![]() Insect Kids Blue Ghost P-Vine |
昆虫キッズはストレンジなバンドだ――そういう意味ではオルタナティヴだと言ってもいい。いったいこのバンドの音には、そしてフロント・マンである高橋翔の言葉にはどのような参照軸が設定されていて、あるいはどこへと向かっているのか、そのような凡庸な分析やストーリーは真っ向から排していくのが昆虫キッズの音楽である、と彼/彼女らの音楽を聞くたびにそう思わされる。未来から鳴っているのか、過去から鳴っているのかわからない。昆虫キッズの音楽は自ら歌っているように「時間軸が/変だ 変だ 変だ」。
オルタナティヴ・ヒップホップ・グループとされているヤング・ファーザーズは、“オルタナティヴ”とはなにかにアゲインストする表現であって、自分たちはそのような態度で音楽をやってはいないから“オルタナティヴ”・ヒップホップではない、と語った。そういう意味では昆虫キッズはオルタナティヴ・ロックではないのかもしれない。なぜなら彼/彼女らのコアは、(少なくともこのインタヴューで知りえたかぎりでは)大いなる空白だから。
パンクに憧れ、ロックの夢を見るグレイト・ホロウ=昆虫キッズ。最新作『BLUE GHOST』をリリースし、そのリリース・パーティを控えるこのバンドのフロント・マン、高橋翔との対話を(考えのズレや行き違いも含めて)ぜひお楽しみください。
■昆虫キッズ
2007年、東京都にて結成。のもとなつよ(Bass/Vo)、佐久間裕太(Drums/Cho)、高橋翔(Vo/Gt)、冷牟田敬(Gt/Key/Vo)の4名で活動。数枚の自主制作盤リリースののち、2009年にファースト・アルバム『my final fantasy』にてデビューする。翌2010年にセカンド・アルバム『text』を発表。ツアーや各種イヴェントへの出演が増え、2011年には2枚のシングル「裸足の兵隊」「ASTRA」、2012年にはサード・アルバム『こおったゆめをとかすように』、アルバム未収録曲を集めた「みなしごep」と快調にリリースをつづけ、2014年5月、これまでの活動の転機ともなる4枚め『BLUE GHOST』が発売された。
デジタルだけでの録音はあまり好きじゃなくて、これまでやっていなかったんだよね。でも、やってみないとわからないなと思って。
■以前、高橋さんにお会いしたとき「『こおったゆめをとかすように』ですべて出しきった」というようなことをおっしゃっていました。
高橋:えっ、そんなこと言ってた?
■はい(笑)。最初の3作は3部作ようなものだとも。
高橋:そう。後づけだけど、3作できたときにバンドとしてひとつのものとしてできあがったから、区切るタイミングかなと思ったんだよね。このまま『こおったゆめをとかすように』から地続きで4枚めを作るというより、いったんラインを引いてなにかを意識的に変えなきゃなと思った。
■変えた部分というのは具体的にどういうところですか?
高橋:今回は佐藤優介くん(カメラ=万年筆)に録音とミックスを任せて、客観的な意見を訊いたりしたこと。それと、これまでの作品はテープの音だったんだよね。ファースト(『My Final Fantasy』)はカセットテープとハードディスクで、セカンド(『text』)とサードはオープンリールで録った。デジタルだけでの録音はあまり好きじゃなくて、これまでやっていなかったんだよね。でも、やってみないとわからないなと思って。やってみて、どういうメリット/デメリットがあるのかを把握したかった。演奏する側の人間は変わらないけれど、ちょっと「引っ越し」したいなと。1駅くらいだけど、ちょっとちがう町に行ってその町の環境がどうなのか見てみたい――そういうことを試みてみたいと思った。
■優介くんがレコーディングとミックスをやったことによってどういう音になったと高橋さんは思いますか?
高橋:優介くんはファーストからずっと聴いてくれてたんだよね。もともと面識はあったけどそれほど深く話す関係でもなく、その距離感がすごく良かった。彼はひとつのジャンルに特化せずにオールマイティに聴いているから、いっしょにやるならそういう人がいいなと思った。ミックスの段階で「好きにやってみて」と優介くんに投げて、どうなるのかが聴きたかったんだよね。俺がまったく手をつけず、他人がやったときにどういうふうになるのかなというのが気になったから。結局、その後いろいろと発注しちゃったんだけど(笑)。
■ちょうど作業中の優介くんに会ったときに「高橋さんと佐久間(裕太)さんの意見が対立していて困っている」という話をしていました。
高橋:佐久間くんは佐久間くんの聴きかたがあるからさ、またちがうし。俺には俺の聴きかたがあるから。たぶん対立しているわけじゃないけど、板挟みでちがう意見を言われるから困ったんじゃないのかなあ。もちろん他のメンバーの意見は聞くけど、だいたい自分で決めているかな。これまでは8割がた完成ミックスを自分のなかで決め込んで、かつちょっと余白を残しておいて、意見を聞いて残りの2割を埋めていくというやりかただったんだけど。
単純に意味不明にもしたくないし、かといって濃厚なメッセージがあるようにもしたくない。どっちにも寄りたくないんだよね。
■今回、前作までのヒリヒリとした感じよりも、全体的に少しリラックスしたような感じや軽快さが曲調に出ているように思いました。そこは意識的に雰囲気を変えようとしましたか?
高橋:それはあまり意識していないかな。曲を作るときはそのときの気分が元手になっているから、ヒリヒリしているときはそういうものができるのだろうし。一回そういうものを作ってしまえば、また同じようなものを作りたいとは思わないんだよね。それとはちょっとちがうものを作りたい。そういう反動はあると思う。
■なるほど。リード・トラックの“Alain Delon”はなぜ「アラン・ドロン」なんですか?
高橋:サビのメロディーを作ったときに、それが「アラン・ドロン」っていうふうに聞こえただけ(笑)。
■それほど意味はない?
高橋:ごめんね……申し訳ないけど……(笑)。空耳アワーのような感じで(笑)。でも、「アラン・ドロン」ってなにか意味があるような感じがするよね。
■高橋さんの歌詞は韻をたくさん踏んでいたり、リズムを重視していることも多いと思います。歌詞はどのように書いていますか?
高橋:歌詞は曲を作るときに、同時進行で書く。歌のメロディができたら思いついたことをパッと羅列して、そうすると楽曲のキーワードになる言葉が出てきたりするんだよね。それをつなげて、自分で補足する。だから、そういう作りかたの時点でほとんど自己統制は破綻している。そうやって意味があるのかないのかわからないようなものを書くっていうのは意識しているかもしれない。単純に意味不明にもしたくないし、かといって濃厚なメッセージがあるようにもしたくない。どっちにも寄りたくないんだよね。その中間くらいが温度としていい。
[[SplitPage]]9割は嘘を言っていて1割は本当のことが入っているような、俺はそういうのが好きなんだよね。どこかに真実が紛れ込んでいるのがおもしろいと思う。
■冒頭の“GOOD LUCK”や初期の“恋人たち”のような情景描写的なものと、言葉のリズムに寄ったものと、高橋さんの歌詞にはモードがふたつあるように感じます。そこにはどのようなちがいがありますか?
高橋:曲のタイプによってわけているんじゃないのかな。曲自体のニュアンスでまた変わるんだろうね。そこまで自分で分析できていないよ(笑)。歌詞は曲と同時に書きたいから、おおまかなプロットのようなものを立てて、そこから寝かして、少しずつ手直ししていってできあがる。
■けっこう時間をかけるんですね。
高橋:すぐできる曲もあるし、できないものはずっとできないんだよね。歌入れの当日の朝に書いたものもあるし。できないときはできないっていうのは自分でわかっているから、その場合は待つしかなくて、待っていればそのうちどうにかなる。
■歌詞を書くときはどういうことを考えて、どのような言葉を落とし込もうとしていますか?
高橋:考えすぎると自分の地の感じが出るから、それはあまりしたくなくて。意識している部分と無意識の部分とが織り交ざっているんだけど、結局書くのは自分だから自分のなかの言葉しか出てこない。でも自分の癖みたいなものに頼らないようにはしている。自分の「節」みたいなものはあまり作りたくないなと思って。
■ずっと歌詞の抽象的な話になって恐縮なのですが、個々の歌詞に場所や舞台は具体的にありますか?
高橋:ある。“Metropolis”だったら、タイトルどおり近未来っぽい、SFっぽい感じとかを出したかったし。でも、そういう一曲がきっかけで、ひとつの世界観に傾倒しちゃうんだよね。“冥王星”も“Metropolis”に近いものが出たし。トータルで見ると、今回のアルバムはSFの影響を受けているなあって思った。そのときにSFを読んでいたわけじゃないんだけど、星新一とかアシモフが好きなんだよね。
■そこに言いたいことを組み込んだりはしますか?
高橋:入っているんじゃないかなあ。9割は嘘を言っていて1割は本当のことが入っているような、俺はそういうのが好きなんだよね。どこかに真実が紛れ込んでいるのがおもしろいと思う。ぜんぶフィクションで書いているつもりはないよ。やっぱりどこかに本当のことが入っているとは思う。それがどこかって言っちゃうのは野暮だけど、でもどこかにはあると思う。飲み屋で友だちと芸能ゴシップについて話したりするのが好きなんだけど、そういうものを嘘だとも本当だとも思っていないんだよ。でも、ひとつのネタがいろんな人を介して伝言ゲームのように膨張していくのがおもしろい。「真実よりもよくできた嘘のほうがおもしろい」って。それはまさにそのとおりだと思う。……でも歌詞なんてさ、無意識だよ。意識して書けない。なんの意識もないところではたらいている部分があるって、インタヴューをやっていると気づくんだよね。本当は「なんもねえよ! 俺がやりたいことに意味なんてあるわけないじゃん!」って言いたい。でも、それを言ったら終わりだからさ。
■でも、アルバム4枚ぶんの言葉を高橋さんが書いているわけですから、そこにはどのようなものがはたらいているのかを知りたいんですよ。
高橋:みんな孤独を愛してくれと思うんだけどね(笑)。孤独はかわいいもの、愛でるべきものだよ。歌詞っていうのはもう、そこで言葉として放っているものだから、結局それを説明するっていうのは非常に難しいんだよね。
■それ自体、野暮な話ではありますからね。
高橋:それでも追求したいっていうのはわかるよ。でも、そうなると心理学みたいになっちゃうから。
血眼で探し当てた宝箱を開けたら子どもの頃の古い写真が一枚だけ入っていたようなバンド。
■ところで、ファーストをリリースしたとき、高橋さんはおいくつでしたか?
高橋:2009年だから、23歳か24歳かな。
■その当時をいま振り返ると、どんな感じですか?
高橋:これは訊かれたときによく答えていることなんだけど、正直に言って昆虫キッズは「続けよう」っていうスタンスではやっていなかった。バンドをはじめた当初はCDが出ればそれがゴールだったんだけど、せっかくだからライヴをやって、地方へも行って――そんなふうにやっていたら新しい曲ができて、曲が溜まったから次のアルバムを作る。昆虫キッズはそういう行動の延長線上でずっとやってるんだよね。血眼で探し当てた宝箱を開けたら子どもの頃の古い写真が一枚だけ入っていたようなバンド。
■では、昆虫キッズのコアは空白なんですか?
高橋:うん。そうだと思うよ。バンドをやっている上でのコンセプトや信念が「ほしい」と思うぐらいにないもん。
■なるほど。高橋さんが昆虫キッズでやりたいこと、やろうとしていることってなんですか?
高橋:いまの4人のメンバーで足並み揃えてできることならなんでもいい。4つのピースがないとできないことだからさ。そういうバンドとしてのバランスっていうのはすごく意識している。バンドって、ずっと続けているとそのコミュニティに所属している感じがしてひとつの家族みたいなものになってくる。不思議な関係性だよね。
■では、4人のメンバーがイコール昆虫キッズということなんですね。
高橋:うん。だれか1人が辞めたらダメだなって思ってる。代わりがいない。
[[SplitPage]]いま、「ロック・バンド」ってどういうバンド? 自分たちはロック・バンドなのかなあっていう疑問がある。
高橋:ところで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは何枚めが好き?
■僕は3枚めですね。
高橋:絶対3枚めでしょ! 俺もそう。でも俺はジョン・ケイルが好きなんだよなあ。(※)
■なんでですか?
高橋:なんか中途半端だから(笑)。
■アカデミックなほうへも、ロックのほうへも振りきれない感じがありますね。絶対に権威になれない感じが。
高橋:なれないね。そこにかわいげがある(笑)。
■もしジョン・ケイルの音楽を一言で表わせって言われたら困るような音楽家ですよね。
高橋:そう。そういう人が好き。いまだにジョン・ケイルが何者なのかわからないよね。そんなにジョン・ケイルのことは知らないんだけど、なぜかシンパシーはある。
■ジョン・ケイルを言語化できない感じは、昆虫キッズとも似ているかもしれませんね。
高橋:天野くんはこのアルバムはロックとパンクだったらどっちだと思う?
■うーん……。
高橋:いま、「ロック・バンド」ってどういうバンド? 自分たちはロック・バンドなのかなあっていう疑問がある。つねに思うのは、(アルバムを指しながら)こういうものを聴いて10代の子が「こういうバンドをやりたいなあ」って思ってくれたら、それがひとつのゴールなんだよね。
■それはロック的な夢ということですか?
高橋:ロックというよりバンドの、だね。
■高橋さんがさっき訊かれた「ロック」と「パンク」という、その両者のちがいは高橋さんにとってはどういうものですか?
高橋:パンクは弱い人間から生まれた音楽だと思う。社会的にも経済的にも追い込まれて、あらゆる面で淘汰されてしまいそうな人というか。ロックはもっと計画的で、エンターテイメントというか、芸能文化のレール上にあるのかなあと思う。同じようなものとして考えていたけど、やっぱりちがうと思うんだよね。ラモーンズはパンクだなって思うのは、追い込まれたけどそこから脱出できる強さがあった人たちだから。世間がどうとか社会の情勢がどうとか関係なく、それでも前に出てこられる強さがある――俺の思うパンクっていうのはそういうこと。
それ(“変だ、変だ、変だ”)は自分自身にも言っているし、対外的にも言っている。「変じゃないこと」がなくなってきちゃったなあって。ノーマルにやることが逆に難しいような。
でも、いまはそういうものがあまりない。日本だと、より難しいと思う。嫌な言いかただけど、そういう時代じゃないというか。でもやっぱり、いつもそういう人たちが出てこないとダメじゃないかなあと思うんだよね。お笑いで言えば、たとえばダウンタウンみたいに泥のなかから這い出て栄光を掴んできたような人たち。いまはなにかを始めようという時点でそのフィールドがある程度整備されていて、なんでもやりやすい。みんな同じ整った環境でスタートできるから、そこにはそれほど差がない。そうなると、そこから突出することは難しい。そうなると、えげつないほどの力やとてつもない個を持ったやつがいても出てこられないと思うし、そいつの受けとめられかたもちがってくるんじゃないかなあ。
たとえばどついたるねんが1970年代や80年代に出てきたとしたら、またちがっていたんだろうね。どついたるねんがじゃがたらと同じ時代にいたらどうだろう……。江戸アケミにぶっとばされるかな(笑)。いま、なんでもできちゃうっていうのは、また重荷なのかもしれないね。だから、音楽自体の持っている魅力というか、魔力みたいなものが霞んじゃう気がするんだけどね。
■僕は昆虫キッズの音楽はどこかマージナルな場所から聴こえてくるように思います。そういう意味では「パンク」的です。
高橋:たぶん、自分はそういうものに憧れてはじまったけど、憧れは捨てなきゃ次にいけない。パンクの思想や方法とは別の角度からバンドをディレクションするのも自分の仕事だから。そこで訪れる変化のタイミングを受けとめて、アメーバのように細胞分裂を繰り返していて、得体の知れないものになると思う。
■だから、そうやって4人でバンドをやっている?
高橋:そうだね……。そうだと思う。
■“変だ、変だ、変だ”という曲のタイトルがまさに昆虫キッズだと僕は思うんですよね。
高橋:そうだね。それ(“変だ、変だ、変だ”)は自分自身にも言っているし、対外的にも言っている。「変じゃないこと」がなくなってきちゃったなあって。ノーマルにやることが逆に難しいような。普通にやることがいちばん大変かもしれないよね。
※誤解を招くおそれがありましたため「でも」を加えております(6/12訂正)
■昆虫キッズ『BLUE GHOST』発売記念公演「Stay Ghost」
会場:東京・渋谷WWW
公演日:2014年6月11日(水)
開場 18:30 開演19:30
出演者:昆虫キッズ、高島連 with ハイハワ原田
チケット料金:前売¥2,800 当日¥3,300
(各税込、Drink代別途¥500 全スタンディング)
・プレイガイド予約
(1) チケットぴあ コード:230-962
(2) ローソンチケット コード:77728
(3) e+ https://eplus.jp/sys/main.jsp
・WWW店頭
・メール予約
the_insect_kids@yahoo.co.jpまで、お名前、ご来場人数(お1人様につき4名まで予約可能)、連絡先を明記の上メールをお送り下さい。
※公演前日6/10(火)まで受け付け致します。
※当日受付にて前売料金をお支払い頂きます。
※ご入場順はプレイガイド、WWW店頭チケットご購入者が優先となります。
※やむを得ずご来場できなくなった場合、お手数ではございますがその旨ご連絡をお願い致します。
チケット絶賛発売中
主催:P-VINE RECORDS
お問合せ:渋谷WWW 03-5458-7685







