「K Á R Y Y N」と一致するもの

[Dubstep/Drum & Bass ] by Tetsuji Tanaka - ele-king

1. Benga / Stop Watching/Little Bits | Digital Soundboy -main stream / post dubstep-


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 UKアンダーグラウンドでは、確実にダブステップが現在の舵取りを握っているわけだが、シャイFX主宰の〈デジタル・サウンドボーイ〉もその方向性をシフトしつつある......そのリリースをダブステップやファンキー中心に切り替えたのもそれを裏付けていると言えよう。源に、このままドラムンベースのみのリリースに限界を感じてきたのであろうことは、悲しいかな......世界中でそのシーンに対して起こっているわけだ。
 
 このレーベルのドラムンベースと言えば 、2008年の代表的な作品のひとつとして語られてるMCシステムの「ニアミス」がしばしあげられ、ディープ・コアなトレンドを作った作品でもあった。2007年〈クリエイティブ・ソース〉から発表された変則ディープ・アンセム、リンクスの"ディスコ・ドードー"によって現在のディープ・フロウなムーヴメントが本格化し、次世代のディープ・スター、コミックスやDJフリクション率いるショーグン・オーディオ・クルーなど、シーンを賑わせていき、現在を象徴する母体となったのである。ダブステップに押されているとはいえ、マーキー&スパイの"リフラフ"やホセ・ジェイムス"ウォリアー"のリミックスによっていちやく注目されたプロデューサー、ロックウェルの「ストーワウェイEP」など、トレンドを意識した無機質なピュア・ビートをレーベルに落としこんでいる。

 ここ最近の〈デジタル・サウンドボーイ〉のダブステップサイドのリリースはスクリーム、ブレイケージのダブステップ・リーダーやブリストルのTCと並ぶジャンプアップ・マスター、DJクリップズのUKファンキー・プロジェクト、レッドライト、などがある。
 そして、今回のベンガに続くのだが......その前に、7/30FUJI ROCK、7/31DBSにてスクリーム&ベンガが待望の再来日する。昨年、満員御礼となった2月の熱狂的なステージから早1年半、UKエレクトロニック・ミュージック界の代表的な存在にまで上り詰めた彼らの人気は世界中でさらに加速......もはや2010年代のダンス・ミュージックを牽引していくであろう彼らの多才なサウンドは、いまだ不確定かつ未知の変化に富んでいる。若さゆえの貪欲な吸収性がそうさせるのであろうが......日々、変化を好むUKエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、ダブステップ・オリジネーターたちが、ダンスフロア・アンセムなウォブリー・サウンドに嫌気がさし、ポスト・ダブステップを生み出した。またそこからすぐに枝分かれしていくのは、他のジャンルが同じような道を通ったように容易に想像できる。重要なのは、そこではなく、つまりどうような音楽性にダブステップが今後変わるのかであろう。さらにシンプルでミニマルなサウンドを追求していくのか、やはり若い世代によってダンスフロアの再燃が起こるのか、筆者は、ポスト・ダブステップ以降、おそらく初期のヘヴィーで硬質サウンドな状態に戻っていき、よりテクノ・インフルーエンスな作品が増えていくと思うのだが......1年後が楽しみだ。
 
 ベンガもまた現在のポスト・ダブステップの風潮に足を踏み入れつつあるのは、最近のリリースによって感じられる。スクリームの近日発売のニュー・アルバム『アウトサイド・ザ・ボックス』も然り。しかし、彼らはそのちょうど中間地点にいるサウンドで意欲的なチャレンジを続けていると言える。このシンプルで不確かなサウンドこそ彼らのテクニックであり、爆発的人気の秘密なのかもしれない。それをたしかめに数ヶ月後のリリースが控えているダブプレートの嵐を生のステージで体感すべきだ。

2. Instra:mental / End Credits | Nonplus Records-electronic / drumstep / post dubstep-

 どうしても毎回、原稿の随所で登場させてしまうポスト・ダブステップというサブジャンル。野田さんも本サイトの原稿で取り上げていたが、さまざまな音楽媒体で今もっとも注目され"旬"なムーヴメントであるのだが、現在のエレクトロニック・ミュージックの最先端は、やはりここにあるとまたしても感じる。以前、サウンド・パトロールでも紹介した〈ノンプラス〉、そして、インストラ:メンタルの今作、シリアルナンバー入り500枚限定10インチ「エンド・クレディッツ」 だ。チルアウト・ドラムンベース~バレアリック・サウンド~ディープ・ミニマル~ポスト・ダブステップを縦横無尽に駆け抜けるインストラ:メンタルだが、今日のダブステップ(アトモスフェリック・プロダクション側)発展を大きく彩る象徴的な必然変化、いわば"ドラムステップ"が、ここに存在すると言っていい。
 明らかにダブステップのオリジネーターたちとは交わらないサウンド・シンフォニーは、やはり出発点がドラムンベースだからであろう。ドラムンベースからの視点を持ってしても、時折不可解な印象(新感覚なテクノ・ステップいやエレクトロニカ・ステップ)を持ってしまう作品......そこが聴くものをより引き込みのめり込ませるのだ。日々シーンがネクスト・レヴェルへ向かうなか、新たなダウンテンポ・ミュージックに辿り着いた作品かもしれない。 デジタルが先行しつつあるシーンの現状にあって、この作品はアナログで聴くことを推奨したい。デジタルでは、感じ得れないそれが持っている調和のとれた"質感"が大いに発揮されているからだ。 

 その「エンド・クレディッツ」は、盟友Dブリッジとの共作によるミックスで新たな共同レーベル名〈オートノミック〉を冠にしたファブリックライヴ50に先行で収録されていた。このミックスは、全体的にメロウなラウンジ・テイストで見事なまでにドラムンベースとダブステップが、中間地点で融合したまったく新しいものになっている。その冠名にもなった〈オートノミック〉は、ポッドキャスト・シリーズとして好評を博し、次世代のロジカル・ステップとしてファブリック・ミックスへと繋がったのだ。そして5月にアナログ第一弾としてもスタートし、Dブリッジ、インストラメンタル&スクリームの何とも豪華布陣による「アカシア・アベニュー/デトロイド」を発表したのであった。
 先程、アナログで聴いてほしいといったが......この素晴らしい音は、アナログカット10インチの500枚限定品であるため、お早めに。この連載がアップされている頃には、すでに手に入らなくなってしまっているかもしれないが。
 それにしてもアナログは素晴らしいとあらためて感じた。さらに、〈ノンプラス〉の次のリリースはASC(エーエスシー)のアルバムへと続く......。

3. Komonazmuk / Dance Too (LEE JONES RMX) | Apple Pips

-tech dubstep / deep tech house-


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 インストラ・メンタルがドラムンベースとダブステップの境界を跨いでいるとすれば、このアップルブリム率いる〈アップル・パイプス〉は、テクノ/ミニマルとダブステップ/UKガラージを跨いでいる代表的なレーベルのひとつだと言える。 
 レーベルの1番は、マーティンからはじまり、アップルブリム&ペヴァーレリスト、T++、ラマダンマン、ブラックルス、インストラメンタル、アル・トーレッツ等々......いまから思うとポスト・ダブステップも予見していたラインナップで、レーベルの方向性がいまのトレンドを生み出したレーベルである。アップルブリムの音楽性は、得体の知れないブラック・マジック(黒魔術)のようなオカルト・ダブステップ〈スカル・ディスコ〉を通り、テクノ・ダブとポスト・ダブステップ/ガラージを融合した形が〈アップル・パイプス〉なのだ。近年のレーベル・リリースは、よりシンプルでミニマル・ライクな作品が圧倒的多数を締め、さらにトライバルでテック・ガラージな音楽性を推し進めるなど独自のポスト・ダブステップなサウンド形態を追求している。

 さて、コモナズムックだがアップルブリム同様ブリストルのアーティストで、2007年、ダブステップでデビューしている。が、彼のキャリアは、もっと古い。〈ムーヴィング・シャドウ〉、〈テック・イッチ〉、〈ハード・リーダース〉周辺のドラムンベース・レーベルでハード・エッジなドラムンベースをリリースしていた4人組、アイス・マイナスのひとり、ケイラン・ロマックスなのである。アイス・マイナス名義では、1998年~2004年まで活動後、コモナズムック名義にシフトし、ダブステップ・アーティストとして彼は成功を果たしたというわけだ。ドラムンベースで培われたダークでインダストリアル・ハード・エッジなテッキーサウンドを操り、トップ・プロデューサーとしてのし上がっていったのである。

 筆者のお気に入りは、ジェイクス主宰の〈ヘンチ〉より2008年発表された"バッド・アップル"だ。エレクトリックなシンセ群がオートメーション機能により右往左往するテクノ・トラックで、幅広く支持された彼の代表曲である。今作"ダンス・トゥー"でもテクノ・ダブとしても機能する重低音トラックにスライトリー・ダブなシンセがリヴァーブする漆黒のグルーヴでダブステップが本来持っているヘヴィな芯が感じられ、バッド・トリップを引き起こす。フリップ・サイドは、アップルブリムと〈AUSミュージック〉主するウィル・ソールとのコラボレーションでお馴染みのリー・ジョーンズがサポート。秀逸な4つ打ちのディープでダビーなテック・ハウスで、テクノ・シーンでもスピンしてほしい作品だ。

4. LV & Quarta 330 / Dong / Hylo / Suzuran(LV & Quarta 330 Remix)
| Hyperdub -electro dubstep-


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 ちょっと掲載が遅くなったが......6月のダブステップ会議パート2にて素晴らしいライヴを披露してくれた〈ハイパー・ダブ〉から、デトロイト新世代のカイルホールのリリースに続き、日本を発信源としたダブステップ・アーティスト、クオーター・330の作品を紹介しよう。

 リキッドでエレクトロなゲーム音シンセが代名詞な彼の作品だが、コード9がその才能を認めた唯一の日本人アーティストとして、数々の音源を〈ハイパー・ダブ〉からリリースしている。それをダイレクトにライヴ演奏で伝えているその手法も各方面から高い評価を得ている、まさに新世代を代表する日本人アーティストと言えるだろう。今回はLVとのコラボレーションだが、LVといえば、ラガでダビーなエレクトロ・ダブステップを傾倒したり、UKルーツ・シーンのヴォーカルをフィーチャーしたりと素材のオーガニック感を重視するアーティストとして知られる。両曲とも、両者の良さがちょうど真んなかあたりで細かく重なり合うダブステップらしさが生きたメランコリックなハイパーダブの模範的エレクトロ変則ビートと言ったところで、YMOやアフリカ・バンバータ辺りにインフルーエンスを受けているクオーター・330の音楽性が何だか妙に頷ける作風である。ポスト・ダブステップと言う流行など微塵も感じさせない彼らのオリジナル性が、コード9を虜にさせるのであろう。ブリアルがそうであったように。

 話が最初に戻るが、そのダブステップ会議パート2で、野田さんとディスクショップ・ゼロの飯島さんが、メイン・パーソナリティーで最新リリースの紹介や若手DJ/プロデューサーとの熱を帯びたトークを繰り広げられたようで好評を博した。これは私見だが、いまのシーンをダイレクトに伝えるならもうちょっと回数を頻繁にやってほしいと思う。画期的で素晴らしい企画であり、いまもっともホットなジャンルをみすみす放っておく手てはないだろう。ele-kingのようなアンダーグラウンド・シーンの"核"を突いているサイトと連動しているならさおさらだ。ローファーがインタヴューで話していたこと「最初のイヴェントなんか、20人ぐらいしかいなかったよ。そこにいまのダブステップ・オリジネーターたちがみんな居たけど」を日本でも再現できる最適なヴェニュー〈DOMMUNE〉もあるのだし......。

5. Ramadanman / Fall Short/Work Them | Swamp 81 -post dubstep-


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 野田さんとダブステップ界隈の話をすると必ずと言っていいくらいラマダンマンの話題になる。相当好きらしい......と言うか筆者もだが。〈ヘッスル・オーディオ〉主宰でポスト・ダブステップをリードしてきた重要人物だからなおさら注目しているのである。
 とにかく彼はいま、各方面からアプローチされまくっている。ダブステップ・シーンは言わずもがな、テクノ、ハウス、クラブジャズ、そしてドラムンベースの各主要なエレクトロニック・ダンスミュージック・シーンなどからだ。いろんなところで注目されるだけあって彼のプログラミング・スキルは、いたってシンプルながら多様性に耐えうる自身のフォーマットを有している。どのシーンに行ってスピンしても、"ハマる"曲を量産し、認められ続ける彼はある意味凄い。しかも20代前半のプロデューサーだからおそれ入る。なかには、味気ないと感じるものもあるが、そういう曲はテクノ・シーンでウケるし、ガラージ・テイストな変則2ステップみたいな曲はハウス・シーンでウケる。アシッド・ハウスなテイストもあるし、ブロークンビーツ、時折レイヴ・ジャングルなアーメンも組み込む。UKアンダーグラウンドの音楽性を掻き集め、集約したハイブリッドな才能を彼は持っている。
 
 このA面の"フォール・ショート"も確実にテクノ・シーンでも活躍できるDJユースなダブ・ファンクだ。逆サイドは、〈スワンプ81〉のオーナー、ローファーがDBS来日時にかけていたグライム風ヴォーカルをループしたルードボーイ感溢れるスワンプ・アンセムで、これまたインプレッシヴなバウンシー・トラックに仕上がっている。

 その〈スワンプ81〉のローファーと言えば、やはり〈DMZ〉が真っ先に浮かんでくるだろう......その〈DMZ〉から遂にリリースとなったマーラとコーキのユニット、デジタル・ミスティックズのファースト・アルバム『リターン・2・スペース』。おそらくマーラの単独制作によりアナログ・オンリーでリリースした初期DMZを彷彿とさせる重低音ダーク・スペイシー・トラックだ。本当に多くの人が待っていたアルバムで、叙情的なシンフォニーとアトモスフェリックな空間センスが解き放たれた傑作である。

 レゲエにインスパイアされているマーラが、レゲエ・セレクターの象徴であるダブプレート文化を守る数少ないDJとして、そのアルバムを彼らしくアナログ・オンリー(現時点では)でリリースしたことに敬意を表したい。デジタルやダウンロードでは得られないリアルな"物"がここに存在しているのだから。

6. Rregula & Dementia feat Miss Redflowe / Last Hope / Dizgo | Icarus Audio

-neuro funk / drum&bass-


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 個人的な話ではあるが、6月~7月は何かと不調であった。体調が良くなかったり、仕事で転機が訪れたり、DJブッキング、制作に追われ多忙がたたってそうなったのだが、この曲を聴いたお陰でかなり調子を取り戻した。久々に筆者好みのドラムンベースで爽快なランニング・チューンがリリースされたのである。

 レギュラ&ディメンティアは、オーストラリア出身のニューロ・ファンクを支持する若手有望株のプロデューサーだ。レギュラは以前、同じくオーストラリアのフェスタとのユニット、バッド・ロボットとして、2006年にドラムサウンド&ベースライン・スミスのメインストリーム・レーベル〈テクニーク>から「マスターズ・オブ・マイト/シーケル2」、〈ブラック・サン・エンパイアー〉から「フォーエヴァー」を発表し頭角を現す。その後、2007年(音楽性の違いによるのか?)ユニットの活動停止にともない、個人名義やディメンティアと組む機会が増し、いまの音楽スタイルに定着したのであった。

 オーストラリア、ニュージーランドのオセアニア地区は、ペンデュラム、コンコード・ドーン、ステート・オブ・マインドなどが独自の音楽性(ロッキン・サウンドやニューロ・ファンクのブームを作った)を打ち出し、UKやオランダに匹敵するドラムンベースが盛んな地域に発展させたのである。

 今作をリリースした〈イカロス・オーディオ〉だが、USの新鋭レーベルでレギュラ&ディメンティアが看板アーティストとして一翼を担っていると言えよう。A面でフィーチャーしたのは、ベルリンの紅一点、ミス・レッドフラワーとのコラボで、幻想的なヴォイスを披露している彼女は、DJ/プロデューサー/ヴォーカルもこなすマルチな才能を持ち、いまもっとも注目の女性ドラムンベース・アーティストだ。女性だからといって、まったく物怖じしないドライブ感溢れるニューロ・ファンク/サイバー・ファンクなDJで軒並みフロアをロックしているらしい......いつしか筆者も共演してみたいものだ。

 この作品の特質すべきは、ダブル・ドロップ(ロングミックスのブレンド状態)のときに出力される出音が並ではなく飛躍的に伸び、爆発的なドライヴ感が体験できるのだ。この状態を筆者は、"ドライビング・シンドローム"と呼んでいるのだが......いろんな曲でミックスを試した結果、驚くほどそれは良く聴こえるのである。やはりこれはフロアで体感して頂きたい。しかもアナログでないとこの出音は体感できないだろうことは、当然である。

M.I.A. - ele-king

リリース前から『マヤ』というよりもM.I.A.がスキャンダルの渦に巻き込まれている。ことアメリカの音楽メディアでは、『ザ・ニューヨーク・タイムズ』の女性週刊誌風のエグイ記事――テロリストの父はいなかった説、高級ホテルでの豪華な食事もしくはディプロ発言の「彼女は政治的ではなくギャングスタ好きなだけだった」等々――を引き金に、マヤ・アルプラガサムの政治的矛盾や経歴の不透明さを突いたちょっとしたネガティヴ・キャンペーンがおきている。デビュー当時はいちぶの批評家からポリティカル・ポップの旗手として期待され、彼女のほうでもそうした評価をとくに否定してこなかったことを思えば、ある意味仕方がないのかもしれない、が......そしてまた、彼女の気まぐれに見える攻撃性(たとえばネットで流した"ボーン・フリー"の暴力的な映像)と喧嘩っ早さ(たとえば『ザ・ニューヨーク・タイムズ』の女性記者への攻撃)もまた、今回のスキャンダルに拍車をかけているのも事実だ。しかし、残念なのは、そうした喧噪のなかから『マヤ』の音が聴こえてこないことである。

そんな孤独のなかで彼女がやらなければならなかったのは、深く瞑想し、その助走でもって高く飛び上がることだった。文:磯部 涼



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 この8月でHMV渋谷店が閉店するというニュースを聞き、何とも言えない気持ちを抱えて訪れた同店で、ワゴン・セールの山の横に、同日にリリースされた七尾旅人の『Billon Voices』とM.I.A.の『マヤ』がディスプレイされていたのは、とても皮肉な光景のように思えた。消え行くリアル・ショップに、Youtubeを模したデザインのパッケージ達が並んでいる。両者のアートワークが似通っているのはまったくの偶然だが、同時に必然でもあるだろう。それはもちろん、いま、ポップ・ミュージックというものに真剣に向き合うのならば、インターネットというものに向き合わざるを得ないからだ。そして、それぞれがそこから導き出している答えのズレこそが、現在のリアリティなのだ。

"10億の声"と題された前者には、何処かオプティミスティックなムードが漂っている。アルバムは、真夜中にネット・サーフィンをしている少年を語り部に、ライヴ・ストリーミング・サイトでロック・スターを気取るサラリーマンが主人公の"I Wanna Be a Rock Star"ではじまる。そこから、前半は世界中に散らばる無数の"声"の主達を紹介していくのだが、七尾の自宅での弾き語り"なんだかいい予感がするよ"を境として、後半は踵を返すように内面へと向かう。ただし、妻にあてたラヴ・ソングで、昨年にスマッシュ・ヒットした"Rollin' Rollin'"が象徴するように、そこに閉塞感はない。そして、アルバムは希望を確信する"私の赤ちゃん"で幕を閉じる。同作のケースは額縁の形をしていて、ジャケットが入れ替えられる仕様になっているのだけれど、その中の一枚である、ネットから拾った様々な画像をコラージュしたデザインの裏は銀色で、覗き込んだリスナーの顔が写る仕掛けだ。

 七尾旅人は99年、日本の音楽産業のピークに18歳でメジャー・デビューし、圧倒的な才能を持っていたのにも関わらず、アンチ・コマーシャルだったがために、業界が衰退に向かうや否や、リストラに合った。その後、彼のキャリアが復調したのは、見よう見真似で自ら立ち上げたホームページで、散り散りになっていたファンたちと直接、交流を始めたことがきっかけだったという。そんな、音楽産業に対して誰よりも複雑な愛憎を持ち合わせている彼が、消え行くフィジカル・リリースに捧げた、初の自主制作3枚組アルバム『911FANTASIA』に続いて、配信システム、DIY STARSの立ち上げとともにリリースした本作に託した熱い思いは、説明するまでもないだろう。

 いっぽう、アスキー・アートでアーティスト・ネームを綴った後者は、非常にストレスフルな内容である。自身で手掛けるジャケット・デザインは何処か、KID606の初期作を思わせる。ミゲル・トロスト・デイペドロが先導したブレイクコアは、ネットから生まれた音楽的なムーヴメントの草分けで、ハッキングやP2P等とも同時代性を持っていた。テロリズムというモチーフに固執するM.I.A.がネットをテーマにすればそこに近づくのは当然である。ただし、00年代初頭にはまだまだ開拓地だったネットという空間は、今やすっかりインフラストラクチャーと化している。M.I.A.は本作の制作過程において、スタジオでYoutubeをひたすら観ることでインスパイアされ、ダウンロードしたサンプリング・ソースでビートを組み上げて行ったという。当然、それは目新しいことではなく、現代のクリエイターにとって、オン・ラインでのディグは中古レコード店やフリー・マーケットを回るよりも、よっぽど日常的な行為となっている。しかし、M.I.A.は『マヤ』において、ネットをブレイクコアのように武器と捉えたり、21センチュリー・B・ボーイのようにキックスと捉えたりするいっぽうで、何処か違和感も覚えているようだ。「デジタルまみれの世界のなかで大きくなった("Meds and Feds")」マータンギル・マヤ・アルルピラガーサムによるこのアルバムは、「iPhoneのTwitBirdから、いつも話しかけてくる("XXXO")」あなたに会いたくて仕方がないというラヴ・コールではじまり、しかし、「電波は圏外、つながらない("Space")」という嘆きで終わっていく。

 いま、M.I.A.は、シングル"Galang"でのデビューから7年、3枚目となるフル・アルバム『マヤ』で、初めての苦戦を強いられている。チャート・アクションの出だしはまずまずだが、とにかく批評家や熱心なファンからの受けが悪い。4月末に先行してネット上で公開された、"Born Free"のMVがあまりに直接的な残虐描写でYoutubeから即削除、賛否両論を呼んだのは、監督にわざわざジェスティスの"Stress"で悪名高いロメイン・ガヴラスを起用したのだから、それこそオン・ライン・テロリスト気取りの戦略だったのだろう。それに対して、「ニューヨーク・タイムズ」誌は、5月25日付け、リン・ハーシュバーグによるルポルタージュで、旧来のメディアから、生意気な新参者に対する報復をおこなった。とくに、ディプロの発言を引用する形でもって、"M.I.A.=Missing In Action"というアーティスト名の由来であり、捜索届けのようにファースト・アルバムのタイトルにもその名を掲げられた、彼女曰くスリランカのテロ組織"タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)"のメンバーで、現地で行方知れずになっている父親ーー彼が、実はスリランカ政府の役人で、現在はロンドン在住、彼女とも普通に連絡を取っているということが暴露されたのは痛かった。もちろん、M.I.A.はすぐさまTwitterや自身のHPを使って反論、『NYT』誌を糾弾したわけだが、彼女自身も父親の素性は明かそうとしていないし、真偽はともかくとして、M.I.A.というキャラクターが色眼鏡を通して見られるようになってしまったのは間違いない。同記事は、言わば、ここまで登り調子でやってきたM.I.A.に対するバックラッシュのトリガーとなったのだ。

 いや、ギャングスタを気取っていたのに、実は看守であったことをバラされて味噌をつけた、強面のラッパー、リック・ロスが語るボースティングとは違って、例えマヤが、ディプロの言うように、テロのモチーフをコラージュして危険性を演出してみせるアートスクール出身の女の子だったとしても、彼女がこれまで"M.I.A."というコンセプトを通して訴えてきたメッセージの価値が失われるわけではない。たしかに、ハーシュバーグの主張する通り、彼女の政治認識は甘いかもしれない。実際、LTTEによる内戦は今年、ようやく終焉に向かったわけだが、彼らはこの4半世紀のあいだに、大量の一般市民を虐殺してきたにも関わらず、それをさも英雄のように扱った罪は重いだろう。しかし、M.I.A.は政治家でも運動家でも、ましてや新聞記者でもなく、ミュージシャンなのだ。問われるのは知識の精度ではなく、サウンドの強度である。その点で、セカンド・アルバム『カラ』は00年代におけるグローバリゼーションとローカリゼーションの鬩ぎ合いを誰よりも見事に描いた傑作であった。ただ、それに続く、今回のアルバムが弱かったのは、「そんな作品を売って、自分だけ成り上がるなんて搾取ではないか」という、事前に簡単に予想出来たはずの、ありがちと言えばありがちな指摘である、「NYT」誌の記事に対する反論の準備が出来ていなかったところだ。

 『カラ』の開放性は、レコーディングを予定していたアメリカのビザが下りなかったため、世界中を周って制作したが故に生まれたものだったが、反対に『マヤ』の密室性は、オーヴァー・ステイのせいでアメリカからの出国が許されなかったため、LAのスタジオに籠って制作したが故に生まれたものである。M.I.A.は、密室の中で、大きな成功を収めた前作を越えなければというかつてないプレッシャーに苛まれていたはずだ。目の前にあるノート・ブックの向こうに広がる無限のネット空間は、ヒントを与えてくれる賢者と、足を引っ張って来るヘイターが姿を隠した真夜中のジャングルに見えたことだろう。それは、母親の名前を掲げた前作が描き出した、世界のポジティヴな側面とは対照的な象徴性だった。そして、そんな暗闇のなかでは、自己に向き合わざるを得ない。だからこそ、彼女は、本作に自身の名前を刻み込んだのだ。本来なら、そんな孤独の中で彼女がやらなければならなかったのは、深く瞑想し、その助走でもって高く飛び上がることだった。それでこそ、この世界の至るところで同じようにノート・ブックを覗き込んでいる人びとの心を掴むことができるし、アートとしても、エンターテイメントとしても前作が越えられたはずである。しかし、その暗闇の前で、M.I.A.の足はすくんでしまったのかもしれない。アルバムでは、"Lovalot"と"Born Free"の、アグレッシヴなトラックに乗った、ハードなアジテーションとナイーヴな心情吐露が入り混じったリリックの組み合わせが、その試みを比較的上手く実現出来ていると言っていい。ただ、それでも『カラ』の"20 Dollar"や"The Turn"が持っていた複雑さには適わない。また、他愛ないセクシャルなパーティ・チューン"TEQKILLA"や、『NME』誌7月号でレディ・ガガに吐いた唾を呑み込むようなエレクトロ・ポップ"XXXO"も、やはり、前作にも収められていたロリポップ・ソング"Boys"や"Jimmy"のような絶妙な効果は発揮していない。

 そして、何よりも足を引っ張っているのが元ボーイ・フレンドにして、つねに盟友であり続けたディプロで、彼が手掛けた2曲ーー炭酸の抜けきったビールみたいなラヴァーズ・レゲエ"It Takes a Muscle"と、前作が生んだ最大のヒット"Paper Planes"の明らかな二番煎じである"Tell Me Why"は、これがあの才人の仕事かと耳を疑うようなどうしようもなさだ。ディプロはTwitterで本作のネガティヴ・キャンペーンを繰り広げており、曰く「オレの曲はスラミン。残りはまるでスキニー・パッピーで、悪夢みたいだ」そうだが、まさか本気で言っているわけではないだろう。あるいは、M.I.A.の夫でワーナーの御曹司、ベン・ボロフマンの反対に合い、プロデューサー陣のなかでたったひとりだけ別スタジオでの作業になったことへの当てつけで、わざと手を抜いたのだろうか。そんなゴシップめいた推測をしたくなるほど、本作は音楽的魅力に乏しい。要となるはずだったダブ・ステップのトラックメーカー、ラスコは健闘しているものの、前作におけるスゥイッチの革新的なプロデュース・ワークをなぞるのがやっとである。

 もちろん、『Billon Voices』と『マヤ』を対等に比較するのは可笑しいし、後者は、前者の何百倍もの売り上げをすでに達成している。しかし、それぞれのディスコグラフィーで見た場合、前者がターニング・ポイントとなったのに対して、後者が傑作『カラ』を越えることも、また、それとは別の道を切り開くことも出来なかったのは明らかだし、インターネットというテーマで聴くと、その混沌に呑み込まれたような後者の失敗の仕方は、2010年のメジャーな音楽産業を象徴しているように思えてならないのだ。ちなみに、『マヤ』の日本盤ボーナス・トラックの1曲である、その名も"Internet Connection"と題された、まったくもってつまらない楽曲は、ディスコミュケーションにこんがらがった以下のようなヴァースで終わっていく。ーー「問題はあたしの情報/だからやすやすと、知らない人には渡さない/あなたには、あたしのことは解らない/あなたは知らない、あたしのやり方を/"何か不具合を起こしたの"と、あたしが訊けば/"ネット接続がおかしいんだ"と、あなたは答える/昨晩もあたしはクラッシュ/アタマの外をぐるぐる廻っていた」

文:磯部 涼

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彼女は初めて90年代後半にイギリスで起きたアジア系の暴動のサウンドトラック・アルバムをつくったのだろう 文:三田 格



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 90年代の後半、『NME』を広げると毎週のようにイギリスのどこかでアジア系の暴動が起きていた。その数はいつもとんでもなく、場所も各地に広がっていた。それらは本当に大規模で、どうして05年にフランスで起きた暴動のように日本では報道されないのかぜんぜんわからなかった。記事に関連してシーラ・シャンドラやモノクローム・セットのビッドなど、いわゆるインド・パキスタン系のコメントを探してみたものの、英語力の問題なのか、見つかったためしはなく、タイミングよく訳されていたハニフ・クレイシの小説を読むことで、なんとなく彼らの不満を理解した気にはなっていた。でも、できればアンジャリやコーナーショップ、あるいはベティ・ブーやティム・シムノンの言葉で何が起きているかを知りたかったというのが本当のところではある。70年代にナショナル・フロントが台頭していたときにはスペシャルズやファン・ボーイ・スリーを結成したテリー・ホールが暴動が起きてからすぐにファン-ダ-メンタルのムシュタクと『ジ・アワー・オブ・トゥー・ライツ』をリリースしたときは(内容はともかく)なんて一貫してるんだと感心したもよく覚えている。

 M.I.A.は暴動のサウンドトラックではなかった。それらはイラスティカやエイジアン・ダブ・ファウンデイションが担っていたことで、その当時、前者のヴィデオ・クルーだったM.I.A.は「平和のために戦う」とか「国家を罵ってやる」といった歌詞をどちらかといえば楽しいダンス・ミュージックにのせて歌い出した。デビュー・アルバム『アルラー』の冒頭を飾る"バナナ・シット"などは何度聴いても笑い転げてしまう。彼女のあっけらかんとした感性は、いってみれば暴動が収束に向かったことを象徴していたとさえいえる。ちなみに彼女に活動資金を与えたのはジョン・ローンだった。両親が誰だかわからず、自分が何系のアメリカ人だかもわからないハリウッド・スターの。
 
 「わたしはアメリカを否定しない。先進国と途上国の情報量が同じぐらいになればいいとは思うけど」
 世界中を旅して回って......つまり、サウス・ロンドンを抜け出して制作されたセカンド・アルバム『カラ』について取材した際、彼女はそういって、なるほどそれからすぐにブルックリンに移住したこともニュースになった。彼女が音楽をはじめた動機はよく知られているようにインド首相を暗殺したタミール・タイガーの幹部である父(アルラー)を探すためで、イギリスで起きていたアジア系の暴動が直接の背景にあったわけではない。『アルラー』はなぜかカナダではナショナル・チャートの1位となるほど売れて、父からも連絡があり、彼女の目的は果たされたといえる。普通に考えれば彼女は目的を見失ったはずである。世界を旅して回る......という方法論はおそらくはディプロのマネで、途上国のニュース・センターになろうとした『カラ』のコンセプトはどれほど彼女の奥深くから発していることなのか、多少は疑問もある。いちばんいいと思った"バード・フルー"のプロダクションが彼女自身によるものだったので、音楽家としてのM.I.A.にはむしろ期待値が高まった面もあるものの。
 
 ブルックリンではなく、なぜか(母の住む?)L.A.で集中的に録音された『マヤ』は全体的に荒廃したムードに覆われ、サウス・ロンドンに対する郷愁が強く窺われる。自分の名前をタイトルにしているぐらいで、アイデンティティと向き合わざるを得なかったことはたしかで、クラフトワークのアルバムのなかでもっともヨーロッパ的な感性が強く滲み出た『トランス・ヨーロッパ・イクスプレス』だけがアメリカで録音されたものであったように、彼女は初めて90年代後半にイギリスで起きたアジア系の暴動のサウンドトラック・アルバムをつくったのだろうと僕は思う。"テックキラ"という曲がレコード・ショップで流れはじめたとき、僕は「これなんですか? これ下さい」といって手渡されたものがこのアルバムだった。もう少し待っていれば彼女の声が聴こえただろうに、そのときは一刻も早くその曲の正体が知りたかった。家に帰って通して聴いてみると、今度は内省的な曲調が耳には残った。正直、"バッキー・ダン・ガン"に横溢していた彼女のあっけらかんとした感性はとても懐かしい。しかし、彼女はいま、大人になろうとしているのである。たとえばマドンナだったら『ライク・ア・プレイヤー』がなければ『エロティカ』はなかったように、どんなミュージシャンであれ、豊かな感情を基本としている人ならば怒りや悲しみといった感情の育て方に僕はとても興味がある。その場所にアメリカを選んだことも含めて『マヤ』はとても興味深い"デビュー作"ではないだろうか。

文:三田 格

DJ WADA - ele-king

Chicago House My best 10


1
Phuture - Acid Tracks - Trax Records

2
Fingers Inc - Mystery Of Love - D.J. International Records

3
Bam Bam - Where's Child - Unknown

4
Joe Smooth Inc Featuring Anthony Thomas- The Promised Land - D.J. International Records

5
The Housemaster Boyz And The Rude Boy Of House - House Nation ? (10 versions) - Dance Mania

6
Marshall Jefferson - Move Your Body - Trax Records

7
Duane & Co. - Hardcore Jazz - Dance Mania

8
Frankie Knuckles FeaturingJamie Principle - Your Love - Trax Records

9
LNR - Work It To The Bone - House Jam Records

10
Traxmen Presents Mark Bernard - Load - Dance Mania

DJ CHIDA - ele-king

heavy play early summer 2010


1
The Backwoods - Midnight Run - Ene

2
Hungry Ghost - Illumination - International Feel

3
Idjut Boys - The Waterboard - Droid?

4
Mademoiselle Caro & Franck Garcia - Soldiers (The Revenge Dub) - Buzzin' Fly

5
Tiago - Rider(COS/MES remix) - ene

6
Coati Mundi - No More Blues(Lee Douglas Remix) - Rong Music

7
9dw - Calfornia EP - ene

8
Kaoru Inoue - The Invisible Eclipse - SEEDS AND GROUND

9
COS/MES - D.F.G. - ESP institute

10
Sam Sallon - Youu may not mean to hurt me (Begin Mix) - Fascinating Rhythms?

ackky (journal) - ele-king

Chart


1
Inner Science - Momentary Spread - Plain Music

2
9dw - Posse (the beat brokers california club mix) - Ene & Catune Records

3
Red Fulka - Kumpo (raihani & salgado mix) - Elevator People

4
Bubble Club - Violet morning moon (Remix by Dr dunks) - Bubble Clubmusic.Com

5
Dj Nature - A Win Lose and Dance - Golf Channel Records

6
Eddie C Presents - Sleazotica - Kolour LTD

7
Supernova - Sweet disco music - Soundscape

8
Body Shower - S-Glez - Body shower

9
Adam & Philipp Maier - OWN - Rockets & Poines

10
Hungry Ghost - Illuminations - Feel Records

Bazz (Osushi Disco/Roc Trax) - ele-king

Summer Best


1
Dorian - Disco 6.0 (Early Summer Disco) - Maltine Records

2
Methusalem - Robotism - Ariola

3
Ratatat - Sunblocks - XL

4
Tangerine Dream - Choronzon - Virgin

5
Nhessingtons - You're the Summer - Force Majeure

6
Extra T's - E.T. Boogie - Sunnyview Records

7
Mim Suleiman - Mingi - Running Back

8
A Guy Called Gerald - Voodoo Ray - Warlock

9
Jamaica - I Think I Like U 2 - V2

10
Rod Stewart - Young Turks - Warner Bros Records

Chart by Pigeon - ele-king

Shop Chart


1

B.F.

B.F. Escape / Indica Aldebaran [GER] / »COMMENT GET MUSIC

2

Dr.Dunks

Dr.Dunks Keep It Cheap / No P's Keep It Cheap [US] / »COMMENT GET MUSIC

3

Jill Scott

Jill Scott Ron Trent Remixes Spring [US] / »COMMENT GET MUSIC

4

Juana Molina

Juana Molina Un Dia (Reboot Remix) Domino [UK] / »COMMENT GET MUSIC

5

Magoo

Magoo Magoo E.P. Boogie Times [FRA] / »COMMENT GET MUSIC

6

Sam Sallon

Sam Sallon You May Not Mean To Hurt Me Fascinating Rhythms [UK] / »COMMENT GET MUSIC

7

Terence Fixmer

Terence Fixmer Comedy Of Menace Part.1 Electric Deluxe [GER] / »COMMENT GET MUSIC

8

J Dilla

J Dilla Donut Shop Stones Throw [US] / »COMMENT GET MUSIC

9

Unknown

Unknown Mountain 001 (Lexx Edit) / Mpuc001 Mountain People [GER] / »COMMENT GET MUSIC

10

V.A.

V.A. Little Leaf No.01 Little Leaf [UK] / »COMMENT GET MUSIC

YAMADAtheGIANT (LIVErary / Pureself / STTH) - ele-king

House Chart


1
Spectacle - Prism - Permanent Vacation

2
Olibusta - La Pazz - inFine

3
Tim Deluxe - Freedom - Skint

4
Tom Mangan - Mysterious Ex-Teacher - Souvenir

5
Kaoru Inoue - Ground Rhythm - Seeds and Ground

6
Martin Eyerer & Daniele Papini - Sublime - Blufin

7
Unknown - Hideaway - Barraput

8
Polar Geist - Home from the Can (Tensnake remix) - Bang Gang

9
Con Force - Black Stroke(Kink & Nevillle Watson Remix) - Modelisme

10
Pepita Project ft. Paris Brightledge - The Way We Were - Pepita Sound

WANG-GUNG - ele-king

思わずアクセルを踏み抜いた曲best10


1
After John - Kill minimal - Del Barrio Records

2
Typo - Niederflur - Minus

3
Novembertraum JP Montesino Remix - Joachim Spieth - Affin

4
Sub M.I.D.I remix - Stefano Lotti - Rubber Band

5
he Floors - Stefano Lotti - Capsula

6
a break in the clouds - Holden - Border Community

7
Euphrasia - Nico Purman - Vakant

8
Banda Core - Treplec - MilnorModern Records

9
Wake Turbulence - Koen Groeneveld - Roxy Records

10
Redo - Cesco&Picrudo - Monu-mental

初音家賢次 - ele-king

 長かった梅雨も明け、あちこちで盆祭りが行われている。私も先日、近所の神社のお祭りに行ってきた。やぐらの上では小学校高学年ぐらいの女の子が、スピーカーから流れてくる"東京音頭"や"ドラえもん音頭"にあわせてどんどこ太鼓を叩き、所作もバッチリ決まっている。出音に合わせてリズムを刻むのがうまい。DJみたいだ。耳がいいのだな。ところが、次のおじさんに交代したとたん、太鼓のリズムが遅れはじめた。うう、なんだか気持ちが悪い。神社の粗悪なラッパ型スピーカーの割れた音も耳によろしくない。サウンドシステムで音頭を鳴らすような、酔狂なクルーは現れないものだろうか......。

 などと考えているうちに、10年ほど前に岡山の有漢というところで体験した盆踊りのことを思いだした。CDやテープなどで出来合いの楽曲を流す昨今のお祭りと違って、ここの盆踊りは、オケこそテープだが、そこに歌い手が即興のフレーズを入れながら延々と歌い、語り続けるというホットなもの。夜もふけて子供たちが家に帰り、踊りの輪が大人だけになってくると、だんだん歌の内容も男女のアレやコレを扱った艶っぽいものになってくる。午前1時を過ぎ、宴もたけなわとなった頃、なおもやぐらの上で歌って語り続ける五十がらみのいなせなオヤっさんは、完全に踊りの場をつかさどっていた。
 これは自分にとってけっこうなカルチャー・ショックだった。それまで知っていた盆踊りよりは、むしろダンスホール・レゲエに近い。これぞ日本のレイヴ! こういうの、もっと都会の若い奴らに伝わんないかなー、などと思ったものである。
 そんなわけで、盆踊りやそこで歌われる音頭には以前から関心はあったのだが、このたび、首都圏河内音頭推進協議会「イヤコラセ東京」からじつに興味深い音源が届いた。この面妖な組織を率いる音頭のエヴァンジェリスト・鷲巣功は、かつては伝説のロック・バンド「静岡ロックンロール組合」で活躍、その後は音楽プロデューサーとしてランキン・タクシーらの作品を手がけていたという経歴をもつ人物。それがなぜいま「音頭」なのか?

 このイヤコラセ東京、昨年は河内音頭・江州音頭の歌姫、月乃家小菊のデビュー作『踊れ大阪総踊り』をプロデュースしている。カリプソやアフリカン・ポップスにもあい通じるトラックに乗せて「河内の平野はダンスのフロア~♪」というフレーズが飛びだす、なんとも愉快な浪花のレイヴ・アンセムである。さらにCD後半にはスティーヴン・スタンレー(80年代にはトム・トム・クラブ、90年代には全盛期のシャバ・ランクスを支えた名エンジニア)によるダブ・ミックスを収録。「大阪とキングストンから時空を超えて宇宙へ飛翔する河内音頭」といった趣であった。

 さて本題。今回紹介する初音家賢次『旅立て俊徳丸』、歌い手の初音家賢次は河内音頭の宗家「初音家」で活躍した音頭の名手。オリジナル・トラックは1959年もしくは60年に私家録音されたというヴィンテージもので、これに「全関東河内音頭リズム隊」による演奏と「全関東河内音頭ハヤシ隊」による囃子が加わり、この2010年という「初音ミク」の時代に「初音家賢次」が燦然と復活とあいなったのである。
 物語のテーマとなる「俊徳丸」の物語は、寺山修司の戯曲"身毒丸"のモチーフとなったことでも知られる民間伝承。継子いじめ、貴種流離譚、癩病、遍路といったモチーフには、芸能と穢れや差別、信仰の関係について考える契機が含まれており、興味が尽きない。
 冒頭に収録されている2010年ヴァージョンは、現代版にアップデートされた最新型のエレクトリック河内音頭。ころころとよく転がるパーカッションや女声の囃子もたいへん小気味よい。
 次に収録されている"原録音"には驚かされた。太鼓と囃子だけの伴奏で延々語り続けられる50年前のオリジナル・ヴァージョンは、卓越したスキルによる語り芸が冴える、これぞまさに芸能といった代物。背筋がゾクゾクッとする。控えめだが正確なリズムで鳴らされるパーカッションもあいまって、まるでジャマイカの宗教音楽ナイヤビンギのような崇高な響きさえ感じさせる。
 さらにはクオシモードの松岡"matzz"高廣によるクラブ・ミックス、速水直樹によるダブ・ミックスも収録。とくに後者はオリジナルとがっぷり四つに組み、巧みな職人仕事がなされた逸品。サウンドシステムで大音量で聴いてみたい。

 聞くところによると、よさこい祭りの本場、高知の現場では、町中でダンス・パレードがおこなわれ、若者たちはヒップホップやフラメンコを取り入れたオリジナルのよさこいダンスを踊っているそうではないか。けっこうなことである。そして願わくば、もっと祭りに音頭を! 路上のあちこちでサウンドシステムが鳴り響き、あっちではラガ音頭、こっちではダブステップ音頭、老いも若いも踊って踊って、ええじゃないか。ソラヨイトコサ、サノヨイヤサッサ♪ これが日本のレイヴだよ! 私は、そんな光景を夢見てやまない。

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