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アンダーグラウンド・レジスタンスについて日本で初めて紹介文が書かれたのは、たしか、阿部曜によるもので、ということはレイヴ・カルチャーの文脈ではなかったことは間違いない。スカムやインダストリアルなど、ハードコアやジャンク・カルチャーに流れていたメンタリティがセカンド・サマー・オブ・ラヴとはむしろ正反対の視点からURにシンパシーを寄せることで、おそらくはジム・フィータスやミニストリーなどの系譜に位置付けようとしたのだろう(よく覚えていない)。ジェフ・ミルズ自身がファイナル・カットのインナーでナチスのハーケンクロイツなどをデザインに使っているぐらいだから、あながちそれも間違いではないし、ファイナル・カットのサウンドに横溢しているものはそれこそインダストリアル・ボディ・ミュージックのデトロイト解釈といえるものだったから「半分は正解」ということになる。「残り半分」が、そして、ファイナル・カットにキーボードで加わったマッド・マイクの資質によって与えられた方向性である。デオダードやモンゴ・サンタマリアを思わせる開放的なラテン・フュージョンがジェフ・ミルズのそれを相殺せず、セカンド・サマー・オブ・ラヴという特殊な気運のなかで明確に時宜を得て、ざっくりと止揚された時にアンダーグラウンド・レジスタンスはテクノのポテンシャルを飛躍的に高めることになった。一時期のジャーマン・テクノがすべてURのものマネのようになってしまったことでもその影響力は推し量れる(クリストファー・ジャストでさえ完璧なフォロワーだった)。
X-103はマッド・マイクとジェフ・ミルズの蜜月時代が終わったことを告げた作品だった。1993年に『アトランティス』がリリースされたとき、そこにはマッド・マイクの名前はなく、マイク・バンクスは早くもレッド・プラネットのシリーズやギャラクシー・2・ギャラクシーでテクノ・フュージョンの確立に邁進していた(レッド・プラネットがマイク・バンクスだとは3枚目か4枚目が出るまで誰も気づいていなかった)。Xシリーズは元々、URとロバート・フッドによる別プロジェクトとしてはじまり、『アトランティス』は結局、ジェフ・ミルズとロバート・フッドだけで製作されている。フッド=Hとミルズ=MによるH&Mとして、このタッグはその後も持続しているぐらいだから、Xシリーズを踏襲するよりもH&Mのファースト・アルバムとしてリリースした方が図式的にはすっきりしたはずだし、ふたりとも揃ってミニマル・サウンドへ移行する契機をなしたともいえるので、この出し方はけっこうナゾである(ちなみに2枚のシングルはいずれもミルズのアクシスからカットされ、CDヴァージョンには「セラEP」から3曲が最後にまとめて追加されている)。
とはいえ、ハードコアとフュージンが分離し、そのダイナミズムのなかでミニマルへのベクトルも内包していた『アトランティス』がこの当時、どれほど音楽的に豊かなアルバムに聴こえたかということは、その後の展開を先に耳にしている世代には伝わりにくいのではないのだろうか。ロバート・フッドの役割がどの程度のものか、その詳細はわからないけれど、もしも、そのパーセンテージが低いとしたら、『アトランティス」はいわば、ジェフ・ミルズにとっては、ミニマルではないソロ作として珍しい部類のものになるだろうし、意外にもマイク・バンクスが加わっていたX-102よりも印象は華やかで、ブレイクビーツから離れたせいか、曲のつくりはストイックであるにもかかわらず、サウンドがその色気を失うことはない。それともそのようなニュアンスを与えているのがロバート・フッドだったのだろうか(?)。
ちなみに英ワイアー誌が選ぶ100(+30)枚のアルバムにも97番目にノミネート。つーか、ケン・イシイも入ってるでよ。
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カラフトがはじまった頃に到着。入口に並んでいるとDJを終えたばかりのリラ(このパーティの主役のひとり)が「うぉうぉうぉ~」と叫んでいる。店に入るとまだ早い時間なのにかかわらず酔っぱらったシロー・ザ・グッドマンがいる。同じ日に〈エイジア〉でまわしていたそうだ......が、まだ12時をまわったばかりで、〈モジュール〉のなかの雰囲気はパーティはこれからだといった感じだ。
ビールを持って下のメイン・フロアに入る。良い感じに埋まっているフロアを強引に横切って、DJブースのカラフトのところまでいく。カラフトのダビーなセットにダンサーたちは心地よく体を揺らしている。
photo Yasuhiro Ohara |
photo Yasuhiro Ohara |
〈ALMADELLA〉はアンダーグラウンドのエレクトロニック・ミュージックにおいて前向きに新しい要素を取り入れていくパーティで、東京でもっとも早い時期からテクノとダブステップとのブレンドを試みていたひとつとして支持を得ている。静岡の〈ラジシャン〉周辺ではこういうのをシンプルに「音好き」と表現する。音を聴くのが好き、音を聴くのを面白がっている、積極的に面白い音を求める、そういう人間のことをざっくり「音好き」と呼ぶ。で、僕はちゃんと......というかたまたま偶然なのだが、1ヶ月以上前からリラとケイヒンのミックスCDを聴いて予習してきていたのだ。そしてもちろん、シャックルトンが〈パーロン〉から発表した『スリー・EPs』も聴き込んでいる。それらは「音好き」を惹きつけるには充分な内容だ。
カラフトがコントロールするテクノ・アンダーグラウンドの途中で酒を買いに上の階に行くと、吉田タロウと遭遇した。こういう場で彼と会ってしまうとテクノやダブステップどころではない、サッカーの話になってしまう。彼はFC東京の近況を話し、僕は清水エスパルスと小野伸二の素晴らしさについて語った。実は僕はその翌日の昼過ぎから等々力である川崎フロンターレとの試合に行かなければならなかった。正直な話、生で小野伸二のプレイを見れるのが楽しみでならなかった。
と同時に、僕には深い悲しみがあった。大好きだったサッカー・ジャーナリストの大場健司氏が数日前に他界したのである。氏は、静岡のみで刊行していたサッカー雑誌『Goal』の編集者を経て、清水エスパルスをずっと追っていたジャーナリストだ。分野は違えど、メディアの人間として僕は彼の活動を本当に尊敬していたし、彼の運営する『Sの極み』という有料サイトの会員でもあった。誠意のある書き手だったし、愛情と批評精神を忘れない人だった。僕の友人であり脚本家の上杉京子が同級生だったこともあって、近い将来、僕は彼に会うはずだった。いや、彼と会えなくても彼の文章がこの先もずっと読めれば良かった。僕は彼の読者のひとりだった。自分にとって大切な書き手をひとり失うことは、途方もなく悲しいことだ。
金曜日の深夜のダンスフロアに戻ろう。シャックルトンがいたので、軽く挨拶をした。あなたの作品が好きだと話し、ハルモニアのリミックスも良かったと伝えた。そしてふたたびフロアに戻った。フロアは満員電車状態だった。カラフトからシャックルトンに代わると歓声が起きた。彼のトレードマークでもあるトライバルなパーカッションがフロアを揺さぶると、歓声はさらに上がった。UKファンキーのダークサイドとでも言いたくなるような彼のシンコペーションするドラム・プログラムはオーディエンスを容赦なくダンスへと向かわせる。
photo Yasuhiro Ohara |
あるDJから興味深い話を聞かされた。いまDJがダブステップをかけたら仕事を失うという、そういう話だ。その人の"現場"では、セットのなかで2割ぐらいしかプレイできないという。なるほど、それはたしかにつらい。DJにとってその手の挑戦は慎重にならざる得ないものだろう。
とはいえ、良い時代になったものだ、とも思った。"仕事"という言葉が遣えるのだから。僕がこの音楽と関わりはじめて、田中フミヤがまだ19歳でテクノをまわしはじめた頃は、良くも悪くもこれを"仕事"という基軸で考えたことはなかった(だからまあ、商売が下手なままきてしまったのだけれど)。
また、90年代初頭では、多くのクラブにおいてテクノはつまはじきものだった。NY経由のハウスが正当であり、アシッド・ジャズが人気があって、テクノなんてものは既存のクラブ・カルチャーからは相手にされていなかった。が、当時の僕たちには自信があった。新しい世代にとってテクノはひとつのシグナルである。連中にはわからないだろう、しかし、僕たちより下の世代はこの狂った音楽を好むに違いない......。数年後、その通りになった。
ダブステップも移りゆく時代のシグナルなのだ。その晩もちゃんと新しい「音好き」たちがフロアに詰めかけていたじゃないか。
1987年に札幌で結成されたブラッドサースティ・ブッチャーズは、ダイナソーJrなど後にグランジと呼ばれるようなギター・サウンド、ヘルメットやアンセインなどのジャンク的な凶暴性、ネオアコ的な陰のある繊細な叙情性が合わさった独自のサウンドで注目を集めるバンド。なかでも今回、新作と同時にリマスタリング盤がリリースされた1996年のアルバム『kocorono』は、シューゲイザー的とも言えるオーヴァーダビングを施したサウンド・プロダクションと、絶望と悲哀に沈んだ世界観で新境地をみせ、日本のコアなロック系メディアやファンのあいだでは"90年代ギター・ロックの金字塔"とも言われている作品だ。国内ではイースタンユースやカウパァズ、ナート、ナンバーガールなど、数多くのオルタナ・パンク~エモ~ギター・ロックのバンドに影響を与え、ときとして、日本におけるエモの始祖的な存在とも言われている。海外方面では、アメリカのオリンピアにある〈K〉レーベル周辺との交流を持ち、ベックやフガジらの来日公演のサポートもしている。セールス面ではトップクラスと言えないものの、間違いなく日本のロックの発展に影響を与えているバンドだろう。
そんな彼らの新作『無題 NO ALBUM』が素晴らしい。圧倒的な存在のデカさをあらためて思い知る充実作である。
日本のサーストン・ムーアと形容したいくらいに煌めきながらうなりをあげる吉村秀樹のギター、不協和音をものともせずに空間を曇り空に染める射守矢雄のベース、灼熱の荒野を鞭打つような小松正宏のドラム、そして細かくうねりを巻き起こしてさらに空間を歪める田渕ひさ子のギター。いち音いち音の粒子にこだわった音色、フレーズごとに刻まれた念、それら複数のレイヤーが紡ぎ上げるウォール・オブ・サウンド。そんな往年のブッチャーズ節ともいえる演奏がキラキラと光を放ち、ときに哀しみを携えながら爆裂している。細かいシーンやスタイルといったものを蹴散らすようなデカさをここに感じるのは、筆者だけではないだろう。
アルバムの前半は、シンプルで明瞭、ポジティヴな印象の楽曲が並ぶ。演奏のオーヴァーダビングを控え、そのぶん歌を際だたせたことで、1曲1曲のキャラクターが強調され、曲自体の良さが浮き彫りとなっている。とくにアルバム最初の曲"フランジングサン"などは、色彩の滲んだような彼ら独自のサウンドがくっきりと具体化されている。吉村秀樹のヴォーカルが何重もの和声で重ねられているのも今回初の試みのひとつだ。吉村はそれを「友だちが欲しかったのかな」と語っていたが、このコーラス感によって楽曲のポジティヴな力強さが強調されているように思う。
7曲目"ノイズ"からは、そこに深みのある枯れた味わいが加わってくる。9曲目"ocean"は今回のハイライトとも言えるもので、大海に漕ぎだすような大きなスケール感と、何かから解き放たれたような爽快感を持った曲だ。曲調が名作『kocorno』を想起させるところも新作の特徴だ。とはいえ、新作で歌われる「生きている生きて行こう 残された気持ち握り 潰す」というポジティヴな一節は、かつて自殺でもしそうなくらいに絶望と哀しみを負った男たちが、いまは"いやそれでも前に進むんだ"という意思を獲得したことを伝えているように思える。
ラストの"curve"は、吉村秀樹と田渕ひさ子のデュエット曲。ピースフルでドラマティックな世界を描いて、アルバムをハッピーエンドで締めようとする。もっぱら歌詞では「この世に僕はたった独りで 僕の胸は張り裂ける」と歌っているのだが......。
取材をした際の吉村秀樹の話によると、今作は圧倒的な孤独を感じながら制作したそうだ。バンドのメンバーにアイデアを求めながら新しいかたちを模索したかったが、なかなかアイデアも生まれず、結果的に吉村ひとりの孤独な作業によるところが多かった。その"苦悩""やけっぱち""ポジティヴ"が渾然となったような心情が、この作品に深みと奥行きを与えている部分はあるだろう。実は、『kocorono』の時に強くあった心情も"孤独感"である。プライヴェートでの問題やレーベル移籍などバンドを取り巻く状況が背景にあったようだが、ブラッドサースティ・ブッチャーズの音楽には、そうした負の感情が必要なのかもしれない。
そしてそんな彼らの音楽は、ぼくたちが共通して抱える不安を代弁するかのように、強く響くのだ。
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フランスと言う国は、「優雅で艶やか、華々しく華麗」などとイメージしてしまう。実際、表面上はそう見える。筆者はフランスという国の思想、国民性、感性がとても好きで、すでに5~6回は訪れたのだが、毎回その裏の顔に驚かせられる。コスモポリタンならではの荒んだ一面が随所にあるからである。貴族階級の華々しさとコスモポリタンが融合した何かそのフランス独特のギャップに魅了されるのかもしれない......ビューティ&ダーティの反面性が違った形で自身を共鳴しているようで。フランスのようにもっとも芸術産業が国民的支持を得ている国柄で創られるダブステップ......まさにエフのサウンドはこの影響下に培われた産物だ。
そのサウンドをひも解くとアンダーグラウンド・ミュージックの神髄である地下音楽さながらの暗黒感が少し漂うアトモスフェリックにフランスの洗練された気品に満ちた感覚を取り入れたサウンドが垣間みれる。このサウンドは、さまざまな要素が入っている。が、一貫した構築、一遍の迷いもないプログラミングは、 ほぼミニマルを注入したダブステップである。聴いてみると......昨年大ヒットした2562のセカンド・アルバム『アンバランス』に酷似した感覚を憶えるが......次第に......"酷似"していると感じた自分の無知さ加減に恥ずかしくなる。ダブステップのアナザーサイドと捉えれるその深くもソフィスティケイトされた独創的創造性、これがフランス産のオリジナル・ダブステップなのだと。
エフのメイン・リリースを担っている〈セブン〉は、グレッグ・G率いるミニマルライクなダブステップ・レーベルである。筆者もDBSにてグレッグ・Gとは何度も共演したこともあって、実際素晴らしい人柄の人物だが、レーベルの方向性に関しては、るぎなく、しかも時折遊び心のあるフランス的感覚を持っている。ダブステップ最重要レーベルのひとつだろう。ちなみにその他に所属しているアーティストは、ヘリクサー(Helixir)、リクハン(Likhan)など。今後の動向にも注目である。
今日のベース・ミュージックにおけるニューウェイヴ="ダブステップ"の発展に大きく貢献しているのが〈テクトニック〉である。UKにおけるピュア・ダブ・カルチャーの音楽都市であるブリストルを拠点に、レーベル・モットーの「If your chest ain't rattling, it ain't happening」(胸が高ぶらなければ何も起こってない証拠)が示す通りの活動を続け、すでに数々のビック・アンセムを世に送り出している。ダブステップが南ロンドンにてガラージの突然変異的に誕生してから、それを先導したアーティストたち(デジタル・ミスティック、シャックルトン、ホース・パワープロダクションズ、ローファーなど)が、こぞってダークなガラージ・サウンドを土台とするダブステップに傾倒していったなか、ピンチはダブ、ミニマル、グライム、ガラージをシャッフルしたニュー・フォーム・サウンドで大きな支持を集めている。彼の音楽的バック・グラウンドにおいて、ダブと同等に大きな影響を与えたのが"ディープ・ミニマル"だ・ベルリンのベーシック・チャンネルやチェーン・リアクション、そしてリズム&サウンド......。いわゆるミニマル・ダブである。その影響は現在でもレーベルに色濃く反映されている。
レーベルは今年に入っても勢いが衰える気配はなく、刺激的なリリースを続けている。昨年、筆者ともUNITフロアで共演したピンチがダブでスピンしていたのがジャック・スパロウによる"Terminal"である。そのディープで濃密な一夜に相応しく、それは暗く蠢きながら響きわたる残響感たっぷりのトライバル・テック・ファンキーで、レーベルのテイストを残しつつ、今年最注目のアーバン・ムーヴメント"UKファンキー"を効果的に取り入れたフロアサイド・ステップとなっている。フリップサイドの"Tormented"だが、まるでベルリンとブリストルをミックスしたかのような暗黒地下ダブステップ、シャックルトンの〈スカル・ディスコ〉へのアンサー・バックと捉えたいほどだ。年々活発しているテクノ/ミニマルとの交流は、お互いのジャンルがマンネリズムを打開する起爆剤としても機能しているのである。
さて、〈テクトニック〉の新たな核になろうとしているジャック・スパローだが、そのデビューは、2007年〈センスレス(Sensless)〉からリリースされた「Spam Purse」であった。その後、2008年テクトニックのサブ・レーベル〈イアーワックス(Yearwax)〉からの「For Me/Lights Off」、マーク・ワンの〈コンタージャス(Contagious)〉からの「I And I」で頭角を現し、彼の名前を決定的にしたのは、2009年ピンチの「Get Up」のジャック・スパロウ・ミックス)である。そして、テクトニックからの前作「The Chase」......。今年も彼の高度かつ深いプロダクションから目が離せそうにない。
いまや奇才として名高いアントールド主宰の〈ヘムロック〉。UKベース・カルチャーを最先端ニュー・ガラージ・サウンドで引っ張る彼だが、レーベルの起源は2008年「Yukon」に遡る。独特の変拍子によるビート・パターンとミニマルが持つ無機質な静寂性、ガラージが持つヒプノティックで柔軟な高揚性、どこかポスト・ロック的アプローチも垣間みれるサウンド・コントロールによって、ダブステップのシーンのみならず他ジャンルからも注目されているプロデューサーである。今作は、〈ハイパーダブ〉からのリリース「CCTV/Dream Cargo」やアントールド自身の「Walk Through Walls」のリミックスを手掛けたダビー・エレクトロの旗、LVとタッグを組んでいる。フリップサイドには〈ホットフラッシュ〉から「Maybes」、「Sketch On Glass」を発表したUK3人組のホープ、マウント・キンビー(Mount
Kimbie)がリミキサーとしてセットアップする。遊び心を取り入れつつエレクトロ色の強いダブステップで、まさにたコンテンポラリー・ニュー・ガラージといったところ。リリースされるごとに〈ヘムロック〉の歴史が塗り替えられ、吸収した先に......また生まれる。

これは先日の3月16日のダブステップ会議@DOMMUNEにて、飯島直樹さんが推薦したドネオーの「Riot Music」だ(......ダブステップ会議では、とても有意義な時間を共有できました。野田さん、飯島さん、エクシー君およびdommuneのスタッフの方々全員に深くお礼申し上げます)。さて、アーバンR&BとしてのUKガラージ・シーンにおける至高の存在、ドネオーは、昨年発表したUKファンキーを取り入れた傑作『Party Hard』によってシーンで大きな話題となった。その最新リリースは何とシャイ・エフェックスの〈デジタル・サウンドボーイ〉から発表。〈デジタル・サウンドボーイ〉と言えば、昨年の7月の〈DBS〉にて待望の再来日を果たしたシャイ・エフェックスと最新アルバムによって不動の地位を確立したダブステップ・プロデューサー、ブレイキッジを主軸とするベースライン・トップ・レーベルである。今回の「Riot
Music」では、リミキサーにダブステップ界のエース、スクリームを起用。〈デジタル・サウンドボーイ〉からの前作「Burning Up」と同様に、初期ジャングルに回帰するかのように、懐かしのレイヴ・ジャングルを彷彿とさせるアーメン・ブレイクを打ち出している。
ところで、ジャングル/ドラムンベースではごく一般的なビート・パターンであるが、スクリームがふたたび持ち出して脚光を浴びているブレイクビーツの代名詞"アーメン・ブレイク"を解説しよう。そのオリジナルは、ウィンストンズ(The Winstons)の"Amen, Brother"曲内の8小節のドラムにある。それをさらにサンプリングして、ループして、広く用いられている。それはソフト"ReCycle!"――サンプル・ビートを分解、構築してブレイクビーツを再生成する――よって幅広くシーンで重宝されるのである。
スクリームのような大物トップ・プロデューサーが自身の影響を明かすような作品をリリースすることによって、ダブステップとドラムンベースは今後も"親戚"のような関係を保ち続けるだろう。インフィニティーと呼ばれるUK名うてのダンス・ミュージック・カルチャーとしてお互い存在し続けているのだから。
前回のサウンド・パトロールでも紹介したサンフランシスコ発〈シュアフィイアー〉だが、早くも第二弾がリリースされた。今回は、広くテクノ・シーンでも通用するであろうトラックを要している強力なアーティストで、2組のコラボレーションを実現している。シーンの代表レーベル〈テンパ〉などからカッティング・エッジなリリースを続けるヘッドハンターと元ドラムンベース・プロデューサーであったジュジュ率いる〈ナルコ・ヘルツ(Narco Hz)〉からテッキーでオーガニックなダブステップを発表しているDJアンヤが組んで生まれたテック・ダブステップである。もうひと組は、同じくサンフランシスコを拠点し〈ナルコ・ヘルツ〉、〈アンタイトルド!(Untitled!)〉、〈チューブ10(Tube 10)〉などから傑作を発表しているテッキー・ダブステッパーのDJジーとカナダ・トロント出身でテック・ミニマル・レーベル〈イマーズ(Immers)〉からの「000」が話題となったザイがコンビを組んで、ダークでミニマル・インフルーエンスなテクノ・シンフォニック・サウンドを披露する。フロアの空気感を一瞬のうちに変えうる力を持ったトラックで、使うものの意志とは無関係に作用する攻撃的なシンセ群が......防御反応を無力化させる最先端のリーサル・ウエポンとも言えるだろう。解放のさらにそのまた向こう側へ......。
〈クランチ・レコーズ〉というディープ・アトモスフェリックなドラムンベース・レーベルを率いていたバース(Verse)がペンデュラムの一員としてのビッグ・ヒットを成し遂げて早2年......そのあいだ、ダブステップの末恐ろしい躍進が破竹の勢いで進行......誰も止められない速度で世界中で感染し続けている。その勢いはいろいろなプロデューサーやDJを巻き込んでいるが、彼らも例外でなく、いち早くペンデュラムのアルバムなどで取り入れていた。そしていま、エヌ-タイプ(N-Type)の〈ウィール&ディール〉からベン・バース名義でダブステップ界におけるソロ・デビューを果たす。
硬質かつマッシブなビートと妖しくも切ないシンセ使いがフロアをより引き立てる"Flip The Coin"。先日の〈dommune〉でも筆者が大変お世話になったフロアライクなアンセムだ。一方の"Inhale"はスライトリーなダビー・リヴァーブ・シンセとシンプルに共鳴するカッティングエッジなフロアダブとなっている。
それにしても......世界的に有名なロック・ドラムンベースの王者さえも振り向かせ、虜にさせるこのダンス・ミュージック......あらためてダブステップのとんでもない快進撃を感じてしまう。初期のジャングル・シーンのときと同じ現象がいままさにに起こっている。
先日発表したダーク・サイバー/ニューロ・ファンクの集大成的コンピレーションアルバム『Bad Taste Vol.3』でサイバー・シーンをリードする最後の大物伝道師マルディーニ&べガス(Maldini & Vegas)。長らくバッド・カンパニー名義で活躍していた彼らだが、音楽性の違いなどにより、フロントマンであったDJフレッシュとDブリッジが立て続けに離脱し、ソロ・アーティストとして成功を収めるなか、彼らは一貫してバッド・カンパニーの強力サイバー・サウンドを守り続けている。
そして昨年暮れ頃から、マルディーニ&べガスにユーマン(Uman)も加えた新たなドラムンベース・ユニット、ブロックヘッド(Blokhe4d)を始動。先述のコンピレーションなどで立て続けにサイバー・アンセムを発表し、確実にフロアをロックしている。
今作はあのリキッド/エレクトロ・ドラムンベースのトップ・レーベル〈ホスピタル〉からニューカラー・ヴァリエーションを携えリリースした。その疾走感溢れるスペイシー・ファンクな空間処理技術を惜し気もなく披露し、エレクトロ感といったトレンドも注入し、絶妙なホスピタル・サウンドとなっている。みんなが待ち望んだ作品がダンスフロアを通して発表される......このサウンドのお陰でフロアは隙間なく満たされるのである。

最近はこんな呼び方をするアーティストは、ほとんど存在しなかった。ドラムンベース・シーンにとって久しぶりに現れたベルジアンの"超新星"と呼ぶべき逸材......と、もはやこう呼ぶべきではないぐらいのスピードで駆け上がったニュー・スター・プロデューサーが、そう、ネットスカイだ。しかもまだ20才前後の幼顔が残る若者だから、これがまた衝撃なのだ。
ダブステップで例えるならスクリームに近い神童性を感じるネットスカイは〈ホスピタル〉とサインを早々済ませ、「Escape」、「Memory Lane」など現在ダブプレートで席巻しているエレクトロ・ロック・チューンのリリースを控えている。今後さらに期待されるプロデューサーだ。今作「Eyes Closed / Smile」は、ジャンプ・アップ・レーベル〈グリッドUK(Grid UK)〉傘下のリキッド・レーベル〈オール・ソーツ(All Sorts)〉からドロップされた特大エレクトロ・アンセムだ。ドラムンベース・シーンが下降気味な現在において、彼の出現は、今もっともホットな出来事である。数年後にハイ・コントラスト、ブルックス・ブラザーズを凌駕する次代の才能を秘めたアーティストとして、彼のポテンシャルに今後も刮目していかなければならない。どんな時代でも不遇のときこそ、救世主現わる。そう願わずにはいられない存在になるよう願っている。
さて、最後に、何人かの方からリクエストがあったので、3月16日〈DOMMUNE〉にて筆者のセットのプレイリスト公表します。今後ともどうぞ宜しくお願いします!!
TETSUJI TANAKA - MINIMAL x DUBSTEP set 3/16 DOMMUNE PLAYLIST
1. AL TOURETTES/Sunken〈APPLE PIPS〉
2. SCUBA/Negative〈NAKED LUNCH〉
3. KRYPTIC MINDS/Wondering Why〈OSIRIS〉
4. MONOLAKE/Alaska(SURGEON RMX)〈IMBALANCE COMPUTER〉
5. RESO/Toasted〈PITCH BLACK〉
6. JOSE JAMES/Blackmagic(JOY ORBISON RMX)〈BROWNSWOOD〉
7. PATTERN REPEAT/Pattern Repeat 01a〈PATTERN REPEAT〉
8. BEN VERSE/Flip The Coin〈WHEEL & DEAL〉
9. RAMADANMAN & APPLEBLIM/Justify〈APPLE PIPS〉
10. INSTRA:MENTAL/Futurist〈NAKED LUNCH〉
11. APPLEBLIM & PEVERELIST/Over Here(BRENDON MOELLER RMX)〈APPLE PIPS〉
12.J OY ORBISON/Wet Look〈HOTFLUSH〉
13. F/Energy Distortion〈7EVEN〉
14. VALMAY/Radiated Future〈BLUEPRINT〉
15. MARLOW/Back 4 More〈BOKA〉
16. ROB SPARX/2 Faced Rasta(RESO RMX)〈Z AUDIO〉
17. F & HEADHUNTER/Dedale〈TRANSISTOR〉
18. MARLOW/Druid〈NO COMPANY〉
19. INSTRA:MENTAL/No Future(SKREAMIX)〈NON PLUS〉
20. SCUBA/I Reptured(SURGEON RMX)〈HOTFLUH RMX〉
21. SUBEENA/Circular〈IMMIGRANT〉
22. SCUBA/Aeseunic〈HOTFLUSH〉
23. SILKIE/Head Butt Da Deck〈DEEP MEDI MUSIK〉
24. GUIDO/Chakra〈PUNCH DRUNK〉
25. KOMONAZMUK/Bad Apple〈HENCH〉
26. HARRY CRAZE/Wa6〈DEEP MEDI MUSIK〉
27. KRYPTIC MINDS/The Weeping〈DISFIGURED〉