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Sherwood & Pinch

DubDubstep

Sherwood & Pinch

Music Killer

On-U Sound/ビート

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野田 努   Nov 07,2013 UP

 ローレル・ヘイローのインタヴューを読んで彼女がホアン・アトキンスの名前を語っていることが嬉しかった。ジェイムス・ブレイクがFKやセオ・パリッシュを知り得たように、歴史を訪ねる若い世代がここにもいる。感覚だけで音楽を作っている人にはそれがない。OPNにあってヴェイパーウェイヴにないもの、ペヴァラリストにあってEDMにないもの、ことの是非はともかく、何にせよそこには大きな違いがあり、そのどちらを選ぼうが、どちらとも選ぼうが君の自由であります。

 引っ越したばかりの三田格が「ブリストルのドラム・ステップ」なる新しいジャングル(?)のスタイルにハマっている。「えー、聴いてないの?」「まさかー、信じられない」とか、メールでもYoutubeのリンクが送られて「『Wire』でもペヴァラリストの特集してる」とか。UKは、たとえロンドンがダメなときでも地方都市がある。とにかく彼にとってはいま「ブリストルがすごい」のだ。実のところ、現にブリストルに住んでいるYusaku Shigeyasu君からも強力に推薦されているので、リヴィティ・サウンド(ペヴァラリストらによるプロジェクト)の編集盤は聴こうと思っている。はからずとも、三田格とYusaku Shigeyasuが同じ方向を見ているというのも面白い。
 Yusaku Shigeyasu君の話によれば、ダブステップのシーンは急速に細分化している。いや、細分化はここ数年ずーっと言われ続けている。産業型レイヴへの反抗心が細分化をうながしているわけだが、彼が言いたいのは、飼い慣らされなかった連中の面白い創作活動がいよいよ作品となって顕在化していると、そういうことなのだ。ポスト・ダブステップを細分化の第一波と捉えるなら、いまは第二派ということか。

 ピンチは、ブリストルのダブステップ・シーンの草分けとして知られている。彼が2011年にシャックルトンと一緒に作った『Pinch & Shackleton』も細分化するダブステップの1枚に数えられる。あの作品でもダブ処理がポイントとなっていたが、リヴィティ・サウンドのコンセプトにもダブとサウンドシステムがある。「あり、俺たちが踊っているのは、こんな場所で良かったのか?」と気づいたときに、戻れる場所があることは文化として強い。UKのダンス・カルチャーはアンダーグラウンドに潜ろうとしている。インダストリアルも、そしてジャングル回帰もディープ・ハウス回帰も大きくはこの動きに組みしている。〈ハイパーダブ〉が、ジュークだけではなく、3年前にカイル・ホールのシングルを出したことは、いま思えば恐るべき先見性のあることだった。僕もあのときカイル・ホールに気がつかなければ、アリックス君がエレキングで原稿を書くことも、ブラウザ(BRAWTHER)の今週末のパーティ情報も載ることもなかったかもしれないし、ハウス・ミュージックをずっと追いかけている五十嵐慎太郎のような男からたとえ笑われたとしても、いまさらVakulaを探すなんてこともなかっただろう。〈プラネット・E〉がなにをいまさらテレンス・パーカー(というデトロイト・ハウスの大ベテラン)を出すのかも、さっぱりわからなかっただろう。
 いろんな場面で、いっきにいろんな動きが噴出しはじめている。こんな時期に、エイドリアン・シャーウッドのような大先輩がいることは、なんとも頼もしく思えるに違いない。ダブステップが自分たちでは手に負えないほど大きくなったとき、戻るべき場所のひとつであるダブの老練家が実はわりと身近にいたのだ。世代もジャンルも越えて、「ダブ」をキーワードに出会ったこのふたり、今年のソナー・フェスティヴァルでタッグとして初来日している。ほぼ同じ時期に、ピンチのレーベル〈テクトニック〉からシャーウッド&ピンチ名義としての最初の作品「Bring Me Weed」を発表している。

 本作は、今月29日に開催されるエレクトラグライドにシャーウッド&ピンチが出演することもあって、主催するビートインクが企画したEPである。くだんの“Bring Me Weed”の2ヴァージョンほか、新曲“Muisc Killer”が3ヴァージョン収録されている。
 飯島直樹さんのライナーによれば、“Muisc Killer”は往年のON-Uファンにはお馴染みのシンガーズ&プレイヤーズの1983年の曲、“Breaking Down The Pressure”の声をメインに使いつつ、リー・ペリー、マイキー・ドレッド、レベルMCらの声がミキシングされているという。個人的には1980年前後のクリエイション・レベルやプリンス・ファー・アイ&ジ・アラブスあたりのミキシングを思い出す。まあ、シャーウッドといえば、懲りもせずにその路線をずーっっとやり続けているわけなのだが……。スペイシーで、効果音で遊んでいて、そして、切り貼りされた空間にはダブステップ経路のリズムがしっかり混ざっている。先日、アルバムを発表したマシンドラムによるリミックスも収録されている。
 “Bring Me Weed”は、これまたON-Uファンには馴染深い“Weed Specialist”(オーディオ・アクティヴの作品としても知られている)を元ネタにしているそうだ。ドラッギーに空間がねじれていく“Weed Psychosis Mix”は最高だ。タチの悪い酔っぱらいにげんなりしてクラブから遠ざかっている人は、たとえばこういう音が鳴っている場所を探せば間違いないと思うよ。きっと、いつかダブの歴史を温ねることになるだろう。昨年のエレクトラグライドにエレキングが出店したとき、向かいのお店はダブストアだった。

野田 努