当初は別の誰かがやってるってことにしてほしかったと思うのだけれども、もはや完全にバレバレってのも彼らしい。

 BZMC名義としては2011年にリリースされた『ストレート・カセット(Straight Cassette)』以来、およそ4年ぶりとなる今回の『メーン・セセル・ファーレス(Mane Thecel Phares)』もまた彼が長年に渡ってワールドワイドなアンダーグラウンド・ミュージック・シーンにてドリフトを経た進化を充分に感じさせる内容である。胡散臭いエセ・エキゾ感は彼のその他のプロジェクトと同様だが、BZMCは彼のミュージシャンとしての出発点でもあるヒップホップ的ビートメイキングへの回帰でもある。時にインダストリアルな鉄槌感はあれど暴力的にはけっして展開せず、無意味に極彩色のアシッド・トリップに走ることを抑えてあくまで上品なサイケデリックを聴かせ、レトロなメロディによるリードが洗練されたトライバル・ビートを締めてくれる。同時代の変テコ電子音楽家たちに比しても見事にストイックな差別化を果たしていると言えるだろう。

 ちなみにリリース元である〈エディションズ・グラヴァッツ(Editions Gravats)〉はマックスと同郷で親交を深めるロウ・ジャック(Low Jack)によるレーベルである。噂によると、ていうか飲みながら本人が言っていただけなんだけども現在この二人によるバンド編成による新たなプロジェクトが水面下で進行中とのことでこちらもじつに楽しみだ。そしてマックスのハイウルフの新譜、グローイング・ワイルド(Growing Wild)は間もなくマシュー・デイヴィッドの〈リーヴィング・レコーズ〉より発売される。

 こっちもいっしょにレヴュー書こうかと思ってたけど、まぁ、いろいろお前には貸しもあるし、気分が向いたら書いてやんよバーカ、マックス、愛してるぜ。

 デビュー・アルバム『空からの力』リリースから20年。Kダブシャイン、Zeebra、DJ OASISによるヒップホップグループ、キング・ギドラによる1995年リリースの同作が、リマスタリング盤となって登場する。この中には翌96年リリースのミニ・アルバム『影』(もちろんリマスター音源)、そして『空からの力』制作前にメンバーによって完全自主制作されたデモ・カセットの音源までが収録される模様、もういちど新しく聴きなおされるべきタイミングがめぐってきていることを予感させる。今年は『空からの力』セットでのライヴなども控えており、いよいよ待たれる。

Kダブシャイン、Zeebra、DJOASISによる日本のヒップホップ・シーンでもっとも影響力を持つグループ、キング・ギドラが1995年にリリースしたデビュー・アルバム『空からの力』のリリース20周年を記念したリマスタリング盤のリリースが決定! 数多くのアーティストたちに影響を与えてきた、誰もが認める日本語ラップの金字塔的作品が、当時の息吹をそのままに、20年の時を経てアップデート!

翌96年にリリースされたミニ・アルバム『影』の音源も同時にリマスタリングしてカップリング!
そして! 今回のリマスタリング盤のリリースの目玉となる『空からの力』制作前にメンバーによる完全自主で制作されたというデモ・カセットに残されていたデモ音源を収録! 当時のファンは咽び泣き、若いファンは驚嘆することマチガイナシな最高品質のリパッケージでリリース! これは事件だ!!!

同時リリースとなる完全限定生産のデラックス盤には、当時のライヴ映像やミュージック・ビデオなどを収めた98年のVHSリリース作品「影The Video」(現在廃盤/入手困難)のDVDをカップリング! 当然初のDVD化となり、こちらもファン必見なお宝の発掘!

デビュー20周年イヤーとなる2015年は「#ソラチカ20」と題し、KGDR(ex.キングギドラ)として本格稼働! 5/10にはRHYMESTER presents 野外音楽フェスティバル「人間交差点」に出演し、5/23にはリキッド・ルームにて開催となるP-VINE40周年記念イヴェントでのパフォーマンスが決定! また昨年開催されて大きな話題となったZeebraがプロデュースする夏のヒップホップ・フェス「SUMMERBOMB」が今年も開催となり、KGDR(ex. キングギドラ)として出演することも決定!
今年はギドラがシーンを騒がせます!!!

■キング・ギドラ
空からの力:20周年記念エディション

発売日:2015年5月20日
デラックス盤(CD+DVD:完全限定生産) PCD-18788/9 税抜価格 ¥3,000
通常盤(CD:期間限定生産) PCD-25178  税抜価格 ¥2,500

■イヴェント概要
「P-VINE 40th ANNIVERSARY」

出演:KGDR(ex. キングギドラ)〜「空からの力」20th ANNIVERSARY〜 and more...
日時:2015年5月23日(土曜日)開場 17:00/開演 18:00
会場:リキッドルーム
前売券:3,900円(税込・1ドリンク代(500円)別途)
 ※4月11日(土)発売開始
前売券取り扱い箇所:チケットぴあ[Pコード 261-848]
ローソンチケット[Lコード 77325]
イープラス
ディスクユニオン
JET SET TOKYO
Manhattan Records
タワーレコード(新宿店/渋谷店)
リキッドルーム
問い合わせ先:リキッドルーム 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

■「SUMMER BOMB produced by Zeebra」
第一弾出演者:KGDR(ex.キングギドラ)〜「空からの力」20th ANNIVERSARY〜
、RHYMESTER、ANARCHY、KOHH、2WIN(T-PABLOW & YZERR)
日時:2015年8月15日(土) 開場 15:00 予定
会場:お台場・ZEPP DIVERCITY TOKYO
特別先行販売:¥5,500- SUMMER BOMB x XLARGE®"OFFICIAL BOMBER"Tシャツ(チケット付き)
4月10日(金)から「XLARGE® ONLINE STORES https://www.calif.cc/shop/xlarge/ 」にて販売開始
オフィシャルHP: www.summer-bomb.com
問い合せ先:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(weekday 12:00〜18:00)


interview with Tomggg - ele-king


Tomggg
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Tomggg
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ElectronicDream PopJ-Pop

 音楽をつくる仲間たちがスカイプを通じて集まってきて、互いの音を聴かせあったり、作業工程を見せ合ったり、他愛ない話をしたりというコミュニケーションは、インターネットの黎明期にあっては夢のひとつだったのかもしれないけれど、いまではそうしたことを当たりまえのようにできる環境が、次々と次代のプロデューサーたちを育んでいる。インタヴューの最後になってほほえましく語られた、彼らのささやかな音楽コミュニティの話をきいたとき、日本ではなかなか根づきにくいとされるUSのインディ音楽カルチャーのスタイルが重なってみえるような気がした。友だちの家でライヴをやる、いつでもやる、仕事や生活と両立してやる、音楽やそのアーティストに興味がなくとも親密な場所であればいっしょに楽しむ……芸能としてしか音楽の活動場所を築きにくい日本ではなかなか難しいけれど、そうした生活レベルの楽しみ方も音楽の尊いあり方のひとつだ。モニター越しではあるが、ネット環境の飛躍的な進化とともにそれは思いのほか一般化されているといえるのではないか──。

 Tomgggといえば、歴史的なネット・レーベル〈maltine(マルチネ)〉からのリリースや、kazami suzukiのイラストのインパクト(サンリオと吾妻ひでおのハイブリッドだそうな……)、ラブリーサマーちゃんや禁断の多数決などのリミックス仕事も相俟ってか、ネットを主なステージとして、オタク、機材系ギーク、サブカル、ポップ・シーンをスタイリッシュに縫合する、時代性にあふれた若手プロデューサーのひとり……といったイメージを勝手に抱いていたが、今回話をきいて、案外本質はそんなところにないのかもしれないという気持ちがした。
 いやいや、そうした印象が事実であることもたしかだと思うけれど、それだけではただわれわれが時代を人格化するのに適した一体のハイプを見つけだしたというに過ぎない。彼がもっと素朴に音楽行為を愛好するカルチャーの末端にいるということ、「アタマ10秒でつかまないと生き残れない」などという世知辛いプロデューサー意識と同時に、たとえそれが売れようが売れまいが、確実に音楽が生きることを楽しむためのきっかけになっているということに、格別な親しみを覚える。初の全国流通盤となる今作EPが「お菓子」をひとつのコンセプトとするものであり、それを自身が「生きていく上で絶対必要なごはん……以外の食べ物」として音楽と結びつけて語るのは、だから、不必要・不健康なもの、奢侈といった自滅自嘲的な意味ではけっしてなくて、生きる主体として必要な栄養だという認識からだろう。表題曲“Butter Sugar Cream”は音の言葉のカロリーや凝り方のわりには存外素直な、そして素直すぎるよろこびの表現なのだ。

※インタヴューのラストでティーザー音源をお聴きいただけます

■Tomggg / トムグググ
1988年生まれ、千葉を拠点とするプロデューサー。公募型コンピレーション「FOGPAK」や自身のsoundcloudなどインターネットを中心に作品を発表、これまでのリリースに〈Maltine Records〉からのEP『Popteen』がある。2014年は禁断の多数決やラブリーサマーちゃん、Porter Robinsonのリミックスなどを手掛け、カナダのトラックメイカーRyan Hemsworthとの楽曲制作も話題になった。2015年3月〈Faded Audio〉より『Butter Sugar Cream』を発表。

すごく強く、音楽では食えないという思いがあったもので──いまもですが。

音大を出ていらっしゃるんですよね?

Tomggg(以下、T):そうなんです。

しかも、国立音大ってかなりガチだと思うんですが。

T:ガチで、しかも作曲を学んでいたという──(笑)

そうそう(笑)、作曲科なんですよね。それっていったい、どういう動機で何を目指して入る学科なのかなって。

T:そうですね、専門がコンピュータ音楽ってもので、アカデミックなほうのコンピュータ音楽になるんですが。具体的に言えばMax/MSP(マックス・エムエスピー)やらマルチ・チャンネルのスピーカーやらを使って、サウンド・プログラミングを行ったりしていました。もともとの入学の動機は、作曲もしつつ、そこの学科では録音とかPAとかっていうエンジニアリングもやっていたので、そういうことを学べたらいいなということだったんです。

エンジニアリング。ではゆくゆくは何か、音楽に関わる仕事をしたいなという気持ちがあったわけですか。あるいは、職業作曲家として?

T:作曲家……というほどのことを思っていたわけではなくて、もうちょっと裏方のことでしょうか。

へえー。16、17歳くらいの年ごろの少年の夢というと、裏方というよりは、ギターを手に、もっと前に出て行ってやるんだっていうほうが順当なような感じもしますけど(笑)。

T:ええ、ええ。

具体的にそういう道へ進もうと思いはじめたのはいつ頃なんですか?

T:えっと、すごく強く、音楽では食えないという思いがあったもので──いまもですが。

ハハハ! さすがシビアな現実認識が骨身に沁みた世代でいらっしゃる。

T:(笑)──でも、そんななかでも、実際的に職業にできるものは何かって考えたときに思いついたものですね。

なるほど。音楽に憧れる最初のきっかけがあったと思うんですが、それはどんなものなんでしょう?

T:小っちゃい頃はクラシックとかをやっていたんですけど、中学……高校生のときかな? 父親が何百枚も入るCDラックを持っていて、60~70年代のロックとかハードロックが多かったんですが、それを1日に1枚聴いていくっていう作業をずっとやっていて。


父親が何百枚も入るCDラックを持っていて、60~70年代のロックとかハードロックが多かったんですが、それを1日に1枚聴いていくっていう作業をずっとやっていて。

おお。いま図らずも「作業」って言葉が出ましたけれども。

T:そうそう(笑)、まあ、僕が中学くらいのときはBUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン)とかL'Arc-en-ciel(ラルク・アン・シエル)とかって邦楽のロックを聴いていたんですが、その原点って何? って考えたときにこのへんのロックだろうと思って、父親のCDラックをひたすら聴いていたんです。うちにはパソコンとかなかったので、音楽の情報はほぼそこからのみという感じでしたね。

へえー。いちおう認識としては、好きなもののルーツへと遡るという行為だったわけですね。具体的に名前出ます?

T:いや、ほんとにディープ・パープル(Deep Purple)とかツェッペリン(Led Zeppelin)とか(笑)。父親はそのへんが好きみたいですね。

ハードロックなんですねー。メタルとかいかず。

T:そうですね。オールディな感じで。で、気になっていったのがキング・クリムゾンで。

あっ、そうつながるんですね。プログレにいったんだ。

T:聴いてすごくびっくりして。1曲のなかにあんなに詰め込んじゃっていいんだって気づいて。

ああ、なるほど。『宮殿』からですか?

T:そうですね、『宮殿』から入り……。あとは、父が棚に年代順に並べていたので(笑)。

(一同笑)

かつA to Zで入れてますね、それは(笑)。

T:それは曲をつくるひとつのきっかけになっているかもしれません。

なるほど、そうするとTomgggさんの音楽のわりと構築的な部分に理由がつく感じがしますね。

T:そうかもしれないですね。それまでは、ちゃんとつくられた曲というとクラシックだけしか知らなかったので。モーツァルト、ベートーベン……完成されているものですよね。でもキング・クリムゾンとかは別次元で変なものがつくられているという感じを受けて、でも同時にそこにこそ強度があると感じました。

ツェッペリンとかも、プログレに連なるようなところはありますよね。牧歌的なハードロックというより。……すごく思弁的だったり。

T:そうですよね。あと、クラシックのようにすっきりとした音じゃなくて、もっとノイズにまみれたものを聴きたくなってしまったところもあります。でも、音はノイジーでも美しく完成されていて。

クラシックはクラシックでお父さんのコレクションがあったりしたんですか?

T:そんなになかったですね。ピアノの先生に教えてもらったりです。

おっ。やはりピアノされてたんですね。そこで弾いてたのは……

T:古典的なものですね。

なるほど、印象派とかではない?

T:そこまで……いってなかったですね(笑)。印象派にたどりつくのは音大に入ってからです。

でも、古典よりとっつきやすくないですか?

T:うーん、そうでもなかったですね(笑)。

なるほど。Tomgggさんは2000年だと12、3歳くらいですかね。クラシック以外ではどんなもの聴かれてました?

T:SMAP(スマップ)とかですかね。テレビから流れてくる音楽です。

なるほど、お父さんのアーカイヴに手を出しはじめたのはその後ですか?

T:中学は、ほぼ音楽には興味がなかったんです。だから高校からですかね。陸上部に入っていて……しかも砲丸を投げていたという激ヤバなストーリーがあるんですが……。

ハハハ! それはヤバいですね。人はいつ砲丸に向かうんですか(笑)。

T:どこも人が多かったので、人のいないところを探したら砲丸だったというか(笑)。フォームはよかったらしいです。

フォームね(笑)。Tomgggの音楽を語るときのキーワードになるかもしれませんね。


空間に興味を持った理由のひとつが、音楽のなかにどれだけの音の情報を詰め込めるかということだったんですよ。

と、紆余曲折あって音大進学となるわけですが、「電子音響音楽と空間表現」ですか。ホームページのプロフィールかなにかで拝見したんですが、それが修論のテーマだったと。これはいったいどんな研究なんでしょう。

T:ヨーロッパのラジオ局からはじまって、現代音楽が盛り上がって、カセットテープやレコード……いわゆる電子音響、電気的に音楽が録音できるようになって。それ以降、音楽に何ができるようになったのかということをひたすら研究していました。そこでのひとつキーワードとしては「空間」。空間を使って作曲ができるかということを試みた人たちがいて、それがすごくおもしろかったんです。

部屋一個ぶん使うくらいの音響装置とかエフェクターとか、そういうもののことですか?

T:そういうのもありますけど、たとえば、お客さんとステージという関係を前提とすると、音楽が前から鳴ってくることが普通のことのように感じられますよね。でも後ろから鳴ってもいい。そういうことが可能になったんだという研究があって、それは具体的に何をしているかというと、たくさんスピーカーを使っていたりってことなんです。電気的な装置を使って、それをどこまで拡張していけるのか。そういうことをひたすらやりましたね……。

へえー。じゃあ、ハンダゴテが出てくるような研究というよりも、もう少しコンセプチュアルで抽象的なものについて考えていたわけですね。かたや、裏方でエンジニアやるってなると、ハンダというか、装置の中身の話にもなっていくと思うんですが。

T:そうですね……、サウンド・プログラミングをやって、ってくらいなんですが。自分でエフェクターをつくったりはしましたけどね。

では、その頃に学んだものはいまのTomgggの音楽に大きく影響を与えていると思いますか?

T:そうなんでしょう。空間に興味を持った理由のひとつが、音楽のなかにどれだけの音の情報を詰め込めるかということだったんですよ。2チャンネルのステレオの中だと、詰め込める周波数が限られているんですね。でも、そのスピーカーを増やしていけば、詰め込める量が増えていくじゃんってことに気づいて。

ははあ……、個数の問題なんですか。

T:どうなんですかね(笑)。2個よりも4個のほうが音を詰め込めるんじゃんって考えました。で、いろんなところから音がしたら、もっと表現も広がるなというふうに発展していったりとか。

なかなか頭が追いつかないのですが……。恐縮ながらすごく具体的なところでどういうことをやったという例がないですか?

T:そうですね(笑)、たとえばヘッドホンで聴いたときに音が左、右、左、右って音が移動するように聴こえるエフェクトがあるじゃないですか。あれをもっとぐるぐる回したいとか。

おお、音をぐるぐる回すってのは、それこそツェッペリンがすごく早くにやってたやつじゃないですか?

T:あ、ほんとですか。いちばんはじめが誰かわからないけど……。


大学を卒業すると同時にそういう研究はスパっと終わりにして。次にどんな音楽をやろうかというときにインターネットかなと思いました。

おお、何かつながったということにしましょうよ(笑)。ぐるぐるやったりしてたわけですね。ご学友というか、まわりの人はどんなことをやっていて、いまどんな仕事に就いているんですか?

T:まわり、何やってましたかね。MVとか映像が流行りだしたころだったので、それこそ「映像と音の関係」とか。ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)とかいろいろ出てきましたし。

ああ、なるほど。真鍋大度さんだったりを目指すとか。こうしてお話をきいてくると、サブカルチャー的な部分との接点はありつつも、かなりハイブローなものからの吸収が大きいですよね。先日MiiiさんやLASTorderさんのお話をうかがったばかりなんですが、たとえばMiiiさんなんかがギークとしてのアイデンティティを持ちながら〈maltine(マルチネ)〉に接近していくのはよく理解できるんですよ。Tomgggさんはどうして〈Maltine〉なんでしょう?

T:本当に飛び石というか、大学を卒業すると同時にそういう研究はスパっと終わりにして。次にどんな音楽をやろうかというときにインターネットかなと思いました。imoutoid(イモウトイド)っていう、むかし〈maltine〉にいたアーティストがすごく好きだったんです。ああいう感じでやりたいなという。それでいろいろやっているうちにつながったというか。

なるほど! 音源を送ったりしたんですか?

T:いえ、そういうわけではなかったんですが、卒業してからずっと、インターネットの音楽ってどんな感じだろうって思って探ってたんですね。潜伏していた時期があるんですが、たとえばRedcompassくんがやっているFOGPAKっていうコンピのシリーズとか、そういうところと接点を持ったという感じです。何曲か送りました。

Redcompassさんも、いろいろなものをつないでいる方ですね。

T:そうですね。そうしているうちにtomadさんから連絡をいただいて。ボーエン(bo en)がはじめて来日するときに、リリパで出ませんかというふうに声をかけてくれたんです。もちろん、出ます出ますということで(笑)、それでここまできている感じです。

なるほどー。たとえば、とくにドメスティックなこだわりのない音楽をされている方だと、海外の好きなレーベルから出したいって気持ちもあったりすると思うんですが、そういうこともなく?

T:そうですね……、ネットを探っていたといってもとくに〈maltine〉以外に見えていたわけじゃないです。あんまりたくさん知らなかったかもしれませんね。

そうなんですね。tomadさんがつなげたものって、音楽というよりもヴィジュアルとかスタイルとか風俗とか、そのなかでのふるまいとして音楽もあるというか。そういうもの込みでのネット・カルチャーですよね。

T:ええ、ええ。

〈maltine〉がなくてもアルバムをつくってました?

T:ネット・レーベルがすごく流行っていたころだったので、僕も友だちと「やってみるか」っていうことになったりもしたんです。でも結局それもふるわず。

そうなんですね! 音源はタダだから経済的に成功してやるというような野心はあんまりないでしょうけど、わりとみんながネット・レーベルというものに夢をみた時期だった……?

T:そうですね、僕についていえば、関わってみたかったという感じでしょうか。


音楽をつくるなら歴史にアーカイヴされる必要がある、って思っちゃうんです。

なるほど。同時にパッケージの必要性とか、あるいは「アルバム」「シングル」ってかたちで音をまとめる意義も自然と問い返された時期だったと思います。〈maltine〉からの3曲入りの「Popteen」は、どういう意識です? アルバムとかシングルとか。

T:アルバムでもシングルでもないですね。ふるいかたちを借りればEPということになると思いますけれども。3曲くらいあればまあ、かたちにはなるかなというところで(笑)。2曲だとまとまりにかけますし。3曲だと「集団」だなって感じがします。

今回の『Butter Sugar Cream』は4曲+リミックスというかたちですよね。このサイズ感って、じゃあアルバムですか?

T:うーん、そうですね……。これでやっとひとつのものだぞという感覚が生まれましたかね。

へえー。まあ、10数曲入っていたりするじゃないですか、プラケに入ったCD、アルバムってものは。

T:10数曲あると聴かないんですよね(笑)。

ハハハ。そのへんはある種のユーザビリティみたいなものへの配慮もあるとか?

T:自分の制作ペースとかもあるんですけどね。僕、1曲をつくるのがけっこう大変なんで……。

寡作なんですね。音づくりに手間ひまをかけるから? アイディアが出てくるまでの問題?

T:どっちも……ですね。『Butter Sugar Cream』も結局10月くらいからつくりはじめて、2月のあたまくらいにやっとできたので。繰り返し聴くのに耐えられるかってことをよく考えます。

なるほど。

T:PC上では、何度もあたまから聴き返しつつつくるわけですから、それに耐えられるかというのは自然にイメージするところですね。「これ、つまんないな」っていうのは何度も寝かせました。

私は「俺の歌を聴け」世代というか。グランジとかが直撃で、ロックがまだまだ洋楽のメインストリームだったんですが、そこではもうちょっと「俺の歌」が優先されていたと思うんですね。客が何度も聴けるかどうかなんて知ったこっちゃなくて、まずそれが我(おれ)の音楽だってことが大事というか。そのへん、Tomgggさんとかは真逆で、すごいユーザー視点なんですねー。

T:ああー、なるほど。僕の大学の先生が「中毒性」ってことをよく言っていて。その言葉が今回の作品のお菓子のパッケージにもぴったりだなと思うんですが、何回聴いてもまた聴きたくなる、そういうものをつくれるかどうかってことを考えていましたね。それから、音大出だからだと思うんですけど、音楽をつくるなら歴史にアーカイヴされる必要がある、って思っちゃうんです。

ああ、はい。

T:音楽史っていうものがあって、そのなかにレジェンドな曲が配置されていて、それは何百年間も聴かれる曲で。……そういう思いも底にはあるのかなあって。

なるほど。いま、それこそネット環境だと、音楽はタイムラインのなかで一瞬で消費されたりして、そのスリリングなスピードがつくる側にもおもしろさを生んでいたりもしますよね。そんななかで何百年も残るものを目指すというのは、何か、Tomgggというアーティストのスタンスを知る上で見逃せないところかもしれませんね。

T:そうかもしれませんね(笑)。

このお菓子みたいなジャケだって。一回開ければ終わりでしょう(※)? それまた、替えのきかない一回的なものとして永遠に残ろうとするものだって解釈できますよね。


※市販の菓子のパッケージのように、ボール紙でできたジャケットを破るかたちで開封する

T:これは本当にお菓子のパッケージのイメージなんです。入口がお菓子、中身がCDという。お菓子だと、結局は中身が食べられて外側も捨てられちゃいますけど、音楽はなかなか消えない。

すごくきれいに考えられてる。それに、音楽の歴史を意識しているっていうのは、なにか貴重な証言をいただいた気がします。

T:それほど意識するというわけでもないんですけどね。でも俯瞰して見ちゃうというか、そういうところはどうしてもありますね。


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(歌詞のオーダーについては)甘いものを食べてる……部屋の中でひとりでお菓子を食べているというイメージでやってほしいと言ってたんです。



そこでこの『Butter Sugar Cream』ですが、甘味三段活用。もう、甘いぞーってタイトルですね。ワン・ワード?

T:ワン・ワードでいいと思います(笑)。

ハハ、この甘いものの三段重ねは、ご自身の音への自己評価なんですか?

T:ああー、なるほど、そうですね……。「バター・シュガー・クリーム」って言葉自体は、この歌詞をつくってくれた辻林(美穂)さんが使っていた言葉なんですよ、歌詞のなかで。僕としては、甘いものを食べてる……部屋の中でひとりでお菓子を食べているというイメージでやってほしいと言ってたんです。

あ、そこまで明確にディレクションされてたんですね。

T:そうですね。けっして相手がいないかたちで、甘いものを楽しんでいる状態というか。で、実際にできた詞のなかの「バター・シュガー・クリーム」って言葉がとてもよかったので、タイトルとして使うことにしました。あと、「シュガー・バター」だとウェブで検索したときにノイズが多そうなんですけど、「バター・シュガー・クリーム」だったらこれしか引っかからないし。

ハハハ。「バブルガム・ベース」なんて言ったりもしますけど、まあ、バブルガムとはニュアンスがちがうにせよ、「バター~」もポップで甘いってとこは共有してると思うんですね。そこで、ポップとか甘いとかって感覚が目指されているのは何なんですかね?

T:なんですかね、「カワイイ」を横にズラした感覚っていうんでしょうか。「カワイイ」を言い過ぎてしまうというか。手に余る感じをわりとポジティヴに表現してるんじゃないですかね。

ははー。それはなんか、咀嚼したい回答ですね。なるほど。しかしそもそもクリムゾンとツェッペリンからはじまって、行き過ぎたカワイイまでいったわけですか(笑)。

T:ははは。やっぱり、遠回りしたほうがおもしろいなっていうのはあります。ルーツがそのまま出るよりも。それから、たとえばノイズっていうものは一部の人にしか楽しまれないものだと思うので、せっかくならいろんな人が聴く場所でやってみたいという気持ちもありますね。お菓子ってみんな好きですよね。漬物とか、限られたひとの嗜好品みたいなものよりもそっちをやりたい。子どもも大人も食べられるようなものを使って発信したいです。

ということは、Tomgggさんの目指している音楽性は、Tomgggさんの考えるレンジ、リスナー層の幅に対応しているものだと。

T:そうですね。なんだろう、生きていく上で絶対必要なごはん、以外の食べ物。本当は食べなくてもいいもの、動物としてじゃなくて人間として必要な食べ物。お菓子ってそういうことですね。

ああ、人はパンのみにては……バター、シュガー、クリームなしには生きられないと。

T:重要ですね(笑)。

なるほど。ですけど、あえて反論するなら、たくさんのひとが快適で楽しめる感じの甘さであるには、『バター・シュガー・クリーム』はちょっと毒なくらい過剰に甘すぎませんか?

T:でも思いっきり濃くしないと。薄い甘さじゃ広がらないだろうなって思います。やっぱり10秒聴いてグッとくるかこないかの世界──インターネットってそういう場所だと思うんですけど、プレヴューで10秒、20秒、30秒って飛ばして聴かれるようなときに耐えられる甘さにしなきゃいけないわけですよね。


思いっきり濃くしないと。薄い甘さじゃ広がらないだろうなって思います。

(担当さんに向かって)……いまのミュージシャンって、ほんと大変ですね。

T:自分もそうだし、みんなもそうだと思うんですよね。

マジで絶句しましたよ。俺の歌を聴くまで待つとか、そんな悠長なことをいっていられないんだ。むしろ、あっちはお客様ってくらいの意識があるというか。

T:そうですね、自分もやっぱり聴く立場だし。SoundCloud(サウンドクラウド)とかも日々更新されるじゃないですか。時間をそんなに取れないから、こことこことここだけ聴く、みたいな。

盤を買いにレコ屋さんに行って掘ってきたりってするんですか?

T:サンクラ……ですね。それこそ高校生の頃はディスクユニオンのプログレ館に行ったりとかしてましたけど。

ハハハ。でもその頃は、ひととおり紙ジャケの再発ものがバンバン出ていて、聴きやすいし買いやすかったんじゃないですか? 解説も新しくついてるし。

T:そうですね。たしかに再発で新しく知るきっかけになったり。

そうですよね。プログレ館まで行くんなら、聴いてたのはイギリスのバンドとかだけじゃないんじゃないですか? アレア(Area)とか。

T:アレア聴いてましたね。もちろんヨーロッパからですけど、イタリア系も聴いて。オザンナ(Osanna)最高、みたいな。

ハハハ! マジですか。ジャズとか、ちょっとクラシックにも寄ってきますしね。頭おかしい合唱みたいのでアガったりとかしませんか。

T:どうですかね、マグマ(MAGMA)みたいのもやってみたいですけどね。

いいですねー。バーバーヤガッ、つって。それぎりぎりカワイイなのかな(笑)。

T:ははは。

でも訊いてみたかったんですよね。グロッケンとストリングスを禁止したら、Tomgggさんはどんなものをつくるんです?

T:やっぱひたすらマグマみたいになりますかね(笑)。ひたすら繰り返して……すげー盛り上がる、みたいな。

あははっ!

T:やっぱりいまのスタイルは、グロッケンとかストリングスでメロディをつくるっていうところなので、それを禁じられるとメロディをつくれないだろうから、ひたすら繰り返すっていう方向になるだろうなあ……。

いまもそういう方向がないこともないですけどね。カワイイをひたすら横すべりさせていって……

T:大袈裟な展開と音づかいにする。

ははは。そういえば、アナログな音への憧れとかないんですか? ヴィンテージなシンセとか。

T:ああー。はっきり言ってしまうと、シンセにそこまで憧れがなかったりもするんですよね。

ラスティ(Rusty)が好きって言っておられましたっけ。彼なんかはそういう憧れがちょっと逆に出てるのかなって感じもしますが。彼の音楽はどんなところが好きなんです?

T:はじめて聴いて、カッコいいなーっていうのがきっかけです。この感じがほしいなって。

音のカロリー高いですよね(笑)。

T:そうそう!

情報量も凝縮されていてね。逆に、チルな感覚ってないんですか?

T:僕は、重ねるというか、足し算で音楽をつくっていくタイプなんで、どちらかというとカロリー高めにはなりますかね。はじめの、スピーカーを増やして情報量を過密にするという話ではないですが。

ああなるほど、じゃ北欧シンフォニックみたいにね、異常なエネルギーで過剰な情報量をさばいていくかんじのポップス、やってほしいですね。

T:ははは、いいですね。

ポストロックとかは通ってますか?

T:そうですね、多少。ポストロックというかわかりませんけど、ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー(Godspeed You! Black Emperor)とかはカッコいいですよね。

ええー。なんだろう……素っ裸になったりしなきゃ。

T:いやいや、そんなストイックだったりはしないんですけど。あとはドンキャバ(Don Caballero)とか。

ええー! そうか、お話を聞いていると、意外に底に沈んでいるものがハードコアですね。手数の多いドラミングとかは、まあ、情報量ですかね。

T:ああ、ドラムがメロディみたいになっていますよね(笑)。好きですね。

なるほどなー。バターとシュガーとクリームの成分がわかってきました。


もともと人の声を切り取ってきてるわけなんですが……。ただ、ヴォーカルに還元したくないんですよね。

でも、じゃああの甘さっていうのは仮面?

T:甘い餅にくるむみたいな感じ。どんな中身でも、食べちゃえばわかんないでしょっていう(笑)。

ハハハ。でも甘いものは本当に好きなんでしょう? 戦略的な意図だけで劇甘メロディを入れている、ってわけじゃないですよね。

T:好きですよ。やっぱりそこは、たくさんのメロディがあったほうが楽しいなって思いますし。

うーん。なんか、食えないやつですね、ほんと。

(一同笑)

ご自身のピアノを生かしたいというような気持ちはないんですか? 作曲技法ってことではなくて、生音として取り入れたいというような。

T:そうですね、自分の曲をこのままバンドに変換できたりしないかなってことは考えたりするんですけどね。あまり生音に関心があるというようなことではないですね。

おお。そうか、譜面が書けるんですね?

T:書けますね。

ということは、バンドに手渡すということもできますね。それはそれで、おもしろい展開が考えられそうですね。この作品も2曲めとかにヴォーカル・サンプルが入っているわけですが、あれはトラックを渡してその上で歌ってもらうってことじゃなくて、声のデータをもらってつくっているんですか?

T:はい。素材としてもらって、それを打ち込んでます。

ボーカロイド以降の感覚ってあります?

T:そうですね。でもボーカロイドっていうよりも、僕はコーネリアスが好きなので、コーネリアスのヴォーカルの使い方ってあるじゃないですか? あれをどうにか僕なりのかたちでやってみたいという感じなんです。

一見、人間性みたいなものをばらばらにしてるような。

T:ええ、ええ。声らしき断片みたいなものがあって、声かどうかは一瞬わからないんですけど、やっぱ声でした、みたいな感じ。そういうイメージですね。

では、生の声への信仰があるのかどうかってあたりをうかがいたいんですけども、どうですか。生のヴォーカルのほうが尊いっていうような。

T:生の声のほうが言葉になるっていう感じはあるんですけどね。メッセージが強く出ますよね。ボーカロイドだとただ音色になる部分もあると思うんですけども。

ああ、なるほど。Tomgggさんのこの声の使い方は、声を音色にする方法論ではないんですか?

T:声を音色にしてるんですけどね……なんだろう、もともと人の声を切り取ってきてるわけなんですが……。ただ、ヴォーカルに還元したくないんですよね。

人が能動的に歌うものにしたくないという? 歌い手が歌う歌にはしたくない?

T:そう、メロディではあるんですけど、ヴォーカルを切り取ってきたときには、無機質な状態のほうがやっぱりおもしろいって思います。

なるほどなあ。人が歌う歌って、その人の人間性の限界みたいなものも出ちゃったりするじゃないですか。よくも悪くもとにかく情報量がノイジーで。……でも、そういう人間性みたいな部分がいらないわけじゃなくて?

T:そう、人間性もほしいんだけど、無機質さもほしいって感じですね。やっぱり、録音された素材はそれ以上広がりようがないじゃないですか。その状態を保ったままつくるというか。

そこには人格とかキャラクター性はない?

T:僕の曲だと認識されやすくなるためのひとつのキャラクター性ではあるかもしれないですね。持ち味というか。そういうものは生まれているかもしれません。どの曲にもちょっとずつ混ぜ込んであるんですよ。


ライヴでは前でぴょんぴょん跳ねているのが楽しいんですけどね。

なるほど。一方で、歌詞もきっちりついている“Butter Sugar Cream”ですが、これはさすがに「歌い手性」みたいなものも出ているかと思います。これは、「女の子ヴォーカルを歌わせる」っていうような意味でのプロデューサー意識はありました?

T:そうですね、さっきも少し触れましたけど、この曲は歌詞をつくるのにもけっこう口を出しているんです。あと、歌い方も指定してつくったものですね。いろいろ歌詞があって、最後「消えたりしない/溶けたりしない」って繰り返すのはぜったいやりたいと思っていました。

へえ、それは──?

T:あの音色でこんな言葉を入れたらおもしろいだろうなって。「歴史にちゃんと残るんだ」っていう気持ちにリンクするなという気持ちもありました。

ああ、なるほど、かなりコンセプチュアルなんですね。誰かシンガーを引っぱってきて歌わせたいという思いはあります? この作品でもフェニックス・トロイ(Phoenix Troy)さんがラップで参加されていますけど、トラックを提供して歌い手を歌わせるというふうに仕事を発展させていきたいというような。

T:そうですね。この2曲はうまくいったなとは思うんですけど、まだまだ発展はできるなと。

彼にラップを入れてもらったのはなぜですか?

T:これは、あちらからアプローチがあって。それで、こういうリリースがあるからそのなかに入れましょうっていうふうになりました。「お菓子がモチーフなんだ」みたいな話をして(笑)。

へえー。ボーエンさんもそうですけど、なんかそういう、日本人みたいな人たちいますよね。たんにインターナショナルだっていうことじゃなくて、日本人めいた人。

T:ははは。

しかし、Tomgggさんって、自身がすでに歌ってるというか、トラックがものすごく歌うでしょう?

T:そうですかね(笑)。

だから誰かに歌ってもらう必要がないようにも思うんですよね。こうやって歌い手と仕事をして、変化した部分もあったりしますか。

T:広がりましたね。いろんなメロディを重ねていくなかで、独自性のある声も出てくるし、さらにそこに自分の音が重なることで情報が増えるなっていう気持ちはあります。

Tomgggさんの場合、そもそもの夢の方向が裏方を向いていたわけですけど、裏から糸を引っぱって踊らせるっていうプロデューサー志向が、かなり若い人のなかで強いような印象があるんですよ。そのあたりはどうですか?

T:ははは、でもライヴでは前でぴょんぴょん跳ねているのが楽しいんですけどね。記号的なオモテというか、前に出てくる出演者でもあるというところはほしいはほしいですよ。

ああ、ぴょんぴょん跳ねてるっていいですね! 2曲めは、指をぱちんってやる音がサンプリングされてたりもするじゃないですか。ああいうのも不思議な空間性を生んでますよね。

T:音楽的に使わないであろう音色ってあると思うんですけど、それが普通の音楽に持ち込まれたらどうなるかっていうのを意識することはありますよね。エレクトロニカとかのモチヴェーションに近かったりするかもしれないですけど。ライヴでも、最近は曲と曲の間に雑踏の音を入れたりとかしはじめてます。


足、太い女の子が好きな人が聴く音楽になってほしいですね。

いまのスタイルだと、ある種箱庭的に、すべての要素を自分自身の手で決定してつくってるわけですよね。ジャケットのイラストはkazami suzukiさんで、〈Maltine〉からのEPでもお馴染みの方なわけですけれども、最初のころからすでにけっこうご活躍の方だったんですか?

T:どうなんだろう。〈Maltine〉のときが最初なんですけど、あのときはtomadくんが見つけてこられたんですよね。Tumblr(タンブラー)にいい感じの人がいるって(笑)。……やっぱりそこにはtomadがいるという。

ハハハ! すごい、さすが名プロデューサー。つなげますね。だってすでにTomgggさんの音と切り離せないようなものになってるじゃないですか。

T:そう、もうキャラクターが生まれているんで(笑)。

Tomgggさんから見て、kazamiさんの作品の客観的な評価はどんな感じですか?

T:なんていうか、ロリっぽい感じだとは思っていて。僕の曲──声のサンプルもそうなんですけどね。そういうオタクくささみたいなものが絵のなかに凝縮されていると思いました。やっぱり、本人も吾妻ひでおがどうとかって言ってましたしね。

ええー、そうなんですか。なるほど。……足、太いですよね。

T:そう。そう、足、太い女の子が好きな人が聴く音楽になってほしいですね。

ハハハ! またニッチなところに投げましたけども(笑)。いや、でもこれはもっと概念的な太さだとも思うんですよね。実際に太いってだけじゃなくて。

T:ええ、ええ。

この輪郭の崩れた感じとか。

T:カロリーを感じますね(笑)。

ハハハ、そうそう(笑)。どうです、こういう絵は詳しいほうですか?

T:いやー、詳しくはないですけど、でも実写とか写真とかそういうものよりはぜったいイラストがいいとは思っていたんです。

へえー。もし彼女に頼まなかったらどんなジャケになってたと思います?

T:どんなジャケになってましたかね(笑)! アクの強いイラストがよかったので……見つけてきてもらってすごくよかったですね。それから今回も思ったんですけど、キャラクターって重要だなと思いました。

キャラクターですか。

T:やっぱり強いです。どこにいってもついてくるものというか。逆に言えばどこにでも連れていける感というか。これ俺だよっていう感じで。

音楽性とか人格も宿っちゃいそうな……

T:それはあると思います。

それはおもしろいですね。可愛くてコンパクトな情報の運び屋になる。この絵をみるとTomgggさんの音が思い浮かびますからね。

T:いい出会いをいただいたんだと思います。最初は「ポムポムプリン」とかサンリオ系のキャラクターが好きだったみたいですよ。

へえー。

T:それがあるとき吾妻ひでおに出会って……

ハハハ。すごいなあ。でもサンリオもいま総選挙とかやってますからね。

(一同笑)

ポムポムプリンもセンターとらなきゃって、世知辛い時代ですよ(笑)。吾妻ひでおのほうにいってよかったんじゃないですかね。


ソウルフルな女性ヴォーカルはやりたいという気持ちもあるんですよ。

さてヴォーカルのほうですけど、tsvaci(ツバシ/辻林美穂)さん。彼女もまた音楽を専門的に学ばれてる方ですよね。プロとしてのお仕事もけっこうされている。

T:そうですね、まだ事務所には入っていないようなんですけども。いろいろ呼ばれてやってますよね。出会いは、tofubeats(トーフビーツ)が去年のいまぐらいだったか、ラジオでミックスを流したことがあって、そのなかに入っていたのがtsvaciさんの“You know…”っていう曲だったんですけど、それがよさそうだなって思って声をかけたんです。それから何か月も経ってやっと曲ができましたという感じだったんですけど(笑)。

戦略的に選ばれているのかもしれませんが、ロリっぽいものは素朴に好きなんですか?

T:うーん、いちばんイメージしやすかったんですよね。自分の音から。

ああ、音との相性ということですか。個人的な嗜好として好きな女性ヴォーカルの名前は挙がります?

T:やくしまるえつこに衝撃を受けて。

ああ、それは大きいですね。

T:太くてゆたかなアルトとかが素材としてあったとしても、それはピッチを変えてケロケロさせちゃうかもしれません。音に合わないから。

ハハハ、なるほど。じゃあ時代にチューニングしてるみたいな部分もあるのかもしれないですね。自分の趣味だけでやるとしたら別ってことですか?

T:うーん、どうでしょう。でもソウルフルな女性ヴォーカルはやりたいという気持ちもあるんですよ。

へえー。フェニックス・トロイさんとかも、グライムとか、あるいは白人ラッパーとかの雰囲気ではないですもんね。

T:自分のトラックに乗せたらギャップがあってすごいおもしろそうだなって思って。ほんとに、相手に合わせるんじゃなくて、こっちのやり方に合わせてもらうつもりでトラックを渡しました。

なるほどー。ちなみに男の人の声はケロケロさせなくてよかったんですか(笑)?

T:ははは、あれはあのまま乗せましたね。

男の人の声はケロケロさせたらどうなるんですかね。ていうか、女の子の声があふれていますけど、男の人の声ってなにかおもしろい展開ないんですかね。

T:はいはい(笑)、やっぱプログレやるしかないんじゃないですか。オペラを登場させるしか。

ハハハ! つながったー。男声合唱やるしか(笑)。

T:声で音圧を高めなきゃ。

挑戦はつづきますね。


放課後の部活というか、みんな社会人で、働いてるんですけど、土日は曲をつくって。

ちなみに〈PCミュージック〉とかはどうですか? 熱かったですか。

T:すごくグッときましたよ。雑な感じというか、軽率な感じというか。

はは、軽率な感じということなんですな(笑)。

T:ははは、このまま行っちゃうんだーみたいな感じですかね。雑なんだけど、何か新しいものを提示しているっていう、そういう気分を共有できました。

雑さは織り込み済みの評価なわけですね。雑っていうのは……ヴェイパーウェイヴみたいな露悪性があるわけではなくて、ただ雑、っていう感じ?

T:そのへんですかね。新しさと、あとはミックスの感じにも不思議な印象を受けてます。好きになりましたね。

〈Maltine〉の中ではとくに仲のいいアーティストって誰になりますか?

T:三毛猫ホームレスとかですかね。

素敵ですね! なんでしょう、楽理系というか、そういう部分での共感もあるんですかね。

T:あとはHercelot(ハースロット)とか。テクニカルな感じの人たちでしょうか(笑)。スカイプで作曲講座みたいなものが展開されてたりするんですよ。

いいですねー。

T:三毛猫、芳川よしの、Nyolfen(ニョルフェン)とか……、スカイプで日々会話してます。

つくってるときのPCの画面を全部見せるみたいな感じですか。内輪でしか公開しないもの?

T:そうそう、新曲をそこで批評しあったり。

楽しそう。オープンにしないのは、ショーではないという感じなんですかね。

T:うーん、そうですね。放課後の部活というか、みんな社会人で、働いてるんですけど、土日は曲をつくって、そういうところに集まる……。

いいですねー。部活の楽しさもあるし、テクニカルな交歓もある。

T:テクニックは……それぞれお互いのやり方を見ながらも、実際のところそれほどテクニックに興味がなかったりもするんですよね。音圧とかもみんなわりと、どっちでもよくて(笑)。

そうですか。それはほんとに……尊いというか。歴史に残る残らないという尺度とはまた別の次元で生きている音楽の例ですね。

T:そういう自覚があるわけではないですけど、そうかもしれませんね。歴史には残りたいですよ(笑)。



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