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先日マーキュリー・プライズ受賞の報をお伝えしたばかりだが、UKジャズを牽引する重要グループの一組、ロンドンのエズラ・コレクティヴの来日公演が決定した。11月28日、東京1日のみのライヴで、会場は恵比寿リキッドルーム。受賞でノリにノッている時期だけに、これは観ておかねばです。
最新アルバム『Where I'm Meant to Be』のレヴューはこちらから。
EZRA COLLECTIVE
LIVE IN TOKYO
2023/11/28 (Tue) LIQUIDROOM
詳細は以下より。
https://smash-jpn.com/live/?id=4051
あいにくの天気だった。夕方からぽつりぽつり、日が沈むころにはざあざあの状態。仕事を終え新木場へと向かう。駅の高架下にたむろする20人くらいの人影。終電はそろそろなくなる。その名のとおり材木置き場として知られるこの人工島はけして住宅街ではない。みんなおそらく、膨大な量のレコードを持参して上陸したデトロイトのヴェテランが目あての連中だろう。
セオ・パリッシュ。クリーンさに反旗をひるがえすかのようなくぐもった音響と実験的なサウンドでもって、ムーディーマンと並びハウス史に画期をもたらした男。Rainbow Disco Clubが手がける秋のオールナイト公演「Sound Horizon」の今年1回目は、レジェンドによる朝までぶっとおしのロング・セットだ。
雨風に吹かれながらびしょびしょの靴でアスファルトをしっかり踏みしめ、15分ほど左右の脚を交互に前へと運んでいく。会場はGARDEN新木場FACTORY。オープンしたのはまだパンデミックの最中だった2021年。個人的には初めて訪れるヴェニューだ。近づくと、彼の人気を裏づけるように長い列ができている。最後尾についてから20~30分。入口に迫ると、すでにプレイされている曲たちが漏れ聞こえてくる。けっこうな音量である。高まる期待。かねてよりのファンとおぼしき年上の方たちから20代の若者、旅行客らしき人びとまで、幅広い世代のオーディエンスが集まっているように見える。
序盤は変にアゲたり、つなぎの巧みさを披露したりというよりも、しっかり曲を聴かせるようなプレイだったように思う。ぼくが最初に昂揚したのは1時30分ころ、フェラ・クティの “Zombie” がかかったときだ。むろん場内も大盛りあがり。以降もジャズ・ファンクやエクスペリメンタルなシンセ・サウンドに混じって、リズム&サウンド “King in My Empire” やザ・コンゴスのようなダブ、あるいはヒップホップ・クラシック(シャザムによればEPMD “So Wat Cha Sayin'”)など、さまざまなタイプの曲が流れていく。メッセージも込みでセレクトされた盤たちなのだろう。それら多彩な選曲にはハウスやテクノとほかの音楽を分断しない、という彼のアティテュードがあらわれているように感じられた。周囲からは「やばい、やばい」の声。この日は少なくとも20回以上つき飛ばされたけれど、ふだん行くクラブ・イヴェントでそんなことはまずないので、やはりみんなそうとうサウンドに昂奮していたにちがいない。
全体的にハウスなモードに移行したのは3時前後だったのではないかと思う。このあたりからヴォーカルのない曲が増えてくる。シャザムはほぼ機能しない。4時台になるとわりとひとが減ってきて、踊るスペースが広くとれるようになる。曲もアシッディなもの、ウィアードな気配が存在感を増していく。最新作『Free Myself』からの “Spiral Staircase” を経たのち、5時半ころから6時ころにかけてはもうぶりぶりのアシッド・ワールド。仮設トイレが屋外にあるのでわかるが、まだ雨が降りつづけている。ふと「酸性雨」の語が思い浮かぶ。
その後はふたたびディスコやソウル、ジャズの路線へ。気がつけばいつの間にか7時をまわっていた。「これはまだまだ2時間でも3時間でもつづくのではないか」と思いはじめた矢先。アウトキャスト、ナイニー・ジ・オブザーヴァーにつづいて突如クラシック音楽の歌唱のような曲が工場を埋めつくした。残念ながら詞は聞きとれなかったけれど、なにか意図があったはずだ。びっくりしているうちに曲は次のゴスペルへ。シャザム先生によればザ・ダイナミック・クラーク・シスターズの “Ha-Ya (Eternal Life)”。時刻は7時32分。照明がつき、8時間以上におよぶロング・セットは幕引きとなった。

ひとことでは形容しづらい、さまざまなジャンルを越境するDJプレイだった。でもそこにはやはり「ブラック」の筋が太く一本通っていたように思う。合衆国のみならず、アフリカなども含めた広義の意味での「ブラック・ミュージック」。ロング・セットだから当然といえば当然なのだが、現在のデトロイトに焦点を合わせた『DJ-Kicks Detroit Forward』とも大いに異なっている。
もうひとつ印象に残っているのは、何度かクラックル・ノイズが激しく自己主張する曲がかけられていたこと。これまで数えきれないほど針を落としてきた盤なのだろう。爆音で響きわたるあのパチパチ・サウンドは神秘性さえ帯びていて、まるで魔法かなにかのようだった。アナログ・レコードによるDJだからこそ味わえることのできる、今日となっては貴重な体験だ。
そんな感じで余韻にひたりながら会場を後にすると、うまく歩けなくなっていることに気がつく。このがくがくの脚こそ今宵の充実を物語っている。8時間前に離脱したはずの駅をふたたび目指しはじめたとき、雨脚のほうもまただいぶ弱まっていた。
福岡のプロデューサー/DJの Olive Oil はおのれの信じた道を突き進む。エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーを好むこの特異なヒップホップのビートメイカーは、近年、たとえば MURO とのコラボや、直近でいえば沖縄のラッパーCHOUJIと組んだ昨年のアルバムのように、さまざまな共作をとおしてコンスタントに作品を発表しつづけているわけだが、このたびソロ名義としては2009年の『Space in Space』以来になるという、5枚目のアルバムを送り出すことになった。題して『No.00』。11月1日発売。インスト曲だけでなく、やはり沖縄の柊人が参加した曲などラップ入りのチューンも収録。なかでも注目なのは MILES WORD&SNEEEZE を迎えた紅桜の曲のリミックス、そして FEBB が亡くなるまえに制作されたというコラボ曲だろう。Olive Oil の新展開、これは目が離せません。
20周年を迎えたOILWORKSを牽引し、地球を舞台に活躍し続けるプロデューサー/トラックメイカーのOlive Oilが『Space in Space』以来となる5枚目のアルバム『No.00』をOILWORKS Rec.よりリリース!

アーティスト:Olive Oil
タイトル:No.00
レーベル:OILWORKS Rec.
フォーマット:CD
発売日:2023年11月1日
規格番号:OILRECCD034
バーコード:4988044848429
価格:3,000円(税込)
OZROSAURUS、OMSBのプロデュースワーク、DJ MUROとのコラボレーション作品など、幅広い活躍で国内外問わず熱い支持を集めるOlive Oil。
本作では、貫禄のビートは勿論、様々なアーティストも交じり合った全14曲を収録!! 生前に制作されたFEBBとの楽曲「MURDER ONE」、「紅桜 /悲しみの後 Remix」にMILES WORD、SNEEEZEを迎えた間違いないコンビネーションの「FAVORITE SONG」、沖縄を拠点に活動する柊人による「あなたがいいと」などを収録。
さらに、「ジャパニーズマゲニーズ / Lights On」でも使用された”REVENJAR LAS”から、多くのセッションを重ねてきたAaron Choulaiが「5lack(5O) / 早朝の戦士」のメロディを奏でた”TO BE CONTINUE SHAKE FINGA”、「Miles Word / WAKABA」を韓国のピアニストCHANNY Dが弾きなおした”WAKABA PIANO”など、聴き応え充分の内容です。プロデュースは勿論、ビートメイク、DJとしても存在感を残すOlive Oilだからこそ生み出る珠玉の1枚。
アートワークにはPOPY OIL、マスタリングには塩田浩が担当!
[Track List]
01. SUPER Cz
02. REVENJAR LAS
03. MURDER ONE feat.FEBB
04. MY RED BRIDGE
05. OBRDRNX
06. D YU R M IND
07. JUS P2
08. FAVORITE SONG feat. 紅桜 , MILES WORD , SNEEEZE
09. DNKN
10. AKI DANNA
11. あなたがいいと feat. 柊人
12. ASHICARAZUCAL
13. TO BE CONTINUE SHAKE FINGA
14. WAKABA PIANO
All Tracks & Produced by Olive Oil
Album Mastered by Hiroshi Shiota
Designed by Popy Oil
Piano by
・Trk13 - Aaron Choulai
・Trk14 - CHANNY D
Lyrics by
・Trk3 - FEBB
・Trk8 - (悲しみの後 Remix)紅桜 , MILES WORD , SNEEEZE
・Trk11 - 柊人
Mixed by
・Trk3,Trk8 - Green House st.
■Olive Oil profile
南の楽園設計を夢見る男
風は常に吹いている
人並外れた製作量と完全無欠のアイデアで世界を翻弄しつづける無比の個性
クリエイター集団OILWORKS
プロデューサー/リミキサー/DJ
ワールドワイドでありながらアンダーグラウンドシーンと密接に結びつく感覚は唯一無二。
『かすかなきぼう』から『ともしび』へ。こだま和文とザ・ダブ・ステーション・バンドは自分たちの役目を理解している。この暗い暗いご時世で、せめてもの心のこもった温かいレゲエを演奏すること。荒涼寂寞たる気持ちを抱えた人が、この音楽を聴いて少しでも幸せな気分を味わえるなら、バンドは本望なのだ。『ともしび』を再生しながら、ぼくは少しばかり良い気分になる。トランペットの音色は綿のように溶けて、トロンボーンの太い音色がその繊細な響きに温度をもたらす。ドラム、ベース、ギター、鍵盤は、惚れ惚れとするコンビネーションを見せ、いろんな表情を描いている。いつも思っていることだけれど、日本にザ・ダブ・ステーション・バンドがいて本当に良かった。来るものを拒まず、敷居も低く、大らかで、そしてこんなにも心が温まる演奏が立川方面にある。
『ともしび』はカヴァー集だが、ザ・ダブ・ステーション・バンドはもともとカヴァーを得意としてきたバンドで、最初のアルバム『 In The Studio』(2005)も、半分くらいがカヴァーだった。続く『More』(2006)も8割がカヴァーで、むしろ8割ほどオリジナルだった『かすかなきぼう』のほうがこのバンドでは異例だったが、今回は初の全曲カヴァー集だ。
ここでは古い曲ばかりが演奏されている。ピート・シーガーによる反戦歌 “花はどこへ行った” にはじまり、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズによるポジティヴ・ヴァイブレーション満開の “Is This Love” 、50年代のジャズのスタンダード曲 “Fly Me to the Moon” 、『ティファニーで朝食を』で、主演女優のオードリー・ヘプバーンが劇中で歌った “Moon River” 、そしてこだま和文のほとんどテーマソングといえるほど、何度も録音している1962年のオールディーズ “The End of the World” 。この曲は、1992年の傑作『クワイエット・レゲエ』および、同年にリリースされた、こだまプロデュースのチエコ・ビューティーの隠れ名盤『BEAUTY'S ROCK STEADY』にも収録され、また、このバンドでもすでに『More』で再演している(もちろんライヴでも演奏されている)。オリジナルはおそらく男女の別れを歌った曲だろうが、こだまは曲に別の意味を与え、この社会のなかの弱き人たちの絶望的な悲しみと希望の両義性を表そうとしている、とぼくは考える。
『トップボーイ』において、絵に描いたように不幸な家庭環境で育った元万引き少年のジェイソンが死ぬ場面ほど、切なく悲しいところはない。あの長編ドラマで、もっとも感傷的なシーンといえば、ジェイソンを死なせるにいたった放火の実行犯、拝外主義の若者のひとりにサリーが襲いかかり、何度も何度も血まみれになっても殴打し、そしてそのまま夜の海のなかに入って泣くシーンだろう。こうした、不条理極まりない、いかんともしがたい現実(悲劇)を前にどうしたらいいのか。ダシェンはサリーにいう。「俺はわからなくなる。俺たちがやっていることに価値はあるのか」、まさに実存は本質に先立つというヤツで、1960年代の空気を知っているこだま和文ももまた、まごうことなき実存主義的なヒューマニストである、ということは言うまでもないかもしれない。だが、それがアナクロニズムでないことは、UKでは『トップボーイ』が流行って、日本では多くの小中学生が『君たちはどう生きるか』を読んでいるわけだから、いろんなものが重なって、時代はこだま和文とザ・ダブ・ステーション・バンドと共鳴していると。いや、これはこじつけではないですよ。
ほとんどがインストゥルメンタルだが、“The End of the World”ほか、ヴォーカル入りも数曲ある。たとえばキャロル・キングの曲の洒脱なカヴァー “You've Got a Friend” は、本作におけるもっともキャッチーな曲のひとつとなっている。ちなみに今回もっともファンキーなのは“ゲゲゲの鬼太郎” の主題歌のインストゥルメンタル・カヴァー、もっともニヒルなのはこだまが歌うじゃがたらの “Tango” のカヴァーで、それまでの甘い雰囲気とは打って変わってこだまのヴォーカリゼーションはひどく毒づいている。
“Tango”はドラッグ中毒者を描いた曲としても知られているが、21世紀のTVドラマ『トップボーイ』では、それこそ食いかけのハンバーガーが散らかっている生活から抜け出すため、最下層を生きるギャングたちは商売にこそするが決してドラッグをやらないし、自分の仲間が(大麻以外の)ドラッグをやらないようつねに気をつけている(そう、売りこそすれ、やりはしない。これは後期資本主義の暗喩でもある)。だからと言うわけじゃないが、“Tango” はもう、ぼくには昔聴いたときの印象とは違って、より切羽詰まって聴こえる。そして、アルバムにおける唯一の汚れ役であるその曲に続くアルバムのクローサー・トラックは、こだまのもうひとつのテーマ曲といえる “What a Wounderful World(この素晴らしき世界)” のカヴァー、ルイ・アームストロングのこの有名曲もまた、こだまは両義性(二面性)をもって演じているわけだが、じっさいアルバムでは2回演奏される。『ともしび』の面白い構成である。
もうひとつ面白いと思ったのは、ジャケットのアートワークだ。これは、新橋駅あたりの地下道のワゴンで売ってそうなどこかの業者の作った名曲集か何かみたいで、その手のCDのように道ゆく酔っぱらいがふらっと偶然買うなんてことがあればいいのに、と思う。誰かの家で再生されて部屋を少しだけ暖めはするだろうし、そのためのこれはささやかな「ともしび」なのだ。
