「青葉市子」と一致するもの

絵夢 〜 KITCHEN. LABEL 15 in Tokyo - ele-king

 日本人アーティストも多くリリースするシンガポールのレーベル〈Kitchen. Label〉が15周年を記念しライヴ・イヴェントを開催する。2023年11月15日(水)@渋谷WWW。同レーベルに『古風』『古風II』を残し、この11月には新作『古風III』のリリースを控える広島の冥丁をはじめ、アンビエント・フォーク・デュオ Aspidistrafly、新進気鋭のプロデューサー Kin Leonn、最近レーベルに加わった東京のサウンド・アーティスト Hiroshi Ebina が出演する。レーベル・ショウケースという形式はまだ知らない新しい音楽を見つける絶好のチャンスでもある。ぜひ足を運んでおきたい。

 なお、10月20日発売の『別冊ele-king アンビエント・ジャパン』には冥丁による特別寄稿が掲載される。そちらもチェックしていただければ幸いです。

『絵夢 〜 KITCHEN. LABEL 15 in Tokyo』

◆日程 : 2023年11月15日(水)
◆時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
◆会場 : 東京・渋谷 WWW(https://www-shibuya.jp/
◆チケット:前売 ¥4,500 / 当日 ¥5,000(共に税込・ドリンク代別 / 整理番号付き)

◆出演:
冥丁
ASPIDISTRAFLY Ensemble with Kyo Ichinose
Kin Leonn
Hiroshi Ebina

◆音響 : 福岡功訓(Flysound)

◆チケット販売:e+ (9/23(土)10:00〜より販売開始)
https://eplus.jp/kitchen-label/

◆主催 : KITCHEN. LABEL (https://www.kitchen-label.com/)
◆協力 : Inpartmaint Inc. (https://www.inpartmaint.com/)
◆お問合せ : info@kitchen-label.com

◆詳細HP
https://www.inpartmaint.com/site/38321/

[イベント概要]
シンガポールの音楽レーベル【KITCHEN. LABEL】が15周年を記念したライブイベントを2023年11月15日(水)東京・渋谷WWWにて開催。レーベルアーティストの冥丁、ASPIDISTRAFLY、Kin Leonn、Hiroshi Ebinaが出演。

haruka nakamura、いろのみ、冥丁など、数多くの日本人アーティストの名作をリリースし、またその美しいパッケージデザインにも定評のあるシンガポールの人気インディー・レーベル【KITCHEN. LABEL】が、2023年11月15日(水)に東京・渋谷WWWにて15周年記念となるレーベルショーケースを開催する。シンガポールからはASDPISIDTRAFLYとKin Leonn、日本からは冥丁とHiroshi Ebinaが出演し、それぞれの音楽的美学を披露する。

ショーケースのヘッドライナーを務めるのは広島を拠点に活動するアーティスト【冥丁】。11月中旬リリース予定のニューアルバム『古風Ⅲ』も取り入れた「古風」シリーズのライブセットを披露する。シンガポールのアンビエント・フォークデュオ【ASPIDISTRAFLY】は、一ノ瀬響(ピアノ)、徳澤青弦(チェロ)率いるストリング・カルテット、湯川潮音(クラシック・ギター)を迎えた特別アンサンブルで最新アルバム『Altar of Dreams』をライブ初披露、また前作『A Little Fable』の名曲も演奏予定。初来日となるシンガポールのアンダーグラウンドシーン気鋭の若手プロデューサー【Kin Leonn】は10月下旬リリースのニューアルバム『mirror in the gleam』からのライブセットを、インディーロック・バンドSobsのRaphael Ongによる映像と共に初披露。そして、レーベルに新たに仲間入りした東京在住のサウンドアーティスト【Hiroshi Ebina】はアンビエント・セットを披露する。

「これまでレーベルとアーティストを応援してくれた日本のリスナーの皆さんと一緒に15周年を迎えられることを嬉しく思います。タイトルに名付けた「絵夢」という言葉は、私たちのアーティストが共有する世界を完璧に具現化するものを探し求めた末に生まれました。”浮世絵”からとった「絵」と「夢」を掛け合わせたこの言葉には、音を通して鮮明な夢の風景を描くという私たちの使命が込められています。このイベントは、私たちのレーベルの過去、現在、そして未来を紹介するものとなるでしょう。」Ricks Ang(KITCHEN. LABEL)

[アーティスト・プロフィール]

冥丁
photo by Akio Yamakawa

日本の文化から徐々に失われつつある、過去の時代の雰囲気を「失日本」と呼び、現代的なサウンドテクニックで日本古来の印象を融合させた私的でコンセプチャルな音楽を生み出す広島在住のアーティスト。エレクトロニック、アンビエント、ヒップホップ、エクスペリメンタルを融合させた音楽で、過去と現在の狭間にある音楽芸術を創作している。これまでに「怪談」(Evening Chants)、「小町」(Métron Records)、「古風」(Part I & II)(KITCHEN. LABEL) よる、独自の音楽テーマとエネルギーを持った画期的な三部作シリーズを発表。
日本の文化と豊かな歴史の持つ多様性を音楽表現とした発信により、The Wire、Pitchforkから高い評価を受け、MUTEK Barcelona 2020、コロナ禍を経てSWEET LOVE SHOWER SPRING 2022などの音楽フェスティバルに出演し、初の日本国内のツアーに加え、ヨーロッパ、シンガポールなどを含む海外ツアーも成功させる。また、ソロ活動の傍ら、Cartierや資生堂 IPSA、MERRELL、Nike Jordanなど世界的なブランドから依頼を受け、オリジナル楽曲の制作も担当している。
https://www.instagram.com/meitei.japan/


ASPIDISTRAFLY(アスピディストラフライ)
photo by Ivanho Harlim

2001年に結成されたシンガポールを拠点に活動する、ヴォーカリスト/コンポーザーApril LeeとプロデューサーRicks Angによる男女ユニット。アンビエント・フォークとミュジーク・コンクレートを融合させたサウンドやApril のスモーキーなアルト・ヴォーカルに芸術性の高い演出を加え、彼女の詩的な物語に生命を吹き込んでいる。これまでに『I Hold A Wish for You』(2008)、『A Little Fable』(2011)、そして最新作となる『Altar of Dreams』(2022)の3枚のアルバムをKITCHEN. LABELよりリリース。最新作には米NPRの”Song of the Day”に選出された「The Voice of Flowers」や、SUGAI KENとのコラボレーション曲などを収録。
また、一ノ瀬響、haruka nakamura、小瀬村晶、青葉市子などの日本人音楽家や、Gucci、Roger Vivier、LAD MUSICIAN、NARSなどのブランドとのコラボレーションも行っている。ASPIDISTRAFLY以外では、Aprilはアートディレクターとして、デザイン、写真、ファッションの分野で活躍。RicksはKITCHEN. LABELを運営し、良質な音楽を洗練された美しいアートワークの特殊パッケージデザインとともにリリースしている。
https://www.instagram.com/aspidistrafly/


Kin Leonn(キン・レオン)
photo by Christopher Sim

​​シンガポールのアンダーグランドシーンのサウンド・アーティスト、DJ、作曲家として多才な存在感を放ち、「アンビエント・ボーイ」の愛称を持つシンガポール新世代アーティスト。2018年に1stアルバム『Commune』をKITCHEN. LABELよりリリース後、ベネズエラのアンビエントの先駆者Miguel Noyaとの共演や日本のサウンドアーティストHiroshi EbinaとのコラボレーションEP『“Faraway Vicinity』(2022)をリリースする他、プロデューサーやミキサーとしてYeuleとの様々なコラボレーションやModeratやYunè Pinku.のリミックスにも参加。
ロンドン・カレッジ・オブ・ミュージックを首席で卒業し、2021年にはスパイク・ステント賞を受賞。作品のリリース以外にもマルチ・チャンネルの音響インスタレーションや映画のサウンドトラックも多数手掛ける。直近では、2023年カンヌ国際映画祭でプレミア上映されたAnthony Chen監督による長編映画『The Breaking Ice』のサウンドトラックを担当した。
https://www.instagram.com/kinleonn/


Hiroshi Ebina
photo by Yoichi Onoda

東京在住のサウンドアーティスト。活動は多岐に渡り、アンビエントミュージックの作曲・演奏や、雅楽奏者としての活動、フィルムカメラを用いた写真作品の作成も行なっている。ニューヨークでの活動を経て、2018年より日本での活動を再開。作曲にはモジュラーシンセを中心にテープマシンや多種多様なアコースティック楽器を用いる。近年はKITCHEN. LABELやMystery Circles、Seil Recordsより作品を発表している。
「偶発性」はHiroshi Ebinaの音楽を語る上で欠かすことのできない要素である。真白の紙の上に点や線を広げるように音と並べていき、法則を与えることで音楽を形作っていくプロセスを取っている。作曲の際はリズムやピッチといった側面だけでなく、音の触感や音と音との間の無音部分などを重視している。
https://www.instagram.com/he_soundvisual/

[Instagram]

#絵夢 #KITCHEN15INTOKYO #冥丁 #ASPIDISTRAFLY #KINLEONN #HIROSHIEBINA

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interview with Black Country, New Road - ele-king

ワンテイクで撮ったのだと思って欲しくないな、と思った。ここは正直に、3日間の公演を通して撮られたものだと知ってもらいたかった。そこで毎晩違った格好をしようということになった。(エヴァンズ)

 アイザック・ウッドがブラック・カントリー・ニュー・ロードを脱退して1年が経った。
 正直、僕はまだ彼の才能が恋しいし、もうBCNRが『Ants From Up There』をプレイしないということを本当に残念に思っている。しかしBCNRは止まらない。メイン・ヴォーカルの脱退というバンドにとって致命的なアクシデントを乗り越え、BCNRの絆はより強固なものになっている。『Ants From Up There』は言うまでもなく美しい名盤で、様々なメディアでも2022年のベスト・アルバムの上位に並んだ。しかしウッドの脱退を受け、バンドは全曲新曲でのツアーを決めた。ツアーがはじまるまでの限られた時間で曲を持ち寄り作られたライヴ・セットは一年のツアーを経て研磨され『Live at Bush Hall』へ帰結する。

 過去のインタヴューでメンバーがよく口にしていた民主的なバンドの意思決定プロセスが『Live at Bush Hall』では濃く反映されているように感じる。各曲でメイン・ヴォーカルが変わるスタイルも要因として大きいだろうが、誰かひとりが編曲を統括しないことで生まれる流動的で自由なグルーヴがライヴ・アルバムというアイデアと相性が良く、これはスタジオではなくライヴで録るべきだというバンドの選択に合点がいく。プロムや学芸会的なアイデアも、会場を友人やレーベルの人間と飾りつける様子もBCNRが獲得したスタイルをよく表現している。

 サウンド面でも評価されるべきアルバムだと思う。ただでさえメンバーが多いBCNRだが、ピアノ、ドラム、ヴァイオリン、サックス、フルートなど音量がバラバラな上、パーテーションで仕切ってあったが、ステージはかなり小さいので録音はかなり難しかったと思う。先行してYouTubeにアップされているライヴ映像を見ると、ギターのルーク・マークとベースのタイラー・ハイドの後ろにはアンプがなくステージの後方、ピアノの裏まで押し込んであったりいろいろ工夫が施されてある。マスタリングにアビー・ロード・スタジオのエンジニアがクレジットされているのでしっかりしているのは納得だが、生々しいがクリアで暖かく重厚感のあるサウンドはライヴ・アルバムとして理想的な録音になっている。

 語るべきストーリーのあるバンドは多くの人から愛される。我々ファンや音楽ライターは往々にして悲劇やそれを乗り越えるバンドのストーリーを勝手に作りあげてしまうが、そんなことは彼らには関係なく、「ミュージシャンとしては、1日を大切に生きてその瞬間を楽しむということが大事だと思うんだ」と言う彼らの素直に音楽を楽しむ姿勢は、そんなストーリーよりも貴重で素晴らしいと思う。

よくあるライヴ映像は、複数のライヴ映像のうまい部分を編集して繋ぎ合わせて、見栄えを良くしているけれど、僕たちはそのやり方はしたくないと思った。(マーク)

シングル「Sunglasses」のリリース時から聴いていたのでインタヴューできることを大変嬉しく思います。まずは簡単な質問から。BCNRのSpotifyにみなさんのプレイリストがあります。多彩で面白く楽しみに聴いているのですが、あれはみなさんが普段聴いている曲なのでしょうか? それともバンドのためのリファレンスのような物として共有しているのでしょうか?

ルイス・エヴァンズ(Lewis Evans、以下LE):あれはバンド・メンバーで共有しているプレイリストで、各自が好きな音楽を追加しているんだ。普段みんなが聴いている曲を入れているだけで、BNCRが作る音楽のレファレンスとも言えるけど、僕たちは具体的な曲をレファレンスにして制作をすることはあまりしないから、その時々に聴いている曲をシェアしている感じだね。

ルーク・マーク(Luke Mark、以下LM):BCNRがこういう曲を聴いているとか、こういう曲に影響されているということをリスナーに知ってもらいたいという意識は特になくて、僕があのプレイリストに載せているのは、ただそのときに自分が聴きまくっていた曲というのが多い。だから、同じ曲がプレイリストに何回も入っていることもある。誰かが載せた曲を、他のメンバーが聴いて、またそれをプレイリストに載せたりするからね。

いちばん最近のものに青葉市子やBuffalo Daughterなど日本のアーティストが入っていましたが、日本のアーティストも普段聞きますか? どんなアーティストでしょう?

LM:チャーリー(・ウェイン/ドラム)とメイ(・カーショウ/キーボード)が青葉市子の大ファンなんだ。僕は彼女の音楽を聴いたことがなかったんだけど、今度、彼女とロッテルダムのMOMOというフェスティヴァルで共演することになった。だから残りのメンバーはこれから彼女の音楽を聴いて知ろうと思っているところだよ。

LE:プレイリストに載せたかどうか覚えてないけど僕は渡辺美里をよく聴くよ。“My Revolution” とか。ポップ・ソングの書き方に関してはエキスパートだと思うからね。トップ・クオリティだよ!

LM:僕たちの家では朝食の時間にかける音楽だよな。

LE:そうそう、コーヒーを飲みながら聴いてるんだ。


今回取材に応じてくれたルーク・マーク(ギター)


今回取材に応じてくれたルイス・エヴァンズ(サックス/フルート/ヴォーカル)

アイザックが抜ける前の時点で、BCNRにはライヴやフェスティヴァル出演をする機会がたくさん予定されていた。その機会を活かしてライヴなどに出演するのか、音楽以外の現実味のある仕事を見つけるかという話で、全員が前者を希望した。(エヴァンズ)

いろいろなインタヴューでもお話しのように、様々な音楽的バックグラウンドをお持ちですが、音楽以外の影響はどうでしょうか? 好きな映画や本やアートなど、音楽以外からの影響について教えてください。

LM:バンドのメンバーたちは様々なメディアから影響を受けているよ。たとえばタイラーはアート専攻だったから現代美術について詳しいし、チャーリーは美術史が好きだからヨーロッパをツアーしているときは美術館に行きたがる。チャーリーがメンバーの中で、いやタイラーと同じくらい、いちばん美術史について知っていると思う。僕はヴィジュアル・アートに関しては好きなものは少しあるけれど、あまり知識がない方なんだ。最近は、近代美術家のピーター・ドイルという人がロンドンで展示会をやっていたから行ったけど、とても良かった。とても親しみやすいというかわかりやすいから自分でも好きなんだろうな(笑)。デカいサイズの、カラフルな絵を描く人だ。僕がいちばん好きなのはピーター・ドイルかな。本はどうだろう……?

LE:僕は本をあまり読まないんだ。

青木:では映画はいかがですか?

LE:映画は好きだよ。映画は大好き。僕には本は読むだけの集中力がないんだ。だから1時間半くらいの映画が僕にとってはちょうどいい。映画かあ……僕がいちばん好きな映画って何だっけ?

LM:ルイスがいちばん好きな映画は『Waiting for Guffman』(96:クリストファー・ゲスト監督)だよ。

LE:そう、『Waiting for Guffman』で、えーと誰が作ったんだっけ?

LM:あれだよ、あの人!

LE:『Spinal Tap』(84:ロブ・ライナー監督)を作った人! 彼(*脚本のクリストファー・ゲスト)と、彼がいつも起用するキャストのメンバーが登場する、最高な90年代の映画だよ。全てがアドリブなんだ。『Waiting for Guffman』は本当に大好き! あとはかっこいいホラー映画も好きだよ。最近は日本のホラー映画も観てるんだ。『仄暗い水の底から』(02)も観たし……

LM:『仄暗い水の底から』はすごく良かったよな。

LE:『リング』(98)も観た。あれは有名だよね。

LM:『リング』も『仄暗い水の底から』と同じ監督だよね(*中田秀夫)。『仄暗い水の底から』の方が怖かったと思う。

LE:『仄暗い水の底から』の方が?

LM:『リング』の描写は他の映画で何度も模倣されているというか……去年も『Smile』(22)というホラー映画を観たんだけど、『Smile』の基本的なストーリーは、『リング』の結末から始まる感じなんだ。だからパクリだと思ったよ。僕は映画にあまり詳しくないけれど、今年は、可能な限り、映画を一日一本見るということをして、映画に詳しくなろうとしているんだ。これをやれば年末までに365本の映画を観たことになる。ルイスと僕にはルームメイトがふたりいるんだけど、そのふたりとも映画が大好きなんだ。彼らの方が僕よりもずっと映画には詳しい。だから僕は最近、デュー・デリジェンスの取り組みとして、昔の名作映画をたくさん観ているよ。イングマール・ベルイマンやフェデリコ・フェリーニといったアートハウス系の名監督の作品を観ている。いままでそういう作品を観たことがなかったからね。最近は初めて『8 ½』を観たけど、素晴らしいと思ったよ。

映像の途中でみなさんがセットを作るシーンが印象的でした。プロムや学芸会的な演出はどこから出てきたのでしょうか?

LE:今回のプロジェクトのフォーカスは、通常のアルバム・リリースではなく、ライヴ映像にしたいと思っていたこと。このプロジェクトに収録されている曲は、アルバムのために書いた曲ではないんだよ。だからライヴ公演みたいな感じにしたかった。でもライヴ公演では、全てのテイクが最高なテイクになるとは限らない。だからなるべく最高なテイクを披露できるための環境を自分たちで作り上げた。つまり、公演を複数回おこなうということだ。でも、今後テレビなりYouTubeなりでこの映像を観た人が、これをワンテイクで撮ったのだと思って欲しくないな、と思った。ここは正直に、3日間の公演を通して撮られたものだと知ってもらいたかった。そこで毎晩違った格好をしようということになった。確か、アート・ディレクターのローズ(Rosalind Murray)が学芸会的なアイデアを思い付いたんだと思う。それか僕かタイラー。よく覚えてないけど、3人の誰かが思いついた。

LM:(爆笑)僕もそのときにいたよ。

LE:タイラーがイメージの絵を描いていて、ローズがアイデアを思いついて、みんなで脚本を書いたんだっけな? とにかくアート・ディレクターと一緒にこのアイデアを思いついたんだ。それに加えて、これをすごく楽しくて、馬鹿げていて、面白いヴィジュアル・プロジェクトにしようという思いがあった。そうすることで映像主体のリリースにすることができた。そして観客に対しても、一連の曲を聴くという体験よりも、映像を観るという体験を提供できるという、クリエイティヴで面白い手法になった。

LM:3公演やったのは、曲を上手に演奏する機会を3回設けるためだった。それに、よくあるライヴ映像は、複数のライヴ映像のうまい部分を編集して繋ぎ合わせて、見栄えを良くしているけれど、僕たちはそのやり方はしたくないと思った。だから学芸会的なアイデアが出る以前から、ひとつひとつの公演のヴィジュアルを独特なものにしようと話していたんだ。だから公演ごとにバンドとして統一感のある格好にしようと決めていた。その方が、どの公演の演奏なのかが明確になるからね。その考えが発展して、学芸会のアイデアへとつながったんだ。

青木:つまり、一晩ごとに同じ衣装を着て、次の夜の公演はまた別の衣装、という流れだったんですね。

LM:その通り。だから僕たちがひとつの衣装を着ているときは、その衣装でワンテイクしかしていないということなんだ。各曲はひとつの公演で一回ずつしかやっていないということだよ。

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僕たちが近い将来、新曲を披露しはじめたら、その曲はおそらく、『Bush Hall』に収録されている曲とほぼ同じ状態だと考えていいと思う。(マーク)

スタジオ・アルバムではなく、ライヴ・アルバムでのリリースになったのはどういう経緯があったのでしょうか?

LE:アイザックがバンドを脱退したとき、僕たちは「活動を休止するか、しないか」という究極の選択を迫られた。アイザックが抜ける前の時点で、BCNRにはライヴやフェスティヴァル出演をする機会がたくさん予定されていた。その機会を活かしてライヴなどに出演するのか、音楽以外の現実味のある仕事を見つけるかという話で、全員が前者を希望した。

LM:もちろんバンド活動を続けたいし、ライヴをやりたいという気持ちもあったよ!

LE:そこでフェスティヴァルで演奏できるようなライヴ・セットを3カ月間という短期間で書き上げたんだ。だから今回の曲は、アルバムを想定されて作られたものではなかった。各曲についても、他の曲を考慮しながら書かれたものでもなかった。「手持ちの曲がある人は、リハーサル室に持ち寄ってきて。いま、それをみんなで練習しよう! 締切があるんだ」──そういう感じだった。このプロジェクトの仕上がりに満足していないわけではないけれど、これはアルバムとしては適切ではないと感じていたんだ。アルバムとしてリリースするのはしっくりこなかった。だからこうやってライヴ・アルバムとしてリリースできたことは嬉しい。良いリリースの仕方だったと思う。今回の曲がライヴのために書かれたものだということが明確に伝わる作品になったと思う。

LM:僕も同感だ。

ブッシュ・ホールでのライヴは去年のフジロックで来日されたときよりもアレンジも変わりかなり演奏がまとまり、一種のBCNR第二章の総括のような印象を受けました。以前のインタヴューでは(チャーリー・ウェインが)発展途上だとおっしゃっていましたがいまはどう考えますか?

LM:以前、曲についてインタヴューされたときは、今後もっと変更していこうと考えていたんだと思う。僕たちは通常そうやって曲を発展させていくから。曲をライヴで演奏したら、その後にはリハーサル室に集まって、細かい修正をしながら、曲を改善していく。でも今回は、ライヴの回数が多すぎて、あまりそれをやることができなかったんだ。去年はすごく忙しくて、自由な時間があっても僕たちはみんな疲弊していたから、追加の作曲セッションはほとんどやらなかった。だから通常のBCNRの曲と比べて、今回のアルバムの曲はオリジナルに比較的忠実だと思う。

LE:でも今後6カ月くらいのうちに、『Bush Hall Live』アルバムの曲のどれかに嫌気が差して、書き直したいと思う時期が来ると思う。そのときには曲の修正をするよ。

LM:最終的にどの曲も書き直しが入るんじゃないかな。お客さんも『Bush Hall Live』の曲を気に入ってくれているし、今後僕たちが、ライヴ向けではない、アルバム向けの作曲をしていくに連れて、お客さんは『Bush Hall Live』の曲もアルバム・ヴァージョンを聴きたいと思うんじゃないかな。そのときに、僕たちの最新の音源に合うように、『Bush Hall Live』の曲を調整していくと思う。僕たちはいままでもそういうアプローチでやってきたんだ。それが気に入らない人も一部いるんだけどね。でもそれがベストなやり方だと思う。

LE:自分たちがいちばん納得できるやり方だよね。

演奏力もさることながら、楽器の数にしてはすごくタイトになってきて、すごいバランス感だと思います。全体の編曲はどなたかが担当されたのでしょうか? それともツアー中に研磨されていったのでしょうか。

LE:ツアー中に研磨していったものがほとんどだった。中には1、2曲どうしてもうまくいかない曲があって、数カ月間ライヴで演奏していたんだけど、毎回問題があったから、スタジオに入って微調整をおこなわなければならないものはあった。自分たちの満足がいくように修正する必要があったんだ。でもそれ以外の曲は全て、編曲などはせずに、時間をかけて研磨されていった。編曲する時間がなかったということもある。ルークが言ったように、僕たちは10月頃に1カ月のオフがあったんだけど、みんな完全に疲弊しきっていて、一緒に集まって作曲するのは無理だということになり、ただ一緒に集まって遊んでいた。だから編曲というよりは研磨されたということだね。

ブッシュ・ホールではオーディエンスも曲を知っている様子ですごく暖かい印象でした。“Up Song” なんかはすでにアンセム的な情緒があると思います。昨年のツアーを経て新生BCNRは世界のリスナーにすでに受け入れられていると思いますが、オーディエンスの反応はどう感じていますか?

LM:みんなにとっては嬉しい驚きだったみたいだね。僕たちも、みんなが新曲を気に入ってくれたことが驚きだった。新生BCNRの最初のツアーはUK でやったんだけど、小さな会場で新譜を披露した。最初のライヴはブライトンだった。BCNRのファンだけでなく、僕たちの友人たちでバンドをやっている奴らもこのライヴを観にきてくれて、みんなすごく良いと言ってくれた。僕たちと関わりのあるPR会社の人や、マネージャーや、バンドの近しい人たちで、まだ新曲を聴いていなかった人たちもライヴに来てくれて、みんな新曲を素晴らしいと言ってくれた。とても嬉しかったよ。幸先が良いと思った。それ以降、公式な音源がリリースされるまでの間、様々な映像や情報がYouTubeなどで公開されてきたけれど、ネガティヴな反応はほとんどなかった。とてもポジティヴで寛容的なものばかりだった。みんな僕たちのことを応援してくれてサポートしてくれた。本当に嬉しいことだよ。

LE:素晴らしいことだよね。お客さん全員が僕たちの曲を知っているという、ニッチなシーンに出くわすのが面白いよねという話をごく最近していたんだ。去年の夏にラトヴィアに行ったんだけど、僕たちのことを知っている人はあまりいないと思っていた。案の定、そのフェスティヴァルは5000人収容の場所だったけど僕たちのライヴには150人くらいしかお客さんがいなかった。その1週間後、僕たちはリトアニアでライヴをやったんだけど、そのときは僕たちを観ている観客が1000人くらいいたんだ! しかも曲の歌詞を知っている人ばかり。「ラトヴィアとリトアニアは隣国同士なのに、なぜこんなにも違うんだろう!?」と思ったよ。自分が一生行くことがないだろうと思っていた二カ国に行くことになって、そのうちの一カ国では僕たちことを知っている人が大勢いた。とても奇妙な体験だったよ。
 先週は香港に行ったんだけど、香港でもBCNRの曲の歌詞を知っている人がたくさんいた。すごく変な感じだよ。それに、僕たちの曲を知らない人でも僕たちのライヴに来て、僕たちを観にきてくれるということが嬉しい。観客の前から3列目くらいまでは、コアなファンで、未発表の曲もすでに全て知っているという人たち。大人数の観客の場合、3列目より後ろの人たちは、曲を知らないけれど、僕たちがバンドとして上手いと思っているからライヴを観ていて、そのフェスティヴァルで同じ時間帯にやっている他のバンドが観れなくても、僕たちを観る方がいいと思ってくれている人たち。そういう人たちがいるのを見ると感激するし、そう思ってくれる人たちがいるということに感謝しているよ。僕たちが作る音楽は良いものだと自分でも思っているけれど、お客さんがいまでも僕たちのことを好きでいてくれて、リスペクトして観にきてくれるということは嬉しいことだよ。

わかっている唯一のことは映画音楽をやりたいということ。僕はインタヴューされるごとに必ずこう言っているんだ。いつか僕の言葉が映画監督かプロデューサーに届いて「BCNRを起用したい」と言ってくれるかもしれないことを願ってね。だから日本で映画音楽が必要な人がいたら教えてくれよ。僕たちがやりたい!(エヴァンズ)

アルバムの中で特にお気に入りの曲は何ですか?

LM:お気に入りの曲はいくつかあって、理由もそれぞれ違うから答えるのは難しいけれど、1曲だけ選ぶとしたら “Turbines” かな。初めて聴いたときも「なんて素晴らしい曲なんだ」と思ったんだ。

LE:“Turbines” はおそらくいちばん良い曲だろうな。でも演奏するのがいちばん好きという曲ではないかもしれない。演奏していてすごく疲れるし。

LM:ストレスを感じるよな。僕が演奏していて楽しいのは “Dancers” の終盤。“Up Song (Reprise)” も演奏していてすごく楽しかった。満足感もあったし、美しいと思った。あまり演奏する機会はないんだけれどね。先日は “Up Song (Reprise)” のロング・ヴァージョンをやったよね。台北でヘッドライン公演をやったんだけど、そのときは前座がいなかったし、僕たちのセットはそもそも短めなんだ。セットも急ぎな感じで演奏してしまったよね。お客さんはみんな楽しんでくれていたけれど、セットが終わりに近づくに連れて「今日のライヴではあまり長い時間演奏していないよね」ということに自分たちで気づいて、僕とタイラーとルイスが “Up Song (Reprise)” の即興部分を指揮しながら長いヴァージョンにしていったんだ。結構良い感じになったよな?

LE:ああ、クールだったよ! あとこれはセットの中でも良い曲に入る感じでは到底ないんだけど、“The Wrong Trousers” の後半部分を歌うのはめちゃくちゃ好きなんだ。

LM:タイラーと歌い合うところだろ? あれはストレスを感じないもんな。

LE:そうそう。僕は自分の歌う感じがクールだと思っていないけど、そのことを十分自覚した上であの後半部分を歌っているんだ。キーが変わる陳腐な感じも好きだし、タイラーと僕がお互いに問いかけ合うようにして歌っている感じや、僕とタイラーが一緒にやるダンスなどが気に入ってるんだ。自分が「Turn around(=振り向く)」という歌詞を歌うところでは実際に振り向いたりして、すごくダサい瞬間なんだけど、やっていてすごく楽しいんだ。

もし現在のBCNRを定義するとしたらどういうジャンルになると思いますか?

LE:オルタナ・フォーク・ロックかな?

LM:なんだろう? むずかしいな。

LE:ポスト・パンク以外ならなんでもいいや。

LM:ハハハ!

ブッシュ・ホールで演奏されている曲はメンバーが持ち寄って作られたと伺いました。今後スタジオ・アルバムを作るとして、作曲プロセスは変わらないのでしょうか?

LM:おそらく変わらないだろうね。僕たちはほぼずっとそうやって作曲をしてきたからね。次のスタジオ・アルバムがあると仮定したら、今回のライヴ・アルバムとの違いは、曲を研磨するプロセスが長くなるということだろう。曲がレコーディングされる前に、より多くの段階を経て、変化させていくだろう。僕たちが近い将来、新曲を披露しはじめたら、その曲はおそらく、『Bush Hall』に収録されている曲とほぼ同じ状態だと考えていいと思う。その新曲がレコーディングされるまでには多くの段階を経て、より洗練されていくだろう。でも僕たちはいまでも、メンバーが曲の骨格を持ち寄って、それにみんなで一緒に肉付けしていくというプロセスを多くの場合取っているよ。

最終日のプロム公演の準備では〈Ninja Tune〉のスタッフが総動員でセット制作の手伝いをしてくれて、風船を膨らませてくれたんだ。〈Ninja Tune〉のCEOでさえも!(エヴァンズ)

今後、BC,NRはどのような方向性を目指すと考えられますか?

LE:どうだろうね。わかっている唯一のことは映画音楽をやりたいということ。僕はインタヴューされるごとに必ずこう言っているんだ。いつか僕の言葉が映画監督かプロデューサーに届いて「BCNRを起用したい」と言ってくれるかもしれないことを願ってね。だから日本で映画音楽が必要な人がいたら教えてくれよ。僕たちがやりたい!

LM:しかも日本に行って音楽制作をするよ。

LE:そう、日本でやりますよ! バンドのみんなと将来どんなことをやりたいかと話すとき、具体的な話になるのは映画音楽をやりたいということだけなんだ。僕たちはバンド活動においては、毎日を1日ずつ生きている。バンドのみんなと一緒に音楽を作っているときは楽しいし、今後も一緒に音楽を作っていきたいと思っているよ。でもこの先、具体的にどうやって音楽を作っていくのかなどはあまり話さないんだ。いままでもそこまで計画的にやってこなかったけれど、うまく行っているし、ミュージシャンとしては、1日を大切に生きてその瞬間を楽しむということが大事だと思うんだ。

昨年はかなり長いツアーをされていましたが、フェスティヴァルなどで共演されたバンドの中で印象深いバンドはいましたか?

LE&LM:ギース(Geese)!

LE:彼らはクソ最高! めちゃ良い!

LM:実際にバンドの奴らと会うこともできたんだ。良い奴らだったよ。

LE:パリのフェスティヴァルはなんて言ったっけ? La Route du Rockだったよね。フランス北部のフェスティヴァルだったかも。そこで彼らを観たんだ。

LM:La Route du Rockだ。ギースの音楽は前にも聴いたことがあって、確か〈Speedy Wunderground〉のダン・キャリーがミックスを手がけたアルバムを出している。だからバンドのことは知っていたんだけど音楽はちゃんと聴いたことがなかった。でもそのフェスティヴァルで彼らのライヴ・セットを観ることができた。僕はルイスと一緒にいて、チャーリーとタイラーとメイはどこか他のところにいた。バンドのみんながギースを観ているとは知らずに、偶然彼らのライヴの後に他のメンバーと遭遇したんだよ。「すごく良かったよな!」ってみんなで話していた。ライヴの後にギースのメンバーと話す機会があって、彼らは今度リリースするセカンド・アルバムについて、BCNRのファーストからセカンド・アルバムへの移行と似ている感じだと教えてくれた。僕たちもファースト・アルバムをリリースした後は、いままでとは違う方向性に行きたいと思って、ワクワクしながらセカンド・アルバムの制作をした。彼らのセカンドもそんな感じになるらしいよ。セカンド・アルバムからのファースト・シングルはすでに公開されていて、すごく良い感じだよ! だからあのライヴでは彼らの新曲を聴くことができた。最高だったよ。

LE:あとは誰を観たかなあ。

LM:ボニー・ライト・ホースマンも良かった。

LE:ボニー・ライト・ホースマン!

LM:ボニー・ライト・ホースマンはトラディショナルなフォーク音楽をやるバンドで、イギリスのフォーク音楽を主にやっていると思うんだけど、カントリー調に演奏するんだ。カントリー・バンドのセットアップで、フェンダーのテレキャスター・エレクトリック・ギターを使ったりしている。バンド・メンバーたちはステージで、お互いに近い場所、1メートルくらいの距離で立って演奏していた。すごくタイトな演奏でメンバー全員が歌っていて、合唱していた。

LE:素晴らしいミュージシャンシップだったよ。確か僕たちと彼らは3つのフェスティヴァルに連続で共演したんだ。ヨーロッパ北部のフェスティヴァルが3件くらい連続でブッキングされていたんだよ。ドイツ北部とスカンジナビアの辺り。それで、その後、彼らとスイスのクラブに一緒に行ったんだよ。

LM:そのことをすっかり忘れていた!

LE:あれはすごく楽しかった。最高だったよ。

LM:僕はボニー・ライト・ホースマンのことを知らなかったんだけど、フェスティヴァルでは彼らの後にBCNRが演奏する予定だったから彼らの演奏中にステージの脇で機材のセットアップをしていたんだ。ステージ脇から彼らのセットをずっと観ていたよ。すごく感動したね。その後にも彼らと共演する機会があったんだけど、最初に彼らのライヴを観たときは素晴らしくて驚いたよ。

LE:あとは、Primaveraでゴリラズを観たときは興奮したね。最高だった。子どもの頃の思い出が一気に蘇った瞬間だったよ。

去年のアンソニー・ファンタノー(Anthony Fantano:アメリカのユーチューバー、音楽評論家)のインタヴューで〈Ninja Tune〉との契約について話されていたことが面白かったので、ぜひ日本のメディアでも紹介したいです。〈Matador〉や〈Sub Pop〉など伝統的なインディ・ロック・レーベルではなく〈Ninja Tune〉との契約を決めた経緯について教えてください。

LM:ミスター・スクラフをリリースしたレーベルということしか知らなかった。それはクールだと思ったけどね。〈Matador〉にも「〈Ninja Tune〉には期待しない方がいい」と言われていた。

LE:ダンス・ミュージックのレーベルだからという理由でね。

LM:そう、だから何の期待もしていなかった。しかもレーベルの所在地がサウス・ロンドンの少し怪しいところにあった。そしてオフィスの上に通されて、イギリス支店のトップだったと思う、エイドリアンに紹介された。彼の役職は定かではないんだけど、A&Rもやっていると思う。とにかくすごくいい人だった。エイドリアンは僕たちを座らせて、「これが変わった状況だというのはわかっている。我々は、君たちのようなバンドと契約するようなレーベルではない。でも逆になぜそれが良いことなのか説明するよ」と言っていろいろと説明してくれた。〈Ninja Tune〉は僕たちが公開した音楽が好きで、レーベルの人もBCNRという音楽をリリースすることにワクワクしているし、BCNRというプロジェクトに一緒に関わっていきたいと思っているということ。僕たちがいままでやってきた音楽や、僕たちの美的感覚を全て尊敬しているし、僕たちに今後もリリースに関する指揮を取ってほしいと。それはまさしく僕たちが望んでいたことだった。〈Ninja Tune〉には僕たちみたいなアーティストがいなかったから、そういう意味で僕たちはリリースのタイミングを自由に決めてよいということだった。似たようなバンドのリリースとかぶることがないからね。異例の選択をするということは僕たちにとっても有利になるということを説明してくれた。
 彼の説明はもっともだったけれど、いちばんの決め手はレーベルの人たちが僕たちのプロジェクトに熱意を感じていたことと、レーベルの人たちがいい感じだったから。そして僕たちが作り上げたものをベースに一緒に仕事をしていきたいと思ってくれていたから。当時はいまよりも、自分たちの音楽と、その表現方法だけで評価されたいと僕たちは強く思っていた。だからプレス写真も公開していなかったし、自分たちが作った音楽やカヴァーした音楽だけを公表していた。〈Ninja Tune〉はその考えに共感してくれたんだよ。それで僕たちもその場で説得された。〈Ninja Tune〉のオフィスを後にして、僕たちみんなはしばらくの間黙っていた。みんなが同じ気持ちかどうか気になったから。そしてすぐにみんなで「このレーベルが一番だね!」と道端で話し合ったよ。「〈Ninja Tune〉が最高だから彼らと契約しようぜ!」と話していた。そして結果的に僕たちは正しい選択をしたということが証明された。〈Ninja Tune〉は、活動をサポートしてくれる一方で、僕たちの好きなようにやらせてくれる。最もわかりやすい例がこの映像プロジェクトだよ。これはかなり実現が難しいものだった。事前の綿密な計画も必要だったし、費用もかさんだ。〈Ninja Tune〉にとってはキツかったと思うよ(笑)。でも全て僕たちのためにやってくれたんだ。

LE:これは映像には含まれていないけれど、最終日のプロム公演の準備では〈Ninja Tune〉のスタッフが総動員でセット制作の手伝いをしてくれて、風船を膨らませてくれたんだ。〈Ninja Tune〉のCEOでさえも! 僕たちのプロジェクト・マネージャーも細かい準備作業を全て手伝ってくれた。みんなすごく親切なんだよ。

LM:みんな本当に風船を膨らませていたんだよ。最高だった。彼らは僕たちを信頼しているし、僕たちも彼らを信頼している。少なくともいまのところは……(笑)

ありがとうございました。最後に日本に来る前に日本のファンに何か一言ありますか?

LE:日本に行くのがすごく楽しみだよ! 名古屋と大阪公演のチケットをたくさん買ってねー(笑)! とにかく、本当に日本に行くのが待てないよ。自分がいままで行った国の中で、いちばん最高な国だったと思うから、早くまた行きたい。すごくワクワクしてるよ!

LM:素晴らしい国だよね。日本で僕たちを見かけたときに、僕たちが興奮してはしゃいでいるように見えたら、それは興奮しているフリをしてるわけじゃなくて、本当に興奮してるってことだからね。日本のファンに会えるのも楽しみにしてる。みんなすごく良い人たちだったからね。

LE:ああ! 特に大阪と名古屋ではたくさんのファンに会えたらいいなって思ってるよ! みんなのお父さんもお母さんもライヴに連れてきてー!

青木:4月は前回の(フジロック)のように暑くないし、気候も最適だと思いますよ。

LM:それは僕とルイスにとってはありがたい。僕たちは暑さが苦手なんだ。いまいるタイも暑すぎるよ。

青木:ルイスさん、マークさん、今日はお時間をありがとうございました!

LE&LM:東京で会えるね。

青木:はい、もちろんです。タイとインドネシア・ツアーを楽しんでくださいね。東京でお会いしましょう!

LE&LM:ありがとう! またねー!

Alice Phoebe Lou - ele-king

 南アフリカ、ケープタウン出身のシンガー・ソングライター、アリス・フィービー・ルー。インディペンデントな精神を保ちながら成功しているミュージシャンの例として、彼女は稀有な存在のひとりだ。
 真冬にベルリンの路上で歌い、ヨーロッパ最大級のフェスティバル《PRIMAVERA》のメインステージでも演奏する。
 ワールドツアーの合間にベルリンの路上で歌う彼女は、自身の美学や信念に忠実であるがゆえに、誰かにとっては寄り添われているような感覚を与えるのかもしれない。

 そんな彼女の初来日は2018年。翌年にも《FUJI ROCK》などを含めた来日ツアーを果たしているが、この三年間はご多分に漏れずパンデミックの影響で来日が途絶えていた。
 満を辞して再来日を果たす彼女に、そのルーツやこれまでの経験、パンデミック中の心境や日本のミュージシャンに対する印象について聞いてみた。

■キャリアの原点として、ダンス、演劇、身体パフォーマンスなど、音楽以外の分野があるとお聞きしました。それらは現在あなたの中にどのように息づいていますか? また、表現方法として音楽に集中するきっかけは何だったのでしょう?

アリス:そうですね。小さな頃からダンスや演劇をしていたおかげで、自分の体をきちんと把握して、自信を持つことができています。それがいまのステージ上での身のこなしやパフォーマンスに確実に良い影響を与えていますね。そういう勉強をしていたおかげで、どうやったら観客の目を引くことができるのか、自分が作り出す世界にどう周りを引き込むかを学べたのも大きいです。  ダンスは表現方法として大好きでしたが、別のやり方がないかな、と考えているうちに、詩や音楽へ自然と移行したんだと思います。初めて路上で音楽を演奏したとき、これかも! と思ったので。

■故郷のケープタウンから1万km離れたベルリンで活動し、アフリカ、ヨーロッパはもちろん、北米、南米、アジア、オセアニアと世界中を移動しながらライヴをおこなってきたと思います。言葉の通じない場所での経験や「移動」はあなたに何をもたらしましたか?

アリス:19 歳のときにストリートミュージシャンを目指してベルリンに移って10年。いまでもときどき公園で演奏していますが、基本的には世界中を飛び回る生活です。こんな状況想像もしていなかったです。家から遠く離れた場所でミュージシャンとして活躍できるようになるなんて!  ベルリンは自己表現やアートが街中に溢れていて、そんな異文化の中に身を置くことはとても刺激的です。アーティストにとってチャンスのある世界に招かれたような気がして、本当に人生が変わりました。  世界中を旅しはじめてからは、異国の地で自分の曲を演奏し、その土地のローカル・ミュージックに触れ、世界のこと、自分のこと、そして次に作るべき曲のことを行く先々で学び続けています。  南アフリカにも年に1 回、2ヶ月くらい帰りますよ。実家からはいつもと違うインスピレーションを得られるので。家族、自然、ノスタルジー、そして「あの頃の私」とつながったり。

■ベルリンといえばダンス・ミュージックやクラブ・カルチャーが盛んです。キーボードの Ziv とのサイド・プロジェクト strongboi を含め、あなたの楽曲のなかにもダンサブルなものやサイケデリアを感じるものが散見されますが、シーンから受けた影響はありますか?

アリス:ベルリンに引っ越してきた当初は、ダンス・ミュージック文化やオルタナティヴ・シーンにとても興奮し、朝 6 時に起きてコーヒーを飲んで、ひとりでクラブに行ってひたすら踊っていました。夏の日差しのなか、外でおこなわれるオープンエアーのパーティーや、ストリート・パーティーと化したデモなど、そのワイルドな雰囲気が大好きです。そんな遊び方をしているうちに、70年代のディスコや音楽からインスパイアされた、オーガニックな楽器やテープ録音を使った、ダンサブルな音楽を作りたいと思うようになったんです。私のライヴでは、ソフトでフォーキーな瞬間もあれば、ワイルドに踊る瞬間もあります。それが自分でもとても楽しいんです。ベルリンの魅力は、年齢やバックグラウンドに関係なく何にでもなれて、何にでも挑戦できて、社会的な期待やプレッシャーからも解放されて、自分の好きなアーティストになれる、そして自分のためのシーンやオーディエンスを見つけられる、そんなところにあると思います。

■1300万回という驚異的な再生数になっている “She” は、ヘディ・ラマーの伝記映画の劇伴として使用され、アカデミー賞オリジナルソング部門ノミネートの最終選考まで残りました。あなたにとって映画とはどういう存在ですか? また、お気に入りの映画があったら教えてください。

アリス:この曲に対してこんなにも反応があるとは思ってもみませんでした! トライベッカ映画祭で上映されたときに、この映画の製作陣に会うことができて最高に楽しかったです! 私はもっと映画とコラボレーションしたいし、映画のためにもっと曲を書きたいと思っているので、早くまたそんな機会が巡ってくることを願っています。  好きな映画は本当にたくさんあります! でも、いまパッと思いつくのは、『ヴィクトリア』、『ムーンライズ・キングダム』、『ウエスト・サイド物語』(古い方)ですね。

■パンデミック中にリリースした楽曲は自分を見つめるような内省的な部分が感じとれました。坊主頭にしたりもしていましたが、コロナの期間はあなたにどのような心境の変化をもたらしましたか?

アリス:2019年のツアーでとても忙しい1年を過ごしたばかりのことだったのでその反動もあり、多くの人がそうであったように、私にとっても自分を見つめる時期でした。とても長いライターズ・ブロックを経験しながら、ベルリンでひとりで過ごして自分と向き合いました。とても大変な時期でした……! そんななかでもあるときから、音楽や詩が、湧き上がるすべての感情を導いてくれて、クリエイティヴィティを邪魔していた何かを打ち消してくれました。このプロセスを踏んだことで、率直で、余計なフィルターがかからない心からの曲を書くことができたんです。その後のパンデミックの期間は、作曲とレコーディングに集中することができたので、一気に2枚のアルバムを書いて、初めてのレコーディングスタジオを作りました。これがこの混乱した時期を過ごすのにぴったりでした!  じつは、頭を剃ったのはパンデミックの直前だったんです。個人的にいろいろなことがあったので、過去に別れを告げ、ありのままの自分を見て、新しくスタートするためのきっかけが必要だと思ったんです。頭を剃ったそのときは、私にとってとても美しい瞬間でした。

■以前の日本公演と同様に、今回も踊ってばかりの国やカネコアヤノと共演があります。彼らに感じるあなたとの共通点はありますか? また、他に気になっている日本のミュージシャンがいれば教えてください。

アリス:踊ってばかりの国もカネコアヤノのこともとっても愛してます。彼らが作る音楽も、個性的な人柄も大好きです。日本に来るたびに私が帰る場所になってくれる友だちがいると思うと、 最高な気分です。他に誰か挙げるとしたら、前回の来日で共演した青葉市子ですね。彼女も私の大好きな日本のソングライターのひとりです。

■昨年来日した Noah Georgeson や ボビー・オローサ らに、あなたと交流があるとお聞きしました。彼らとの関係はどういったものなのでしょう?

アリス:Noah Georgeson は素晴らしい友人であり、 プロデューサーです。私の2枚目のアルバム『Paper Castles』で一緒に仕事をして、カリフォルニアの美しいスタジオでレコーディングしました。彼は素晴らしい人で、彼がディヴェンドラ・バンハートの音楽にもたらすものがとても好きです。ボビーとは数年前にお互い出演していたドイツのフェスティヴァルで会ったんですけど、彼のパフォーマンスとバンドの音にすっかり感心してしまって、話しかけてみたら音楽をテープに録音するのが好きだという共通点で意気投合したんです。いつか彼とコラボレートしたいです。

■これまでの来日で印象に残ったこと、そして今回の日本ツアーで楽しみにしていることはありますか?

アリス:日本のお客さんも、この国の自然も大好きです。他に日本での楽しみはと言われたら、まずは食べ物ですね! ツアー・マネージャーの俊介は、毎回私たちを素敵な場所に連れていってくれて、新しい味覚を提供してくれるんです。あとは、また納豆を食べるのが楽しみ! それから、このツアーで新しい街を見られるのがとても楽しみだし、また鎌倉に行けるのもとても楽しみです。あとは、いつも暑い夏に日本に来ていたので、日本の春が見られるのを楽しみにしています。

■最後に、公演を楽しみにしている日本のファンへメッセージを。

アリス:4 年ぶりに日本に戻ることができるのでとても興奮しています! 進化したバンドとたくさんの愛を持って、新曲たちをみんなに披露しますね! See you soon !!


Alice Phoebe Lou来日公演情報

日程詳細は以下の通り

3/22 東京 渋谷WWWX (with 踊ってばかりの国)
3/23 大分 別府市コミュニティーセンター 芝居の湯
3/25 香川 高松市屋島山上交流拠点施設 やしまーる (ソロセット)
3/26 神奈川 鎌倉 浄智寺 (ソロセット) sold out
3/27 東京 晴れたら空に豆まいて (カネコアヤノ Band Set)
3/29 神奈川 Billboard Live Yokohama (with カネコアヤノ ソロセット)

Alice Phoebe Lou来日ツアー2023 特設サイト
https://haremametube.wixsite.com/alicephoebeloujt2023

Tatsuhisa Yamamoto - ele-king

 ジャズ、実験音楽、ロック、エレクトロニック……などなど、あらゆる尖っている音楽シーンで引っ張りだこの前衛ドラマー、山本達久。石橋英子、坂田明、ジム・オルーク、青葉市子、UA、七尾旅人などのバックも務め、カフカ鼾のメンバーとしても活動している。
 先日、9月/10月と山本達久が自身初となるソロ・アルバムを2枚連続でリリースすることが発表された。
 まずは9月18日にオーストラリの実験派オーレン・アンバーチの〈Black Truffle〉から『ashioto』。
 10月7日には日本の〈NEWHERE MUSIC〉から『ashiato』。

interview with Vityazz - ele-king

インスト・バンドという言葉からはジャンルやサウンド感が伝わるわけではない。でも「インスト=ヴォーカルがいない」、もっと言うと「歌詞がない」という状態を指していて、それである種の線引きができるのでなんとなく納得してしまう。それは、カラオケ文化と無関係ではない気がしていて。

 ヴィチアスのデビュー・アルバム『11034』を私は心待ちにしていた。日本のジャズにまつわる新しい動きを探訪しながら出会ったのがこのヴィチアスで、私は彼らのデモ音源を初期の頃から聴かせてもらい、いつかコンピレーションに収録して世に出せないかと密かに目論んでいた。
 ヴィチアスは、ジャズを学んだメンバー4人からなるグループだが、日本のジャズ・フィールドでの活動は一切していない。その代わりに自らホスト・バンドとなってライヴ企画を打ち、様々なバンドをフィーチャーしたり、映像を駆使した表現方法で新たなジャンルのフィールドを切り開いている。それでもなお彼らの口からは「吉祥寺に今年できたライヴハウス NEPO なんかをみると、ライヴに映像が入ることがデフォルトになってますよね。さらに新しい見せ方を考えないと……」と、常に一歩先を行く話が飛び出してくるのだ。
 また様々な対比が同居した音楽性もヴィチアスの特徴のひとつ。ヴォーカルがある、でもインスト音楽。ジャズの構造でできている、でもメロディーはポップスやロック。印象はというと、密度が詰まって濃い、でも淡い質感。といったように彼らはこの対比を、緻密に計算して楽しんでいるように見える。
 ジャズを学んだ人たちが、様々な経験と人脈を経て生み落とす音楽が、全世界的にいまとても面白いが、彼らの作る音楽は、思えばそんな対比する異なる要素をどう作品に落とし込むか、そのアイディアや処理の仕方が非凡で、音楽理論を踏まえたうえでの遊び心があり大胆だったりすることが多い。面白さのひとつはそんな理由なのかもしれない。彼らの音楽は、ときにどんどん予期しない方向に形を崩していったり、また自身のアイデンティティに立ち戻ってそれを表出させたりと忙しい。それゆえに目が離せない。ヴィチアスはまさにそんなタイプの魅力をもったグループだ。
 6月21日にタワーレコード限定で先行発売された『11034』が反響を集める中、今秋の正規リリースを控え、新たなレコ発の企画も進行中のヴィチアス。リーダーで作編曲を担当する中川能之(ギター)に話をきいた。

本当に理想的な状態だとインスト・バンドという言葉がなくなるくらいになれば良いなと思っています。

まず始めに、バンド結成の経緯を教えていただけますか?

中川能之(以下、中川):僕は音楽学校のメーザーハウスでジャズ・ピアニスト佐藤允彦さんの作・編曲や音楽理論の授業を受けていたんですが、その学校のセッションで知り合ったのがドラムの安倍弘樹くんです。安倍くんは当時、東京キューバンボーイズの2代目のリーダー見砂和照さんにドラムを師事していたり、アントニオ・サンチェスが好きだったり、なんでも叩けるんですけど特にラテンに強いドラマーで。僕はちょうどその頃、曲を作りながらヴィチアスの原型になるような曲をギターのループマシーンを使ってひとりで試行錯誤していた時期で、形が見えてきたので安倍くんと栗山くんというジャズ・ベーシストに声をかけてトリオという形でスタートしたのが2015年くらいですね。その後、いまのベースの笠井トオルさんが入りました。


安倍弘樹(ドラム)

笠井さんもジャズのスキルを持ちながら幅広く活動されている方ですよね。どんなきっかけで出会ったんですか?

中川:僕はメーザーハウスの他にギタリストの市野元彦さんのレッスンも受けていて、笠井さんは市野さんから紹介してもらいました。笠井さんの師匠が、市野さんのバンド(rabbitoo)のベースの千葉広樹さんで、そのつながりもあって。笠井さんは Avocado Boys のメンバーとしても活動されたり、ジャズに限らず色々とサポート仕事も多くされていて、ウッドベースでしっかりジャズが弾ける上で、エレベも弾けてエフェクターの使い方も上手で。シンセベースとか機材系にも強くいろんな引き出しが多い人なので、すごく助かっています。ヴィチアスは楽器隊としてはトリオ編成なので、ベースの持ち替えやエフェクターで曲ごとにヴァリエーションをもたせてくれる笠井さんのスタイルはヴィチアスのサウンドを大きく広げてくれていると思います。あとヴィチアスの曲はリズム的なギミックや複雑なドラムパターンも出てくるので、ベースは一段後ろに下がりつつもツボを押さえたプレイで、バンドの土台をしっかり支えてくれています。


笠井トオル(ベース)

出会いのきっかけになった市野さんのレッスンのことについても伺いたいです。ヴィチアスの音楽はどんな部分で影響をうけていますか?

中川:市野さんは rabbitoo のようにいわゆるジャズだけに収まらない音楽を作られる一方で、レッスンではご自身がバークリー出身ということもあり、オーセンティックなこともしっかり体系立てて教えていただいています。特にコード・ヴォイシングのヴォキャブラリーを増やしてどうプレイに落とし込むかというところの影響が大きいと思います。ヴィチアスの楽曲は、ギターとヴォイスが同じメロディラインをなぞるというところが特徴のひとつとしてあるんですが、編成としてコード楽器がギターしかないという状況で、そういったメロディーとコードをギター1本でどう弾くかがサウンドに直結する部分になっています。コード・ヴォイシングのヴォキャブラリーや、メロディーとポリフォニックに動く内声ラインをどう弾くか、というようなことは、市野さんから学んだことが活かされていますね。

最近では、嘴音杏(しおん・あん)さんがヴォイス担当として加入されましたね。

中川:ヴォイスを入れようとなったときに、何人か候補の方を挙げていったんですが、声質と音域の広さ、楽器的に声を操れるスキルも持っているという点で彼女にお願いしました。杏ちゃんは自身のソロ名義やユニットもいくつかやっていて、安倍くんと笠井さんがサポートで入っていたりしたので、そういうつながりもあって。あと加入後に知ったんですが、彼女はクラシックの声楽の素養もある人なので、まさに楽器的に声を使えるという点でもぴったりでした。
トリオの頃は僕の声をヴォーカル・エフェクターで加工してヴォイスのラインを入れていたのですが、杏ちゃんのおかげで音域という面での自由度がかなり広がったのも大きいですね。ギターで良い音で弾ける音域でメロディーを作ると、メロが盛り上がったところで男では出ない音域になってしまいがちで。僕は男性の中では音域がかなり高い方なんですがそれでも出ないところを杏ちゃんは余裕でピッチも安定して出せるので、作曲上の制約がなくなって広がったということが大きくて、今後の作曲でも新しいものができると思っています。
あとはライヴでの再現性やアレンジの面でも、純粋に人手が増えるのでその部分でも広がっていくだろうなと感じています。4人揃った初ライヴは、8月20日の新宿 MARZ が決まっているので、そこに向けてライヴならではのアレンジなども詰めていきたいですね。


嘴音杏(ヴォイス)

いまジャズは大学などでもアカデミックに研究されているし、YouTube にも山ほど解説動画があって、共通スキル化しやすくなっていると思うんですが、そうなるとそこがスタートラインになってしまうので、そこから先の部分での分化を考えるとジャンルを越えたものになりやすい。

ヴィチアスのコンセプトのひとつとして、いわゆる歌詞が入るヴォーカルとは違うところを目指していますよね。

中川:そうですね。楽器的な声の使い方、スキャットというか歌詞がないスタイルには色々な可能性があると思っているので、今後も追求していきたいです。

ジャズというフィールドとの関係性は意識しますか?

中川:声の楽器的な使い方という点では、いわゆるジャズ的なスキャットや、現代的なジャズ・ヴォーカル、例えばアントニオ・サンチェスのバンドでのタナ・アレクサのヴォイスとサックスとでユニゾンするスタイルや、タチアナ・パーハがピアノと声だけのユニゾンで歌ってるようなスタイルはジャズ・フィールドではもちろん例が多くあるんですが、ヴィチアスは少し立ち位置が違うかなと思っています。
僕たちのやっているものは、曲のフォーム構成やメロディーをポップス寄りなところに落とし込んでいるので、そういうバランスとしてもジャズのスキャットともちょっと違うし、一方で主メロを歌うパートがいるという意味でもいわゆるインスト・バンドとも違うバランスを目指していて。そういった指向性の中でサウンドを構成する要素として、ジャズのコード感であったりポリリズムであったりを作曲の構造の中に取り入れているので、あまりジャズ・シーンに対してどういう立ち位置でいようか、というようなことは考えていないですね。

ヴィチアスは、ジャズというより、新しいインスト音楽という方向性ですね?

中川:自ら新しいインストと名乗るのはおこがましいですが、インスト・バンドってなんだろう? と以前からよく考えることはあって、インスト・バンドっていうのは改めて考えると少し変な言葉なんですよね。僕自身、人に自分の音楽を説明するときに「インスト・バンドやってます」って言っちゃうことが多いんですが、一口にインストと言ってもロックなインストもあればファンクやソウルなインストもあって、インスト・バンドという言葉からはジャンルやサウンド感が伝わるわけではないですよね。でも訊いた方も「あ~そうなんですね」となんとなく納得するという不思議な便利さもあるがゆえに僕もついつい使っちゃうんですけど。でもそれってつまり、「インスト=ヴォーカルがいない」、もっと言うと「歌詞がない」という状態を指していて、訊いた方もそれである種の線引きができるのでなんとなく納得してしまうのではないかと。それは、インスト・バンドという言い方が日本独特なものか分からないですが、いわゆるカラオケ文化と無関係ではない気がしていて。

要するに、リスナーが「歌えるかどうか」、という線引きを音楽に対してしていると。

中川:はい。そういうある種線引きされている、いまインストといわれる音楽の領域をいかに広げられるかということを大げさに言うと考えていて、本当に理想的な状態だとインスト・バンドという言葉がなくなるくらいになれば良いなと思っています。それは歌詞をつけないという僕たちのコンセプトに続いている部分なんですが、「声が入っている状態でリスナーも歌えるようなメロディーがあり、実際に声がメロディーを歌っているんだけど歌詞がないインスト的なサウンド」、という僕たちの音楽をどう聴いてもらえるか、いまの日本の音楽シーンの中でどう評価されるか。それが新しいインストになれるかどうかにつながるんだと思います。

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中川能之(ギター)

自分が日本のインディー、オルタナな音楽シーン、特にライヴハウスで身近に触れていた音楽から得た美意識というか。「これはアリ、これはナシ」といった肌感覚はミクロ的には個人史であり、マクロ的には日本の音楽史の一部でもありという意味ではオリジンになりうるのかなと思っています。

海外の動きは意識していますか?

中川:ゴーゴー・ペンギンはサウンド感やリズムの仕掛けが好きでよく聴きますね。直接的にそこから何か分析して取り入れたりっていうのはしていないんですが、彼らのインタヴューを見るとDAW上で作ったものを生演奏に置き換えるというプロセスを経ているみたいで、ヴィチアスと似ている部分があるかなと思っています。自分の作曲のやり方として、僕はギタリストですけれど作るときはピアノで作るんですね。ピアノの方がギターよりもヴォイシングや音域の制約が少ないので。なので、ヴォイシング含めてDAW上でスケッチを書いて、そのコード・ヴォイシングとメロディーの流れをギターで置き換えるという作業をしています。もちろんピアノのヴォイシング全てをギターに置き換えるのは構造上無理なので、再現と言うより翻訳に近いですが、一度作品としてカチッと作り上げたものを生に置き換えるというプロセスは似ているかなと思います。

ゴーゴー・ペンギンはアドリブ主体のジャズとはちょっと違って、作品性が先に来ているという感じがしますよね。

中川:そうですね。ものすごく大雑把に、個人のスキル同士がぶつかるというタイプをアメリカ的、構築された作品をどう演奏するかというタイプをUK的とするなら、僕たちも後者なのかなと思います。ゴーゴー・ペンギンとかを聴いていると音響面のテクスチャーのこだわりがすごくあって、リヴァーブ感のこだわりとか録音後のミックス感も含めてかなり詰めてるんだろうなと思います。そういうところの音響的なテクスチャーへのこだわりは、僕たちが声を入れていることにつながるんですが、ヴォイスというのはすごく音響的なテクスチャ・コントロールに優れている楽器だと思っていて、それは他の楽器にはない部分だと思うんです。そういった意味で音響的なテクスチャー含めた作品性を重視するヴィチアスのコンセプトにも近しいものを感じます。

ヴィチアスの音響のこだわりはある種UKっぽいですよね。他にいま盛り上がっているジャズについてどう見ていますか?

中川:UKに限らずですが、折衷感があるものがいま多いですよね。いま、現代的なジャズは大学などでもアカデミックに研究されているし、YouTube にも山ほど解説動画とかあって、それゆえに吸収、共通スキル化しやすくなっていると部分もあると思うんですが、そうなるとそこがスタートラインになってしまうので、そこから先の部分での分化を考えるとジャンルを越えたものになりやすいという側面はあるのかなと思います。そういったジャズをインプットしやすくなっているという状況にあって、自分の中にあるオリジンの部分というのをどうミックスするのか、ジャズにある種のレガシーとして接する人が共通して取り組んでいるところなのかなと思います。

なるぼど。では、ヴィチアスにとっての「オリジンの部分」というのは何ですか?

中川:やはり、楽器を始める前の頃も含めて、僕がいままで聴いてきたポップスやロックのフィールドからの影響がいちばん自然に出るのかな。例えばヴィチアスの曲だとハーモニーの部分では、ポリモーダルや調性を薄めてあったりと、かなりジャズの要素が強いんですが、メロディー自体はポップス的に気持ちいいと思うラインを追っていたり、曲のフォーム構成はポップス的なA‐B‐サビのくくりになっていたりします。あとこれはなかなか言葉では表現しにくいのですが、自分が日本のインディー、オルタナな音楽シーン、特にライヴハウスで身近に触れていた音楽から得た美意識というか。「これはアリ、これはナシ」といった肌感覚はミクロ的には個人史であり、マクロ的には日本の音楽史の一部でもありという意味ではオリジンになりうるのかなと思っています。そういったところをジャズ・プラスアルファのオリジンの部分として追求していきたいと思っています。

歌詞が入っていて音量が小さいと聴いている方としてはストレスになると思うんです。どうしても言葉や内容を聞き取ろうとしてしまうから。僕たちの音楽は歌詞がないので、声とそれ以外の音のミックス・バランスを普通の歌モノとは変えて工夫することができます。

ロックやポップスはどんなものを聴いてきたんですか?

中川:普通に生活していて耳に入るような、いわゆる J-Pop ももちろん聴いていましたが、やはり自分が音楽をやるようになってからライヴハウスとかで生で見たバンドの影響も大きいと思います。地元にはライヴハウスがあんまりなかったので、東京に来て J-Pop とは別のインディー、オルタナな音楽シーンを体感したときの衝撃は大きかったです。初めて Ryo Hamamoto さんや Peridots さんのライヴを生で見たときは衝撃を受けましたし、そんなにライヴは観れてないですがベベチオさんとかも好きでよく聴いてました。シンプルに声とメロディーがいい人が好きで。最近知った方だと阿部芙蓉美さんがとても素晴らしかったです。

中川さんは色々な音楽をインプットしていますよね。ボン・イヴェールの作品をDJでかけたときに好きだとお話したことも印象に残っています。

中川:ボン・イヴェールはエフェクティヴな加工やアレンジが素晴らしい面もありつつ、コアになっているフォーキーな感じも好きです。シンプルに良い声とメロディーが好きってのは、多分いちばん最初まで遡ると親が聴いていたカーペンターズが好きだったみたいなところもあると思います。良い声と良いメロディーってのがコアにあるので、弾き語りスタイルから大胆にアレンジやテクスチャーを変えても通底する良さがある人というのに魅かれているというところはあると思います。

最近はケイトリン・オーレリア・スミスも聴いているんですよね? オーガニックな要素をもつ声とエレクトロニックな人工的な音という対比したサウンドの処理についてはヴィチアスにとってもテーマだと思うのですが、その点で工夫されていることはありますか?

中川:彼女は声とモジュラーシンセを主体にする中での、作曲性とミニマル・ループ感のバランスが素晴らしいなと思います。モジュラーシンセに比べると僕たちは基本はアコースティック寄りではあるんですけと、ギターのエフェクトで高域の倍音成分を出して Pad っぽい音を入れたり、ベースにオクターヴァーをかけて低域を拡張したりといったサウンド処理はしています。

今回のアルバム『11034』についてはどうですか。作品トータルの聴かせ方で意識されていることはありますか?

中川:アルバムに関していえば、いちばん気を使ったのはヴォーカルとのミックス・バランス処理ですね。それをどうするかエンジニアさんと何度もやりとりして詰めていきました。ヴォーカルのリヴァーブ感と音量・音響的なバランスの取り方というのはいちばん気を使っていて、どうしても声が入ると声をメインに聴こうとしてしまうと思うんですよね。そうなったとき、ギターも同じ主旋律を弾いているので、ギターの中にある声と他の音とのバランス感覚が大事になってきます。
あと、先ほど話した歌詞を入れていないことにも通じるのですが、歌詞が入っていて音量が小さいと聴いている方としてはある種ストレスになると思うんです。どうしても言葉や内容を聞き取ろうとしてしまいますから。僕たちの音楽は歌詞がないので、声とそれ以外の音のミックス・バランスを普通の歌モノとは変えて工夫することができます。

曲の構成についての聴きどころや、アルバムのなかで思い入れのある曲について教えてください。

中川:1曲目の“How days slided”はバンドで最初に合わせた曲なのですが、この曲はいわゆる初期モードと呼ばれるワンモード主体の構造になっていて、マイルス・デイヴィスの“So What”とかと作りが似ているんですけど、そういったモーダルな感じともうひとつ、この曲は、5と4のポリリズムになっているのが特徴で。そういった自分の中で実現したかった音楽的な要素を、初めて曲の形にできたという意味では、この曲でユニットの方向性が見えた部分でもあるので思い入れがありますね。

歌詞って映像喚起力が強いと思うんですが、それゆえに歌詞が入るとどうしても言葉の映像喚起力に音楽が勝てないというか、音楽自体が持つ微細な映像喚起力がマスキングされてしまう気がして。

やはりジャズの構造が入っているんですね。影響を受けているジャズはどのあたりです?

中川:ジャズの中でも自分がいちばん好きで影響を受けたのはマイルス・デイヴィスの『ネフェルティティ』あたりのサウンドで、いまでもよく聴き返してます。特にウェイン・ショーター作曲の“Fall”が好きで素晴らしく美しい曲なんですが、その曲のハーモニー、音楽的な用語でいうと4度和音を主体とした非機能的なハーモニーの連結といった部分はヴィチアスの作曲にもかなり影響を受けていると思います。

ポリリズムにこだわっているということですが、ヴィチアス独特のリズムを生み出すドラムについての注目ポイントはありますか?

中川:変拍子やポリリズムを取り入れると勢いプレイヤー視点でのドラミングになりがちだと思うんです。でもドラムの安倍くんはそういったリズム遊びを楽しみつつも、ドラマーのエゴにならないようにあくまで音楽的な流れを重視したプレイができるので、そういったトータルのバランス感がポイントかなと思います。ドラムの音質についてですが、今回のレコーディングでは、60年代のヴィンテージのドラムセットにシンバルはいまっぽい音色のものを組み合わせることで、いまの時代のサウンドの中にも伝統的なジャズっぽさも少し匂わせる工夫をしています。

躍動感を出すためにこだわっている部分や、ダンス・ミュージックとの接点についてはどうでしょう?

中川:5と4のポリリズムを使った曲がいくつかあって、その中でキックの4つ打ちではなく5つ打ちというのをやっていて、それはダンス要素のひとつとして意識的に使っている部分ではあります。キックの4つ打ちはダンス・ミュージックに限らず一時期のロックなどでも多用されたこともあり、ある種の定型感すらありますが、ポリリズム、メトリック・モジュレーションを入れることで新鮮さを出せると思っていて。つまり、定型による既視感と、何か違うぞという違和感が同居するので、5に限らずポリリズムから出てくるキックの変拍子打ちにはまだ掘られていない音楽的な鉱脈があるのではと思っています。

ポリリズムについても以前から研究されていたんですか?

中川:特別ポリリズムの研究をしていたわけではないですが、サークルの先輩ギタリストが元ティポグラフィカの今堀恒雄さんのローディーをしていたり、周りにそういう音楽が好きな人がたくさんいたので音楽的なトピックとしてポリリズムの構造についての知識はありました。その時点では知識として理解していただけなので、実際にポリリズムの乗り換えができるとか、身についたと言えるようになったのは作曲の中に取り入れてからですね。

ヴィチアスは映像をライヴで取り入れていますよね。そのあたりのこだわりについても教えてください。

中川:そうですね。ライヴVJはチーム内に担当してくれる人がいて結成当初から一緒に活動しています。映像というかライヴでの視覚的な演出との関係は今後も追求したいなと思っています。歌詞って映像喚起力が強いと思うんですが、それゆえに歌詞が入るとどうしても言葉の映像喚起力に音楽が勝てないというか、音楽自体が持つ微細な映像喚起力がマスキングされてしまう気がして。歌詞を付けていないのはそういう意味でもあるんです。音楽の持つ微細な映像喚起力とライヴの視覚的な演出と、どういう形がベストなのかというのは常に摸索しています。

ヴィチアスのネーミングも視覚的な要素と関連しています?

中川:ライヴを見てくれた人から、曲から連想するイメージが青っぽいと言われたことが多かったので、そこから連想して決めました。ちなみに今回のアルバム名は、「ビチアス海淵」の深海の深度から取っています。

対バンはどんなタイプのバンドとやりたいですか?

中川:安倍くんの尊敬するアントニオ・サンチェスの前座をやりたいねというのは冗談ながら話したことはありますが(笑)、サンチェスは無理にしても、そういった編成やスタイルに共通項のあるジャズ系の人たちともやってみたいですし、逆にがっつり歌モノの人ともやってみたいですね。たとえば個人的に青葉市子さんが大好きなんですが、そういった歌がコアにある人たちと並びでやらせてもらっても遜色ないくらいに、ヴィチアスのスタイル=「声が入っているインスト」という音楽性が広く聴いてもらえるようになりたいなと思います。

ポストロックのバンドも良さそうですよね。

中川:そうですね。ベースの笠井さんがポストロック好きで色々詳しくて。僕も downy さんとか大好きで、奇数連符ノリなど凝ったリズムの仕掛けも自然にロックマナーの中でグルーヴさせているのはすごいし、かっこいいなと思います。ヴィチアスも結成当初からポストロックっぽいという感想をいただくことも多いですし、リズムや音響面でこだわりがあるかっこいいバンドも多いので機会あればぜひポストロックの方々ともご一緒したいです。

ヴィチアスは、ポストロックやジャズの要素もあるし、メンバーそれぞれの素養が形になっていますよね。

中川:バンドでの曲のアレンジにしてもやはり自分にないものが入ってくることで良い意味で自分がデモで作ったものとはかなり違う仕上がりになるので、そういう意味ではすごくバンドっぽいなと思います。各メンバーの音楽的なカヴァー領域が共通項もありつつ重なってない部分がかなり広くて。若干宣伝になりますが(笑)、アルバムCD帯から登録できるファンの方々に向けた限定メルマガの中で、メンバーが好きな曲をコメント付きでオススメするっていうのをやっているんですが、僕自身も知らないアーティストや曲がたくさんあっていつも楽しんで聴いています。

最近のギタリストで中川さんが注目している人は誰ですか?

中川:やっぱりジュリアン・レイジや、ニア・フェルダー、ギラッド・ヘクセルマンあたりはすごいなと思います。音楽的に素晴らしいのはもちろんですし、生でライヴとか見ると単純に「楽器が上手いって素晴らしいことなんだ」と改めて思います。その上で、オーセンティックなジャズ・プラスアルファの自分の音楽的なオリジンの部分をちゃんと融合させていて素晴らしいと思います。あと最近ライヴで観た人だと、チック・コリアのバンドにも抜擢されてたチャールズ・アルトゥラもすごかったです。音の粒の揃い方が尋常じゃなく綺麗でした。
特にギラッド・ヘクセルマンはジョン・レイモンド、コリン・ストラナハンとやっているリアル・フィールズも大好きで。フリューゲルホルン、ドラム、ギターのトリオ編成でボン・イヴェールやトム・ヨークの曲もやっているんですがエフェクトのアイディア、ポリフォニックなラインアプローチなどギタリスト目線でも楽しめますし、全体での構成やアレンジもとても素晴らしいと思います。

では最後に、今後の予定を教えてください。

中川:まだ詳細な時期は決まってないですが、アルバムの一般発売とレコ発に向けて色々と進めています。あとは次の作品にむけての楽曲制作も始めているので、ぜひSNS等で続報チェックしてもらえると嬉しいです。

CORNELIUS - ele-king

大久保祐子

 小さな子供がいる家庭ならわりとどの家でも朝と夕方はNHKの教育テレビ番組(Eテレ)を当たり前のように毎日つけている。教育テレビ、賢くなりますように! というのは表向きの理由で、各番組自体の面白さに加えてそれぞれのキャスティングのセンスの良さに、ぜひとも子供に見せたい(いやむしろ自分が見たい)と親の方が積極的にテレビに夢中になっている場合が多い。古くはトータス松本やクレイジーケンバンドなどの曲に加え、大人計画や片桐仁、サケロック時代の星野源などTVブロス的サブカル人が旬のお笑い芸人に混じって参加していたり、さらに最近は水曜日のカンパネラ、ナカコー&ミキやカジヒデキまで出演しているのだから、私も朝から目が離せない。そしてEテレのクリエイティヴ且つ遊び心のある大人向けな人選の最たる番組がこの『デザインあ』で、僅かな時間とはいえほぼ毎朝コーネリアスの音楽がテレビから流れるという贅沢が日常化してから、かれこれもう7年も経とうとしていることに驚く。残念ながら子供のほうはたいして興味を示してくれないのだけれど。

 青葉市子や坂本真綾にアート・リンゼイ、昨年活動停止を発表したチボ・マットなどの近年のコーネリアス・ファミリーや、本物のいとこにあたるハナレグミなど、豪華なゲスト・ヴォーカルを迎えた番組のサウンドトラックのシリーズ第2弾。収録されている曲は既にTVで何度も流れているお馴染みのものばかり。ミニマル・ミュージックでありながら控えめなコラージュ作品のようであったり、クラシックのようにも聴こえたり、童謡のようなカジュアルさもあり、堅苦しさは全くない。楽曲は番組内での文字や絵を使った映像に基づいているので『Point』以降のコーネリアスのMVのように、もしくはそれ以上に視覚と音をより密接にシンクロさせている。なのでいつも観ていたはずの番組の映像の部分がばっさりなくなると、人生の折り返し地点を過ぎて退化に向かいつつある中年は、登っていたはしごを外されたように音の小宇宙に取り残され、歌詞カードを裏返しながら「ええっと、この曲は10曲目だから……」ともたもたする。するとすかさず向こうから「○○の曲だ。さっきから『デザインあ』の曲ばっかり聴いてるね」と幼い声で鋭い指摘が入る。反応がないのであまり好きじゃないように見えたのに、ちゃんと聴いていて覚えていた。子供の耳って、よくわからない。

 そもそも「好き」ってなんだろう。好きになるのには理由が見える。元気で踊れる、とかこのメロディがいい、とか歌詞に共感するぅ、とかドラムの音が変態、だとか。そして「好き」は「嫌い」の裏側に潜んでいて、あるとき強烈な自我によってあっという間に翻ったりもする。なんかうるさいとか、このメロディはありきたりだ、とか歌詞が凡庸だ、とかオリジナリティがない、だとか、自分勝手な言葉を付けて、見えるところにいちいち姿を現す。では言葉にならない「好き」はどこにあるのか? 「好き」に理由がつかないと成り立たないのか? 感情というものは言葉を獲得すればするほど適当なものを探してうまく当てはめ、表に引き出され出ていこうとする。子供はそれを無理にやらないので、傍から見ている者は楽しそうに踊ったり、歌ったりする「好き」だけを受け取ってしまうけれど、内側に潜んでいる気持ちには様々な種類があり、きっと無限の可能性が広がっているのだろう。子供が自分で好きな曲を選ぶ場面で意外な回答をして周りを驚かせたりするのは、つまりそういうことなのかもしれない。

 たしかに音楽を聴いていると情動的になりすぎるきらいがある。自分が普段好んで聴いている音楽家のなかでも特に実験的なコーネリアスにですら、やれ11年ぶりのオリジナル・アルバムで、この歌詞はこれを意味していて、このような表現意図がある、と思いを巡らせ、感情を上乗せしたり、付加価値をつけたりしてしまう。好きな理由を言葉で探さないと落ち着かなくなってしまっているのだ。その固い頭のままでこのアルバムの"かんがえていない"や"うらおもて"や"おれがあいつであいつがおれで"や"なんやかんや"などの収録曲をじっと眺めていると、なんだかとても意味深に見えてくる。けれど並べられたタイトルは番組のコーナー名であって、意味はない。代わりにそこにはリズムを持ったデザインがある。「こどもたちにデザインの面白さを伝え、デザイン的な視点と感性を育む一歩となることを目指しています」と番組概要に記されているように、音楽もあくまでミュージックというスタンスを崩さず、素っ気ない位にアートで、洒落ている。現在、東京オペラシティで開催されている谷川俊太郎展の一角の、コーネリアスと中村勇吾とのコラボレーションによるギャラリーでも、視覚と聴覚のあいだを言葉が自由に弾んで刺激的な空間を作っていて、非常に面白かった。アイディアによって整えられたスタイリッシュなそのスペースに、もっともらしい感情を美しく詰め込むことは難しい。この際コーネリアスの人物像は余計な感情はさっぱり忘れて、身近な音のデザインとして気軽に楽しむことが正解だろう。そしてこのアルバムを何回も聴いた耳で『Mellow Waves』を改めて聴き返してみると、新たな音の発見があるはずなので是非オススメしたい。

 そういえば昨年「コーネリアスのファンのすべて」というファンサイトを勝手に設けた時に、コーネリアス好きとして話を伺った趣味の良い高校生の男の子が、NHKの「テクネ 映像の教室」という番組でコーネリアスが音楽を手掛けていた回を見たことがコーネリアスの名前を知るきっかけだったと話していて、なんだか嬉しかった。日常的にコーネリアスの音を耳にしていた子供たちがこの感覚を持ってこれから様々な分野に浸透していくことを思うと、未来が楽しみで仕方ない。一方で感情に苛まれたままの人間は、小山田圭吾が歌う曲をもっと聴きたい、レオ今井の歌う"Shoot&Edit"も入れてほしかった、などと、やはり余計なことばかり考えてしまう。ああ、煩悩とは!

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野田努

 のちにキング・オブ・テクノとさえ呼ばれることになる作曲家のブルース・ハークは、60年代初頭に感熱式シンセサイザーを作ると、エスター・ネルソンとともに1963年から子どもたちのためのダンス音楽を発表する。1978年に、テキサス・インスツルメンツ社は子供用教育用玩具としてスピークアンドスペルを発売。クラフトワークをはじめとする多くのテクノ・アーティストたちに使用される。エイフェックス・ツインとして成功したリチャード・D・ジェイムスは、同胞のマイケル・パラディナスと一緒にマイク・リッチ名義で極めて幼稚な作品を1996年にリリースする。コーネリアスを名乗り、かつて『ファンタズマ』を作ったロック・ミュージシャンの小山田圭吾は、2011年から「子供たちのデザイン的な視点と感性を育むこと」を目的としたNHK教育テレビジョンの番組「デザインあ」の音楽ディレクターを担当する。

 TVはニュースとスポーツ番組、そしてピエール瀧のしょんないTVぐらいしか見ないぼくは、当然「デザインあ」を見たことがない。以下、その立場で音楽を聴いた感想を書こう。

 『デザインあ2』は前作『デザインあ』同様に、小山田圭吾の無邪気なサウンド・デザイン/コラージュ、遊びの世界である。で、参加アーティスト:青葉市子、アート・リンゼイ、坂本真綾、ショコラ、チボ・マット、ハナレグミ、原田郁子、jan and naomi、環ROY×鎮座DOPENESS。まあ、このメンツで子供のための音楽を作るというのがミソで、もし音楽が文化として/趣味として衰退することがなければ、おそらく20年後の世界から見たとき「あの時代はこんなものがあったのか」ということになるのだろう。
 昨年の『Mellow Waves』の悲しげな響きとは、もちろん一線を画している。とはいえこれも確実にコーネリアス・サウンドだ。ロック的な陰影はなく、そしてリラックスした雰囲気や言葉遣い、その無邪気さが、この音楽を子供っぽい音の遊技性のなかに定義しようとしているが、一枚皮を剥がせば、むしろ実験的で、ときおりシド・バレット的なサイケデリック・ポップな側面も垣間見せる。子供モノというのは、歴史的に見れば、ときに大人の実験場にもなり得るのだ。
 子供はギミックが好きだ。サンプラーが好きだし、エフェクターが大好きだ。コアなYMOのファンというのは、だいたいが小学生のときに聴いた世代に多い。ぼくは世代的にクラフトワークのほうが先だった。感性が開かれるときの喜びとはああいう体験を言うのだろう。コーネリアスのポップな側面が、ヒットチャートではなくNHKの教育番組を通じて子供に伝播するというのは、現代的というかポストモダン的というか、なんとも感慨深い話である。 

GEIST - ele-king

 昨年出た YPY 名義のアルバムも記憶に新しい日野浩志郎。バンド goat の牽引者でもある彼が2015年より続けている大所帯のオーケストラ・プロジェクトをさらに発展させた公演が、3月17日と18日、大阪の名村造船所 BLACK CHAMBER にて開催される。イベント名は《GEIST(ガイスト)》。マルチチャンネルを用いた音響により、空間全体を使って曲を体験できる公演となるそうだ。ローレル・ヘイロー最新作への参加も話題となったイーライ・ケスラー、カフカ鼾などでの活動で知られる山本達久らも出演。詳細はこちらから。

GEIST

Virginal Variations で電子音と生楽器の新たなあり方を提示した日野浩志郎(goat、YPY)の新プロジェクトは、自然音と人工音がいっそう響き合い光と音が呼応、多スピーカー採用により観客を未知なる音楽体験へと導く全身聴取ライヴ……字は“Geist

島根の実家は自然豊かな場所にあって、いまは、雨が降っている。その一粒一粒が地面を叩く音をそれぞれ聞き分けることはもちろんできないから、広がりのある「サー」という音を茫と聞く。やがて雨があがり陽が射すと、鳥や虫の声が聞こえてくる。家の前の、山に繋がる小さな道を登っていけば、キリキリキリ、コンコン、と虫の音がはっきりしてくる。好奇心をそそられ、ある葉叢に近づくと音のディテイルがより明瞭に分かる。さらに、たくさんのほかの虫の声や頭上の風巻き、鳥の声、葉擦れ衣擦れなどを耳で遊弋し、小さな音を愛でる自分の〈繊細な感覚〉に満足、俄然興が乗り吟行でもせんかな、いや、ふと我に返る。と、それまで別々に聞いていた音が渾然となって耳朶を打っていることに気づきなおしてぼう然する。小さな音が合わさって、急に山鳴りのように感じる。……。「〈繊細な感覚〉なんてずいぶんいい加減なものだ」と醒めて、ぬかるんだ山道で踵を返す。きっと、あの時すでに“Geist”に肩を叩かれていたのだ――。

【日時】
2018年 3月17日(土)
昼公演 開場:13:30 開演:14:00
夜公演 開場:19:00 開演:19:30

2018年 3月18日(日)
昼公演 開場:13:30 開演:14:00
夜公演 開場:19:00 開演:19:30

【会場】
クリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地) BLACK CHAMBER
〒559-0011 大阪市住之江区北加賀屋4-1-55
大阪市営地下鉄四つ橋線 北加賀屋駅4番出口より徒歩10 分
https://www.namura.cc

【料金】
前売り2500円 当⽇3000円

【ウェブサイト】
https://www.hino-projects.com/geist

【作曲】
日野浩志郎

【出演者】
Eli Keszler
山本達久
川端稔 (*17日のみ出演)
中川裕貴
安藤暁彦
島田孝之
中尾眞佐子
石原只寛
亀井奈穂子
淸造理英子
横山祥子
大谷滉
荒木優光

【スタッフ】
舞台監督 大鹿展明
照明 筆谷亮也
美術 OLEO
音響 西川文章
プロデューサー 山崎なし
制作 吉岡友里

【助成】
おおさか創造千島財団

【予約方法】
お名前、メールアドレス、希望公演、人数を記載したメールを hino-projects@gmail.com まで送信ください。またはホームページ上のご予約フォームからも承っております。

【プロフィール】

日野浩志郎
1985年生まれ島根出身。カセットテープ・レーベル〈birdFriend〉主宰。弦楽器も打楽器としてみなし、複合的なリズムの探求を行う goat、bonanzas というバンドのコンポーザー兼プレイヤーとしての活動や、YPY 名義での実験的電子音楽のソロ活動を行う。ヨーロッパを中心に年に数度の海外ツアーを行っており、国内外から様々な作品をリリースをしている。近年では、クラシック楽器や電子音を融合させたハイブリッドな大編成プロジェクト「Virginal Variations」を開始。

Eli Keszler
Eli Keszler(イーライ・ケスラー)はニューヨークを拠点とするアーティスト/作曲家/パーカッション奏者。音楽作品のみならず、インスタレーションやビジュアルアート作品を手がける彼の多岐に渡る活動は、これまでに Lincoln Center や The Kitchen、MoMa PS1、Victoria & Albert Museum など主に欧米で発表され、注目を浴びてきた。〈Empty Editions〉や〈ESP Disk〉、〈PAN〉、そして自身のレーベル〈REL records〉からソロ作品をリリース。ニューイングランド音楽院を卒業し、オーケストラから依頼を受け楽曲を提供するなど作曲家としても高い評価を得る一方で、最近では Rashad Becker や Laurel Halo とのコラボレーションも記憶に新しく、奏者としても独自の色を放ち続けている。

山本達久
1982年10月25日生。2007年まで地元⼭⼝県防府市 bar 印度洋を拠点に、様々な音楽活動と並行して様々なイベントのオーガナイズをするなど精⼒的に活動し、基本となる音楽観、人生観などの礎を築く。現在では、ソロや即興演奏を軸に、Jim O'Rourke/石橋英子/須藤俊明との様々な活動をはじめ、カフカ鼾、石橋英子ともう死んだ⼈たち、坂田明と梵人譚、プラマイゼロ、オハナミ、NATSUMEN、石原洋withFRIENDS などのバンド活動多数。ex. 芸害。青葉市子、UA、カヒミ・カリィ、木村カエラ、柴田聡子、七尾旅人、長谷川健⼀、phew、前野健太、ヤマジカズヒデ、山本精⼀、Gofish など歌手の録音、ライヴ・サポート多数。演劇の生伴奏・音楽担当として、SWANNY、マームとジプシーなど、主に都内を中心に活動。2011 年、ロンドンのバービカン・センターにソロ・パフォーマンスとして招聘されるなど、海外公演、録音物も多数。


Event details - English -

Following “Virginal Variations”, a project which explored a new way of merging electronic and acoustic sounds, Koshiro Hino (from goat and YPY) presents his latest composition, titled “Geist”. Set in an immersive environment with interacting sounds and lightings, “Geist” invites audience to a new world of live music experience which people listen sounds with their whole body.

My home in Shimane is located in a nature-rich environment, and now, it’s raining outside. Needless to say, I cannot hear each of the raindrops hitting the ground, so I hear the rain’s “zaaaaa” sound that spreads in space. Soon after, the rains stopped and sunshine began to pour, and I started to hear the sounds of birds and insects. As I walk up the small path that connects from my home to the mountain, those insects’ buzzing and creaking sounds became more clear. As I get closer to the trees, the sound details became more distinct. With my ears, I observed closely a myriad of sounds from other insects, the wind blowing above, birds, rustling leaves and my own clothing. I enjoyed my ‘delicate sensibility’ that appreciates those little sounds, thinking, “Maybe I suddenly get excited and start composing a poem…” But soon later, I came back to myself. And suddenly, I got stunned, realizing that the sounds I heard separately now forms a harmonious whole and hits my ears. Those little sounds became one, and I hear it as if the mountain is rumbling... “The ‘delicate sensibility’ is so unreliable. “ I recalled myself and walked back the muddy path. — And by then, I now believe that I had already made my encounter with “Geist”.

[Date / Time]
Saturday, March 17, 2018
Day time performance Open: 13:30 Start: 14:00
Night time performance Open: 19:00 Start: 19:30

Sunday, March 18, 2018
Day time performance Open: 13:30 Start: 14:00
Night time performance Open: 19:00 Start: 19:30

[Venue]
Creative Center Osaka (Old Namura Ship Yard) BLACK CHAMBER
4-1-55, Kitakagaya, Suminoe Ward, Osaka City, Osaka 559-0011
https://www.namura.cc

[Price]
Advanced ¥2500 Door ¥3000

[Website]
https://www.hino-projects.com/geist

[Composed by]
Koshiro Hino

[Performers]
Eli Keszler
Tatsuhisa Yamamoto
Minoru Kawabata (*only on the 17th)
Yuuki Nakagawa
Akihiko Ando
Takayuki Shimada
Masako Nakao
Tadahiro Ishihara
Nahoko Kamei
Rieko Seizo
Shoko Yokoyama
Koh Otani
Masamitsu Araki

[Staff]
Stage direction - Nobuaki Oshika
Lighting design - Ryoya Fudetani
Stage art - OLEO
Sound engineering - Bunsho Nishikawa
Co-direction - Nashi Yamazaki
Production - Yuri Yoshioka

[Supported by]
Chishima Foundation for Creative Osaka

[Reservation]
To reserve your seat(s), please send an email to hino-projects@gmail.com with your name, your contact, number of people, and the performance date you wish to visit.

Taylor Deupree & Marcus Fischer - ele-king

 最近ではマーカス・フィッシャーの『Loss』など、順調に優良な作品のリリースを続けているブルックリンのレーベル、〈12k〉。その主宰者であり、坂本龍一や青葉市子とのコラボでも知られるサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリーが、マーカス・フィッシャーとともに急遽来日することが発表された。11月18日のTokyo Festival of Modular 2017を皮切りに、奈良、岡山、東京を巡回する。ILLUHA伊達伯欣の相棒を務めているコーリー・フラーらも参加。最終日の東京公演は、今年で20周年を迎える同レーベルの記念公演となっており、世界で唯一のアニヴァーサリー・イベントだそう。いやあ、これは行きたい。

坂本龍一や青葉市子とのコラボレーションも行なうサウンド・アーティスト、テイラー・デュプリー主宰の電子音響レーベル〈12k〉が今年20周年を迎えます。

これまで数多くのアーティストを輩出した同レーベルは20年間の長きに渡り電子音楽界において多大なる功績を残してきました。 その主宰であるテイラー・デュプリーと所属アーティスト、マーカス・フィッシャーが来日し、Tokyo Festival of Modularを皮切りに、奈良、岡山、東京と4公演に出演します。奈良、岡山、東京公演には日本在住の〈12k〉アーティストCorey Fuller(ILLUHA)、Sawako、Moskitooらも出演し、最終日の東京公演は、世界で唯一の〈12k〉による20周年記念イベントが開催されます。すべてのアンビエント~実験音楽~電子音楽ファンに。絶対にお見逃しなく!

■Tokyo Festival of Modular 2017
日時:11月18日(土) 17:00~21:00
会場:渋谷contact (渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビルB2)
料金:1day Pass ¥3,000(当日券のみ)(※2day Passもあり。詳細はTokyo Festival of Modular公式ウェブサイトをご覧ください)
出演:Marcus Fischer & Taylor Deupree, Baseck, Sarah Davashi, Hataken featuring SUGIZO, Rodent, Hisashi Saito and more...

チケット・イベント詳細:Tokyo Festival of Modular
https://tfom.info/tfom-2017/

■岡山公演
日時:11月19日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:cafe moyau (岡山市北区出石町1−10−2)
料金:予約 ¥3,500 / 当日 ¥4,000(全席自由)
出演:Corey Fuller (ILLUHA), Taylor Deupree, Marcus Fischer, 松本一哉, nensow

◎メール予約:madronemu@gmail.com
※公演名・お名前・人数・連絡先をご明記のうえお申し込み下さい。
チケット取扱店:padang padang、cafe moyau、グリーンハウス倉敷店、グリーンハウ
ス岡山店、レコード屋、FOLKLORE
協力:全ド連 / padang padang / night cruising / moderado music / cafe moyau
詳細:moderado music
https://moderado.jugem.jp/?eid=360&PHPSESSID=rd5ok709t6gpb8romtglih3391

■奈良公演
日時:11月22日(水) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:sonihouse (奈良市四条大路1-2-3)
参加費:¥3,600(1drink order)
出演:Corey Fuller (ILLUHA), Taylor Deupree, Marcus Fischer

◎メール予約:「11/22の参加予約」をタイトルに「お名前・人数・電話番号」を記載の
うえinfo@sonihouse.netまでご連絡ください。
*静寂を大切にした音楽のため、小学生未満のお子様のご来場はご遠慮いただいております。
詳細:sonihouse
https://www.sonihouse.net/journal/?p=8096

■東京公演 / 12k 20th anniversary in Tokyo
日時:11月25日(土) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:光明寺 (港区虎ノ門3-25-1)
料金:予約 ¥2,500 / 当日 ¥3,000
出演:Taylor Deupree & Corey Fuller (Illuha), Marcus Fischer & Sawako, Moskitoo

◎ご予約:Peatixご予約受付ページ
https://12k20.peatix.com/
※Peatixへのご登録が必要となります。
※前売りが予定枚数に達した際は当日券の発売はございません。
主催・制作:cubic music
協力:Fly sound、誰そ彼、Inpartmaint Inc./ p*dis、安永哲郎事務室
詳細:cubic music
https://12k20th.cubicmusic.com/

寺尾紗穂×マヒトゥ・ザ・ピーポー - ele-king

 寺尾紗穂×マヒトゥ・ザ・ピーポー、さらに前野健太。なにが起こるんでしょうか。
先日、マヒトゥ・ザ・ピーポーがギターで参加した、寺尾紗穂の“たよりないもののために”がYoutubeで公開されましたが、みなさんもう聴きました? その言葉と音響に浸ることができたひとたちに、以下のイベントを紹介します。まだ聴いていないひとたちは、ヴィデオを観てみてください。

 寺尾紗穂は6/21に最新アルバム『たよりないもののために』を、そして6/28にはマヒトゥが2ndアルバム『w/ave』をリリースします。6月27日はなにが起こるんでしょうか。詳細は以下にまとめたので、お見逃しなく。

■にじのほし9『月の秘密Prime』

出演:寺尾紗穂×マヒトゥ・ザ・ピーポー/前野健太
日程:2017年6月27日(火)
会場:渋谷WWW(東京都渋谷区宇田川町13-17ライズビル地下/TEL:03-5458-7685)
時間:19:00開場/19:30開演
料金:前売券¥3500+1d/当日券¥4000+1d
※ 一部座席有り/整理番号順入場


■寺尾紗穂
1981年11月7日東京生まれ。
2007年ピアノ弾き語りによるアルバム「御身」が各方面で話題になり,坂本龍一や大貫妙子らから賛辞が寄せられる。大林宣彦監督作品「転校生 さよならあなた」、安藤桃子監督作品「0.5ミリ」、中村真夕監督作品「ナオトひとりっきり」など主題歌の提供も多い。2015年アルバム「楕円の夢」を発表。路上生活経験者による舞踏グループ、ソケリッサとの全国13箇所をまわる「楕円の夢ツアー」を行う他、2010年より毎年青山梅窓院にてビッグイシューを応援する音楽イベント「りんりんふぇす」を主催。昨年リリースの最新アルバム「私の好きなわらべうた」では、日本各地で消えつつあるわらべうたの名曲を発掘、独自のアレンジを試みて、「ミュージックマガジン」誌の「ニッポンの新しいローカル・ミュージック」に選出されるなど注目された。
みちのおくの芸術祭「山形ビエンナーレ」での絵本作家荒井良二とのコラボ、金沢21世紀美術館企画「AIR21:カナザワ・フリンジ」でのソケリッサとの共演など、演奏の場もライブハウスを超えて広がりつつある。
活動はCM音楽制作(ドコモ、無印良品など多数)やナレーション、書評、エッセイやルポなど多岐にわたり、著書に「評伝 川島芳子」(文春新書)、「原発労働者」(講談社現代新書)、戦前のサイパンに暮らした人々に取材した「南洋と私」(リトルモア)。8月に集英社より「あのころのパラオをさがして」を発売予定。平凡社ウェブにて「山姥のいるところ」、本の雑誌ウェブで「私の好きなわらべうた」を連載中。その他資生堂の広報誌「花椿」、高知新聞、北海道新聞でも連載を持つ。6月21日最新アルバム「たよりないもののために」と伊賀航、あだち麗三郎と結成したバンド「冬にわかれて」の7インチを同時発売。
https://www.sahoterao.com/


■マヒトゥ・ザ・ピーポー
2009年 バンドGEZANを大阪にて結成。作詞作曲をおこないボーカルとして音楽活動開始。
2011年沈黙の次に美しい日々をリリース。HEADSの佐々木敦の年間ベスト10のデイスクに選出され、全国流通前にして「ele-king」誌などをはじめ各所でソロアーティストとしてインタビューが掲載されるなど注目が集まる。
2014年、kitiより2ndアルバムPOPCOCOON発売。
2014年には青葉市子とのユニットNUUAMMを結成し、アルバムを発売する。
2015年にはpeepowという別名義でラップアルバム Delete CIPYをK-BOMBらと共に制
作、BLACK SMOKER recordsにてリリース。
2016年には今泉力弥監督の映画の劇伴やCMの音楽などを手がける。
また音楽以外の分野では中国の写真家REN HANGのモデルや国内外のアーティストを自
身の主催レーベル、十三月の甲虫でリリース、
野外フェスである全感覚祭を主催したり、近年は仲間とweb magazine PYOUTHを始
動。ボーダーをまたいだ自由なスタンスで活動している。
2017年 6/28にNUUAMMの2nd album「w/ave」を十三月の甲虫より発売。
https://mahitothepeople.com/


■前野健太
シンガーソングライター。俳優。
1979年埼玉県生まれ。
2007年、自ら立ち上げたレーベル"romance records"より『ロマンスカー』をリリースしデビュー。
2009年、全パートをひとりで演奏、多重録音したアルバム『さみしいだけ』をリリース。2009年元日に東京・吉祥寺の街中で74分1シーン1カットでゲリラ撮影された、ライブドキュメント映画『ライブテープ』(松江哲明監督)に主演。同作は、第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」で作品賞を受賞。
2010年、『新・人間万葉歌~阿久悠作詞』へ参加。桂銀淑(ケイ・ウンスク)「花のように鳥のように」のカバー音源を発表。
2011年、サードアルバム『ファックミー』をリリース。映画『トーキョードリフター』(松江哲明監督)に主演。同年、第14回みうらじゅん賞受賞。
2013年、ジム・オルークをプロデューサーに迎え『オレらは肉の歩く朝』、『ハッピーランチ』2枚のアルバムを発表。
2014年、ライブアルバム『LIVE with SOAPLANDERS 2013-2014』をリリース。文芸誌『すばる』にてエッセイの連載を開始。
2015年、雑誌『Number Do』に初の小説を発表。CDブック『今の時代がいちばんいいよ』をリリース。
2016年、『変態だ』(みうらじゅん原作/安齋肇監督)で初の劇映画主演。ラジオのレギュラー番組『前野健太のラジオ100年後』をスタート。
2017年、『コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」』(共演:岩井秀人、森山未來)で初の舞台出演。初の単行本となる『百年後』を出版。
https://maenokenta.com/

Arto Lindsay - ele-king

 来ました! 1月にリリースされた13年ぶりの新作『Cuidado Madame』が好評のアート・リンゼイですが、なんと6月に来日します。昨年、晴れたら空に豆まいての10周年記念企画の一環として来日しているアート・リンゼイですが、今回は新作のレコーディング・メンバーを従えてのバンド・セットによるツアーです。東京、京都、大阪の3都市をまわります。オールスタンディングのライヴハウス公演としてはかなり久々の来日だそうで……アルバムのあのサウンドはいったいどんなふうに生まれ変わるのでしょう。必見です。

奇才アート・リンゼイ、超待望の来日ツアーが6月に決定!
13年ぶりの新作『Cuidado Madame』のレコーディング・メンバー
を率いた垂涎のバンド・セットです!

世界中に熱狂的なファンを生んできた真の奇才音楽家アート・リンゼイ、NO WAVE以来のパンク精神と近年のコスモポリタニズムが最高次元で融合した13年ぶりの新作『Cuidado Madame(邦題:ケアフル・マダム)』のレコーディング・メンバーを率いたバンド・セットでの来日公演が実現! オールスタンディングによるライヴハウス公演は、東京ではかなり久々となります! 新作のレコ発ツアーということで、あのサウンドがどのようにライヴで再現されるのか、絶対にお見逃しなく!!

【公演情報】
ARTO LINDSAY Japan Tour 2017

■ 東京 6月23日 (金) WWW X
OPEN 18:30 / START 19:30
TICKET オールスタンディング ¥8,000(税込/別途1ドリンク)
※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:4/8 (土)
(問) クリエイティブマン 03-3499-6669

■ 京都 6月24日 (土) 京都メトロ
OPEN 17:00 / START 18:00
TICKET オールスタンディング ¥8,000(税込/別途1ドリンク)
※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:4/8 (土)
(問) 京都メトロ 075-752-2787

■ 大阪 6月26日 (月) 梅田シャングリラ
OPEN 18:30 / START 19:30
TICKET オールスタンディング ¥8,000(税込/別途1ドリンク)
※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:4/8 (土)
(問) キョードーインフォメーション 0570-200-888

企画・制作・招聘:クリエイティブマン https://www.creativeman.co.jp/
協力:P-VINE RECORDS


【作品情報】

アート・リンゼイ/ケアフル・マダム
Arto Lindsay / Cuidado Madame
in stores now
PCD-25212
定価:¥2,500+税
★日本先行発売
★日本盤ボーナス・トラック収録

まさに世界待望! 前作『Salt』以来およそ13年ぶりにリリースされた奇才アート・リンゼイのオリジナル・ニュー・アルバム! 盟友メルヴィン・ギブスの参加やマリーザ・モンチとの共作のみならず、ニューヨークの新世代ミュージシャンたちとの邂逅がもたらしたアート流「アヴァン・ポップ」のニュー・フェイズ。NO WAVE以来のパンク精神と近年のコスモポリタニズムが最高次元で融合したソロ・キャリア史上屈指の名作が誕生した!

『別冊ele-king アート・リンゼイ──実験と官能の使徒』
編集:松村正人

in stores now
ISBN: 978-4-907276-73-7
本体¥1,850+税
160ページ

ブラジル音楽の官能、ノーウェイヴの雑音、アヴァン・ポップの華麗なる試み──多岐にわたるアート・リンゼイの音楽の全貌をたどる必読の1冊。幼少期から現在までを語った本人ロング・インタヴューを皮切りに、カエターノ・ヴェローゾとの特別対談も掲載! 日本はおろか世界にも類をみないアート・リンゼイを総覧する試み。


【Arto Lindsayプロフィール】

1953年アメリカ生まれ。3歳で家族とともにブラジルに引っ越し、17歳までを過ごす。77年にNYでノイズ・パンク・バンド:DNAを結成。翌年、ブライアン・イーノのプロデュースによる歴史的コンピレーション『NO NEW YORK』にDNAとして参加する傍ら、ジョン・ルーリー率いるジャズ・コンボ:ラウンジ・リザーズにも参加。11本だけ弦を張った12弦ギターをノンチューニングで掻き鳴らす独自の奏法が衝撃を与え、“NO WAVE”シーンの中心的存在となる。80年代にはピーター・シェラーとアンビシャス・ラヴァーズを結成し、NYアンダーグラウンド音楽とポップ・ミュージックの融合を実践。80年代後半からはプロデューサーとしても活躍し、カエターノ・ヴェローゾ、ガル・コスタ、マリーザ・モンチ、ローリー・アンダーソン、デヴィッド・バーン、坂本龍一、大貫妙子、宮沢和史などを手掛ける。他にも三宅純や小山田圭吾、青葉市子など、日本人アーティストとは親交が深い。95年からはソロ名義でのリリースを開始し、04年にかけて1~2年に1枚のハイペースでアルバムを発表。14年のライヴ盤付きベスト・アルバム『Encyclopedia of Arto』を挟み、2017年1月、約13年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Cuidado Madame』をリリースした。

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