「Wire」と一致するもの

interview with Nagisa Ni Te - ele-king

  その起源を80年代の京都のアンダーグラウンドに持ち、2000年代においては「ローファイ」や「うたもの」として、〈Oz disc〉のサンプラー『so far songs』などによって提示された新しいインディの価値観を象徴し、〈ジャグジャグウォー(Jagjaguwar)〉からパステルズまでを日本のシーンにつないだバンドとしても記憶される、渚にて。2008年の『よすが』より6年、「また正月かあ!」と口をついて出るほど時の流れははやく、この間育児という経験もへてあらたに音楽と出会い直したというその中心人物・柴山伸二の、いまの暮らしと音について、湯浅学が訊ねる。(編集部)

柴山伸二、竹田雅子の夫妻を中心として活動するロック・バンド。柴山は80年代には高山謙一や頭士奈生樹らが結成したバンド、イディオット・オクロックのメンバーとして京大西部講堂を中心としたライヴ活動を展開し、自身では〈オルグ・レコード〉を立ち上げ、ハレルヤズ名義でソロLP『肉を喰らひて誓ひをたてよ』をリリース。92年にレコーディングが開始され、95年に完成をみる渚にて名義でのファースト・アルバム『渚にて』には、頭士奈生樹、工藤冬里も参加し、99年には『Wire』誌による〈ドミノ・レコーズ〉のサンプラーに工藤のMaher Shalal Hash Bazの作品と並んでハレルヤズ「星」のパステルズによるカヴァーが取り上げられるなど活躍のステージを広げた。つづく2001年の『こんな感じ』以降は米〈ジャグジャグウォー〉からも共同リリースがつづき、2014年には2008年依頼6年ぶりとなるフル・アルバム『遠泳』が発表された。


レコーディングも子どもの夏休みがはじまるまでに終らせなければいけなかったんです(笑)。


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湯浅学:今回、渚にてのアルバムは計画的に作ったの?

柴山伸二:なかば計画的にですね。子育てが一段落してからはじめたので、6年ぶりというのも必然というか(笑)。子どもがひとりで自分のことができるようになった段階で、練習とかライヴができる状態に回復したという感じです。

湯浅:曲は作り溜めとかするんですか?

柴山:しないですね。何か設定されないと曲が出てこないんです。たとえばライヴをやるとか、レコーディングを年内にしなきゃいけないとか。宿題と同じで、締切とか目標がないとダラダラしてしまうんです(笑)。

湯浅:じゃあ、今回は発売を先に決めていたんですか?

柴山:発売が決まったのは後です。レコーディングがいつ終わるかハッキリとしなかったんですよ。作業を進めて、めどがついた段階で発売日を決めました。レコーディングも子どもの夏休みがはじまるまでに終らせなければいけなかった(笑)。子どもを見送ってから、午前中はスタジオに入って、学校が終わるまでにスタジオから帰ってこなければいけなかったという。だから、毎週午後3時までには帰宅していました。それが2月から7月までの足掛け半年くらいですね。

湯浅:今回、サウンド的なテーマや目標みたいなものはあったんですか?

柴山:サウンドの方向性はいつも同じなんですよ。90年代からそれは一貫しているつもりです。変わるのはスタジオの機材くらいで、目指している方向はつねに一点だけなので。僕は70年代っ子なので、黄金期のピンク・フロイドとかザ・バンドとかのやり方を自分なりに応用してみたり。まあ、勝手に肩を並べたい、という気持ちで。

湯浅:77年くらいまでですかね?

柴山:70年代前半までですね。ピンク・フロイドで言えば『狂気』までです(笑)。

湯浅:そうしたら73年(笑)?

柴山:そうなんですよ。ちょうど中高生くらいのとき。一枚のレコードを2ヶ月くらい毎日聴いていました。それとはまた別枠で76年以降はパンクの影響も入ってきますよね。70年代前半プラス76年以降、みたいな。パンクだったらジョイ・ディヴィジョンあたりまでだから、ディス・ヒートまでっていう感じですね。そう言うと「あ、そうですか」で終っちゃうんですけど、言わないと誰もわからないんです(笑)。

湯浅:そんなことはないと思うけど。でも、渚にてを聴きつづけていないとわからないと思うんですよ。

柴山:昔から聴いてくれている人はどんどん消えていってますけどね(笑)。

湯浅:最近の作品から聴きはじめた人と、昔の作品から聴いている人に接点はあるんだけど、感覚がズレちゃうところがあるらしくて。

柴山:それはいつの時代でもあると思いますよ。いまバンドをやっているような人はジミ・ヘンドリックスも後追いで、もちろん聴いたのは死んでからだし。ドアーズやビートルズでさえ全盛期はリアル・タイムでは知らないわけで。まぁ、僕は青盤赤盤世代ですから、それで聴いてどの曲がどのアルバムに入っているのかなってレコード屋さんで探して。それで『サージェント・ペパーズ』からさかのぼって聴く、みたいな。山本精一くんも検索すればボアダムズとか出てくるけど、いまはそういうイメージの人じゃないでしょう? 渚にても同じように、さかのぼって関心を持ってくれる人も少なからずいると思うんですけど。


僕は70年代っ子なので、黄金期のピンク・フロイドとかザ・バンドとかのやり方を自分なりに応用してみたり。まあ、勝手に肩を並べたい、という気持ちで。

湯浅:渚にてを聴いていると、歌詞の出発点で言葉をどのように紡いでいるのかなって思うんですよ。なんかこう、ある日閃いている感じもするし。

柴山:それもあります。ほとんどは子どもと散歩してるときとか、仕事中にちょっとずつ思いついたものをメモしてまとめて、っていう感じです。「紡ぐ」というのはまったくないですね。

湯浅:題名を先につけて詞を書くっていうのはないんですか?

柴山:タイトルをつけるのは最後ですね。まず歌詞の内容ができあがってから、タイトルを考えます。

湯浅:順番だと曲が先だと?

柴山:そうですね。まず、曲の一部となるメロディができてきて、そこから引っ張り出してくるみたいな感じです。その過程で、土台を忘れないようにフレーズを当てはめながら、残りのメロディを引っ張り出すというか、捻り出すときもありますけど(笑)。それである程度出てきた時に使えるものが採用になる。あとはギターでコードを付けて、という作業ですね。

湯浅:コード進行からメロディを作るんですか?

柴山:そっちの方が少ないです。ギターで遊んでいるうちにというのは珍しいんですが、今回のアルバムにはいくつか入ってますよ。2曲めの“まだ夜”はギターからできたやつですね。コード進行が先にできて言葉をつけていくというのは、普段あんまりないです。

湯浅:じゃあ、メロディがまず最初に浮かぶんですか?

柴山:そうです。急にサビが出てきて、あとでその前後の様子を探るというか。それとも、イントロの最初のメロディがパッと浮かぶか、その2パターンあるんですよ。それがだいたい半々くらいの割合です。

湯浅:タイトルとメロディと詞の3つがあるんですけど、題名が並んでいて、アナログ盤だと最初から聴いて……となる。だけど、CDって意外とランダムに聴けちゃうというか。

柴山:買って初めに3曲めから聴く人とかいますかね? ダウンロードとか?

湯浅:たまにそういうのがあるんですよ。題名で検索して聴いちゃった人もいるし。タイトルと詞の内容がかけ離れていると、かえって喜ばれることがあるらしい。それはほとんど例外的な話なんですけどね。だけど、基本的に詞ができて歌ができて曲ができて、タイトルをつけるにあたっては、詞のテーマと曲全体のイメージとのどっちを優先されるんですか?

柴山:どちらも同じですね。表現したい曲のイメージと、具体的にどういう言葉を選択するかをどこまで追求するかですよね。自分の中でのリアリティというか。これしかない、というところまで考えるという作り方ですね。

湯浅:今回のって、というか毎回そうなんですけど、作り込んでいったあとに、引き算で少し抜いた感じがするんですよ。

柴山:それは音に関してですか?

湯浅:いや、全体的に。歌詞とか。抜いたというか、ここを少し待とうというか。間合いが少し柔らかいというか。

柴山:それはたぶん、歳を取ってきたから(笑)。よく言えば余裕のようなものが出てきている気がしますね。今回の新作の曲も、おととし子どもが4才になって昼間は幼稚園に行って家にいない時間ができてやっと作れたんですよ。ふたりだけで育児をしていたので、その時を待ってました(笑)。子どもは双子で、幼稚園に上がるまでは24時間つきっきりで。おむつが外れるまでは音楽もクソもありませんでしたね。最初の1年はギターをぜんぜん触らなかったから、左手の指先がふにゃふにゃになってしまいましたよ(笑)。
 それでやっと幼稚園に上がって、とりあえず半日は家に子どもがいないので、その間にリハビリを兼ねてギターを練習してみたんですけど、昔の自分の曲のコードがなかなか思い出せなくて(笑)。レコードを聴くほうは夜中にコソコソとやっていたんですが、4年間曲作りはゼロだったんです。でもそれが案外いい方へ出たというか。しまい込んでいたギターを押し入れから出してきて子どもがいないうちに触ったら、「こんないい音がするんやな!」と、自分でギターを再発見してしまったというか。それまで1年以上はギターに触りもしなかったので。ちょっとした浦島太郎状態でしたね(笑)。

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しまい込んでいたギターを押し入れから出してきて子どもがいないうちに触ったら、「こんないい音がするんやな!」と、自分でギターを再発見してしまったというか。

湯浅:それで新鮮さはあるんですか?

柴山:さすがに何年か触らなかったから新鮮さはありましたね。で、最初にできたのがタイトル曲の“遠泳”で、歌詞もほとんど悩まずに自然と出てきました。次はこうだな、っていうのがわかったんです。誰かが用意していてくれてたのかなって思いました(笑)。ライヴのほうも妊娠中期くらいから休んでいたので、5年ぶりくらいにそっちの方も再開したんですよ。そのときは活動休止以降の新曲だけでやって、昔の曲はアンコールで2曲やっただけでした。

湯浅:ライヴのときは子どもをどうするんですか?

柴山:最初は地元の大阪でしかライヴができなくて、しかもランチ・タイムで12時半スタートっていう(笑)。妹が車で来られる距離に住んでいるので来てもらいました。妹はとっくに子育てが終わっていて、いちばん上の子はもう就職してたから、時間の余裕があったんですよ。だから妹に子守りをしに来てもらうという(笑)。妹にはなついていたので安心できました。妹に朝9時に家に来てもらって、僕は午後4時までに帰ってましたよ。妹も5時までには帰って晩ご飯の支度をしなきゃならなかったので(笑)。

湯浅:そういう生活上の縛りがあったほうが、やることがまとまるのかもしれませんね。

柴山:メリハリがつきますね(笑)。いい意味で緊張感が生まれる。まだ小学1年生なので、夜のライヴはちょっとできないんですよ。発売記念だけはしょうがないから東京で夜にやりますけど、どうしても一泊になるのでそのときは妹に預けて、次の日夕方の明るいうちに帰るっていう(笑)。

湯浅:1年生だとあと10年はかかりますよね。

柴山:ライヴの会場にはまだ連れて行けないですよね。小学校高学年くらいになったら、いっしょに行こうと思います。中学くらいまでは厳しいかな。

湯浅:中学くらいになれば、行きたい時に行けますけどね。坂本慎太郎くんの子どもが中学2年生で、オシリペンペンズのライヴを観に来ていて、このあいだ会いましたけど。好きな音楽も選べるし、自分のオヤジの音楽聴いているって言ってたよ。それでペンペンズのファンだから来たって言ってました(笑)。

柴山:ペンペンズの方が好きなのかな(笑)。


使う単語が歳をとって簡単になっていると思います。自分で漢字で書けないものは使わない、みたいな。

湯浅:ところで、生活のなかで詞を書いていくにあたって、やっぱり昔使っている言葉と、いま使っている言葉って少しちがうっていうのはあるんですかね?

柴山:多少はちがうと思いますけどね。

湯浅:それは意識的に変えていくってことかな?

柴山:使う単語が歳をとって簡単になっていると思います。自分で漢字で書けないものは使わない、みたいな。

湯浅:それは俺もよくわかります。

柴山:「喪失感」とかね。「喪」が書けない(笑)。

湯浅:でも若い頃って、けっこう無理して難しい言葉を歌おうとしていたってことないですかね?

柴山:ありますよ。はっぴいえんどの悪影響を受けて。国語辞典を引っ張り出してきて「寂寥なんです」なんて歌詞を作って真似事をしていた時期がありましたね(笑)。これはオフにしといてください(笑)。

湯浅:何かこう、到達しない部分もあると思うんですが。

柴山:歌詞がですか?

湯浅:いや、音楽全体で。つまり、昔は無理してやっていたけど、いまでは多少はできる部分もあるんじゃないのかなって思うんですよ。

柴山:いまは逆です。昔できていたことがいまはできない(笑)。高齢化とともに、記憶と体力が衰えましたね。やっぱり50歳を過ぎたあたりから。歌詞を全部暗記できなくなったとか。20年前は全曲普通に暗記してやっていたのに、いまは譜面台を置かないと歌詞が途中で出てこない(笑)。

湯浅:あれは一回置いちゃうとだめですね。

柴山:昔はなかったんですけどね。だんだんできないことが増えている(笑)。で、その中で必要に追いやられてシンプル化が進められてきたという感じです。退化していっているような。

湯浅:やり過ぎない部分というのもあるのかもしれないですね。結果的になのかもしれないけど。

柴山:音楽的にも歌詞にも、よく言えば無駄が無くなってきたというか。ハッタリをかます必要性が無くなってきたというか。やっぱり30代くらいまでは虚勢を張ってみたりだとか、ありましたね。


音楽的にも歌詞にも、よく言えば無駄が無くなってきたというか。ハッタリをかます必要性が無くなってきたというか。

湯浅:柴山さんにもあります?

柴山:ありますよ。誰にでもあるんじゃないですか? 「お前らにこれがわかるか?」みたいなハッタリをぶつけたい衝動が。

湯浅:それはありますけどね。

柴山:村八分的な。「今日はのらないし、やめるわ」みたいな(笑)。

湯浅:ははは(笑)。あれなんか、憧れがあるんですか?

柴山:ちょっとやってみたいなと思いますよね。でも、あれはチャー坊だからサマになるんで(笑)。

湯浅:真似しても、今日は具合が悪いのかなって思われたりして。

柴山:次に会ったとき「スイマセン」って謝ったりして(笑)。そういう憧れみたいなものもだんだんとなくなってきたりして、自分のスケールも「まぁ、こんなもんなんだな」みたいな(笑)。よくも悪くも自分に見切りがつくようになってきたというか。でもまぁ、できることとできないことは、人それぞれにあるものなので。自分には何十行もあるような歌詞は作れないなとか(笑)。昔に比べたら、やっぱり言葉数は少なくなりましたね。だけど、ちょっと尺が長くなりました。短い曲が減って、5分以上の曲がほとんどになって。年寄りの話は長い、みたいな(笑)。

湯浅:でも一音一音の間合いが長いというのはあると思うんですけどね。

柴山:でもそれは自分ではよしと思っていますけれどね。長くなったといっても無駄があるわけではないので。ギター・ソロとか回数が決まっているんですよ。“残像”とかはライヴで長くなる余地が残っているので、レコーディングでは詰めましたが、ああいうのも別にここまで短くしてもなんの支障も出ないというか。“残像”はCDだと10分程度なんですけど、ライヴだと15分以上とかになります。

湯浅:そうですよね。スタジオだとまとめるほうへ行きますよね。

柴山:CDは2枚組にはできないんで、70分くらいには押さえなきゃいけないという。

湯浅:まぁでもアナログなら確実に2枚組だから。

柴山:だからアナログを出してほしいんですけど、2枚組がネックになってディレクターから返事がこないという(笑)。

湯浅:2枚組はジャケ代がかかりますからね。

柴山:CDなんか出さないで、アナログとダウンロード・チケットのセットを販売したらどうか、と提案したんですけど、返事がなかったですね(笑)。やっぱりニール・ヤングとかそういうクラスじゃないと無理かな?

湯浅:アナログにCD付録がいちばんいいですね。

柴山:CDは売れないって、売る方も買う方も言っているのに、なんでCDを出すんだっていう気もしますよ。

湯浅:そうですね。アナログを作る人がもう少し増えたらと思いますけど。化成(東洋化成)しかないから。

柴山:国内一社だけで値段が決まっちゃってますからね(笑)。一時期、東欧のプレスが運賃考えても安く作れる、というんで流行ったこともあったけど。

湯浅:なんかヨーロッパのプレスって音が悪いんだよな。

柴山:コストは安くても、再生ビニール使っている感じがしますよね。東洋化成さんにもうちょっと値段を安くしてもらって(笑)。

湯浅:立ち会いもできるし、環境はいいんだけどね。あれは独禁法に触れないのかな(笑)。

柴山:文句言う人が誰もいないんですね(笑)。

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音はフォステクスのシブイチの8チャンネル(笑)。それしかスタジオになかったんです。


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湯浅:これはアナログ録音で?

柴山:リズム録りはアナログです。オープン・リールのテープを回しました。それで重ね録りをプロ・トゥールスでやりましたね。

湯浅:音は何チャンネルで録っているんですか?

柴山:音はフォステクスのシブイチ(4分の1インチ幅のテープを使用する)の8チャンネル(笑)。それしかスタジオになかったんです。

湯浅:よくありましたね。

柴山:エンジニアの私物です(笑)。

湯浅:テープは使い回し?

柴山:僕が持っていた6ミリのテープを押し入れから引っ張り出してきて。昔、テープをまとめ買いしていた時期があって。ピース・ミュージック(中村宗一郎氏のスタジオ)でやっていた時はアナログ録り、アナログ落としだったので。その頃に箱買いしていた6ミリテープの余りを発見して、それを使いました。大阪のスタジオで録った『よすが』の時はオタリのアナログ・マルチ・レコーダーのテープ2インチ幅の24トラックを使ったんですけど、渚にてが使ったのが最終稼働だったんですよ。今回もオタリで録ろうとしたらピンチ・ローラーのゴムが変形していて、使えない状態だったんです。エンジニアの人がスタジオのオーナーに修理を打診したんだけど、だめでした。「プロ・ツールスで全部できるんだから経費のことを考えろ」と言われて。
 それで諦めかけたら、エンジニアの人が学生時代に宅録で使っていたフォステクスが動くかもしれない、となって。持ってきてもらったらギリギリ使えたんです。それで今回のベーシックのドラムとベース、ギターの録りは4分の1インチの8トラックなんですよ。これは専門的な話でそれこそ『サンレコ・マガジン』(サウンド&レコーディング・マガジン)向けかもしれないんですけど……2インチ幅の24トラックのオタリはSNが非常によくてヒス・ノイズもほとんどないから、ノイズ・リダクションがなくても使えるほどなんです。非常にハイファイで硬質な音で、逆に言うとデジタル的なぐらいクリーンな音質。業務用マルチ・レコーダーの国産では最高峰。対して、今回使ったのは民生用のフォステクスでしかも83年製……! しかもシブイチで(笑)。フル・デジタルは回避したかったので仕方なかったんです。ダメもとで、もし途中で壊れたら諦めるかってやってみたら、トラブルがなくて全曲録れたんですよ。一応、業務用レコーダーと比べたらヒス・ノイズも多いのでドルビーだけは使いましたけど。で、録ってみたらテープの幅が狭いのが影響して、すごくいい結果が出たんですよ。いわゆるテープ・コンプレッションが、テープ幅の狭い分だけ極端にかかったんです。悪く言えば強い音が潰れかけてるんですけどね。

湯浅:俺はあの感じが懐かしいと思いました。

柴山:ベースのブイーンと鳴るときの音なんかね。あれは全部テープ幅の狭さによってできたものです。聴いてみたら、これは2インチのときよりも迫力があるよなって(笑)。メンバー全員一致でこれでいこうってなりました。

湯浅:そういう事情があったのか。

柴山:だからフォステクスの民生用の8トラックのオープンリール・レコーダーが出発点でした。


よく言われました。「これは今年の録音なんですか?」って(笑)。

湯浅:ギターはあとで?

柴山:重ねたギターはプロ・ツールスでやりました。基本的にはベーシックのエレキ・ギターとベースとドラムがアナログ録音です。

湯浅:キーボードは?

柴山:一日来れなくて後録りになったけど、3分の1くらいは4人いっしょにやりました。ドラムの前に皆並んで(笑)。

湯浅:8チャンネルでやりくりっておもしろいですよね。

柴山:マイキングでどれだけ録るかを工夫しましたね。8チャンネルなんて20歳ぐらいの宅録時代以来(笑)。

湯浅:8チャンって意外に命が短くて、4チャンの次はもう16チャンになっちゃうって言ってたから、かえっておもしろいなと思いました。

柴山:8チャンネルではベーシック・トラックで一杯になって重ねまではさすがにできないので、仕方ないですが後の作業はプロ・ツールスで(笑)。

湯浅:それはもうマルチで戻して?

柴山:うん。それにヴォーカルなどを重ねて、ミックスもプロ・ツールスですね。マスタリングはまた別のスタジオに入って、音源をスチューダーの2トラック・ハーフ・インチ・レコーダーのテープ・スピード76cm/秒で一回録りました(笑)。スチューダーを持ってるスタジオが大阪で見つかったんです。で、スチューダーで再生した音をまた取り込んでマスタリングしました。それでなんともいえない音色になってるんですけど(笑)。

湯浅:ぜんぜん、いまどき感がないですよね。

柴山:それはよく言われました。「これは今年の録音なんですか?」って(笑)。

湯浅:ははは(笑)。「あれ?」ってなって3秒くらいで慣れるんですけど。最初の印象はすごく新鮮な感じがしました。

柴山:マスタリングのスタジオでも言われました。「こんな感じのスネアの音を聴いたのは20年ぶりぐらいだ」って。

湯浅:スネアはすごいショックですよね。いま録ろうと思ってもなかなか録れないし。

柴山:ああいう感じにしたいなと思っていたのが、偶然ポコッとできて。「あれ? 鳴ってるやん!」みたいな。

湯浅:ドラムって本当に難しいですよね。

柴山:とくにスネアがね。ザ・バンドの、リヴォン・ヘルムじゃなくてリチャード・マニュエルのスネア・ドラムですよ。“ラグ・ママ・ラグ”のあの鳴りです。鈍く低いけれど、通りがいいというか。漬物石をドスっと置いたような音ですね(笑)。あの音が出せたから今回はもう成功したな、という(笑)。


ザ・バンドの、リヴォン・ヘルムじゃなくてリチャード・マニュエルのスネア・ドラムですよ。“ラグ・ママ・ラグ”のあの鳴りです。あの音が出せたから今回はもう成功したな、という(笑)。

湯浅:柴山さんはこの『遠泳』のステレオ感に関してはどういう構想を持っていたんですか?

柴山:左右の広がりとかですか?

湯浅:それとか、分け方とかですね。

柴山:けっこうこだわるほうですよ。それはやっぱりピンク・フロイドとかキング・クリムゾンの影響ですね。最初は左にあったギターがいつの間にか右にあるとかね。説明しないとわからないけど、鋭い人がヘッドフォンで聴くとわかる、みたいな。そういうのは毎回必ず入れてるつもりなんですけど。

湯浅:まず定位はセンターから作っていくんでしょ?

柴山:そうですね。ドラムとベースからはじまって。それはまぁ、基本のセオリー通りですけど。

湯浅:ドラムなり、上モノをどっちにするかとか、最初からモノで考えて振り分けする場合も?

柴山:レコードのモノラル盤は好きですけど、自分で作るときはモノラルはあまり考えないですね。小さい頃はラジオだけでモノラルしか知らなかった。でも、親にステレオを買ってもらってからは右と左が別れていて、ヘッドフォンで聴いたら「音が回る!」みたいな衝撃(笑)。ステレオの原体験は大阪万博の鉄鋼館のシュトックハウゼンの演奏で、あれもサラウンドの先駆けみたいなことをやってましたから。照明と音が同期して観客席を回るとか。

湯浅:いまは簡単にできることだよね(笑)。


プロ・ツールスは人生が500回ある感じですよ。今回は「もうそんなに要らんやろ!」って見切りをつけて作業してました(笑)。

柴山:そういう音のパノラマ的な定位ですよね。『2001年宇宙の旅』の後半のすごく盛り上がる光と音の洪水のところとか。前後感と左右感が全部出てる。そういう効果は今回のアルバムでも、あくまで味つけとしてけっこうやってますよ。そういう意味でプロ・ツールスはすごく便利になったので。でもプロ・ツールスも逆に能率が悪いですけどね。何でもできる代わりに修正もどこまでもできてしまうから、諦めがつかないんですよ。あと、指定した過去に瞬時に戻れるので。アナログだったら絶対に再現できない部分があって、そこで諦めがつくんです。人は生まれたら死ぬ、みたいな(笑)。アナログはいったんフェーダーをゼロにして電源を落としたら、卓の写真撮ってもフェーダーの位置をテーピングしても、次の日は絶対に同じ音は出ない。でもプロ・ツールスは何回でも生き返れるから、終わりがなくなっちゃうんですね。

湯浅:あれ聴き比べができちゃうのがよくないですよね。

柴山:『よすが』を録ったときは、「ベーシックは何月何日にやった何番目のテイクで、上モノの一箇所だけ今日はちょこっと変えます」とかやってましたからね(笑)。プロ・ツールスは人生が500回ある感じですよ。今回は「もうそんなに要らんやろ!」って見切りをつけて作業してました(笑)。でも、ときどきは「本当はまだ直しができるのにな〜」って内心思ったりしてましたよ。でも、プロ・ツールスで修正を重ねて追い込んだつもりでも結局はどう変わったのか、自分でもあんまり区別がつかないんです(笑)。ベーシックは同じもので、非常に細かいところをちょっと変えているだけですから。

湯浅:全体を変えるわけじゃないですからね。

柴山:今回やっとプロ・ツールスの見切りもついてきて、ミックスの作業も「子どもが学校から出てくるまでにキリをつけて帰らなきゃ」ってね(笑)。いまは子どもが狙われる犯罪がたくさんあって他人事じゃないですから。子どもを一人にすることが「まぁ、ええか」とはならなくて、「下校まであと20分しかない!」ってなります(笑)。そういった心地よい緊張感で作業を進めさせていただきました。

湯浅:だから忘れることがけっこう大事かもしれませんね。あんまり憶えているとかえって気になって戻りたくなっちゃうというか。

柴山:本当にそう思います。プロ・ツールス初体験のときは全部魔法のようでしたけど。

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ピッチと時間軸を変えるのだけは絶対にしない、と。

湯浅:アナログのほうが、かえって思い切りがよくできていたのかもしれないな、といまになって思うんですけど。

柴山:ミックスでも同じですよね。いまは0.2dBのレベルの上げ下げでエンジニアからツッコミがきますから(笑)。

湯浅:そうそう(笑)。なんか急に細かいことを言ってる。0.2ってどこだよっていう。

柴山:スタジオの現場でデジタルだと、0.2dB上がったっていうのがわかるんですよ。

湯浅:あと波形でわかるじゃないですか? あれがよくないと思うんだよな。

柴山:まぁプロ・ツールスでも、時間軸とピッチの修正だけはしません。バスドラが少し突っ込んでいるからコンマ1秒ずらして修正しよう、とかはやらないんです。エンジニアは耳が慣れているから気づくんですけど、絶対にいじるなって言ってあります。自分の歌のピッチも「ここ少し修正してもわかりませんよ!」って言われるんですけど、それだけはやめてくれってお願いしてます(笑)。一音だけ歌い直したりとかはしましたけど。

湯浅:それはアリなんですか?

柴山:それはアリにしました(笑)。でもピッチと時間軸を変えるのだけは絶対にしない、と。

湯浅:いまって歌が簡単に直っちゃいますもんね。

柴山:そうなんですよね。だからそれをやると人として終わり(笑)って自分で決めていたので。

湯浅:最初からそうだと潔くていいですよ。なんか細かく直すのにすごく抵抗があるんです。自分で歌っていても、そういうふうに思うし。だけど、たとえば昔も手動でピッチを直していた人もいるわけで。つまりマルチ・トラックのテープで一箇所ずつ微調整して再生して上げて音程を直す。ユーミンとかもそうなんですよ。ものすごく細かくやってもあれだっていうのがすごくおもしろくて(笑)。『ひこうき雲』のときはそうやって全部ヴォーカルを直したらしくて、歌だけでものすごく時間がかかってるんですって。

柴山:一曲やるだけで気が遠くなりそうですね(笑)。だから70年代の後半くらいにはピッチ・シフターが出てきましたもんね。

湯浅:あれは録ったのが72年だから出たのが73年か。すごい大変だったって言うんだけど。

柴山:『ミスリム』のときもそうやってたんですか?

湯浅:その頃までには音程はよくなっていたらしいんだけど。だけど、それはそういうふうにしたかったからそうしてるみたいだけどね。

柴山:70年代は、浅田美代子も修正をしてあれだったから。

湯浅:浅田美代子は直しようがなかったんじゃない?(笑) これは無理だ、みたいな。再生したものを聴いて違和感があるのが嫌っていうのもあるし。

柴山:本人にしかわからないですよ。歌って細かいところを気にしているのは本人だけ、っていう。プロ・ツールスだとエンジニアが簡単に「ここの音程は上がりきってないから一瞬だけ上げてみましょう」とか言うんですけどね(笑)。ピース・ミュージックで録ってたときなんか、あんまり何度も同じ箇所を歌い直すもんだから「テープが粉を吹いてきたので一回テープ止めませんか」(笑)ってなったこともありました。レコーダーのヘッドが熱くなって、テープの磁性体が剥がれ落ちてきたんですよ。新しいテープだったんですが「テープがダメになっちゃうんで、ここは置いといて別の箇所を録音しましょう」って(笑)。

湯浅:今回はパッチワーク感が少ないですよね。

柴山:少ないですね。プロ・ツールスは使っているんですけど。今回は一本筋が通ったアルバムとして手応えはあるんですよ。大体同じ時期にできた曲ばっかりで。半年間くらいかな。

湯浅:前の(『よすが』)はそうでもないんですか?

柴山:違いますね。何年かの間に少しずつ、という感じでした。ライヴが今度あるから、少なくとも新曲を一曲はやろう、という感じで。そうした方が新鮮でもあるんで。それを2、3年やって10曲超えたらアルバムを作ろう、となるんですよ。『よすが』まではその繰り返しが多かったですね。

湯浅:もうそういうふうにはできないんですかね?

柴山:ライヴ自体がコンスタントにできないので。子どもが大きくなったら、ライヴの回数は増やすかもしれないですけどね。


それまでは自分から音楽を取ったらゼロだと思っていた。いまはすべて子どもが最優先という形になってますから。それが幸せということなんですけど。

湯浅:うちは今年で上のが20歳なんですよ。下が中学3年で、ふたりとも女です。

柴山:口をきいてもらえますか(笑)?

湯浅:うちは仲良しなんですよ(笑)。

柴山:A&Rの井上さんの娘さんは14歳から20歳の間まで口をきいてくれなかったらしくて。

湯浅:井上のうちはビッチですから(笑)。うちの場合は子どもが小さかった頃はべったり育児してたからね。ライヴを観に行くのがとにかく大変だよね。双子だったらもっと大変なんだろうなって思います。

柴山:夜、子どもが寝てからヘッドフォンでこっそりレコード聴いていても、育児で疲れてるから3曲めくらいで寝ちゃうみたいな(笑)。

湯浅:生活のサイクルが変わって、昔作れなかったものが作れるってことはないんですか?

柴山:今回の新曲は全部そんな感じですね。表現としてはそんなに変化がないんですけど、子どもがいなかったときとは感覚的に違いますね。

湯浅:1回めはそんなでもないんですけど、2回めからわかるんですよ。最初は渚にての新譜として聴けるんだけど、2回めから「あれ?」と思うことが随所にあってまた1曲ずつ繰り返したくなるんですよ。そこはずっと聴いた身としても発見がありました。

柴山:ありがとうございます。

湯浅:いえいえ。それはやっぱり生活の変化がけっこうあるのかなって思って。

柴山:いちばん大きいと思います。まあフルタイムのミュージシャンではないので(笑)。4年も休んでミュージシャンとか言ったら恥ずかしいですけど。まぁ、片手間だったのが、そうではなくなったというか。自分から子どもとの生活を取ったら音楽しか残らない、みたいな感じですかね。子どもが生まれたのは本当に大きいですね。それまでは自分から音楽を取ったらゼロだと思っていた。いまはすべて子どもが最優先という形になってますから。それが幸せということなんですけど。だから健康に気をつけてますけどね。

湯浅:それはやたら言われますよね。死なないようにってね。

柴山:だからまぁ、生きてるって素晴らしい、みたいなことですよ(笑)。東日本大震災もありましたし。あのときは子どもがまだ3歳でした。そのときにできた曲っていうのはないんですけど、歌詞の世界観には入っていると思います。日本人全員が同時に死をリアルに意識したのが3.11だったと思うんですけど、戦後のナマっちょろい世界を生きてきた自分の世代にとっては、後にも先にもあれほどのものはなかったですからね。豊かな高度経済成長期で育ったので。

“遠泳”ができたときは、もう一度泳ごうという気分だったんですよ。(中略)結局、海へ泳ぎ出してどこかにたどり着くのか、一周して戻ってくるのか、コースは人それぞれなんだけど、そういう、生きていくことのメタファーなんです。

 被災された方々には不謹慎にあたる言い方かもしれないですけど、“遠泳”ができたときは、もう一度泳ごうという気分だったんですよ。津波で亡くなられた方々が、逆に海がなかったら死なずにすんだかというと、そう考えても意味はなくて、そもそも海がなかったら人間だけではなくてあらゆる動物も地球自体も生きてはいけないわけで。“遠泳”の歌詞にはそれがいちばん入っているかもしれないですね。海はもっとも豊かな存在であるかもしれないけれど、もっとも恐い存在でもあるわけで。結局、海へ泳ぎ出してどこかにたどり着くのか、一周して戻ってくるのか、コースは人それぞれなんだけど、そういう、生きていくことのメタファーなんです。比較的早い段階で(アルバムの)タイトル『遠泳』とタイトル曲は決まってました。あとはメンバーを説得するだけでしたね(笑)。他の曲名も全部漢字2文字にしようと思ったんだけど、ひらがなが好きな人もメンバーにいて反対の声があったので(笑)。世界でいちばんすごい存在は海であって、その次は母だということですね(笑)。お母さんもすごいです。

湯浅:そうだよなぁ。男って子どもを生めないしな(笑)。

柴山:次は生きているうちにアルバムを何枚作れるかという最大のテーマについて挑戦したいと思います(笑)。それと、孫の顔を見るというのと、レナード・コーエンに負けないように80歳を過ぎてもアルバムをリリースすることですね。この前、頭士奈生樹くんに会ったんですよ。同い年なんですけど、「あと何枚作れる?」みたいな話をして、「いや〜、あと1枚かなぁ」って(笑)。いや、それは少な過ぎるからせめて5枚くらいは出さないと、って。頭士くんはどこか仙人的な生き方をしている人で、べつに強いてCDを出さなくてもいいというか、いい曲さえできたらあえて他人に聴いてもらわなくてもかまわない、みたいなんですよ。僕は俗世間の人間なのでこんないい曲CDにしなきゃあかんで、と思ってしまうんです。頭士くんは田中一村みたいな考え方なんです(笑)。作品至上主義で。離れ島でひとりで制作に没頭して「ええ絵が書けた!」って完結(笑)。で、僕が出版社の編集者みたいになって「これは画集にしなきゃあかんよ!」って言う、みたいな。人に見てもらってはじめて作品って完結するんだからって言っても、「いや必ずしもそんなことはないんじゃ」っていうような感じ(笑)。

湯浅:死後発見っていうのもあるからね。

柴山:ゴッホになってどうするんだっていう(笑)。生きているうちに騒がれなきゃあかんやろ、と言っているんですけど。山本精一くんなんかも焦っていると思いますよ。ハイペースでライヴもやってアルバムも毎年のように作ってるから、「ちょっと出しすぎ?」みたいな。まぁ、それはそれで彼の生き方なのでいいと思いますけど、でもそれに対して憧れもありますね。彼はまだ独身で子どももいないから、好きに時間が使えていいな、と思います。好きなときにライヴにも行けるし、御前様になっても怒られたりしないし。気が向いたときにレコーディングしてCDを出して、単純にうらやましいなーと思います。いつでも練習できるし(笑)。

湯浅:じゃあ、子どもの成長に従って次のアルバムが決まりそうですね。

柴山:そうですね。だからリリースはいままでより増えると思います。


ゴッホになってどうするんだっていう(笑)。生きているうちに騒がれなきゃあかんやろ、と言っているんですけど。

湯浅:小学校1年生というと授業は5時間ですか?

柴山:5時間ですね。2年生から6時間になるみたいです。だから親の自由時間がちょっとずつ増えていくので、それがいまの楽しみです。あと、お風呂が一人で入れるようになるのが時間の問題で。いまは毎日いっしょに入っているけど、女の子ですから。

湯浅:お風呂は小学校3年生までですね。

柴山:「お父さん臭い」とか「来ないで」ですよね。まだ大丈夫で裸で走り回ってますけど(笑)。いっしょにいられる時間を楽しみたいと思います。

湯浅:こうしている間にも成長していますからね。

柴山:時間のスピードがあいつらと自分でぜんぜんちがいますからね。でも同じ時間軸で生きていることが不思議で楽しいですね。

湯浅:たぶん年齢の分母がちがうからだと思いますね。

柴山:もういま、自分の一か月っていったら一週間くらいの感覚ですよね。とくに子どもが生まれてからはファズをかけたみたいに自分の時間が加速してます。この間、向田邦子のドラマを観てたら、森繁久彌が出ている回があるんですけど、お正月のシーンで森繁久彌が「また正月かぁー!」って言うんですけど、その台詞が最近自分もよく出るようになりましたねえ(笑)。

湯浅:そうそう、すぐに年末になっちゃうんですよね。夏とか短い。

柴山:小学生のときとか、夏休みは永遠に近かったですもんね。

湯浅:夏が3日くらいで終っちゃう感じですよね。

柴山:もう1年が半年くらい、って感じですよね。だから、うかうかしてないでレコ発のライヴに向けて真剣に準備しようと思ってるんですけど。

湯浅:それはいつなんですか?

柴山:1月です。12月はライヴハウスが押さえられなかったんですよ。子どもの学校があるから土日しかライヴができないっていう括りがあるんで。土曜日の朝に子どもを妹に一泊預けて上京して、夜にライヴして翌日帰ってきて引き取って、月曜日に学校に行かせる、という。

湯浅:大阪のライヴは祝日の午後にやるんだ。

湯浅:大阪ではランチ・タイムにやって明るいうちに帰るということです(笑)。年配のファンにはそっちのほうが評判がいいんですけどね。帰るのが楽みたい。会場の外に出たらまだ日が出ていて、一杯飲んで帰るのにちょうどいい、みたいな。

湯浅:一杯飲んでも帰ったら9時みたいな感じですもんね。

柴山:普通のライヴだったら、終ったら10時半とかでゆっくり飲みに行くには終電が気になる。だから大阪は早めの時間にやって、東京は営業的にしょうがないから夜やりますけど(笑)。

湯浅:来年またアルバムができるといいですね。

柴山:来年はどうかな……。

湯浅:じゃあ、再来年。意外と毎日が早いので、気がつかないうちに2年くらい経っているんですよね。

柴山:ははは、今回のは6年ぶりなんですけどね!

SUNS OF DUB JAPAN TOUR 2014 - ele-king

 ダブステッパーに限らず、ダブを愛するモノたるやオーガスタス・パブロの名前はマスト。家に最低3枚。これ常識。僕は、若い頃、パブロのライヴは2回とも行った。これ超自慢です。
 今週末、パブロの息子(お父上は1999年に亡くなられている)のアディス・パブロが来日します。名義は、SUNS OF DUB。西から東へ5都市でツアーを開催します。東京では、こだま和文さんが出演します。その低音で、台風なんか吹っ飛ばして。

<東京公演概要>

liquidroom presents
──PABLO & KODAMA──

オーガスタス・パブロ、そのダブの系譜を継ぎ、そして前進させる者たち

1973年のルーツ・ダブのクラシック中のクラシック『King Tubbys Meets Rockers Uptown』をはじめ、自身のメロディカ、そしてタビーによるミックスによってルーツ・ダブのスタイルを提示したオーガスタス・パブロ。自身のレーベル〈Rockers Internationl〉を中心に展開した、ストイックにラスタな、そのルーツ・スタイルは、1999年の没後も、ルーツ・ダブに限らず、さまざまなダ ブ/ベース・ミュージックに影響を与え続けている。その“系譜”を継ぐ”SUNS OF DUB、彼らがKATAにてライヴを行う。パブロの意志を引き継ぐメロディカ・マスター、ADDIS PABLOとセレクターのRAS JAMMYによるプロジェクト。〈Rockers Internationl〉を引き継ぎ、さらにはこれまでにディプロ率いるMajor LazerやToddla Tといった新世代のデジタル・ダンスホール系のアーティストとも共演するなど、現存のベース・ミュージックとの邂逅など、新たなスタイルの創出に余念がない。さらには、MUTE BEAT時代の名曲"Still Echo"にて、オーガスタス・パブロとの共演も果たし現在も日本のレゲエ・ダブ・シーンを牽引するトランペッター、こだま和文、そして“Apach”のカヴァー7インチをリリースしたばかりのトロンボーン奏者、KEN KEN率いるKEN2D SPECIAL、とダブを新たな解釈で突き進める、2アーティストのライヴも行われる。

featuring live
SUNS OF DUB(ROCKERS INTERNATIONAL)
 ADDIS PABLO(SON OF AUGUSTUS PABLO MELODICA MASTER)
 RAS JAMMY(ROCKERS INTERNATIONAL SELECTA)
feat. JAH BAMI
こだま和文 from DUB STATION
KEN2D SPECIAL(Reality Bites Recordings)

dj
Q a.k.a. INSIDEMAN(GRASSROOTS)
Yabby
SEIJI BIGBIRD/LITTLE TEMPO

2014.10.13 monday/holiday
KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
open/start 16:00 close 21:00
adv.(9.13(sat) on sale!!)* 2,000yen door 2,500yen
*PIA[P code 243-948]、LAWSON[L code 74932]、e+、DISK UNION(取扱店選定中)、Lighthouse Records、LOS APSON?、LIQUIDROOM

info LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net/

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▼SUNS OF DUB(ROCKERS INTERNATIONAL, Kingston, Jamaica)
ADDIS PABLO[Melodica], RAS JAMMY[Selecta]

ジャマイカの若獅子、アディス・パブロは99年に44歳の若さで亡くなったルーツ・ロック・レゲエ/ダブ・プロデューサー、メロディカ奏者の父、オーガスタス・パブロのスピリチュアルな音楽を21世紀に継承、発展させる新世代アーティストである。89年生まれのアディスはニュージャージーとジャマイカを行き来して過ごし、キーボードとメロディカを習得。2005年にはオーガスタス・パブロの追悼公演でステージに立ち、ロッカーズ・インターナショナルのヴェテラン・ミュージシャンや伝説的ギタリスト、アール・チナ・スミスと共演、これを機にソロ奏者としてダブ・レゲエの作曲を開始する。10年、アディスはトリニダードからジャマイカにやって来たラス・ジャミーと意気投合し、"サンズ・オブ・ダブ"として伝統的なロッカーズ・サウンドをニューエイジのフォーマットによるダブ・レゲエで提示するべく活動を共にする。11~12年の"For The Love Of Jah"、"13 Months in Zion"以降、100作以上をデジタル・リリース、またメジャー・レイザーのウォルシー・ファイアー、クロニックス、プロトジェイ、クライヴ・チン、マイキー・ジェネラル等、幅広いコラボレーションを展開している。13年には初のヴァイナル・レコード"Selassie Souljahz In Dub"を発表、ヨーロッパ・ツアーを成功させ、英BBCのデヴィッド・ロディガンの番組では「キング・タビー、オーガスタス・パブロ以来のベスト・ダブ・レコードの1枚」と評される。14年にはオランダのJahsolidrockからアディス・パブロ名義の1stアルバム『IN MY FATHERS HOUSE』がリリースされ、北米、ヨーロッパ各国のフェスティヴァル出演で賞賛を浴びている。サンズ・オブ・ダブはダブのニューウェイヴ、ドラム&ベース、ダブステップ、トラップ、ハウス等のクラブミュージックとの触媒として貢献する、ロッカーズ・インターナショナルの新世代である。
https://sunsofdub.com/
https://soundcloud.com/sunsofdub
https://www.facebook.com/sunsofdub
https://www.facebook.com/sunsofdub

▼こだま和文 from DUB STATION

1981年、ライブでダブを演奏する日本初のダブバンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム「QUIET REGGAE」から2003年発表の「A SILENT PRAYER」まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 「IN THE STUDIO 」、2006年には「MORE」を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム「チャッピー・ドント・クライ」等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のライブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても「スティル エコー」(1993)、「ノート・その日その日」(1996)、「空をあおいで」(2010)「いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった」(2014)がある。

▼KEN2D SPECIAL(Reality Bites Recordings)
TRIAL PRODUCTIONのトロンボーン兼MCを務めるKEN KEN(トロンボーン&MC)によるソロDUBプロジェクトとしてスタート。現在はICHIHASHI DUBWISE(DUB mix)、Gulliver(guitar)の3人編成で活動中!BEASTIE BOYSからの影響を独自にREGGAE DUBにトランスフォーム!!!??したサウンドは、DUCK SOUP PRODUCTIONS、PART2STYLEから数々のアナログ7インチをリリースし、そのほとんどは即完売し入手困難なアイテム多数。2008年にはPART2STYLEから初のアルバム『Reality Bites』をリリースしイギリス国営放送BBCの番組など複数で紹介され、有名誌"WIRE"にレビューが載るなど注目を集めた。2013年自らのセルフ・レーベル<Reality Bites Recordings>を立ち上げ7枚目の7インチ・シングル「I Fought The Law」をリリース、あのDon LettsもBBCで即座にプレイ!前代未聞のド・オリジナル解釈で驚きのカバー曲を連発してるKEN2D SPECIALですが、今年2014年9月には8枚目の7インチEP、APACHEをリリース、こちらもまたKEN2D節炸裂してます!要チェック!!!!
https://m.facebook.com/profile.php?id=503540573038521&_rdr

▼Q a.k.a. INSIDEMAN(GRASSROOTS)
東京・東高円寺の桃源郷レゲエ・バーNATURAL MYSTIC育ち。レコードショップWAVEにてバイヤー経験の後に、NATURAL MYSTIC閉店後の97年同所にてGRASSROOTSをオープンする。「MUSIC LOVERS ONLY」を掲げ、バーであってバーでない、クラブであってクラブでない、人間交差点音楽酒場代表となる。INSIDEMAN名義でのMIX-CDは異才フィメール集団WAG.より『YGKG』、 POSSE KUTから『DEAR』、地下最重要レーベルBlack Smokerより『Back In The Dayz』などリリースしている。
https://insideman-q.blogspot.jp/
https://www.grassrootstribe.com/


interview with Tofubeats - ele-king

 この数年、若いアーティストに接してしばしば感じるのは、とにかくきちんと自分たちのことを説明する、ということだ。そして、そう感じる相手はたいてい25歳前後の人びとだったりする。乱暴な世代論を振り回すようで恐縮だが、彼らのことを「プレゼン世代」と呼んでみてもいいだろうか? これは三田格さんがずいぶん前にふと口にされた言葉で、どんな意味でどんな対象を指すものだったかは覚えていない。けれど、こちらのインタヴューや問いかけに対して「べつに……」と靴を見つめることもなく、「言うことはない、ただ感じてくれ」とそっくり返ったりもしない、むしろエントリーシートに書き込むような慎重さと戦略性でもって回答する、ある世代のアーティストたちには、そうした呼び方を当てはめてみたくなる。村上隆『芸術闘争論』ではないけれども、音や作品を神秘化しないできちんと説明していかなければ外に伝わらないという感覚が、はじめから骨身に沁みているとでも言おうか。あるいは、調子のよかった頃の日本の空気にかすりもしていない年齢の人たちにとっては、そうしたことは不況や世知辛さと結びついたひとつの倫理観として内面化されているのかもしれない。説明せずにわかってもらおうだなんて、貴様(=自分)何様だ──「プレゼン」とは、そんなことでは生きていけないぞという、したたかさと謙虚さのあらわれであるようにさえ思われる。


Tofubeats
First Album

ワーナーミュージック・ジャパン

J-PopHouseHip-Hop

初回限定盤
Tower Amazon


通常盤
Tower Amazon

 筆者にとってtofubeatsは、音楽のフィールドにおいて、そんな「プレゼン」をもっともシャープに、鮮やかに、また自身を被検体のようにして提示しているアーティストのひとりだ。彼が「説明」するのはなにも彼自身の音楽についてばかりではない。自身の出自でもある〈マルチネ・レコーズ〉などネット・レーベル界隈の動向、そして国内に限らないインターネット・アンダーグラウンドのトレンド、ハウスやテクノ、Jポップへの愛、音楽産業の現在と行く末、地元としての、あるいはニュータウンという特殊性を帯びた場所としての神戸、対東京というスタンス、80年代や90年代カルチャーへの憧憬の感覚……彼が「インターネット時代の寵児」と呼ばれるのは、ネット云々というよりも、ポスト・インターネットの情報空間において物事を効率よく整理・翻訳し、適材を適所にはめてプロダクトを生み出すことができるというプロデューサーとしての才を指してだろう。さまざまな文脈を縫い、串刺しながら、彼の饒舌な「説明」は、音やパフォーマンスとなり、ひいてはある世代やカルチャー自体を翻訳するものとなった。そのふるまいは、プレゼンせずにはやっていけない世知辛い時代を生きる20代にとって頼もしく輝かしいロールモデルとなろうし、彼らの感覚やその生活の悲喜こもごもを容れられる器であったからこそ、「水星」はスマッシュ・ヒットとなったのではないか。

 いま彼の饒舌とプレゼンは、ようやくメジャー・デビュー・アルバムというかたちでさらに大きなフィールドに手をかけようとしている。その名も「First Album」。以下読んでいただければわかるように、tofubeatsの「説明」は、ドメスティックな範囲を越えて、Jポップ=日本を世界へ伝えていくという大きな目標へ向かって一歩距離をつめた。彼にいま見えているものはどんなものだろうか。意外にもちょっとしたエクスキューズからはじまったこのインタヴューには、しゃべらないtofubeats──音楽をつくり聴くこそがただひとつの喜びだというtofubeatsの姿と、そんな彼に音楽についてしゃべらせてしまう状況の不幸さとを垣間見る思いもする。けれども不幸と言ってはすべてが不幸で終わってしまう。「景気がいいって、いいじゃないですか」と言うtofubeatsは、日本のプレゼンを通してそんな空気とたたかうつもりなのかもしれない。「音楽サイコー!」という偽らざる本心をあえて冒頭で宣言し、それを空転させないために、みずからツモって上がる覚悟の勝負を彼は仕掛ける。『First Album』はその遠大な取り組みの「first」だ。そして、それが世間や業界に対すると同時に「人生を進めるため」の勝負であり、音楽がサイコーであることを証明するための自らへの勝負でもあることに、心を動かされる。

■tofubeats / トーフビーツ
1990年生まれ。神戸で活動するトラックメイカー/DJ。〈Maltine Records〉などのインターネット・レーベルの盛り上がりや、その周辺に浮上してきたシーンをはやくから象徴し、インディでありながら「水星 feat.オノマトペ大臣」というスマッシュ・ヒットを生んだ。
くるりをはじめとしたさまざまなアーティストのリミックスや、アイドル、CM等への楽曲提供などプロデューサーとして活躍の場を広げる他方、数多くのフェスやイヴェントにも出演、2013年にはアルバム『lost decade』をリリースする。同年〈ワーナーミュージック・ジャパン〉とサインし、森高千里らをゲストに迎えたEP「Don't Stop The Music」、藤井隆を迎えた「ディスコの神様 feat.藤井隆」といった話題盤を経て、2014年10月、メジャー・ファースト・フルとなる『First Album』を発表。先のふたりの他、新井ひとみ(東京女子流)、okadada、の子(神聖かまってちゃん)、PES(RIP SLYME)、BONNIE PINK、LIZ(MAD DECENT)、lyrical schoolら豪華なゲスト・アーティストを招いている。


やっぱりポップになったんだなあと思いますね。

それこそ『lost decade』をリリースするころ、tofubeatsって人は、メジャーという場所にするっともぐりこんで、古くなった業界の論理とかルールを自分たちがおもしろいように書き換えようとしているんだなってふうに見えました。そういうモチヴェーションとか野心をビリビリと放出していましたよね。

TB:はい、はい。

それで、今回満を持してメジャーからのファースト・アルバム──その名も『ファースト・アルバム』がリリースされるわけですけども、ここに至って、何かを書き換えている手ごたえみたいなものはありますか?

TB:うーん、書き換えたところもあれば、折れたところもあるアルバムだというか。「折れる」というか、順応した部分もあるなと感じますね。前のアルバムは、スキットが入って17曲でフルだったんですけど、今回はスキットがなくて18曲、聴き味が重たくないものになっていると思います。けっして明るいアルバムではないんですけど、するりと聴いてもらえるんじゃないかなと。それを考えると、やっぱりポップになったんだなあと思いますね。数字のこととかを考えたんだなー、みたいな。

ああ、なるほど。

TB:そこからバランスを取るために、後半のような流れがあるかなと思いました。

ご自身のことなのに、言い回しからもう、すごく客観的な見方をされてますね。

TB:いや、すごく短期間でアルバムを制作しなければならなくて。そういう事情もあって、シングルにぶつけるアルバムの曲というのは、ほんとに1ヵ月くらいでガーっと作ることになったんですよ。すごくタイトでしたね。

それこそ、アルバムという単位はどうなんですか? tofubeatsはシングルで問題提起してきたアーティストだと思いますし、それこそツイッターのタイムラインで音楽を聴いていくような世代でもありますよね。アルバムにすると、問題を出し終わったものを集めるような感じがありませんか?

TB:そうですね、だから、本当は全部アルバム・ヴァージョンにしたかったんです。それが時間の関係でどうしても無理だったというのが正直なところですね。

アルバム・ヴァージョンにするというのは、たとえばどんな感じになります?

TB:“おしえて検索”とかって、もともとそういうふうにアルバム・ヴァージョンをつくる予定で、サビ前にジュークっぽいパートがあったりとかシーケンスが入ったりとか、いくつかの要素を忍び込ませてあったんですよ。で、アルバムになるとそこを全部808に変えたりとかできたなーと……。そういうアイディアはいくつかあったんですよね。それをかたちにする時間が足りなかったので、それならばもっとちゃんと新しい曲を入れたほうがいいなって思いました。


前はもっと、3~4ヵ月あったんで、「自分なくし」みたいなことを最後にできたんですよ。

でも、グッとパーソナルな、小品みたいな曲も入ったんじゃないですか?

TB:そうですね、時間が本当になかったから、自分を切り売りしていく方向になっていくというか……。

ははは。

TB:前はもっと、3~4ヵ月あったんで、「自分なくし」みたいなことを最後にできたんですよ。だから自分でも聴けるアルバムになっているんですけどね。

自分なくし! では“ひとり”みたいな曲は?

TB:もっと推敲したかったなというのはありますね。

へえー。ロックやフォークとの差というところかもしれないですけど、ある種の表現領域においてはパーソナルなものがゆるされるというか、自分の切り売りってけっして悪いことではないですよね?

TB:まあ、そうっすね。だから『First Love』(宇多田ヒカル)とかをすげえ聴いて、「パーソナルなこととか言ってもまあいっかー!」みたいな。……そのような気持ちになったきっかけが『First Love』の15周年記念盤(2014年発売)ですね。

おっと! なるほど、『First Love』と『ファースト・アルバム』。

TB:そのエディションで宇多田さんの手書きの歌詞とか見て、「まあ、これが日本でいちばん売れたんだったら、俺も(パーソナルな曲づくりを)やっちゃっていいか!」と。

ははっ。だから、なぜそこでそんなエクスキューズが必要なんですか(笑)。そういうところがすごくおもしろいですけれどもね。では、“ひとり”がパーソナルな曲だといっても、一周回った視点があるわけですね。

TB:これでもちゃんと、(自分のことを)言わないようにしてるんですよ。自分のことを書いてしまうと他人が共感できなくなるというんでしょうか……そういう目線は必要じゃないですか? 「自分のことのように書かなければなりません」というのが基本にあるにせよ。
 あと、思い入れがある曲は人前でやりにくいというか。なぜ僕が“No.1”をライヴであんなにやるかというと、思い入れがぜんぜんないからなんですよね。曲のテクノロジーとしてはすごく好きなんですけど。ある意味では健全なんだと思いますね。そういう曲は自分でも扱いやすいし、外に広まっても自分が傷つかない。

その「健全」の線引きが興味深いですね。わたしくらいの世代だと──まあ、一概に世代の問題と括れないですが、いわゆるロック、オルタナティヴが入口だったりすると、音楽が生々しい一人称と結びつくことにとくに違和感もないというか。そこを忌避する感覚に、やっぱりちょっと差を感じますね。

TB:なんか、そういうふうに思っちゃうんですよね。

なるほどー。


Jポップって、狭い点に絞って作っていくほど、最終的に大きな容れ物になるというか、いろんな人に受け入れられるものになっていくというか。

TB:あと、自分の作った曲ならば、どんなにクソな曲だったとしても、それを作っていたときのことを思い出すというか。だから、そういう個人性みたいなものはなにも意識しなくても出てくるから、あとで薄めるくらいがちょうどいいという気もするんです。
 実際、自分の中でも成功した曲というのは“水星”とか“No.1”とかなんですけど、あれは何にも考えないで作った曲でもあるんですよね。“LOST DECADE”とか思い入れがあるけど、だからこそライヴでもやんないし。

野田:逆にファンは“水星”みたいな曲に思い入れがあると思うんだよね。

TB:そうそう、だから「容れ物」になるってことなんですよね。空っぽの物を出すというのは。Jポップって、狭い点に絞って作っていくほど、最終的に大きな容れ物になるというか、いろんな人に受け入れられるものになっていくというか。「思い」みたいなものは、意識しなくても自分が作ったものであるかぎりは入ってしまうものだとも思いますし。

野田:たとえば「生々しい自分をさらけ出す」というような、ちょっと上の世代がやってきたことへのアンチ・テーゼだったりはしない?

TB:どうなんですかね? 好きなアーティストはあまりそういう感じではないかもしれないですね。BONNIE PINKさんとかすごく好きなんですけど、彼女がはたして自分のことをそんなに歌っているのかというと……わからないですからね。
 でもべつに自分をさらけ出すというような表現が嫌なわけではぜんぜんないです。むしろ、最近のアイドルとかの手法に対して思うところが大きいですね。「こんなに大変でした!」みたいに説明するのとかって、そんなに品のいいやり方じゃないなというか。まあまさにいまこのインタヴューがそうだ!ってのもあるんですが(笑)。

ストーリーはもとからあるものじゃないですか。

 最近そういう音楽が増えている気はしますかね。ストーリーを意図的に作ろうとしている。ストーリーはもとからあるものじゃないですか。たとえば僕だったら「インターネットから出てきました」「インターネットに救われました」みたいな(笑)。それは本当の話ではあるけど、自分から吹聴するものでもないというか、そういう部分での品のよさとか塩梅っていうのはあるじゃないですか。

たしかに、利用しているわけではないですよね。

TB:最近だと「インターネット時代の寵児」みたいによく書かれて、ダルいなーみたいな(笑)。

野田:はははは! それは書かれるよね。

TB:いや、書いてもいいですし間違ってるわけでもないですけど──新幹線がある時代に生まれたから東京まで来れる、みたいなもので、インターネットがあったからデビューできた、というところはありますからね。かといって僕はべつに〈マルチネ〉のスポークスマンでもないし。〈マルチネ〉だけがネットレーベルというわけでもない。

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冒頭で「音楽サイコー」とかって言ってますけど、あれは言わせてるんですよね、台本書いて。


Tofubeats
First Album

ワーナーミュージック・ジャパン

J-PopHouseHip-Hop

初回限定盤
Tower Amazon


通常盤
Tower Amazon

「インターネット時代の寵児」という言い方もそうなんですけど、トーフさんたちは、インターネットのなかにもストリートが存在してるんだということをいちはやく象徴したアーティストでもありますよね。そんな人たちにとってクラブとかハコでのライヴとか、具体的な場所を持ったイヴェントってどういうものだったんですか?

TB:状況のひとつっていうか、自分にとってはそこまで大きなものではないですね。家で音楽を聴く、電車で音楽を聴く、そういう中にクラブで音楽を聴くという状況もあるっていうような。自分の性格としては家が好きだし、家で聴くのが好きっていうところがあるんですけどね。関西ではもうDJほとんどやってないし。

野田:Seihoくんとやったりしてたじゃない?

TB:あれは1回だけですよ(昨年dancinthruthenights、sugar's campaign、PR0P0SEの3組で行われたイヴェント〈fashion show〉)。夕方の時間帯にやったやつで、そういうのもやっぱり楽しいんですけど……。
 最近は「音楽はライヴがいいよね」ってノリがありますよね。あれってライヴがいいというよりも、みんながiTunesとかでいろんなものを家で聴けるようになったから相対的にいいって感じられるだけであって、CDの売り上げが下がってライヴの質が上がるというようなことではぜんぜんないと思うんですよ。それも環境のひとつってことです。クラブに行ったらクラブの聴き方があるし、自分の曲でもクラブでかけるものはアレンジがちがう。

なるほど。『lost decade』も今作もそうですけど、パーティが終わるところからはじまりますよね。「バイバイ、ありがとう」っていう。あれは何か意図があるんですか?

TB:前回が終わりからはじまって、今回も終わりからはじめたかったんですけど、かつ外からはじめたくって。

外?

TB:前回は「わー」ってパーティが終わって、部屋で僕が「ふぅ……」って小芝居して、ってカットになるんですけど、今回は某野外フェスのときの録音なんですよ。で、そのまま曲に入っていくんです。

はい、はい。

TB:だから、家を出たってことを暗に示しているというか。……まあ、自分だけにわかることなんですけど。

あ、そうなんですね。

TB:デビューしたぞ、と。

なるほどー。

TB:だから、前回と同じなんですけど、家は出たぞと。

へえー。磯部涼さんのご著書を思い浮かべたりしたんですけどね、「音楽が終わって、人生が始まる」って。

TB:ああ、そういう気持ちもあるかもしれません。あとは、あそこで「音楽サイコー」とかって言ってますけど、あれは言わせてるんですよね、台本書いて。

おおっ、なるほど。私はあの「音楽サイコー」についてぜひ訊きたかったんです。

TB:このアルバムありきでやってますね。「こんなふうに言ってね」ってライヴ前に伝えて。

あの「音楽サイコー」ってなんなんですか?

TB:もう、メジャー行ってもやりたいことはそこっていうか。音楽がやりたくて、それをやるために最善の策は何かって考えて、いまはひとまずメジャーに行って、アルバムを出してみたりしているわけなんですけど、そういうことをわかってほしいというか。
 たとえば、僕は森高(千里)さんといっしょにやって、この曲を森高さんに食われたとは思ってないし、藤井(隆)さんもしかりで、僭越ながらそういうメジャーな仕事を通して音楽への入り口のひとつを作れたらって思います。あとは、いままで僕の音楽を聴いてきてくれた人たちも裏切りたくないとも思いますし。後半のインスト群とかオカダダさんとの曲とかもそうですね。大人が絡むことで煩雑さが増したりすることはあるんですけど、そういう中で最善のことをやってるよってところを見せたい。

うん、うん。

TB:1ヵ月半でアルバム作れっていうのも、無茶な話じゃないですか。もっと時間をかけたかったというのは断言しておきたいです。……でも、大変だったぶん、前のアルバムより直感的なものにはなってるかなと思いますね。前のはなんか、病気のときに作ってるなって感じがするんですよね(笑)。今回は畳み掛けるようなところがあります。昔の曲も入っているんですけど、限られた中ではよくやったほうなんじゃないかと。


シングルに毎回すごいカロリーを使ってるんですよ。“Don't Stop The Music”とか“ディスコの神様”とかは、すごく個人的にもプレッシャーがかかっていたんです。

野田:前のアルバムから1年以上経つから、もっとはやく出してもよかったんじゃないかって気もするけどね。

TB:そうですね。でもシングルに毎回すごいカロリーを使ってるんですよ。“Don't Stop The Music”とか“ディスコの神様”とかは、芸能の世界も絡むという意味でこれまで作ったことないものでしたし、何よりすごく個人的にプレッシャーがかかっていたんです。

野田:いつも自信たっぷりみたいに見えるけどねー。

TB:やっぱりメジャー・デビューということもあるし、そのわりに数字的にそれほど跳ね返りがあったわけでもなかったり。そんななかで「もうどうでもいいやー」って感じで“CAND\\\LAND”みたいな曲ができたのはよかったですけどね。あんまり気にしていてもしょうがないなって。

でも“CAND\\\LAND”って大事な曲ですよね。

TB:そうなんですよね。

どっちかというと、「音楽業界の仕組みを変えてやる」っていうよりも、「お茶の間にとんでもないものを流してやる」っていう方向で。

TB:そうそう(笑)。


パラパラとトリル(Trill)っていうのはやりたくて。

〈マッド・ディセント(Mad Decent)〉とパラパラ。

TB:2年前からパラパラとトリル(Trill)っていうのはやりたくて。トリルは作れたんですけど、パラパラはできなくて、勉強した結果やっと生まれたんですよ。幸いヴォーカルもリズムも間に合って、アルバムに入ることになりました。今回作った中でいちばんうれしかった曲ですね。締切の2日前にトラックダウン用のヴォーカル・データが届いて……それがイヴェントの会場の楽屋だったんですけど(〈音霊OTODAMA SEA STUDIO〉@鎌倉由比ヶ浜)、その場でトラックダウンして、その日にかけました(笑)。

へえー。アルバムの腰の位置で、重要な役割をもった曲だと思います。

TB:ていうかこの曲がなかったら、アルバムのイメージがだいぶ変わっちゃうんじゃないですか? だから相当慌てて、急いで入れてよかったです。

Jポップ革命であると同時に、Jポップによって外を変えるんだっていうような、tofubeatsの意志みたいなものが通ってますね。

TB:どっちかというとその後者を目指していて、「Jポップというコンテクストを説明するチャンスを与えてもらっている」と思ってますね。Jポップってめちゃくちゃいいものだって思うんですよ。BONNIEさんとかも世界的に売れるはずの人だと思っているんですけど、まだ誰もそれを説明できていなくて……というか、ピチカート(・ファイヴ)とかは、それを説明できていたからそのままKCRWとかにも出ていたわけで、そういうことがなんでいまないんだろうなって感じますね。彼らがKCRWの公開収録で日本語のまま歌を歌っていることがけっこう衝撃で。

アメリカ人とか海外の人に向けてその人たち用の曲を作るんじゃなくて、あくまで自分たちが日本人であるということを通していかないと。醤油を売るみたいな感じで、そのままを海外に売るというか。

 ああいうのを見て勇気づけられるところがあるし、宇多田さんがUtada名義でそこまでセールスを伸ばせなかったけど、アメリカ人とか海外の人に向けてその人たち用の曲を作るんじゃなくて、あくまで自分たちが日本人であるということを通していかないと。醤油を売るみたいな感じで、そのままを海外に売るというか、そういうことがちゃんとできたらいいなっていうのはずっと思っています。だから、BBCのレディオ1に出られたことで、それをちょっと証明できたかなと思います。好きなことをやっていれば大丈夫なんだなって思えました。Jポップから影響を受けたことを恥ずかしがらずにいていいんだと。

野田:なるほどね。ピチカートは本当に人気があったけど、半分オリエンタリズムとして受けてたところもあるからね。

TB:それでもいいんです。僕がR・ケリーを聴いていいなと思うように、R・ケリーが僕のを聴いていいなと思うことだってあると思ってるんですよ。

野田:日本人が海外でウケるときのパターンってふたつあると思っていて、三島由紀夫として売れるか、村上春樹として売れるか。

TB:三島由紀夫的な見方をされてもオッケーですよ。

野田:なるほどね(笑)。

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Jポップって、日本のポップスじゃなくて「J-POP」っていうひとつのジャンルなんだってことなんです。

TB:そもそも(ボーエン)bo enとかの話を聞いていると、Jポップっていうのは何かしら海外にないものをもっているんだろうなあと思わせられるんですよね。ボーエンなんて、曲をアップするときに「J-POP」ってタグをつけるわけですよ。ぜんぜんJポップじゃねえじゃんって思うんですけど、つまりはJポップって、日本のポップスじゃなくて「J-POP」っていうひとつのジャンルなんだってことなんです。
 宇多田ヒカルだってそうですよ。あれはR&Bじゃないんですっていう。

野田:まあ、R&Bだけどね。

TB:いやいや、ちがうんですよ。それっぽくなってますけど、あんなメロディであんなアレンジでっていうのはありえない。日本語で、プロデューサーにもあのメンツが集まらないとあんなふうにはならないってところがありますよ。

野田:いまフランスでJハウスっていうか、日本の90年代初頭のハウスを集めまくっているコレクターが増えているみたいだけどね。そこでは、たとえば宇多田ヒカルとかもすごく好んでかけられたりしている。でもその理由の一つはとても単純で、日本語で歌われているのがたまらないっていうんだよ。

TB:そうなんですよね。母音に合わせて作られる音楽の感じとか、そういうものがすごくいいと思うんですよね。

野田:これだけいろんな音楽がアーカイヴされているのに、外国人からみると日本はブラックボックスになっている。

TB:だからレッド・ブルだったか〈BOILER ROOM〉だったか、日本のレコードだけを1時間えんえん聴くっていう企画をやってましたよね。日本の音楽ばっかりを集めているコレクターの家で、まったく曲名とかも明かさないまま日本の音楽をかけつづけるんですよ。僕らは日本語もわかるし、「ああ、じゃがたらかかってるわー」とかって感じなんですけど、海外からしたらマジでブラックボックスで、コレクターは曲名すら出そうとしないし、レーベルだけ見せて、でもお前ら読めへんやろ日本語、みたいな感じでドヤ顔なんです。

野田:なるほどねー。


tomadが言っている言葉ですごく好きなのが、「動かずに旅をせよ」っていうもので。自分にとっては、音楽が、Jポップが、動かずに旅をするためにできることなので……。

日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とかの頃とはちがうかたちでおもしろがられたり参照し直されたりするタイミングなのかもしれませんが、その機運にパッケージを乗せてやろうというようなもくろみがあったりしますか?

TB:tomadが言っている言葉ですごく好きなのが、「動かずに旅をせよ」っていうもので、BBCとかだって、いかに神戸から動かずに世界に音を届けるかっていうところで得た結果のひとつなんですよ。自分にとっては、音楽が、Jポップが、動かずに旅をするためにできることなので……。

野田:“インターネット時代の寵児”じゃない(笑)。

TB:いやいや(笑)、tomadとか師匠がいての僕なんで。

野田:あ、師匠って位置づけなの?

TB:や、もうなんていうか──

社長?

TB:あ、社長はありますけど、なんていうんだろう、困ったときに電話する人ではありますね。

ああー。

TB:人生に悩んだときに電話する人がふたりいて、──あ、3人かな、まずはマネージャーの杉生さん。あと、tomad、オカダダです。

杉生:全員ロクでもないじゃねーか。

TB:うん。あと、全員無職。

杉生:俺は無職じゃないし!

(tofu注:全員マネージャー、社長業とDJとして働いていますのでこれはジョークです。悪しからず。)

(一同笑)


やっぱりいい曲を作って出すことがうれしくてやっているわけですからね。バンドキャンプでこれまでにリリースしてきた曲って、僕いまだにすごく好きで。

まあ、そんなふうに「インターネットつないでヴァカンス」とか「wi-fiあったらどこでもいい」(“#eyezonu”)みたいなことをいちはやく体現してこられたわけですけれども、一方で、いまは状況がそれに追いついちゃってるところもあると思うんですね。そのなかで次にtofubeatsはどんな存在になっていくんですかね。

TB:ふつうにもっとミュージシャンになりたいというのはありますね。いまは、言ってるばっかりのヤツですからね(笑)。

野田:ははは!

いやいや、それが輝いてますから。

TB:言ってることとかスタンスとか、そんなんばっかりですから(笑)。でも。やっぱりいい曲を作って出すことがうれしくてやっているわけですからね。バンドキャンプでこれまでにリリースしてきた曲って、僕いまだにすごく好きで。ああいうときの気持ちをメジャーでもうちょっと出せないかなって思いますね。
 今回だと“衣替え”とかそれにちょっと近いです。

うんうん!

TB:でもBONNIEさんを呼ぶことによってちょっとコマーシャルになっていて、バランスがとれたかなって思います。ほんとに、音楽を作って人に聴いてもらうっていうのが好きなので、そのときどきでそれに適した状況に自分をもっていくってことですかね。


ゲームよりも人生を進めたい、って。

なるほどなあ。音楽っていうところでは、トーフさんにひとつ切ない姿勢みたいなものを感じるんですよ。冒頭の「音楽サイコー!」の話に戻りますけどね、あのちょっと薄っぺらなパーティ感とか、あるいは「音楽」に対する執拗な自己言及──「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」とかもそうですけど、本当に音楽の真ん中で十全にそれを味わいきっている人は、そんなに音楽音楽って言わない気がするんですよ。じつは音楽に対して距離がある、みたいな。そこになにか非常に切実で切ない、リアルで生々しいものがあるように感じるんです。

TB:ああ……、でも音楽くらいしか本当に楽しいことがないというか。それ以外に楽しいことなんてあんのか、みたいな。

野田:じゃあ、けっこう素直な言葉なんだ?

TB:そうっすね、ゲームよりも人生を進めたい(※)って書いてますけど、ヒップホップってよくゲームってふうにたとえたりするじゃないですか。僕はそんなにおっきい枠では楽しめへんというか、そんな俯瞰できひんみたいなところがあるんです。音楽をやっていてそれをゲームだなんてふうには言えないです。

※「ゲームに良く例えるけど/本当は俺は人生を進めたい」(“20140803”)

ああ──

TB:だって音楽しかやったことがないし、それこそ中1のころから曲を作っていて。カヴァーとかコピー・バンドとかもしたことがなくて、でもそれのおかげで作った音楽をインターネットで他人に褒めてもらったりとか、それこそtomadとかとも友だちになれて、いまのこの状況があって……。音楽を作ったはいいけど、それを乗せてくれる電車のようなインターネットがなかったら、すべてがないですからね。

そうかもしれないですね。

TB:でも音楽を「流す」って言うように、音楽は流れもんで、つまりは無くなるものでもありますよね。それから、自分の好きなものが変わっていってしまうという、いい意味でも悪い意味でも切ないようなところがある。
 ドラマの最終回とかってむやみやたらによかったりするじゃないですか。でもJポップってそういうことのような気もするというか。そのために作られている音楽でもあるし。

最終回にJポップがめちゃくちゃ効いてくるっていうのは、ありますよね。

TB:軽薄であるがゆえによいみたいなところがありますよね。というか、そういうJポップが好きなのかな。でも軽薄であることがかなしいというような切なさもある……。

いい、切ない回答です。そんなに音楽が好きな人がなぜこんなに「音楽音楽」って言わなきゃいけないのか。

TB:だからそれは、さっき言ったように「説明しなきゃわかってもらえない」っていう。

野田:なるほどね。

音楽が昔ほど若者カルチャーの超真ん中ってわけじゃなかったりもしますしね。

TB:それは、ありますね。

野田:むしろ「インターネット」ってキーワードのほうが取り沙汰されてしまったりするしね。

そんなところに対する、「こんなに音楽がただ好きなのになあ」っていう感じが、ヒリヒリくるんですよ。ペラっとした「音楽サイコー」から。

TB:そうかもしれないです。結局、音楽を作っても音楽的なバックがあんまりないというか。先日初めてバンドで自分の音楽をやってもらったんですけど、あれって自分への音楽的なバックがあるものだなって思いますね。あとは音楽をやることでお金をもらって生活がよくなって機材を買ったりすることができるとか、それも音楽によるバックだと思います。
 でもたとえば自分の音楽が売れて、自分の顔をさして「めんどくさい」とか言われたりするようになったとしたら、それははたして音楽で得しているのか。そういう芸能的な部分での葛藤もあるにはありますね。メジャーでもし自分がうまくいくことがあれば、ちやほやされたいだけで音楽をやっている人と自分とは何かがちがうんだっていうことを証明したいなとは思いますね。──そういうのを否定したくはないですし、証明もまったくできていないんですけれども。

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藤井さんは本当に音楽が好きで、ただの音楽オタクで。みんなに知ってもらいたいなという部分もあります。僭越ですけれども。


Tofubeats
First Album

ワーナーミュージック・ジャパン

J-PopHouseHip-Hop

初回限定盤
Tower Amazon


通常盤
Tower Amazon

いやいや、藤井隆さんとの曲(“ディスコの神様”)なんて、まさにそういうところでつながっているんじゃないですか?

TB:そう、あの人も本っ当に音楽が好きな人なんですよね。

最初は、なにかコンセプチュアルに藤井隆というアイコンが引っぱり出されてきているのかなと思ったんですよ。tofubeatsだし。でも曲を聴いて実際に感じるのは、音楽つながりなんだなあというような。

TB:そうそう、藤井さんはすごくジョディ・ワトリーが好きで、しかも高校生のときに〈ブルーノート〉に観にいっていたりとかしてるわけなんですよ。前もスタジオで、「96年にオランダで買ったレコードが思い出せないんです。“エターナリー”って言ってる……」とかって突然言い出して、何を言ってるんだろうと思っていたんですけど、実際に探したらその曲があったりしたんですよね。本当に音楽が好きで、ただの音楽オタクで。そういうことをインタヴューとかの端々から感じていたからこそ、この人にオファーしようって思ったんです。

そういうキラキラとしたマジックが、メジャーというステージでは可能になるんだなというところはありますよね。

TB:それに、藤井さんがこんなに音楽が好きなんだっていうことを、これを通じてみんなに知ってもらいたいなという部分もあります。僭越ですけれども。

なるほど。すごく素敵な話ですよ。それに、遊び場がひとつ増えた、広がったというところもあるんじゃないですか?

TB:いやー……。そうですね、ほんとにBONNIEさんとか、藤井さんとか、〈ワーナー〉に来ないとできないことではあったので。

その一方で、ERAさんとかPUNPEEさんとか、前作のひとつのインディ感からは異なるものにもなっていると思いますが。

TB:それはでも、今度出るアナログとか、企画段階のリミックス盤とかには自分に近いところからブッキングしていて。
 とはいえ、アルバム自体はこのかたちでラッピングしておかないと、自分のやっていることがいっしょすぎてしまうし、そこはメジャーから出すということを意識しました。

野田:どんな人たちなの?

TB:BUSHMINDさん、STARRBURSTさん、(DJ・)HIGHSCHOOLさん、MASS-HOLEさん、ENDRUNさん、SH-BEATSさん、YOSHIMARLさんです。

野田:うわ、すごいね(笑)。


いっぱい曲が入っていれば、嫌な曲を消してもふつうのアルバムくらいの分量は残る。聴いている人が金額的に得なもの、というところでアルバムを考えています。

ところで、アルバムという単位についてもうちょっと掘り下げて訊いていいですか? いまは、タイムラインで1曲単位の消費、しかも1時間後に消えていてもおかしくないようなものを追ったりするわけじゃないですか。トーフさんはそういうところで生き生きと呼吸をしている人ですが、それに対してアルバムというのは、それこそ産業的に完成されたひとつのフォームでもありますよね。

TB:このアルバムについては、俺ならこう並べるってだけですけどね。あとは、いっぱい曲が入っていれば、嫌な曲を消してもふつうのアルバムくらいの分量は残る。このあたりの気持ちは『lost decade』のときと変わらないですね。聴いている人が金額的に得なもの、というところです。ただ、プレイリストありきでは作ってないですけどね。
 通常のメジャーのアルバムの作り方だったら、2曲めに自分のラップなんて絶対に入れずに“Don't Stop The Music”をもってくるわけですけれど、そういうことはやってないです。あと、CDで出しているのはあくまで〈ワーナー〉とサインしているからで、でもディスク2がついていて安い。

「安い」「お得」というのも、コンセプチュアルに仕組まれているように感じますね。

TB:でも、安いっていうのは会社の提案なんですよ。2枚組で2,400円って、頭おかしくなっちゃったのか? って思いました(笑)。

(一同笑)

真ん中にも思いきって4曲ほどインストが入っていたりするじゃないですか。

TB:あれはもう絶対に入れたくて。

“Populuxe”とかが好きです。

TB:あれは60年代のアメリカの、郊外開発のときのキーワードなんです。ニュータウンについていろいろ研究しているときにぶちあたった単語で、けっこう好きだったのでデモ曲のタイトルにしていたんですが、それをそのまま使いました。

どういう意味なんです?

TB:60年代に、郊外に一戸建てを買ってわりとリッチに暮らすっていうようなスタイルが流行って、そのころのひとつの価値観を表す言葉というか。ポップでデラックスっていうことなんです。成金というとまたちょっとニュアンスがちがいますけど。

ああ、なるほど。

TB:郊外での暮らしが、いわゆるサバーブっていう感じのものになっていって、レッチワースみたいな、田園都市の根幹を成す考え方と合流していくという。でも、曲に使用しているのは単純に単語が好きだからですね。曲自体はポリリズムがやりたかったというだけのものなんです。4拍子と5拍子の。菊地成孔とかもやってるから俺も、って。

野田:意識するの?

TB:いえ、意識するわけじゃないんですが。でもJAZZDOMMUNISTERSを聴いていて、本当に菊地成孔さんのラップはいいなあって思って。あのアルバム、僕はすごく好きで。というか菊地さんのラップが好きなんですよ。やっぱりラッパーってパーソナリティなんだなってことをヒリヒリ感じました。もう、そいつがおもしろいかどうかってのが大きいなって。

そういえば、これも素朴に気になっていたんですが、トーフさんって二次元カルチャー的な入口が意外にないですよね。アニメとか、あるいはニコニコ動画、ボカロみたいな文脈がない。

TB:それは意識的にやってますね。日本のものを世界に明け渡すにあたって、ニコ動にアップしていたら外国人は見ないので。

なるほど。言語の問題を措いても、特性ともいうべき独特の閉鎖性がありますよね。弾幕が流れて画像がブロックされますし(笑)。

TB:あとは、ボーカロイド周辺の雰囲気があまり自分の肌には合ってないみたいで。思っている以上にクローズドなものがあるのかなと思います。いってみれば、シカゴ・ハウスとかよりもずっとハードコアなんじゃないですか? 初音ミクを使わなきゃいけないっていうのは。


707って使わなきゃいけないものだったけど、そこからいろんな発明が生まれてきたわけじゃないですか。でも初音ミクはどう彼女を運用していくかみたいな部分が大きい気がします。

野田:なんで(笑)?

TB:いや、それこそいちばん病んでいたころのデトロイト・テクノくらい開いていないというか。

野田:909を使わなきゃいけない、っていう?

TB:キャラなわけだから、「初音ミクはこんなこと言わない」みたいな次元も生まれてきたりするわけですよね。アイディアで何かが入れ替わっていくのではなくて、キャラクターとしての閉鎖性とプラグインとしての機能の制限が複雑に絡み合っているみたいに見えて、自分からするとちょっと面倒くさいというか。そもそもキャラに思い入れがなければ参入しにくいですし。最終的にその閉じまくった複雑さが海外でパーンとウケたりもしてますが、自分には向いていないなって思いますね。
 707って使わなきゃいけないものだったけど、そこからいろんな発明が生まれてきたわけじゃないですか。でも初音ミクって、それを使って発明をしたりしようというものではない。どちらかというと、どう彼女を運用していくかみたいな部分が大きい気がします。

予算をかけて作れた時代の音楽が好きなんだなって自分で思います。そしてそういう人たちの音楽はブックオフにあるんです。

なるほど、では反対に、昔ながらでメガな受け皿について。単に個人的なルーツなのかもしれないんですけど、BONNIEさんだったり森高さんだったりって、「芸能」とか「テレビ」とかに象徴される種類の豊かさが反映されたものだと思うんですね。そのへんはわざわざフォーカスしたものなんですか?

TB:半分意識的で半分そうじゃないかもしれませんね。BONNIEさんとか、予算をかけて作れた時代の音楽が好きなんだなって自分で思います。そしてそういう人たちの音楽はブックオフにあるんです。

なるほど(笑)。

TB:だから僕が出会いやすかった。ということに尽きます。BONNIE PINKさんとか、1万円札を持っていけば全部かえる揃うと思います。言い方は最悪に聞こえるかもしれませんが。森高さんも全部ブックオフだし、藤井さんもそうだし、今回お呼びしているなかで、誰ひとりとしてリアルタイムで正規盤を買っている人はいないです。残念ながら。

(一同笑)

TB:だから今回はじめて還元ができるという言い方もできるかもしれないですね。

では、それなりに素直に自分の背景でもあるわけですよね。

TB:そうですね。あとは、景気がいいっていうのはいいなって思います。そんな時代の音楽に憧れている部分はありますね。

いかにお金をかけないかっていう工夫合戦が、ある種の音楽を進化させてきた側面もありますけどね。

TB:それもあると思います。でも、だからこそ「音楽、音楽」って言わなきゃいけないのかもしれない。

ああ、なるほど。

TB:ハイプなものではまったくなくなってますから。音楽は。

今日なんかは、テレビの収録もあったわけですよね。テレビ出演につながってくるというのは、トーフさんにとって大きいことですか?

TB:まあ、大きいことですねー。ありがたいです。営業の方とかも、こんなやつをテレビに出させてくれて。でも一方で、それで数が動くことの切なさみたいなものもありますね。知名度っていうのはそんなところで上がっていくんだなって。

いまだテレビは大きいんですね。

TB:まずは聴いてもらうところからはじめなきゃいけないので、それは本当にありがたいんですが。ただ、自分が本当に音楽が好きなので、音楽を好きじゃない人に届けるという概念があまりよくわかんないです。実際出ると反響はあるんですけどね。
 やっぱりそういうことを感じるために神戸にいるという部分もあります。世のなかそんなに信用できないなっていうことを、神戸にいるとよく感じられるというか。

ははは! ここにいると麻痺するんですかね?

TB:そんな気がします。あとはスピードを遅らせたい。結局は「中の人」になっていっちゃうだろうし、就職もしないで音楽をやる仕事に入ってきてしまったので、きっと他の人からずれていくと思うんです。それを遅らせたいという気持ちはありますね。


何の手も借りない、自立したポップス──それはもしかしたらポップスと言わないのかもしれないですけどね──そんなものになれたらいいなって思うんですよね。

方向としても、さらにプロデューサーという感じになっていくんですかね? いまやっていることもコンセプターとしての気質みたいな部分もそうかと思いますが。

TB:プロデューサー側になれたらいいなと思うんですけどね。繰り返しになりますけど、音楽を作って、聴いてもらうことがうれしいわけなので。でも本音を言うと、自分でいいなと思える曲ができた瞬間がいちばんうれしいです。それ以上はないですよね。

なるほど。でもそのあたりが次のステップということになっていくわけですね。

TB:そうですね。あまり内向的にならないようにしようと思います(笑)。

ははは! そこは、内向的になってもいいんじゃないですか?

TB:いや、もっとEDMくらいの開き方をしていかなきゃぐらいに思ってますよ(笑)。

野田:EDMにはならなくていいけど、ポップスは目指してほしいよね。

TB:いまは、何かに寄りかからなくていいポップスをやっている人がいないですから。AKBもEXILEも、何か別のものとポップスを掛け合わせたものじゃないですか。何の手も借りない、自立したポップス──それはもしかしたらポップスと言わないのかもしれないですけどね──そんなものになれたらいいなって思うんですよね。ポップスとしてひとつで立ってるもの。

よくわかりますよ。

TB:がんばるって言うしかないんですけどね! よく言われんですよ、「〈マルチネ〉の人柱」って。僕が突入していくと、みんながそこにつづいてくれるわけです。いちばん若いので、鉄砲玉として働きますよ。

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いや、ほんとに、“Shangri-La”のときのインタヴューを読んで“No.1”を作ったんですよ、僕は。

野田:20年前にはたくさんいたタイプだと思うんだよね。いまは少ないけど。

TB:そうそう、そう思います。マリンさんとか寺田創一さんとかテイトウワさんとか、そういう人たちにシンパシーを感じるんですよ。

野田:まあ、こうやって話していると思うけど、すごく石野(卓球)とかに似てるよね。デビューした頃の。アマチュア時代にいちばん人気があったのが“N.O.”っていう曲なんだけど、それは石野が唯一自分の本心を吐露している曲なんだよね。

TB:ああー! でも、そうですね。

野田:でも、彼はそれをメジャーで出すこともライヴで演奏することも嫌がったし、レコーディングし直すことも拒否してるんだよ。それはやっぱり、自分のことを正直に歌っているから。

TB:ああー! なんですかその話。それ聞いて、今日すごいよかった!

野田:言ってることいっしょでしょう。

TB:いや、すごくわかります! “Shangri-La”とかはなんも考えてないっていう感じがするんですよ。

野田:そう、あれはエンターテインメントで芸なのね。

TB:いや、ほんとに、“Shangri-La”のときのインタヴューを読んで“No.1”を作ったんですよ、僕は。たしか、“Shangri-La”の歌詞を考えるためにスタジオを借りたけど、歌詞が出てこなくて、「瀧がトロフィーって言ったんだよね」みたいなことを言っていて……。「トロフィー」って言葉は歌詞には入れなかったけど、いちばん売れた曲だからあれは「トロフィー」だったんだな、っていうような話で。で、そうか、縁起のいい言葉を曲名にすればいい曲になるんだなって思って、先に“No.1”というタイトルを決めてから作りはじめたのがあの曲なんです!

野田:はははは!

TB:だからいまの話をきいてちょっとビビったっすね。

野田:正直な自分は出したくないっていう考え方は、すごくあるよね。

TB:そういうのは人の考えであれ嫌だから、今回のアルバムも、会社から“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”を入れませんかって提案されたとき、快諾はしたんですが、思うところはあって。たまたま『WIRED』の原稿とかでそのことについて説明することができたのでよかったですが、もし何の説明もなくこの出したら、すごくやるのが嫌になっただろうなって思います。
 何度かその曲を人前でやる機会をもらったんですが、なんか、風営法の問題が盛り上がっているときにすごく運動で使われたんですよね。結構ショックでしたね。


自分が大事に作った曲が自分の手を離れていくっていう感覚はわかりました。アルバムを出すというのはそういう理由かもしれませんね。出ちゃったんだから、どうとられてもしょうがない。

そうなんですか? 意図はどうあれ、アンセミックにも響くような大きさのある曲ではありますよね。

TB:たしかに、自分が大事に作った曲が自分の手を離れていくっていう感覚はわかりました。こういうことかあって。でも世の中にあんまり期待しないっていうところもあるので、ポジティヴな意味で諦めていますけどね。……アルバムを出すというのはそういう理由かもしれませんね。出ちゃったんだから、どうとられてもしょうがない、諦めるというような。

野田:でも、なんで風営法のキャンペーンに使われるのがダメなの?

TB:いや、風営法のために作ったものじゃないからですよ。僕は反対というわけでもなかったし。でもこの曲のおかげで風営法反対の公演とかへの出演依頼がめちゃくちゃ来たんですよね。

へえー!

TB:風営法に反対だっていうことを一回も言ったことがなかったのに。それで勝手にキャンペーン・ソングみたいになってるのがつらかったので、クリエイティブ・コモンズをつけてフリー・ダウンロードにしたんですよ。もう、知らぬ存ぜぬということで。音楽はそういうものから自由だからいいのに。

野田:政治に利用されるのが不本意だったのね。

TB:ダンス・ミュージックってそういうものじゃないじゃないですか。「イエーイ!」みたいな……あ、そうでもないか(笑)。

(一同笑)

TB:でも、505っていいなみたいな、そういう気持ちを僕は大事にしたいんですよ。「505に宿ってるソウル」とかじゃなくて、もっと「いいよねー」みたいなところを。だから、“ディスコの神様”みたいなものが売れたら、とても景気がいいじゃないですか。
 SMAPではじめてオリコンの1位を獲った曲が“Hey Hey おおきに毎度あり”なんですよ。その話がめっちゃ好きなんです。あんな歌詞のものがオリコンの1位っていう──あんな、っていうのは1周まわって最高だっていうような意味なんですけど。あんな曲が1位を獲るというのは、つくづく景気のいい時代だったんだなって。

505っていいなみたいな、そういう気持ちを僕は大事にしたいんですよ。

さっき言っていたような、空っぽのものがいいと思う理由は、そのへんにもありますね。しかもそれが受け入れられているのはある意味で健全だと思います。みんな薄っぺらいラヴ・ソングがどうこうって揶揄したりしてますけど、薄っぺらいラヴ・ソングが売れていることがどんだけいいことかって話ですよ。

野田:まあ、でも、景気がよかった頃ってメガ・ヒットはないんだよね。みんなが平均的に売れていたってだけで。むしろ景気が悪くなってからミリオンが出るようになる。

TB:それは、言われてみればそうですかね。“らいおんハート”とか“世界に一つだけの花”とかの頃はもう不景気だって思うっす。

でも、tofubeatsの仕事というのは、自分がバーっと売れればいいという種のことではないですよね。

TB:自分の曲が育ってほしいなって思いますね。

そうですね。それが種を生むというか、ひとつの状況を準備できたらっていう。でも、そんなふうに何かを引き受けてやるぞっていうのが、メジャーになるということかもしれないですね。

TB:そうですね、プロ野球選手になったって感じです。プロの二軍の人よりうまいアマチュアの人ってぜったいいるはずじゃないですか。でもプロはプロって看板はらなきゃいけない。僕にしたって僕よりいい曲書く人なんていっぱいいるわけです。

でも、音楽って、ぜんぜんなにも引き受けなくてもいいものじゃないですか。

TB:そうかもしれないですけど、引き受けること以外にメジャーがやれることって、いまそんなにないなって思います。

野田:本来ならそういうプロ意識って、こんなふうに公言しなくてもよかったものなはずなんだけどね。でも公言しなければならないくらい、一種のアマチュアリズムがはびこっている部分はあるんじゃないかな。

そうですね。今日は非常に心強い言葉がきけました。

野田:でも10年後ぜんぜんちがうことを言ってるかもしれないよ(笑)。

TB:歌は世につれ……ですよ。そこは変わっていけばいいと思います(笑)。


次回は紙ele-kingに掲載された過去のインタヴューをお届けします!



スローイング・スノーの時間を贈ります - ele-king

 スローイング・スノーことロス・トーンズ。90年代のブリストル・サウンドを今日的に蘇生させ、マッシヴ・アタックとジェイムス・ブレイクをつなぐUKの超大型ルーキーとして多くのメディアから注目されてきたその男が、来週末ついに秋冷の東京に降り立つ。
 ele-kingでは3名の方を会場にご招待。以下の応募方法に沿ってご連絡をいただき、ぜひその姿と音を目のあたりにしてほしい。

■応募方法
下記要領でメールにてご応募ください
ご当選の方にのみご連絡を差し上げました(9月25日16:00現在)。
たくさんのご応募ありがとうございました。

締切を9月24日(水)とさせていただきます

件名:Throwing Snowライヴ招待係
本文:お名前、電話番号(緊急ご連絡用)をお書きください
※メッセージ等はご不要です
アドレス:info●ele-king.net 宛て(●を@に変えてお送りください)


■UNIT / root & branch presents
- Special Showcase in Tokyo -
THROWING SNOW (Houndstooth)

Pitchfork, Guardian, Dazed, Fact, Resident Advisor, XLR8Rなど大手メディアが早くからその動きを追いかけ、マッシヴ・アタック~ビヨーク~ジェイムス・ブレイクといったイギリス音楽の系譜に続く超大型ルーキー、全世界が注目する逸材スローイング・スノーの初来日公演決定! これぞ新世代のトリップホップ!

Live: THROWING SNOW (Houndstooth)
Guest Live: agraph, mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote), submerse (Project: Mooncircle)
DJ: Ametsub

2014.09.26 (FRI) @ 代官山 UNIT
Open/ Start 24:00 ¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door)

Information: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
Supported by P-VINE RECORDS
You must be 20 and over with photo ID.

Ticket Outlets: ぴあ(P: 242-392), ローソン (L: 72714), e+ (eplus.jp), Clubberia (www.clubberia.com/ja/store/), diskunion Club Music Shop (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO and UNIT
*ローソン/e+(8.30 発売)、ぴあ(9.3 発売)

■THROWING SNOW (Houndstooth)
ロンドンを拠点にスローイング・スノーの名前で活動するロス・トーンズ。彼はダブステップ、UKガラージ、ハウスからフォーク、パンク、ハードコア、メタル、そしてレゲエなど様々な音楽を聞いて影響を受けてきた。彼の音楽には心地の良い温かさと、光沢感のある冷たさが共存している。2010年にHo Tepレーベルからデヴュー・シングルをリリースし、その後はゴールド・パンダなどのリミックスを手がけてきた。ジャイルス・ピーターソンやベンジBの強力なサポートもあり、多くのラジオ番組にも出演してきた。 2011年にはDominoやNinja Tuneのような大手レーベルからリミックスの依頼が来るようになった。リリースもSuperやSneaker Social Club、Local Actionなどから続けてきた。2012年には大手音楽サイトのXLR8Rにポッドキャスト用のDJミックスを提供。2013年にはニューヨークで開催されたRed Bull Music Academyへの参加も好評だった。インターネット上でDJのプレイを生中継する人気サイトBoiler Roomにも何度も出演を果たし、ボノボ、アトモス・フォー・ピース、ジョン・ホプキンスなどの前座を務めてきた。またレーベル・オーナーとしても他のアーティストのリリースに協力している。Left Blank(レフト・ブランク)とA Future Without(ア・フューチャー・ウィズアウト)の共同オーナーでもあり、Vessel, Wife, Visionist, Lorca, Memotone, Young Echoなどが駆け出しの頃のリリースを手掛けていた。ヴォーカリストAugustus Ghostとの別プロジェクト、Snow Ghostsもここからリリースもしている。2014年には待望のアルバム『モザイク』に先駆けて『Pathfinder EP』を先にリリース。イギリスの現代のミュージシャンの中で最もユニークなアーティストとの一人としてデヴュー・アルバム『モザイク』は数多くの大手メディアから大絶賛された。
www.facebook.com/throwingsnow www.throwingsnow.co.uk

■agraph
牛尾憲輔のソロ・ユニット。2003年からテクニカル・エンジニア、プロダクション・アシスタントとして電気グルーヴ、石野卓球をはじめ、様々なアーティストの制作、ライブをサポート。ソロ・アーティストとして、2007年に石野卓球のレーベル "PLATIK" よりリリースしたコンビレーション・アルバム『GATHERING TRAXX VOL.1』に参加。2008年12月にソロユニット "agraph" としてデビュー・アルバム『a day, phases』をリリース。石野卓球をして「デビュー作にしてマスターピース」と言わしめたほどクオリティの高いチルアウト・ミュージックとして各方面に評価を得る。2010年11月3日、前作で高く評価された静謐な響きそのままに、より深く緻密に進化したセカンド・アルバム『equal』をリリース。同年のUNDERWORLDの来日公演(10/7 Zepp Tokyo)でオープニング・アクトに抜擢され、翌2011年には国内最大の屋内テクノ・フェスティバル「WIRE11」、2013年には「SonarSound Tokyo 2013」にライブ・アクトとして出演を果たした。一方、2011年以降は "agraph" と並行して、ナカコー(iLL / ex. supercar)、フルカワミキ(ex. supercar)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers / toddle)との新バンド、LAMAのメンバーとしても活動。2014年4月よりスタートしたTVアニメ「ピンポン」では、劇伴を担当。その他、REMIX、アレンジワークをはじめ、CM音楽も多数手掛けるなど多岐にわたる活動を行っている。
www.agraph.jp

■Ametsub
東京を拠点に活動。昨年は山口の野田神社で、霧のインスタレーションを交えながら坂本龍一と即興セッション。TAICOCLUBの渋谷路上イベントにてパフォーマンス。Tim HeckerやBvdubといったアーティストの来日ツアーをサポート。夏にはFLUSSI(イタリア)、STROM(デンマーク)、MIND CAMP(オランダ)といった大型フェスへ招聘される。アルバム『The Nothings of The North』が世界中の幅広いリスナーから大きな評価を獲得し、坂本龍一「2009年のベストディスク」にも選出されるなど、現在のシーンに揺るぎない地位を決定付ける。スペインのL.E.V. Festivalに招かれ、Apparat, Johann Johannson, Jon Hopkinsらと共演し大きな話題を呼ぶ。最新作『All is Silence』は、新宿タワーレコードでSigur Rosやマイブラなどと並び、洋楽チャート5位に入り込むなど、大きなセールスを記録。FujiRock Festival '12への出演も果たし、ウクライナやベトナム、 バルセロナのMiRA FestivalへActressやLoneと共に出演。今年はTychoの新作をリミックス、Plaidと共にスペイン発、Lapsusのコンピに参加。秋にはArovaneやLoscilらの日本ツアーをサポート予定。北極圏など、極地への探究に尽きることのない愛情を注ぐバックパッカーでもある。

■mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote)
兵庫県出身の音楽家、光森貴久によるソロ・プロジェクト。電子音楽レーベルmoph records主宰。これまでにアルバムをソロ/ユニット/ライブ・リミックス盤などで4枚リリース。downy、川本真琴、miaou、smoug等のリミックスの他、YMOのカバー集「YMOREWAKE」、またXperia™アプリ "Movie Creator" やGRAN TURISMO 6に楽曲提供。また、Sound & Recording MagazineにてCubase記事を短期連載やムック本への執筆なども行う。ライブも都内を中心に精力的に活動。SonarSound Tokyo, DOMMUNE, EMAF TOKYOなどにも出演。打楽器奏者Kazuya Matsumotoとのパフォーマンスは電子音楽の域を越えていると評判。海外ツアーも2011上海、北京、2012ベルリン、ロッテルダム、ミュンヘンなどを敢行。最新作はPROGRESSIVE FOrM x mophより ”Hyper Fleeting Vision” をリリース。7月にはそのリリース・パーティを13人の演奏家を迎え行い、成功を収めた。そこで出会った仲間とともに ”THE MERGRIM GROUP” を結成。更なる躍進へ望む。
www.mergrim.net www.mophrec.net

■submerse (Project: Mooncircle)
イギリス出身のsubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し、ビートミュージック、ヒップホップ、エレクトロニカを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/ビートメーカーとして知られている。これまでにベルリンの老舗レーベルProject: Mooncircleなどから作品をリリースしSonarSound Tokyo 2013、Boiler Room、Low End Theoryなどに出演。また、英Tru Thoughtsや仏Cascade Recordsなどのヒップホップ・レーベルのリミックス・ワークも手がける。2014年には待望のデビュー・アルバム "Slow Waves" がProject: Mooncircleとflauよりリリースされる。また、Pitchfork, FACT Magazine, XLR8R, BBCといった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。
twitter.com/submerse soundcloud.com/submerse facebook.com/submerse submerse.bandcamp.com YouTube.com/djsubmerse

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2014/09/26/140926_throwing_snow.php

 スローイング・スノーがついに初来日公演を行う。

 スローイング・スノーことロス・トーンズ。90年代のブリストル・サウンドを今日的に蘇生させるにとどまらず、自らもレーベル運営を行ってその新しい価値観を提示し、他のフックアップにも余念ないこの男は、まさにいまUKのクラブ・カルチャーの突端を走ろうとしている才能のひとつだ。
 Pitchfork、Guardian、Dazed、Fact、Resident Advisor、XLR8Rなど大手メディアが早くからその動きを追いかけ、マッシヴ・アタックとジェイムス・ブレイクをつなぐUKの超大型ルーキーとして注目してきたその姿を、われわれはついに初来日公演でうかがうことができる。新世代のトリップホップが列島に木霊する瞬間を見逃すことなかれ!

■UNIT / root & branch presents
- Special Showcase in Tokyo -
THROWING SNOW (Houndstooth)

Pitchfork, Guardian, Dazed, Fact, Resident Advisor, XLR8Rなど大手メディアが早くからその動きを追いかけ、マッシヴ・アタック~ビヨーク~ジェイムス・ブレイクといったイギリス音楽の系譜に続く超大型ルーキー、全世界が注目する逸材スローイング・スノーの初来日公演決定! これぞ新世代のトリップホップ!

Live: THROWING SNOW (Houndstooth)
Guest Live: agraph, mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote), submerse (Project: Mooncircle)
DJ: Ametsub

2014.09.26 (FRI) @ 代官山 UNIT
Open/ Start 24:00 ¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door)
Information: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
Supported by P-VINE RECORDS
You must be 20 and over with photo ID.

Ticket Outlets: ぴあ(P: 242-392), ローソン (L: 72714), e+ (eplus.jp), Clubberia (www.clubberia.com/ja/store/), diskunion Club Music Shop (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO and UNIT
*ローソン/e+(8.30 発売)、ぴあ(9.3 発売)

■THROWING SNOW (Houndstooth)
ロンドンを拠点にスローイング・スノーの名前で活動するロス・トーンズ。彼はダブステップ、UKガラージ、ハウスからフォーク、パンク、ハードコア、メタル、そしてレゲエなど様々な音楽を聞いて影響を受けてきた。彼の音楽には心地の良い温かさと、光沢感のある冷たさが共存している。2010年にHo Tepレーベルからデヴュー・シングルをリリースし、その後はゴールド・パンダなどのリミックスを手がけてきた。ジャイルス・ピーターソンやベンジBの強力なサポートもあり、多くのラジオ番組にも出演してきた。 2011年にはDominoやNinja Tuneのような大手レーベルからリミックスの依頼が来るようになった。リリースもSuperやSneaker Social Club、Local Actionなどから続けてきた。2012年には大手音楽サイトのXLR8Rにポッドキャスト用のDJミックスを提供。2013年にはニューヨークで開催されたRed Bull Music Academyへの参加も好評だった。インターネット上でDJのプレイを生中継する人気サイトBoiler Roomにも何度も出演を果たし、ボノボ、アトモス・フォー・ピース、ジョン・ホプキンスなどの前座を務めてきた。またレーベル・オーナーとしても他のアーティストのリリースに協力している。Left Blank(レフト・ブランク)とA Future Without(ア・フューチャー・ウィズアウト)の共同オーナーでもあり、Vessel, Wife, Visionist, Lorca, Memotone, Young Echoなどが駆け出しの頃のリリースを手掛けていた。ヴォーカリストAugustus Ghostとの別プロジェクト、Snow Ghostsもここか
らリリースもしている。2014年には待望のアルバム『モザイク』に先駆けて『Pathfinder EP』を先にリリース。イギリスの現代のミュージシャンの中で最もユニークなアーティストとの一人としてデヴュー・アルバム『モザイク』は数多くの大手メディアから大絶賛された。
www.facebook.com/throwingsnow www.throwingsnow.co.uk

■agraph
牛尾憲輔のソロ・ユニット。2003年からテクニカル・エンジニア、プロダクション・アシスタントとして電気グルーヴ、石野卓球をはじめ、様々なアーティストの制作、ライブをサポート。ソロ・アーティストとして、2007年に石野卓球のレーベル "PLATIK" よりリリースしたコンビレーション・アルバム『GATHERING TRAXX VOL.1』に参加。2008年12月にソロユニット "agraph" としてデビュー・アルバム『a day, phases』をリリース。石野卓球をして「デビュー作にしてマスターピース」と言わしめたほどクオリティの高いチルアウト・ミュージックとして各方面に評価を得る。2010年11月3日、前作で高く評価された静謐な響きそのままに、より深く緻密に進化したセカンド・アルバム『equal』をリリース。同年のUNDERWORLDの来日公演(10/7 Zepp Tokyo)でオープニング・アクトに抜擢され、翌2011年には国内最大の屋内テクノ・フェスティバル「WIRE11」、2013年には「SonarSound Tokyo 2013」にライブ・アクトとして出演を果たした。一方、2011年以降は "agraph" と並行して、ナカコー(iLL / ex. supercar)、フルカワミキ(ex. supercar)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers / toddle)との新バンド、LAMAのメンバーとしても活動。2014年4月よりスタートしたTVアニメ「ピンポン」では、劇伴を担当。その他、REMIX、アレンジワークをはじめ、CM音楽も多数手掛けるなど多岐にわたる活動を行っている。
www.agraph.jp

■Ametsub
東京を拠点に活動。昨年は山口の野田神社で、霧のインスタレーションを交えながら坂本龍一と即興セッション。TAICOCLUBの渋谷路上イベントにてパフォーマンス。Tim HeckerやBvdubといったアーティストの来日ツアーをサポート。夏にはFLUSSI(イタリア)、STROM(デンマーク)、MIND CAMP(オランダ)といった大型フェスへ招聘される。アルバム『The Nothings of The North』が世界中の幅広いリスナーから大きな評価を獲得し、坂本龍一「2009年のベストディスク」にも選出されるなど、現在のシーンに揺るぎない地位を決定付ける。スペインのL.E.V. Festivalに招かれ、Apparat, Johann Johannson, Jon Hopkinsらと共演し大きな話題を呼ぶ。最新作『All is Silence』は、新宿タワーレコードでSigur Rosやマイブラなどと並び、洋楽チャート5位に入り込むなど、大きなセールスを記録。FujiRock Festival '12への出演も果たし、ウクライナやベトナム、 バルセロナのMiRA FestivalへActressやLoneと共に出演。今年はTychoの新作をリミックス、Plaidと共にスペイン発、Lapsusのコンピに参加。秋にはArovaneやLoscilらの日本ツアーをサポート予定。北極圏など、極地への探究に尽きることのない愛情を注ぐバックパッカーでもある。

■mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote)
兵庫県出身の音楽家、光森貴久によるソロ・プロジェクト。電子音楽レーベルmoph records主宰。これまでにアルバムをソロ/ユニット/ライブ・リミックス盤などで4枚リリース。downy、川本真琴、miaou、smoug等のリミックスの他、YMOのカバー集「YMOREWAKE」、またXperia™アプリ "Movie Creator" やGRAN TURISMO 6に楽曲提供。また、Sound & Recording MagazineにてCubase記事を短期連載やムック本への執筆なども行う。ライブも都内を中心に精力的に活動。SonarSound Tokyo, DOMMUNE, EMAF TOKYOなどにも出演。打楽器奏者Kazuya Matsumotoとのパフォーマンスは電子音楽の域を越えていると評判。海外ツアーも2011上海、北京、2012ベルリン、ロッテルダム、ミュンヘンなどを敢行。最新作はPROGRESSIVE FOrM x mophより ”Hyper Fleeting Vision” をリリース。7月にはそのリリース・パーティを13人の演奏家を迎え行い、成功を収めた。そこで出会った仲間とともに ”THE MERGRIM GROUP” を結成。更なる躍進へ望む。
www.mergrim.net www.mophrec.net

■submerse (Project: Mooncircle)
イギリス出身のsubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し、ビートミュージック、ヒップホップ、エレクトロニカを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/ビートメーカーとして知られている。これまでにベルリンの老舗レーベルProject: Mooncircleなどから作品をリリースしSonarSound Tokyo 2013、Boiler Room、Low End Theoryなどに出演。また、英Tru Thoughtsや仏Cascade Recordsなどのヒップホップ・レーベルのリミックス・ワークも手がける。2014年には待望のデビュー・アルバム "Slow Waves" がProject: Mooncircleとflauよりリリースされる。また、Pitchfork, FACT Magazine, XLR8R, BBCといった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。
twitter.com/submerse soundcloud.com/submerse facebook.com/submerse submerse.bandcamp.com YouTube.com/djsubmerse

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2014/09/26/140926_throwing_snow.php




 世界中で静かな盛り上がりを見せているコールドウェイヴ/ミニマルシンセ・シーン。とくにカナダにはさまざまなレーベルが存在し、イヴェントも多彩、独自の発展を築いている。とりわけ〈Visage Musique(ヴィサージュ・ムジーク)〉がリリースするシンセ・ウェイヴ・ポップ・デュオ、Violence(ヴァイオレンス)は、音楽ブログ「Weird Canada」や「Silent Shout」などで特集が組まれたり、NYの老舗イヴェント〈Weird Party〉の後継である〈Nothing Change〉への出演などによって注目を集める存在だ。

 そんなViolenceが初めて日本にやって来る。おもに楽曲を担当するエリックと、どこか懐かしいメロディを耽美でキュートなウィスパー・ボーカルでなぞるジュリー。ふたりの来日を記念して、話をきいた。

文:寺尾拓也
翻訳:高橋美佳

Violenceはどうやって結成されましたか。

エリック:2010年頃、カナダのモントリオールからイギリスのオックスフォードに移った。ジュリーはオックスフォード大学でポスドクの職を得ることができたんだ。
 海外でたくさんの自由な時間と少しのシンセサイザーがあったということは、音楽を制作するという意味で、結果的にはとてもクリエイティヴで生産的な時間を与えてくれたんだ。そんな頃、家族や友だちに会いにカナダに帰った際に、僕らの初めてのコンサートをロフト・パーティで行った。
 自分たちの美学は当然として、そういった音楽や芸術、パフォーマンスやダンスのイヴェントが僕らの音楽を形づくった。Violenceは、そういったやりとりやフレンドシップの中で成長してきたし、いまだコンスタントにこのときの友だちやアーティストからフィードバックをもらったり交流することで成り立っているんだ。
 たぶん共通の知り合いからかな、どういった経緯か詳しくは知らないんだけど、〈Visage Musique〉の人たちが僕らの作品を聴いて、いっしょにやらないかと言ってきたんだ。

「Silent Shout」で“EP of the Year”に選ばれたり、「Weird Canada」で特集されたり、とても順調に思えます。

エリック:音楽のことをキャリアという視点で考えることはまずないんだけど、専門のブログにいいことを書かれるのは気持ちがいいね。このプロジェクトをはじめてから、とても興味深い人たちに出会えたし、素晴らしいアーティスト集団とステージを共有したり、見知らぬ人とアートや音楽について興味深い議論をすることになったんだよね。

どういった音楽に影響を受けましたか。また、最近気になっているバンドやミュージシャンはいますか。

エリック:作曲するときは無意識に影響を受けるのが好きなんだ。でなければ、単に自分を訓練する文体練習(※1)になってしまう。
 僕はグルックやバッハ、ロッシーニといった、クラシックやバロック音楽が本当に好きなんだ。現代の音楽だと、最近は90年代初期のテクノやハウスをたくさん聴いているよ。

※1 フランスの小説家、レーモン・クノーによる一つの物語を99通りの文体で書いた作品

最近よく聴いている5曲はなんですか。

ジュリー:わたしはつねに5曲以上好きな曲があるの。でも最近ではAutomelodi(オートメロディ)(※2)のLPをよく聴いているわ。

※2同じくカナダのダーク・シンセポップ・バンド。〈Wired Records〉などからのリリースがある

どんな音楽を聴いて育ちましたか。最初に影響を受けた曲は何ですか。

エリック:最初の音楽の記憶は、おじいちゃんが弾いてくれた自作のフォークかな。そのあと5歳の誕生日にレコード・プレーヤーをプレゼントにもらったんだ。ちょうどその頃、ディスコが終焉を迎えて恥ずかしくなった僕のおばさんたちが、その当時流行ってたディスコのレコードを100枚近くくれたんだ!
 僕とイタロ・ディスコの親和性は、絶対そこから来ていると思うんだよね。あとは、フランスのコメディやイタリアの映画、日本のアニメの音楽を楽しんでいた覚えがあるな。

ジュリー:わたしがまだ小さかったとき、叔父がピアノを勉強していて、バッハやモーツァルトみたいな有名なクラシックの曲を、ジャズにアレンジして弾いてくれたのにとても感動したし、何よりうれしかったのを覚えているわ。
 自分でかけた最初のレコードは、Angèle Arsenault(アンジェレ・アルセノ)の『Libre(リブレ)』。

機材は何を使っていますか。作曲はどのように行いますか。

エリック:80年代と90年代初期の、アナログ・シンセとデジタル・シンセを合わせて使っているよ。最近は僕たちがいままでに持っていたシンセサイザーの中で、プログラムの可能性という意味ではもっとも複雑なRoland MKS 80を買ったよ。
 僕らはゼロから自分たちの音を作るのが好きなんだ。普通どうやって曲を作りはじめるかっていうと、シンセサイザーのパッチを組むとその音が自分たちの気分を決めてくれるんだ。それを作り込んでからレイヤーと歌詞を足していく。僕らは普段、タッグを組んでいっしょに作曲している。

〈Visage Musique〉やレーベルメイトについて教えてください。カナダには〈Visage Musique〉や〈Electoric Voice〉、〈Pretty Pletty〉などのシンセ系のレーベルがいくつかありますが、最近のカナダの音楽業界についてどう思いますか。

ジュリー:創造を広めるための道具が増えて、生産を縮小できるという事実は好きよ。わたし個人としては〈Visage Musique〉のように、人をベースとした環境の中でともに創り上げて行くっていうやり方がうまくいくの。彼らは長年にわたって成長してきたし、世界中にいるわたしたちのアートを理解してくれているだろう人にどんどん近づいているのよ。これってこれまでの音楽業界と比べて、すごくいまっぽいことよね。

他の国にもアンダーグラウンドなシンセ・シーンがありますが、他の国のバンドに興味はありますか。影響を受けていますか。

エリック:もちろん興味があるし、海外の音楽シーンにも触れようとしているよ。僕はその出所よりも音により注意がいくから、どんな言語で歌われた歌を聴くのも楽しいんだ。

どういったファッションが好きですか。カナダのお勧めの店を教えてください。

ジュリー:たまに意外なとこですごく素敵なモノを見つけたりするけど、アクセサリーだけは「Missy Industry」っていう友だちがやってるお店で買うわ。あとはAmélie Lavoie っていうとてもおもしろいパターンを描く友人がいるんだけど、その子の作るシャツが本当に最高なの。

東京に来たらどこに行きたいですか。またなぜ東京に来ようと思ったのですか。

ジュリー:地元のアーティストがインスピレーションを受けている場所や、若い人たちが、自分を出せたり、実験できたり、生きてるなあって感じられるような……というのもわたしは専門的に都市にいるハシブトガラスを観察することにも興味があって、どうやって鳥が都市に適応するか、特別に賢い鳥が人間と同じように自然環境無しにどうやって餌を食べることができるのかというようなことをとても興味深く見ているの。(※3)

※3 ジュリーはオタワ大学の助教授で認知学の研究をしている

エリック:東京の代表的な建築物とか、インディ・レコード・ショップ、あとは中古の楽器屋でシンセが見たいかな。

東京でライヴをするのは楽しみですか。

ジュリー:待ちきれないわ! ライヴをはじめたときから、いつか東京でやりたいって思ってたの。モントリオールやロンドン、ニューヨークみたいな都市が好きだから、東京には一度も行ったことがないけれど、きっと東京も一瞬で好きになっちゃうわ。

いっしょに出演するJesse RuinsとNaliza Mooはどう思いますか。

エリック:つい最近彼らを見つけたんだけど、僕らの聴いたものは好きだよ。彼らといっしょにライヴするのが楽しみだ!

質問に答えてくれてありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いします。

エリックとジュリー:わたしたちといっしょに踊りに来て!


Violence来日公演

■The Invention of Solitude - Chapter 4
8月24日 日曜日 18:00 at 渋谷HOME
Charge: ADV. 1,500 / DOOR 2,000 (+1D)
LIVE: Violence (from Canada), Jesse Ruins, Naliza Moo
DJ: Yanagiszawa, Tack Terror, Naohiro

来日公演に先立ち DOMMUNEでのライヴ配信も決定
■The Invention of Solitude - Chapter 3.141592
8月20日 水曜日 21:00 at DOMMUNE
Live: Violence (from Canada), Jesse Ruins, Naliza Moo
DJ: Naohiro Nishikawa

 来日公演を記念して、海外のインディ・シーンともリンクする東京のアーティストによるViolenceのリミックステープのリリースが決定。リミキサーは初来日公演でもプレイするJesse Ruins、Naliza Mooに加えリミックスワークは初めてとなるギーク系轟音ギターバンドSlowmarico。都会の孤独に翻弄された一人シンセバンドLSTNGTの計4組。そこにViolenceの未発表曲、その名も『Violence』を加えた計5曲。タイトルはViolenceのエリックの入力によるGoogle翻訳を駆使したViolenceの日本語訳「すさまじさ」のローマ字表記で『Susamajisa』。東京の新レーベルSolitude Solutionよりリリース。

『Susamajisa - Violence Remixes』
A-1 Dernier Cri - Slowmarico Remix
A-2 Halo - Jesse Ruins Remix
A-3 Violence - Violence feat. William Crop
B-1 The Curse of Dimensionality - Naliza Moo Remix
B-2 Disappearances - LSTNGT Remix
Solitude Solition - KDK-1
価格: 1,000円(限定77本)
8月20日発売予定
soundcloud: https://soundcloud.com/solitudesolutions

Violence プロフィール
 カナダで活動するシンセ・ウェイヴ・ポップ・男女デュオ。男エリックによるミニマルでダークウェイヴでありつつも時折ディスコに接近するシンセサウンドに乗るどこか懐かしささえ覚える美メロを唄う女ジュリーの冷淡でありながら耽美でキュートなウィスパー・ヴォーカルが魅力。地元カナダのVISAGE MUSIQUEよりEP『VIOLENCE EP』と LP『ERLEBNIS』とをリリース済み。
bandcamp: https://violence.bandcamp.com/
soundcloud: https://soundcloud.com/violence-2/


Ben Frost - ele-king

 ベン・フロストとは何者か。新生スワンズ(本作『オーロラ』にはソー・ハリスが参加している)の“ジ・シーア”やビョークのリミックスを手掛けている? ティム・ヘッカーが本作のポスト・プロダクションを行っている? あれ、こないだの『WIRE』の表紙にもなっている? なぜ。惑星間レイラインの影響なのか(詳しくはビル・ドラモンド『45』参照)。本作からイメージされる宇宙チャネリング感を念頭におけば、それもあながち間違いではないかもしれない。惑星間レイラインはアイスランドからニュージーランドへ続くというし、メルボルンからそのメガ・パワーをたどることも不可能ではないだろう。この作品を聴くまで彼をほとんど知らなかった僕は、ググるたびに彼のセレブリティなプロフィールに圧倒されつつヒガミ根性をふつふつと沸き上がらせている。ベン・フロスト。オーストラリアはメルボルン出身、2000年代の初頭から活動をつづけ、現在はアイスランドのレイキャビクを拠点として北欧のエレクトロニカ・シーンを牽引するプロデューサーである。

 ヘソ曲がり全開なことを言えば、彼のバンドキャンプのページに記載されている「パンク・ロックやメタルとともにクラシックなミニマリズムに影響を受け云々」というくだりはやや不正確だ。モグワイやゴッドスピードのような、パンク・ロックやメタルに影響を受けたであろうポストロック、あるいはシガーロス等のシューゲイズは、逆にゼロ年代初頭のハードコアやメタルバンドへ甚大な影響を与えたのだ。あの頃は誰もがシンプルなリフで、センチメンタルかつやたらにドラマティックな楽曲を作っていた。ベン・フロストもその渦中にいたことは彼の過去作品を聴いても明らかである。個人的にはセンチメンタリストであることがパンクとメタルの本質ではないと強く思うゆえ、彼の音楽の根元にあるのはパンクとメタルじゃなくて、ポストロックやシューゲイズでしょう! というツッコミによって『オーロラ』のひとつの本質に迫っておきたいと思う。

 そして本作『オーロラ』ももちろん充分にセンチメンタル、かつドラマティックに展開される。ギターとピアノにかわり、硬質なエイベルトン・サウンドによる、映画『グラヴィティ』ばりの宇宙スペクタクルな世界観が聴者をブチ上げるだろう。新しいかといえばそういうわけでもないが、各音楽メディアの注目も含めてポスト・ハクソン・クロークな大ブレイクは間違いない。

Man From Tomorrow - ele-king

 GWの5月5日/6日に、フランスの映像作家ジャクリーヌ・コーによるジェフ・ミルズのドキュメンタリー・フィルム『Man From Tomorrow』のプレミア上映がおこなわれる。
 ジャクリーヌ・コーは、ピエール・アンリやピエール・シェフェールと並ぶフランスの(電子)現代音楽家、リュック・フェラーリのドキュメンタリー『resque Rien avec Luc Ferrari』(2003年)、デトロイト・テクノに思想的な影響を与えたラジオDJ、エレクトリファイン・モジョを追った『The Cycles of The Mental Machine』(2007年)、ジョン・ケージ、ラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒなどの60年代のミニマル・ミュージックをテーマにした『Prism’scolors,mechanicsoftime』(2009年)といった作品を発表している。ジェフ・ミルズの『Man From Tomorrow』は、今年2月2日、パリのルーブル美術館オーディトリアムにおけるワールド・プレミア上映では、入りきれない人が続出する程の盛況を博したという。電子音楽ファンにとっては、興味津々の上映だろう。
 東京:5/5(月・祝)、京都:5/6(火・祝)、上映後にはジェフとコー監督によるスペシャル対談もあり。東京分前売り券は先週より発売を開始しています!
 
 なお、ジェフ・ミルズは映画の同タイトルのDJツアーを同時期に開催。東京・名古屋・大阪の3都市を回るツアーは2012年10月ぶり。

『Man From Tomorrow』
U/M/A/A https://www.umaa.net/news/p681.html

■上映日程
タイトル:「Man From Tomorrow」(マン・フロム・トゥモロー)(2014年、フランス、40分)
監督:ジャクリーヌ・コー / 出演:ジェフ・ミルズ / 音楽:ジェフ・ミルズ

【東京】
日程:2014年 5月5日(月・祝)
会場:ユーロスペース(渋谷) https://www.eurospace.co.jp
時間:21:00 スタート 
 上映後トークショーあり: ジェフ・ミルズ、ジャクリーヌ・コー(通訳:門井隆盛)
問合せ・詳細:ユーロスペース TEL: 03-3461-0211  https://www.eurospace.co.jp

チケット: 前売:1600円/当日:1800円
4/4(金)10:00よりチケットぴあにて前売り開始 Pコード:552-935
チケット購入に関する問合せ:チケットぴあ TEL: 0570-02-9111 https://t.pia.jp/

【京都】 <同志社大学 日・EUフレンドシップウィーク>
日程:2014年5月6日(火・祝)
会場:京都市・同志社大学寒梅館クローバーホール
時間:18:00開場/18:30開演
 上映後トークショーあり: ジェフ・ミルズ、ジャクリーヌ・コー (通訳:椎名亮輔、下田展久)

チケット:料金:500円均一(当日のみ)*同志社大学学生・教職員無料
主催:同志社大学今出川校地学生支援課、同志社大学図書館
協力:Axis Records
詳細URL: https://d-live.info/program/movie/index.php...
問合せ:同志社大学今出川校地学生支援課 tel 075-251-3270 e-mail: ji-gakse@mail.doshisha.ac.jp


■ “Man From Tomorrow”について

 近年、音楽だけにとどまらず近代アートとのコラボレーションを積極的に行い、フリッツ・ラング『メトロポリス』への新たなサウンド・トラックや、パリ、ポンピドゥーセンターにおけるフューチャリズム展に唯一の生存アーティストとして作品を提供してきたジェフ・ミルズ。

 テクノ/エレクトロニック・ミュージックによる音楽表現の可能性を広げる彼が、現代のミニマル音楽(John CageからRichie Hawtinまで)に造詣が深く、デトロイトのElectrifying Mojoのドキュメンタリー『The Colours of the Prism, the Mechanics of Time』などでも知られる仏映画監督フランス人映像作家、ジャクリーヌ・コーとタッグを組んで今回発表する映像作品『Man From Tomorrow』は、なぜ彼が音楽を作るのか、テクノとは何のために存在するのかという疑問の答えを解き明かす映像による旅路だ。

 通常のドキュメンタリーとは一線を画したフィルムを作りたい、という二人の意思を実現していくためにジェフとジャクリーヌは1年以上に渡る話し合いを重ね、コンセプトを共有した。アーティスティックでエクスペリメンタルなこの映像の中には、ジェフの考えるテクノのあり方、音楽制作の過程、彼の想像する未来、また、大観衆の前でプレイする際に感じる不思議な孤独感(「One Man Spaceship」で表現しようとした宇宙における孤独感に通じるものでもある)などのすべてが凝縮され、同時に、テクノ・ミュージックの醍醐味を、DJイベントとは異なったスタイルで表現する試みでもあるという。まさにジェフ・ミルズの創造性・実験的精神をあますところなく体現する作品だ。

 『Man From Tomorrow』は今年2月2日、パリのルーブル美術館オーディトリアムでワールド・プレミアを行った後、ニューヨーク(Studio Museum of Harlem)、ベルリン(Hackesche Hofe Kino)にて上映を重ね、4/19にはロンドン(ICA)での上映を予定、その後、東京・京都での上映となる。

https://www.jacquelinecaux.com/jacqueline/en/documentaire-man_from_tomorrow.php


■Man From Tomorrow 各国PRESSより

デトロイト・テクノの魔術師ジェフ・ミルズとフランスの映画監督ジャクリーヌ・コーのコラボレーション作品は、ミルズの音楽と人生をユニークな方法で描きだし、彼の作品、思考そして想像力を通して 夢のような旅へと私たちをいざなう
── Institute of Contemporary Art (UK)

 ミルズの音楽がすばらしい。緊張感、飛躍感があり、しかししなやかな音はスタイリッシュでダークな映像と完璧にマッチしている」「このジャクリーヌ・コー監督のフィルムはルーブル美術館という最高峰のロケーションでプレミア上映が行われたが、それもミルズの最近のアート活動からすればひとつの小さな出来事だったのかもしれない
──『The WIRE 』(UK) by Robert Barry


■JEFF MILLS “MAN FROM TOMORROW” JAPAN TOUR event information

●名古屋公演 2014.05.02(金) @CLUB JB’S 名古屋  
OPEN:23:00
DJ:JEFF MILLS、APOLLO(eleven.)
LIGHTING:YAMACHANG
SOUND DESIGN:ASADA
info: www.club-jbs.jp

●大阪公演 2014.05.03(土) @LIVE & BAR ONZIEME  www.onzi-eme.com
OPEN:21:00
DJ:JEFF MILLS、KEN ISHII、SEKITOVA、LOE、and more
VJ:COSMIC WORLD、KOZZE
info: www.onzi-eme.com

●東京公演 2014.05.04(日) @AIR 
OPEN:23:00
DJ:JEFF MILLS -Opening till Closing set-
info: www.air-tokyo.com


■JEFF MILLS(ジェフ・ミルズ)

1963年デトロイト市生まれ。
デトロイト・テクノと呼ばれる現在のエレクトロニック・ミュージックの原点ともいえるジャンルのパイオニア的存在。高校卒業後、ザ・ウィザードという名称でラジオDJとなりヒップホップとディスコとニューウェイヴを中心にミックスするスタイルは当時のデトロイトの若者に大きな影響を与える。 

1989年にはマイク・バンクスとともにアンダーグラウンド・レジスタンス(UR)を結成。1992年にURを脱退し、NYの有名 なクラブ「ライ ムライト」のレジデントDJとしてしばらく活動。その後シカゴへと拠点を移すと、彼自身のレーベル「アクシス」を立ち上げる。1996年には、「パーパス・メイカー」、1999年には第3のレーベル「トゥモロー」を設立。現在もこの3レーベルを中心に精力的に創作活動を行っている。

Jeff Millsのアーティストとしての活動は音楽にとどまらない。シネマやビジュアルなどこの10年間、近代アートとのコラボレーションを積極的に行ってきている。2000 年フリッツ・ラングの傑作映画「メトロポリス」に新しいサウンド・トラックをつけてパリポンピドゥーセンターで初公開した。翌年にはスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」にインスパイアされた「MONO」というインスタレーションを制作。2004年には自ら制作したDVD「Exhibitionist」を発表。このDVDは HMV渋谷店で洋楽DVDチャート一位を獲得するなどテクノ、ダンスミュージックの枠を超えたヒットとなった。

2007年、パリのケブランリー博物館内展示の音楽担当やシネマテークでのシネミックスイベント (“Cheat” by Cecil B Demille / “Oktober” by Sergei Einstein / “Woman In The Moon” by Fritz Lang) などの功績が讃えられ、フランス政府より日本の文化勲章にあたるChavalier des Arts et des Lettresを授与。その後もポンピドゥーセンターでイタリア、フューチャリズム100周年記念の展示で唯一生存アーティストとして映像作品を展示したり、2012年には「Dancer Sa Vie」というエキシビションでJosephine Bakerをモチーフにした映像作品を展示。

同2012年には主催アクシス・レコーズの20周年記念として300ページにおよぶブック「SEQUENCE」を出版。2013年には日本独自企画として宇宙飛行士、現日本科学未来館館長毛利衛氏とのコラボレーションアルバム「Where Light Ends」をリリース。同時に未来館の新しい館内音楽も手がけた。

2014年、Jeff Mills初の出演、プロデュース映像作品「Man From Tomorrow」が音楽学者でもあるジャクリーヌ・コーの監督のもとに完成。パリ、ルーブル美術館でのプレミアを皮切りにニューヨーク、ロンドンの美術館などでの上映を積極的に行っており今秋からは世界中の映画祭にて上映される予定である。

■Jacqueline Caux (ジャクリーヌ・コー)

 フランス生まれの映画監督/音楽学者。長編ドキュメンタリーや短編エクスペリメンタルフィルムなどを制作し、各映画祭にも参加。レクチャーやキュレーションなども手がける。リュック・フェラーリに関する著書「リュック・フェラーリのほとんど何もない」は日本語訳本も出版されている。

主な作品:
« Contes de la Symphonie Déchirée » (“Tearen Symphonie Tales”) (2010年、54分)

Luc Ferrariの”Symphonie Dechiree” (音楽作品)をもとにしたフィクション
«Prism’scolors,mechanicsoftime» (2009年、96分)

1960 年代中盤から21世紀初頭における半世紀にわたるアメリカ、ミニマル音楽の歴史を探求。
John Cage, La Monte Young, Terry Riley, Steve Reich, Philip Glass, Meredith Monk, Pauline Oliveros, Gavin Bryars, Richie Hawtinが参加。
« The Cycles of The Mental Machine » (2007 年、57 分)
モーターシティ、デトロイトにおけるテクノの発祥を追うドキュメンタリー。”Electrifying Mojo”という謎めいたラジオDJ、Underground ResistanceのMike Banks、Carl Craigが参加。
« Presque Rien avec Luc Ferrari » (2003年、48分)

フランス人音楽家 Luc Ferrariの肖像。シューレアリズムからテクノ、そして具体音楽への道。

www.jacquelinecaux.com



 デッドビートと言って「おっ」と反応する人は、かなりの玄人。
 とはいえ、90年代末からどどどと出てきたベーシック・チャンネル・フォロワーのなかで、POLEに続いて、音にうるさい玄人たちから評価されたのがカナダのデッドビートだった。ことダブ好きにとっては、こと低音好きにとっては、デッドビートはいわばダブのレフトフィールド、つまり本物なのである。
 彼の新作は、かつてリズム&サウンドのMCとして名を馳せたティキマンとの共作。このリリースにともなう来日が来週金曜日、南青山ORIGAMIにてあります。
 共演は、ゴストラッドとレベル・ファミリア。ウルトラ硬派最新ダブの夜へようこそ。

3/21(金) DEADBEAT “The Infinity Dub Sessions” Release Party公演概要

 現行ミニマル・ダブのトップランナー、Deadbeatのリリース来日公演開催! さらにGOTH-TRADがExclusive Techno Setを披露し、なんと秋本“HEAVY”武士(ex.Dry&Heavy)とのユニットREBEL FAMILIAもライヴを敢行! 進化を続けるダブの最新型を体感せよ!

 ベルリンを拠点に活躍しScape、Wagon Repair、Cynosure、Musique Risqueeをはじめとする数多くの著名レーベルからリリースを重ね、ライヴ・アクトとしてもSonar、Transmediale、MUTEKといった世界各地のビッグ・フェスティヴァルに出演するカナダ人アーティスト、DeadbeatがTikiman名義でも知られているSt.Hilaireとのコラボレーション・アルバム『The Infinity Dub Sessions』をひっさげの来日!

 Deadbeatを共演をするのは、彼以上のアーティストは居ないといっても過言ではない日本が誇るサウンド・オリジネイター、GOTH-TRAD。なんと今回はなかなか聴く事ができないExclusive Techno Setを披露!! ミキシングを自在に操り、様々なアプローチでダンス・ミュージックを生み出し、MALA主宰によるレーベルDeep Medi Musikから数々の楽曲をリリース。ヨーロッパ~アメリカ~カナダ~オーストラリア~アジアでのツアー等、現在、日本人アーティストの中で年間最も世界中からオファーされ賞賛を浴びているアーティストの一人であるGOTH-TRADとDeadbeatの共演は見逃せません。

 さらに、そのGOTH-TRADと秋本“HEAVY”武士(ex.Dry&Heavy)とのユニット"REBELFAMILIA"がORIGAMIでLIVEを敢行!!!
 野外フェスティバルMETMORPHOSEでの衝撃のデビュー・パフォーマンスにはじまり、FUJI ROCK FESTIVAL等のGIGを経てROSSO、BOOM BOOM SATELLITES、ゆらゆら帝国等と共演。REGGAE LEGENDのMAX ROMEOとの楽曲など、今までリリースしたアナログはことごとく即日完売しオーディエンスから熱烈なプロップスを集める。その名を世界に轟かせる日本が世界に誇るREBEL FAMILIAが、ORIGAMIに新たな1ページを刻む。

 絶え間なく進化を続けるダブの世界最新型を体現するトップ・ランナー達がオンリーワンのサウンドシステムを持つ表参道ORIGAMIに集結する! 強力なスピリットを伴った力みなぎるダブ・テクノ、ベースミュージックの夢の共演をお見逃しなく。

[日程] 3/21(Fri)
[公演名] DEADBEAT “The Infinity Dub Sessions” Release Party
[OPEN] 22:00
[PRICE] 3,500yen

[出演]
MAIN FLOOR:
DEADBEAT
REBEL FAMILIA
GOTH-TRAD -Exclusive Techno Set-
DJ MIKU
SHIGETO TAKAHASHI

GALLERY FLOOR:
ngt. (rebel base)
SHIMAMU (Chord Memory)
HIROMI NOGUCHI (groundrhythm)
KATORI YOSHITAKA (Flowers)

[会場名] ORIGAMI
[住所] 〒107-0062
東京都 港区 南青山 3-18-19 FESTAE表参道ビルB1F(表参道交差点)
[電話] 03-6434-0968
[URL] https://origamientertainment.jp/
[facebook イベントページ]
https://www.facebook.com/events/1410325882558580/

DEADBEAT (BLKHRTZ / ~Scape / Wagon Repair / from Berlin)

 ベルリンを拠点に活躍するカナダ人アーティストScott Monteithのソロ・プロジェクトであるDeadbeat。Monolakeとのコラボレーション「Atlantic Waves」やStephen Beaupreとの「Crackhaus」としても知られる彼は、これまでにWagon Repair、Cynosure、Musique Risqueeをはじめとする数多くの著名レーベルからリリースを重ね、ライヴ・アクトとしてもSonar、Transmediale、MUTEKといった世界各地のビッグ・フェスティヴァルに招かれている。
 かつてScottは、数々のソフトシンセを開発しシーンの先端を切り開いてきたモントリオールのソフトウェア製作会社Applied Acoustics Systemsに務めていた。その最先端デジタル技術に関する広い知識と創作への深い探究心によって産み出されるサウンドはハウスやテクノから切れ味鋭いデジタル・サウンドによるダンスホール、または超重量級のダブまで変幻自在。名門レーベル~Scapeからリリースされた3枚のアルバムはBasic Channel系譜の金字塔作品としてカルトな人気を得ている。
 また、2008年発表のアルバム『Roots And Wire』は、Tikimanをフィーチャーしたダブ・ベースのトラックからテッキーなミニマル・テクノまでを展開。まったく新しい進化型ベルリン・サウンドはネクスト・ダブ・サウンドとして世界中のリスナーから絶賛された。
 2009年秋にはBEAMS RECORDSがスタートさせたコンセプチャルなミックスCDシリーズ『aLive 01』の第1弾アーティストとして作品を提供。エクスペリメンタルなスタイルに攻撃的で根太いグルーヴが独創的な内容となっている。
 2010年にリリースしたミックスCD『Radio Rothko』ではマスタリングにBasic Channelのエンジニアとして名高いPoleことStefan Betkeを迎え、現行ミニマル・ダブの集大成ともいえる作品を発表している。
 2011年には自身のレーベルBLKRTZをスタートさせ、アルバム『Drawn And Quartered』をリリース。また翌年にソロ名義8枚目のアルバムとなる『Eight』をリリース。2013年にはNYブルックリンのレーベルThe Agricultureの主宰のEscape ArtことJames Healyが新たに立ち上げたレーベルAir Textureのアンビエント・コンピレーション・シリーズ『Air Texture Volume III』をDJ Oliveと共に担当。
 そして2014年の3月にはTikiman名義でも知られているSt. Hilaireとのコラボレーション・アルバム『The Infinity Dub Sessions』をBLKRTZからリリースすることが決定している。


Sherwood & Pinch - ele-king

 ローレル・ヘイローのインタヴューを読んで彼女がホアン・アトキンスの名前を語っていることが嬉しかった。ジェイムス・ブレイクがFKやセオ・パリッシュを知り得たように、歴史を訪ねる若い世代がここにもいる。感覚だけで音楽を作っている人にはそれがない。OPNにあってヴェイパーウェイヴにないもの、ペヴァラリストにあってEDMにないもの、ことの是非はともかく、何にせよそこには大きな違いがあり、そのどちらを選ぼうが、どちらとも選ぼうが君の自由であります。

 引っ越したばかりの三田格が「ブリストルのドラム・ステップ」なる新しいジャングル(?)のスタイルにハマっている。「えー、聴いてないの?」「まさかー、信じられない」とか、メールでもYoutubeのリンクが送られて「『Wire』でもペヴァラリストの特集してる」とか。UKは、たとえロンドンがダメなときでも地方都市がある。とにかく彼にとってはいま「ブリストルがすごい」のだ。実のところ、現にブリストルに住んでいるYusaku Shigeyasu君からも強力に推薦されているので、リヴィティ・サウンド(ペヴァラリストらによるプロジェクト)の編集盤は聴こうと思っている。はからずとも、三田格とYusaku Shigeyasuが同じ方向を見ているというのも面白い。
 Yusaku Shigeyasu君の話によれば、ダブステップのシーンは急速に細分化している。いや、細分化はここ数年ずーっと言われ続けている。産業型レイヴへの反抗心が細分化をうながしているわけだが、彼が言いたいのは、飼い慣らされなかった連中の面白い創作活動がいよいよ作品となって顕在化していると、そういうことなのだ。ポスト・ダブステップを細分化の第一波と捉えるなら、いまは第二派ということか。

 ピンチは、ブリストルのダブステップ・シーンの草分けとして知られている。彼が2011年にシャックルトンと一緒に作った『Pinch & Shackleton』も細分化するダブステップの1枚に数えられる。あの作品でもダブ処理がポイントとなっていたが、リヴィティ・サウンドのコンセプトにもダブとサウンドシステムがある。「あり、俺たちが踊っているのは、こんな場所で良かったのか?」と気づいたときに、戻れる場所があることは文化として強い。UKのダンス・カルチャーはアンダーグラウンドに潜ろうとしている。インダストリアルも、そしてジャングル回帰もディープ・ハウス回帰も大きくはこの動きに組みしている。〈ハイパーダブ〉が、ジュークだけではなく、3年前にカイル・ホールのシングルを出したことは、いま思えば恐るべき先見性のあることだった。僕もあのときカイル・ホールに気がつかなければ、アリックス君がエレキングで原稿を書くことも、ブラウザ(BRAWTHER)の今週末のパーティ情報も載ることもなかったかもしれないし、ハウス・ミュージックをずっと追いかけている五十嵐慎太郎のような男からたとえ笑われたとしても、いまさらVakulaを探すなんてこともなかっただろう。〈プラネット・E〉がなにをいまさらテレンス・パーカー(というデトロイト・ハウスの大ベテラン)を出すのかも、さっぱりわからなかっただろう。
 いろんな場面で、いっきにいろんな動きが噴出しはじめている。こんな時期に、エイドリアン・シャーウッドのような大先輩がいることは、なんとも頼もしく思えるに違いない。ダブステップが自分たちでは手に負えないほど大きくなったとき、戻るべき場所のひとつであるダブの老練家が実はわりと身近にいたのだ。世代もジャンルも越えて、「ダブ」をキーワードに出会ったこのふたり、今年のソナー・フェスティヴァルでタッグとして初来日している。ほぼ同じ時期に、ピンチのレーベル〈テクトニック〉からシャーウッド&ピンチ名義としての最初の作品「Bring Me Weed」を発表している。

 本作は、今月29日に開催されるエレクトラグライドにシャーウッド&ピンチが出演することもあって、主催するビートインクが企画したEPである。くだんの“Bring Me Weed”の2ヴァージョンほか、新曲“Muisc Killer”が3ヴァージョン収録されている。
 飯島直樹さんのライナーによれば、“Muisc Killer”は往年のON-Uファンにはお馴染みのシンガーズ&プレイヤーズの1983年の曲、“Breaking Down The Pressure”の声をメインに使いつつ、リー・ペリー、マイキー・ドレッド、レベルMCらの声がミキシングされているという。個人的には1980年前後のクリエイション・レベルやプリンス・ファー・アイ&ジ・アラブスあたりのミキシングを思い出す。まあ、シャーウッドといえば、懲りもせずにその路線をずーっっとやり続けているわけなのだが……。スペイシーで、効果音で遊んでいて、そして、切り貼りされた空間にはダブステップ経路のリズムがしっかり混ざっている。先日、アルバムを発表したマシンドラムによるリミックスも収録されている。
 “Bring Me Weed”は、これまたON-Uファンには馴染深い“Weed Specialist”(オーディオ・アクティヴの作品としても知られている)を元ネタにしているそうだ。ドラッギーに空間がねじれていく“Weed Psychosis Mix”は最高だ。タチの悪い酔っぱらいにげんなりしてクラブから遠ざかっている人は、たとえばこういう音が鳴っている場所を探せば間違いないと思うよ。きっと、いつかダブの歴史を温ねることになるだろう。昨年のエレクトラグライドにエレキングが出店したとき、向かいのお店はダブストアだった。

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