ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 完成度の低い人生あるいは映画を観るヒマ 第二回 ボブ・ディランは苦悩しない
  2. Oklou - choke enough | オーケールー
  3. Columns ♯12:ロバータ・フラックの歌  | Roberta Flack
  4. Lawrence English - Even The Horizon Knows Its Bounds | ローレンス・イングリッシュ
  5. story of CAN ——『すべての門は開かれている——カンの物語』刊行のお知らせ
  6. すべての門は開かれている――カンの物語
  7. Columns ♯11:パンダ・ベアの新作を聴きながら、彼の功績を振り返ってみよう
  8. The Murder Capital - Blindness | ザ・マーダー・キャピタル
  9. はじめての老い
  10. interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar) ニコラス・ジャー、3人組になったダークサイドの現在を語る
  11. R.I.P. Roy Ayers 追悼:ロイ・エアーズ
  12. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2025
  13. 別冊ele-king ゲーム音楽の最前線
  14. Columns なぜスコット・ウォーカーはリスペクトされているのか
  15. R.I.P. David Johansen Funky but Chic——デイヴィッド・ヨハンセン R.I.P.
  16. Arthur Russell ——アーサー・ラッセル、なんと80年代半ばのライヴ音源がリリースされる
  17. John Glacier - Like A Ribbon | ジョン・グレイシャー
  18. interview with Elliot Galvin エリオット・ガルヴィンはUKジャズの新しい方向性を切り拓いている
  19. FKA twigs - Eusexua | FKAツゥイッグス
  20. Meitei ——冥丁の『小町』が初CD化、アナログ盤もリイシュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > M. Geddes Gengras- Ishi

M. Geddes Gengras

AmbientNew Age

M. Geddes Gengras

Ishi

Leaving

HMV Amazon iTunes

倉本 諒   Jun 04,2014 UP

 2013年暮れ、久々に再会したゲド・ゲングラスはいまだに興奮冷めやらぬ様子でアクロン・ファミリーとしての初来日の思い出を語りまくっていた。「モスバーガーはバーガーの形をしているけどバーガーじゃないよな!」「公衆便所キレイ過ぎ!」僕は彼が存分に日本を満喫してくれたことを確信し、安堵した。

 ゲドは変わらず多忙な男だ。いやむしろさらにクソ忙しくなっている。サン・アロー(Sun Araw)のプロデュースやサポートはもちろんもちろんのこと、同じくサン・アローのキャメロン・スタローンと主宰するダピー・ガン(Duppy Gun)、数多くのLAローカルのアーティストのプロデュース、最近はピュアX(Pure X)のサポートとしてもツアーを回り、その合間を縫ってはテクノ・プロジェクトであるパーソナブル(Personable)と本人名義での活動をフェスティヴァルでの演奏からアートギャラリーでのインスタレーションまで拡大させている。誰もが彼をリスペクトするのがおわかりになるであろうか?

 ゲドと出会って間もない頃、僕はおそらくこれまで彼の人生で頻発しているであろうやりとりをした。「ゲドってクールな名前だよな。だって……」「ウィザーズ・オブ・アースシー(邦題:ゲド戦記)だろ?」「……そう。あの本は子どものときに読んでトラウマになったよ」「ありゃドープ・シットだぜ」なんたらかんたら……。
 マシューデイヴィッド(Matthewdavid)が主宰する〈リーヴィング・レコーズ〉より今月末にLPがドロップされる『イシ(Ishi)』は、『ゲド戦記』の著者であるアーシュラ・K・ル=グウィンの母親、シオドラ・クローバーの著書『イシ 北米最後の野生インディアン』を下地に彼のモジュラー・シンセジスによって紡がれた壮大なアンビエント叙事詩だ。高校生のゲド少年がこの著書に出会い、衝撃を受け、後に自身のフレーム・ワークの中に落とし込んでいったというのはなんともロマンティックだ。いい意味で生半可でないニュー・エイジ思想をプンプンに感じさせる近年の〈リーヴィング〉からのリリースというのも納得だ。