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X-103

X-103

Atlantis

Tresor

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三田 格   Apr 07,2010 UP
E王

 アンダーグラウンド・レジスタンスについて日本で初めて紹介文が書かれたのは、たしか、阿部曜によるもので、ということはレイヴ・カルチャーの文脈ではなかったことは間違いない。スカムやインダストリアルなど、ハードコアやジャンク・カルチャーに流れていたメンタリティがセカンド・サマー・オブ・ラヴとはむしろ正反対の視点からURにシンパシーを寄せることで、おそらくはジム・フィータスやミニストリーなどの系譜に位置付けようとしたのだろう(よく覚えていない)。ジェフ・ミルズ自身がファイナル・カットのインナーでナチスのハーケンクロイツなどをデザインに使っているぐらいだから、あながちそれも間違いではないし、ファイナル・カットのサウンドに横溢しているものはそれこそインダストリアル・ボディ・ミュージックのデトロイト解釈といえるものだったから「半分は正解」ということになる。「残り半分」が、そして、ファイナル・カットにキーボードで加わったマッド・マイクの資質によって与えられた方向性である。デオダードやモンゴ・サンタマリアを思わせる開放的なラテン・フュージョンがジェフ・ミルズのそれを相殺せず、セカンド・サマー・オブ・ラヴという特殊な気運のなかで明確に時宜を得て、ざっくりと止揚された時にアンダーグラウンド・レジスタンスはテクノのポテンシャルを飛躍的に高めることになった。一時期のジャーマン・テクノがすべてURのものマネのようになってしまったことでもその影響力は推し量れる(クリストファー・ジャストでさえ完璧なフォロワーだった)。

 X-103はマッド・マイクとジェフ・ミルズの蜜月時代が終わったことを告げた作品だった。1993年に『アトランティス』がリリースされたとき、そこにはマッド・マイクの名前はなく、マイク・バンクスは早くもレッド・プラネットのシリーズやギャラクシー・2・ギャラクシーでテクノ・フュージョンの確立に邁進していた(レッド・プラネットがマイク・バンクスだとは3枚目か4枚目が出るまで誰も気づいていなかった)。Xシリーズは元々、URとロバート・フッドによる別プロジェクトとしてはじまり、『アトランティス』は結局、ジェフ・ミルズとロバート・フッドだけで製作されている。フッド=Hとミルズ=MによるH&Mとして、このタッグはその後も持続しているぐらいだから、Xシリーズを踏襲するよりもH&Mのファースト・アルバムとしてリリースした方が図式的にはすっきりしたはずだし、ふたりとも揃ってミニマル・サウンドへ移行する契機をなしたともいえるので、この出し方はけっこうナゾである(ちなみに2枚のシングルはいずれもミルズのアクシスからカットされ、CDヴァージョンには「セラEP」から3曲が最後にまとめて追加されている)。

 とはいえ、ハードコアとフュージンが分離し、そのダイナミズムのなかでミニマルへのベクトルも内包していた『アトランティス』がこの当時、どれほど音楽的に豊かなアルバムに聴こえたかということは、その後の展開を先に耳にしている世代には伝わりにくいのではないのだろうか。ロバート・フッドの役割がどの程度のものか、その詳細はわからないけれど、もしも、そのパーセンテージが低いとしたら、『アトランティス」はいわば、ジェフ・ミルズにとっては、ミニマルではないソロ作として珍しい部類のものになるだろうし、意外にもマイク・バンクスが加わっていたX-102よりも印象は華やかで、ブレイクビーツから離れたせいか、曲のつくりはストイックであるにもかかわらず、サウンドがその色気を失うことはない。それともそのようなニュアンスを与えているのがロバート・フッドだったのだろうか(?)。

 ちなみに英ワイアー誌が選ぶ100(+30)枚のアルバムにも97番目にノミネート。つーか、ケン・イシイも入ってるでよ。

三田 格