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Pinch & Shackleton

Pinch & Shackleton

Pinch & Shackleton

Honest Jon's Records

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野田 努 Dec 22,2011 UP

 シャックルトンといえば、5~6年前のデビュー時は怪奇趣味を弄ぶダブステップ界の異端児、変わり種だった。彼がロンドンでアップルブリムといっしょに営んでいた〈スカル・ディスコ〉は、アメリカのメタル・キッズが好むようなB級ホラー映画めいたヴィジュアルとエキゾティズム(アフロ・パーカッション、アジア、中近東の音楽からのサンプリングなど)をベース・ミュージックに調合することで、その当時も多くの目と耳を惹きつけていた。ほどなくして、その怪しげなミニマル・サウンドはリカルド・ヴィラロヴォスと結ばれている(それはベース・ミュージックが初めてベルリンのミニマルと接触した瞬間でもある)。
 10枚目の12インチ・シングルを発表すると、2008年、〈スカル・ディスコ〉は4年の寿命を終えた。アップルブリムはブリストルへ、そしてシャックルトンはベルリンへ移住した。そして"ノー・モア・ネガティヴ・ソーツ"という、それまでの〈スカル・ディスコ〉のイメージをひっくり返すかのようなタイトル名のトラックではじまる『Three EPs』(2009年)は、しかし確実に、〈スカル・ディスコ〉サウンドをアップデートしたものだった。彼のトレードマークであるパーカッションとベースラインはより有機的に絡みつき、ほかの誰とも違った独特のヒプノティックなグルーヴを編み出していた。ポスト・ダブステップにおけるデトロイト回帰でも、そしてベーシック・チャンネル回帰でもない......いや、ベーシック・チャンネルは少々入っているか。とはいえ、地下室に閉じこもっていた博士が研究の成果を見せるように、それは「まだこの手があったのか!」というサウンドであることはたしかで、多少気味が悪いかもしれないが、『Three EPs』以降のシャックルトンはダブステップから離れてオリジナルなサウンドを作ることのできた数少ないひとりとして、ずいぶん幅広く聴かれている。2010年にはすべてを自分の曲でミックスした『Fabric 55』(ある意味では、これがファースト・アルバムとも言える)を発表しているが、これは当時、ヴィラロヴォスのミックスCD以来の話題作になっている。

 本作は、そのタイトルが言うように、ブリストルのダブステップ・シーンにおけるパイオニア、〈テクトニック〉レーベルを主宰するピンチとシャックルトンのふたりによるコラボレーション・アルバムである。これが予想を上回るできの良さで、幽霊屋敷めいたはじまりは相変わらずだが、頭蓋骨を叩いているような2ステップ・ビートに超低音のダブのベースが響くオープニング・トラックの"Cracks In The Pleasuredome"からして最高だ。ダークウェイヴ、ネオゴシック、ウィッチハウスといった暗闇を歓迎する時代のモードともシンクロしているからだろうか、それともやはり彼らのグルーヴが特別に優秀なのか、とにかく身の毛もよだつこの音楽のなかに吸い込まれるように入っていける。
 骨がガチガチ鳴っているような"Jellybones"にしてもそうだが、この音楽をひとつ強いものにしているのは、音圧や音質、録音といったものの気の使いようにある。言うなればイヤフォンやパソコンで聴かれることを拒んでいるかのような、クラブ仕様の迫力のある音だ。それゆえにDJに好まれるのだろうけれど、この体感的なサウンドの魅力は家のスピーカーからも伝わります。
 "Burning Blood"から最後の"Monks On The Rum / Boracay Drift"までの展開はサイケデリックであるばかりか、不吉であることこのうえない。バッドトリップしがちな人ないしは暗いところが苦手な人にはオススメできないが、ダブの新しい展開、ダブステップのネクストのひとつを覗いてみたい人はぜひ聴いてみよう。トランスするならここまで徹底的にやって欲しいし、もう1ヶ月早く聴いていたら2011年のトップ10......いや、少なくともトップ20、いや、まあ、少なくともトップ50には入れていたであろうマスターピース。

野田 努