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interview with the insect kids

interview with the insect kids

変だ、変だ、変だ

――昆虫キッズ、インタヴュー

天野龍太郎    Jun 10,2014 UP

Insect Kids
Blue Ghost

P-Vine

Indie RockPsychedelic

Tower HMV iTunes

 昆虫キッズはストレンジなバンドだ――そういう意味ではオルタナティヴだと言ってもいい。いったいこのバンドの音には、そしてフロント・マンである高橋翔の言葉にはどのような参照軸が設定されていて、あるいはどこへと向かっているのか、そのような凡庸な分析やストーリーは真っ向から排していくのが昆虫キッズの音楽である、と彼/彼女らの音楽を聞くたびにそう思わされる。未来から鳴っているのか、過去から鳴っているのかわからない。昆虫キッズの音楽は自ら歌っているように「時間軸が/変だ 変だ 変だ」。

 オルタナティヴ・ヒップホップ・グループとされているヤング・ファーザーズは、“オルタナティヴ”とはなにかにアゲインストする表現であって、自分たちはそのような態度で音楽をやってはいないから“オルタナティヴ”・ヒップホップではない、と語った。そういう意味では昆虫キッズはオルタナティヴ・ロックではないのかもしれない。なぜなら彼/彼女らのコアは、(少なくともこのインタヴューで知りえたかぎりでは)大いなる空白だから。

 パンクに憧れ、ロックの夢を見るグレイト・ホロウ=昆虫キッズ。最新作『BLUE GHOST』をリリースし、そのリリース・パーティを控えるこのバンドのフロント・マン、高橋翔との対話を(考えのズレや行き違いも含めて)ぜひお楽しみください。

■昆虫キッズ
2007年、東京都にて結成。のもとなつよ(Bass/Vo)、佐久間裕太(Drums/Cho)、高橋翔(Vo/Gt)、冷牟田敬(Gt/Key/Vo)の4名で活動。数枚の自主制作盤リリースののち、2009年にファースト・アルバム『my final fantasy』にてデビューする。翌2010年にセカンド・アルバム『text』を発表。ツアーや各種イヴェントへの出演が増え、2011年には2枚のシングル「裸足の兵隊」「ASTRA」、2012年にはサード・アルバム『こおったゆめをとかすように』、アルバム未収録曲を集めた「みなしごep」と快調にリリースをつづけ、2014年5月、これまでの活動の転機ともなる4枚め『BLUE GHOST』が発売された。


デジタルだけでの録音はあまり好きじゃなくて、これまでやっていなかったんだよね。でも、やってみないとわからないなと思って。

以前、高橋さんにお会いしたとき「『こおったゆめをとかすように』ですべて出しきった」というようなことをおっしゃっていました。

高橋:えっ、そんなこと言ってた?

はい(笑)。最初の3作は3部作ようなものだとも。

高橋:そう。後づけだけど、3作できたときにバンドとしてひとつのものとしてできあがったから、区切るタイミングかなと思ったんだよね。このまま『こおったゆめをとかすように』から地続きで4枚めを作るというより、いったんラインを引いてなにかを意識的に変えなきゃなと思った。

変えた部分というのは具体的にどういうところですか?

高橋:今回は佐藤優介くん(カメラ=万年筆)に録音とミックスを任せて、客観的な意見を訊いたりしたこと。それと、これまでの作品はテープの音だったんだよね。ファースト(『My Final Fantasy』)はカセットテープとハードディスクで、セカンド(『text』)とサードはオープンリールで録った。デジタルだけでの録音はあまり好きじゃなくて、これまでやっていなかったんだよね。でも、やってみないとわからないなと思って。やってみて、どういうメリット/デメリットがあるのかを把握したかった。演奏する側の人間は変わらないけれど、ちょっと「引っ越し」したいなと。1駅くらいだけど、ちょっとちがう町に行ってその町の環境がどうなのか見てみたい――そういうことを試みてみたいと思った。

優介くんがレコーディングとミックスをやったことによってどういう音になったと高橋さんは思いますか?

高橋:優介くんはファーストからずっと聴いてくれてたんだよね。もともと面識はあったけどそれほど深く話す関係でもなく、その距離感がすごく良かった。彼はひとつのジャンルに特化せずにオールマイティに聴いているから、いっしょにやるならそういう人がいいなと思った。ミックスの段階で「好きにやってみて」と優介くんに投げて、どうなるのかが聴きたかったんだよね。俺がまったく手をつけず、他人がやったときにどういうふうになるのかなというのが気になったから。結局、その後いろいろと発注しちゃったんだけど(笑)。

ちょうど作業中の優介くんに会ったときに「高橋さんと佐久間(裕太)さんの意見が対立していて困っている」という話をしていました。

高橋:佐久間くんは佐久間くんの聴きかたがあるからさ、またちがうし。俺には俺の聴きかたがあるから。たぶん対立しているわけじゃないけど、板挟みでちがう意見を言われるから困ったんじゃないのかなあ。もちろん他のメンバーの意見は聞くけど、だいたい自分で決めているかな。これまでは8割がた完成ミックスを自分のなかで決め込んで、かつちょっと余白を残しておいて、意見を聞いて残りの2割を埋めていくというやりかただったんだけど。

単純に意味不明にもしたくないし、かといって濃厚なメッセージがあるようにもしたくない。どっちにも寄りたくないんだよね。

今回、前作までのヒリヒリとした感じよりも、全体的に少しリラックスしたような感じや軽快さが曲調に出ているように思いました。そこは意識的に雰囲気を変えようとしましたか?

高橋:それはあまり意識していないかな。曲を作るときはそのときの気分が元手になっているから、ヒリヒリしているときはそういうものができるのだろうし。一回そういうものを作ってしまえば、また同じようなものを作りたいとは思わないんだよね。それとはちょっとちがうものを作りたい。そういう反動はあると思う。

なるほど。リード・トラックの“Alain Delon”はなぜ「アラン・ドロン」なんですか?

高橋:サビのメロディーを作ったときに、それが「アラン・ドロン」っていうふうに聞こえただけ(笑)。

それほど意味はない?

高橋:ごめんね……申し訳ないけど……(笑)。空耳アワーのような感じで(笑)。でも、「アラン・ドロン」ってなにか意味があるような感じがするよね。

高橋さんの歌詞は韻をたくさん踏んでいたり、リズムを重視していることも多いと思います。歌詞はどのように書いていますか?

高橋:歌詞は曲を作るときに、同時進行で書く。歌のメロディができたら思いついたことをパッと羅列して、そうすると楽曲のキーワードになる言葉が出てきたりするんだよね。それをつなげて、自分で補足する。だから、そういう作りかたの時点でほとんど自己統制は破綻している。そうやって意味があるのかないのかわからないようなものを書くっていうのは意識しているかもしれない。単純に意味不明にもしたくないし、かといって濃厚なメッセージがあるようにもしたくない。どっちにも寄りたくないんだよね。その中間くらいが温度としていい。

取材:天野龍太郎(2014年6月10日)

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Profile

天野龍太郎天野龍太郎
1989年生まれ。東京都出身。音楽についての編集、ライティング。

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