「W K」と一致するもの

アルカ(Arca)新作は11月! - ele-king

 アルカ。
 自主リリースのミックステープ『&&&&&』が話題となって、あれよという間にほぼ無名ながらカニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加、立て続けにFKAツイッグスのプロデューサーとしても『EP2』『LP1』とメモリアルな作品を残し、契約争奪戦の上で〈ミュート〉とのサインにいたり、傑作『ゼン』をリリース、今年はビョークのアルバム『ヴァルニキュラ』を共同プロデュースした、あのアルカだ。

 彼(女)の新作リリースが決定した。

 ポスト・インターネットを象徴し、アンダーグラウンドが時代とメジャーを動かすことを鮮やかに示してみせた彼(女)が、次のステージで表現するものは何か。自らのルーツや環境、社会的なコンフリクトと向かい合った上で踏み出される、その第2歩めに期待が高まる。

 「『ミュータント』は、デビュー・アルバム『ゼン』が内省的な作品だったのに対して、外に開かれ、そしてより大胆な作品となった」 プレス・リリースより

 制作上のパートナーとして、ヴィジュアル面を全面的に手掛ける鬼才ジェシー・カンダも、もちろん今回も切れっきれである。まずは新作ヴィジュアルと最新アー写、そして新作MVをお届けしよう。

■新着ミュージック・ヴィデオ「EN」

 我々の前に現れた突然変異(ミュータント)。デビュー作をはるかに圧倒する作品完成!
 昨年リリースされたデビュー・アルバム『ゼン』の尖鋭性、ビョーク、カニエ・ウェストやFKAツイッグスのプロデュース、奇妙で美しいヴィジュアル・アートとの融合作品…全世界に衝撃を与えたこれらの作品はアルカの才能のほんの序章だった。
 デビュー・アルバムから1年、アルカは、ミュータント(突然変異)というタイトルのセカンド・アルバムを早くも完成させた。まさに溢れ出るほどの才能が一気に解放されたような作品だ。

 デビュー作で末恐ろしい24歳と評され、時代の寵児となったアルカ、その今後の作品への可能性は、どきどきさせるようなものだった。そして本作はその通りの作品となった。
 デビュー作を下敷きとしながら、音楽的豊潤さ、表現力、全てにおいて圧倒している。そして彼はこれだけのことをやりながらも、まだ25歳ということも末恐ろしい。今作は全てにおいてレッド・ゾーンに突っ込んだようだ。

 発売は11月18日。

■アルカ / ミュータント
発売日:11月18日 日本先行発売 (海外:11/20)
品番:TRCP-190
JAN:4571260584884
定価:スペシャル・プライス2,100円(税抜)
ボーナス・トラック収録
解説: 佐々木渉(クリプトン)

■アルカ
アルカ(ARCA)ことアレハンドロ・ゲルシ(Alejandro Ghersi)はベネズエラ出身の24歳。現在はロンドン在住。2012年にNYのレーベルUNOよりリリースされた『Baron Libre』,『Stretch 1』と『Stretch 2』のEP三部作、2013年に自主リリースされたミックステープ『&&&&&』は、世界中で話題となる。2013年、カニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加(プロデュース:4曲/ プログラミング:1曲)。またアルカのヴィジュアル面は全てヴィジュアル・コラボレーターのジェシー・カンダによるもので、2013年、MoMA現代美術館でのアルカの『&&&&&』を映像化した作品上映は大きな話題を呼んだ。FKAツイッグスのプロデューサーとしても名高く、『EP2』(2013年)、デビュー・アルバム『LP1』(2014年)をプロデュース、またそのヴィジュアルをジェシー・カンダが担当した。2014年、契約争奪戦の上MUTEと契約し、10月デビュー・アルバム『ゼン』 (“Xen”)をリリース。ビョークのアルバム『Vulnicura』(2015年)は、ビョークと共同プロデュースを行い、その後ワールド・ツアーのメンバーとして参加した。2015年11月、2ndアルバム『ミュータント』リリース。

■ジェシー・カンダ
アルカのヴィジュアル・コラボレーター。アルカが14歳の時、とあるアーティストのオンライン・コミュニティーで知り合って以来の仲。「ジェシーと僕は知合ってからもう相当長いからね」とアルカが説明する。「何か疑問点があったとして、僕が音楽面でその疑問点をそのままにしてると、ジェシーがビジュアルでその答えを出してくるんだよね。ジェシーがそのままその疑問に映像で答えを出してなかった時は、それは音楽で答えを出すべきだ、という事だと思うんだ」。本作のアートワークもジェシー・カンダが担当。その加工されたヴィジュアルに関して「それは作品自身の内部で起こってる事を反映したもの」by ジェシー・カンダ。
https://www.jessekanda.com/

■ディスコグラフィー
1st AL『ゼン』(Xen) (2014年) TRCP-178 (TRCP-178X: HQCD仕様として2015年3月に再発)
2nd AL 『ミュータント』(Mutant) (2015年) TRCP-190

■デビュー・アルバム『ゼン』まとめ。
[Visual] https://bit.ly/1UUmQTd
[特集記事] https://bit.ly/1Dzi7iw

■リンク先
https://www.arca1000000.com
https://soundcloud.com/arca1000000
https://www.facebook.com/arca1000000
https://twitter.com/arca1000000
https://instagram.com/arca1000000
https://mute.com
https://trafficjpn.com

■公開中のミュージック・ヴィデオ「Soichiro」 *「Soichiro」とはジェシー・カンダのミドル・ネーム


Idjut Boys - ele-king

 ディスコ・ダブのパイオニアであるイジャット・ボーイズが今月末から11月上旬にかけて日本ツアーを敢行する。今年8月に〈スモールタウン・スーパーサウンド〉からリリースされた最新作『ヴァージョンズ』は、2012年に同レーベルから発表した『セラー・ドア』を換骨奪胎、ダブ・アレンジをしたもので、90年代より続くふたりのキャリアに裏打ちされた傑作だ。
 現在、ノルウェイ〈セックス・タグス〉のDJフェット・バーガーとDJソトフェットらの活動によって、再評価がされているディスコ・ダブだが、今回の来日ツアーはそのサウンドを理解する上でよい機会になるだろう。

Idjut Boys Japan Tour 2015
- new album "Versions" release party -

10.30 (金) 岡山 Yebisu Ya Pro
Info: Yebisu Ya Pro https://yebisuyapro.jp

10.31 (土) 大阪 Studio Partita (名村造船所跡地)
Info: CCO クリエイティブセンター大阪 https://www.namura.cc
CIRCUS OSAKA circus https://circus-osaka.com

11.2 (火/祝前日) 東京 CIRCUS Tokyo
Info: CIRCUS TOKYO https://circus-tokyo.jp

11.6 (金) 浜松 Planet Cafe
Info: Planet Cafe https://www.club-planetcafe.com

11.7 (土) 札幌 Precious Hall
Info: Precious Hall https://www.precioushall.com

11.8 (日) 江ノ島 OPPA-LA
Info: OPPA-LA https://oppala.exblog.jp

Total Tour Info:
AHB Production https://ahbproduction.com

calentito:
https://bit.ly/1N2w6ms

映画会社で働いていたDanと、サボテン農場で働いていたConradが出会い、Idjut Boysを結成。2人はパブやレストランでPhreekという名前のパーティーを始め、そのパーティーはその後、U-Star Dance Partyとなった。パーティーU-Star Dance Partyをそのままにレーベル名に使用し、1994年にはレーベルU-STARが立ち上がった。ダンスミュージックへの強い愛情をライブ感覚溢れたダブ処理とユーモアによって昇華した彼らの作品は、単なるリコンストラクトに留まらないオリジナリティーに満ちており、”Dub- Disco”なスタイルを確立。DiscfunctionとNOIDというレーベルも始動させ、また2000年以降はcottageとDroidというレーベルを立ち上げ、それらのレーベルを通じて素晴らしい才能達をリリースした。そんなIdjut BoysのDJスタイルとは、巧みなミックスと創造性溢れる選曲で構成されるmadでグルーヴィーなダンスパーティーである。2011年、Idjut Boysとしての初のオリジナルアルバム『Cellar Door』をSmalltown Supersoundより発表。2014年、大阪の盟友Altzが主宰するALTZMUSICAからドーナツ盤”World 1st Day”をリリース。2015年9月には『Cellar Door』をまるまるダブ化したダブ・アルバム『Versions』をリリース。今回はそのアルバムリリースツアーとしての来日が決定した。


ENA - ele-king

 東京を拠点に活動するプロデューサー、エナが11月にふたつの作品をベルリンの〈サムライ・ホロ〉
と、その姉妹レーベル〈サムライ・レッド・シール〉よりリリースする。昨年に同レーベルよりリリースされた『バイノーラル』では、ダブステップとドラムンベース以降の重低音とリズムの新境地を切り拓き、作品は高い評価を得た。その年末には東京での彼のホームである〈バック・トゥ・チル〉のコンピレーションに参加し、今年に入ってからはカセットで『ディバイデッド』をリリース。今回の作品は2015年初のレコード・リリースとなる。
 RAによれば、〈サムライ・ホロ〉からの『ディバイデッド9 & 10』が7インチでリリースされ、〈サムライ・レッド・シール〉からの『メテオ』のデジタル版にはボーナス・トラック2曲が追加される。トラック・リストは以下の通り。

Release:2015年11月6日

『Divided 9 & 10』
〈Samurai Horo〉
A 9th Divided
B 10th Divided

『Meteor』
〈Samurai Red Seal〉
A1 Meteor
A2 Bulkhead
B1 Insective

JUZU a.k.a. MOOCHY (J.A.K.A.M. / NXS / CROSSPOINT) - ele-king

最近ゲットした新譜

Obscure Rural Laid Back Rock Bandit Buggy Classics

Moritz Von Oswald - ele-king

 ダブ・テクノのレジェンド、モーリッツ・フォン・オズワルドのコンソール・システム、Speak Electronics SSM-24が現在eByaで競売にかけられており、出品者はモーリッツの代理人のネーション-X。
 ベーシック・チャンネル全盛期においては、彼らの使用機材は完全にシークレットだっただけに、衝撃は大きい。なにしろあれほどのミニマル(最小)の音が、これほどの卓でミックスされていたのかと思うと、感慨深い。
 ちなみに現時点での値段は17,500ユーロ(日本円で約237万円)。『Fact』によれば、本機によって、ベーシック・チャンネル、モーリッツォ、リズム&サウンドの諸作品や『リコンポーズド』が作られ、今日でも状態は良好だそうだ。

Regis - ele-king

 〈ダウンワーズ〉総帥として、またブリティッシュ・マーダー・ボーイズ(BMB)としてサージョン(Surgeon)とともにハードテクノの一時代を築き上げ、ファンクション(Function)、サイレント・サーヴァント(Silent Servant)、フィメール(Female)らとのレーベル・コレクティヴ、サンドウェル・ディストリクト(Sandwell District)によってポストパンク/パワエレ/インダストリアルとテクノをノワールなイメージとミニマリズムで繋いだカール・オコナーことリージス。

 暗黒電子音界最高峰プロデューサーとしての近年の秀逸な仕事をまとめたコンピレーション『マンバイト』が〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から発売された。アイク・ヤードやヴァチカン・シャドウ、ダルハウスにファミリー・セックス、レイムらのトラックを完全に我が物に扱い、ほぼオリジナルとして再構築される敏腕エディット術。凍りつくように美しいミニマリズムはリージスにしか出しえないのだ。え? ヴァージョン違いばっかりじゃなくって新たなオリジナル曲はどうしたの? という疑問を忘れるくらい、あらためて関心させられる。ま、ほぼ聴いた音源で被りまくることでお馴染みのBEBですから。

 もちろん、本人としても近年はプロデュースとコラボレーション・ワークを中心に据えての活動を好んでいることに間違いはないが、誰もが彼の完全新録トラックを待ち望んでいるだろう。

 ぜんぜん関係ないけど、最近ゴッドフレッシュとのライヴ・コラボレーションを披露するとかしたとか。そこまでもろなインダストリアル・メタルとの邂逅はなにげに初めての試みなんじゃないか?

WIRED CLASH - ele-king

 日本最大規模のテクノ・パーティのワイヤーとクラッシュのコラボレーション・イベント、ワイヤード・クラッシュの開催が今月24日に迫るなか、リッチー・ホゥティンやレディオ・スレイヴらスターDJに加えて、さらに石野卓球とケン・イシイがB2Bで出演することが発表された。長年日本テクノ代表を務めてきたふたりの共演を、是非スタジオ・コーストの音響で。DJソデヤマといった先鋭的なプレイヤーから、東京のローカルで活躍するスンダまで実に多彩な顔ぶれが揃っており、4つのステージを往復するのに忙しくなりそうだ。詳細は以下の通り。


interview with Albino Sound - ele-king


Albino Sound
Cloud Sports

Pヴァイン

ElectronicAmbientTechno

Amazon

 それはどこで鳴っている?
 それは25年前なら、ウェアハウスや小さなクラブだった。それは30年前ならベッドルームだった。それは35年前ならライヴハウスだったかもしれない。ま、インターネットの共同体でないことはたしかだろう。
 で、それはどこで鳴っているんですか?
 アルビノ・サウンドはしばし考える。
 「……現実と明らかに乖離しているもの」と彼は重たい口を開く。
 なんですか、それは? ファンタジー?
 「ファンタジーとも違いますね。やっぱり現実が剥離しているというか。剥がされて浮いている1枚、みたいな」
 それをファンタジーというのでは?
 「それがファンタジーになる場合もあるし、もっとものすごい虚構というか彼岸みたいなというか……説明が難しいんですけど、僕は剥離感と呼んでいます」

ぼくがいろんな音楽を聴き出した10代の頃は、東京のシーンって完成されていたんですよね。で、そういうところに変な違和感があったんです。外から耳に入ってくるものと、生きている近くで起きていることの状況があまりにも違い過ぎていて、その間の隙間だったり不在感が自分の音楽のルーツになるんだと思います。

 東京で生まれ、横浜で育った彼は、10代のときにポストロック、レディオヘッド、そしてクラークやボーズ・オブ・カナダの世界にどっぷりはまっていた。深夜のTVから流れるエレクトロニカに耽り、そして学校で音楽の話題を共有できる友人もなく、ただ黙々と聴いていた……という。
 そして、17才の時の2004年の『スタジオ・ヴォイス』の特集に人生を狂わされる(松村正人が知ったら喜ぶだろう)。彼は、カンを知り、アーサー・ラッセルを知った。この頃は、ちょうど紙ジャケ再発が盛んな時期だったこともあって、ひと昔前なら聴くことさえ難しかったそれらの音源との距離は縮まっていた。

「とにかくアーサー・ラッセルにハマって、『ワールド・オブ・エコー』(1986年)がとくに好きになりました。ポストパンクにいったりとか、それこそニューエイジ・ステッパーズやディス・ヒートに夢中になって、最終的にクラウトロックにたどり着きました。ぼくはもともとは、クラブ・ミュージックではないんです。ひとりでギターを使ってドローンとかアンビエントとかをやっていたんですね」

「思春期の頃は、ポスト・カルチャーが蔓延していたというか、なんでも“ポスト”がつく世のなかだった。結局はエレクトロニカという言葉もそうですし……」
 いわゆる細分化ですね。
「そうです」 
 苛立ちを覚えましたか?
「世代的に虚無感が支配していたので、ロスト感で生きていたところはあります(笑)」

  話は逸れるけれど、アーサー・ラッセルの再評価は、この細分化の初期段階のときはじまっている。ぼくは、90年代末のUKで起きた再評価によって彼のことを知るが、彼の再発がレコ屋に出はじまめのが2003年以降である。
 ラッセルとは、ジャンル音楽家であることを拒んだ何でも屋で、つまり、シーンが分断されていても越境的な個によって回路は生まれ得ることを証明した人物とも言える。松村正人がディスコで踊ることはない。しかし、ラッセルは踊ってしまった。

 もっとも、ぼくが若い頃はシンプルに出来ていた。ロックのスター崇拝の文化やホワイティー一辺倒な世界観への違和感がそのままクラブ・カルチャーへの情熱に転換されたと言っても良い。好きなのは音楽、主役はリスナー。高い金払ってスターを崇めるくらいなら自分たちでやれ。その実践の場がクラブだったので、たとえどんなに実験をやっても、重箱の隅ばかりを見せびらかすマニアによる支配はなかったし、ふだん出会うことのない人たちが出会うことができた。重要なことは、踊れるか、ないしは何かを感じさせてくれるか、ないしは、いままで感じたことのない感情に直面させてくれるのか、そのいずれかだろう。
 細分化後の世界のつまらなさとは、周辺だけで完結してしまうところであり、周辺小宇宙群を突破するダイナミズムが、いまのマージナルな文化にもあって欲しいとぼくは思うのだが、レッドブルを何杯飲んでも無理だろう。が、アルビノ・サウンドは、そのヒントは「カンとクラスターにある」と主張する。そうか、クラウトロックか……。

 彼が打ち込みの音楽をやる契機となったのは、マウント・キンビーだという。マウント・キンビーは、ダブステップ以降のクラブ・サウンドにIDMを折衷したことで、一世を風靡した連中である。ぼくも彼らが出てきたときは興奮した。

「とくにライヴにやられました。ライヴでは彼らは歌うけど、その歌が下手じゃないですか(笑)? 完璧じゃないけど、彼らが向き合うなかで出てくるエモさに、がっちりと掴まれてしまいました。ぼくは彼らのエモなところに感動したんです。ああいうインディ・ロック的なユース感はマウント・キンビーにありますよね。“メイビーズ”とか。曲によりけりですけどね。あとはあの疾走感ですかね。とにかく、マウント・キンビーと出会うまで、家でひたすらパン・ソニックを聴いているような生活だったので(笑)」

「彼らはクラブ・ミュージックがやりたかったわけではなかっただろうし。おそらくですけど、ソフトの値段が下がって、ライヴをどうやるかを考えた結果、ああなったんだと思います。結果、ドラマーを後から入れていましたし。自分が音楽からすっぽり抜けていたときにあれが来たから、すごく新鮮な音楽に感じたのかもせれません」

 「ぼくがいろんな音楽を聴き出した10代の頃は、東京のシーンって完成されていたんですよね。で、そういうところに変な違和感があったんです。外から耳に入ってくるものと、生きている近くで起きていることの状況があまりにも違い過ぎていて、その間の隙間だったり不在感が自分の音楽のルーツになるんだと思います。都市的な孤独だったりとか、言いようのない感情だったり。そこにも隙間がありました。それは音楽にも反映されていると思います」

  彼の音楽が鳴っているところは、ここだ。
 いわゆる既存のクラブにも100%感情移入できないし、汗だくのライヴハウスにも、そしてインターネット共同体にも、どこにも行く場所がない人たちの場所を確保すること。ここからは、NHKコーヘイからカリブー、ローレル・ヘイローからリー・バノンにいたるまでの、あるいはゴートからドリーム・プッシャーにいたるまでの一種の共通の感覚を引き出せる。
 かつて商業主義にがんじがらめになったテクノは、エレクトロニカというジャンル名のもとで別の潮流となった──まあ、悲しい細分化の走りでもある──ことと、どこか似ているが、しかしこの新しいエレクトロニック・ミュージックの潮流は、どこにでもアクセスできるし、拒んでいないという点では、ニュアンスが違っている。
 アルビノ・サウンドのデビュー・アルバム『クラウド・スポーツ』は、自分たちの居場所を探している人たちの、今日的な折衷主義の成果とも言える。ここには、いままで書いてきたような彼の影響、エレクトロニカ、ポストロック、そしてシカゴのジュークの影響まである。

 なにしろ彼は、そう、あのリキッドルームのタイムアウト・カフェでふだんはフライパンを握っているのである。

「ぼくはあの場所で、基本的に鍋を振りながらいろいろな音楽を聴いている」と彼は言う。「見ているだけなので、ものすごく客観的にそこを見ていられたのは大きいです」
 隣には太郎さんがいて、とくにエイプリルさんがDJしているし(笑)?
「ミニマルやってるひともジュークやってる人もいるし、ヒップホップをやっている人もいる。〈ブラックスモーカー〉は毎年ブラック・ギャラリーをやってらっしゃるし、ロスアプソンのTシャツ市もある。素晴らしい環境です(笑)」
 この素晴らしい環境が、アルビノ・サウンドの作品にどれほど関わっているのかはわからないが、少なくとも、彼はフライパンを持ちながら日々アンダーグラウンドな音楽を意識せずとも吸収しているのである。

子供の頃はテレビで流れるJポップぐらいしか聴いていなかったんですよ。で、初めて〈ワープ〉系のような音楽を聴いたときに、『嘘をつかれていたんだ』と思ったんです。自分がいままで聴いていたものは嘘だったと

 驚くべきことに、彼がエレクトロニック・ミュージックを作りはじめたのは、去年の3月からだ。つまり、2014年から2015年に作られているこのアルバムは、長年家に籠もって作り続けきた人の作品ではない。それが、人に聴かせたらあれよあれという間に好意的に受け止められて、いまこうして作品が出ることになったというわけだ。「数年前まではパソコンすらまともに使えなかった」と彼は笑いながら話す。

「人間的に群れるのも好きなほうじゃなんです。たとえば、本を読むと文字から音を想像できるじゃないですか? ぼくが好きなのはそれです。すごい国語的な感覚で音楽を作っている自覚はあります。だから自分らしさを出すものとして、言語的な作り方があるんだと思います」

 彼は自分の音楽をこのように分析する。

「あと、曲作りはじめたときに、映像ディレクターをやっている仲が良い友だちがいて、いっしょに仕事をするようになったんです。その頃のぼくは全然パソコンが使えないのに、そういう依頼がいきなり来た。で、いざいやってみたら、映像と音楽のグリッドって全然違うんですよね。たとえば『顔が横を向くから音楽はこう変わってほしい』とかは、小節単位で起きることじゃないので、それが面白かった。音楽的な判断じゃなくて、映像的な判断が自分に加わると、どんな変化をしても整合性を保てるし、これはこれで面白いというのが、今回のアルバムには反映されています」

「彼(=石田悠介)が去年自主制作で映画(=Holy Disaster)を作ったんですけど、そのサントラを自分とボー・ニンゲンのギターのコーヘイ君といっしょにやったんですけど」

 ちなみに、高校の先輩にはボー・ニンゲンのヴォーカリスト、そしてネオ・トーキョー・ベースのメンバーもいたという。

「ボー・ニンゲンのギターのコーヘイ君といっしょに『なんかやろうぜ』と世間話をしていたら、たまたま僕が(スティーヴ・)アルビニ・サウンドを言い間違えてアルビノ・サウンドと言ったら、それはなかなか面白い名前だと。それで去年レッドブルに応募するときのための名義を考えていたら、これでいいだろうと。どういう音楽か想像つきづらいのも面白いなと思いました」

 「子供の頃はテレビで流れるJポップぐらいしか聴いていなかったんですよ。で、初めて〈ワープ〉系のような音楽を聴いたときに、『嘘をつかれていたんだ』と思ったんです。自分がいままで聴いていたものは嘘だったと」

  こういう感動は、ぼくもよくわかる。中学生のとき、初めてクラフトワークを聴いたとき、この世界にはこんな音楽があるのかと心の底から驚き、興奮した。これだけ音数が少なく、すべてが反復なのに、これほどまでに聴いていて気持ちがいい。そして、その回路が開けた自分自身にも嬉しかった。いったいこれは何なのか? そう思うたびにワクワクした。意味もなく。

「だから自分が音楽を聴いて、想像力だったりとか、感情の喚起と言ったら変かもしれないですが、いまの音楽も昔の音楽も自分にとってはそういうものだったので、それをリスナーに感じて欲しい。音楽を聴くことで、音楽以上の何かを感じてもらえれば嬉しいんです」

 そんなわけで、確実にいま、新しいエレクトロニック・ミュージックが混ざりながら、ぼんやりとだが新しいシーンが形成されつつある。アルビノ・サウンドもその一員だ。

第34回:This Is England 2015 - ele-king

 『The Stone Roses:Made of Stone』日本公開用パンフのためにシェーン・メドウズにインタヴューしたとき、「わたしは『This Is England』シリーズの大ファンです。『This Is England 90』はどうなってるんですか」などという素人くさい質問をぶつけてしまったことが含羞のトラウマとなり、『This Is England 90』には複雑な想いがあった。が、あれから早くも2年の月日が流れ、わたしは自宅の居間でイカの燻製を食いながら当該作を見ていた。
(このシリーズの歴史を説明するとそれだけで連載原稿が終わってしまうので、ここではすっ飛ばす。知りたい人は拙著『アナキズム・イン・ザ・UK』のP136からP145とか、あるいはネット検索すれば日本語でもそれなりの量の情報は手に入るし、こういう映像もある)


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 『This Is England 90』は、チャンネル4で4回終了(最終回だけ長編の1時間半)のドラマとして放送された。ストーリー展開は『This Is England 86』に似ている。サブカル色濃厚、時代ジョーク満載の1回目で視聴者を大笑いさせつつノスタルジックな気持ちにさせ、2回目までそれを引っ張り、3回目でいきなりダークな方向へ走りはじめて、4回目はずっしりへヴィ。という、メドウズ進行の王道だ。

 わたしが前述の質問をしたとき、メドウズは「90年は俺のストーン・ローゼスへの愛が最高潮に達していた年だったから、そうしたことが何らかの形で『This Is England 90』にも出て来る」
 と答えたが、たしかにローゼスは主人公たちの物語の壁紙として梶井基次郎の檸檬のように黄色いアシッドな光を放っている。(ウディが『Fool’s Gold』のイントロを歌うシーンは今シリーズのハイライトだ)


 『This Is England 88』の最後で復縁したウディとロルの間には2人目の子供が生まれているし(1人目はウディの子供ではなく、ミルキーの子供だった)、ロルや妹のケリー、友人のトレヴは給食のおばちゃんとして働いていて、専業主夫になったウディやミルキー、カレッジをやめたショーンらのために子供たちの給食を職場からくすねているという、相変わらず底辺っぷりの著しい元ギャングたちの姿で本シリーズははじまる。

 1990年はマーガレット・サッチャーが首相官邸を去った年だ。
 それはわたしがけしからんフーテンの東洋人の姉ちゃんとしてロンドンで遊んでいた年でもあり、周囲にいた(やはりけしからん)若者たちが、サッチャーが官邸を去る日の模様をテレビ中継で眺めながら、「私はこの官邸に入った時よりもこの国を明らかに良い状態にして去ることができることに大きな喜びを感じています」というスピーチを聞いて、「私はこの国を無職のアル中とジャンキーの国にして去ることができることに大きな喜びを感じています。おほほほほほほ」とおちょくっていたことをよく覚えているので、メドウズがあの時のサッチャーの映像を『This Is England 90』の冒頭に持ってきた理由はよくわかる。

 「サッチャーを倒せ」「サッチャーはやめろ」と日本の現在の首相ばりに嫌われていたサッチャーは90年に退任した。ほなら労働者階級の若者たちも幸福になればいいじゃないか。が、彼らは全然ハッピーにならない。むしろ、不幸はより深く、ダークに進行して行く。
 ロルの妹のケリーは、ドラッグに嵌って野外パーティで輪姦される。さらに父親を殺したのは本当は姉のロルだったと知って家出し、ヘロインに手を出してジャンキー男たちのドラッグ窟に寝泊まりするようになる。
 一方、ロルの父親殺害の罪を被って刑務所に入っていたコンボの出所が間近に迫り、ロルとウディが彼の身柄を引き取るつもりだと知って、ミルキーは激怒する。黒人の彼には右翼思想に走っていた白人のコンボに暴行されて死にかけた過去があるからだ。「レイシストと俺の黒人の娘を一緒に暮らさせるわけにはいかない」と憤然と言うミルキーに、「お前だって俺の最愛の女を妊娠させたじゃないか。出産に立ち会ってたらお前の(黒人の)赤ん坊が出て来たんだぞ。それでも俺はお前を許したじゃないか。コンボを許せ」とウディは言うが、ミルキーの気持ちは変わらない。
 コンボは刑務所でキリスト教の信仰に目覚め、改心して子羊のような人間に生まれ変わっている。しかしミルキーは出所してきた彼に大変なことをしてしまう。
 というストーリーの本作は、1作目の映画版に話が回帰する形で終了する。
 一方でロルとウディがついに結婚するというおめでたい大団円もあり、ミルキーがコンボに復讐するというのも大団円っちゃあ大団円だが、こちらは真っ暗で後味が悪い。
 結婚式の披露宴にはケリーも戻って来て、みんなが幸福そうに酔って踊っている姿と、ひとり別室でむせび泣いているミルキーの姿とのコントラストで最終回は終わる。ふたつの全く異質な大団円を描いて終わったようなものだ。なんとなくそれはふたつの異なる中心点を起点にして描いた楕円形のようでもあり、おお。またこれは花田清輝的な。と思った。
それはサッチャーがいなくなっても幸福な国にはならなかった英国を体現するようで辛辣だが、同時にそれでもそこで生きてゆく人びとを見つめる温かいまなざしでもある。


               *******


 以前、うちの息子の親友の家に行ったときのことである。
 うちの息子の親友はアフリカ系黒人少年であり、その父親は「黒人の恵比須さんみたいな顔で笑うユースワーカー」としてわたしのブログに以前から登場しており、拙著『ザ・レフト』のコートニー・パイン編のインスピレーションにもなった。
 彼には4人の息子がおり、長男はもうティーンエイジャーなのだが、うちの息子を彼らの家に迎えに行った折、長男の友人たちが遊びに来ていた。で、十代の黒人少年たちはソファに座ってゲームに興じていたわけだが、恵比須さんの長男がこんなことを言っていた。
 「いやあいつはバカっしょ。しかも赤毛。しかもレイシスト。粋がって『ニガー』とか言いやがるから、俺は言ってやったね。『ふん。女も知らねえくせに。ファッキン不細工なファッキン童貞野郎』って」
 「おー、言ったれ、言ったれ」みたいな感じで2人の友人は笑っている。
 と、エプロン姿でパンを焼いていた恵比須顔の父ちゃんが、いきおい長男の方に近づいて行って、ばしこーんと後ろ頭を叩いた。
 「痛えー、何すんだよー」
 と抗議する長男にエプロン姿の恵比須は言った。
 「どうしてそんなファッキンばかたれなことを言ったんだ」
 「だってあいつファッキン・レイシストなんだよ」
 「そういうことを言ってはいけない」
 「ふん、あんなアホにはヒューマンライツは適用されない。あいつは最低の糞野郎だ」
 「俺はPCの問題を言ってるんじゃない。レイシストに同情しろなんて言ってないし、糞野郎は糞野郎だ」
 血気盛んな十代の黒人少年たちの前に仁王立ちしたブラック恵比須は言った。
 「だが、俺たちの主張を正当にするために、俺たちはそんなことを言ってはいけないのだ」
 
 きっと彼は黒人のユースワーカーとして何人もの黒人のティーンにそう言って来たんだろう。ロンドン暴動の発端となったトテナムで長く働いたという彼の言葉にはベテランの重みがあった。少年たちはおとなしく食卓について父ちゃんが焼いたコーンブレッドを食べ始めた。
 わたしと息子もタッパーにコーンブレッドを詰めてもらって持って帰った。ブラック恵比須は竿と鯛を持たせたくなるぐらいにこにこしてエプロン姿で手を振っていた。

                *******

 元右翼のコンボが黒人のミルキーの指図で殺されたことを暗示するような『This Is England 90』のラストシーンを見ながら、ブラック恵比須とミルキーは同じぐらいの年齢だと思った。
 1990年はもう四半世紀も前になったのだ。児童への性的虐待や近親相姦や殺人やレイプやドラッグ依存症は、まあ人間が生きてりゃそういうこともあるさー、お前らがんばれよ。と登場人物たちに乗り越えさせているメドウズが、レイシズムだけはそう簡単に乗り越えられない業の深いものとして最後に浮き立たせている。
 この認識を持って、この諦念に立脚して、それでもこの国の人たちはレイシズムに向き合ってきた。というか、向き合うことを余儀なくされてきたのだ。これは四半世紀経ったいま、移民・難民の問題として再び浮上している。
 ここに来て本作を見る者は、これは2015年のイングランドの話だと気づくのである。
 


 おまけ。もう一つの『This Is England 90』
(マーガレット・サッチャーVS ジェレミー・コービン。これも25年前だが、2015年の話でもある)

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