「IR」と一致するもの

Compuma - ele-king

Compuma
Something In The Air

E王 Something About Format

 ニューエイジ......という言葉は、1970年代は、ポスト・ヒッピーの少々スピリチャルなタームで、お香、鉱物、古代神話......一歩間違えるとムーの世界に足を踏み入れてしまうというリスクもあるのだが、他方ではCRASSのストーンヘンジ・フェスティヴァルのような、ヒッピー・アナキストへも繋がっているように、実に幅広い意味を持っている。
 ここ数年、"ニューエイジ"と呼ばれる音楽が広がっている。が、意味する内容は昔とは別物だ。今日言うところのニューエイジとは、アンビエント/ドローン/IDM/フィールド・レコーディングなど、新しい傾向のエレクトロニック・ミュージック全般に使われる。OPNエメラルズプリンス・ラマジェームズ・フェラーロ......までもがニューエイジだ。拡張された音楽性は、最近のインディ・シーンにおけるひとつの傾向で、先日のグルーパーのライヴでも感じたことだが、新時代のニューエイジ的な感性は日本でも顕在化しはじめている。
 こうした新しいモードを鋭く捉えているのがコンピューマの『Something In The Air』だ。もうとにかく......今年に入ってから出たこのCDの評判ときたら......多く人たちから「聴いた?」と訊かれている。それはミックスCDというよりは、一種のカットアップ・ミュージックで(ザ・ケアテイカーのようでもある)、音源を使った音楽作品として成立している。アンビエント/ドローン、フィールド・レコーディング、現代音楽や古いジャズ、いろんな音楽が使われている......が、それらは『Something In The Air』というタイトルのように、音の粒子が大気中に舞っていくように感じられる。いま話題の男、コンピューマこと松永耕一にご登場願いましょう。

聴こえたり聴こえなかったり、聴くことを忘れてたり、でもいいというか、なるべく聴き疲れしないようなコンセプトというか......アンビエントや環境音楽的でもあり、まったくその逆とも言える。

お元気っすか?

コンピューマ:おかげさまで元気にしてます。

ふだんはレコード店の仕入れとかやってるんですよね?

コンピューマ:そうなんです。いろんな音楽にまつわる仕事をさせていただいている中で、大阪の〈Newtone Records〉で、いち部分をバイヤーとして担当させていただいてます。それと店番&コーヒーその他で、渋谷の〈Elsur Records〉でお世話になってます。

いま出回っているCD、『Something In The Air』がいろんなところで評判になっていますね。会う人、会う人に、「あれ聴いた?」、「レヴューしないの?」と言われるんですが、ホントに良いですね、これ(笑)!

コンピューマ:ありがとうございます!

家でよくかけていますよ。息子が宿題をしているときなんか、何気に音量を上げたりして(笑)。

コンピューマ:わー、いいですねー。うれしいです。ということは、息子さんの宿題の効果音楽にもなっていると(笑)。

集中力が高まると言ってましたね。それはともかく、そもそもどんなコンセプトで作ったんですか?

コンピューマ:んー。なんというんですかね。タイトル通り、空気のような、空気の中に紛れ込みながらもどこかでその存在に気付くというか、音楽なんだけど音楽でなく、音というか、作り手としての意思は強くあるんですが、その存在に気付く人も入れば、気付かない人もいていいというか、なんとなく感じたり、ものすごく集中して強く感じたり、ときによっては、聴こえたり聴こえなかったり、聴くことを忘れてたり、でもいいというか、それと、なるべく聴き疲れしないようなコンセプトというか......アンビエントや環境音楽的でもあり、まったくその逆とも言えるし、いやー、言葉にすると難しいですね。とにかく、なんかわかりませんが、ミックスするときに、ものすごい集中力が出せたように思います。その上で今回は、あの収録時間が限度でした。

ぶっちゃけ、ミックスというよりも、グランドマスター・フラッシュの「The Adventures Of Grandmaster Flash On The Wheels Of Steel」じゃないですけど、カットアップ・ミュージックっすよね。

コンピューマ:光栄すぎます。

使っている曲は、新しいのから古いものまでいろいろ?

コンピューマ:そうですね。昔の音源から、いまのものまで使ってます。

どちらかと言えば、古いものが多い?

コンピューマ:いや、半々くらいでしょうか。

でも、最近のアンダーグラウンドな動きに触発された部分もあるでしょう? いまの感じをうまく捉えていると思った。

コンピューマ:それは嬉しいです。正直、個人的にはめちゃくちゃ触発されたということはあまりないのですが、仕事柄USやヨーロッパを中心としたアンダーグラウンドでの過剰なシンセサイザー音楽のブームといいますか、電子音楽、アンビエント、ニューエイジ再燃&カセットテープ・リリースの復活ブームや新旧の傑作のアナログを中心としたリイシューなどなどはチラリ横目で見ながら、90年代から2000年代はじめまで頃の、当時のWAVEや渋谷タワー5Fでのバイヤー時代をあらためて思い出して「へぇー。いまこんなことになってんだ。そうなんだ! なんか嬉しいな!」とか思ってました。そんななかで、いまだったら、今回リリースしたような内容のミックスも、あらたな提案というか、自分のなかでいろいろと経た流れの中で、あらためて今の時代の感覚で聞かれたり楽しまれたりするかも!? とかイメージしはじめたところはあるかもしれません。

マーク・マグワイヤまでミキシングしているんですよね。エメラルズみたいな若い世代のアンビエントもチェックしている?

コンピューマ:2~3年前くらいでしょうか。マーク・マグワイヤの存在を知ったのは、実はエメラルズということを知らないで仕事上でのインフォメーションをあれこれチェックしてたらひっかかって、フォーキーながらマニュエル・ゲッチングみたいな浮遊感とミニマル感覚と、ソフトなサイケデリック感覚が面白いなと思ってて。そこからです。

ここ数年、アメリカの若い世代から、やたらこの手の音が出てくるようになったじゃないですか。面白いですよねー。

コンピューマ:本当に多いですよねー。なんだか盛り上がってますよね。でも、不思議なのは、自分的には当時はなんというか、ニューエイジという言葉の響きにはものすごく抵抗があって、あまり好きでは無かったというか、あの独特の匂いを音で感じると拒絶するところがあったのですが、時代を経て時代もかわり、自分もかわり、まわりもかわり、世代もかわり、ニューエイジという捉え方もかわったように思います。
 そういえば、こないだBINGさんこと、カジワラトシオさんともそんなような話をしたのですが、そのなかで、いわゆる現代においての癒し的なニューエイジの代表レーベルの〈ウィンダム・ヒル〉だって設立当時は、アメリカン・ルーツからの発展としてのあらたな音楽の探求というか、ジョン・フェイヒーやロビー・バショウの音楽をお手本にスタートしてたと思うんですよね。あのジョージ・ウィンストンのデビューもジョン・フェイヒーのレーベル〈tacoma〉のはずですし......。

なるほど。たしかにこの動きは、ジョン・フェイヒーの再評価と重なってますよね。

コンピューマ:10年ほど前の新たなジョン・フェイヒーの再評価はある種、それとは真逆のところからの再評価だったというのも面白かったですよね。それを考えるとニューエイジという漠然としたジャンル(捉え方)というのは、作り手も、その時代ごとにその時代のニーズに合わせて変容していくことで、その時代時代の聴き手に楽しまれているのかな、とか思ったり、だから時代によってニューエイジの印象というのは変化していっているのかなとか勝手に思ったりしてます。とくに〈NOT NOT FUN〉などに代表されるいまの若い世代からのニューエイジ・ブームというのは、いわゆるレアグルーヴの再評価再注目のジャンルがニューエイジにまでたどり着いた果てなのかなとかとも思ってます。ニューエイジ的な精神性とかいうよりも単に面白がっているというか、ニューエイジというお題であれこれ遊んでいるようにも思います。あくまで個人的な想像の意見ですけど......(笑)。

アメリカに行った友人がびっくりしてたんですが、サン・アローの人気がすごいと(笑)。あんな音楽がアメリカでリキッドクラスのハコでソールドアウトになってるってすごいよね。ほかに、とくに気になった作品やアーティスト、います?

コンピューマ:そうですね。〈DIGITALIS〉レーベルのいくつかの作品や、話題のワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)の『レプリカ』や、少々前ですが、エメラルズのジョン・エリオットのソロのアウター・スペース名義や、フェリックス・クビンの新作の電子粒の音の良さや、UKベース&テクノのレーベル〈SWAMP 81〉などなどのエレクトロを通過したいくつかの作品での音作りや立体音響的なミックスの進化と深化にいまを感じます。

[[SplitPage]]

若い世代からのニューエイジ・ブームというのは、レアグルーヴの再評価再注目のジャンルがニューエイジにまでたどり着いた果てなのかなとかとも思ってます。ニューエイジ的な精神性とかいうよりも単に面白がっているというか。

Compuma
Something In The Air

E王 Something About Format

ところで、『Something In The Air』を4つのパートに分けたのは、どんな理由がありますか? それぞれテーマがあるわけですよねえ?

コンピューマ:実は今回のこのミックスは、もともと分けるつもりはなくて、ひとつの作品として作ろうとしてました。なので録音も一気にラストまで一発録りでした。4つに分けたのは、単純に聴く人が、このくらいに分かれてたほうが聴きやすくなるだろうな。と思ったことくらいでして。最初はもう少し細かくサウンドイメージの変化する場所場所でポイントしようとも思ったりしたんですが、最終的にはこの4つのこのポイントくらいがちょうどいいように思って、この4つのパートに決定しました。

『Something In The Air』というタイトルはどこから来たんですか?

コンピューマ:今回は自分なりに漠然とですが、何か、よりどこか普遍的なものを目指していたところがありました。去年のある時期、なんとなくダンス・ミュージックに疲れていた時期もあって、いろいろと好きな音楽のなかで、今回はダンス・ミュージックでない側面で何か形作れないかな~と考えてました。よりアダルトというか、オトナというか、自分もおっさん真っただなかなんで、そんなおじさんからの音楽の楽しみ方のひとつの提案というか、より世代やジャンルを超えていろいろな人に届けられたらなと思いまして......そんななかで、自分にとって伝えたい音や音楽のサウンド・イメージのひとつの形として、音と音楽、そして間とゆらぎ、音は空気の振動というか、聴こえるけど見えない。という、空気中の見えない何か、みたいなものをイメージしていくなかで、普段生活している、生かせていただいている環境で何げに呼吸して循環させている「空気」のことをあらためて考えてみて、空気の存在って? みたいなことをじんわり考えていたなかで、昔好きだったサンダークラップ・ニューマンの同タイトルの名曲を思い出したり、できあがった五木田智央さんの絵を見て、最終的に直球ではありますが、このタイトルに決定しました。ホント、過去の先人の方々がいろいろと使い続けている普遍的なクラシックな言葉ですしね。

1曲目の最後なんか、フィールド・レコーディングの音がやたら入っていきますが......。

コンピューマ:そうですね、フィールド・レコーディングものは、あれこれずっと好きで、いままでいろいろと楽しませてもらった作品のなかで今回効果的だと思ったものを1曲目に限らず、いくつか使用させていただきました。

松永君の人柄の良さがそのまま展開されているというか、ある種の平穏さを目指したってところはありますか?

コンピューマ:んんん。実のところは、平穏さを目指したところは余り無く、自分的にはいろいろな厳しさも含めたあれこれを経ていく流れというか、過程をありのまま出せればと思って、ただ、ラストにはある種の着地感というか、日本語という言葉を響かせたかったというのはあります。いやー、言葉にするのは難しいですねー(笑)。
 実は、今回のこの「Something In The Air」にはパート2のミックスもあって、今年2月末に〈VINCENT RADIO〉に出演させていただいたときのライヴ・ミックスで、その音源をサウンドクラウドでフリーダウンロードという形で発表してみたんです(現在はダウンロードはできませんが、聴くことは可能です)。
 内容は、パート1のミックスCDのなかに同封させていただいた1枚の絵。それはジャケットの絵とは違う、淡いピンク色を基調とした絵が印刷されていたのですが、この作品も五木田智央さんによるもので「Something In The Air」の音にインスパイアされて誕生したもうひとつの作品だったんです。それで、このパート2では、ミックスCDとは逆に、自分が、この五木田さんのもうひとつの絵からインスパイアされることによってあらたな音世界を作り出してみようと思いミックスしたものなんです。こちらの音源のほうがなんというか、より何も起らないといいますか、平穏的なイメージはあるかもしれませんね。

へー、僕は、すごく気持ちよく聴いているんだけど......やっぱ渋谷のタワーレコード5階の伝説の松永コーナーっていうのは大きかったんですか?

コンピューマ:伝説ではないと思いますが、WAVEや渋谷タワーでの当時の経験は、そうですね。大きいですね。自分もそんな詳しいわけではありませんから、毎日毎日出会う音や音楽、そして人が新鮮でした。

松永君にとってのドローンの魅力って何でしょうか?

コンピューマ:なんでしょう(笑)?

クリス・ワトソンのソロが良かったって言ってましたが、具体的にはどんなところに感銘を受けたのでしょうか?

コンピューマ:存在はもちろん、フィールド・レコーディングものとしてのテーマ設定、聴こえてくる音の作品としての面白さ、オーディオ的音響としての素晴らしさはもちろんなんですが、最新作の『El Tren Fantasma』に関しては、コメントを寄せてたアンドリュー・ウェザオールと同感で、まさにこの電車の音にソウルやファンクを感じました。

それにしても、スマーフ男組からこんな風な展開を見せるとは......、自分のなかで何か大きなきっかけでもあったのでしょうか?

コンピューマ:これはホントなんですが、実は自分のなかでは、ある時期からずーっと繋がっていたんです。大好きなヤン富田さんの影響もありますし、ADSやスマーフ男組をやってるときも、たまにこんなような表現をさせていただく機会もあったにはあったのですが、なかなか表には出る機会が少なかったといいますか。でもあの時代にひっそりとあれこれ模索していたことが、今回の作品に大きく繋がっていると個人的には思ってます。

4曲目の最後に入る日本語の曲は?

コンピューマ:「ほい」の"咲雲"という曲です。元HOI VOO DOO。たしか2000年くらいに、ほい名義で唯一リリースした7インチなんです。リリース当時から大好きだった曲で、自分のなかで何年かに1回の大きな周期で聞き直し浸透させる自分のなかのスタンダードな曲なんです。制作するときに、今回ラストに入れたいと思っていた曲で、あの曲を最後にかけるため、あそこまでたどり着くまでにそれまでをミックスした、とも言っても過言ではない。というくらい重要な曲でした。あの曲の雰囲気、世界観や歌詞も含めて、インスピレーションというか、何かサムシングをいただきました。

この境地は、自分の年齢や人生経験とどのような関係あると思いますか?

コンピューマ:んー。歳を経たんですかねー。もっと若かったり、歳をとっていたり、年齢違うときに、まったく同じ音素材を使ったとして同じミックス部分があったとしても、おそらく印象が違ってくるんでしょうね。きっと。おもしろいもんですねー。

そもそもDJをはじめたきっかけは何だったんですか?

コンピューマ:時代を含めて、リスナーからの自然な発展でした。

いつからやっているんですか?

コンピューマ:ちゃんとお金をいただいてお店でやらせてもらうようになったのは、たしか92、93年くらいじゃなかったかなー。西麻布の〈YELLOW〉の裏あたりにあった〈M(マティステ)〉ですね。当時の職場WAVEの福田さん(現kongtong)と井上くん(chari chari)に誘ってもらったのがはじまりです。

エレクトロに入れ込んでいたのは、世代的なものでしょうか? 

コンピューマ:もちろんです。ですが、いまだにその心意気は色褪せてないのが面白いです。

いまでもヒップホップは聴いている?

コンピューマ:かなり偏っていると思うのですが、好きです。聴いてます。

コンピューマという名前は、どこから来たのでしょう?

コンピューマ:言うなれば、「コンピューターの頭脳とピューマの俊敏さを兼ね備えた男」ということでしょうか(笑)。

はははは。最近のDJはだいたいこんな感じなんですか?

コンピューマ:今回のCDをリリースしてからは、あの世界観をより発展させていきたい気持ちも強いので、ノンビートやアンビエント、ドローンにもこだわらずに模索してる最中です。
 3月の終わりにリリース記念イヴェントということで、今回のミックスの世界観の映像含めた体験というテーマで、D.I.Y.なアイデア溢れる3人組VJチーム、onnacodomoさんとともに音と映像のセッションをして、会場の幡ヶ谷フォレストリミットさんの大きなスクリーンに映し出し&映画館ばりの音響で音で流したんですが、相当おもしろかったです。迫力でした。あの感じも、もっと、より多くの皆さんに体験していただけたらなー。とか思ってます。そしてつい先日、東高円寺の〈グラスルーツ〉で別ヴァージョンの発売記念イヴェントとして、この時はよりダンス・ミュージック的世界にも通じるような展開をイメージして、DJ ノブ君とBINGさんことカジワラトシオさんと共にトライしてみましたが、この日も新たな感じというか、1回だけで終わりでなく、ぜひこれからも続けていって、こんな音楽世界を知らせていきたくも思いました。

ぜひ、お願いします!

コンピューマ:とはいえ、自分のなかでいろいろ他も楽しい音楽世界は広がっているので、呼んでいただけるパーティ、イヴェントによって、アレコレもっとワイワイ&ガヤガヤ、ニンマリ&ゴキゲンに、メロウにネチっとやらせていただいております。

DJ って、人によっていろんな考えがあるじゃないですか。パーティを第一に考える人もいれば、音楽性を追求する人もいる。松永君にとってDJとは何でしょう?

コンピューマ:両方をうまく昇華してできたら最高にうれしいですねー。

[[SplitPage]]

よりアダルトというか、オトナというか、自分もおっさん真っただなかなんで、そんなおじさんからの音楽の楽しみ方のひとつの提案というか、より世代やジャンルを超えていろいろな人に届けられたらなと思いまして。

〈悪魔の沼〉って何なんですか?

コンピューマ:下北沢のMOREを中心にやらせていただいているパーティです。現在の沼クルー(沼人)は、DISCOSSESSIONのDr.NISHIMURAさんことDr.NISHI魔RA、そして2much crew周辺でナンシーの旦那AWANO君こと、A魔NO、そして自分、コンピュー魔の3人で、2008年に結成されました。当初は二見裕志さん(二魔裕志)もレギュラー沼人だったり、一時期は1DRINKこと石黒君(魔DRINK)も沼人だったのですが、現在は3人がメイン沼人となってます。テーマはかなりアバウトな「沼」がテーマで、ダンス・ミュージックの枠さえも少し超えて、それぞれが好きなように自分の思う「沼」を表現するという......

ナハハハハ。

コンピューマ:そんなある種、特殊な趣きのイベヴェントとしてスタートしました。それから不定期ながら毎回様々な多彩なゲストの皆さんに出演していただきながら開催し、去年はDOMMUNEに出させていただいたり、ミックスCDまで出したり、という流れで沼巡りさせていただきました。

しかし......なぜ、そんなおそろしい名義になったんですか?

コンピューマ:かなりテキトーな思いつきでした。その時期にたまたま家のなかを片付けていて、トビー・フーパーの映画『悪魔の沼』の映画の中身ではなくて、VHSのジャケの絵が最高な事をあらためて再確認していたタイミングだったからだけなんです。アワノ君からイベント名の相談受けたときに、その事を思い出しただけという......(笑)。その時アワノ君から「沼」というお題があったのかな? なかったのかな?あれ? スミマセン。忘れました。

悪魔の沼としての展望は?

コンピューマ:んー......たまーに沼クルーで集まれたら嬉しいですねー。去年、3人で西日本を沼ツアーやらせていただいたんですが、そんときの3人の役割分担というか、何というか、プレイももちろんなんですけど、それ以外の時間も絶妙に塩梅が良かったんです(笑)。

スマーフ男組の再結成はないのでしょうか?

コンピューマ:あれなんです。解散しているわけではないんです。が、事実上、無期限休止中ですよね。

村松君、元気かな? 数年前に静岡のクラブでいちど会ったんだよね。

コンピューマ:去年、〈ラディシャン〉で呼んでもらった時に、遊び来てくれて久しぶりに会ったんです。実際には数年も経ってないのに、なんだかふたりともオッサンになったなー! って(笑)。

そうそう、静岡の〈ラディシャン〉でもDJやったって話、やる気のないダメ人間たちから聞いてますよ! 地方でもけっこうやってるんですか?

コンピューマ:少しずつではありますが、呼んでいただくことも増えました。ありがたいです。日本全国で仲間が少しずつ増えてます。

音楽以外の趣味ってある?

コンピューマ:街の市場めぐりに散歩。あとは居酒屋探訪でしょうか。

ヒゴ・ヒロシさんなんかと下北沢の〈MORE〉でやったときがすごったと人づてに聞いてます。遊びにいったヤツが「魔法にかけられたようだった」と言ってました(笑)。

コンピューマ:あの日はおもしろかったです。大先輩達とご一緒させていただきました。いやー、スゴかったですね。あの日は。CDJも3台、ターンテーブルも2台ありましたしね。特殊空間でした。

まだ先ですが、5月9日、代官山のユニットで、エレキング・プレゼンツでマーク・マグワイヤの来日公演をやることになって、そのサポートDJも引き受けていただきました。ありがとうございます。当日はとても楽しみにしています。

コンピューマ:こちらこそ、どうぞよろしくおねがいいたします。個人的にも生マグワイヤ非常に楽しみなんです。

ちなみに松永君の夢って何ですか?

コンピューマ:これは近い将来の夢になりますが、最近『Something About』というプロジェクトを立ち上げました。今回のこのミックスCDもそこからのリリースなんです。音楽はもちろん、音楽の枠も超えて、サムシング・アバウトな心意気のあれこれをお届けできるように邁進したいと思っております。遅れ気味ではありますが、近々ホームページも立ち上げる予定です。少しずつではありますが、こちらも楽しみにしていただけましたら幸いです。

最後にコンピューマのオールタイム・トップ・10をお願いします!

今日の気分ではありますが......

TROUBLE FUNK「Trouble Funk Express
AFRIKA BAMBAATAA & THE SOUL SONIC FORCE「Planet Rock
いとうせいこう・ヤン富田「Mess/Age
KRAFTWERK「Man Machine
OHIO PLAYERS「Funky Worm
JUNGLE BROTHERS「J.Beez Wit The Remedy
JUNGLE BROTHERS「Done By The Forces Of Nature
DE LA SOUL「De La Soul Is Dead
DIGITAL UNDERGROUND「Future Rhythm
JONI MITCHELL「Court & Spark

......です。ありがとうございました。

こちらこそです。〈Pヴァイン〉から出るコンピレーションCDも楽しみです。

コンピューマ:そうなんです。はじめてコンピレーションを作らせていただきました。『Soup Stock Tokyo』の音楽というコンピレーションCDになります。駅のなかなどによくあるスープのお店「Soup Stock Tokyo」さんの、「家で聴く音楽」ということで、家庭での音楽の提案にもなったらということで......。

えー、スープ屋さんのアンビエント(笑)!

コンピューマ:で、今回は〈P-ヴァイン〉さんのブラジルなどのワールド・ミュージックからソウルR&Bに、ポスト・ロック、日本語の曲も含めた幅広い音楽ジャンルの音源を中心に、音の国籍を問わずにそのイメージを自分なりに広げて入念に絞り込み全16曲を選ばせていただきました。音の旅と出会い。おそらく聴かれたり購入されるであろう方々には、おそらく音楽マニアでない方も多数いらっしゃると思われますから、聴き方、音楽との接し方も多様でしょうし、いろいろな聴き方に対応できるよう、居心地の良さが違和感なく途切れずに済むような心づもりで選んでみました。

ほほぉ。

コンピューマ:さりげなく暮らしのなかに寄り添いながら、いい距離感で鳴っているイメージといいますか、そんななかでどこか琴線にふれるようなタイミングがあれば最高だな。と、そんなイメージで作ってみました。音の印象はまったく違いますが、聴き疲れしないように、そして音の空気感の粒を揃える、という意味ではミックスCD『Something In The Air』と同じ感覚です。5月末の発売予定です。こちらもよろしくおねがいいたします。

それは楽しみですわ。こんど居酒屋探訪の成果を教えてください!


コンピューマ
コンピューマ compuma a.k.a.松永耕一。熊本生まれ。ADS、スマーフ男組として活動後、SPACE MCEE'Z(ロボ宙&ZEN LA ROCK)とのセッション、2011春にはUmi No Yeah!!!のメンバーとして、フランス他5カ国でのヨーロッパ・ツアー等を経て現在へ至る。 DJとしては,日本全国の個性溢れるさまざまな場所、そしてそこでの仲間達と、日々フレッシュでユニークなファンク世界を探求中。各所で話題となっているサウンドスケープな最新ミックスCD『Something In The Air』をリリースしたばかり。5月末には初の選曲を監修したコンピレーションCD『Soup Stock Tokyoの音楽』も〈P-VINE〉より発売予定。さまざまな選曲や音提供に音相談、レコードショップのバイヤーなど、音と音楽にまつわる様々なシーンで幅広く活動中。NEWTONE RECORDS、EL SUR RECORDS所属。SOMETHING ABOUT代表。
https://compuma.blogspot.jp/

Chart by Underground Gallery 2012.04.27 - ele-king

Shop Chart


1

Onomono

Onomono Onomono_ep_0506 (onomono.jp /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
過去2作品は、予約のみで完売してしまい、市場には殆ど出回らず、一部オークションでは既にプレミアさえ付き始めている、某有名トラックメイカーの変名テクノ・プロジェクト"onomono"待望の第三弾が遂にリリース!ALVA NOTOのような高周波が響くマイクロ・ミニマルを思わせるイントロから、一気に捻れたアシッド・シンセが走りだし、気がつけば"onomono"ワールドへ誘われているA面の「onomono_05」、ヘビーウェイトなイーブンキックに、金属的な響きを効かせたノイジーウワ音が巧みな変化を繰り返しながらドープに展開していくB面「onomono_06」の2トラックを収録。手も足も出ない完璧なミニマル・テクノ!今回も凄まじいです...。

2

MM/KM aka Mix Mup/Kassem Mosse

MM/KM aka Mix Mup/Kassem Mosse 6 Track Mini LP (The Trilogy Tapes/lp) / »COMMENT GET MUSIC
リリース前から、一部、耳の早いコアなファンの間で話題を集めていた注目ユニットのデビュー・ミニ・アルバムが、超少量入荷! UKのカセット・レーベル[The Trilogy Tapes]が贈るヴァイナル作品第三弾は、[Mikrodisko]などからリリース経歴を持つMIX MUPと、ベルリンの奇才KASSEM MOSSEによるユニットMM/KMのデビュー・ミニ・アルバム!ダブステップ /ベース・ミュージック、テクノ、ディープ・ハウスなど、全ての要素が混在する、実験的なアンダーグラウンドなディープ・トラック集!既に本国UKをはじめ、ヨーロッパでは入手困難な状況になっている、稀少な作品です。

3

Vinalog

Vinalog Lost Patterns (Relative /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
未だ、はっきりとした詳細がつかめない独[LiveJam Records]関連ですが、傘下レーベルの中でも一際個性を放っている、UGヘビープッシュのロウ・ハウス・レーベル[Relative]の新作は、レーベルの中心人物JOHN SWINGのプロジェクトVINALOGのNew12インチ! やっぱりVINALOGカッコイイです!別格ですね!ねっちょりとしつこいくらいにループされる、もっさりしたディスコ・グルーヴで、じわりじわりとハメ込んで行く、スモーキーなロウ・ハウスを展開したA1、ストレートなTR-909グルーヴにネジ曲がったベース・ラインとサイケデリックなウワ音でロックするA2、ジャズ・ピアノ・サンプルがループするB2など、かなり癖の強いハウス・作品が4トラック収録。今回も限定盤です。再入荷が難しいレーベルですので、気になる方はお早めに

4

Infiniti aka Juan Atkins

Infiniti aka Juan Atkins The Remixes - Part 1 (Tresor /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
TV VICTOR / THOMAS FEHLMANNリミックス! 90年代初頭から、常に最前線を走る、老舗中の老舗レーベル、ベルリンの 名門[Tresor]、記念すべき250番(凄い!)を記念した、スペシャル企画は、デトロイト・テクノのオリジネーター、JUAN ATKINSがINFINITI名義にてリリースした過去作品のりミックス! 第一弾となる今作は、98年に[Tresor]からリリースされたアルバム『Skynet』に収録されていた楽曲「Walking On Water」と「2Thought Process」の2曲を、クラウトロック・バンドNO ZEN ORCHESTRAとして活動してた事でも知られる、ジャーマン・テクノ / エレクトリック・ミュージック界の大ベテラン、UDO HEITFELD aka TV VICTORと、3MB名義でJUANとのコラボも行った事がある大御所THOMAS FEHLMANNがリミックス!

5

BMG & Derek Plaslaiko

BMG & Derek Plaslaiko Is Your Mother Home? (Interdimensional Transmissions /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
90年代から活動するデトロイトのカルト・エレクトロ・ユニットECTOMORPHが主催する、[Interdimensional Transmissions]の新作は、そのECTOMORPHのメンバーでもあるBMGと、デトロイトのローカルDJ DEREK PLASLAIKOとのコラボレーション。 ここ最近は、エレクトロから路線変更して、面白いリリースが増えてきていた[Interdimensional Transmissions]レーベルですが、今回も是非注目して頂きたい、オールド・スクーリーなテクノ・トラックを披露しています。ローランドの各種リズムマシーンのむき出しのビートを軸に、繊細な電子音が絡んだミニマル・テクノ集!ドイツのTOBIAS.辺りのアナログ・テクノが好きな方なら間違いありませんよ!

6

Tom Trago

Tom Trago Use Me Again (Rush Hour /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースのディスコ・キラーをCARL CRAIGが再構築!CARL CRAIG本人が以前からプレイしていた、あのヴァージョンが待望の12インチ・カット! ここ数年、[Rush Hour]がフックアップしているアムスの新世代アーティストTOM TRAGOが、2010年にリリースした12インチ「Voyage Direct - Live Takes」に収録され、CARL CRAIG本人も以前からプレイしていた、ブラックディスコ/ビートダウン・チューン「Use Me Again」が、そのCARL CRAIGの手により再構築されて12インチ化! リリース当時から現在まで、CARL CRAIGやRADIOSLAVEなどが、ことあるごとにプレイし続けているディスコ・ハウス「Use Me Again」、スリリングなストリングスとアップリフティングなディスコ・グルーヴが超アガるキラー・チューン。この曲をCARL CRAIGが、強烈なエフェクトを効かせ、空間をねじ曲げた、ドラッギーなディスコ・ハウスへリエディット!マジで最高ですよ!

7

Idjut Boys

Idjut Boys One For Kenny (Smalltown Supersound /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
LINDSTROM、MUNGOLIAN JETSET、TODD TERJEなど、重要アーティスト達がリリースしてきた、名門[Smalltown Supersound]の新作は、遂に満を持して大御所IDJUT BOYSが登場! 昨年日本で先行リリースされ話題となった、IDJUT BOYSキャリア初のオリジナル・アルバム「Cellar Door」より、昨年惜しくも他界してしまった、UKのKENNY HAWKESに捧げた楽曲「One For Kenny」が待望の12インチ化。ビートダウン風のブギー・ダブ・ディスコ・グルーブに、盟友 PETE Zによる、サイケ & ダヴィーなシンセ、BUGGE WESSELOFTによる可憐な鍵盤が絡みあう、めちゃくちゃカッコ良い、ミッド・ディスコ・チューン!アルバムの中でも一際人気の高い1曲だっただけに今回のアナログ・カットが嬉しいという方も多くいることでしょー。しかも 45回転、重量盤プレスで音も良し。DJのみならずとも、コレは要チェックです!全世界500枚限定!

8

Pepe Bradock

Pepe Bradock Imbroglios 1/4 (Atavisme /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
フランスを代表するアーティスト、ビートダウンを基調にしながらも、規格を超えたオリジナルなハウス・サウンドで大きな支持を得ているPEPE BRADOCK が、前作 「Path Of Most Resistance」以来、約3年ぶりとなる新作をリリース!今後、パート4までリリースが予定されている「Imbroglios」シリーズの第一弾。ビートダウン的なムードを持ちつつも、より実験的でアバンギャルドな雰囲気があって、奇才ならではのディープ・ハウス作品が4曲収録。ジャジーなサンプルを巧みに操った「Katoucha?」がイチオシですが、全曲濃いですよ!流石PEPE BRADOCK!

9

V.A

V.A I'M Starting To Feel Okay Vol. 5 Pt. 1 (Endless Flight /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
東京[Mule Muziq]のサブレーべル [Endless Flight]から、毎年恒例となっているレーベル・コンピレーション・シリーズ「I'm Starting To Feel Okay」第5弾からの12インチ・カット! ここで特筆すべきは、文句なしにMOVE D!リバース・フレーズを巧みに交えた、ミニマル・ディスコ作品で、テンションやグルーヴ、展開や鳴り、全てが完璧!この作品だけの為に買っても損はありませんよ!保証します!その他にもアムステルダムのニュースターJUJU & JORDASHによる、マッド&ピプノなアシッド・テクノや、TERRE THAEMLITZ aka DJ SPRINKLESによる淡い色彩感覚とライトなグルーヴが素晴らしいフローティング・ハウスが収録されていて、全曲◎な内容!これはお見逃しなく!オススメです。

10

Madteo / Shake Shakir

Madteo / Shake Shakir Kassem Mosse / Marcellus Pittman Rmx (Meakusma /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
ANTHONY "Shake" SHAKIR / KASSEM MOSSE / MARCELLUS PITTMANリミックス! 先日JOY ORBISONが新レーベルからリリースされたばかりの最新作「Bugler Gold Pt.1」が、UKを皮切りに欧州で大きな話題を集めている、N.Yはブルックリンの奇才MADTEOの楽曲を、デトロイトの大ベテランTHONY "Shake" SHAKIR、[Workshop]からのリリースでお馴染みのベルリナーKASSEM MOSSE、そして、THEO PARRISHやMOODYMANNと共に、3CHAIRSのメンバーとしてもお馴染みのMARCELLUS PITTMANがリミックス!

Grouper、青葉市子、ILLUHA、en、YusukeDate - ele-king

 午後5時半、曇の日の弱い光が臨済宗のお寺の本堂の障子越しからぼやっとはいってくる。畳の上の黒い影になった100人ほどの人たちは、本陣をぐるりと囲んでいる。竜が描かれている天井の隅にある弱い電灯が照らされているアメリカのポートランドからやって来た女性は、980円ほどで売られているようなカセットテレコが数台突っ込まれたアナログ・ミキサーのフェーダーを操作しながら、膝に抱えたギターを鳴らし、歌っている。時折彼女は、テレコのなかのカセットテープを入れ替える。そのときの「がちゃ」という音は、彼女の演奏する音楽よりも音量が大きいかもしれない。本陣の左右、ミキサーの前にふたつ、そして本堂のいちばん隅の左右にもスピーカーがある。その素晴らしく高性能なPAから流れるのは控えめだが耳と精神をを虜にする音......この風景の脈絡のなさは禅的とも言えるだろう。が、たしか我々は、その日の昼の1時からはじまったライヴにおいて、ある種の問答のなかにいた。我々はなぜ音楽を聴くのだろうか......そして、ここには禅的な答えがある。聴きたいから聴くのだ。聴いたら救われるとか、気持ちよくなるとか、自己肯定できるとか、自己啓発とか、頭良くなるとか、嬉しくなるとか、とにかくそうした期待があって聴くのではない。ただ聴きたいからただ聴く。そう、只管打坐である。

 禅宗は、欧米のオルタナティヴな文化においてつねに大きな影響のひとつとしてある。ヒッピー、フルクサス、ミニマル・ミュージック、あるいはレナード・コーエン......僕が好きな禅僧は一休宗純だ。戒律をやぶりまくり、生涯セックスし続けた風狂なる精神は、日本におけるアナキストの姿だと思っている。まあ、それはともかく、僕は会場である養源寺に到着するまでずいぶんと迷った。1時間もあれば着くだろうと高をくくって家を11時半に出たのだけれど、会場は商業音楽施設ではない。結局、こういときはiphoneなどのようなインチキな道具は役に立たず、八百屋の人やお店の人に尋ねるのがいちばん正確に場所に着ける。ふたり、3人と訊いて、ようやく僕は辿り着けた。
 谷中、そして団子坂を往復しながら、着いたのはYusukeDateのライヴの途中だった。1時を少し過ぎたばかりだと言うのに、本堂の1/3は人で埋まっていた。
 YusukeDateの弾き語りは、アンビエント・フォークと呼ぶに相応しいものだった。アンビエント・フォーク? 安易な言葉に思われるかもしれないが、歌は意味を捨て音となり、ギターは伴奏ではなく音となる。それは、ここ数年のフォークの新しい感性に思える。僕は畳に座りながら、少しずつその場のアトモスフィアにチューニングして、そして次のenのライヴのときにはほぼ完璧にチューニングできた。〈ルート・ストラタ〉を拠点にするふたりのアメリカ人によるこのプロジェクトは、ひとりが日本語が堪能で、日本語の軽い挨拶からはじまった。
 enのひとりは日本の琴の前に座り、もうひとりは経机の上のミキサーの前に座っている。いくつかのギターのエフェクター、そしてミキサーの上には数台のカセットテレコが見える。琴の音が響くなか、無調の音響が広がる。畳の上には子連れの姿も見え、子供はすやすやと眠っている。曲の後半では、カセットテレコを揺さぶり、音の揺れを創出する(なるほど、だ)。また、カセットテレコについたピッチコントロールを動かしながら、変化を与え、曲のクライマックスへと展開する。

 セットチェンジのあいだ、僕は本堂の下の階で飲み物を売っている金太郎姿の青年からビールを買って、次に備える。1杯300円のビールは良心的な価格......なんてものではない。この日のコンサートへの愛、音楽集会への愛を感じる。

 次に出てきたILLUHAは、今回の主宰者というかキューレター的な役目の、伊達伯欣とコーリー・フラーのふたりによるユニットで、すでにアルバムを出している。伊達は、古い、捨てられていたという足踏みオルガンの前に座って、フラーはギターを抱えながら、ミキサーの前に鎮座する。ミュージック・コクレートすなわち具体音──このときはドアがきしむ音だったが──が静寂のなかを流れると、ILLUHAのライヴはゆっくりをはじまる。オルガンの音が重なり、やがて、完璧なドローンへと展開する。
 enとも似ているが、具体音を活かしたパフォーマンスは彼らのそのときの面白さで、そしてメロウなギターの残響音そしてハウリングは、ドローンはラ・モンテ・ヤング的な瞑想状態を今日的な電子のさざ波、グラハム・ランブキンらの漂流のなかへとつないでいる。
 enのライヴにも感じたことだが、ひと昔前(IDMから発展した頃)のドローンは、猫背の男がノートパソコンを睨めているような、お決まりのパターンだった。が、この日はenもILLUHAもアナログ・ミキサーを使い、そして、パソコンもどこかで使っていたのかしれないが、ついついiPadを表に出してしまうような味気ないものとは違っていた。デジタルやソフトウェアに頼らず、そしてアイデアでもって演奏する姿は、これからのアンビエント/ドローンにおいてひとつの基準になるかもしれない。
 また、こうした「静けさ」を主張する音楽において、ほとんど満員と言えるほどの若いリスナーが集まったことは注目に値する。「ライヴ中に寝てしまったよ」とは通常のライヴにおけるけなし言葉だが、この日のライヴにおいては「眠たくなる」ことは賞賛の言葉だった。本堂という木の建造物における音の響き、畳の上での音楽体験という環境や条件も、この新しいアンビエントの魅力を浮彫にしていた。

 青葉市子は、その評判が納得できる演奏、そして佇まいだった。本堂の障子の外から子供の泣き声が聞こえると、彼女はその"音"を聞き逃さず、「あ、泣いている」と言う。その瞬間、我々は、そこでジョン・ケージのその場で聞こえる音も音楽であるというコンセプトを思い出す。彼女は、オーソドックスなフォーク・スタイルだが、しかし、彼女の素晴らしいフィンガー・ピッキングによる音色は、音としての豊かさを思わせる。曲が終わるごとに、まだ20歳そこそこの若い彼女は、「足を伸ばしたり、リラックスして聴いてくださいね」とか「空気入れ替えませんか」とか、気遣いを見せながら、「こういう手作りのコンサートでいいですね」と素朴な感想を言った。その通りだと僕も思った。

 リズ・ハリス(グルーパー)は、大前机の上の、でっかいアナログ・ミキサーの前にテレキャスターを持って胡床に座った。黒いパーカー、黒いジーンズ、そして足下にはペダル、エフェクター(ボーズのディレイ、オーヴァードライヴなど)がある。それまで出演してきた誰とも違って、何の挨拶もなく、何台かのテレコに何本かのカセットテープを入れ、それぞれ音を出す。リハーサルかと思いきや、音は終わらず、そのまま、いつの間にか、彼女の曇りガラスのような独特の音響が本堂のなかを包み込む。前触れもなく、それははじまっていた。
 マニュピレートされたテープ音楽が流れるなか、彼女はギターを弾いて、音をサンプリング・ループさせ、歌とも言えない歌を重ねる。ギターの残響音をループさせると、彼女はギターを置いて、そしてテープを入れ替え、ミキシングに集中する。いつからはじまり、そしていつ終わったのかわからないようにリズ・ハリスは音量をゆっくり下げる......。しばし沈黙。マイクに近づき、たったひと言「サンクス」(それがこの日、公に彼女が話した唯一の言葉だった)......大きな拍手。

 この日のライヴは、この賑やかな東京においては、本当に小さなものなのだろう。ハイプとは1万光年離れたささやかな音楽会だ。が、このささやかさには、滅多お目にかかれない豊かな静穏があった。そして、いま、音楽シーンにもっとも求めらていることが凝縮されていたように思えた。300円のビール、美味しい!
 この日は、2000円で、お客さんをふくめ誰でも参加自由な打ち上げもあった。青葉市子さんは、自ら率先して、料理を運んでいた(若いのにしっかりした方だ)。こうした音楽集会のあり方は、最初期のクラブ/レイヴ・カルチャーを思わせる。
 なお、グルーパーは、日本横断中。名古屋~京都~金沢、そして都内では4/30に原宿の〈VACANT〉でもある。その日は、CuusheやSapphire Slowsも出演。たぶん、まだ間に合うよ。
 最後に、蛇足ながら、ライヴが終了後、リズ・ハリスに30分ほど取材することができました。結果は、次号の紙ele-kingで。

ele-king presents Mark McGuire Japan Tour 2012 !! - ele-king

 「すべてを聴き逃さないようにヘッドフォンで聴いてください」とは『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』に記されていた言葉だが、ライヴにおいてすべてを聴き逃さないために、マーク・マッガイアはどのような演奏をやってみせてくれるだろうか。ele-king読者諸氏にはおなじみ、クリーヴランドの電子音響トリオ、エメラルズのギタリストであるマーク・マグワイヤが来日する。
 先日もインナー・チューブ名義によるサーフ調のクラウトロック、『インナー・チューブ』も記憶に新しい......(てか、BIG LOVEとMEDITATIONにしか入荷してなかったんじゃない?)が、ソロ名義では昨年は「入門編」と銘打たれた『ア・ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・マーク・マッガイア』や何枚リリースしようがみずみずしい香気あふれる『ゲット・ロスト』がシーンにあたえたインパクトも大きく、日本での注目度もきわめて高くなった。インディ・シーンにおいてはリスナーからもプレイヤーからもその動向が緊張感をもって意識される存在である。
 寝ても覚めてもギターを抱え、カセットに7"にCD-Rとメディアを選ばず大量の音源をリリースしつづけるこの熱情的なアーティストの演奏をぜひとも体験したい。
 東京公演はミックスCD『サムシング・イン・ジ・エア』が話題を呼びまくっているコンピューマのDJも楽しめる。

東京公演
2012年5月9日(水) 代官山UNIT 03-5459-8630
OPEN : 18:30
START : 19:30
CHARGE : ADV 3,500yen (ドリンク代別)
GUEST : Shinji Masuko (DMBQ / Boredoms) and more
※お客様に心地よい空間でライヴを楽しんでいただくよう
チケットは400枚限定とさせていただきます
チケットぴあ 0570-02-9999 [P] 165-735
ローソン[L] 72923
e+

STORE
[渋谷] diskunion 渋谷中古センター
[新宿] diskunion 新宿本館6F
[池袋] diskunion 池袋店
[吉祥寺] diskunion 吉祥寺店
[御茶ノ水] diskunion 御茶ノ水店


大阪公演
2012年5月10日(木) 東心斎橋CONPASS 06-6243-1666
OPEN 18:00
START 19:00
CHARGE:ADV. 3,500yen (ドリンク別)
OPENING ACT:Vampillia
ローソン[L] 72923
e+
More Info: CONPASS https://conpass.jp/

主催: ele-king 企画 / 制作 : root & branch, 代官山UNIT
協力: Inpartmaint inc., P-Vine Records

Chart by JET SET 2012.04.24 - ele-king

Shop Chart


1

Ogre You Asshole

Ogre You Asshole Dope (Vap / Jet Set) »COMMENT GET MUSIC
2011年にリリースされたアルバム『Homely』には未収録となる、セルフ・カヴァーやリミックス、話題のライヴ・テイクを収録。

2

Tam Tam

Tam Tam Dry Ride (Mao / Jet Set) »COMMENT GET MUSIC
あらかじめ決められた恋人たちへ等が在籍したレーベル、maoが全力で送り出す4人組ヤング・ダブ・バンド。フィッシュマンズ、Little Tempoの活動で知られるHakase-Sunがプロデュースを手掛けた、ファースト・12インチが登場です!!

3

The Eskargot Miles

The Eskargot Miles Evening News / A Night Piece (Wood Luck / Jet Set) »COMMENT GET MUSIC
活動10周年を迎えたオーセンティック・スカ・バンド、The Eskargot Miles。前作『Tour Of Jamaica』超え確実(!?)の強力Ep!新境地ともいえるb面収録のレイドバック・チューン、"A Night Piece"も完璧です!

4

Tom Trago

Tom Trago Use Me Again (Rush Hour Voyage Direct) »COMMENT GET MUSIC
Awanto 3とのユニットAlfabetも絶好調のダッチ・ハウス気鋭Tom Tragoが2010年にリリースした、"Voyage Direct"シリーズ屈指の名作「Use Me Again」のニュー・ミックス2種をカップリング。

5

Eric D. & Justin V.

Eric D. & Justin V. Live In Los Angeles (Ene) »COMMENT GET MUSIC
Eric Duncanが主宰する大人気エディット・レーベル、KeepIt Cheapの第四弾としてリリースされた12インチ「So Good Feeling / Versions」のリリース・パーティーからの一コマをCDカット!自身のキラー・トラックや未発表エディッツなどを次々に繰りだし、絶妙なミキシング/エフェクトに飛ばされること必至の77分を越えるミックスを収録。現場のグッド・ヴァイヴスまでもがダイレクトに伝わってくるかのような珠玉の1枚です。

6

DJ Harvey

DJ Harvey Xland Records Presents Xmix 01 (Xland) »COMMENT GET MUSIC
大好評のLocussolusプロジェクトを経てのリリースとなる本作は、間違いなく今後のダンス・ミュージック史において語り継がれるであろう傑作ミックスを収録。

7

Calm Presents K.F.

Calm Presents K.F. From Dusk Till Dawn (Music Conception) »COMMENT GET MUSIC
Calmがダンス・ミュージックへアプローチしたプロジェクト、Calm Presents K.F.が7年ぶりとなるアルバムをリリース。

8

Battles

Battles Dross Glop 4 (Warp) »COMMENT GET MUSIC
Hyperdub主宰Kode 9リミックス搭載の第2弾も即完売、ご存じポスト・ポスト・ロック大人気ユニットBattles『Gloss Drop』の超限定リミキシーズの第4弾が登場です!!

9

DJ Food

DJ Food Illectrik Hoax (Ninja Tune) »COMMENT GET MUSIC
アンセム"Papua New Guinea"でお馴染みの重鎮デュオFuture Sound Of Londonの変名プロジェクトThe Amorphous Androgynousによるリミックスとコラボ・ワークスです!!

10

Teddiedrum

Teddiedrum Miami / Odd Lovers (Smoking Crab) »COMMENT GET MUSIC
Das Pop + Phoenixなベルジャン・デュオ、Teddiedrumの限定10インチ!!キラキラとまぶしいシンセと甘酸っぱいメロディが乱反射する超キラー「Odd Lovers」を絶対お見逃しなく。

KABUTO (LAIR/FACTOR) - ele-king

LAIR CHART


1
Amir Alexander - Violence - Vanguard Sound

2
Gemini - Revolution EP - NRK

3
BAAZ - Carbon Hair - Slices Of Life

4
Omar-S / Patrik Sjeren - 998 - FXHE

5
Da Sampla - M3 Sessions - M3

6
Pierre LX - Hypothesis (Big Strick Remix) - Initial Cuts

7
Ryan Elliott - Kicking Up - Spectral

8
FRANCO CINELLI - LATIN MORPH - Ilian Tape

9
Two armadillos - Golden age thinking Part 1 - Two armadillos

10
Ricardo Miranda - Round Plastic Archives - Bosconi

Mirrorring - ele-king

 フォークというのは、大ざっぱに言って、情緒的なところに訴えるもっともポピュラーな娯楽音楽のスタイルで、いかなる音をどのように、そしていかなる音楽的主題を追求するのかという音の創作物とは別物だ。それがどんな音楽なのかということ(どんな音色で、どんな音の強度で、どんなパラメーターによるもので......エトセトラ)よりも、どんな意味なのか(何を歌い、どんな言葉を綴っているのか......)ということのほうがが問われ、重視される。そもそも歌というコンセプトが人間にとって、あるいは社会にとっての順応性の高さゆに永遠と言えよう。
 そうした歌の文化に対して、たとえばマウス・オン・マーズ、ザ・ホスト、あるいはコーヘイ・マツナガの音楽には同じような観点での意味があるのだろうか? "アシッド・トラックス"に意味がないように、エメラルズやザ・ホストやコーヘイ・マツナガの音楽にも意味がない。あるのはただ、聴いているさなかに喚起される何か、ある種のムードやアトモスフィア、夢想、さもければ催眠、ふぬけるか、飛ばされるか......だ。
 歌とアコースティック・ギターも使いようによってはこの路線にアプローチできる。たとえばフリー・フォークにはそういう側面があったし、今日のインディ・シーンにおいては、フォーク的なるものとアンビエント的なるものはときに交錯している。そうなったときにフォークは、「平均的な人たち、誰からも愛されたい」というローブローな態度を意識的に放棄する、良くも悪くも。

 ミラーリング......は、リズ・ハリスとジェシー・フォーチノというふたりの女性によるプロジェクトで、これが最初の作品、アルバムだ。
 リズ・ハリスは、いまさら言うまでもなく、グルーパー名義で、何枚もの素晴らしいアルバムを出している。日本でも根強い人気を持っているオレゴン州ポートランドを拠点とする女性アーティストだ。彼女はエレキギターを弾きながら、機材を駆使しながら抽象的な音響のレイヤーを加工して、重ね、ある種のアンビエントめいたサウンドスケープを創出しながら、ときに歌っている。フォークという娯楽型と、催眠的で意味を持たない電子音楽とをまたいでいると言えるが、彼女の作品はアシッド・フォークと呼ばれるスタイルよりは圧倒的にドローンに近い。
 もうひとりのジェシー・フォーチノは、そういう意味ではばりばりのフォーク歌手だ。〈サブ・ポップ〉からタイニー・ヴァイパース名義で2枚の素晴らしいアルバムを出しているが、言うなれば、彼女はヴァシュティ・バニヤン・リヴァイヴァルのひとりである。ミラーリングはこうしたふたりの興味深い組み合わせで、アルバム『異物(Foreign Body)』は、疑う余地のないほど魅力的な作品となっている。彼女たちふたりの方向性は共有され、個性はうまい具合に混合されている。どちらかが欠けてもこの素晴らしいアルバムは生まれなかったのである。
 ジェシーはその声とアコースティック・ギターの音色で、リズのぼやけたアンビエントの世界に踏み入れ、彼女の徹頭徹尾どよーんとした世界に"歌"を届けている。"水浸しの声(Drowning The Call)"はふたりの混合の素晴らしい瞬間のひとつだ。グルーパーの温かみのある抽象的な広がりのなかを彼女たちの綺麗なハミングが流れ、あるいはときおり生ギターの弦がはじかれ、平穏のなかに響いている。"上からの無音(Silent From Above)"のような、愛想の良いフォーク・ソングももちろん悪くはないのだが、クライマックスはコクトー・ツインズをジ・オーブがリミックスしたような9分近くもある"私のもの(Mine)"という曲だ。この曲はぜひ、竹内正太郎のような歌詞マニア、そして1990年代生まれのリスナーにも聴いて欲しい。
 クローザーの"私たちの眠る鏡(Mirror of Our Sleeping)"という曲を聴いていると、本当に眠たくなる。が、この新しい発見がちょっと嬉しいので、すぐに目が覚めてる。ジュリアナ・バーウィックとも、そしてジュリア・ホルターとも何か別の風景が目の前に広がっている。ミラーリングはこの先も続けるべきだ。

interview with Eli Walks - ele-king


eli walks
parallel

MOTION±

Review Amazon iTunes

 ここ1~2年は、なんだろうか......、日本の若い世代からエレクトロニック・ミュージックの作品が出てきている......いや、ずっと出てきているのに僕が気がついていなかっただけなのだろうけれど、とにかく顕在化しているのはたしか。15年ぶりだ。作っている人はいまこの波に乗ろう。フラグメントの初めてのインスト・アルバムとほぼ同時期にリリースされたイーライ・ウォークスのデビュー・アルバム『パラレル』もこの機運を印象づけている。
 アメリカ人の父親と日本人の母親のあいだに育ったイーライ・ウォークスは......、なかなか気持ちの良さそうな青年で、そのドリーミーな佇まいは彼の音楽にも繋がっているようだ。イーライ・ウォークスは、『アンビエント・ワークス』時代のエイフェックス・ツイン、『ジオガディ』の頃のボーズ・オブ・カナダ......そしてゼロ年代の〈ブレインフィーダー〉の申し子だ。ビートの太さと遊び心あるチョップからは「フライング・ロータス以降」を感じさせ、ロマンティックなハーモニーや美しい音色、そして風景がゆっくり変化していくような展開からはボーズ・オブ・カナダを彷彿させる。とはいえ、当然のことながら、彼の音楽は、ラスティなんかとも似た、モダンな質感を持っている。音色的にも、そして伸びと伸びとしているところとか。

沖縄にいたころは父親が米軍基地で働いていて、基地の外で日本人が「出てけ」って運動してたりするのを目の当たりにしてた。母親は日本人だから、僕はほんとにどうしたらいいんだろうって考えざるをえなくて......。

『パラレル』に関していろんな説明がありますよね、IDMとかエレクトロニカとか......三田格は「フライング・ロータス以降」と解釈してましたけれど、ご自身としてはどのように思われてますか?

EW:たしかに自分としてはいろんなところからインスピレーションを受けていると思っているよ。たとえばむかしはメタルをやってたり、ギターを弾いてたりしたしね。けれど直接的な影響といえばやっぱりIDMは自分のルーツだと言えるかな。もちろんフライング・ロータスが出た〈ロウ・エンド・セオリー〉もよく通ったし。

フライング・ロータスとエイフェックス・ツインというふたつの選択があって強いてひとつを選ぶとしたら、エイフェックス・ツイン?

EW:イエス! その通りだね。

まずは、あなた自身が音楽制作に向かうことになった経緯をおききしたいんですが。

EW:いい質問だよね! 昔はロック・ミュージックをプロデュースしてたんだけど、そこでは少しエレクトロニックな音のエフェクトが欲しいってなったときに、制作の過程の最後で僕とは違う人間を入れてやらなきゃいけなかったりしたんだ。けれどその違う人の味が自分の音に乗っかって、自分の音を変えていってしまうことがすごくいやだった。曲はすべて自分でコントロールしたい。だからすぐにコンピュータを買って、自分で音楽をつくりはじめたね。たまたまそのとき僕のまわりではエレクトロニック・ミュージックを聴いている人が多かったから、CDをもらったり借りたりできたし。

それは何年くらいの話ですか?

EW:18歳くらいかな。

聴いたところによると、あなたは幼少期からご両親のお仕事の関係で住居を転々とされていたということですが、そうしたあなたの生い立ちとエレクロニック・ミュージックに惹かれたということとはなにか関係があると思いますか?

EW:転々としてるからこそ、いろんなところでいろんな音楽を吸収できたりもしたね。僕自身小さいころから音楽が大好きだったっていうこともあるんだけど、その環境のおかげで音楽に対してすごくオープンになったかな。いろんなものを経験して音楽への愛は大きくなったんだけど、直接的にエレクトロニック・ミュージックの影響を受けたのは東京に来たときのことだったと思う。16歳くらいのときかな。

へえ? 東京ではどんなふうにそういう音楽と出会ったの?

EW:16歳くらいのころからほんとよくクラブで遊んでて、そこでエレクトロニック・ミュージックを聴いたりしてた。アメリカから姉が帰ってきたときに、ボーズ・オブ・カナダとオウテカのCDをくれてすごく影響を受けたり、もうひとりの姉はそのころトリップ・ホップにハマってたりして、たまたま東京にいたときにすごくエレクトロニック・ミュージックを聴く環境が整ってたんだよ。

それはなんだろう、東京という街にそういう音があったってことなんでしょうかね。それともそういう音楽そのものがあなたに強い影響を与えたということなんでしょうか。

EW:そうだな......やっぱりクラブってものの影響が大きかったかもしれない。最初に行ったときは自分がそういう音楽を受け入れてたかどうかわからない。クラブは最初は楽しさがわからなかったけど、通ってまわりを観察してるうちに、「みんなこんなに楽しんでるんだな」って、エレクトロニック・ミュージックの影響の大きさを感じたかな。あと、マッシヴ・アタックも大きいよ。彼らはロックとエレクトロニックとを混ぜた。当時は彼ら以外の人たちもそういうことをやりはじめた時期だったけど、マッシヴ・アタックに出会ったことで、それまでわからなかったものの扉を開くことができたんだ。

ちょうど『メザニーン』のころですね。

EW:イエス。『メザニーン』!......イエス!

そうか、イーライ・ウォークスの音楽を聴いたときに、僕はボーズ・オブ・カナダが好きっていうのはよくわかるんですよね。だけどクラブってちょっと意外で、ダンスというよりはアトモスフィアやムード、アンビエントみたいなものを伝えたいのかなって思っていたので。

EW:当時クラブで流れてたのはプロディジーだったりケミカル・ブラザーズだったりしたけど、そこから入ってどんどん音のエフェクトとかテクスチャーとかに興味を持ちはじめたんだ。たぶん最初にボーズ・オブ・カナダを聴いたときには自分でもまだ難しかったんだと思うけど、だんだんとハマっていって、細かいところや具体的な部分が見えてきたんだ。

話は戻るんですけど、日本に来る前はどんなところをめぐってきたのか、ざっくりと教えてほしいんですが。

EW:カリフォルニアに生まれて、6~7歳くらいは沖縄。で、ノース・カロライナ、沖縄、東京、カリフォルニア、東京......

(笑)じゃ、日本とアメリカの各都市をいったりきたりしてたんですね。

EW:ははは、そうなんだ。だから日本語も英語もあまりうまくない(笑)。

(笑)自分のアイデンティティって考えたことはありますか?

EW:そうだな、むかしから転々としてたから、仲良くなったグループともすぐお別れしなきゃならない。そんななかで自分を見つめ直したりしながら、アイデンティティについて考えることは多々あったね。

ご両親を恨んだりはしませんでしたか(笑)?

EW:ははっ、すごくサポーティヴな両親だったから恨むってことはなかったけど、中学のときにせっかく仲良くなった友だちと別れることになったときは、さすがに言葉で責めたりはしたね。ノース・カロライナのときだった。けど、心では恨んだりしたことないな。

なるほど。それだけ行ったり来ているしてると、どっちにいるかわからなくなったりしませんか(笑)。アメリカにいるのに日本にいるときのようにふるまって失敗するとか。東京と沖縄でもすごく差があるのに、まして日本とアメリカなんて文化土壌がぜんぜんちがうわけじゃないですか。

EW:たしかにね。しょっちゅうそう思うよ。アメリカでは、ごく親切でしてるだけのつもりなのに「この人ほんとに静かだな」って思われてたりね。たとえば日本ではみんな電車でも静かに乗ってお互いを尊重しあってるけど、アメリカでは突然知らない人が話しかけてきたりする。ほんとにちがってて混乱することがあるよ。

カート・ヴォネガット(Jr.)は知ってる?

EW:いや、聞いたことはあるけど......

スローターハウス5』って小説を思い出しました。主人公が訳もわからずにタイム・ワープしていくんですけど、宇宙人に囚われたかと思えば、いきなり第二次世界大戦下のドレスデンでナチスの攻撃を受けてるっていう話でね(笑)。

EW:ワオ! はははは。

自分にいちばんしっくりくる街っていうのはあったりするんですか?

EW:うん、やっぱりそれが理由で東京に戻ってきたっていうこともあって、東京がいちばんだなっていまは思ってる。ただ、ほんとそのときそのときの自分の年齢にもよるかな。沖縄にいたころはまだほかの世界があるってことを知らなかったから、沖縄がいちばんだって思ってたこともあった。けどいまいろんな場所を経験したあとで、東京がいちばんしっくりくるって感じるよ。

ロスには3年でしたっけ?

EW:5年かな。

ロサンジェルスって、ここ10年、いろんな話をきいていると、文化的にすごく盛り上がっているといいますよね。〈ロウ・エンド・セオリー〉しかり、インディ・ロック・シーンみたいなものも含めてなんですが、あなたのその5年間にロサンジェルスから受けた影響について教えてください。

EW:すごくいろいろな影響を受けているよ。ロサンジェルスに行く前は、エレクトロニック・ミュージックといってもすごく実験的なものしかやっていなくって、もう、人には理解してもらわなくったっていいっていうような音作りしかしていなかった。けど〈ロウ・エンド・セオリー〉に行って、エレクトロニック・ミュージックでみんなこんなにもパーティしてるんだってことを知って衝撃的だったんだ。僕の行ってた音楽学校では、自分と同じような境遇の人がいっぱいいて......つまりいろんな国から生徒が集まって実験的な音楽を追究している子たちも多かったなかで、〈ロウ・エンド・セオリー〉の影響はとくに大きかったね。 

それは、なんでしょう、東京にいたころはよりエクスペリメンタルなことをやっていたと。それでロスに行って、もうちょっと自分の幅が広がったというようなことでしょうか。

EW:東京にいた頃はボーラみたいなよりレフトフィールドなものにハマったんだけど、そうだね、もっと、なんていうか......。

ボーラみたいなエクスペリメンタルなものにそもそもあなたがハマっていった理由というのはどういうものなんでしょう?

EW:さっきも言ったボーズ・オブ・カナダはすごく素晴らしい、自分を変えるきっかけになったような音楽なんだ。ふつうの人でもきっと聴けるサウンドなんだけど、自分では彼らの音をより深く聴いていくうちに、もっといろんなテクスチャーやビートを掘り下げて知りたいと思うようになって、それがボーラとかにつながっていったのかもしれない。どんどん好奇心が生まれてエレグラにいったりとかしたんだよ。

それが〈ロウ・エンド・セオリー〉に行ったことによって、オープン・マインドになったってことなんでしょうか?

EW:そうだね、〈ロウ・エンド・セオリー〉に行ったことは自分をひらくものだったかもしれない。あとは学校の生徒たちの存在が大きいよ。まわりの友だちがディーバの音楽をサンプリングしてチョップ・アップしてたりとか、すごくいろんなことをやっていたから、そういうものに大きく刺激を受けたと思う。

なるほど。

EW:そのときにいた環境のパッケージ、というかね。

以前フライング・ロータスにインタヴューしたときには、彼はロサンゼルスの学校時代、クラスメイトたちからはすごく変わり者として思われていたと言っていました。まわりはだいたいメイン・ストリームのヒップ・ホップを聴いているのに、自分だけはDJクラッシュとかデトロイト・テクノとかを聴いていて、そんなやつはクラスにひとりしかいなかったって言ってましたけどね(笑)。

EW:ふつうはそうなんだろうね(笑)。でも僕の行ってた学校はほんとうにエクスペリメンタルなことをみんなが追求してる集団で、いろんなことがやれたんだよ。クレイジーだったね(笑)。

〈ロウ・エンド・セオリー〉って、なんだか日本ではストイックで、渋いアブストラクトな印象が広まっているんですが、カセット出しているような、アンダーグラウンドなロック・シーンとも繋がっているんですよね。実験的だけど、ちょっと享楽性のあるような(笑)。

EW:うんうん。当時思ってたのは、ほんとにクリエイティヴな場所だなってことで、あれと同じようなムーヴメントはないなって思えるようなイヴェントだったね。

[[SplitPage]]

クラブは最初は楽しさがわからなかったけど、通ってまわりを観察してるうちに、みんなこんなに楽しんでるんだなって、エレクトロニック・ミュージックの影響の大きさを感じたかな。


eli walks
parallel

MOTION±

Review Amazon iTunes

どんな経緯で今回のアルバムは生まれたの?

EW:ええと......。そうだね、いろいろな要素があると思う。まず自分が聴いていいなと思ったものを、自分の手で再現していきたいと思ったこと。あと学校ではシンセを手作りしたりしてたんだけど、自作のシンセで遊んだりしてるうちに、これをきちんと音にしたいなとも感じた。それからむかしギターで書いた古い曲をエレクトロニック・ヴァージョンにしてみたいって気持ちもあった。そういうものが全部重なりあって、この作品になったと思うよ。

なるほど。あなたのなかでエレクトロニック・ミュージックの魅力とは何なんでしょう?

EW:エレクトロニック・ミュージックって、すごいいろんな色を持ったものだと思うんだ。バンドにはギターがあってベースがあってドラムがあって、そのそれぞれにエフェクトをかけたりすればいろんな音は出せると思うんだけど、エレクトロニック・ミュージックにはもっと無限の可能性があって、まるで3Dみたいに、すごく狂った体験ができると感じるんだ。

僕は今日、ええと、笑わないでほしいんだけど、ブルース・スプリングスティーンをずっと聴いてて(笑)。それで思ったんですが、アメリカのポップ・カルチャーの多くが、ヒップホップにしてもロックにしても、アメリカ社会を反映したものが作品になってると思うんですね。そういう社会との関係性ということを考えたときに、エレクトロニック・ミュージックとはどのようなものだと思いますか。

EW:いまってすごくいろいろなものが変化していて、インターネットが生まれたことで国やジャンルの境界線がなくなってきてたりするよね。そんななかでアメリカでもエレクトロニック・ミュージックのポジションが変わってきていると思う。カニエ・ウェストとかダフト・パンクとかがいろいろやったりして、エレクトロニック・ミュージックはほんとにメイン・ストリームになったなって思うよ。

それはほんとにそう思います。20年間聴いてきたんですが、90年代は、エレクトロニック・ミュージックはヨーロッパ中心のものだったし、アメリカからはあまり聴こえてこなかったですよね。それがこの10年でほんとにアメリカで広がったんだなって思います。

EW:たとえばニューヨーク出身のアーティストでも、まるでUK出身みたいなエレクトロ・サウンドのバンドがいたりするし、そのへんの境界はほんとになくなってきてると感じるよ。

それってなんなんでしょう、アメリカの古い価値観が崩れていくというようなことでもあるんでしょうか?

EW:うーん、そうだなあ......

ははは。もう、昔はね、シンセサイザーの音が入ってるってだけで、アメリカでは「オカマっぽい」って言われたりしたんですよ。

EW:ああ、うんうん。そこはすごくオープンになってきてるんじゃないかな。で、その古い価値観っていうのもすごく残ってはいると思うんだけど、アメリカってすごくメイン・ストリームに左右されるところで、メイン・ストリームがやったことがすごく強調されるんだ。カニエ・ウェストとかがやることは、メイン・ストリームに広がったりするから、たしかに(マイノリティの問題等についての)受け取り方はオープンになってきていると思うよ。ケイティ・ペリーが「I Kissed A Girl」って歌うと、アメリカ中の女の子たちに、あ、それはアリなんだって伝わっていく。メイン・ストリームを通せばそういうオープンな価値観も広がるんだ。

なるほどね。それでいま3年めでしたっけ? 東京に移ってきたわけなんですが、ぶっちゃけ、放射能とか怖くないですか?

EW:はっはっは。あんまり。

(笑)。

EW:そりゃ、現場に行けば怖いだろうなって思うよ。東京でもデリケートな人たちは「水もあぶない」って言ったりしてるけど、飲んじゃってるし。

では、アルバムのタイトルを『パラレル』にした理由はなんなんでしょうか?

EW:アルバム制作にいたるまでに、予期せぬできごとがすごくたくさんあって、いろんな人との出会いとか、このレーベルとの出会いとか、いろんな偶然もたくさんあったんだ。そしてとても立ち止まって考えていられないほど、すべてのことがシンクしてた。僕は頭の中でひとつの線を思い描いていて、ちょっと数学的なんだけど、そうやって線を描きながらものごとを考えたときに、すべてがシンクしていくことがよくわかった。だからこのアルバムは、なにか線で表現したいなって思ったんだ。それで「パラレル」って言葉を思いついたんだけど、平行って、すごくそういうイメージでしょ。

へえ、なるほど。

EW:状況が変わればアルバムの見え方も変わるとは思うんだけど、自分の人生の中にはパラレルなものが多いなって感じるんだ。日本とアメリカのふたつのものの間をいったりきたりしてるのも、パラレルのイメージだしね。

日本にいるととくになんですけど、アメリカと日本をめぐっていろいろと政治的な複雑な関係を耳にすると思います。そういうことは気になったりしますか?

EW:じつは沖縄にいたころは父親が米軍基地で働いていて、基地の外で日本人が「出てけ」って運動してたりするのを目の当たりにしてた。母親は日本人だから、僕はほんとにどうしたらいいんだろうって考えざるをえなくて......。そういう、日本とアメリカとの関係性について考えざるをえない場面っていうのは僕の人生のなかに何度もあったよ。いまはあんまり考えないようにしてるんだけどね。

それは重たい話ですね......ご自身の作品のコンセプトというか、リスナーをどうしたいとか、そういうものはありますか?

EW:とくにコンセプトといえるほどのものはないんだけど、たとえばタワレコとかに行ったときに、はじめて試聴するときのインパクト、それは与えたいなって思ってたんだ。だからこれまで書きためてた曲で好きだったものを選んで、自分でパーフェクトだって思えるまで死にものぐるいで作ったよ。あと、そうだな、最初はコンセプトと呼べるものはなかったものの、いま『パラレル』ってタイトルをつけたあとで目をつむって曲を聴いていると、ふしぎと線だったり形だったりが10曲の中でつながっていくよ。

ではこの音楽のなかで展開される叙情性みたいなものは、あなたのなかのどういうところからくるものだと思いますか?

EW:やっぱりいろんなところに引っ越しているから、友だちとの別れとか、恋愛だったりとか。あとは両親が音楽好きなんだけど、父親がすごく音楽をエモーショナルに聴く人で、レディオヘッドとか聴いててもいきなり巻き戻して「ここの部分聴いてみろ」とか言うんだ。

はははは!

EW:(笑)そんなところにすごく影響されてるかも。

あ、お父さんがレディオヘッド好きなんだ(笑)。レディオヘッドが好きなお父さんてすごいね!

EW:ははっ、父さんはすごいクールだよ!

ははは、じゃ小学校のころに『キッドA』聴かされたりしてるんだね。あの、わりと最近は都内でライヴされたりしてますよね。先日もフラグメントといっしょにやったりとか、あるいはちょっと前にコウヘイ・マツナガくん(NHK)とやったりとか、日本のトラック・メイカーと関係することがあると思うんですが、いっしょにやってみて面白いなって思った人はいますか?

EW:最近同じイヴェントに出てたジェラス・ガイっていう女の子のビート・メイカーがいるんだけど、その子のパフォーマンスがすごくよかった。

へえ、日本人なんですか?

EW:そう、〈ソナー〉にも出るっていう子なんだけど。あとはタナベ・ダイスケさんとかパフォーマンスが素晴らしいって思うし、あとはオオルタイチさんとか。みんなそれぞれ違った要素があって、共演させてもらう人たちからはいろんなことを学んでるよ。NHKはすごい観たかったんだけど、前回は時間が重なっていて、すごく残念だよ。

彼は見た目からして、危険な男ですよ。

EW:はははは!

このイーライ・ウォークスの作品が出たのと同じ時期に、僕はそういう若い日本のトラック・メイカーの作品を耳にすることがすごく多かったんです。ひょっとしたら、まあ、すごい偶然なのかもしれないけど......あなたと同じようなタイミングで、新しい世代が出てきたのかもしれないっていう印象を受けたんです。ご自身ではそういう感覚はありますか?

EW:最近はみんながコンピュータを持っている時代で、「エイブルトン」を使いこなしていたり、「ガレージバンド」でも音楽を作れてしまうから、ここ最近はすごくそういう音作りのブームっていうのが起きてると思うんだ。だからこの数年はほんとに楽しみにしてるよ。

なるほど、ありがとうございました。僕は10曲めの"ミスト"って曲がいちばん好きでした。

EW:(日本語で)ああ、ありがとうございます!

いちばん人気がある曲って何なんですかね。1曲めもすごくいいですけどね。

EW:あ、みんなけっこう"ムーヴィン"はいいって言ってくれるかも。なぜかiTunesだと"フリーフォール"。

ああ、そう。それはおもしろいね!

EW:そうなんだ......

ははは、ありがとうございました!

interview with Dirty Three - ele-king


Dirty Three
Toward the Low Sun

Drag City/Pヴァイン

Amazon iTunes

 オーストラリアのメルボルーンで1992年に結成されたインストゥルメンタル・ロック・バンド、ダーティ・スリーは、美しく、そして激しい情熱を捉える。見た目は無骨だが、ステージングは派手で、場末の古い酒場で暴れているジャズ・ロック・パンク・ブルース・バンドのように聴こえる。
 メンバーのひとり、ヴァイオリン弾きのウォレン・エリスは、現在パリで暮らし、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズのメンバーとしても活動しているが(あるいはグラインダーマンやキャット・パワー、プライマル・スクリームなどのアルバムにも参加している)、そうした連中が持っているブルース感覚と似たものをダーティ・スリーからも感じる。打ちひしがれているが、優美で、激しい。
 ドラムスのジム・ホワイトは現在ニューヨークで暮らし、長いあいだシカゴの〈ドラッグ・シティ〉(ジム・オルークなどのリリースで知られる)のスモッグのバックを務めている。ギタリストのミック・ターナーのみが、いまでも地元メルボルンに残ってソロ活動をしている。〈ドラッグ・シティ〉からは、すでに何枚ものソロ・アルバムを出しているので、ご存じの方も多いことと思われる。とにかく、3つの異なる大陸にそれぞれが暮らしながら、ダーティ・スリーはバンドとして存続しているわけだ。昨年のこの時期は、「アイル・ビー・ユア・ミラー」のために来日もしている。
 新作は7年ぶり、通算9枚目のアルバム。タイトルが言うように、音楽からは真っ赤な夕日が差し込んでくるようだ。フォーキーな響きが打ち出され、メロウで、日没の輝き、黄昏好きにはたまらない、その美学はたっぷり入っている。燃え殻のにおいが漂う......彼らが世界中で愛され続けている理由がよくわかる。取材に答えてくれたのはミック・ターナー。

僕らはどのジャンルにも属していない。僕らは『ダーティー・ハリー』のように、悲しい存在でもありながら、危険で謎、そしてエキサイティングなんだ。

7年ぶりの新作、素晴らしかったです。1曲目から飛ばされました。まずはこの7年という年月について、そして今回の録音がどのようにはじまったのか説明を願いします。

ミック:2009年にパリでデモ録りを何曲かして、2010年の頭から実際のレコーディングをはじめて、2011年のなかばには作業は終わっていたね。離れて暮らしているし、なかなか集まれないから時間がかかったんだ。僕はメルボルンだし、ウォレンはパリ、ジムはニューヨークだからね。スタジオに入るときは、本当に曲の骨格ぐらいしかなくて、スタジオに入ってから形付けていった感じだね。
 最初のセッションから帰ってきたときは、もう失敗したと思い込んでたけど、1年後に聴き返したら、意外に気に入ってね。温もりがあって、親密な音だったうえ、とても生なレコーディングだったんだ。自分たちの醍醐味であるライヴの即興の演奏力というのも捕えられたと思うし。重ねた音は少なかったし、最終的なサウンドにもとても満足しているよ。前回のアルバムから自分たちのソングライティングも成長したと思うし、いままで以上に曲に奥行が出ていると思うんだ。

そういえば昨年、「アイル・ビー・ユア・ミラー」の出演者として来日しているんですよね。僕もあの場にいたのですが、どの出演者も良すぎて、すっかり酔っぱらってしまいました。あのときのご感想を。

ミック:楽しい時間だったよ。みんな東京が大好きだし、行くときは必ず良い思い出ができるよ。

あのとき一緒に出演したゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーとダーティ・スリーは意外とファンが重なっているようですね。たしかに、ともにヴァイオリンの音色を活かしたインストゥルメンタル・バンドですが、ふたつのバンドには共通しているところがあると思いますか? 

ミック:けっこう違うと思うな。地理的にも違うところから来ているし、僕らは3人しかメンバーがいないから、より自由度もあるいっぽう、大人数のバンドの厚みとかは出せない。単純にアプローチが違うと思うんだ。彼らの音楽も好きだし、個人的にも何度も会っているし、彼らが成し遂げてきたことや、芸術に対する姿勢は尊敬しているよ。

ダーティ・スリーは1992年のメルボルンで結成され、その後、同郷のニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズへの参加、そしてメンバーそれぞれこの20年、国際的な活動を展開しいていますが、結成前のことなどいまでも覚えていますか? 

ミック:覚えているよ。メルボルンにある小さなバーの床で毎週金曜日に3時間ほど演奏していたんだ。バックグラウンド・ミュージックのはずで、何も練習せずにその場で思いついたことをやっていた。とても解放的でエキサイティングだったよ。そのときからヴァイオリン、ギターとドラムだったけど、その場にあった道具は何でも楽器にしていたよ。ほうき、バケツ、ホース、おもちゃの楽器もね。20~30分にもおよぶ、流れるような曲とかもやっていた。爆音になるものもあれば、静かな曲もね。とにかく何も考えずにやって、曲が自然と形になっていった感じだよ。終わったときにはどこにいたか忘れるくらい、没頭していたね。

初期の頃、影響を受けた音楽について話していただいていいですか?

ミック:僕とジムはいわゆるポスト・パンクなバンド、ヴェノム・P・スティンガ―で1986年からやっていたね。でもいろんな音楽に影響されたよ。個人的にはルー・リード、ヴェルヴェッツ、ジョナサン・リッチマンやラッフィング・クラウンズは大きな影響だったね。

バンド名に「ダーティ」という言葉を入れた理由は何でしょうか?

ミック:クリント・イーストウッドの『ダーティー・ハリー』から取っているんだ。僕らは自分のルールで音楽をやっていたし、どのジャンルにも属していない。独立した存在だと思っていたんだ。あの映画のキャラクター同様にね。悲しい存在でもありながら、感動を与えつつ、危険で謎で、そしてエキサイティングだ。まだ変わっていないと思うよ。

そして2曲目の"Sometime I Forget You're Gone(ときどきあなたがないことを忘れる)"や3曲目の"Moon On The Land(陸地の月)"、そして4曲目の"Rising Below(下方に上がる)"にもため息が出るような美しい旋律があります。6曲目の"Rain Song(雨の歌)"のアコースティックな響き、8曲目の"Ashen Snow(灰の雪)"のメランコリーもそうですが、アルバム全体的にも美しさ、優しさというものを感じます。

ミック:いつもそのような要素はあったと思う。スタイルを気にしたことはないんだけど、初めてアコースティック・ギターとより多くのピアノを使ったかもね。

今回の音楽的主題について教えてください。たとえば1曲目の"Furnace Skies(灼熱の空)"にはフリー・ジャズ的な衝動も感じるし、5曲目の"The Pier(埠頭)"や"That Was Was(それはそうだった)"にもブルースにも似た打ちひしがれた感情を感じます。ロックはもちろん、クラシックの要素など、いろいろ混じっていると思いますが

ミック:ウォレンが若い頃に聴いていたようなワイルドなジャズを掘り起こしていたし、不和のなかの動きを引き出そうとしていたと思う。自分はもっと疾走感のあるリズムと強いメロディを出したかった。そしてジムはドラムを感情的な表現の道具として追求していた。これらの要素がぶつかり合ったり、融合したりした結果がこのアルバムだと思う。

コンセプチュアルな作品なのでしょうか?

ミック:どうだろうね。別々の物語が一同に展開している感じかもな。

アルバムのタイトル『トゥウォード・ザ・ロウ・サン』にある"The Low Sun"とは?

ミック:サンセット(夕日)だね。

ああ、「夕日の方へ」という意味なんですね。では、最後の曲の"You Greet Her Ghost(君は彼女の亡霊を歓迎する)"も、とても複雑な思いを想起させる曲ですが......。

ミック:自分の目の前にはもういない人だけど、自分のなかにはいる人と会話をしている感じだね。

月とか雪とか空とか曲名に出てきますが、自然というのはテーマだと思いますか?

ミック:よくわからないな。単にきれいな音楽を作るだけに留まりたくないんだ。リズムを取ったり、高揚したり、涙を流したりする以上のことをしたい。聴き手が自分の魂に触れること実現させたいと思っている。

ダーティ・スリーは、社会的な音楽だと思いますか?

ミック:社会ではないね。もっと個人的、私的な戦いだよ。

では、バンドにとってのもっとも重要な信念のようなものは何でしょう?

ミック:バンドとしては、自分たちに素直でい続けることだね。

毎回印象的なアートワークですが、今回のイラストは何を暗示しているのでしょうか?

ミック:ドラゴンだ。大きな戦いで、馬は死に、ドラゴンの爪で握られている。黒いオウムはそっぽを向いていて、白い犬が絶望の目で見ている。カラスは軽蔑した目で見つめ、蛾は無表情でいる。しかし、ふたつの剣があり、ひとつは獣に刺さり、血が流れている。

日本という国に対してどんな印象を持っていますか?

ミック:日本にはいつも魅了されるよ。美しい場所だし、人びとはみんな優しいし、敬意を持っている。日本人の友だちも多いし、移り住んだオーストラリアの友だちも多くいるよ。でもまだ知らないことばかりな気がするし、僕のいる社会とはまったく違うし、まだ表面を少し削ったくらいで、すごく奥の深い国だと思う。
 メルボルンと東京にはどこか音楽の見えない橋があるようにも思っているんだ。お互いのアンダーグラウンドで活動するミュージシャンの交流によって、小さなバンドでも行き来してライヴができるような、不思議な繋がりはあるような気がするよ。

どうもありがとうございました。また日本でお会いできることを期待しています。

Grouper / En Japan Tour 2012 - ele-king

 サイケデリック......と言う言葉を使うとき、受け手によってその解釈はさまざまだが、リズ・ハリスのそれは田園的だ。風が吹き、草原は揺れ、古い家が見える。日が暮れて、星が瞬く。まどろみの時間がいつまでも続く。
 リズ・ハリスがグルーパーの名義で昨年出した2枚、『ドリーム・ロス』と『エイリアン・オブザーバー』(どうしてもヴァイナルで欲しくて努力して買った)は僕の昨年のベスト・アルバムの1枚(というか2枚)である。まだ聴いてないが、1曲36分と1曲51分の新作も発表したばかりだ。
 彼女が来日する。今月は〈ソナー・フェス〉もあるんですけど(ラスティ、マウント・キンビー......とか、すごいメンツ)、しかし、夢見る人たちよ、敢えて言おう。これこそ「見逃すな」と!


■ Grouper / En Japan Tour 2012
  ポートランドを拠点に活動する女性アーティスト、Liz HarrisによるプロジェクトがGrouper。Tiny VipersとのMirroringやIlyas AhmedとのVisitorなどコラボレーション・ワークを活発化させるなか、ソロとして2年ぶり2度目となる来日を果たします!
 今回は、Grouperもリリースするサンフランシスコの人気レーベル〈Root Strata〉を運営するMaxwell Croy率いる美麗ドローン・ユニット、Enが同時来日。柔らかく爪弾かれるギター、幻想的なアンビエンスに溶けていく儚い歌声が人気のGrouper、日本の箏や様々な生楽器から至上のアンビエント・ミュージックを作り出すEn。Julia HolterやTeen Daze参加の新作EPを発表間近の新世代女性アーティスト、Cuusheも4公演に参加するアヴァン・フォーク/サイケデリック・ドローン最高峰のパフォーマンスをお見逃し無く!

04/21 (土) 東京@養源寺
live at Yogenji vol.3
open 12:30 / start 13:00
adv.: 3,500yen /door: 4,500yen
出演:Grouper, En, ILLUHA, 青葉市子, Yusuke Date
FOOD: 浅草橋天才算数塾
info: live at Yogenji / kualauk@gmail.com
https://www.kualauktable.com/event/yougenji3/

04/23 (月) 大阪@CONPASS
open 18:30 / start 19:00
adv./door 2,300/2,800yen(drink別)
出演:Grouper, En, Cuushe
info: CONPASS
https://conpass.jp/325.html

04/24 (火) 岡山@城下公会堂
open 19:00 / start 19:30
adv./door 2,500/3,000yen
出演:Grouper, En
info: moderado music / moderadomusic@gmail.com
https://moderado.jugem.jp/?eid=206

04/25 (水) 名古屋@parlwr
open 19:00 / start 19:30
adv/door: 2,800/ 3,300yen
出演:Grouper, En and more
info: Telefonbook
https://iscollagecollective.org/?page_id=407

04/28 (土) 京都@ヴィラ九条山
night cruising meets villa kujoyama
open 16:30 / start 17:00
door: 2,000yen
出演:Grouper, En, Cuushe, Rimacona
info: night cruising
https://www.nightcruising.jp/120428

04/29(日)金沢@アートグミ
open 18:30 / start 19:00
ticket: 2,500yen(会員・学生-500yen)
出演:Grouper, En, Cuushe, Asuna
予約メール:windowofacloudyday@gmail.com
電話:(080-4259-5823)
https://d.hatena.ne.jp/cloudyday/20120429

04/30 (月) 東京@VACANT
FOUNDLAND
open 16:00 / start 17:00
adv/door: 3,000/ 3,500yen
出演:Grouper, En, Cuushe, Sapphire Slows, Ikebana, Bun/Fumitake Tamura
DJ:真っ青
https://www.flau.jp/events/foundland10.html

参考URL
Grouper / En Japan Tour 2012
https://www.flau.jp/events/grouper_en.html

お問い合わせ
flau / info@flau.jp

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369