「Not Waving」と一致するもの

XL Recordings Chapter VIが東京で開催決定 - ele-king

 イギリスの名門レーベル<XL Recordings>のショウケース、XL Recordings Chapter VIが、ロンドン、マンチェスター、そして東京での開催が決定した。来日するのはスペシャル・リクエスト、ヒューゴ・マシアン、そして実現すれば今回初来日になるゾンビーの三組だ。

 現在〈XL〉周辺からは良質のダンス・ミュージックが多くリリースされている。先日公開されたスペシャル・リクエストの新曲は、90年代ハードコアをアップデートしたかのようなサウンドに仕上がっており、発売前にも関わらず大きな反響を呼んでいる。



 ゾンビーの新曲はひと足先に発表され、今週ここ日本でもレコードが店頭に並んだ。彼はここにきてベース・トラックに加え、アシッド・ハウスやテクノなども披露。スタイルが違う曲でも、そのダークなサウンドはまさにゾンビー。その素性と言動とともに謎が多い彼だが、当日無事にステージに立っていることを願おう。



 彼らと来日するルーキ、ヒューゴ・マシアンはまだ〈XL〉からのリリースはないが、現在発表されているディープ・ハウスのトラックやミックスから、その才能をうかがい知ることができる。大御所ふたりと同じステージで、彼はどのようなセットをプレイするのだろうか?

 イベントは11月27日金曜日、代官山UNITで行われる。Saloonではゾンビーにゆかりのある、あのクルーがプレイする予定。追加情報に期待。

XL Recordings Chapter VI

日時/会場: 2015/11/27(金)代官山UNIT / Saloon
OPEN/START: 24:00
出演:
Zomby / Special Request / Hugo Massien
チケット: 10月17日(土)よりプレイガイド( E+ / ローソンチケット)にて発売!
その他店舗でも順次販売開始!
価格:前売り 3,500円(税込/1ドリンク別途)、当日 4,000円(税込/1ドリンク別途)
チケット詳細情報はこちらから:(リンク入れ込み)
※20歳未満の方はご入場いただけません。
※写真付きIDチェック有り。身分証明書をご持参ください。
※アーティストの変更・キャンセルによる払い戻しは致しません。

主催・招聘:Ynos
XL Recordings Chapter VIオフィシャルサイト:https://ynos.tv/hostessclub/schedule/20151127.html

interview with Yppah - ele-king


Yppah
Tiny Pause

Counter / ビート

ElectronicPsychedelic

Tower HMV Amazon

 筆者が初めてイパの音楽を聴いたのは、セカンド『ゼイ・ノウ・ワット・ゴースト・ノウ(They Know What Ghost Know)』(2009)が出た頃で、当時はエレクトロ・シューゲイズと謳われていた。ノイズ+疾走感+甘いメロディというシューゲイズ・ポップの黄金律が、穏やかなエレクトロニクスと清新なギター・ワークによってほどよく割られていて、同種のタグの中で比較するなら、ハンモックよりもビート・オリエンテッド、ウルリッヒ・シュナウスよりもミニマル……とてもバランスも趣味もいいという印象のプロデューサーだった。チルウェイヴの機運もまさに盛り上がろうというタイミングで、そうした時代性とも響き合うアルバムだったと記憶している。

 そうしたバランスのためでもあるだろう、後年『ラスベガスをぶっつぶせ』『CSI: 科学捜査班』など、映画やドラマ、ゲームなどに使われる機会も増えたようだ。そもそもサントラを作ってみたくて音楽制作をはじめたというから、イパことジョー・コラレス・ジュニアにとって、その約10年にわたるキャリアは理想的な歩みだったとも言える。

 そして4枚めとなる『タイニー・ポーズ』がリリースされた。本作を特徴づける一曲を挙げるならば、“ブッシュミルズ(Bushmillls)”だ。それは彼がフェイバリットのひとつだと語るカリブー(マニトバ)の『アンドラ(Andorra)』(2007)を彷彿させ、ブロードキャストや、あるいはソフトサイケの埋もれた名盤といった趣を宿し、ドゥンエンの本年作の隣で、ハイプ化したテーム・インパラよりも一層奥のサイケデリアを引き出してくる。
 彼のドリーミーさ甘美さは砂糖ぐるみなのではない、それはもうちょっと深いところにある情感から生まれたものだ。そして年齢や経験とともに彼はより自然な手つきでそれを引き出すようになった──のではないか。本作はその意味で成熟したイパを示しており、前作『81』でやや野暮ったく感じられたパーソナルな感触を完全に過渡期のものとして、その先の音とスタンスをポジティヴに描き出している。以下語られている犬の影響というのは……よくわからないけれども。

■Yppah / イパ
イパことジョー・コラレス・ジュニアによるソロ・プロジェクト。2006年のデビュー・フル『ユー・アービューティフル・アット・オール・タイムズ(You Are Beautiful At All Times)』以降、これまでに〈ニンジャ・チューン(Ninja Tune)〉から3枚のアルバムをリリース。映画『ラスベガスをぶっつぶせ』やゲーム『アローン・イン・ザ・ダーク』、連続テレビ番組『ドクター・ハウス』『CSI: 科学捜査班』などにも楽曲が起用されるほか、世界ツアーなど活動の幅を広げている。

カリフォルニアに越してきてから犬を飼いはじめたんだけど、彼らはこのアルバムのライティングのプロセスに大きく影響していてね(笑)。

前作はもう少しアンビエントなものだったと思います。『81』という生まれ年をタイトルに据えた、パーソナルな内容でしたね。今回はその意味ではどんな作品でしたか?

イパ:新作は、前作の続きのような作品なんだ。類似点がたくさんあると思う。2つの作品のちがいは、前回のほうはもっと純粋で感情的だったけど、今回はもっとディテールにこだわっているところかな。もっと内容が凝縮されているんだ。

いったいどういう点で「小休止」だったのでしょうか?

イパ:これは、犬に餌をやるときに使う「待て」の意味だよ。カリフォルニアに越してきてから犬を飼いはじめたんだけど、彼らはこのアルバムのライティングのプロセスに大きく影響していてね(笑)。家で作業してるから、制作中、ずっと犬たちと過ごしていたんだ。
 彼らとすごしていることでサウンドに影響があるわけではないけど、作っている間、彼らにずっと囲まれていたから、そういう意味で影響を受けてるんだよ。製作期間の大半を犬たちと過ごしていたから、そのタイトルにしたんだ。

たとえば『ゼイ・ノウ・ワット・ゴースト・ノウ(They Know What Ghost Know)』(2009)などには見られたフィードバック・ノイズや、いわゆる「シューゲイザー」的な表現は、その後、音の表面にはあまり出てこなくなりましたね。イパというのはあなたにとってそもそもどういうユニットなのでしょう?

イパ:たしかにそうだね。このアルバムでは、雰囲気が前回よりももっとコントロールされているから。イパは僕のお気に入りのプロジェクトで、そうやって自由に変化を加えられるところが魅力なんだ。決まった方向性がないからこそ特別。何も考えずに、楽器を触ることから自由に曲作りをはじめることができる。そこから自分が好きなサウンドが生まれるまでライティングを続けるんだ。それがイパというプロジェクトのテーマ。考えすぎずに、直感に任せるんだよ。その過程で良いサウンドが生まれたら、そこからいろいろと考えていく。そうすることで、自分が聴いていて心地のいい音楽が作れるんだ。

(通訳)今回、その自由なプロセスの中でサウンド的に変化した部分は?

イパ:ほとんど同じだと思う。少しテンポが早いものを好むようになったり、アンビエントなサウンドをもっと広げていったというのはあるかもしれないね。ギターのグライムっぽいエッジーなサウンドをより好むようになったのもあるかもしれないし。あとは、さっきもいったようにもっとまとまりのあるサウンドを意識するようになったのもその一つだと思う。サウンドや曲同士にもっとつながりがあるんだ。

この2年、ギアをたくさん買いはじめて、それを使ってサウンド・デザインをするようになったんだけど、それを曲に使えたらとずっと思っていたんだ。

サウンド・プロダクションについて、とくに今回こだわったり気をつけた部分はありますか?

イパ:この2年、ギアをたくさん買いはじめて、それを使ってサウンド・デザインをするようになったんだけど、それを曲に使えたらとずっと思っていたんだ。サンプルしたり、レコーディングしたエレクトロニック・サウンドのまわりに生の楽器のサウンドを重ねていくっていうのが主なやり方だった。だからこそアルバムが完成するまでに時間がかかったのさ。サウンドを作る中でいろいろな変化や発見があったから、なかなか方向性が定まらなかったんだ。

“ブッシュミルズ(Bushmillls)”のヴォーカルはあなた自身ですか? 声や歌を楽曲に用いるときの基準を教えてください。

イパ:そう。前よりは自分の声を評価するようになったけど、やっぱりまだ自分の声は好きにはなれないな(笑)。基準はとくにないね。声や歌を使いたいと思う時には自分が欲しいサウンドが決まっているから、エフェクトを使ってそれを作るようにしているくらい。いまではいろいろなエフェクトがかけれるし、自分がいいと思えるものができあがるまでに時間がかかることもあるけどね。

ジャケに使われている絵の作者、パット・マレック(Pat Marek)は、物事や生命の断面を象徴的に表すような作品を多く描かれていますね。彼の絵を用いようと考えたのはなぜですか?

イパ:彼から僕にコンタクトをとってきて、自分のアートワークを僕の音楽に使う気はないかと訊いてきたんだ。で、僕もアートワークが必要だったし、彼の作品集を見てみたら素晴らしかったから、彼にデザインしてもらうことにした。彼から連絡があったのは、2年くらい前の話。彼にアルバムの制作過程や音、犬の話をしたんだけど(笑)、よく見ると、すごく抽象的だけどアルバムのアートワークの中にはさっき話した犬が描かれているんだ。ソング・タイトルや音、制作環境の雰囲気、僕が話したことを、彼が抽象的に表現してくれたのがあのアートワーク。ヴァイナルに印刷されたあのデザインを見るのが楽しみだね。

エイフェックス・ツインが昨年の新作以来元気に活動していますね。エイフェックス・ツインはあなたにとって重要なアーティストですか?

イパ:エイフェックス・ツインは大好き。彼の作品はつねに聴いているよ。おもしろいのは、彼の作品って家でじっくりと座って聴くわけではないんだけど、彼のプロダクション技術からは大きく影響を受けているんだ。僕の音楽の中のグリッチっぽい部分は、彼からの影響だね。

新作を聴かれていたら感想を教えてください。

イパ:聴いたよ。あまり言いたくないけど、正直少しガッカリしたんだ。もう少しアイディアが詰まっていてもいいんじゃないかなと思った。人の作品のことをインタヴューで批判するのはあまりいいことではないし、僕にとやかく言う筋合いはないけど(笑)、僕の感想はそれ。アルバムを聴く前に新作のシングルを聴いた時はすごく興奮したんだよね。すごくいいアルバムになるんだろうなと思った。ああいう曲をもっと収録したらいいのにっていうのが正直な意見だけど、僕の期待がきっとみんなの期待とちがっているんだろうな。

では、ボーズ・オブ・カナダでいちばん好きな作品と、好きな理由などを教えてください。

イパ:どれだろう……それぞれに魅力があるから……難しすぎて答えられないよ(笑)。すべてが好きだから、一枚は選べない。どうしてもって言われたら、『キャンプファイア・ヘッドフェイズ(The Campfire Headphase)』(ワープ、2005)って答えるべきだろうな。好きなトラックがいちばん多く入ってるから。

(通訳)彼らの魅力とは?

イパ:彼らの音楽はずーっと聴いてる。彼らのサウンドって、シンプルだけどすごくいいと思うんだ。あと、僕にとって、エレクトロニック・アーティストでいまだにミステリアスだと思うアーティストはあまりいないんだけど、彼らにはまだミステリアスな部分がある。彼らのローファイなヴィジュアルも魅力的だし、とくにヴィデオなんかはすごくおもしろいと思うね。あのランドスケープや質感にはインスパイアされているんだ。

ロングビーチに住んでいるといつだって外に出られるし、家の外にいることをエンジョイできる。サーフィンもするようになったし、そういうのも影響していると思うよ。

現在の活動拠点はカリフォルニアですか? カリフォルニアの風土やカルチャーから受けた影響はありますか?

イパ:そうそう。ロング・ビーチに住んでるんだ。テキサスの暑さに耐えられなくて(笑)。夏の間に外にいられるっていう環境は影響していると思う。ヒューストンは、夏は暑すぎて外に出ていられないからね。ここに住んでいるといつだって外に出られるし、家の外にいることをエンジョイできる。サーフィンもするようになったし、そういうのも影響していると思うよ。開放感があるから、より多くのものにインスパイアされるようになったんじゃないかな。

以前、カリブーの『アンドラ(andra)』(マージ、2007)に影響を受けているとおっしゃっていたのを読んでとても納得できました。エレクトロニックなんですが、根底にサイケデリック・ロックを感じさせます。あるいは『アンドラ』がそうであるようにクラウトロック的なトラックもありますね。あなたにとってのカリブーという存在についても語ってもらえませんか?

イパ:『アンドラ』は僕のお気に入りで、大きなインパクトを与えてくれた作品なんだ。そのアルバムのパフォーマンスを見たんだけど、そこで彼は、僕がやりたいと思っていたことをたくさんやっていて、それが刺激的だった。エレクトロと生楽器をミックスしたりね。いまでこそいろいろなギアなんかが出てきてそこまで難しくないのかもしれないけど、当時は「ワーオ! どうやってエレクトロのプログラムを楽器とつなげているんだろう!?」って衝撃だったんだ。彼は博士号も持っていて、ピアニストでもあって、とにかく何でもできる。僕も彼みたいだったらいいのにな(笑)。

テキサスといえばサーティーンス・フロア・エレヴェーターズ(13th Floor Elevators)ですが、テキサスのサイケデリック・ミュージックに思い入れがあったりしますか?

イパ:彼らのファンでもあるし、影響は大きく受けてるよ。シューゲイズの部分もそうだし、あのドリーミーな部分が好きなんだ。そのあたりは自分の音楽にも取り入れようとしている要素だね。

あなたの音楽を「シューゲイザー」と呼ぶかどうかは別として、あなたはそのように呼ばれる音楽に興味を持ってこられたのですか?

イパ:いまもそういったヘヴィーでサイケデリックな作品を好んで聴いているよ。僕が初期に受けた影響だしね。

そうだとすれば、どのようなアーティストが好きですか?

イパ:ライドはもちろんそうだし、ポスト・パンクのアーティストたちも好きなんだ。ヴァン・シーもシューゲイズっぽいところがあると思うし、スロウダイヴも好きだね。ジーザス・アンド・メリー・チェインも。あとは……スペースメン・3からも大きく影響を受けてるよ。



変化というより、今回の新作は初期に戻っている感じがする。

最初のアルバムである『ユー・アー・ビューティフル・アット・オール・タイムズ(You Are Beautiful At All Times)』(2006)からいままでで、制作環境におけるいちばんの変化を挙げていただくとすれば、どんなことですか?

イパ:うーん、変化というより、今回の新作は初期に戻っている感じがする。最初のアルバムのときはレコードをサンプルしていて、そのサウンドを使ってアンビエントな雰囲気を作り出していた。で、いまはそういうサウンドはおもにシンセで作っているんだ。モジュラー・シンセサイザーを使って、そのサウンドをサンプルしてる。だから、変化というよりは初期に戻った感じがするんだよね。すごく似ていると思う。まあ、内容はもちろんちがっているけど、メインの要素はある意味で原点回帰しているんじゃないかな。

ちょうどキャリアがもう少しで10年に差しかかろうとしていますね。この10年の間に、20代から30代へという変化も迎えられたと思いますが、アーティストとしてその変化をどのように受け止めていますか?

イパ:そうなんだ。気づいたらって感じ(笑)。変化は、ジャンルを考えなくなったことだね。前は、エレクトロの要素を使ったロック・アルバムを作りたいとか、そういう考え方をしていたけど、いまはただ、エレクトロの要素を使っておもしろいアルバムを作りたいというふうに考えるようになった。いまの時代、音楽が混ざり合っているのは当たり前だし、いろいろなアプローチをとることができるしね。

ギターはあなたの音楽の重要なキャラクターだと思いますが、ギターをつかわないイパのアルバムは考えられますか?

イパ:イエス。たまにリミックスをするんだけど、リミックスする作品の中には、シンセがメインでまったくギターが使われていないものもある。そういう作品を聴くと、自分もギターを使わない曲を使ってみてもいいかもしれないなって思うね。

(通訳)すでに作ったことはあります?

イパ:あるよ。いま作業しているプロジェクトがあって、それがミニマル・ウェーヴっぽいんだけど、いまのところギターは使っていない。だから、使わないまま進めていこうかと思ってるんだ。

(通訳)サウンドはやはりぜんぜんちがいます?

イパ:もちろん。やっぱりよりダークになるよね。80年代のミニマル・ウェーヴサウンドって感じ。でも、コピーしようとしてるんじゃなくて、そういう要素を使おうとしてるだけなんだ。

音楽を作りはじめたきっかけのひとつが映像だからね。映画のサウンド・トラックを作ってみたくて音楽制作をはじめたんだ。

曲のメイキングとしては、もしかすると弾き語りが原型となっていることも多いでしょうか?

イパ:いや、時と場合によるよ。モジュラー・シンセからはじめるときもあるし、他のものからはじめるときもある。でも大体は、雰囲気作りからはじめるかな。質感を決めたり、そこから曲作りをはじめるんだ。サンプルを使うときなんかは、サウンドはほとんど偶然に生まれるものばかりだしね。そうやって生まれたサウンドや雰囲気にインスパイアされながら、曲作りを進めていくんだ。

音楽以外で、たとえば本や映画など、この1年ほどの間でおもしろいと感じたものがあれば教えてください。

イパ:僕は映画や映像が大好きだから、フィルムに影響されて音楽を作ることが多い。おもしろいと思ったものは、タイトルさえもないビデオクリップとか、そういう作品だね。サーフィンのビデオ・クリップとか、スケボーのビデオ・クリップとか。そういったものをインターネットで見つけるんだ。ボーズ・オブ・カナダのローファイなイメージにも影響されてる。そういう映像を見ると、曲を書きたくなるんだよね。クレイジーなアーカイヴ映像の時もある。たまに、自分の50年代とか60年代の先祖のファミリー・フィルムをアップロードしている人なんかもいてさ。そういうのってすごくクールだし、見るのが大好きなんだ。

映像に音をつけることに興味はありますか? なにか音をつけてみたいと思う作品を挙げてもらえませんか?

イパ:もちろん。音楽を作りはじめたきっかけのひとつが映像だからね。映画のサウンド・トラックを作ってみたくて音楽制作をはじめたんだ。音をつけてみたい作品はたくさんあるけど、いま関わっているプロジェクトでは、アパートの中にいる人たちが、外で何か起こっているけどそれが何なのかわからなくて、でも確実に殺人が起こっている、みたいな……(苦笑)。シリアスではないダーク・コメディの映像に乗せる音を作ろうとしているところ。おもしろくなるだろうな。作るのが楽しみなんだ。あとは……わからないな。ロマンティック・コメディみたいな映像にはあまり興味がないね。もっと、ホラー・ドラマっぽい作品がいい。ホラーだと、いい意味で真剣に曲を作れるからさ。

tofubeats - ele-king

 トーフビーツの音楽を聴いていると、いつも思い浮かぶのは、音楽が鳴り終わったあとの満たされた静けさだったり、ほんの少しの寂しさであったりする。「パーティのあとに」とか「アフター・アワーズ」といってしまうのは簡単だが、音楽と日常を往復するように生活しているこの社会においては、誰しもが感じるものではないかと思う。

 もちろん彼の音楽は、インターネット時代特有のエレクトロニックなサウンドであったり、CDが売れなくなった時代ならではの考えぬかれた戦略性であったり、そもそも最高のポップ・ミュージックであったりするのだが、しかしその音楽の本質には、ポップスとダンス・ミュージックだけが持っている高揚感と寂しさの感覚が共存しているように聴こえるのだ。

 私はポップスとダンス・ミュージックは本質的には同じものだと思う。踊ること/歌うことへの悦び。同時にその享楽性が消えてしまうこと諦念もどこかにある。音楽は儚い夢だ。そしてトーフビーツの音楽にはそれがある。その「寂しさ」の感覚は、テン年代のアンセム“水星”から変わらないもので、当然、新作『ポジティブ』でも受け継がれている。

 たしかに本作の楽曲の多くはパーティー・ソングであり、新世代のJ-POPともいえるほどメジャー感にあふれるものであり、『ポジティブ』というアルバム名が示すように、とても前向きな楽曲が多く収められている。ドリーム・アミを起用した“ポジティブ”などは、これまで以上に軽快な曲に仕上がっている。

 しかし同時に、不意に醸し出される「寂しさ」の感情は、ダンス・トラックにおいて、より際立っているようにも感じられたのだ。“T.D.M”や、EPでリリースされた“ステークホルダー“、トーフビーツ的なテクノ“アイ・ビリーブ・ユー”などのトラックを聴いてみるとよくわかる。

 私は、かつて “水星”を聴いたとき、浅はかにもラップだからというだけで“今夜はブギーバック”のテン年代からの返答みたいに思ったものだが、いま聴き直すと、あきらかに宇多田ヒカル“オートマティック”への変奏/返答といえなくもない(彼は宇多田へのリスペクトをつねに公言している)。あの「寂しさ」の感情は、トーフビーツにしっかりと受け継がれている。そうアーバン・ブルースだ。とくに循環コードの中に切なく胸しめつけるような和音を紛れ込ませるワザ。本作ではクレバを迎えた“トゥ・メニィ・ガールズ”の「メニィ・ガール」のリフレインを聴いてほしい。

 そんな彼のアーバン・ブルースが極まるのが、エゴ・ラッピンの中納良恵を迎えた“別の人間”ではないか。この曲で彼はあえてビートを封印し、ヴォーカルとピアノ(打ち込みで作られたという)をメインにしたトラックを制作した。この曲はインターネット時代以降の歌謡曲=ブルースの魅力がある。

 そう考えると、トーフビーツの音楽は流行のシティポップといっけん近いようで実は(決定的に?)違うような気がする。なぜだろうか。それは90年代J-POP(歌謡曲)の「遺産」を引き継ぐ場所に彼が立っているからではないかと思う。

 CDが売れなくなった時代に、CDがもっとも売れた時代の「遺産」を受け継ぐこと。それは当然、ビジネスの側面ではなくて、あの時代のJ-POP(歌謡曲)が持っていたポップスとダンス・ミュージックの「享楽性」と「切なさ」を引き継ぐことを意味するのではないか(このアルバムで、あの小室哲哉と共作しているのは象徴的だ)。

 トーフビーツは音楽が消えてゆくことの「寂しさ」と「切なさ」を知っている。だからこそ音楽は素晴らしいということも。
 音楽はいつか消える。パーティは必ず終わる。ダンスフロアの光もやがて消える。パソコンから再生される音楽も、アイフォーンの中の音楽も、イヤホンから流れ出る音楽も唐突に終わる。すべては消えていく。そして、トーフビーツの音楽は、そんな享楽が終わったあとに続く日常や生活の寂しさを彩る。それこそポップ・ミュージック=ダンス・ミュージックの力(ポジティブ!)ではないか。そう、「ポジティブ」とは「ミュージック」であり、同時に「ライフ」のことなのだ。

アルカ(Arca)新作は11月! - ele-king

 アルカ。
 自主リリースのミックステープ『&&&&&』が話題となって、あれよという間にほぼ無名ながらカニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加、立て続けにFKAツイッグスのプロデューサーとしても『EP2』『LP1』とメモリアルな作品を残し、契約争奪戦の上で〈ミュート〉とのサインにいたり、傑作『ゼン』をリリース、今年はビョークのアルバム『ヴァルニキュラ』を共同プロデュースした、あのアルカだ。

 彼(女)の新作リリースが決定した。

 ポスト・インターネットを象徴し、アンダーグラウンドが時代とメジャーを動かすことを鮮やかに示してみせた彼(女)が、次のステージで表現するものは何か。自らのルーツや環境、社会的なコンフリクトと向かい合った上で踏み出される、その第2歩めに期待が高まる。

 「『ミュータント』は、デビュー・アルバム『ゼン』が内省的な作品だったのに対して、外に開かれ、そしてより大胆な作品となった」 プレス・リリースより

 制作上のパートナーとして、ヴィジュアル面を全面的に手掛ける鬼才ジェシー・カンダも、もちろん今回も切れっきれである。まずは新作ヴィジュアルと最新アー写、そして新作MVをお届けしよう。

■新着ミュージック・ヴィデオ「EN」

 我々の前に現れた突然変異(ミュータント)。デビュー作をはるかに圧倒する作品完成!
 昨年リリースされたデビュー・アルバム『ゼン』の尖鋭性、ビョーク、カニエ・ウェストやFKAツイッグスのプロデュース、奇妙で美しいヴィジュアル・アートとの融合作品…全世界に衝撃を与えたこれらの作品はアルカの才能のほんの序章だった。
 デビュー・アルバムから1年、アルカは、ミュータント(突然変異)というタイトルのセカンド・アルバムを早くも完成させた。まさに溢れ出るほどの才能が一気に解放されたような作品だ。

 デビュー作で末恐ろしい24歳と評され、時代の寵児となったアルカ、その今後の作品への可能性は、どきどきさせるようなものだった。そして本作はその通りの作品となった。
 デビュー作を下敷きとしながら、音楽的豊潤さ、表現力、全てにおいて圧倒している。そして彼はこれだけのことをやりながらも、まだ25歳ということも末恐ろしい。今作は全てにおいてレッド・ゾーンに突っ込んだようだ。

 発売は11月18日。

■アルカ / ミュータント
発売日:11月18日 日本先行発売 (海外:11/20)
品番:TRCP-190
JAN:4571260584884
定価:スペシャル・プライス2,100円(税抜)
ボーナス・トラック収録
解説: 佐々木渉(クリプトン)

■アルカ
アルカ(ARCA)ことアレハンドロ・ゲルシ(Alejandro Ghersi)はベネズエラ出身の24歳。現在はロンドン在住。2012年にNYのレーベルUNOよりリリースされた『Baron Libre』,『Stretch 1』と『Stretch 2』のEP三部作、2013年に自主リリースされたミックステープ『&&&&&』は、世界中で話題となる。2013年、カニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加(プロデュース:4曲/ プログラミング:1曲)。またアルカのヴィジュアル面は全てヴィジュアル・コラボレーターのジェシー・カンダによるもので、2013年、MoMA現代美術館でのアルカの『&&&&&』を映像化した作品上映は大きな話題を呼んだ。FKAツイッグスのプロデューサーとしても名高く、『EP2』(2013年)、デビュー・アルバム『LP1』(2014年)をプロデュース、またそのヴィジュアルをジェシー・カンダが担当した。2014年、契約争奪戦の上MUTEと契約し、10月デビュー・アルバム『ゼン』 (“Xen”)をリリース。ビョークのアルバム『Vulnicura』(2015年)は、ビョークと共同プロデュースを行い、その後ワールド・ツアーのメンバーとして参加した。2015年11月、2ndアルバム『ミュータント』リリース。

■ジェシー・カンダ
アルカのヴィジュアル・コラボレーター。アルカが14歳の時、とあるアーティストのオンライン・コミュニティーで知り合って以来の仲。「ジェシーと僕は知合ってからもう相当長いからね」とアルカが説明する。「何か疑問点があったとして、僕が音楽面でその疑問点をそのままにしてると、ジェシーがビジュアルでその答えを出してくるんだよね。ジェシーがそのままその疑問に映像で答えを出してなかった時は、それは音楽で答えを出すべきだ、という事だと思うんだ」。本作のアートワークもジェシー・カンダが担当。その加工されたヴィジュアルに関して「それは作品自身の内部で起こってる事を反映したもの」by ジェシー・カンダ。
https://www.jessekanda.com/

■ディスコグラフィー
1st AL『ゼン』(Xen) (2014年) TRCP-178 (TRCP-178X: HQCD仕様として2015年3月に再発)
2nd AL 『ミュータント』(Mutant) (2015年) TRCP-190

■デビュー・アルバム『ゼン』まとめ。
[Visual] https://bit.ly/1UUmQTd
[特集記事] https://bit.ly/1Dzi7iw

■リンク先
https://www.arca1000000.com
https://soundcloud.com/arca1000000
https://www.facebook.com/arca1000000
https://twitter.com/arca1000000
https://instagram.com/arca1000000
https://mute.com
https://trafficjpn.com

■公開中のミュージック・ヴィデオ「Soichiro」 *「Soichiro」とはジェシー・カンダのミドル・ネーム


Sam Binga - ele-king

 ここ数年間、ドラムンベースを追っているリスナーたちの多くから賞賛のことばを浴びてきたアーティスト、サム・ビンガ。いや、むしろそのサポーターの枠はドラムンベースに限らず、フットワークからワールド周辺の刺激的な音を求めるディガーの方にも多いという事実に注目するべきなのかもしれない。たしかに、いくつかの点において、「重低音」というターム内だけで聴くには、あまりにも広い表現をするアーティストだ。

 前回のアルバム『ジョイント・ベンチャー』はバオビンガ名義で自身の〈ビルド・レコーディングス〉から2011年に発表され、それまでのキャリアを総括するような、ブレイクビーツをダブステップやドラムンベース上で巧みに組み合わせたサウンドを披露。それ以降、彼は名義をサム・ビンガに変更し2013年にリリースを再始動させた。その年に〈エグジット〉からオム・ユニットとの共作で発表された『スモール・ビクトリーズEP』を、今回彼の音に初めて接する方に薦めよう。UKアンダーグラウンドのメッカであるブリストルから、フットワークやトラップの要素までをも取り込んだ音は、リリースから2年経ったいまでもフォロワーを寄せ付けない金字塔になっている。

 そういった傑作を連発しているプロデューサーなだけに、この名義でどんなアルバムを発表するのか大きな期待がかかっていたことは間違いない。それに彼はすでに10年選手だ。ジャンルの変化やプロダクション・テクノロジーの進歩が、いかにひとりのアーティストに影響を与えうるのかという意味でも、サム・ビンガはリスナーの注目を集めていた(もしかしたらポシャってしまうという不安もあったかも漂っていたかもしれない)。

 そうして先日、とうとう『ウェイステッド・デイズ』が我々の手元に届いたわけだ。語弊があるかもしれないが、これは「ラップ」アルバムだ。サム・ビンガはほぼ全曲にわたって、さまざまなMCとコラボレーションをしている。そして、その声の使い方がとても素晴らしい。それは冒頭のウォーリアー・クィーンとの表題曲を聴けば一目瞭然だ。彼女が声を荒げるとき、バックトラックのベースも突き抜けるようにトーンを上げ、有機的にリズムを形成していく。ベース・カルチャーにおいては、トラックという絶対的な存在に、MCが即興でことばを被せていくのがひとつのマナーであったわけだが、サム・ビンガは他人のための作品ではなく、自身のアルバムにおいて他者との共存を選び取ったわけだ。

 アルバムを支えている強靭なトラックにも、やはり最後の最後まで目を離すことはできない。作品全体貫くのは、ドラムンベースとジュークの共通項である170BPM前後の速度なのだが、そのなかでの表情の付け方が……。いわゆるジュークの三連キックが出てくることもあれば、MCに空間を明け渡して、そこにUSのサグさを投入したり、グライムのクラップが高速で鳴らされたりと、雑食性は混迷を極めているのだが、なぜかそれがスッキリと成り立っている。謎だ。

 一聴するとジェット・コースター的なノリで時間が過ぎるのかと思えば、“マインド・アンド・スピリット”のような曲では、叙情性までもが溢れ出してくる。その辺で、このカオスを理解するのではなく、消化不良のまま飲み込むことが正解なんじゃないかとすら思えてきてしまう。再度、MCの話に戻ってしまうのだが、そこでマイクを握るライダー・シャフィークの声がまた……良い。恐らくは褒められるようなことなど歌っていないのだが、他のMCと比べてみても、フロウするところはフロウし、きっちりリズムにハメるところではそのタイミングを逃さない。こういうときに、歌詞カードが手元にないことを悔やみたくなる。

 やはりこの作品を「ラップ&リズム」アルバムと呼びたい。そこに踊るひとがいる限り、やはり音楽はリズムの呪縛からは逃れられないし、身体的に訴えかけるような声もやはりまだまだデジタル時代には必要なようだ。そのテーゼを突き進んだのがこの生産的な「無駄な日々」であり、たとえそれが「ベース・ミュージック」論争に巻き込まれようが、DJに使いづらいと罵倒されようが、そこでサム・ビンガが選択したリズムと声は、現代において想像以上に強いのである。

Idjut Boys - ele-king

 ディスコ・ダブのパイオニアであるイジャット・ボーイズが今月末から11月上旬にかけて日本ツアーを敢行する。今年8月に〈スモールタウン・スーパーサウンド〉からリリースされた最新作『ヴァージョンズ』は、2012年に同レーベルから発表した『セラー・ドア』を換骨奪胎、ダブ・アレンジをしたもので、90年代より続くふたりのキャリアに裏打ちされた傑作だ。
 現在、ノルウェイ〈セックス・タグス〉のDJフェット・バーガーとDJソトフェットらの活動によって、再評価がされているディスコ・ダブだが、今回の来日ツアーはそのサウンドを理解する上でよい機会になるだろう。

Idjut Boys Japan Tour 2015
- new album "Versions" release party -

10.30 (金) 岡山 Yebisu Ya Pro
Info: Yebisu Ya Pro https://yebisuyapro.jp

10.31 (土) 大阪 Studio Partita (名村造船所跡地)
Info: CCO クリエイティブセンター大阪 https://www.namura.cc
CIRCUS OSAKA circus https://circus-osaka.com

11.2 (火/祝前日) 東京 CIRCUS Tokyo
Info: CIRCUS TOKYO https://circus-tokyo.jp

11.6 (金) 浜松 Planet Cafe
Info: Planet Cafe https://www.club-planetcafe.com

11.7 (土) 札幌 Precious Hall
Info: Precious Hall https://www.precioushall.com

11.8 (日) 江ノ島 OPPA-LA
Info: OPPA-LA https://oppala.exblog.jp

Total Tour Info:
AHB Production https://ahbproduction.com

calentito:
https://bit.ly/1N2w6ms

映画会社で働いていたDanと、サボテン農場で働いていたConradが出会い、Idjut Boysを結成。2人はパブやレストランでPhreekという名前のパーティーを始め、そのパーティーはその後、U-Star Dance Partyとなった。パーティーU-Star Dance Partyをそのままにレーベル名に使用し、1994年にはレーベルU-STARが立ち上がった。ダンスミュージックへの強い愛情をライブ感覚溢れたダブ処理とユーモアによって昇華した彼らの作品は、単なるリコンストラクトに留まらないオリジナリティーに満ちており、”Dub- Disco”なスタイルを確立。DiscfunctionとNOIDというレーベルも始動させ、また2000年以降はcottageとDroidというレーベルを立ち上げ、それらのレーベルを通じて素晴らしい才能達をリリースした。そんなIdjut BoysのDJスタイルとは、巧みなミックスと創造性溢れる選曲で構成されるmadでグルーヴィーなダンスパーティーである。2011年、Idjut Boysとしての初のオリジナルアルバム『Cellar Door』をSmalltown Supersoundより発表。2014年、大阪の盟友Altzが主宰するALTZMUSICAからドーナツ盤”World 1st Day”をリリース。2015年9月には『Cellar Door』をまるまるダブ化したダブ・アルバム『Versions』をリリース。今回はそのアルバムリリースツアーとしての来日が決定した。


ENA - ele-king

 東京を拠点に活動するプロデューサー、エナが11月にふたつの作品をベルリンの〈サムライ・ホロ〉
と、その姉妹レーベル〈サムライ・レッド・シール〉よりリリースする。昨年に同レーベルよりリリースされた『バイノーラル』では、ダブステップとドラムンベース以降の重低音とリズムの新境地を切り拓き、作品は高い評価を得た。その年末には東京での彼のホームである〈バック・トゥ・チル〉のコンピレーションに参加し、今年に入ってからはカセットで『ディバイデッド』をリリース。今回の作品は2015年初のレコード・リリースとなる。
 RAによれば、〈サムライ・ホロ〉からの『ディバイデッド9 & 10』が7インチでリリースされ、〈サムライ・レッド・シール〉からの『メテオ』のデジタル版にはボーナス・トラック2曲が追加される。トラック・リストは以下の通り。

Release:2015年11月6日

『Divided 9 & 10』
〈Samurai Horo〉
A 9th Divided
B 10th Divided

『Meteor』
〈Samurai Red Seal〉
A1 Meteor
A2 Bulkhead
B1 Insective

JUZU a.k.a. MOOCHY (J.A.K.A.M. / NXS / CROSSPOINT) - ele-king

最近ゲットした新譜

Obscure Rural Laid Back Rock Bandit Buggy Classics

Rose Mcdowall - ele-king

 ローズ・マクドウォールと聞いてもいまいちピンとこないかもしれませんね。というわけで、“ふたりのイエスタディ”といえば話は早いだろうか(ちなみに吉川ひなのとトミー・フェブラリーもカヴァーしてましたよね!)?
 そうなんです。このローズ、何を隠そう──水玉模様の衣装とド派手なメイク&ヘアスタイルをキメこんで、時代を先取りしたゴスロリ・ファッションと甘くはじけるシンセ・ポップで80年代のお茶の間を席巻した──グラスゴー出身の女の子デュオ=ストロベリー・スウィッチブレイドの片割れなのだ。

 突然の名声により2人が抱えた精神的ストレスは相当なものだったのだろう。スウィッチブレイドはわずか1枚のアルバムを残して86年に解散。その後、ソロへの道を歩んだローズが唯一発表している作品『カット・ウィズ・ザ・ケイク・ナイフ』(2004)がこの度リイシューされた。そして、そのリイシュー元が、現行ポストパンク〜ノイズ〜シンセポップ・シーンのなかでもとりわけセンシブルでトンガった連中の作品を輩出するレーベル〈セイクリッド・ボーンズ〉と〈ナイト・スクール〉ということからだけでも、この作品がいまこそ聴かれるべき状況にあることを容易に察知できるはずだ。

 さて、その内容はというと、88年〜89年に録音されたデモ音源に、88年にリリースされたEP『ドント・フィア・ザ・リーパー』(「死神を恐れないで〜」なんて歌うブルー・オイスター・カルトのカヴァー曲!)の2曲を追加収録したものである。そして、このデモ音源。ずばり! ストロベリー・スウィッチブレイドのセカンド用に作られた曲も多く含まれているので、(相方ジル・ブライソンのいない)ひとりスウィッチブレイドの未発表曲集としても十二分に楽しめる。しかも、スウィッチブレイド時代のポップスター然としたゴージャスなサウンドの装飾(それはそれで重要なのだけれど)が取りはらわれているぶん、ハッとしてグー! なメロディの豊かさがよりくっきりと浮かび上がり、雲の間から射しこまれる「天使のはしご」のごとくローズの歌声とソングライティングの妙がゆらめきながら光り降り立つのだ。

 そして、もはや説明不要かもしれないけれど、ローズ・マクドウォールといえばコイル、サイキックTV、カレント93からデス・イン・ジューンに至るまで、いまも語り草となっている当時のインダストリアル〜ゴシック〜ネオフォーク〜オカルティックな音響シーンの最重要バンドを渡り歩いた歌姫としても知られている。なので、本作はパンク上がりの田舎の不良少女があれよあれよと表舞台に駆け上がり世界をカラフルに彩ったポップ・サイドと、まったく同じ時期に地下に潜りこみ世界を禍々しい黒に染めた暗黒サイドをつなぐ奇跡的な軌跡としても聴きどころたっぷりである。いかんせん太陽の光が強い分、裏に潜む影の部分がいっそう存在感を増し、その強いコントラストを存分に楽しめるってわけだ!

 アルバムはカレント93のデヴィッド・チベットとの失われた友情について歌われる悲しい哀しいナンバー“チベット”から幕を開ける。そして、続く“サンボーイ”ではスロッビング・グリッスル〜サイキックTVのジェネシス・P・オリッジと、80年代ニューロマを代表したバンド・パナッシュのメンバーにして後にサイキックTVに参加するポール・ハンプシャーについて歌われている。とはいえ、そのサウンドにドロリとした重さはなく、とびきりポップで軽快だ。ポコポコとしたチープなリズムが小気味良いドラムマシンのビートに、ソーダ水のように清涼感あるシンセとクリアなギターがピチピチはずむ。そこに乗っかるシュガーコーティングされたローズの歌声は、どれだけリアルで悲しみにあふれて陰鬱な内容を描き出そうとも、辺りにぱっと華やいだ真紅の花を咲かせる。まさに甘くて美味しい毒入りキャンディー。地上世界からドロップアウトした地下世界のフェティシストたちを虜にしたのも納得である。

 また、美しいハーモニーと情緒あふれるグッド・メロディが短編映画のように紡がれ、ローズの心の中に秘められたさまざまな心象風景を覗かせる“シックスティー・カウボーイズ”。シンセによるセンチメンタルなリフをバックにドラムマシンが疾走するイントロだけでインディー・ギターポップ・ファンのハートを打ち抜くキラー・チューン“クリスタル・ナイト”(最近のダムダム・ガールズ・ファンにも聴いてほしい)など、シンプルながらも繰り返し聴きたくなる現代性と中毒性はかなりのものだ。

 というわけで、王道シンセ・ポップ好きからアヴァンギャルド好きまでをもそわそわさせるこのリイシュー。水玉模様のファンシー・ドレスからタイトな黒のレザー・スーツに衣替えし、天使も悪魔も困惑させてしまうローズのコケティッシュな魅力だけでなく、彼女の想像力豊かでずば抜けたポップ・センス(というか罪深き魔力ですね、これは)をこれでもかと再確認できるリリースとなっている。

 余談になるけれど、これを機にローズがノイズ・ユニット「ノン」のボイド・ライスと結成していたデュオ=スペルが発表した60Sポップスのカヴァー集『シーズンズ・イン・ザ・サン』(1993)。そして、ロバート・リーと結成していたデュオ=ソロウによるケルティック色も漂う夢見心地アルバム『アンダー・ザ・ユー・ポゼスト』(1993)のリイシューも密かに願う。

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