「MOOCHY」と一致するもの

J.A.K.A.M. - ele-king

 グローバル・ビーツの開拓者として確かな支持を得るJUZU a.k.a. MOOCHY こと J.A.K.A.M. が、11月27日に新たなアルバム『FRAGMENTS』をリリースする。

 本作はJ.A.K.A.M. が2020年にインド・ケララ州でのフィールド・レコーディングを通じて得た体験とサウンドに加え、 2023年にパキスタンのカラチ~ラホール~ペシャワールにおいても敢行された録音による伝統楽器にフィーチャーしたサウンドが特徴だ。スケート・カルチャーに端を発し、世界を股にかけてマイペースに活躍する彼の新境地が体感できるだろう。まさしく収録のトラックタイトル通り「NEW ASIA」な雰囲気漂う本作には、東洋と西洋の間に横たわる断絶が和らぐ未来を目指しつつ、まず「新しいアジア」としての連帯を呼びかけるメッセージも込められている。

 また、「2038年」という時代設定で作られた小説もアルバムと同時進行で制作されており、アジア圏とアラブ圏の文化が混ざり合い、混沌のなかに土の匂いを見出すような世界との触れ方が描写されている。16ページフルカラーブックレット入り。サウンドとあわせてチェックを。

ダブ・パトロール - ele-king

 昨年末の紙のele-kingの年間ベストにおける「ダブ」の続きという感じであります。うだるような夏にぴったりのヌケ成分多めの2022年上半期にリリースされたダブ系のリリースから10枚お送りいたしましょう(1枚昨年リリースでした)。なんだか振り返ってみると国産ダブものが異常に豊作だったイメージで、国産レーベルはもちろん、海外からのリリース(〈ZamZam〉傘下からUndefined)さらには海外勢とのコラボにはダッピー・ガンとエレメント、ちょいと別項で紹介する予定のミスティカ・トライブとまさかのダッチ・エレクトロのベテラン、レゴヴェルトとのコラボ=Noda & Wolfersなんてのも出ておりますがそちらは別途単体のレヴューにて近日。


Om Unit - Acid Dub Versions Self-released

 まずはベース・ミュージック方面から、ブリストルのドラムンベース~ダブステップのベテランのリミックス・シングル。サウンドそのままな身も蓋もないタイトルで、ザ最高な2021年のアルバム『Acid Dub Studies』を素材としてリミックス・シングル。本作との間に共作シングル「Root, Stalk, Leaf and Bloom」(こちらも最高です)をリリースしているデッドビート、ブリストルのニュールーツ・ユニット、ダブカズム、〈ボケ・ヴァージョンズ〉などからのリリースで知られる、シーカース・インターナショナル、そしてミニマル・ダブのベテラン、エコースケープの片割れ、ステファン・ヒッチェルがCV313とヴァリアント名義で解体。ローファイ・ダブなシーカース・インターナショナル、ステッパーなダブカズム、アップデートされたミニマル・ダブ~ダブ・アンビエントのデッドビートとエコスケープ方面と、ある意味でさまざまな方向に拡散している、現在のエレクトロニック・ミュージックのダブの解釈が楽しめる1枚。


Undefined - Defined Riddim Khaliphonic


ZamZam Sounds · UNDEFINED "Defined Riddim" LP + 7" Khaliphonic 15 vinyl blend

 こだま和文との10インチに度肝を抜かれた国内のダブ・デュオが、かねてからアナウンスされていた〈ZamZam〉系列の〈Khaliphonic〉(前者7インチ専科、こちらは10インチやLPなどそれ以外)からLPがリリース。ポール・セント・ヒラーレ、ヤング・エコーライダー・シャフィーク(参加楽曲は〈ZamZam〉から先行7インチでリリース)、さらにLPに付属するボーナス7インチには、日本人ルーツ・レゲエ・シンガー、故ラス・ダッシャーが参加。エレトロニックと生ドラムの編成で、ミニマル・ダブやアンビエントなどの手法を取り入れつつも、やはりルーツ・ダブのうまみを極限の引き算でむき出しにするソリッドなダブ・アルバム。彼らのなかでもオーセンティックなサウンドのボーナス7インチも、アルバムとの対比でおもしろい。


Duppy Gun × Element - Andromeda EP Bokeh Versions / Riddim Chango

 UK〈ボケ・ヴァージョンズ〉と日本の〈リディム・チャンゴ〉による共同リリース。〈リディム・チャンゴ〉を1TA(Bim One Prduction)と運営するタカクラヒロシことエレメントのプロダクションによる3リディムとダッピー・ガンのMC陣。タカクラが件のレーベルからリリースした「Freedom EP」(フィーチャリングされていたダブ・ポエッター、Nazambaは先日残念なことに急逝)は、ニュールーツ色強めでしたが、こちらはダンスホール方面というかダビーなグライムというか。最近「その手の音」といった感じで定式化してしまった感のあるテクノ方面などのダンスホールですが、こちらはそのグライム感の強さなど、くっきりとオリジナル。リディム解釈の角度の違いを聴かせている。


KEN KEN, ICHIHASHI DUBWISE, asuka ando - AMAI HIT KOUCHIE E.P. ARRROUND Wicked Sound Maker

https://arrround.thebase.in/items/55899471

 最近新たな勢いを見せている国内のラヴァーズ・ロック・レゲエ。ある意味で2010年代後半でその動きの突端を作ったとも言えるaska ando。彼女の『あまいひとくち』より、表題曲のニュー・ヴァージョニングでリカットとなる10インチがNoolio主宰の〈ARRROUND WICKED SOUND MAKER〉より。ヴィン・ゴーデン+リー・ペリーのトロンボーン・ダブ “5 Cardiff Crescent”(『Musical Bones』)を下地にした楽曲だったんですが、さらに先日坂本慎太郎物語のように』にも参加のトロンボニスト、KEN KEN(KEN2D SPECIAL / URBAN VOLCANO SOUNDS)がほっこりホーン・カヴァー、またKEN2D SPECIALのICHIHASHI DUBWISEがズブズブにダブワイズ、幾重にも重なるレゲエ・ヴァージョニングの妙味が味わえる1枚。スピーカーからは温泉気分の熱風が。そしてオマケのミックスCDがまた……ツッテッツテッテ。


Chakra & Ichiro feat. Tamaking Kozy / Chakra & Ichiro Dub Mix Hav - Rasta Woman / Rasta Woman (Chakura Dub) SF Recordings

https://drumandbass-rec.com/products/226434chakra-and-ichiro-feat-tamaking-kozy-ch

日本のダブということでいえばコチラは事件。2000年代の大阪ダブ・シーンを象徴するソウル・ファイヤーの〈SF Recordings〉がおそらく15年ぶりぐらいに突如シングルをドロップ。目を疑いました。詳細は不明ながらダブ・ミックスに〈SF〉のドン、HAVを迎えた体制のキラー・ルーツ。色っぽいダブル・ミーニングで、ある意味でスラックネスな歌詞ですがキラーなサウンドはレーベルの往年と変わらず。そしてB面は同オケにて、まさかのヴォーカロイド、初音ミクの音声をフィーチャーしたこれまたキラーなダブ。


MaL - Primal Dub HOODISH

 冷房効果もありそうなチルアウトなダブを。PART2STYLEとして欧州のベース・ミュージック・シーンにも食い込み、そして最近ではMACKA-CHIN、J.A.K.A.M.(JUZU a.k.a. MOOCHY)とのZEN RYDAZとしてのリリースも活発なMalのソロ。2021年に全治9か月の足の大怪我で、2か月半もの間、入院。そんな入院のさなかにラップトップで制作が進められたというアルバム。これが生活に溶け込むような滑らかにチルアウトなエレクトロニック・ダブ・サウンド。レーベルは彼が拠点にしている高田場馬にある九州料理店「九州珠(KUSUDAMA)」のレーベル〈HOODISH〉より。「Night on the Sidewalk」あたりは、なんというか高田場馬からDJパイソンへの回答というか。詳しくは大石始氏のnoteにて(https://note.com/oishihajime/n/n93d6ab00e9f2)。


Tapes meets Nikolaienko - Sunda School II Porridge Bullet

 エストニアのレーベルより、ここ数年のローファイなエレクトロニック・ダブの旗手とも言えるテープス、そしてヤン・イェリネックのレーベル〈Faitiche〉などからのリリースで知られるウクライナのドミトリー・ニコライエンコのコラボ・シングル。モコモコしたループ・サウンドがまどろみながらエコーに消えていく、チャーミングでローファイなダブ・アンビエント。どこかザ・ケアテイカー的なノスタルジーも。


Nocturnal Emissions - In Dub Holuzam

 インダストリアルのベテランがダブ・アルバムをリリースというか、2010年代よりスタートしていたというダブ・シリーズCDRをコンパイルしたもののよう(オリジナルは自身のBandcampで入手可能)。リリースはリスボンのレコードショップ〈Flur〉のスタッフ、マーシオ・マトスが運営する〈Holuzam〉(姉妹レーベルにDJニガ・フォックスなどをリリースする〈Príncipe〉がある)。初期ダンスホールをスローダウンしたというか、どこかメビウス&プランクの『Rastakraut Pasta』を電化ダブ化したような、決してグルーヴィーとは言えないチャカポコとしたドラムマシンのチープな響き、そしてカットアップされる電子音やらノイズやらギターやらが飛び交うサイケデリックなダブ・アルバム。マスタリングはニュールーツのマスター・エンジニア、〈コンシャス・サウンド〉のダギーが担当とのこと。


FROID DUB An iceberg crusing the Jamaican coastline DELODIO

 オブスキュアなエレクトロやインダストリアルをリリースしているフランスはパリのレーベルより、主宰ふたりによるロックダウン下に作られたダブ・アルバム。大阪は〈naminohana records〉のウェブショップで知り速攻で購入。実は2021年の作品ですがLPがやっと再発されたようです(A4インフォ・シートっぽい+レコード盤面風の印刷のジャケットが最高ですね)。内容は、これまた上記で紹介したノクターナル・エミッションズの作品にも通じるチープな脱力系エレクトロニック・ダブ・サウンドということでチャカポコとしたドラムの上を、電子音やらスクリューなヴォーカルやらがエコーでいったりきたり、DAF『Allest Ist Gut』をあたりを適当かつ無理矢理レゲエ・カヴァーしたらこんな音になるのではないでしょうか、とかいろいろ妄想が広がります。さらにダブ色を強めた『DUBS & BEATS FROM 'AN ICEBERG CRUISING THE JAMAICAN COASTLINE'』もあり。リー・ペリー “Dub Revolution” (アルバムではなく楽曲の方)を始祖としそうな、オールドスクールなドラムマシンっぽいサウンドのローファイなエレクトロ・ダブを、最近勝手にドンカマ・ダブと呼んでいるんですが、まさにそっち系の音。最近流行っているような気がするんですよね。冒頭で書いたNoda & Wolfersもまさにという音で。


Best Available Technology - Fixing Until Broke Accidental Meetings

 イギリス・ブライトンのレーベル〈Accidental Meetings〉より、テープでリリースされたオレゴンのアーティストのダブ・ダウンテンポ。これまたローファイ系なダウンテンポですが、本当に1人の怠惰な時間のために脳を揺らす音楽というか、ニューエイジだとリラックスできない自分としては、トリップホップ時代のフィーリングありなブレイクビーツとかもあったりで、これは世代的には抗えないんですよね。

ZEN RYDAZ - ele-king

 NITRO MICROPHONE UNDERGROUND の MACKA-CHIN と PART2STYLE の MaL、そして JUZU a.k.a. MOOCHY の3人から成るユニット、ZEN RYDAZ のセカンド・アルバムがリリースされている。
 ディジェリドゥや三味線、アラビック・ヴァイオリンなどが入り乱れ、ヒップホップやダンスホールやジャングルのリズムが揺らす大地の上を、多様なスタイルのラップや歌が駆け抜けていく。日本ラップのファンもベース・ミュージックのファンも要チェックです。

弛まぬ想像力によって昇華されたZEN RYDAZの2ndアルバムがリリース!

極東発HIP HOP x WORLD MUSIC!!!
新時代のベースミュージック・ユニット ZEN RYDAZ が豪華ゲストミュージシャン達と共に、廃墟の遊園地(宮城県・化女沼レジャーランド)にて満月の下繰り広げた1発撮りの奇跡のライブセッション! 朝陽へ向かう瞬間を捉えた貴重な映像作品とともにリリースされます。

https://www.youtube.com/watch?v=WnBh7LolsQw

映像制作は近年、絶景 x MUSICで話題を集めるTHAT IS GOOD。
ドローンによる風景美を得意とするチームとの連携により、独自の近未来感と映画的情緒を持つ唯一無二な作品が出来上がりました。

●ZEN RYDAZ
MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY)
●ゲストMC/シンガー
ACHARU, AZ3(RABIRABI), D.D.S, EVO, NAGAN SERVER, MIKRIS, RHYDA, 愛染eyezen, なかむらみなみ
●ゲストミュージシャン
GORO(ディジュリドゥ、ホーミー、口琴), KENJI IKEGAMI(尺八), KYOKO OIKAWA(アラビックバイオリン), 東京月桃三味線(三味線)

●発売開始日
2021年12月02日(木曜日)
CD: 2000円(税別)

各種サブスク、ストリーミング
https://ultravybe.lnk.to/zentrax2

CROSSPOINT bandcamp
https://crosspointproception.bandcamp.com/album/zen-trax2

NXS Shop
https://nxsshop.buyshop.jp/items/55581725

TRACK LIST
01. WISDOM 04:57
 Vocal: ACHARU / Digeridoo & Jews Harp: GORO
02. CLOUD9 03:19
 Voice: MIKRIS / Violin: KYOKO OIKAWA
03. CLOUDLESS MIND 04:22
 Voice: NAGAN SERVER / Shamisen: 東京月桃三味線 / Flute: GORO
04. KOKORO 04:33
 Voice: AZ3,EVO / Violin: KYOKO OIKAWA
05. QUEST 04:28
 Voice: RHYDA, ACHARU, NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI
06. SLOW BURNING 03:32
 Voice: D.D.S / Violin: KYOKO OIKAWA
07. CROSS-BORDER 04:01
 Voice: 愛染 eyezen / Turkish Flute & Jewish Harp: GORO
08. CANCANCAN 03:43
 Voice: なかむらみなみ
09. MIRRORS 04:21
 Voice: ACHARU / Violin : KYOKO OIKAWA
10. VEDA 05:36
 Voice: NAGAN SERVER & NISI-P / Shakuhachi: KENJI IKEGAMI

Total Time: 41:50

Arrangement: J.A.K.A.M.
Mix: J.A.K.A.M. (01,03,05,07,09) & MAL (02,04,06,08,10)
Mastering: Robert Thomas (Ten Eight Seven Mastering London / UK)
Logo, Illustration: USUGROW
Picture: NANDE
Photo: Nobuhiro Fukami
Design: sati.

PRODUCED BY ZEN RYDAZ (MACKA-CHIN, MAL, J.A.K.A.M.)

P&C 2021 CROSSPOINT KOKO-099
https://www.nxs.jp/

プロフィール
ZEN RYDAZ:

NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHIN、PART2STYLEのMaL、JUZU a.k.a. MOOCHYことJ.A.K.A.M.
2019年、それぞれのフィールドで20年以上活動してきた同年代の個性派3人が、満を持してジャンルを越え“ZEN RYDAZ”としてWORLD MUSICをテーマに、メンバーが旅して得た世界観、常にアップデートされていく其々の感性、追及から生まれるスキルを結集し、21世紀的ハイブリッドサウンドver3.0としてここTOKYOでクラクションを響き渡らす。
MADE IN JAPANの島リズムが生み出すZEN SOUNDはバウンシーでドープそして自由な発想と飽くなき音楽魂を“禅FLAVA”に乗せ、大空高くASIA発のニューライダーズサウンドとして言葉を越え世界にアップデートされたWORLD MUSICを送信中。
https://zenrydaz.tumblr.com/

BANDCAMP
https://crosspointproception.bandcamp.com/
SHOP
https://nxsshop.buyshop.jp
WEBSITE
https://www.nxs.jp/label

DJ TASAKA - ele-king

 自らのレーベル〈UpRight Rec.〉を立ち上げ、3作目となるアルバム。リリースはデジタルのみで、2020年の『Goodie Bag』から、1年と経たずにリリース。ここ数年の活動を振りかえると、どこか長いインターバルからの再始動……と思っていたが、実際は自身のレーベル第1作目となる2015年のアルバム『UpRight』以前は、2009年『Soul Clap』からのリリースでその間は6年。その前が2005年『Go DJ』ということを考えれば実はマイペースに定期的にリリースしていて、逆に言えば、その5年後の『Goodie Bag』からの本作というのが、異例のインターバルの短さでリリースされたということになる。ちなみに2017年には、長いキャリアでは初となる、実は中学時代からの友人だったという JUZU a.k.a. MOOCHY とのエスノ・サイケデリックな、テクノ・プロジェクト、Hightime Inc.のアルバムもリリースしている。

 と、この勢いを感じるタイミングでリリースされた本作『KICK ON』であるが、デジタルのみという潔いフットワークの軽さも含めて、おそらくだが作品制作の充実感がダイレクトに反映された作品ではないかと思う。個人的には、一連の近作3作品のなかで最も愛聴している作品という感じで、それはもちろんタイミングが全てではなく、自分が思う DJ TASAKA のサウンドのうまみがシンプルに出た作品だからではないかなという。そのうまみとは、具体的に言えば、ファンクやディスコ、ヒップホップが溶け込んだ野太くもしなやかなグルーヴのエレクトロ、ハウス、テクノだが、なんというか、ずっしりと重いファンクネスはあれど、インダストリアルでメカニカルなのに堅くないというのが結構重要で、それこそフロアを笑顔にするような温かなユーモアの感覚とともに、それはある種の「軽さ」となってグルーヴの方向性を決定づけているようにも思うのだ。軽やかな心持ちのヘヴィーなファンクネス。ここ数年でおこなってきた作品の魅力がシンプルに融合して、凝縮している。まぁ、月並みな表現だが、ともかく聴いていて楽しくなるファンキーなテクノやハウスの魅力がこれでもかと襲ってくる。なんとなくだが、ここ数年でリヴァイヴァルしてきている、1990年代初頭のファンキーなハウスやブレイクビーツ・テクノ的なレイヴ・トラックにも通じるようなグルーヴもあって、そのあたりもこの作品を聴きこんでいる理由かもしれない。

 アルバムはゆっくりとブレイクビーツ・ダウンテンポ、そしてセカンド・サマー・オブ・ラヴのパイレーツ・ラジオ集成に着想を得たとおぼしき、メランコリックなブレイクビーツ “'88 RADIO” (名曲)でスタートする。ちょっと意外な感触からスタートするが、まさに前述したようにバウンシーなドラムとベースラインがフロアを笑顔でロックする “Aaahh” で一気にヴォルテージをあげていく。個人的に本アルバムでよく聴いているのが中盤から後半でベースラインが気持ちいいディープ・ハウス “Oh Dear”、レイヴの雰囲気をまとったブレイクビーツ “Whoop”、性急なアシッド・トラック “Touch It” あたりの3曲だ。アップリフティングなディスコ・テクノ “Rulers of the Generation” ときて、アルバムを締めるエレポップ的な “Open the Gate” のエンディング・テーマのように終わっていく感じもいい。

 全体的に、いわゆる12インチ的なダンス・トラックのようなストリクトリーにミニマルな構成という感覚よりも、アルバム1枚として飽きさせずに「フロアの感覚」のリスニング体験が持ち込まれていて、そのあたりはなんというか、石野卓球のソロ・ワークにも通じるもので、テクノとしてのツボを充分に押さえつつも、いわゆるわかりやすい「歌」や「メロディ」にそこまで頼ることなく、そこはあくまでもテクノという表現に自覚的というか、それでいてポップにその作品を聴かすという明確な意志を感じる作品でもある(もちろんこれはいまにはじまったことではないが)。前述のような彼のサウンド・カラーのうまみを伝えるサウンドの感覚も良い。現在のスピーカーや他のリリースのなかにあっても、確実に自身のサウンドのそうしたうまみを「聴かす」処理がなされている感覚がしていて、自らのカラーとそうしたアップデート感が絶妙なる塩梅で迫ってくる。そのあたりの采配も本作をより魅力的なものにしている。作品を良作に至らしめる、ある種の余裕と、それまでの着実なキャリアが無意識ながら強固に結びついたサウンドの説得力、それが本作品にもびっちりと溢れていると言えるだろう。

MYSTICS - ele-king

 スウェーデンのマーカス・ヘンリクソン、札幌の Kuniyuki Takahashi、そして昨年『ASTRAL DUB WORX』を発表したした東京の J.A.K.A.M. (JUZU a.k.a. MOOCHY) によるコラボ・プロジェクト、MYSTICS がアルバムをリリースする。
 なんでも、「共通する神秘主義的な思考、センスが音楽の中で爆発し、化学変化が起こ」ったそうで、ハウスを基礎にしつつ、尺八や箏、アラビック・ヴァイオリンなどをフィーチャーしたディープな一作に仕上がっているようだ。ダブミックスは内田直之。神秘的な音楽旅行を体験しよう。

J.A.K.A.M. - ele-king

 日本において果敢にグローバル・ビーツを開拓しつづける JUZU a.k.a. MOOCHY こと J.A.K.A.M. が2月11日に新たなアルバムをリリースする。タイトルは『ASTRAL DUB WORX』で、2016年からヴァイナルで展開されてきた「ASIAN DUB」シリーズを中心に、世界各地の民族音楽を導入、多彩なゲストを招きながら、これまでの彼の歩みを凝縮した1枚に仕上がっている模様。ダブ処理は内田直之。リビア空爆に反対するジャーナリスト、ダム開発で故郷を失った民族、エジプトの大御所ウーム・クルスームなど、素材も気になるものがたくさん。期待大です。

Amazon / Tower / HMV / disk union / JET SET

MOVEMENT CLUB EDITION - ele-king

 これは驚きの、そして待望のニュースです。デリック・メイが2003年にデトロイトで始動させたフェスティヴァル《MOVEMENT》が、なんと東京でも開催されます。題して《MOVEMENT CLUB EDITION》。デリック・メイ本人はもちろんのこと、テックハウスの第一人者 Mr. G がライヴで出演するほか、Hiroshi Watanabe や JUZU a.k.a MOOCHY、今春 Gonno & Masumura として強烈なアルバムを届けてくれたばかりの Gonno らも参加します。7月14日。これはもう行くしかないですね。
 なおデリック・メイは同時にジャパン・ツアーも開催、福岡・札幌・大阪を巡回します。また Mr. G も翌15日に DJ BAR Bridge にてファンク~ソウルのDJセットを披露してくれるとのこと。

「世界で最も平和な暴動」MOVEMENTが日本初上陸!

2003年、Derrick May は立ち上がった。2000年にスタートした Detroit Electronic Music Festival は Carl Craig によるキュレーションで開催され大成功を収めたが、2年目の2001年の開催直前に主催側が Carl Craig を解雇するという事件が起きた。2002年も同じ体制のまま継続されたが、2003年に Derrick May はアーティストたちの手にフェスティバルを戻すべく、大型フェスティバルのオーガナイズ未経験にも関わらず、Movement Festival を開催することを決めた。一人のクレイジーなまでに強い信念を持つ人間が動き出す時、ムーヴメントは生まれる。

2003年には筆者もデトロイトで Movement を体験している。印象に残っているのは、フェスティバルは大成功を収め、最後のアクトが終わった後、完全に声を枯らした Derrick May がマイクを持ってステージに現れて「永遠にやるぞ!」と叫んだシーンだった。本当に全身全霊をかけた男の魂の叫びがデトロイトのハート・プラザに響き渡った。

あれから、15年。現在 Derrick May はデトロイトで毎年行われている Movement には関わっていないが、その間もずっと「東京で Movement をやりたい」と言い続けてきた。震災直後に、日本への渡航に対してネガティブな空気が漂っていた中、彼が一切ためらわずに来日したことを覚えているだろうか? 彼は東京に特別な想いを持っている。そして、自らが名前をつけた Contact にも……。この場所で Movement Club Edition が、ついに実現することを、心して受け止めたい。きっと最高のパーティにしてくれるはずだ。 Studio では、デトロイト・テクノのイノヴェイター Derrick May がヘッドライナーを務める。エモーショナルなテクノでダンスフロアに歓喜の祝祭をもたらしてくれるだろう。そして、Transmat 系デトロイト・テクノ・ファンから熱くサポートされている Mr.G がライブを披露する! 前回の来日でのプレイもコアなファンたちの間で話題になっていたので、これは注目だ。Derrick May が主宰するレーベル〈Transmat〉の歴史上初めて日本人アーティストとなった、Hiroshi Watanabe がサポートを務める。“Threshhold of Eternity”は海外の音楽ジャーナリストから「Derrick May による不朽の名作“Strings of Life”を超えるアンセム!」と評価されるほどだったので、彼のプレイも見逃すことはできない!

Contact では、Transmatから“The Diamond Project EP1”を発表したばかりの、ドープなハウスを奏でるデトロイト出身アーティスト、Drummer B が初来日を果たす。そして、日本からは Gonno、Juzu aka Moochy、Sakiko Osawa、Naoki Shirakawa らがサポートを務める。

Time, Space, Transmat! 時間と空間を超えた Transmat Experience が Cotanct Tokyo で繰り広げられる一夜となるだろう!

「世界で最も平和な暴動」は、まだ終わらない。

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7/14(土)MOVEMENT CLUB EDITION
10PM

Before 11PM / Under 23 ¥2,000
GH S members ¥2,800
w/f ¥3,500
Door ¥3,800

Studio:
Derrick May (Transmat | Detroit)
Mr.G (Phoenix G | UK) - Live
Hiroshi Watanabe a.k.a Kaito (Transmat | Kompakt)

Contact:
Drummer B (Soul Touch | Transmat | Detroit)
Gonno (WC | Merkur | mule musiq | International Feel)
JUZU a.k.a MOOCHY (NXS | CROSSPOINT)
Sakiko Osawa
Naoki Shirakawa
and more


■Derrick May

Derrick May Boiler Room x Ballantine's True Music: Hybrid Sounds Russia DJ Set
https://youtu.be/Bog6l3w2PS4

1980年代後半、デトロイトから世界へ向けて放たれた「Strings Of Life」は、新しい時代の幕開けを告げる名曲であった。自身のレーベル〈Transmat〉からRhythim Is Rhythim 名義で「Nudo Photo」、「The Beginning」、「Icon」、「Beyond The Dance」等今でも色褪せない輝きを放つ数々の傑作を発表し、Juan Atkins、Kevin Saunderson と共にデトロイト・テクノのオリジネーターとして世界中のダンス・ミュージック・シーンに多大な影響を与える。シカゴ・ハウスの伝説の DJ Ron Hardy や Godfather Of House Frankie Knuckles に多大な影響を受け、Music Institute で確立されたその斬新なDJプレイは唯一無二。時代に流されることなく普遍的輝きを放ち、テクノ・ファンのみならず全てのダンス・ミュージック・ファンから絶大なる支持を得ている。そして2010年、レコード店に衝撃的ニュースが流れる。何と実に13年ぶりとなる待望のミックスCDをリリースしたのだ。「Mixed by Derrick May x Air」と題された同作は1月に発表され国内外で大反響を巻き起こした。スタジオ・ライブ一発録りで制作されたそのミックスには、彼のDJの全てが凝縮されていると言って良い。そこには「熱く煮えたぎるソウル」「多彩な展開で魅せるストーリー」「華麗なミックス・テクニック」等、天才DJにしか作り得ない独特の世界がある。自分の信じている音楽やファンへの情熱全てを注ぎ込んだかのような圧倒的パワーがそこには存在する。聴くものを別次元の世界へと誘ってしまうほどだ。世界中を旅していて日本でのプレイが最も好きだと語る Derrick May、彼は本当に心から日本のファンの方達を大切にしているのだ。2011年には奇跡的に「Mixed by Derrick May x Air vol.2」を発表。また、2013年には自身のレーベルである〈Transmat〉のコンピレーションCD『Transmat 4 - Beyond the Dance』を発表し更なる注目を集めている。

★☆ HI TECH SOUL JAPAN TOUR 2018 ☆★

7/13 (金) 福岡 @KIETH FLACK
https://www.kiethflack.net/jp/2806/2018-07-13

7/14 (土) 東京 @CONTACT -MOVEMENT CLUB EDITION TOKYO-
https://www.contacttokyo.com/schedule/movement-club-edition/

7/20 (金) 札幌 @PRECIOUS HALL
https://www.precioushall.com/schedule/201807/0720hitechsoul.html

7/21 (土) 大阪 @CIRCUS
https://circus-osaka.com/event/derrick-may-japan-tour-2018/


■Mr. G

Mr G Boiler Room London Live Set
https://youtu.be/0HffibenJl8

UK出身のアーティスト Mr.G。1994年、Cisco Ferreira と共にテクノ・ユニット The Advent を結成。〈Internal〉レーベルから数々の作品をリリースし、世界的人気アーティストとなる。その後 The Advent を脱退し、ソロ・アーティストとして活動を開始。1999年には自身のレーベル〈Phoenix G〉を設立。自身の作品を中心に数々のフロアー・キラー・トラックをリリースし続け、現在も尚DJ達から絶大な信頼を得ている。また、2010年にはターニング・ポイントとなるアルバム『Still Here』を〈Rekids〉からリリースし、大ヒットを記録。各メディアでその年の年間ベスト・アルバムに選出される程高い評価を得る。その後も〈BAass Culture〉、〈Underground Quality〉、〈Moods and Grooves Detroit〉、〈Holic Trax〉、〈Monique Musique〉、〈Lo Recordings〉、〈Running Back〉等、数々のレーベルから多数の作品をリリースし続けている。デトロイト・テクノ、シカゴ・ハウスに影響されたファンキーかつロウでセクシーなサウンドは世界中のファンを魅了し、ここ数年リリースされた作品も Derrick May や Francois K 等の大御所DJ達もヘヴィー・プレイし、大絶賛されている。

★☆ Mr. G -DJ BAR Bridge- ☆★
7/15 (日) Open 20:00 Entrance Fee ¥1,000 (1D)
https://bridge-shibuya.com/event/1934/

MALA - ele-king

 春だ。Jリーグも開幕した。たのむ、冬よ明けてくれ。電気代が高くてしょうーがねぇ。
 春分の日の前日、3月20日に代官山ユニットにマーラがやって来る。Brialも影響を受けた、ダブステップにおける最重要人物のひとりである。また、同日には、UKのベース系アンダーグラウンドと深くリンクするゴス・トラッドも出演する。行くしかないでしょう。

ダブステップ/UKベース・ミュージック界の最重要人物MALA、2年振り一夜限りのDBSスペシャル・セッション決定!

 伝説のDMZを旗揚げ、その精神はDeep Medi Musikへと受け継がれ数々の秀作を世界のベース・シーンに投下し続け、2018年記念すべきEP100をリリース。MALAはDBSのこれまでの節目でプレイ、最高のヴァイブを醸し出してくれた。
 今回一夜限りとなるDBSスペシャル・セッションにはMALAの盟友、GOTH-TRADがインダストリアルかつエクスペリメンタルなLIVEで異次元の音世界を創造、そして独創的なサウンドで多岐にわたり活動を繰り広げるJUZU a.k.a. MOOCHY、東京ベース・シーンの重鎮PART2STYLE SOUND、ダブステップ・シーンのホープHELKTRAMらが集結。

 UNITサウンド・システムに加えBROAD AXE SOUND SYSTEMを設置、最高品質かつ最重低音の神髄を体感して欲しい。
”Come meditate on bass weight!"


DBS Special feat.MALA

feat.
MALA [DEEP MEDi MUSIK]

with.
GOTH-TRAD [DEEP MEDi MUSIK / Back To Chill]
JUZU a.k.a. MOOCHY [NXS / CROSSPOINT]
PART2STYLE SOUND
HELKTRAM

vj/laser: SO IN THE HOUSE
extra sound: BROAD AXE SOUND SYSTEM

2018.03.20(TUE)@UNIT
open/start 23:30
adv.3,000yen door.3,500yen

Ticket outlets:NOW ON SALE!
PIA (0570-02-9999/P-code: 107-273)、 LAWSON (L-code: 71371)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia ー https://clubberia.com/ja/events/276865-DBS-Special-feat-MALA/
RA― https://jp.residentadvisor.net/events/1068109


info. 03.5459.8630
UNIT >>> www.unit-tokyo.com


Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
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★MALA (Deep Medi Musik / DMZ)

 ダブステップ/ベース・ミュージック界の最重要人物、MALA。その存在はJAMES BLAKE、ADRIAN SHERWOOD、GILLES PETERSON、FRANCOIS K etc.多方面からリスペクトされている。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼と盟友のCOKIは独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、DIGITAL MYSTIKZとしてアンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。'03年にBig Appleから"Pathways EP"をリリース、'04年にはLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開、Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされる。'06年には"Ancient Memories"、"Haunted / Anit War Dub"やSoul Jazzからのリリースで知名度を一気に高め、自己のレーベル、Deep Medi Musikを設立。以来自作の他にもGOTH-TRAD、SKREAM、SILKIE、CALIBRE、PINCHらの作品を続々と送り出し、シーンの最前線に立つ。'10年にはDIGITAL MYSTIKZ名義の『RETURN II SPACE』をアナログ3枚組でリリース、壮大なスケールでMALAのスピリチュアルな音宇宙を明示する。'11年にはMALAの才能に惚れ込んだGILLES PETERSONと共にキューバを訪問、現地の音楽家とセッションを重ね、持ち帰った膨大なサンプル音源を再構築し、'12年にBrownswoodからアルバム『MALA IN CUBA』を発表。キューバのルーツ・ミュージックとMALAのエクスペリメンタルなサウンドが融合し、ワールド・ミュージック/エレクトロニック・ミュージックを革新する。バンド編成によるMALA IN CUBA LIVEは各地で大反響を呼び、'13年10月には朝霧JAMとDBSで衝撃を与える。MALAのグローバルな音楽探究の旅は続けられ、ペルーでのレコーディングを熟成、集成したアルバム『MIRRORS』が'16年6月にリリース。そして2018年に自身のレーベルDeep Medi Musik”はEP100リリースを達成する。

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★GOTH-TRAD (DEEP MEDi MUSIK / Back To Chill)

interview with JUZU a.k.a. MOOCHY - ele-king

 新しい文化の交差点にぼくたちはいた。どんなことでも可能だった。睡眠など問題外。渋谷は世界の中心だった。ぼくたちは自分たちのやっていることに自信を持ちたかった。だが、はじまったばかりでは、どこにそれを実証する手立てはない。メディアもないから、自分たちで作るしかなかった。書く人もいないから自分たちで書くしかなかった。書くことは自分の混乱を整理するための作業だ。集中力なきものにモノは書けない。たとえ間近に爆音が鳴っていようとも、集中するのだ。

 狂気の時代の重要人物のひとり。わかるだろう、革ジャンに大型バイクという、典型的なロッカーズ・スタイルの若者がジャングルをかける……となれば、若さゆえの暴走である。しかもこやつときたら身長180は超えているし、体格もがっちりしている。前にも書いたように、初めてムーチーと会ったのは、渋谷のクラブの閉店後の明け方だった。96年? たしかそのくらいだ。閉店後の店の前の通りで、名前も知らない連中と喋っていた。しばらくすると、その晩のDJだったムーチーも店から出てきた。で、お互い挨拶してひとしきり喋った後、ヤツは大型バイクに乗って消えた。まだ20歳ぐらいだったな。
 それ以来、ムーチーは後ろを振り返らずに走っている。ムーチーからJUZUへと名前も変わり、JUZU a.k.a. MOOCHYとなった。


JUZU a.k.a. MOOCHY
COUNTERPOINT X

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JUZU a.k.a. MOOCHY
COUNTERPOINT Y

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WorldDeep HouseDowntempoDub

 JUZU a.k.a. MOOCHYの新しいアルバム──通算4枚目となるソロ・アルバムは、2枚同時発売の大作である。それぞれ『COUNTERPOINT X』と『COUNTERPOINT Y』という。集大成と呼ぶに相応しい2枚だ。それは、いろんな文化のフュージョン(結合体)であり、2015年の初頭に出たヴァクラのアルバムとも共通したユニバーサルな感覚がある。古代と現代を往復しながら、ジョー・クラウゼルの〈スピリチュアル・ライフ〉のように、トライバルで、ときに瞑想的。スピリチュアルで、ときにポリティカル(反原発のステッカーを貼って逮捕なんてこともあった)。だが、基本はオプティミスティックなエスノ・ハウス。
 
 まあ好きなようにやってくれといった感じである。ムーチーは、90年代にぼくが追っかけたDJのひとりだ。彼は、ほかの何人かの肝の据わったDJがそうであるように、いまも彼自身の道をひたむきに突き進んでいる。この時代、ある意味リスキーな生き方だろう。渋谷は浪費文化の中心となって、若者が住める場所でなくなって久しい。ムーチーは一時期福岡に移住したり、あるいはまた東京に舞い戻ってきたりと、やはり何人かのDJがそうであるように、漂流の人生を歩んでいる。いろいろあったのだろうけれど、それらの経験が音楽に反映され、いまも前向きさを失わずに走っていることが、ぼくには嬉しい。


自分にとってのワールド・ミュージックとは、先祖から伝わるもので、もしくはその楽器や演奏法に、現在の西欧楽器中心的な考えとは違う発想で演奏されている音楽をワールド・ミュージックとして思っています。

2枚組で、『COUNTERPOINT X』、『COUNTERPOINT Y』というタイトルで出した理由を教えて下さい。

Juzu a.k.a. Moochy(以下、JAKAM):2枚組、厳密には2枚同時発売だけど、そうなった理由は今年1月から東洋化成というアジア唯一のレコード・プレス会社とタッグを組んで毎月1月11日、2月11日、3月11日……と、それを9ヶ月続けてリリースした流れがあって。アナログ9枚に収録された18曲をリリースする上で、曲を短くして1枚に収めるより、ある程度原曲に近い形でCDというフォーマットでみんなに聴いてもらいたいという考えから、2枚になりました。また、「COUNTERPOINT EP」というタイトルでシングル・レコードを出していたのも、『COUNTERPOINT』というタイトルでのアルバムをリリースする計画が5年以上前からあったから。逆説的ですけどね……。

しかし、スケールの大きなアルバムだね。

JAKAM:まあ(笑)。

制作には何年かかったんですか?

JAKAM:前作『MOVEMENTS』が仕上がるときには、すでに『COUNTERPOINT』というタイトルが思い浮かんでいましたね。なので、ある意味、5年以上前からはじまっているってことになる。具体的に言うと、その『MOVEMENTS』というアルバムに収録されていた“AL ATTLAL”──アラビア語で「廃墟」という意味ですが──という曲があって、それが今作に繋がるガイダンス(予兆)でしたよ。

廃墟?

JAKAM:そう、この曲は、アルジェリアの女性ヴィジュアル・アーティストが名古屋のトリエンナーレにて展示する作品のBGMを作るということで、DJ /トラックメーカーを探していて、自分が選ばれたことからはじまってるんです。そのBGMには、エジプトの、アラブの大女性歌手で、ウーム・クルスームの“AL ATTLAL”という人の曲の一部を使って、それをリミックス(解体/再構築)してほしい、という要望だったんです。ちなみに、その部屋にはアラビア語で「愛」と描いてありましたね。

ウーム・クル……?

JAKAM:ウーム・クルスーム。自分も長くレコードやCDなど様々な音源を聴いてきたつもりだったけど、ウーム・クルスームという人をまったく知らず……、驚愕でしたね。音楽的にも、人生というかメンタル的にも衝撃を受け、俄然アラブ音楽、中東の音楽に惹かれていったのは間違いない!
 で、その流れから西アフリカセネガルから日本に来て20年以上のパーカッショニスト、ラティールシー、そしてアラブ・ヴァイオリン奏者、及川景子と繋がっていったのは、今回のアルバムに多大な影響をおよぼしています。
 この流れがあって、2011年2月、単独でセナガルに乗り込み、ラティールの協力のもとセネガルでのレコーディングをはじめるんです。で、その経由地点であったトルコ、イスタンブールでBABA ZULAの前座DJをしたこともあって、先日来日も果たし、今回のアルバムにも演奏が収録されているYAKAZA ENSEMBLEのメンバーとも繋がる。かなり大きな影響がある時期でしたね。あと……このツアーから戻って来て1週間後に3.11が起きたんですけどね。

もうちょっと具体的に、そのウーム・クルスームのどんなところに衝撃を受けたんですか?

JAKAM:まず、彼女のYoutubeと音源が送られて来て、見て聴いて思ったのは、そのドープなヴァイブとその華やかさ、美しさですね。観客の熱狂ぶりも真剣に音楽を聴いているからこその盛り上がりで、いかにこの音楽が高度で、なおかつ大衆的かが伝わった。年配のおじさんたちの盛り上がり方がハンパないす(笑)。
 その後、及川景子さんと「アラブ音楽講座」をやることになり、いろいろと教えてもらい、情報もつかみ、また、現地で、とんでもないレベルの演奏家たちと触れ合うことになりますが、この映像は「アラブ音楽の深淵な響きを聴いた!」という最初の衝撃です。
 ちなみに個人的にはアラブという場所がたまたま? 古い文化がもの凄く多く残っている地域で、「そこに漂う古代の香り」、というのが厳密には自分にとってのアラブ文化の魅力ですね。またイスラームとは無関係ではないので、その漂う精神性、というのも感じていたのかもしれない。ちなみにウーム・クルスームは幼少からコーランを美しく詠む少女として有名だったというキャリアもあります。

なるほど。しかし、バイク乗ってジャングルかけてた20年前といまとでは、自分のなかの何が変わったと思う?

JAKAM:その頃は本当にろくでもない奴だったから(笑)。いまは少しは……まあ親にもなり……かろうじて(笑)、で、未来の心配をするようになったことが変わったことかもしれないですね。あの頃はかっこつけていたのかもしれないけど、若く死んで上等! みたいなノリだったと思いますよ。自分ひとりのことしか考えていなかったので、恐怖はあまりなかったんです。未来に関しても、自分が死んだ後の未来まで考えるようになったのは大きな違いなのかなとも思います。
 音楽的な好奇心はいまと変わらない気はしますけど……ちなみに、当時もジャングルだけはなく、様々なシチュエーションで様々な音楽をかけていましたし、聴きまくっていましたよ。週5回DJとかもよくあることでしたので(笑)。

前の取材のときもそんな話をしているんだけど、あらためて、ムーチーがワールド・ミュージックに興味をもった経緯について教えて下さい。最初は何がきっかけだったんですか?

JAKAM:今回の制作をする上でも、前作『MOVEMENTS』に収録された“R.O.K.”という曲でも使われた三味線の音は、ある意味逆説的にはワールド・ミュージックの前兆だったと思いますね。ただ、ワールド・ミュージックという言葉は、単純に海外の、世界の音楽ということじゃないでしょう。それでは、ジェイ・Zもスティーヴィー・ワンダーもFAR EAST MOVEMENTもワールド・ミュージックになってしまうし。現代の言い方でどう言われるかわからないけど、あらためてそのワールド・ミュージックという定義は再定義する必要があると感じていますね。
 個人的意見だけど、自分にとってのワールド・ミュージックとは、先祖から伝わるもので、もしくはその楽器や演奏法に、現在の西欧楽器中心的な考えとは違う発想で演奏されている音楽をワールド・ミュージックとして思っています。まあ、コンゴでデスメタルをやっているバンドはワールド・ミュージックとは言いがたいし(笑)。メキシコのヒップホップをワールド・ミュージックともあまり言わないでしょ。第三世界でやっていれば──この表現もBRICSとか登場している時代には陳腐ですが──ワールド・ミュージックとも言えない時代になっていますよね。
 自分はあらゆる場所の、あらゆる時代の音楽に興味はありますが、とくに古代からある音、単純にいえば、そこらじゃもう聴けなくなった音に深い関心があるんですよ。そういう意味で、自分の祖母が実家で自分の姉妹や親戚と集まって4人で花札をやって三味線を弾いて歌っていた光景や音は自分のなかでのワールド・ミュージックということになるんですよね。
 またちなみにその祖母は血は繋がっていませんが、多大な影響をおよぼした他人でもあり、2年前に亡くなりましたが、いまも先祖と思い、感謝しています。その三味線も遺品として頂きました(笑)。

今回のような、多様な文化のとの混合にどのような可能性を見ているのでしょうか?

JAKAM:客観的というより主観的に、自分個人の欲求として「誰も聴いたことがないのに懐かしい音楽」を感じたい、作りたい、作ることに関わりたいと思ってますけど。余談だけど、今回のアルバムにも使わせてもらい、ヴァイナル「COUNTERPOINT EP.1」にも作品を提供してくれた鈴木ヒラク君とうちの自宅スタジオで以前話したときに、彼が面白いことを言ってたな。彼は「誰も観たことのない、人間が描いたとは思えないような絵を描きたい」と言っていたんだけど、巡り巡るとその発想はお互い行き着くところは近いのかもしれないね、と話していたんですよ。アートとは何なのか、とまではここで言及できるわけではないけれど、誰もが面倒だったり、危険だったりする様な領域まで肉体的にも精神的にも追い込まないと、それ相応の報酬は受け取れないのかなとも思いますね(笑)。
 なので、可能性があるとかないとかいうよりは、これは欲求です。情熱です(笑)。そこには打算はないです。

ある意味で、言ってしまえば民族音楽をミックスボードに繋いでミキシングしていくような、いまのムーチーのスタイルを形成するにいたった、もっとも大きなきっかけは何だったんでしょうか?

JAKAM:スタイルというと広義だと思うけど……、音楽活動的にもまずは友人関係があってできるもので、その人間には相当恵まれていると思う。自分自身はガサツでその関係をすぐ壊しそうになりますが(笑)。ともかく、人の繋がりで音楽というフィールドができ上がりますし、それを意識したかしないか自分でも定かではないけど、JUZU(数珠)やNXS(連鎖)など連なるものに意識はあった。答えにはなっていないけど、そういう考えや想いのなかで意識的に生きるようになったのは、21、22歳くらいだったかな……。
 当時は学生を辞めたばかりで、音楽である程度稼げるようにはなっていたけど、まだギターアンプのローンもほとんど支払っていない状態で(笑)。でも、やっていたバンドが解散して、DJが忙しくなって、レコード会社の人や業界の人ともいろいろ会ったり、ただ楽しむためにやっていたことが仕事になりはじめてきて、バンドではなくひとりで金を稼いで、自分の評価があくまで個人に向けられたとき、孤独も感じました。
 そういうこともあって、また人と一緒に音楽をやりたいと思って、その当時、新宿にあったリキッドルームの山根さんが「(DJではなく)バンド/ライヴでやってほしい」とオファーがあったか、勝手にやらせてもらったのかも定かではありませんが(笑)、たしか、90年代半ばのマッド・プロフェッサーの来日のときでしたね。その頃くらいから積極的に民族音楽系の楽器を扱うミュージシャンたちと触れ合うようになったんです。民族音楽は好きで聴きまくっていましたし、DJでもかけまくっていましたが、実際に音楽を作っていくという起源はそこかもしれない。初めて思い返しました(笑)! ありがとうございます(笑)。

けっこう、じゃあ、もう、本当に初期からだったんだね。

JAKAM:そうっすね。

クラブ・ミュージックというより、音楽とともに生きたいという想いは募るばかりでございます(笑)。それはクラブでもいいですし、家でも野外でもいいですし、国内でも海外でも、時間や空間を超えて、永遠に繋がる瞬間に出くわしたいですね。スピ系として(笑)。

ジョー・クラウゼルの〈スピリチュアル・ライフ〉と比較されるのは嫌?

JAKAM:嫌ではないですよ! 先日ニューヨークのブルックリンで、9.11にホッタテLIVEを敢行したんですけど、数少ないお客さんとしてジョーも来てくれて、レコード買っていってくれました(笑)。兄貴というよりニューヨークの優しいお兄ちゃんという感じです(笑)。ジャンルで聴いているわけじゃないし、ハウス好きの人ほど〈スピリチュアル・ライフ〉を聴き込んではいませんが、彼の音楽と出会う前からトライバルでプリミティヴ、原始的なものに惹かれていたので、共感もリスペクトもしています。でも、影響は受けていないような気がする……。まあ、他にもいろんな音楽を聴き過ぎて、自分でもごまかされているだけかもしれないだけで、影響は受けているのかもしれませんね(笑)。

台湾、韓国、中国など、日本から比較的距離の近い外国へのアプローチに関してはどのように考えていますか?

JAKAM:まさしくおっしゃる通り、このエリアに次作は行って、民族楽器やオリジナルなユニークな演奏者やアーティストと出会って、「誰も聴いたことがないのに懐かしい音楽」を作ってみたいと数年前から思っていましたね。前作『MOVEMENTS』のなかの“時の河”という曲で、最後にテロップででる「ASIA MUST UNITE」という言葉は自分の言葉です。この曲ではベトナムで録音された民族楽器がフィーチャーされていますが、
そのテーマは今作にも確実にありますし、より濃いものを作ってみたいです。ちなみにボブ・マーリーの「AFRICA MUST UNITE」から文字の並びは影響受けています(笑)。

アジアって、でも広いからね。DJを辞めようと思ったことはない?

JAKAM:DJになりたくてなったわけではなく、音楽が好きで、レコードを人並み以上に買っていた流れで地元の先輩からDJを誘われ、味をしめて(笑)。自らパーティをやって、仲間たちとクラブを作り、それがいつの間にかお金をもらえるようになって……。いまでも任務としては常にベストを尽くしDJしてきているけど、好きな音楽をみんなで共有したいという極自然なことが発端なので、仕事という概念でもなく、辞めるというのは人生を辞めるに等しいかもしれませんね。

子供が生まれて何か変わったことはある?

JAKAM:まあ、いままで話しように、多いに変わりました。音楽的な志向には全く影響されていませんけど。むしろ洗脳しようと常に企んでいます(笑)。が、ファレルやEDMにまだ太刀打ち出来ていないようです(笑)。中2の長男は、30G以上のEDM系? そのmp3データを最近だいぶ減らしたと言っていますので……相当掘っているらしいですね。なので、10代前半の子、いまはYoutube世代なので全世界NWO的に(笑)、まあ一緒な気がしますが、聴く最新音楽をチェックさせてもらうのは、子供がいなかったらちゃんと聴けるチャンスがなかったかもしれないので、良かったですよ。

30G以上のEDM系って……うわ、すごいね(笑)。正直言って、俺は子供が生まれて夜遊びしなくなったのね。夜遊びは金かかるし、妻子が起きるころに酒臭いカラダで朝帰りは心情的にできないし……、あと、はっきり言って、中年になると朝まで踊るほどの体力がなくなる。俺、毎朝7時前には起きている人間だから(笑)。で、ナイトライフは永遠の楽しみではなく、人生のある時期に限られた楽しみだと思ったんだよね。じゃあ、ハウスやテクノを聴かないかと言えばそんなことなくて、いまでも大好きだし、家で聴いているんですよ。ムーチーはDJだからそんなことないけど、クラブ・ミュージックとはどういう風に付き合っているの?

JAKAM:まず自分が出演するか、知り合いの店でしかあまり呑まないので、酒に金はあまり使っていないです。野田さんガブ呑みしそうだから(笑)。まあ、その意見に同感するところもあるのですが、個人的に札幌のPrecious Hall経由でNYのデヴィッド・マンギューソーのLOFTに関わっているので、70過ぎまではダンス出来る体力を絶対保持したいと思っています(笑)。好きな音楽をみんなで共有して楽しむ、というのは無愛想に見えて(笑)、本当に好きなんです。LOFTで気づいたというか、感じたのは50年以上前の音楽でも良いサウンドシステムで鳴らせば、永遠の響きがあるのだと体感しました。自分が死んだ後でも、そのレコードがその時代の人を踊らせたり、感動させれることは、本当に素敵なことだと思いますよ。
 クラブ・ミュージックというより、音楽とともに生きたいという想いは募るばかりでございます(笑)。それはクラブでも良いですし、家でも野外でも良いですし、国内でも海外でも、時間や空間を超えて、永遠に繋がる瞬間に出くわしたいですね。スピ系として(笑)。

スピ系って、はははは。じゃあ、今後の予定について教えて下さい。

JAKAM:今年の年末には2001年に起動し、2012年にパワーアップして還って来た(笑)。ONENESS CAMPの室内版ONENESS MEETING@UNITが2015年12月27日の日曜日にあり、そこでは先述したラティールや及川景子を交え、今回のアルバムにも収録された楽曲を中心にライヴをします。もちろんただ曲をなぞるだけではなく、マカームというか、その場で産まれるグルーブやメロディーも体感してもらえると思うので是非足を運んでもらえたら幸いです。
 作品的には自分が持っている2つのレーベルのうちのひとつ、〈CROSSPOINT〉と双璧を成しながらも……地味なレーベルですが(笑)、もうひとつの〈Proception〉からも自分のソロも含め、先ほどのワールド・ミュージック的な考えとは違う音楽や作品を出していきたいと思います。ちなみに〈Proception〉は造語で「Process of perception(知覚の進行)」を繋げた語になります。アジアをテーマにした作品も出来るだけ早く取りかかれたらとも思ってますよ。

!!!!!!Release Party!!!!
リリースパーティー
MOVEMENTS ONENESS MEETING

@代官山UNIT東京
2015年12月27日日曜日
https://onenesscamp.org/




JUZU a.k.a. MOOCHY (J.A.K.A.M. / NXS / CROSSPOINT) - ele-king

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