「PAN」と一致するもの

interview with Shonen Knife - ele-king


少年ナイフ
嵐のオーバードライブ

Pヴァイン

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 「ロックでなければ何でもいい」という、ザ・ワイア―の有名な発言はポストパンクの精神を表すひとつのステートメントとなっている。
 少年ナイフもそんな時代に音楽に目覚め、パンク/ニューウェイヴの影響のもとに活動をはじめたバンドのひとつだが、そんな彼女たちの2008年のアルバム『Super Group』の帯には「ロックなら何でもいい!!」と書かれている。ずっとまっすぐにロックと向き合ってきた彼女たちはいまやロックの日本代表といった趣だ。

 そして結成から30年以上の間に幾度かのメンバーチェンジを経て、現在のメンバーとなっての3作目のアルバムとなる新作『嵐のオーバードライヴ』は、少年ナイフのトレードマークであるラモーンズ・スタイルのパンクポップを封印、なんと70年代へのオマージュに溢れたハードロック・ナンバー満載のアルバムとなった。
 シン・リジィを思わせる“Bad Luck Song”からはじまり、ブギー・ロックあり、ブラック・サバスやジューダス・プリーストを思わせるハードロック・チューンあり、それでいて食べ物や猫が登場するお馴染みの歌詞世界はもちろん健在。
 数ある少年ナイフのアルバムの中でも異色作となったこのアルバムについて、3月某日、新代田FEVERでのロックの楽しさのすべてがつまったライヴの後に、楽屋で話を聞かせてもらった。

70年代後半の頃は、ハードロックとかはその前から王道であって。新しくパンクとかニューウェイヴが出てきたので、当時は自分はまだ若かったから新しいものが好きと思って。王道のロックとかは、そんなんおっさんくさいと(笑)、反発してあんまり聞かなかったんですね。

まずは今日のライヴ、お疲れ様でした!

一堂:ありがとうございます!

今日は“Goose Steppin' Mama”をやってましたけど、あれはやはりラトルズ来日記念ということで?

Naoko:そうなんです、ラトルズが来るからというので今回のセットに入れました。だけどラトルズが来るときには私たちがいないという。

Ritsuko:残念なんですー。

Naoko:私たちがヨーロッパに行っているときにラトルズもヨーロッパをちょっと回ってそこから日本に来るみたいなので。ライヴが見られないのが残念です。

あらあら、それは残念ですね……。では早速新譜のお話をうかがいたいと思います。前作は『POP TUNE』というタイトルのとおりのカラフルでポップなアルバムでしたが、今回は『嵐のオーバードライヴ』というタイトルが発表になった時点できっとロック・アルバムになるんだろうと思ってたんですね。で、実際に聴いたところ、これがもう思っていた以上だったというか。

一堂::(笑)

Naoko:そう言っていただけると嬉しいですね。全部野太い曲にしようと思ってたんですけど、案外猫ちゃんの歌ができちゃったりして、ちょっと息抜きする曲も入ったんですけど。

そうですね、適度に入ってる感じで。

Naoko:基本は図太い感じ。70年代の。

アルバム1曲目の“Bad Luck Song”は今日のライヴでもお披露目してましたし、PVも作られているということで、アルバムのリードトラックみたいな位置づけだと思うんですが、このイントロの時点でもうシン・リジィ(※70年代に活躍したアイルランドのロック・バンド)あたりを彷彿と。

Naoko:そうですね、シン・リジィに影響を受けてます。“Boys Are Back in Town”とか大好きで。

「この曲を聴くとどうもツイてない、何かよくないこと」が起こるというような曲があるんだけど、ひょんなきっかけから逆に幸運を呼ぶ曲だと思えるようになった、というような内容ですが、あの歌詞は何か実話から?

Naoko:はい、経験にもとづいて──今日初めて人前でタネを明かすと、レッド・ツェッペリンの“天国への階段”が私にとってのバッドラック・ソングで。あの曲を聴くと悪いことが──と言ってもそんなシリアスな悪いことじゃないですけど、たとえば電車を乗り過ごしたり。

道に迷ったりとかですね。歌詞によると。

Naoko:まさしくその通りで。そういう経験をもとに書いたんですけど、そこで発想を転換して、逆に思えばよくなるんじゃないかなと思って歌詞を書きました。

ロンドンの地下鉄でその曲を歌っていたスターを見た、と歌詞に出てきますが、それも実際に?

Ritsuko:会ったんですよね、たしか?

Naoko:ロンドンのベイズウォーターていう地下鉄の駅を上がったところにある電器屋さんでジミー・ペイジを見かけたんです。

Ritsuko:あの歌詞はそのことやな、って思いました(笑)。その話聞いてたんで。

Naoko:何年前やったかな?

Ritsuko:2年前ですね、たしか

Naoko:イギリスとヨーロッパのライヴツアーに行く数日前にロンドンに入って、ちょっと観光してたんですよ。泊まってたのがそのベイズウォーター駅の近くで。地下鉄に乗る前にちょっと電池買お、と思って電器屋さんに入ったら「こ、この人!」っていうオーラを感じまして。ジミー・ペイジらしき人と、マネージャーみたいな若い男の人とふたりでいて。その人たちはお店を出てすぐにタクシーを拾ってどこかに行ったんですよ。駅前だからどこかに行くならそのまま地下鉄に乗るだろうけど、タクシーを拾ったということは有名人なんだろうと思って、確信を深めたんです。白いロングヘアーの背の高いひょろっとした人でした。

へえー。1曲目からそうでしたけど、たとえばえみさんが歌う“Green Tea”なんかもブラック・サバスを思わせますし。

Naoko:あの曲は特に何っていう意識はないんですけど、70年代のハードロックを念頭に置いて作ったらああいう曲ができました。で、ドラムのえみさんは京都出身なので京都といえばやっぱりお茶だと。

Emi:フフフ。

Ritsuko:お抹茶ですよね。

Naoko:だからえみさんに歌ってもらおうと。

それで言うと、やっぱりりつこさんと言えばラーメンということで“Ramen Rock”を(笑)。

Ritsuko:たぶんわたしがふだん言ってることをそのまま歌詞にしてくれたんだと思います(笑)。

Naoko:ライヴのあとによくラーメン屋さんに行ったりして。

Ritsuko:そうなんです。ほんとに事実そのままです。いつもラーメンライスセット、もしくはラーメン唐揚げライスセットを。

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外国の人の場合だったら「新曲聞いてシン・リジィを思い出した!」とか、ELOを思い出したとか、KISSがどうだとか、わーっとそういう70年代のバンドの話で盛り上がるから。アメリカやらヨーロッパの人にとっては70年代ロックっていうのはロックを聴く基本だから、みんな誰もが知ってるベーシックな知識というか。日本のひとはちょっと違いますけど。

前にライヴのMCでも、イギリスツアーの時に一番よかったのはラーメンにありつけた時だったみたいなことをおっしゃってましたよね。

Ritsuko:そんなん言ってました、わたし!? でも……事実です(笑)。アメリカだとロサンゼルスに一か所、日本のラーメン屋さんが──。

Naoko:山頭火。

Ritsuko:山頭火ラーメンが食べれる日本のショッピングモールがあるですけど、イギリスにはなかなかなくて。わたしからしたらほんとに約1ヶ月以上もラーメンを食べれない日々が続くわけなんですけど。そのなかでまさかロンドンで、しかも本当にクオリティの高いラーメンが食べれたんで感動して(笑)。

前にお話をうかがった時に、曲を書く時点ではあまり誰が歌うかという、当て書きみたいなことは考えないっておっしゃってたと思うんですけど。

Naoko:はい、前回は作らなかったんですけど、今回はちょっと意識して何曲かは書いてみました。

それはやっぱり、いまのメンバーが馴染んできたという?

Naoko:いまのメンバーが最高だと思っているからです!

たとえば他の方に曲を提供するような機会って、多くはないけどまったくないわけではないですよね?

Naoko:そうですね、昔だと篠原ともえさんとか。うーん、でもあんまりないですね。

最近だとタルトタタンの『グーテンベルクの銀河系』に提供した“バーチャルディスコ”がありましたけど、あれはまあ曲自体は既存(“チャイニーズ・ディスコ”)の──

Naoko:ちょっと焼き直しで、歌詞を考え直しました。

そういうときってやっぱり歌い手のことを想定するんですか?

Naoko:えーと、その時点ではあんまり考えなかったんですけど、いまもし頼まれたらたぶん考えると思います(笑)、ちょっと成長したので。

いまのメンバーということでいうと、新譜の「Shopping」はブギーみたいな感じですけども、ああいうノリはいままでのメンバーではちょっとなかったんじゃないかと。それも含めて70年代ロック・サウンドというのはいまのメンバーだからできるというのがあるのかなと思ったんですが。

Naoko:いまのメンバーはなんでもフレキシブルにできるから。70年代ロックにしたのはたまたま前のアルバムをポップにしたから、次は何しよかなと思ったときにそういう風にしようと、アルバムのカラーをつけただけの話で。いまのメンバーはオールマイティなので何でもできると思います。ロックでも、ダンスでも。踊りも上手いし(笑)、演歌はどうかな?

Ritsuko:(笑)。でも、今回はなおこさんの、趣味というと変ですけど、好み全開やなっていう。

Naoko:好きなものですねえ。

Ritsuko:前作は少年ナイフのポップな面で、今回はなおこさんのいまはまってる感じというか。近年はずっと70年代のハードロックにはまってらっしゃるので(笑)、それをずっとそうやって聴かされてて。わたしは実は70年代のハードロックはあんまり通ってなかったんですけど、今回はそれで聞かされて……がんばりました(笑)。

Emi:同じく(笑)。

Ritsuko:あんまり自分のなかにないものだったので、ちょっと苦労したかもしれないですね。

Naoko:わたしが”スクール・オブ・ロック”の先生ということで。ジーン・シモンズが中高生にロックを教えにいくテレビ番組があって、あと映画でもそういうのがあったし。

Ritsuko:ああ、『スクール・オブ・ロック』めっちゃ好きですよね。

Naoko:そういう感じでやってます。

少年ナイフのリスナーもあまり70年代ハードロックには馴染みがないんじゃないかと思うんですけど、お客さんにもこれを通じてそういうサウンドの魅力に触れてほしい、みたいな思いはあるんですか。

Naoko:日本のお客さんはちょっとわからないけど、アメリカとかヨーロッパ、イギリスのお客さんはまさにそういうのが好きな人たちなんです。70年代ロックとかが好きな人が多いので。

あ、そうなんですか、へえー。むしろストライクとか?

Naoko:まさにストライクだと思います。お客さんとそういうバンドの話をして盛り上がるくらいの世界やから。Twitterでメッセージをくれるような人も、外国の人の場合だったら「新曲聞いてシン・リジィを思い出した!」とか、ELOを思い出したとか、KISSがどうだとか、わーっとそういう70年代のバンドの話で盛り上がるから。アメリカやらヨーロッパの人にとっては70年代ロックっていうのはロックを聴く基本だから、みんな誰もが知ってるベーシックな知識というか。日本のひとはちょっと違いますけど。

Ritsuko:でも少年ナイフのリード曲ってだいたいポップじゃないですか、“ロケットに乗って”とか。そこがまさにザ・少年ナイフなんですけど。でもわたしもファンだった頃に“アントニオバカ貝”とか“コブラvsマングース”とか、“トマトヘッド”とか、ハードな曲にめっちゃハマったんですよね。なんで、たぶんナイフを好きなひとはその両局面を好きなんじゃないかなとわたしは思ってるので、前作がポップな局面のアルバムで、今回はちょっとハードさを出して、どっちも受け入れられるのではないかと思ってます。

たしかに去年あたりはハードな曲だけでセットを組んだライヴもやられてましたよね。

Naoko:大阪で3回やって、東京でも1回やったかな。

Emi:けっこう喜んでもらってるような気がするんですけど(笑)。

Ritsuko:やってても楽しい。ライヴ映えしますからね、やっぱりハードな曲って。頭のふり甲斐があるというか(笑)。

ライヴで手応えを感じた部分もあったかもですね。

Naoko:そうですね。

あと新譜の曲でいうと“Robots from Hell”がすごいジューダス・プリースト(※70年代〜80年代に活躍したバーミンガムのメタル・バンド)だなあと思いました。

Ritsuko:ああー。

Naoko:ジューダス・プリーストはここ数年すごいハマってて。で、とくにあの曲がジューダス・プリーストを意識したっていうことではないけど、やっぱり影響はすごく受けてるので作っている間にそういう風になったんです。歌詞の方は“ロボッツ”というのはいまボーカロイドがすごく流行っているので、ロボットが歌ってるみたいなそういう歌詞。

ああ、そうなんですか。ジューダスのジャケに出てくるようなロボットをイメージしてました。

Ritsuko:初音ミクですね、どっちかというと(笑)。

Naoko:鏡音リンとか。子供たちとか若い人がボーカロイドみたいなのに洗脳されてるのんちゃうか(笑)、みたいなことを感じたので、そういう歌詞を書いたんです。

なるほど、タルトタタンに提供したやつもちょっとそれっぽい歌詞でしたよね、そういえば。

Naoko:そうですね、人間性よりも機械みたいな世界になってきてるんじゃないかなと思って書いた歌詞です。

インターネットとかSNSは苦手だったりしますか?

Naoko:危険もあるから、あまり自分のプライヴェートとかは明かさないようにはしてます。嫌いとかではないですよ。使いようやと思います。どっちかというと世界中の人たちと同時につながれるから面白い。わたしたちみたいなバンドは世界中に行ったり世界の人たちとやりとりをしないといけないから便利ですよね。あとは新しいアルバムの“Like a Cat”という猫ちゃんの歌でも、猫ちゃんの画像を世界の人から募ってアップロードしてもらって、それを集めてヴィデオを作ろうという企画をしていて。やっぱりそれはネットがあるから世界中から自慢の猫ちゃんを送ってもらうことができますよね。

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「なんちゃって」70年代ハードロックみたいになるのが少年ナイフの味やと思うので。少年ナイフがハードロックをやったらこうなった、みたいなのが聴きどころだと思ってます。ハードロックだけど、ちょっとファニーな。本当に悪い、ワルな感じではなくて(笑)。ワルっぽく歌ってるけどラーメン・ロックだったり(笑)、中身はやっぱり少年ナイフだなあって。

なるほど。先ほどMCでも6週間のツアーがはじまるとおっしゃってましたが、長い海外ツアーに出るのはもう完全に毎年の予定に組み込まれた感じですね。

Naoko:アメリカとヨーロッパはもうここ10年くらいは。あとは最近は台湾とかオーストラリアとか。

行ったことのないところで行ってみたいところはありますか?

Naoko:南米とか行ってみたいかな。

Ritsuko:ああー、南米行ったことないですね。

Naoko:ブラジルとかアルゼンチンとかメキシコとか。わりとその辺の方でナイフを好きと言ってくれる方がいるので。アメリカだったらサンディエゴなんかでライヴをやるとメキシコから来てくれるお客さんが多いし。南米は行ってみたいかな。

Ritsuko:CJラモーンが、南米は世界一クレイジーに盛り上がるよって言ってたので(笑)行ってみたいですね。

そうそう、ラモーンズがブラジルでものすごく人気あったんですよね。

Naoko:『アディオス・アミーゴス』っていうくらいやから。

Ritsuko:だからきっと受け入れてもらえるんじゃないかと(笑)。

Naoko:あとはアラブの大富豪のパーティで演奏するのに呼んでほしい(笑)。最近はイギリス行くときにいつもカタール航空に乗るのでドーハで乗り換えたりするんですよ。だからアラブに行ってみたい。

去年くらいからだと思いますけど、国内も今までは東名阪くらいだったのがもっといろんなところに行くようになってますよね。

Naoko:この7月は初めて鹿児島に行くことになりましたし。もっと日本中回りたいけど。

Ritsuko:行きたいですね。イギリス国内を回るくらい日本も回りたい(笑)。

Naoko:イギリス国内だけで20か所とか回りますからね。もっとか。

Ritsuko:日本で全国ツアーね、回ってみたいですよね。

Naoko:でもやっぱりイギリスなんかは、どんな小さな町に行ってもみんなが音楽をすごく好きだから。若い人から年行った人までライヴハウスにも常連さんみたいな状態で見に行ってて、どんなバンドが来ても楽しんで面白いと思ったらCDをちゃんと買ってくれたり。日本だったらちょっと年行った人はライヴハウスには行きづらいけど、イギリスとかは楽しくお酒を飲んで音楽を聴くっていう感覚で近所の人がいっぱい来るから、音楽にはいい状況だと思います。

生活に密着してるんですかね。

Naoko:そうですそうです。

CDを買っていくといえば、今日もみなさん最後まで物販をやられてましたよね。先日ネットでちょっと話題になったブログ記事あって、要するにアイドルの子たちはライヴが終わるとすぐにブースに行って物販をやって1枚でも多くCDなりグッズなりを売るように頑張ってると。で、ロックバンドはそういうのをスタッフに任せてるようなのが多いけど、それでCDが売れないとかぼやいてないで、そういうところは見習ったほうがいいんじゃないかみたいな話だったんですね。それでロックバンドでライヴ後すぐ物販ブースに行く人たちというと、少年ナイフとラフィン・ノーズのポンさんが真っ先に思い浮かんだんですが(笑)。

Naoko:(笑)。意外とアメリカ・ツアーを一緒にまわったバンドなんかは自分たちで車を運転して自分たちでライヴをやって、物販も自分たちで売ってるみたいな人ばっかりですけどね。ばっかり。

ああ、じゃあそういう感覚からするとむしろそっちのほうが普通というか。

Naoko:普通かなと思いますね。お客さんとしゃべるのも面白いし。お客さんがちやほやしてくれはったら嬉しいですよね(笑)。

今回のアルバムはなおこさんの70年代ロックが好き! っていうのが反映されたアルバムになっていると思うんですけど、もともとはラモーンズだったりバズコックスだったりXTCだったり、パンク/ニューウェイヴが原体験としてはあるわけですよね。どちらかというと70年代ハードロックみたいなのは後追い的に聞いていった感じだと思うんですけど。

Naoko:そうですね、はい。

それはやはりニューウェイヴとはまた違った魅力がありましたか。

Naoko:70年代後半の頃は、ハードロックとかはその前から王道であって。新しくパンクとかニューウェイヴが出てきたので、当時は自分はまだ若かったから新しいものが好きと思って。王道のロックとかは、そんなんおっさんくさいと(笑)、反発してあんまり聞かなかったんですね。王道でもビートルズは中学生くらいからずっと聞いてたんですけど。70年代後半はパンク/ニューウェイブをずっと聞いてて。そこから大人になってあらためて70年代のアメリカやイギリスのロックを聴いたら「こんなにかっこよかったんだ!」と。そこからずっとハマって聴いてます。

たとえばハードロックなんかだと髪を振り乱してギターを弾くみたいなちょっと大仰なアクションがあったりしますよね。そういうのはニューウェイヴのノリとはちょっと違うと思うんですが、少年ナイフはパロディというんでもないけど、微妙に距離を置きつつ取り入れてるようなイメージがありますけども。

Naoko:ロックはロックでも80年代の、ボン・ジョヴィとかポイズンとか、あと何があったかな。

モトリー・クルーとか?

Naoko:そんなんなるとわたしはちょっと聴かなくて、それよりも前の70年代のバンドのフリみたいなのは好きで影響を受けてます。

逆に新しい音楽にインスパイアされるようなことはあまりないですか?

Naoko:いま新しくて面白いのは何ですか(笑)? 逆に聞きたいですけど。

Ritsuko:わたしは何でも、流行りの曲もそれなりに聞きますし、上手いことそのへんにインスパイアされたうえでのいま、という感じですけど。すっごくハマったりは最近はしてないけどそれなりに聴きはするしCDも買います。流行りってこんな感じかーとか。

Naoko:昔にあったバンドだけど知らなくて、新しく知って「へえー」みたいなのがあって。つい最近はロビン・トロワーを最近知って買って聴いたりとか。あと、ちょっと前やけどウィッシュボーン・アッシュを買って「かあっこいい!」と思ったり。それは昔はバンド名だけしか知らなくて、見かけがちょっとおじさんぽいというだけで嫌いだったけど、今は見かけよりも音楽が面白かったらピピッてくるんです。ファンクだったらコンファンクシャンていうのを教えてもらって「うわ、かっこいい!」と思ったり。それが新しい発見。

なるほど、まあ出会ったときが新しい時ですもんね。

Naoko:そうです(笑)。わたしにとってはそれが新しい。


少年ナイフ
嵐のオーバードライブ

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では最後にニュー・アルバムはいままでのナイフのアルバムとはちょっと違う感じだと思うんですが、こういうふうに聴いてほしいというか、聞き所を。

Naoko:聴きどころは……今までのナイフの曲はパンクとかニューウェイヴとかパワーポップの影響を受けてたから、コードでイントロを動かすラモーンズ的な曲が多かったけど、今回のアルバムではそれはやめようと思って。もうちょっとパワーコードみたいなのを中心に使って曲を作ろうと。わたしたちにとっては新しい試みだけど、その音楽自体は70年代のすごく昔からあるもので、昔からあるだけに絶対聴く人にとってもどこかで聴いたことのあるような音楽だと思うから。聴いたら心に、体に、無意識に響いてくると思うので、その響きを感じてもらったら嬉しいかな。難しいけど、体に染み込んでるものに訴えかけたいと思ってます。

Emi:何回も繰り返し聞いてもらって、ライヴにも来てもらって楽しんでもらえたら嬉しいです!

Naoko:そのとおりです(笑)!

Ritsuko:これが少年ナイフ式ハードロック。さっきおっしゃってたように、ちょっと「なんちゃって」70年代ハードロックみたいになるのが少年ナイフの味やと思うので。少年ナイフがハードロックをやったらこうなった、みたいなのが聴きどころだと思ってます。ハードロックだけど、ちょっとファニーな。本当に悪い、ワルな感じではなくて(笑)。ワルっぽく歌ってるけどラーメン・ロックだったり(笑)、中身はやっぱり少年ナイフだなあっていうところを聴いてほしいです。

Naoko:70年代のアメリカやイギリスのバンドって、女の人のバンドは全然なかったと思うんです。女の人だけっていうのは。ランナウェイズとかはちょっと別だけど、女の人だけで自然発生的にできたバンドはないと思うから。男の人がやったらゴツゴツした感じになるけど、私たちがやってたらこうなるということで。

音から泳ぎだした絵画たち - ele-king

 ティーブスの新作『エスターラ』はあいかわらず素敵だった。プレフューズ73とのサンズ・オブ・ザ・モーニングもとてもよいという話をよくきく。〈ブレインフィーダー〉の新世代として注目されるビートメイカー、ティーブス。ゴツゴツとしてロジカルなビート構築ではなく、繊細で優しい、水彩タッチのトラックメイキングには、やはり彼にしかない世界を感じさせられる。そして、あらためて、2010年のデビュー・アルバム『Ardour』が5年も前のだとは考えられないほど、古びず消費されない音だということに感心させられる。

 さて、そんなティーブスの展覧会が東京で行われる。彼の絵はジャケットにも使用されているが、今回はなんと約100点も観ることができるそうだ。また、来場者にはティーブスがこの個展用に制作したという音楽を収録したPLAYBUTTON(缶バッジ型のデジタルオーディオプレイヤー)が渡され、イヤホンなどを利用して聴きながらの鑑賞ができるとのこと。開催は4月17日から19日土曜まで。会場では本人にも会えるかもしれない。

新作リリース直前に緊急決定!
4月にティーブスが日本初となる個展開催!
4/17-19の3日間のみ開催されるアート展に本人も登場!

teebs展 - ANTE VOS / BEFORE YOU -

3/29 (土) にいよいよ待望の2ndアルバム『E S T A R A』をリリースするティーブス (Teebs) が、日本初となる個展を4月17日 (木) 〜 4月19日 (土) の3日間限定で、ギャラリースペース「KATA(カタ)」 (恵比寿LIQUIDROOM 2F) にて開催することが決定した。音楽シーンのみならず、ストリート・カルチャー〜アート・シーンでも絶大な人気を誇るティーブスは、これまでも所属レーベル〈Brainfeeder〉のショウケース・イベントで来日した際には、必ずライヴ・ペイントを披露するなど、音楽のみならずアート面でも特別な才能を持つことを証明してきた。プレフューズ73やジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーントヴェットも参加した新作『E S T A R A』のリリース後、フライング・ロータスの出演でも話題沸騰中のイベント【Brainfeeder 4】への出演を前に開催される本個展には、ラテン語で“Before You”を意味する【Ante Vos】というタイトルがつけられている。

本展覧会のコンセプトは、“レコードジャケットが作品として完成する前の姿”。有名無名問わず、“語りかけてくるものを選んだ”という既存のレコードジャケットに、新たな命を吹き込むようにペイントを加えるティーブス独特のスタイルで生まれた作品が100点(確認中)以上展示される。またティーブスの世界に没頭できるよう、来場者には、ティーブスが本個展用に制作したという音楽を収録したPLAYBUTTON(缶バッジ型のデジタルオーディオプレイヤー)が渡され、会場に用意されたヘッドフォン、もしくは、使い慣れた自分のヘッドフォンおよびイヤフォンでその音楽を楽しみながら作品を鑑賞できる。また4月18日 (金) と19日 (土) には本人も会場に登場し、サイン入りグッズや限定グッズの発売も予定されている。詳細は追って発表される。

ティーブス展用に公開されたショート・ドキュメンタリーはコチラ

TEEBS / ANTE VOS / Part 1 artwork of Mtendere Mandowa from Theo Jemison on Vimeo.

【アート展情報】
teebs展 - ANTE VOS / BEFORE YOU -
2014.4.17 (thu) - 4.19 (satu) @ KATA GALLERY (LIQUIDROOM 2F)
●日時
4/17 (木):17:00 - 21:00
4/18 (金):13:00 - 22:30 *20:00からはアーティスト本人も登場するレセプションを予定
4/19 (土):13:00 - 20:00
入場無料

PLAYBUTTONとは?
缶バッジ型の本体に、ヘッドフォンを差し込むだけで音楽を楽しめる新世代のデジタルオー ディオプレイヤー。
https://ja-jp.facebook.com/playbutton.jpn

【アルバム情報】

プレフューズ73、ラーシュ・ホーント ヴェット(ジャガ・ジャジスト)参加!
ティーブス待望の2ndアルバム『エスターラ』がいよいよ今週末発売!


Teebs - Estara

Tower HMV iTunes

artist: TEEBS
title: E s t a r a
ティーブス[エスターラ]

release date: 2014.03.29

label: Brainfeeder / Beat Records
cat no. : BRC-412
price: ¥2,000 (ex.tax)

商品情報はこちら!
https://www.beatink.com/Labels/Brainfeeder/Teebs/BRC-412/

[Tracklisting]
01. The Endless
02. View Point
03. Holiday (feat. Jonti)
04. Shoouss Lullaby
05. SOTM
06. Hi Hat (feat. Populous)
07. NY pt 1
08. Piano Days
09. Piano Months
10. NY pt 2 (feat. Prefuse 73)
11. Mondaze
12. Wavxxes (feat. Lars Horntveth)
13. Gratitude (Bonus Track for Japan)

ご 予約は こちら!
beatkart :amazon : Tower Records : HMV : iTunes :
Tr.02 View Point / Tr.03 Holiday (feat. Jonti)の2曲が公開中!
https://soundcloud.com/ninja-tune/sets/teebs-estara


春の胸騒ぎはいつしか潮騒へ - ele-king

 夏が来ていた......! 春の胸騒ぎは潮騒とチルアウトの季節へとワープする。噂のJINTANA&EMERALDSが、ついにファースト・アルバムをリリース。難しい音楽ではない。かまえることなく、いますぐこのスウィートでメロウな音楽に身をゆだねよう。

JINTANA & EMERALDS - "Destiny" Album Digest

 7インチシングルが話題になった奇跡のネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA&EMERALDSが、4月23日、ついにフル・アルバムをリリース。横山剣などからの紹介コメントも到着! 丸ごと2曲聴ける楽曲トレーラーも解禁!

 7インチ・シングルがJETSET総合ランキング1位、海外の音楽メディアでも取り上げられ話題を生んだ、ネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA&EMERALDSがついにファースト・アルバムをリリース!
 JINTANA&EMERALDSは、横浜発、スウィート&メロウなサウンドを届けるハマの音楽集団PPPこと〈PAN PACIFIC PLAYA〉からのレイドバックでドリーミーな新しいサウンド。〈PPP〉所属のスチールギタリストJINTANA、DORIANらへの客演でひっぱりだこなギタリストKashif、アーバンなニュー・シティ・ポップで話題沸騰中の媚薬系シンガー・一十三十一、(((さらうんど)))でも活躍するCRYSTAL、少女時代や三浦大知など幅広くダンスミュージックの作詞/作曲/プロデュースをするカミカオル、女優でもあるMAMIという豪華メンバーによる魅惑のレイドバック・ミュージックです。彼らが4月23日(水)、ついに待望のファースト・アルバム『Destiny』が発売します。

 彼らは2011年のクリスマスに発表されたフリーダウンロード音源で話題となり、2012年にリリースされたスウィート&トロピカルなシングル曲『HONEY / RUNAWAY』収録の7インチはJETSET総合ランキング1位で即完売、さらにTiny mix tapesなど、アメリカやブラジルの海外メディアでも取り上げられるなど、国内外で高く評価される彼ら。3人の歌姫の水の揺らめきのように煌めくシルキーボイスと、エキゾチックでメロウなギター&トラックが激スウィートな至極のレイドバック・ミュージックに多くのリスナー、ミュージシャンが魅了されました。本作にはPPPのLUVRAW&BTBもトークボックスでゲスト参加、素晴らしい衣装ワークの数々はファッションデザイナーの青木貴志(MACARONIC)が手掛けています。そして、ファンタジスタ歌磨呂による海沿いの夏を切り取った写真集といった趣のジャケット&ブックレットも必見です。

 本作のリリースに寄せて、〈PPP〉が拠点とする横浜が生んだスター、横山剣さんや、音楽ライターの野田努さん、メンバーが交流のある荒内佑(cero)さんやVIDEOTAPEMUSICさんから紹介コメントを頂いております。

得体の知れない多幸感がエコーするエメラルド色のソウル電波だ!イイネ!イイネ!イイネ!―――横山剣(CRAZY KEN BAND)

甘く、ノスタルジックで、そして未来的な、このコーラス・ポップを聴いているあいだは、すべての嫌なことを忘れられる。気持ちはすでに夏。―――野田努(ele-king.net)

ジュークボックス流れる甘いメロディー、キャデラック、月明かりと海岸線、謎の美女、そして私の脳内では完全にプロムパーティーが始まる。
こんなロマンチックな世界は映画の中にしか存在しないと思っていました。
まるで魔法。
まさに「I Hear a New World」
―――VIDEOTAPEMUSIC

7インチシングルの時からファンで聴かせてもらっていて、特に「Runaway」にヤラれてます。
50年代のアメリカへの情景だけでなく、現代の「私たちの音楽」としてリスナーに寄り添ってくれるのがこのアルバムの一番の魅力なんじゃないでしょうか。
―――荒内佑(cero)

◼︎収録曲をまるごと2曲!

JINTANA & EMERALDS - "Emerald Lover"

JINTANA & EMERALDS - "Destiny feat. LUVRAW & BTB"

 究極のレイドバックを追い求める運命に導かれ、50年代の西海岸にたどり着いたJINTANA & EMERALDSは、メロウなオールディーズを現代のチルアウト・ダンスミュージックとして再構築。フィル・スペクターが現代のダンスフロアに降り立ったようなネオ・アシッド・ドゥーワップ・ウォールオブサウンドで、いつしかあなたも気分は50年代の西海岸へ......そこはエメラルド色の海。エメラルド色に輝く街。エメラルドシティに暮らす若者たちの織りなす、ドリーミーでブリージンなひとときをお届けします......!


ジンタナ&エメラルズ
デスティニー

Amazon Tower HMV

JINTANA & EMERALDS / Destiny
ジンタナ&エメラルズ / デスティニー
release : 2014/04/23
定価:¥2,400+税

1. Welcome To Emerald City
2. 18 Karat Days
3. Emerald Lovers
4. I Hear a New World
5. Honey
6. Runaway
7. Destiny feat. LUVRAW & BTB
8. Moon
9. Let It Be Me
10. Days After Happy Ending


■Only Love Hurts(a.k.a. 面影ラッキーホール)とは?


Whydunit?

Tower HMV iTunes


ON THE BORDER

Tower HMV iTunes

aCKy:インタビューするよりWikipedia読んだらだいたいわかりますよ。さっき見てみたけど、だいたい合ってたから(笑)。

──ご自分でWikipediaを編集してるんですか?

sinner-yang:するわけないでしょ(笑)。ネットに書き込んだりとか、そういうのは基本的に女子供がやるもんだと思ってるから。でも最近のバンドはみんな自分たちで書いてるんでしょ?

──でも実際やってる人、少ないと思いますよ。バンドマンには「プロモーションなんてアーティストの仕事じゃない」みたいな思いもあるみたいで。

sinner-yang:それはただ彼らの識字率が低いだけでしょ(笑)。

とまあこんな具合にOnly Love Hurts(a.k.a. 面影ラッキーホール、以下、O.L.H.)へのインタヴューはスタートした。O.L.H.はsinner-yang(B)とaCKy(Vo)を中心とした大所帯のファンクバンドだ。彼らのディスコグラフ、「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」や「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた・・・夏」など、強烈なタイトルが並んでいるので、アーティスト名は知らなくても曲名くらいは聞いたことがあるはずだ。雄弁な楽曲に対して彼らに関する情報は極端に少ない。Wikipediaにはたしかにバンドの詳細が書かれているが、バンドにコアに触れるような記述は一切ない。まずはバンドの成り立ちについて訊いてみた。

──そもそも初期のバンド・コンセプトはどのようなものだったんですか?

sinner-yang:20年近く前のことを思い出せって言われても難しいですね。

──じゃあ、aCKyさんとsinner-yangさんの出会いを教えていただけますか?

aCKy:え〜、そういうのも恥ずかしいよ〜。でも言っちゃうね(笑)。俺が大学3年生の時、21かな、なんかしなくちゃいけないなって思ったんです。もともとはマルコム・マクラーレンみたいな裏方になりたかったんですよ。でもまあ、あんなのそんな簡単にできないし、そもそもアイディアがあるんだったら自分でやったほうがいいかなって思って、バンドを作ることにしたんです。とはいえ、当時はインターネットなんて当然ないからメンバー募集のビラを作ったんです。下のとこがイカの足みたくなって、取って持って帰れるやつ(笑)。

──懐かしいですね(笑)。昔はライヴハウスとか、練習スタジオによく貼ってありました。

aCKy:募集内容も恥ずかしいんだけど、……言っちゃうね(笑)。当方はギター・ヴォーカルで、全パートを募集。ジャズロックやりたし。イメージはマイルス・デイヴィス『オン・ザ・コーナー』『アガルタ』『パンゲア』、オーネット・コールマン『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』って書いたんです。

sinner-yang:オーネット・コールマンは「ヴァージン・ビューティー」じゃなかったっけ?

aCKy:いや『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』。そのビラを作ったのがちょうど学園祭の時期だったんで芸術系の大学やジョン・ゾーンの来日公演とかに配りにいって。そこで連絡してきたのが2人で、ひとりがリーダー(sinner-yang)なんですけど、もうひとりは大友良英さん(笑)。大友さんは「ジョン・ゾーンのライヴでビラもらったんだけど」って。

sinner-yang:惜しかったねー! 大友さんと組んでたら、いまごろaCKyも紅白の審査員席に座ってたわけですよ!(笑)

──(笑)。

aCKy:そうそう(笑)。で、リーダーとふたりで無駄話したり、あれこれ試行錯誤するようになって。しばらく経ってから、バンドを始動させることにしたんです。

sinner-yang:実際にスタートしたのは知り合ってから2〜3年後だよね。

──ではバンドを始動するにあたってはどのように動いたんですか?

sinner-yang:aCKyはフロントマン、即ち御輿ですよね? だから神輿を担ぐ人たちを集める作業は、俺主導でやりました。それにaCKyは面影が人生最初のバンドだから、ミュージシャンの横の繋がりとかもなくて。僕はそういう知り合いが結構いたから、それでいろいろバンドに合う人たちを探したんです。

──sinner-yangさんはいろいろなバンドに入っていたんですか?

sinner-yang:俺もバンドはやってなくて、面白半分で宅録してましたね。あとCMとか商業音楽の制作みたいなこともやってました。

──そのつてでメンバーをそろえていったと。

aCKy:最初の最初はDCPRGみたいなのがやりかったんですよ。

sinner-yang:ああいうのってさ、音楽的偏差値が一定以上の人にとっては麻疹みたいなもんでしょ。

aCKy:そうそう。でもさ、当たり前だけどああいうのは簡単にできないわけですよ。たとえばバンドとしては小さいパーツが欲しいのに、ばかデカいパーツを持ったメンバーが入って来ちゃったり。そういうので、なかなか自分が思い描いてるものが形作れなかったというのがありましたね。現在のO.L.H.っていうのは、そういう細かい齟齬を修正していって、その中から出てきた最適解なわけ。その意味でいくと当初の思いとはまったくちがうバンドになっていますね、いまは。こんなはずじゃなかったと(笑)。

sinner-yang:いずれにせよ小奇麗な音楽をやろうとしてなかったから、集まってくれた人たちの理解を得るのも難しかった(笑)。そういう意味でバンドも最初はなかなか苦労しましたね。

──ファースト・アルバムの収録曲“必ず同じところで”や“今夜、巣鴨で”が個人的にはすごく好きなんですが、バンドとしてはその時点ではある程度、いまにつながるものができあがっていたんですね。

sinner-yang:そうですね。バンドが結成されて4〜5年で、あそこまで固まった感じですかね。

aCKy:うん、だいたいあの方向が見えてきたのは2〜3年たってから。ライヴで客の反応を見て、これやるとこうなるんだ、みたいな感じで微妙に修正していったんです。

■科学者の視点

 O.L.H.といえば、彼らの歌詞について触れないわけにはいかない。スキャンダラスな題材もさることながら、その視点の妙は特筆すべきものがある。彼らが2011年に発表したアルバム『ティピカル・アフェア』の1曲めに収録された“ラブホチェックアウト後の朝マック”を例にとれば、この曲はタイトル通り「ラブホチェックアウト後の朝マック」にいるカップルについて歌っている。ヴァース1では昨夜の情事について、ヴァース2ではふたりがワケありカップルであることが明らかにされ、最後に主人公の女性が関心を寄せることへの回答が出される。しかもその回答から連想させられるものは、この男女が発するどうしようもないほどの人間臭さだ。

──O.L.H.の歌詞の源泉はどこにあるんですかね?

sinner-yang:恥ずかしいね。

aCKy:でも言っちゃうね(笑)。歌詞についてはいろいろ研究したんですよ。ニューウェーヴのとんがった詞とかありえない詞とか。あと現代詩を読んだり、ドアーズがどんなこと歌ってるのか調べたりもしました。そんなとき、はたと昔の日本の歌謡曲の歌詞のほうがすごいということに気づいたんです。こっちのほうがアヴァンギャルドだし、サイケデリックだなって。だからそういう意味で歌詞については日本の歌謡曲に影響を受けてると言えますね。

sinner-yang:なかにし礼と阿久悠という両巨頭に代表される70年代の歌謡曲の世界です。では、なぜ70年代の歌謡曲がラディカルかと言えば、それは作り手と歌い手がまったく関係ないところにいたからです。シンガーは歌ってればよかったし、作詞家は歌詞を書いていればよかった。だからその誰も責任を取らなくてもいいシステムが、結果としてラディカルな作品を生み出していたんです。でもね、そういうものは80年代のニューミュージック・ムーヴメント以降、淘汰されてしまった。

──なぜですか?

sinner-yang:客単価を上げるためですよ、シングルよりもアルバムを売るため。アルバムを売るためには、それが“アーティスト”の内面を反映したものであると客に思いこませる必要があるんですよ。

──価値を“アーティスト”に集約させたということですか?

sinner-yang:そうそう。だからコンセプトも、アートワークも、作詞も、作曲も、すべては“アーティスト”の内面にある何かを表現していると思わせて、アルバムを売っていったわけです。誰もピンク・レディーに「歌詞の源泉はどこにあるのか? なぜUFOと歌うのか?」なんて訊かないけど、尾崎豊には訊くじゃないですか?(笑) でもその結果としてすべての“アーティスト”は、自ずと私小説家になって行かざるを得ないですね。その場合、なかなかラディカルなものは生まれにくくなる。だって身の回りの卑近なことを歌って“共感”を誘うビジネスモデルだから。だから俺らの最大の特徴は、意識的に私小説じゃない歌を作っているということですね。そうすると何からでも題材がとれるんですよ。

──その歌詞の題材についてなんですが、いつも目の付け所がすごいですよね。

sinner-yang:そうかな。どこにでもあることだと思いますよ。俺たちは、どこにでもあるけど誰も触れないものに関心があるんです。

aCKy:僕らは若いわけでもないし、ルックスがいいわけでもないので、隙間を狙わないといけなんですよ(笑)。

sinner-yang:俺らが「桜」や「絆」や「感謝」の歌を歌ってもしょうがないでしょ。

──僕はO.L.H.の歌詞にものすごい批評性とユーモアを感じるんですよ。

aCKy:俺らのやってることに批評性を感じてるっていうのは、それはたぶんあなたが世の中を批判的、批評的に見ているということなんじゃないですか? 俺たちは自分たちが見たまんまを表現してるだけですよ。

sinner-yang:もっと言えば、俺らにユーモアを感じるのは、あなたがそれを滑稽だと思ってるからなんですよ。僕たちはファーブルのように昆虫日記をつけてるだけ。“見てる”ってだけです。“見てどう思う”じゃないですよね。ただ見てる。“観察してる”ってことにつきる。これはいろんなインタヴューで言ってることだけど、ファーブルは自分の糞を転がすフンコロガシを観察して「こいつ、汚ねえな」とは思わないでしょ。そもそもフンコロガシは違う種族だから、そいつらに「自分のウンコいじったら汚いよ」ってアドバイスしても仕方ないじゃないですか。「え! マジで!?」と新鮮に驚きつつ見てるってだけですよ。逆にそこで怒ったり、バカじゃねえかって思った瞬間に観察眼が曇るし、違う習俗を持った種族に対して不遜ですよね。
 あとね、俺らは自分が何者でもないって思いがすごく強いんですよ。何か言える立場ではないというか。俺らみたいなチンピラには何かを批判する資格もないし。そういうのは新橋のSL広場でTVのインタヴューに答えているような人たちに任せとけっていう(笑)。

──すごく達観した、まるで神様のような視点ですね。

sinner-yang:いや、それはおこがましいですよ。せいぜい「日本野鳥の会」の視点です。見たものを正確に記録しなくちゃいけない。右手にカウンター持ってね。つい最近震災のドキュメント映画で演出がどうしたこうしたって問題があったじゃないですか。あれと同じですよ。過剰な演出はしない。

■面影ラッキーホールとジェイムズ・エルロイ

 多くの人を絶句させた楽曲“パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏”。この曲もタイトル通りの内容なのだが、歌詞は「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた」母の独白という形で進行していく。彼女が置かれた境遇、パチンコにハマっていく過程、そして娘を死なせた原因がやたらと陽気なファンクチューンに合わせて歌われていく。彼女に対して同情の余地もあるものの、曲中では結局何の救いもなく、ただ絶望のみが残る。これはまさしくノワールの世界観だ。

──おふたりはジェイムズ・エルロイがお好きらしいですね?

aCKy:『Whydunit?』を作る前に時間ができたから本を読もうと思って、リーダーに「何かバシッとくるものない?」って訊いたら、エルロイを教えてもらって読みはじめました。だから『Whydunit?』自体がエルロイにすごく影響を受けてると思う。あのどこまで行ってもクールというか、救いようがない感じ、ウェットな感じがない、ビシビシ行く感じはエルロイに影響を受けていると言えますね。

──なるほど。僕はO.L.H.作品の中でもとくに『Whydunit?』が好きなんですが、それはエルロイ作品の世界観が好きだからというのもあるのかしれませんね。

sinner-yang:君はエルロイでは何がいちばん好きなんですか?

──『ビッグノーウェア』です。

sinner-yang:俺もそう。

aCKy:『ホワイトジャズ』じゃないんだ?

sinner-yang:じつは俺、『ビッグノーウェア』は当時新刊で買ってて。エルロイの何がすごかったかっていうと、アメリカ文学におけるノワールの価値観をぶっ壊したことにあるんですよ。エルロイ以前のノワール文学ってのは(レイモンド・)チャンドラーや(ダシール・)ハメットだったわけじゃないですか。つまりアメリカのノワール文学は90年代になるまで50年代の価値観のままだったわけなんですよ。でも『ビッグノーウェア』はそれをひっくり返したんだ。俺は本当の意味ではパンクをリアルタイムで経験してないんですよね、1978年の時はまだローティーンだったから。既存の価値観がぶっ壊されるさまを見てないの。だから俺はパンクというものを後づけで想像するしかなかったわけ。パンクがいかに先鋭的で、価値観をひっくり返したかってのをね。でも『ビッグノーウェア』を読んで、ようやくパンクが起こした価値観の転倒を知ることができたんですよ。音楽の世界でパンクを体験することができなかったけど、文学の世界では体験することができた。だからエルロイは特別なんです。

──O.L.H.はその世界観をユーモアを交えて表現するところが好きなんです。

sinner-yang:音楽とユーモアで言うとね、ザッパは好きでしたよ。でもお笑いってとらえ方で行くと、意識的でないぶんプログレは笑いの宝庫なんです。キング・クリムゾンとか抱腹絶倒ですもん。

aCKy:あと志村けんね! たしか「だいじょぶだぁ」のエンディングテーマってオーティス・レディングの“セキュリティ”じゃなかったっけ。“髭ダンス”とかもファンキーだしね。あれ、テディ・ペンダーグラスでしょ。

──では、価値観の転倒という意味でヒップホップはどうだったんですか?

sinner-yang:それはどっちかっつったらaCKyなんじゃない?

aCKy:ヒップホップは価値観がぶっ壊れるって感じじゃないですね。ヒップホップはカットアップや編集の音楽だと思うんで。

sinner-yang:俺はパンクとヒップホップはすごく似てると思いましたね。音楽のフォーマットが違うってだけで。ヒップホップの起源は相手へのディスなわけでしょ。そこも含めて、大きな視点で言うとパンクとヒップホップは似たものなんじゃないかと思いました。自分が90年代の頃に青春時代を送っていたら、もっとぶっ太いパンツを履いてたと思います(笑)。でも、(ヒップホップがパンクは)似ていたからこそ衝撃は受けなかったな。

■目的のない人生

aCKy:話をノワールに戻すと、たしかに『Whydunit』以降の作品はノワール的な表現に意識的になったというのはあります。でもね、『Whydunit』を含む〈Pヴァイン〉から出した3枚というのは、自分で自分を演じてるという感覚が強いんですよ。「こういうのが好きなんでしょ?」というか。やりたいことは「音楽ぎらい」までの作品でやりきってるんですよね。一回終わってるというか。

sinner-yang:〈Pヴァイン〉時代とそれ以前との作品が明確にちがうのは、いまの俺たちはもう目的を完全に見失っているんですよ。初期の3枚というのは、いまよりももっとマスにコネクトするにはどうしたらいいかと考えているところがあった。それは曲づくりの面でもそうだし、aCKyが書く歌詞にしても、当時はもっとふたりの間に激論があったんです。最近はもうまったくないですから(笑)。

aCKy:まったくなくはないでしょう(笑)。

sinner-yang:(笑)。過剰なディレクションはしないと言ったほうが正しいかもね。初期3枚は本当に喧嘩になるくらいだったし。

aCKy:そうだったっけ?

──じゃあいまは完全に惰性でやってるということですか?

sinner-yang:完全に惰性です(笑)。

aCKy:ライヴも10年前とほぼ変わってないですよ。アレンジやディティールの違いはありますけどね。この前、田我流さんたちのstillichimiyaとのライヴはヒップホップを意識したんですけど、あれはすごい昔に新宿の〈MARS〉というところでRUMIちゃんとか漢くんとかが出たライヴの焼き直しですよ。MCとかも全部いっしょだし。

──ではなぜいま現在もバンドは存続しているんですか?

sinner-yang:それは俺ら以外のメンバーたちが楽しそうだから。あとレコード会社の方や、ファンの人たちからの期待に応えなきゃって思いはすごくあります。

──……。

sinner-yang:なんだか不満そうですね(笑)。じゃあ、こういうたとえはどうですか。俺が小学生のときに従姉のお姉ちゃんがお祭りでカラーひよこを買ってきたんですよ。ああいうのって普通すぐに死んじゃうじゃないですか。でも電球入りの巣箱とかちゃんと作って、しっかり面倒みたらそのまま何年も生きてニワトリになったんですよ。朝とかすごい早い時間から鳴いたりして、もう鬱陶しくてしょうがない。デカいし、うるせーし、かわいくねーし(笑)。でも生きてるから殺せないじゃないですか。つまり、面影っていうのは育ってしまったカラーひよこみたいなもんなんで、殺すわけにもいかないんですよ。

──好きなバンドに「惰性でやってます」と宣言されるのって、ファンにとっては残酷なことだと思いませんか?

sinner-yang:そおお? 生きてるだけでいいじゃない。バンドを死なせないようにするのってすごく大変なんですよ。だって20年も続くバンドなんてないでしょう? カラーひよこがニワトリに育つのと同じくらい奇跡的なことなんだから!

──極端な話ですが、目的もない人生があってもいいんですかね? 僕は何の目的もなくただ生きているという状態に自分がおかれたとき、えも言われぬ不安感に支配されてしまうんです。「俺はこんなことでいいのか?」と。

sinner-yang:いいも何もそうせざるを得ないでしょう。存在というものは善悪の彼岸にあることじゃないですか。

──人生を善悪で割り切ろうとすること自体に無理がある、と。

sinner-yang:そう。その概念の前に、いまここに存在そのものがあるから。それを受け入れるしかないでしょう。しかも存在は未来永劫つづくわけではない。みんないつかは死ぬでしょう。だから、死ぬまでの暇つぶしをしてるんですよ。みんなが電車でスマホいじってるのと同じです。

aCKy:暇つぶしのアイテムがバンドだけじゃないから、活動しなかったこともあるんですよね。いまここでインタヴューを受けているのも暇つぶしのひとつでしかない。もちろん悪い意味じゃなくてね。楽しいんですよ、こうやってあなたと話してるのも。

sinner-yang:だってこうやって僕らに「話を訊きたい」なんて言ってくれる人は非常に稀なことですから(笑)。

aCKy:こんなおっさんふたりの出会いなんて誰も聞きたがらないよ、普通。

sinner-yang:こういう機会があるから、俺らもブログやらツイッターやらはじめなくて済んでるのかも知れないし。みんな自分のことを知ってほしいんですよ。だから昼飯の写真撮ってブログやSNSに上げたりしてるんでしょ?

aCKy:リーダーは絶対やらないよ(笑)。

 RHYMESTERの宇多丸氏が映画『かぐや姫の物語』を評したとき、「“ここにはない何か”“こうではなかった人生”という幻を追っている、それが人間の生である」「しかしそれすらも肯定するしかない」と語った。さらに「仮に人が害をなすだけの存在であったとしても、それでもその害も含めて何かあるほうがいい」「無(死)より何か(生)があったほうがいいじゃないか」とも話していた。生とは何か。これは僕個人が最近自問していることだ。何もなさずに、何もなすことができずにただ生きている。しかもその存在が周りにとって有益ではなかったなら、そんな状態なら無に向かうべきなのか、否か? 今回のインタヴューはそんなことを考えているなかで行われた。O.L.H.のふたりはどうしようもない生の塊を観察している。それが滑稽でも、醜くても、生ある者について歌いつづけている。生とは何か。僕自身にその答えはまだ見つかっていない。しかし、僕にとってこのインタヴューを行っている時間、そしてそれを原稿にまとめている時間は本当に楽しいものだった。

Time Out Cafe & Diner 5th Anniversary Party - ele-king

 恵比寿リキッドルームの2階のタイムアウト・カフェ、昼過ぎに行くと、キビキビした人たちノートパソコンを開きながら打ち合わせをしているという印象の、あのカフェですよ。我々も実は、キビキビしているわけでも、ノートパソコンを開くわけでもないのですが、たびたびお世話になっているんです、あのカフェには。居心地良いしね。BGMも良いから、だいたいあのソファに座ると、誰もがビールを我慢できなくなるんです。そうすると、仕事の打ち合わせにならないでしょう。
 明日金曜日はあの名物カフェの5周年ということで、7時から12時までのあいだ、リキッドルームの1階/2階を使ってパーティが開催される。1階は、最近ジュークづいているリキッドルームの方向性を反映した“GHETTO” HOUSE祭になる模様です。EYヨ、MOODMAN、D.J.Aprilなどなど、錚々たるメンツですね。詳しいラインナップは以下を見ていただくとして……、2階では、リキッドロフトとタイムアウト・カフェの2カ所で音が鳴っております……お、みゆととも出演するのか、これはすごい。行こう! 入場料も嬉しい千円。そして、パソコン持ってwifi繋げて、あそこで仕事をしよう。

Time Out Cafe & Diner 5th Anniversary Party

@1F
featuring “GHETTO” HOUSE OF LIQUID
DJ:EYヨ(BOREDOMS)-FTW/JUKE SET-、MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)、D.J.April(Booty Tune)、LEF!!! CREW!!!、RLP

@2F LIQUID LOFT
Live:LUVRAW & BTB(Pan Pacific Playa)
DJ:Gross Dresser(Magnetic Luv/Altzmusica)、クボタタケシ、LIL' MOFO、1-DRINK

@2F Time Out Cafe & Diner
featuring TUCKER'S MUSIC LOUNGE SP
Electone Live:TUCKER
DJ:カクバリワタル(カクバリズム)、コンピューマ、高城晶平(cero)、みゆとと(嫁入りランド)

2014.4.11 friday
LIQUIDROOM + LIQUID LOFT + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
19:00-24:00
door only 1,000yen!!!

*20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)

info
Time Out Cafe & Diner 03-5774-0440 https://www.timeoutcafe.jp/
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net/


Angel Olsen - ele-king

「あなたも孤独? あなたも孤独なの? ハイ・ファイヴ! わたしもよ!」(“ハイ・ファイヴ”)

 エンジェル・オルセンは孤独について歌っている――キュートな顔でギターをかき鳴らし、喉を震わせ、時に力を込めてビブラートをかけつつ、ソプラノと芝居がかった低音を行き来しながら唯一無二の歌声を絞り出している。荒削りなベースとくぐもった音色のドラムスがビートを刻むなか、スワンプふうのギターはひずみ、ルーズにゆらいでいる。
 「孤独な誰かとともに(わたしは)ひとりで座っている」。孤独を安売りすることもなく、安易につながることで自己を溶融してしまうこともなく、彼女はその「誰か」とふたり、互いに孤独を守りつつ力強くハイ・ファイヴを交わそうとする。「孤独であることについて書かれた曲としてはもっとも陽気な曲」とピッチフォークにあるように、“ハイ・ファイヴ”はつまりそういう曲だ。ある個体と別の個体とが互いに個であることを認めあいながら存在する、という当たり前のことではあるが、ある面ではだんだんと曖昧化してしまいそうなことがここでは歌われている、のではないか。

 カフェで働きながらソロ活動とボニー・プリンス・ビリーのツアーへの帯同で活躍の場を広げていったエンジェル・オルセンは、2010年にカセットEP『ストレンジ・カクタイ』を、2011年にアルバム『ハーフ・ウェイ・ホーム』を〈バセティック・レコーズ〉からリリースしている。『ハーフ・ウェイ・ホーム』により知名度を上げた彼女は、内省的でアコースティックなサウンドやその歌唱法から、ヴァシュティ・バニヤンやジュディ・シル、そして初期のレナード・コーエンが引き合いに出されてきた(今作ではそこにキャット・パワーやシャロン・ヴァン・エッテンの名が加わる)。
 転機となったのは日本の小さなインディー・レーベル、〈シックスティーン・タンバリンズ〉からのリリースとなった7インチ“スリープウォーカー”で、A面の“スウィート・ドリームズ”において彼女はローファイでラウドなガレージ・ロックへと転向している。

 〈ジャグジャグウォー〉からのリリースとなった今作『バーン・ユア・ファイア・フォー・ノー・ウィットネス』では、エレクトリック化、ロックンロール化をさらに推し進めている。先行曲“フォーギヴン/フォーゴットン”や、エンジェル・オルセン自身「ルー・リードっぽい」と語るヴェルヴェット・アンダーグラウンドふうの“ハイ&ワイルド”などにそれは端的に表れている。他方、“ホワイト・ファイア”や出色の“エネミー”など、過去作に近いアシッド・フォーキーなアコースティック/エレクトリック・ギターの弾き語りももちろん収められている。
 プロデューサー、エンジニア、ミックスを担当しているのはジョン・コングルトン。今年に入ってからすでにクラウド・ナッシングスの『ヒア・アンド・ノーウェア・エルス』やセイント・ヴィンセント(2009年の傑作『アクター』以降はデヴィッド・バーンとの共作盤も含めて全作に関わっている)のセルフ・タイトル作のプロデューサーであり、5月にリリースされるスワンズの『トゥ・ビー・カインド』のレコーディング、ミキシングを担当するなど八面六臂の活躍を見せる売れっ子だ。


 エンジェル・オルセンは自らの内面を深く覗きこみ、時には自己と対立しながらも内なる風景からなにかを掴みとって曲を書いている。孤独で、エゴイスティックな隘路にも陥りかねない作業だ。だが、彼女は次のようにも(実に哲学的な言葉で)語っている。「もし自分の思考に夢中になれなかったとしたら、他者と有意義な交流が持てるかしら? 自分自身との孤独な時間を、そしてただ存在しているということを楽しむのは重要なことよ。なぜなら“存在”はそれだけでクールなことなのだから」。
 エンジェル・オルセンの音楽は内省的ではあるがしかし、上の言葉にも表れているとおり彼女の楽曲たち(しばしば「子ども」と喩えられる。いくつかのインタヴューでは「子宮 womb」という言葉も象徴的に使っている)は開放的で肯定的な空気をたしかに呼び込んでいる。『バーン・ユア・ファイア・フォー・ノー・ウィットネス』の冒頭で繰り返されるのは「いまわたしはひとり/あなたはそばにいない」という言葉なのだが、それでもこの曲は“アンファックザワールド”と名づけられている。
 世界を軽々しく拒否しないこと。フィッシュマンズは「窓はあけておくんだよ」(“ナイトクルージング”)と歌ったが、エンジェル・オルセンは「ときには窓を開けない?」(“ウィンドウズ”)と僕たちを誘う。「光ってそんなに悪いものかしら?」と、神秘的なギターやオルガン、ピアノの音に包まれながら、ゆらめくハイ・トーンへとエンジェル・オルセンの声は美しく伸びていく。

Man From Tomorrow - ele-king

 GWの5月5日/6日に、フランスの映像作家ジャクリーヌ・コーによるジェフ・ミルズのドキュメンタリー・フィルム『Man From Tomorrow』のプレミア上映がおこなわれる。
 ジャクリーヌ・コーは、ピエール・アンリやピエール・シェフェールと並ぶフランスの(電子)現代音楽家、リュック・フェラーリのドキュメンタリー『resque Rien avec Luc Ferrari』(2003年)、デトロイト・テクノに思想的な影響を与えたラジオDJ、エレクトリファイン・モジョを追った『The Cycles of The Mental Machine』(2007年)、ジョン・ケージ、ラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒなどの60年代のミニマル・ミュージックをテーマにした『Prism’scolors,mechanicsoftime』(2009年)といった作品を発表している。ジェフ・ミルズの『Man From Tomorrow』は、今年2月2日、パリのルーブル美術館オーディトリアムにおけるワールド・プレミア上映では、入りきれない人が続出する程の盛況を博したという。電子音楽ファンにとっては、興味津々の上映だろう。
 東京:5/5(月・祝)、京都:5/6(火・祝)、上映後にはジェフとコー監督によるスペシャル対談もあり。東京分前売り券は先週より発売を開始しています!
 
 なお、ジェフ・ミルズは映画の同タイトルのDJツアーを同時期に開催。東京・名古屋・大阪の3都市を回るツアーは2012年10月ぶり。

『Man From Tomorrow』
U/M/A/A https://www.umaa.net/news/p681.html

■上映日程
タイトル:「Man From Tomorrow」(マン・フロム・トゥモロー)(2014年、フランス、40分)
監督:ジャクリーヌ・コー / 出演:ジェフ・ミルズ / 音楽:ジェフ・ミルズ

【東京】
日程:2014年 5月5日(月・祝)
会場:ユーロスペース(渋谷) https://www.eurospace.co.jp
時間:21:00 スタート 
 上映後トークショーあり: ジェフ・ミルズ、ジャクリーヌ・コー(通訳:門井隆盛)
問合せ・詳細:ユーロスペース TEL: 03-3461-0211  https://www.eurospace.co.jp

チケット: 前売:1600円/当日:1800円
4/4(金)10:00よりチケットぴあにて前売り開始 Pコード:552-935
チケット購入に関する問合せ:チケットぴあ TEL: 0570-02-9111 https://t.pia.jp/

【京都】 <同志社大学 日・EUフレンドシップウィーク>
日程:2014年5月6日(火・祝)
会場:京都市・同志社大学寒梅館クローバーホール
時間:18:00開場/18:30開演
 上映後トークショーあり: ジェフ・ミルズ、ジャクリーヌ・コー (通訳:椎名亮輔、下田展久)

チケット:料金:500円均一(当日のみ)*同志社大学学生・教職員無料
主催:同志社大学今出川校地学生支援課、同志社大学図書館
協力:Axis Records
詳細URL: https://d-live.info/program/movie/index.php...
問合せ:同志社大学今出川校地学生支援課 tel 075-251-3270 e-mail: ji-gakse@mail.doshisha.ac.jp


■ “Man From Tomorrow”について

 近年、音楽だけにとどまらず近代アートとのコラボレーションを積極的に行い、フリッツ・ラング『メトロポリス』への新たなサウンド・トラックや、パリ、ポンピドゥーセンターにおけるフューチャリズム展に唯一の生存アーティストとして作品を提供してきたジェフ・ミルズ。

 テクノ/エレクトロニック・ミュージックによる音楽表現の可能性を広げる彼が、現代のミニマル音楽(John CageからRichie Hawtinまで)に造詣が深く、デトロイトのElectrifying Mojoのドキュメンタリー『The Colours of the Prism, the Mechanics of Time』などでも知られる仏映画監督フランス人映像作家、ジャクリーヌ・コーとタッグを組んで今回発表する映像作品『Man From Tomorrow』は、なぜ彼が音楽を作るのか、テクノとは何のために存在するのかという疑問の答えを解き明かす映像による旅路だ。

 通常のドキュメンタリーとは一線を画したフィルムを作りたい、という二人の意思を実現していくためにジェフとジャクリーヌは1年以上に渡る話し合いを重ね、コンセプトを共有した。アーティスティックでエクスペリメンタルなこの映像の中には、ジェフの考えるテクノのあり方、音楽制作の過程、彼の想像する未来、また、大観衆の前でプレイする際に感じる不思議な孤独感(「One Man Spaceship」で表現しようとした宇宙における孤独感に通じるものでもある)などのすべてが凝縮され、同時に、テクノ・ミュージックの醍醐味を、DJイベントとは異なったスタイルで表現する試みでもあるという。まさにジェフ・ミルズの創造性・実験的精神をあますところなく体現する作品だ。

 『Man From Tomorrow』は今年2月2日、パリのルーブル美術館オーディトリアムでワールド・プレミアを行った後、ニューヨーク(Studio Museum of Harlem)、ベルリン(Hackesche Hofe Kino)にて上映を重ね、4/19にはロンドン(ICA)での上映を予定、その後、東京・京都での上映となる。

https://www.jacquelinecaux.com/jacqueline/en/documentaire-man_from_tomorrow.php


■Man From Tomorrow 各国PRESSより

デトロイト・テクノの魔術師ジェフ・ミルズとフランスの映画監督ジャクリーヌ・コーのコラボレーション作品は、ミルズの音楽と人生をユニークな方法で描きだし、彼の作品、思考そして想像力を通して 夢のような旅へと私たちをいざなう
── Institute of Contemporary Art (UK)

 ミルズの音楽がすばらしい。緊張感、飛躍感があり、しかししなやかな音はスタイリッシュでダークな映像と完璧にマッチしている」「このジャクリーヌ・コー監督のフィルムはルーブル美術館という最高峰のロケーションでプレミア上映が行われたが、それもミルズの最近のアート活動からすればひとつの小さな出来事だったのかもしれない
──『The WIRE 』(UK) by Robert Barry


■JEFF MILLS “MAN FROM TOMORROW” JAPAN TOUR event information

●名古屋公演 2014.05.02(金) @CLUB JB’S 名古屋  
OPEN:23:00
DJ:JEFF MILLS、APOLLO(eleven.)
LIGHTING:YAMACHANG
SOUND DESIGN:ASADA
info: www.club-jbs.jp

●大阪公演 2014.05.03(土) @LIVE & BAR ONZIEME  www.onzi-eme.com
OPEN:21:00
DJ:JEFF MILLS、KEN ISHII、SEKITOVA、LOE、and more
VJ:COSMIC WORLD、KOZZE
info: www.onzi-eme.com

●東京公演 2014.05.04(日) @AIR 
OPEN:23:00
DJ:JEFF MILLS -Opening till Closing set-
info: www.air-tokyo.com


■JEFF MILLS(ジェフ・ミルズ)

1963年デトロイト市生まれ。
デトロイト・テクノと呼ばれる現在のエレクトロニック・ミュージックの原点ともいえるジャンルのパイオニア的存在。高校卒業後、ザ・ウィザードという名称でラジオDJとなりヒップホップとディスコとニューウェイヴを中心にミックスするスタイルは当時のデトロイトの若者に大きな影響を与える。 

1989年にはマイク・バンクスとともにアンダーグラウンド・レジスタンス(UR)を結成。1992年にURを脱退し、NYの有名 なクラブ「ライ ムライト」のレジデントDJとしてしばらく活動。その後シカゴへと拠点を移すと、彼自身のレーベル「アクシス」を立ち上げる。1996年には、「パーパス・メイカー」、1999年には第3のレーベル「トゥモロー」を設立。現在もこの3レーベルを中心に精力的に創作活動を行っている。

Jeff Millsのアーティストとしての活動は音楽にとどまらない。シネマやビジュアルなどこの10年間、近代アートとのコラボレーションを積極的に行ってきている。2000 年フリッツ・ラングの傑作映画「メトロポリス」に新しいサウンド・トラックをつけてパリポンピドゥーセンターで初公開した。翌年にはスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」にインスパイアされた「MONO」というインスタレーションを制作。2004年には自ら制作したDVD「Exhibitionist」を発表。このDVDは HMV渋谷店で洋楽DVDチャート一位を獲得するなどテクノ、ダンスミュージックの枠を超えたヒットとなった。

2007年、パリのケブランリー博物館内展示の音楽担当やシネマテークでのシネミックスイベント (“Cheat” by Cecil B Demille / “Oktober” by Sergei Einstein / “Woman In The Moon” by Fritz Lang) などの功績が讃えられ、フランス政府より日本の文化勲章にあたるChavalier des Arts et des Lettresを授与。その後もポンピドゥーセンターでイタリア、フューチャリズム100周年記念の展示で唯一生存アーティストとして映像作品を展示したり、2012年には「Dancer Sa Vie」というエキシビションでJosephine Bakerをモチーフにした映像作品を展示。

同2012年には主催アクシス・レコーズの20周年記念として300ページにおよぶブック「SEQUENCE」を出版。2013年には日本独自企画として宇宙飛行士、現日本科学未来館館長毛利衛氏とのコラボレーションアルバム「Where Light Ends」をリリース。同時に未来館の新しい館内音楽も手がけた。

2014年、Jeff Mills初の出演、プロデュース映像作品「Man From Tomorrow」が音楽学者でもあるジャクリーヌ・コーの監督のもとに完成。パリ、ルーブル美術館でのプレミアを皮切りにニューヨーク、ロンドンの美術館などでの上映を積極的に行っており今秋からは世界中の映画祭にて上映される予定である。

■Jacqueline Caux (ジャクリーヌ・コー)

 フランス生まれの映画監督/音楽学者。長編ドキュメンタリーや短編エクスペリメンタルフィルムなどを制作し、各映画祭にも参加。レクチャーやキュレーションなども手がける。リュック・フェラーリに関する著書「リュック・フェラーリのほとんど何もない」は日本語訳本も出版されている。

主な作品:
« Contes de la Symphonie Déchirée » (“Tearen Symphonie Tales”) (2010年、54分)

Luc Ferrariの”Symphonie Dechiree” (音楽作品)をもとにしたフィクション
«Prism’scolors,mechanicsoftime» (2009年、96分)

1960 年代中盤から21世紀初頭における半世紀にわたるアメリカ、ミニマル音楽の歴史を探求。
John Cage, La Monte Young, Terry Riley, Steve Reich, Philip Glass, Meredith Monk, Pauline Oliveros, Gavin Bryars, Richie Hawtinが参加。
« The Cycles of The Mental Machine » (2007 年、57 分)
モーターシティ、デトロイトにおけるテクノの発祥を追うドキュメンタリー。”Electrifying Mojo”という謎めいたラジオDJ、Underground ResistanceのMike Banks、Carl Craigが参加。
« Presque Rien avec Luc Ferrari » (2003年、48分)

フランス人音楽家 Luc Ferrariの肖像。シューレアリズムからテクノ、そして具体音楽への道。

www.jacquelinecaux.com



Moodymann - ele-king

 4月29日、東京晴海で開催される「Rainbow Disco Club」に出演するために来日するムーディーマンですが、東海、関西、北陸方面のツアーも決定しています。
 最近では、新しい12インチ「Sloppy Cosmic」(Pファンク・ネタの曲+新曲)が予約の段階ですでにショート。相変わらずの人気を見せつけているムーディーマン、折しも、ハウス・ミュージックが加速的に逆襲している今日ですから、ここは注目したいところです!

■MOODYMANN JAPAN TOUR 2014

4.25(金)名古屋 @Club Mago
4.26(土)金沢 @MANIER
4.27(日)大阪 @Studio Partita(名村造船所跡地)
4.28(月)岡山 @YEBISU YA PRO
4.29(火/祝)東京 Harumi Port Terminal @Rainbow Disco Club


■MOODYMANN JAPAN TOUR 2014

4.25(金)名古屋 @Club Mago
- AUDI. -

Guest DJ: Moodymann
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

Open 23:00
Advanced 3000yen
Door 4000yen

Info: Club Mago https://club-mago.co.jp
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F
TEL 052-243-1818


4.26(土)金沢 @MANIER
MUSIC BUNNY - MOODYMANN JAPAN TOUR 2014 -

Guest: Moodymann
DJ: DJ YOSHIMITSU(S.E.L/MusicBunny), BONZRUM(S.E.L/MusicBunny), Diy(everyday records/MusicBunny/HI-LIFE), U-1(HI-LIFE)
Lighting: etenob!

Open: 22:00
Advanced: 3500yen
Door: 4000yen

Info: Club Manier https://www.manier.co.jp
金沢市片町1-6-10 ブラザービル4F
TEL 076-263-3913


4.27(日)大阪 @Studio Partita(名村造船所跡地)
- CIRCUS & AHB PRODUCTION presents
MOODYMANN JAPAN TOUR OSAKA SUNDAY AFTERNOON SPECIAL -

Moodymann
MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)
MARTER(JAZZY SPORT)
AHB Trio+TeN(A Hundred Birds)
DJ AGEISHI(AHB pro.)
DNT(FLOWER OF LIFE/POWWOW)
DJ BANZAWA(Soul Tribe/Radical Soul)
DJ QUESTA(COCOLO BLAND/HOOFIT/PROPS)
MASH(Root Down Records/HOOFIT)
YASUHISA(TetralogisticS)
KAITO(MOLDIVE)
FUMI(LMIRL)

Lighting: SOLA
PA: KABAMIX

Open:15:00 - Close: 23:00
Advanced: 3500yen
Door: 4000yen

Info: CCO クリエイティブセンター大阪 https://www.namura.cc
大阪市住之江区北加賀屋 4-1-55 名村造船所跡地
TEL 06-4702-7085

circus https://circus-osaka.com
大阪市中央区西心斎橋1-8-16
TEL 06-6241-3822


4.28(月)岡山 @YEBISU YA PRO
Guest DJ: Moodymann
DJ’s: hysa, TETSUO, flying jukebox, fxtcmatty, York, YOSHIDA, Nakamura, SOW

Open: 22:00
Advanced: 3000yen
Lawson Ticket: L-code 61913
Door: 4000yen

Info: YEBISU YA PRO https://yebisuyapro.jp
岡山市北区幸町7-6 ビブレA館 B1F
TEL 086-222-1015


4.29(火/祝)東京 Harumi Port Terminal @Rainbow Disco Club

Info: Rainbow Disco Club https://www.rainbowdiscoclub.com
東京都中央区晴海5-7-1(晴美客船ターミナル)

Total Tour Info: AHB Production www.ahbproduction.com


■Moodymann (KDJ, Mahogani Music / From Detroit)

 ミシガン州デトロイトを拠点に活動するアーティスト、MoodymannことKenny Dixon Jrは、レーベル〈KDJ〉と〈Mahogani Music〉を主宰し、現代そして今後のインディペンデント・シーンやブラック・ミュージックを語る上で決して無視出来ない存在である。
 1997年、デトロイト・テクノ名門レーベル〈Planet E〉からファーストアルバム『Silent Introduction』をリリースし、その後UKの名門〈Peace Frog〉よりアルバム『Mahogany Brown』,『Forevernevermore』,『Silence In The Secret Garden』,『Black Mahogani』をリリース。
 『Black Mahogani』の続編『Black Mahogani Ⅱ ~ the Pitch Black City Collection ~』では、もはやStrataやTribe、Strata Eastといったブラックジャズ〜スピリチュアルジャズをも想わす作品を発表し、その限りない才能を発揮し続けている。  また、J Dillaの未発表作をYANCEY MEDIA GROUPとMahogani Musicとで共同リリースし、J Dilla Foundationに貢献した。 2014年1月にはKenny Dixon Jr.名義でのアルバム『MOODYMANN』をリリース。5月23-25日の3日間渡り、デトロイトにてSoul Skate 2014を開催する。

www.mahoganimusic.com
www.facebook.com/moodymann313
www.facebook.com/blackmahogani313


 

SHOUKICHI KINA-PASCAL PLANTINGA - ele-king


喜納昌吉/パスカル・プランティンガ - 忘んなよ
スエザン・スタジオ

Amazon

 1970年代の、沖縄民謡の大衆化の起爆剤となった音楽家、喜納昌吉は、これまでもライ・クーダーと共演したり、デヴィッド・バーンのレーベルから編集盤をリリースしたりと国際舞台でも活躍している音楽家だが、先日、ノイエ・ドイッチュ・ヴェレ(1980年代ジャーマンのニューウェイヴ)のレーベルとして知られる〈アタ・タック〉のアーティスト、パスカル・プランティンガとの共作を日本の〈SUEZAN〉(https://www.suezan.com/)レーベルから発表した。しかも、ミキシングはノイエ・ドイッチュ・ヴェレを代表するひとり、ピロレーターが担当。7インチ・レコード2枚とミニCDという特殊セットでのリリースだ。タイトルは『忘んなよ(わしんなよ)』。豪華ゴールドエンボスの見開きジャケット仕様。
 このコラボは、もともと沖縄音楽に傾倒していたパスカル・プランティンガが、何度も沖縄を訪れるなかで実現した企画。喜納昌吉の歌と演奏をパスカルが録音、その音源にドイツでパスカルが楽器の音を加え、それをピロレーターがミキシングしたものである。与那国島の洞窟の水がしたたる音などフィールド・レコーディングの成果も録音されている。
 沖縄音楽は、喜納昌吉が世界的にヒットした頃から、ワールド・ミュージックとして国際的に知られているが、ドイツの電子音楽と出会った『忘んなよ』は興味深い作品となった。アートワークも素晴らしいこの作品は、500枚の限定リリースである。

■喜納昌吉:(きな しょうきち、1948年6月10日)
 ウチナー・ポップを代表する沖縄音楽界の最重要人物の一人。喜納昌吉&チャンプルーズを率い、70年代から数々のヒット曲をもつ。「ハイサイおじさん」「花〜すべての人の心に花を〜」など多くの人々から親しまれている歌も数々ある。「すべての武器を楽器に」のメッセージを届ける平和活動家でもある。

■PASCAL PLANTINGA:(パスカル・プランティンガ)
 オランダ人ミュージシャン。80年代中ごろからヨーロッパを拠点に音楽活動を開始、ドイツのインディ・レーベル、〈Ata Tak〉の大ファンだったことから、レーベルを主宰するバンド、デア・プランらとの交流をはじめる。ピロレーター、フランク・フェンスターマッハー(ともに元デア・プラン)のユニット、A CIRTAIN FRANKのアルバムへの参加のほか、ソロ・アルバム『Arctic Poppy』を2005年に〈Ata Tak〉レーベルより発表。
 ベース奏者であるが、基本的なエレクトロニクスは一人で操るマルチプレイヤー。彼自身の出発点であるエレクトロミュージック、ニューウェイヴだけでなく、エキゾチカにも造詣が深く、晩年のマーティン・デニーとも交流があった。何作品かの映画音楽を手がけているほか、近年は沖縄音楽に傾倒し、幾度となく訪れている。


interview with Eiko Ishibashi - ele-king


石橋英子
car and freezer

Felicity

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 カフカ鼾のレコ発のあったヴァレンタイン・デイ、東京は一面の雪に覆われ、取材日の3月 7日もまた粉雪舞う寒い日だったがいまはもう桜が咲く春だ。石橋英子、ジム・オルーク、山本達久によるカフカ鼾の演奏は即興のドラマをつくるというより時間の経過にともない音そのものも変わらざるをえない、音の自律的なたわむれにも似た変化を聴かせる、痕跡だけのこし人物の消えた風景画を思わせたが、石橋英子の5作目『car and freezer』はその風景のなかにわずかばかりの意思と意図をまぎれこませ風景を一変させるというか、とてもあざやかなのです。音楽的には前作『imitation of life』をひきつぎ、つまりプログレッシヴなポップスと呼べるものだが前作ほど手法が前面に出るわけではない。全8曲、LPサイズの尺に作曲の巧みさ、演奏の自在さ、録音の豊かさ、歌唱の成長を織りこみ、あの先を聴かせるこの2枚組は全曲を石橋英子が作曲し、英語と日本語で歌いわけた日本語盤の歌詞は、石橋英子もソープランダーズとしてバックアップする前野健太が書いた。
 なぜこのような構成のアルバムにしたのか。インタヴューはいつもお世話になっている新宿某所の居酒屋の二階でめちゃくちゃ寒いのにビールなぞ飲みながらはじまった。

私も前野さんに出会って一緒にやっているのは不思議なところはありますけどね。今回の前野さんの歌詞も全然わからないし、共感はできない。共感はできないけれども不思議に惹かれるものが歌詞のなかにあるんです。

いまはひと段落したところですか?

石橋:それがそうでもないです。明後日からはじまる(取材は3月7日に行った)星野源さんのバンドのツアーに同行することになっているんです。

演奏家としての技能をみこまれた、と。

石橋:どうなんでしょう。私はプロフェッショナルな感じの演奏家じゃないし、どっちかっていうと邪道、不良音楽家ですから……。

そういうメンバーは求めていなかったということなんでしょうね。

石橋:リハに入ったときそう思いました。新しい何かが欲しい、という感じは受けました。

星野さんだと本数も多そうですね。

石橋:でも体調のこともあるから9箇所くらいで中日をちゃんととっているからひと月ちかく、かな。途中少しだけスケジュールに空きがあるんですけどその間は前野(健太)さんのバンドのツアー。

せっかく新作出すのに取材に時間とらなくていいんですか?

石橋:それで3月の頭に取材関係をかためて(笑)。

なるほどそれで(笑)。さっそく本題に入りますが『car and freezer』の音が仕上がったのはいつですか?

石橋:歌もふくめ録りが全部終わったのは2014年の1月初旬です。歌録りと同時にミックスを進めてマスタリングが1月末です。

今回は2枚組の変則アルバムですよね。こういった作品をつくろうと思ったきっかけはなんですか?

石橋:英語の歌の歌詞を書いてみたいというのがあったんです。聴いてきた音楽は英語の音楽ばかりだったのに英語の歌を書かないのはおかしいと思ったんです。(ヴェルナー・)ヘルルォークの映画とかでもドイツ語版と英語版があるじゃないですか。そういった発想でアルバムをつくったらどうかということなんです。

野田:石橋さんは以前も七尾旅人共演したり、音楽はつくるしメロディはつくるけど、歌詞にかんしてはそこまで執着があるかんじがなかったですよね。

石橋:そうですね。歌詞の内容、言葉でなにかを伝えるというより音とともに伝えたいというのが自分のなかではずっとあったんですが、今回は言葉によって音楽がどういうふうに聞こえてくるかということにすごく興味があったんです。

曲をつくって英詞を書くという順番だったんですか?

石橋:英詞を書くには勉強する必要があって、英語の本を読んだり映画の字幕を観たり、そういう期間が結構長かったので、曲をつくってベーシックを録って、それに仮歌を乗せてそれを前野さんに渡して「日本語の歌詞をお願いします」とお願いして、私は英語の歌詞をがんばってくったかんじですね。

石橋さんの書いた英語の歌詞を前野さんに渡したわけではないんですね。

石橋:おたがいに知らないでつくったんですね。

仮歌というのは――

石橋:鼻歌です。

前野さんは石橋さんの歌詞をもとに意図的に韻を踏んでいる箇所があった気がするんですが。

石橋:偶然の共通点はあるんですけど、私が仮歌でいれた「フンフンフン」みたいなものがそういうふうに聞こえたというのもあるみたいですよ。“遠慮だね”とか。

野田:昔から疑問だったんですが、前野健太と石橋英子がいっしょにやっているのは田山花袋の『蒲団』とフィリップ・K・ディックの『流れよわが涙、と警官は言った』を同時に読んでるような感じがあるんですよね。あるいは井上陽水と(ジェネシスの)『セリング・イングランド・バイ・ザ・ポンド』くらいは離れているというか。

石橋:私も前野さんに出会って一緒にやっているのは不思議なところはありますけどね。今回の前野さんの歌詞も全然わからないし、共感はできない。共感はできないけれども不思議に惹かれるものが歌詞のなかにあるんです。私も最初は前野さんは日常をフォーキーに歌う歌手だとよく知る前は思っていたんですけど、いざ聴いてみると捻れているというか分裂しているかんじがあるんですね。

たしかにその印象はありますね。

石橋:それが彼と一緒に音をつくると立体的なものとして繋がってくるんです。そういうふうに音をつくりたいと思うようになってから私は前野さんとお仕事したり、前野さんのバンドで演奏するのが楽しくなってきたんです。このグニャーッとしたかんじを音で表したい。演奏でかかわるときはそう思っていて、『car and freezer』をつくるにあたり、私とは遠い存在だからこそふたつの歌詞でつくったらおもしろいんじゃないかと思ったんですね。

野田:そこはあえてピーター・ガブリエルじゃなかった、と。

石橋:(笑)そもそも日本語と英語を同じ歌詞にはしたくなかったというのもあります。それだと逆に音が伝わらないと思ったんです。映画でも本でも翻訳を介するとかえって伝わらないということがあるじゃないですか。

それはありますね。同じものから派生した別々の言葉を提示することで音楽を立体的に聴かせるということですよね。歌謡曲、それこそテレサ・テンとかそういう世界ではバイリンガルの歌はままあると思いますが、それでも従属感系はもちろんありますから、それを考えると新しいですよね。

石橋:私もこういった例はあまり聞いたことはなくて、知らないというのもつくる要因のひとつでもありました。

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聴いてみたら(歌詞は)はっきり聞こえなくても、歌のもつキャラクターだったり歌詞の物語だったり、何かが伝わったらいいなと思ったんです。そういうのを大事に歌いたいというのはありました。

制作にとりかかったのは。

石橋:『imitation of life』が出た直後ですね。

音楽的には前作とどのような繋がりあるいはちがいをもたせようと思いましたか?

石橋:『imitation of life』はある意味自分のなかではわかりやすい音楽だったんです。なんていうんだろう、パッキリしているというか――

方向性が?

石橋:それもそうだし、音楽的にも複雑なことをやっているように聞こえるかもしれないけど、わかりやすくいえば「これはプログレです」という提示の仕方できた作品だと思うんです。次はそういうのではなくて、もっとシンプルだけど複雑、相反するふたつのものを一緒に出したいと思ったんです。ゴージャスだとよくよく聴くとメロディはシンプルだとか。そういうものをつくりたいと思ったんです。

『imitation of life』と較べると1曲につめこんだアイデアが多様な気がしますね。

石橋:アイデアが曲に向かう方向や角度に合ったものであればいいなと思ったんです。そのためにスタジオに行ってベーシックでもアイデアを決めこまず、スタジオでみんなでつくっていこうと思ったのも、そういった理由からでした。

今回もプロデュースとミックスはジム(・オルーク)さんですが、事前になにか相談しましたか?

石橋:デモは聴いてもらったんですが、ジムさんは細かいことはなにもいわないんですよ。「この曲いいね」くらいなもので。今回は事前にアレンジをつくりこまないとあらかじめ決めていたんですが、スタジオでちゃんとつくれるか不安でもあって相談したら「大丈夫、大丈夫! その場でできるよ!」ってそんなことしかいわないんですけど、そういうひとがいるのは心強くもありますよね(笑)。

実際はどうでした?

石橋:録音に一週間かかりました。前はアレンジをきめこんでいたので3、4日で終わったのでそれに較べると長いですね。

アレンジの方向性や細部をつめていくのに一週間かかった、と。

石橋:そうですね。それから歌詞を書いて、歌録りに1ヶ月半。

歌も今回はコーラスをふくめいろいろ試みていますよね。

石橋:そうなんですよ。歌は全部誰もたちあわず、ひとりで部屋で録っていたんですよ。毎日自分の声ばかり聴いてうんざりしました(笑)。

石橋さんもヴォーカリストとしてのキャリアも長くなってきましたから、ご自分の歌、歌唱を客観視する機会も増えたと思うんですが、歌、歌唱の面での具体的な変化はありましたか?

石橋:今回は前野さんに歌詞を書いていただいているのもあって大事に歌いたいというのはありました。英語と日本語だし「何これ!?」みたいな印象はあるかもしれないけど、聴いてみたら(歌詞は)はっきり聞こえなくても、歌のもつキャラクターだったり歌詞の物語だったり、何かが伝わったらいいなと思ったんです。そういうのを大事に歌いたいというのはありました。私いままであまり歌を練習してこなかったのもあって、今回は歌を家で録りながらですけど、ちゃんとやりたいと思っていました。千本ノックみたいな感じでしたよ。ダメだ、ダメだって、歌だけは何テイクも録りました。でも一日やっていると声って劣化してくるじゃないですか。

しかもどのテイクがはたして一番よかったのかわからなくなってきますよね。

石橋:そうそう。そのジャッジとペース配分の仕方を探るのに時間はかかりました。

その力のいれようは『car and freezer』を聴いてすぐにわかりましたよ。丁寧というか繊細ですよね。

石橋:あと前野さんの日本語の歌詞はテンションが高くないと歌えないんですね(笑)。いつも通り歌っていると負けるんですよ(笑)。

“私のリトルプリンセス”とか“ゴリラの背”を大事に歌うことはいまので石橋さんの方向性とはちがいますよね。

石橋:ないですよ(笑)。

ここで歌っている歌詞のなかの女性像について前野さんはなにかいっていましたか? これは石橋さんを想定してつくった、とか。

石橋:私に一番ちかづけて書いたのは最後の“幼い頃、遊んだ海は”らしいんですよ。“私のリトルプリンセス”なんかは、前野さんは毎日、新聞を読むらしいんですが、そこに載っているようなことを自分の歌詞では書けないのでいいチャンスだと思って書いたんじゃないですかね。多少の押しつけられた感はありますが(笑)。



「ゴリラの背 走ってる/ゴミ収集車 呼びつけて/叱りつける 叱りつけるの」とか、石橋さんがそんなひとだと思われても困りますもんね。

石橋:(笑)

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ひとくちに「ポップ」といってもいろんな意味があるじゃないですか。演奏が難しくなる事はデモの時点でわかったのですが、でもそれは、難しく聞こえないようにするための難しさでした。


石橋英子
car and freezer

Felicity

Amazon iTunes

収録曲のなかでは日本語盤と英語盤それぞれ細部でアレンジがちがうものがありますよね。

石橋:オーヴァーダブの音がちょっとちがいますね。

それはなぜ?

石橋:まず日本語と英語では言葉のリズムや倍音で聞こえ方が変わるので、オーヴァーダブの楽器の音色や演奏やリズムも変えた方がいいと思いました。

その意味では今回は前作よりつくりが細かいといえますね。

石橋:でもかなりいきあたりばったりでしたよ。前はある程度、たとえば3ヶ月とか、それくらいの間にすべての作業を完了することが多かったんですけど、今回はベーシックを録り終えて、芝居の音楽をふたつやりながら英語の勉強をして歌詞を書きつつの歌録りだったので延べでは結構時間がかかりました。期間としては半年くらい。

その芝居の音楽が『car and freezer』にフィードバックされていたりするんですか?

石橋:去年ファスビンダーの戯曲を元にした芝居の音楽をやったんですがそのときは歌ったんですよ。オペラ的とまではいいませんけどわりと声を張る歌い方で。その歌い方を前野さんが気に入って下さったというのもあり、日本語の歌を歌う時に少し役にたったかも知れません。

自分のあまり手をつけていない唱法を試す機会になった?

石橋:そうですね。娼婦の歴史を歌ったナレーション的な歌なので、少し低音にドスがきいている感じで歌いました。

前野さんの歌詞にも「チジョ」が出てきます(“ゴリラの背”)もんね。

石橋:マスタリング前に前野さんに聴いてもらったとき(ややモノマネぎみに)「あれは石橋さん、世の中の女性への挑戦状になりますよ」っていってました。意味はよくわかりませんが(笑)。

彼なりの女性性をふまえているんでしょうね。

石橋:私は前野さんにとっての女性性はわかりませんけど。

普通ではないのはまちがいないでしょうね。バンド・メンバーの「もう死んだ人たち」は前作と同じ布陣ですね。

石橋:そうです。

彼らがもっとも石橋さんの音楽を理解しているということですか。

石橋:そうですね。それに全員の役割分担がチームとしてできているということがあって、私は譜面やコードで伝えるのがヘタで(山本)達久もそういったものを読むことはできない。でも達久はリズムを何拍子だとか何小節だとか数字で知りたい。それを須藤(俊明)さんがいいかんじでとりもってくれるんですよ。

バンド全体がうまくかみあっているということですね。

石橋:みなさんを信頼しているので、今回は私がアレンジをガチガチに決めるよりその場でやっていくほうが可能性も広がると思ったんです。

全体としてはポップにしようという意図はありましたか?

石橋:ひとくちに「ポップ」といってもいろんな意味があるじゃないですか。演奏が難しくなる事はデモの時点でわかったのですが、でもそれは、難しく聞こえないようにする為の難しさでした。昔のポップって演奏すると難しいじゃないですか。昔の歌謡曲もそうだし。そういうチャレンジをしたかったというのはあります。

石橋さんが今回の担当楽器はピアノとシンセサイザーと──

石橋:あとはマリンバ。

“ゴリラの背”のマリンバは“Frame By Frame”みたいですね。

石橋:なんですか、それ?

キンクリ(キング・クリムゾン)です。

石橋:ああ、あれはリズムで結構苦労した曲ですね。

あのテンポで実際に叩いているんですか?

石橋:そうですよ。

マリンバは習っていたんですか?

石橋:ピアノの先生からもらったんですけど、使いはじめたのはモンハン(MONGHANG)からですね。

そうでした。石橋さんが弾ける楽器はほかにドラムと──

石橋:フルート。ヘタですけど。ギターも弾きますけど人前では弾きません(笑)。

曲をつくるのは基本的ピアノですか?

石橋:そうです。私基本的にめんどくさがりだから押した音の出る楽器が好きなんですよ(笑)。ギターはチューニングして音出すまで時間がかかるじゃないですか。押さえた弦と弾いている弦がちがうとヘンになっちゃうし。

そんなこといったらなんだったそうですよ(笑)。



野田:『car and freezer』はジャケットはすごくいいですよね。シュールレアリスムの絵画的でもあるし山下達郎のジャケットっぽくもある。

石橋:そうなんですけど、実はただの廃墟(笑)。

遠目からだとリゾート音楽なんだけど近づくと違和感がある。

石橋:(笑)ポップってそういうところが多分にあると思うんです。一見聴き心地はいいけどよくよく聴くとエッっていう異様な部分があるものという気がする。

タイトルは曲名からきていますが、この曲名を選んだ理由はなんですか?

石橋:茂原(千葉県茂原市)に車と冷蔵庫が棄てられているんですよ。田んぼとかに。長年放置されているんですけど。

原風景ですか?

石橋:そうですね。この写真を撮ったのは行川アイランド(千葉県勝浦市)の廃墟だったんですが、そこにも車と冷蔵庫が棄てられていたんですよ。タイトルについては迷っていたんですけど、これしかないって(笑)。

野田:そのねじくれ方が石橋さんらしいですよね。

石橋:茂原にはほんとうに車と冷蔵庫が大量に棄てられているんですよ。

冷蔵庫ってさいきんあまり棄てられていないですもんね、以前は結構見かけましたが。日本のリアルな風景だという気がしますね。

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デモをつくっているときでも録音するときも、思いがけない演奏を待つという姿勢みたいなものが必要だと思うんですね。そういうことは即興の活動を通してしか得られなかったものだと思うんです。

このアルバムをつくるにあたって集中的に聴いていた音楽はありますか?

石橋:結構電子音楽を聴いていましたね。あとはセシル・テーラー……

それはずっとじゃないですか?

石橋:そうかも(笑)。

去年のセシル・テイラーのライヴには行かれました?

石橋:行きました! すばらしかったです。お芝居を観ているみたいでした。すごいですよ、ピアノに坐るまで15分くらいかかりましたから。ソデからゆっくり出てきて、なかなか坐らない。ダンスというか踊りなんでしょうね、きっと。素晴らしいダンスと演奏でした。

ピアニストとしてセシル・テイラーの影響はあるんですか?

石橋:私はジャズはよくわからないのですが、好きなんです、あの鮮やかな感じが。フリージャズってデタラメじゃないかと若いときは思っていたんですけどセシル・テイラーはハーモニーがきいれですよね。全部が真珠のような輝きというか、和音を構成する音の粒が視角に訴えてくるんです。あとはペースですね。演奏全体のペースというか構成が好きなのかもしれないですね。

ピアノでいえばむしろクラシックの素養のほうが強い?

石橋:クラシック・ピアノを子どものころはやっていましたけど、音楽としてのクラシックが好きというわけでもないんですよね。クラシックは年に2、3回しか聴かないですし。

現代音楽は聴くでしょ?

石橋:アイヴスなんかは好きで聴きますけどベートーヴェンとかバッハとか、嫌いじゃないですけど日常的には聴いていないですね。最近はカセル・イェーガー(Kassel Jaeger)の電子音楽ばかり聴いています。フランス人で本名はフランソワ・ボネという名前で──

IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)とかのひとですか?

石橋:たしかGRMのメンバーでしたね。

ミュジーク・コンクレート系?

石橋:どうなんでしょうか。スウィートなローランド・カイン(Roland Kayn)みたいなかんじですね。ひんやりしているけどほの少しだけ甘い(笑)。

自分でそういう作品を発表したいと思わないんですか? ジムさんなんかは〈Mego〉をはじめいろんなレーベルから電子音楽作品を出すじゃないですか?

石橋:私も実は今度〈Mego〉から秋田(昌美)さんとのデュオの音源を出すんですよ。

実験的といえば、カフカ鼾は石橋さんのなかではバンドなのでソロとは位置づけがちがうということですか?

石橋:そうですね。

でもこのまえのスーパーデラックスでの『okite』のレコ発ライヴはすごくよかった。3人がそれぞれのパートで実験的なことをやりつつ全体がアンサンブルになっていて、しかもその構成がすばらしかったですよ。

石橋:カフカ鼾はおもしろい場所だと思いますよ。3人がこそこそ友だちに隠れてやってきたことをもちよるようなかんじ。今日はなにをもってきたの?って(笑)。

即興とも現代音楽ともつかない演奏がゆっくりとでも確実に変化していくんですよ。

石橋:オーストラリアのザ・ネックスというバンドにちかいかもしれないですけど。

でもあれともまたちがいますね。

石橋:そうですね。

即興をしているときの閃きというか音楽体験が作曲にフィードバックすることはあるんですか?

石橋:あると思います。ああいう活動があるからこそ、同じものはやりたくない気持ちになれるし、そう強く思うんですね。デモをつくっているときでも録音するときも、思いがけない演奏を待つという姿勢みたいなものが必要だと思うんですね。そういうことは即興の活動を通してしか得られなかったものだと思うんです。即興のライヴをしてもお客さんはあまり来ないですけどね(笑)。でもやっぱりやりたいんですよ。ああいう場所こそ完全な場所という気がします。お客さんも思いがけない演奏を楽しみにしていて、自分たちもなにをするか事前にはわからない、それでもその場に集まっているのが音楽の不思議さというか音楽をやることのすばらしさをかんじさせるエッセンスかもしれないです。

たとえば既存の曲を再演するときも予定調和が崩れることを期待してますか?

石橋:そうです。そういうものがなければ演奏が生きないし曲が呼吸しない。

野田:大袈裟な表現かもしれないですけど、それは今日の消費的な文化に対する抵抗というか、そういう気もしますけどね。

石橋:ああ。

野田:あともうひとついうと、なんでもフラットになったポストモダン的な世の中の見方に対する抵抗というか、そこにすごく共感するんです。

石橋:いまの音楽には距離感がないと思うんです。演奏する側と聴き手との間にも距離感がないし、音のなか録音物のなかも隙間がないというかパツンパツンだし。風通しが悪いかんじがほんとうに息苦しいですね。

野田:『car and freezer』ではエクスペリメンタルな方向性にグワッと行きたいところをあえてポップ・ミュージックに挑戦しているのがいいと思うんですよ。

石橋:でも次はちょっとふりきれたのをやろうとも思ったりしているんですよ(笑)。

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日本のミュージシャンは、海外にいって自分のことを知らないお客さんの前で演奏するような経験が、きっと海外より少ないと思います。私も海外での演奏の経験がそんなに豊富というわけではないですが、ひとりでブラッと行って誰も自分のことを聴きに来ていない状況のなかで演奏した経験は私にとってとても大きいですし、そういう経験があるからもっと誰の物でもない、自分の音楽をやろうと思えるんだと思います。


石橋英子
car and freezer

Felicity

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〈Drag City〉から出た『imitation of life』の反応はどうでした?

石橋:『New York Times』をはじめ、イギリス、アメリカ、カナダの雑誌のレヴューでとりあげてもらいました。おおむねよい反応だったと思います。

野田:海外は日本人が〈Drag City〉から出すと話題にしてくれるんだよね。問題は日本が、とくに安倍政権になってからマズくて、ほんとうにうちに閉じこもっているかんじというか閉塞感がすごいですよね。今回日本語盤と英語盤で出したのもそういう意味でいえば正解というか。英詞の作品を出すということ自体外に向かっているわけだから。安倍晋三はローリング・ストーンズのライヴを貴賓席で観たんでしょ? 海外メディアは安倍政権を「スケアリー(scary)」だというんですよ。好戦的で右よりで、そんな人間がローリング・ストーンズを観にきている。これがイギリスだったら『ガーディアン』あたりが絶対騒いでいるはずなのに日本だとなにも起きないことの危機感というかね。すごくいま音楽をやるのはある意味ではイバラの道かもしれないと思いますけどね。

石橋:そうですよね。

日本のシーンとか海外のシーンとか考えたりしますか?

石橋:日本のミュージシャンは、海外にいって自分のことを知らないお客さんの前で演奏するような経験がきっと海外より少ないと思います。私も海外での演奏の経験がそんなに豊富というわけではないですが、ひとりでブラッと行って誰も自分のことを聴きに来ていない状況のなかで演奏した経験は私にとってとても大きいですし、そういう経験があるからもっと誰の物でもない、自分の音楽をやろうと思えるんだと思います。いまはとくに、期待されているものがあると、それをやらざるを得なくなってしまう。背負わなくてもいいことをも背負ってしまう。そうなると、誰も気づかない間に音楽は縮こまってしまう。

海外ツアーの予定はないんですか?

石橋:バンドで、と、考えてはいるのですが、飛行機に乗れないメンバーがいるので(笑)。でも行きたいです。

船で行ったらいいですよ。

石橋:(笑)あるいはまたひとりで行くか。

ヨーロッパにまた行けばいいんじゃないですか?

石橋:前にポーランド、スロヴェニア、イタリア、ドイツ、フランスを1ヶ月くらいかけてひとりでまわったことがあるんですけど、ポーランドでは会場に行ったら主催者から「なにしに来たの?」っていわれて、お客さんは3人でうち1人は上のクラブで酔っぱらって休むために降りてきたひとでしたけど(笑)。

行くにあたり不安はなかったですか?

石橋:向こう見ずなところがあるんですよね。でも行ってみないとわからないこともあるし、楽しかったです。

でもそれはブルーマンにしろジャズメンにしろ音楽の原点でもありますよね。

石橋:イタリアのカターニャでオペラハウスのような劇場で演奏することになっていたんですけど用意された機材がカシオのエレピだったこともありましたよ(笑)。

それでやったんですか?

石橋:やりました(笑)。エフェクターをかきあつめてシンセ化して即興(笑)。

野田:アメリカ南部に行ったセックス・ピストルズみたいですよね。でも『car and freezer』は海外でもうけると思いますけどね。

石橋:また〈Drag City〉から夏くらいにリリースの予定がありますけど、アナログ盤1枚の予定なので、それなら日本語と英語のミックス盤がいいんじゃないかと思っているんです。

ああそれは名案ですね。

石橋:〈Drag City〉は日本語がいい、というかもしれませんが。

そういうこともあってLPサイズに収まるアルバムにしたということですか?

石橋:46分以内のものという頭はなんとなくありますね。つめこんでも仕方ないですからね。

それ以上の情報量が1曲のなかにありますからね。

石橋:そういうことのほうが大事かなと思います。1曲の強度のほうが。(了)


●ライヴ情報

・石橋英子「car and freezer」発売記念ツアー at 四日市 radi cafe apartment
2014.5.9(fri) OPEN / START 19:00 / 20:00
VENUE 三重・四日市 radi cafe apartment
ADV/DOOR 前売¥2,800/当日¥3,300 + drink

LINE UP 石橋英子 with もう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子、坂口光央)

TICKET radi cafe apartment (ラジカフェ)HPにメール予約フォームがございます。
https://www.radicafe.com/

INFO radi cafe apartment 059-352-4680 / locci@radicafe.com

※バンドでの出演です


・石橋英子「car and freezer」発売記念ツアー at 愛知・名古屋 得三
2014.5.10(sat) OPEN / START 17:00 / 18:00
VENUE 愛知・名古屋 得三
ADV/DOOR 前売¥2,800/当日¥3,300 + drink

LINE UP 石橋英子 with もう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子、坂口光央)

TICKET ※2/15~23 e+先行予約※
https://eplus.jp/

チケットぴあ(P:224-967) / ローソンチケット(L:46661) / e+ https://eplus.jp/
一般発売 3/8

INFO JAILHOUSE 052-936-6041 / https://www.jailhouse.jp/

※バンドでの出演です


・キツネの嫁入りpresents第五回スキマアワー
『石橋英子「car and freezer」レコ発編』

2014.5.11(sun) OPEN / START 15:00 / 16:00
VENUE 京都・元・立誠小学校
ADV ¥3,000

LINE UP 石橋英子 with もう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子、坂口光央)
前野健太とソープランダーズ(ジム・オルーク、石橋英子、須藤俊明、山本達久)
キツネの嫁入り

TICKET ※メール予約 → office@madonasi.com※

INFO office@madonasi.com

※バンドでの出演です


・石橋英子「car and freezer」発売記念ツアー at 東京・渋谷 WWW
2014.5.16(fri) OPEN / START 18:30 / 19:30
VENUE 東京・渋谷 WWW
ADV/DOOR 前売¥3,300/当日¥3,800 + drink

LINE UP 石橋英子 with もう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子、坂口光央 ゲスト:前野健太)vj:rokapenis
七尾旅人

TICKET ※2/15~23 e+先行予約※
https://eplus.jp/

チケットぴあ / ローソンチケット / e+ https://eplus.jp/
一般発売 3/8

INFO WWW 03-5458-7685 / https://www-shibuya.jp/

※バンドでの出演です


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