「P」と一致するもの

MSC - ele-king

 MSCの登場は衝撃的だった。彼らがそのダークなサウンドとことばで切りとってみせた新宿のストリートは、以降の日本のヒップホップに新たな風景をもたらしたのではないだろうか。KAN(漢 a.k.a. GAMI)、TA-BOO(TABOO1)、PRIMAL、O2、GO a.k.a.G-PRINCEから成る彼らのデビューEP「帝都崩壊」(2002/MS CRU名義)、そしてファースト・アルバム『MATADOR』(2003)が初めてアナログ化される。後者はカセットテープもアリ。伝説を、いまふたたび。

Artist:MS CRU
Title:帝都崩壊(EP)
Label:P-VINE
Release: 2026.1.21
Format:Vinyl(帯付き仕様/完全限定プレス)
Product Number:PLP-8290
Stream / Download / Purchase:https://p-vine.lnk.to/qAsYHEBB

Tracklist:

SIDE A
1 INTRO
2 幻影
3 満月の挽歌

SIDE B
1 快感
2 構造改革 Remix

Artist:MSC
Title:MATADOR
Label:P-VINE
Release: 2026.1.21
Format:Vinyl / Cassette(帯付き2枚組仕様/完全限定プレス)
Product Number:TAPE / PCT-77 LP / PLP-8291/2
Stream / Download / Purchase:https://p-vine.lnk.to/XoBDhVKf

Tracklist:

SIDE A
1. INTRO
2. 無言の蓄積 / PRIMAL, TA-BOO, O2, KAN
3. 新宿 Running dogs / KAN, PRIMAL
4. 新宿 U.G.A remix 03' / MIC SPACE

SIDE B
1. 甲斐性 / O2
2. スペース・ペース / SIDE RIDE and Ah-
3. INTERLUDE
4. ALERGY / KAN, O2 feat 志人

SIDE C
1. MASTA PIECE (TO MILITIA) / TA-BOO feat DJ BAKU
2. 支離滅裂 / PRIMAL
3. For S / MSC feat Red Rice & 若旦那 from 湘南の風
4. FREAKY 風紀委員 / MIC SPACE feat DJ BAKU

SIDE D
1. MATADOR OFFICE feat DJ BAKU
2. 反面教師 / KAN
3. MATADOR / MSC
4. OUTRO

※TAPEは上記のSIDE-AとBがSIDE-A、上記のSIDE-CとDがSIDE-Bになります。

東京・新宿を拠点に活動していたKAN(漢 a.k.a. GAMI)、TA-BOO(TABOO1)、PRIMAL、O2、GO a.k.a.G-PRINCEによる伝説的なグループ、MSCの2003年にリリースされた衝撃の1stアルバム『MATADOR』とその前年の2002年にMS CRU名義でリリースされた1st EP『帝都崩壊』が待望の初アナログ化!
デモCD-R『M.S.C.D.001』やヒップホップ専門雑誌「blast」の連載から生まれたコンピレーション『homebrewer's vol.1』への参加で注目を集める中、2002年に前身のMS CRU名義で1stEP『帝都崩壊』、翌2003年にMSC名義で1stアルバム『MATADOR』をリリース。過激で生々しい描写や日本語を駆使した巧みなライミングなどでシーンに大きなインパクトを与え、どちらも00年代のストリートミュージックを代表する作品として今でも語り継がれている名盤中の名盤であり、そのリリースから20数年の時を経て、ついに帯付き仕様/完全限定プレスでの初アナログ化が実現。『MATADOR』は2枚組仕様でのリリースで同時にカセットテープもリリースになります。

RCサクセション - ele-king

 彼らはそのころ交差点に立っていた。だが、舞台は寂しく、かつていた大勢はどこか別のところに行ってしまったようだった。無理もない。1976年4月23日にはラモーンズのデビュー・アルバムがお目見えとなるのだ。激流はロンドンに伝播し、同年10月にはダムドの「ニュー・ローズ」、そのよく月には「アナーキー・イン・ザ・UK」が世界を襲う。まさに、いまここから歴史的に、まだ誰もが見たことのない場所でその後の音楽に決定的な影響を与える大きなことがはじまろうとしているそのとき、“大きな春子ちゃん”に感情移入する人が少なかったことは容易に想像できる。
 が、しかしそんな逆境のなか、いちどは激流に流されながら蘇った極めて希有な作品がRCサクセションの『シングル・マン』だった。先日、新曲“おじいちゃん”を発表したばかりの坂本慎太郎と話す機会があった。そのときRCの話になったのは、『暮らしの手帖』36号の「わたしの大好きな音楽」コーナーにフィーチャーされた彼の選んだ「歌詞が好きな日本の音楽」10曲のうちの1曲がRCの“わかってもらえるさ”だったからだ。それで、RCでいちばん好きなアルバムは? という話題になったとき、酔っていたので記憶はおぼろげだが、たしか『シングル・マン』で話は落ち着いたと思う。
 まあ、「いちばん好きなアルバム」とは、そのときどきの心情や状況によって変わるものではあるが、RCのなかでこのアルバムがいちばん好きだという人は多いだろう。いまではすっかり名盤として広く認識されているが、しかし、ラモーンズのデビュー・アルバムの2日前にリリースされた『シングル・マン』は、リアルタイムではみごとな三球三振だった(すぐに廃盤になった)がゆえに、『シングル・マン』が1970年代なかばの日本(東京)という文脈のなかで書かれた文章、その社会においていかなる存在だったのかという評価の痕跡をぼくは見たことがない。いまにして振り返ればヒッピー的なるものの痛切な末期症状という解釈もできるかもしれない——、いや、しかし、これは時代から切り離され、リリースから数年後にタイムレスな音楽として広く評価された作品である。音楽もそうだが、このアートワークもタイムレスな魅力がある。だから、その出会いは十人十色で、感じる魅力、好きな度合いというのは人によって異なっていてしかるべきなのだろう。以下に書くのは、ぼくの感想文である。
 ぼくは、ライヴのクライマックスで“スロー・バラード”を歌っていた時代にファンになったひとりなので、最初はそのスタジオ録音が収録されているから聴いてみたいと思って高校生のときに買った。そして、聴いているうちにほかの曲もどんどん好きになっていった。感情がとめどなく噴出する“ヒッピーに捧ぐ”がいちばん好きだったときもある。“やさしさ”や“甲州街道はもう秋なのさ”のようなヘルマン・ヘッセ風の屈折した内面を歌った曲も好きだったし、ここ数年はずっと“うわの空”が好きでいる。
 “スロー・バラード”が入っているからといって、『シングル・マン』はまったく楽天的な作品ではない。アルバムを通して、不信、気まずさ、悲観、辛辣さ、そして愛情と憎悪が独白される。他者との関係に戸惑い、ときに苛立っているのは“ぼくはぼくの為に”や“やさしさ”、同時期に録音された“お墓”(のちに『OK』に収録)からうかがえる。なにしろ“ファンからの贈りもの”という、他者を拒絶する歌からアルバムははじまっているのだ。

 ラモーンズのデビュー・アルバムとほとんど同時期に出てしまった『シングル・マン』は、その前年に出るべきアルバムだった。録音は1974年の秋からはじまって1975年の春には終わってる。しかしながら、所属事務所内のトラブルによってバンドは干され、完成から1年以上経ってからのリリースになってしまった。また、RC史上ではドラムをフィーチャーした最初のアルバムであり、音楽性を高めるべく200%の力を注いだ作品だったのに拘わらず、楽曲のアレンジやミックスに関してバンドは納得していなかったようで(編曲は井上陽水のミリオンセラー作『氷の世界』を手がけた元モップスの星勝)、そもそもこのリリースにいたる経緯自体も幸福とは言えなかった。しかしながら『シングル・マン』は、RC/清志郎の全作品のなかでも——ぼくの主観的な印象だが——5本の指に入る人気作だと思われる。
 廃盤になったアルバムが音楽評論家の吉見佑子による再発運動によって正式に再発されたのは、日本のポスト・パンクが絶頂を迎える1980年のことだった。強烈な個人主義的告白——外面的な事件よりも内面的な心理への没入——を同調圧力の国に叩きつけているこのアルバムを、ぼくは聴き入ったものだった。そこには、集団の価値観や社会規範に打ち解けることのできない個人が世界とどう折り合いをつけるか、という葛藤が描かれている。そしてここが、ポスト・パンクに夢中だった高校生も入り込める、作ったほうでも予期しなかった共鳴点のようなものだったのだろう。“甲州街道はもう秋なのさ”におけるむき出しの疎外感は言うに及ばず、“ヒッピーに捧ぐ”における「豚どものを乗せて」というフレーズは、じつはパンクがヒッピーの改良版という説を裏付けてもいる。アルバム全体からは──初期のRCからバンドが解散するまで通底した反抗心とともに──どうにもならないやり切れなさが滲み出ているし、その救済として最後に“スロー・バラード”がある。それは美しい、無垢な恋愛感情かもしれないけれど、駐車場に停まった車のなかという閉ざされた空間における個人的なできごとに過ぎない。パンクやヒッピーにあった連帯(ソリダリティー)は『シングル・マン』においては排除されている。そしてそれを排除し、閉じていることが、この音楽作品に力を与えてもいるのだろう。

 音楽的には、高校生のぼくにはひと世代前の「大人の音楽」に思えた。 “冷たくした訳は” や“ファンからの贈りもの”、“スロー・バラード”といった曲の背後にある清志郎にとっての重要な影響源=メンフィス・ソウルをぼくが本格的に聴くようになるのは、もっとずっと後のことだった。換言すれば、ぼくは清志郎から南部のソウル・ミュージックを教えられたことになる。もちろん自分の人生で最初に買ったソウルのアルバムは『Otis Blue』だった。(*)
 高橋康治の『忌野清志郎さん』の巻末対談で言っていることだけれど、清志郎は、喩えるならシカゴ時代のフランキー・ナックルズのように、ひと時代前の音楽も、音楽に力があればどんな流行のなかでも通用することを身をもって教えてくれた人でもあった。これはリヴァイヴァル現象のことではない。リヴァイヴァル現象とは流行のことであって、そこに当てはまらない音楽、流行に敏感な人なら鼻にもかけないような音楽であっても光り輝くことができる……フランキー・ナックルズが1980年代の欧州ニューウェイヴに夢中な黒人の子どもたちに過去のものとされていたフィラデルフィア・ソウルの輝きを教えたように、ニューウェイヴに夢中な日本人の子どもたちに1960年代のメンフィス・ソウルのすばらしい光沢を伝えたのだった。(**)

 サザン・ソウルとは「ゴスペルに根ざし、感情をむき出しにした音楽のことである」、「それは完全にヴォーカルの芸術である。ソウルは共通の経験、つまり聴き手との関係を前提としている。これはブルースにも見られることであり、歌い手が聴衆の感情を確認し、それを展開してゆく」、こう説明するのは高名な黒人音楽評論家のピーター・ギュラルニックが引用したイギリスの作家クライヴ・アンダーソンだ。
 アンダーソンが定義する「ヴォーカルの芸術」という観点でいえば、忌野清志郎はまごうことなきソウル・ミュージシャンだったと言える。「世俗化されたゴスペルがブルースの“冒涜”を取り込み、ただひとつのもっとも重要な主題——愛の気まぐれ(the vagaries of love)——だけを扱った」音楽、しかしそれはリズム・アンド・ブルースの発展型で、すなわち魂の告白であると同時に、世俗的で作為的なものでもある。「ホーンが鳴り響き、二重の意味を含む歌詞があり、絶叫する歌手がいて、打ち鳴らされるリズムがある、そういう音楽」——オリジナルのソウル・ミュージックは「黒人の連帯を明確に表現していた」が、ただ先にも書いたように『シングル・マン』のそれは連帯を拒絶するものだった(「」内はすべてPeter Guralnick『Sweet Soul Music』からの引用)。
 とはいえ、ぼくが高校時代に観た二回のライヴ公演は、政治的には無色で、曖昧な叫びだったかもしれないけれど、それゆえ大多数に対して連帯を呼びかけるものだった(19世紀のフランスの詩人にして蓄音機の発明者、シャルル・クロス風に言えば「大人たちを怒らせるため、子どもたちを喜ばせるため」である)。『シングル・マン』の内的葛藤が、外の世界に向けての力強いエネルギーへと転換されていった話は、先述の『忌野清志郎さん』に詳しい。人と違っていることは良きことだとされるその世界のなかで、ぼくたちは熱狂し、舞い上がった。ステージで熱唱している人が、その数年前に『シングル・マン』をつくっていたことは、ぼくにとっては切り札のカードのようなものだった。あんな寒々しさと熱い情熱を孕んだアルバムをつくった人がど派手なロックンロールをやっているのだから、ここにはその表面上の派手さ以上のなにかがあるに違いないと思わせたのだ。

 『シングル・マン』で残念なのは、 “レコーディング・マン(のんびりしたり結論急いだり)” があまりにも短いことだ。RC史上もっとも実験的な曲、ビートルズにおける “レヴォリューションNo9” 、ファンカデリックにおける “Wars of Armageddon” になりえた曲だったが、1分ちょっとしかないからインタールードのようになってしまった。
 それはそうだが、この時代のバンドの音楽的な野心の高さの証跡でもある。ほかにも “夜の散歩をしないかね” という基本はブルース・ロックだが、RCには珍しくジャズ風にテンションコードを加味した曲もあって(ピアノを弾いているのは加入前のGee2wo)、これがまたじつにムードのある良い曲なのだ。“大きな春子ちゃん” は “ぼくの好きな先生” 路線のRC流フォーク・ソングのユーモアと牧歌性のある曲で、“うわの空” は“ぼくの自転車のうしろに乗りなよ” 路線のRC流サイケデリック・ソングだ。自分の好みという点で言えば、この4曲はほんとうに好きな4曲である。メロディが好きだし、後者2曲の日常的な非日常チルアウト・フォーク・ソングに関しては、そこはかとない寂しさがぼくには心地よく感じられる。“うわの空” の後半の展開はややピンク・フロイドっぽいとは思うのだが、この曲の歌い出しの「君は〜空を飛んでぇえ〜」という歌詞とメロディのコンビネーションはすばらしいとしか言いようがない。

 今回発売された「デラックス・エディション」、2枚組のうち1枚はオリジナル盤で、ZAKによるリマスター。もう1枚には、“スロー・バラード”と“やさしさ”のシングル・ヴァージョンをはじめ、“わかってもらえるさ”(そして“よごれた顔でこんにちわ”)のZAKによるリマスターほか、“恐るべきジェネレーションの違い (Oh,Ya)”と“甲州街道はもう秋なのさ~ANOTHER MIX~”の未発表ヴァージョンに加え、テレビ神奈川の番組「ヤングインパルス」における1976年4月25日のスタジオ・ライヴ(三田格編集の『生卵』には、この番組のことをチャボ宛てに綴った清志郎の手紙が掲載されているのだが、そうか、このことだったのか!)から6曲がZAKによるミキシングのもと収録されている。そのなかには“ぼくの眠るところ”という未発表曲がある。このライヴ演奏が思いのほか良かった。冬の時代のRCに思い入れがある人には興味深い内容かもしれない。ぼくは『シングル・マン』の録音がはじまる前——たいした活動もなかった頃——に清志郎が書いた日記、『十年ゴム消し』を愛読したひとりだ。あんな風に生きられたらいいなぁと憧憬したものだった。

(*)永遠の青年、ニック・ヘイワードが在籍したことで知られるヘアカット100なるUKニューウェイヴ・バンドのファースト・アルバムのジャケットに、メンバーのなかでひとりだけアフリカ系がいるが、彼こそは、1967年12月10日のオーティス・レディングら7名を死亡させた飛行機墜落事故における犠牲者のひとり、オーティスのバックバンド、バー・ケイズのドラマー、カール・カニンガムの実弟、ブレア・カニンガムである。ちなみにバー・ケイズのメンバーはこのとき全員まだ10代だった。ブレア・カニンガムも一流のドラマーとなって、渡英し、ヘアカット100での活動を経ると、一時期プリテンダーズでも叩き、なんと再結成したギャング・オブ・フォーでも演奏した。その後は、ポール・マッカートニーのバックバンドに加入し、数年にわたって活動をともにしている。

(**)メンフィス・ソウルの奥深さに触れることができたのは清志郎を聴いていたからだ。いつか鈴木啓志さんにあらためて書いてもらいたいところだが、ここは若い読者のために少しだけ註釈を。1955年2月にメンフィスのメシック高校で10代のエルヴィス・プレスリーが演奏したときを、グリール・マーカスは、その後のティーンエイジャーの世界の風景を完璧に変えた「ビッグバン」と呼んでいる。そして、その何年後かあとにメシック高校の舞台に立っていたのが、スティーヴ・クロッパーやウェイン・ジャクソン、ドナルド・ダンたちだった。また、人種差別/分離が根強かったメンフィスにおいては、黒人用のブッカー・T・ワシトン高校があった。ここの卒業生に、〈スタックス〉が誇る天才オルガン奏者、ブッカー・T・ジョーンズがいた(ほかにもアイザック・ヘイズ、デイヴィッド・ポーター、ウィリアム・ベル等々)。やがて彼らが交わって、人種差別を公然と批判するバンド、ブッカー・T・アンド・ザ・MGズが生まれる。政治的ユートピアとしてのレーベルとバンドがいるなか、デイヴ・マーシュが「卓越したバラード歌手であり、リトル・リチャードの精神を受け継ぐ真のロッカー」と最大限の賛辞を送ったオーティス・レディングが、1956年から頂点にいたエルヴィスを引きずり下ろすかのように登場する。ちなみに、「ガッタ、ガッタ、ガッタ」というリフレインはオーティスの真似だと言われているが、そもそもこれはオーティスのジェイムズ・ブラウンの模倣にはじまっている。

Wang One - ele-king

 インターネットはインディ・アーティストと彼ら/彼女らをサポートする人々に大きな恩恵を与えてきた。ネットがなければ〈Maltine Records〉や〈TREKKIE TRAX〉の台頭はあり得ず、『Pitchfork』が「日本の重要なインターネット・レーベル10選」という特集を組むこともなかったかもしれない。我々リスナーも、ほとんど週替わりで出現するスターたちに心を躍らせた。

 中国でもそれは同じらしく、南京出身のLola Oneと上海出身のCase Wangによるインディ・エレクトロニック・ユニット “Wang One” も、それに類する経験を経てきた。音楽コンシェルジュ・ふくりゅう氏によるインタヴューの中で、ふたりは「ほとんどの曲をNetEaseから学んだ」と認めている。そこではダフト・パンクやYMOの楽曲が次々とサジェストされ、自身がサイトにアップロードした自作曲がコミュニティ内で高い評価を獲得した。

 陰謀論が跳梁跋扈し、今日も元気にヘイトが駆け回っている電脳空間。けれども、そこにはまだ見ぬ音楽を求めてさまよう者とそれに応えようとするコミュニティの蜜月の関係があった。この大海から誕生したスターも枚挙に暇がない。

 日本ではハチP(米津玄師)をはじめ多くのプロデューサーがニコニコ動画から羽ばたいていったが、それぞれシグネチャーなサウンドは確認できるものの、音楽ジャンルとして「これ」と特定できるケースは少なかった。1曲の中にロック的な要素があり、パンクっぽいニュアンスがあり、エレクトロの手触りがある。

 Wang Oneはユニットとしてこれまで4曲発表してきたが、いずれも異なる世界観とテクスチャーで構成されている。デビュー・シングル “Walk On Shame” はファンキーなディスコ・チューンで、2曲目の “Oh Young Boy” はチャーチズとラナ・デル・レイが共にスタジオ入りを果たしたような内容だ。そして最新シングル “IDK - idontknowwhatyoutalkingabout-” では、アシッド・ハウスの上でLolaのパンク・ヴォーカルが響いている。ダンスフロアに根差しながら、射程はもっと長い。鳴らされてるのが真夜中のクラブだけでなく、そこは夕方のライヴ・ハウスかもしれないし、野外フェスのステージかもしれない。手探りの部分もあるだろうが、ふたりのサウンドはさまざまなポテンシャルを秘めている。

 そういった紆余曲折をレーベルとして続けたのが、まさしく〈TREKKIE TRAX〉だ。彼らが “IDK - idontknowwhatyoutalkingabout-” のリミックスを手掛けたのは、なかば必然めいたものを感じられる。その上、彼らはULTRA JAPAN 2025のメインステージでこの曲をプレイした。レーベル・クルーであるFellsiusの “Boss House” や、彼らがここぞというときにかけるOutlanderの “The Vamp (TTC Kick Rebuild)” など、〈TREKKIE TRAX〉総集編のようなDJセットの中で燦然と輝く “IDK (TREKKIE TRAX CREW Remix)”。“Strings of Life” が香るピアノのリフに、脱構築されたビートがお台場の空に舞った。

 同じく “IDK” のリミキサーとして、ベルリンを拠点に音楽シーンで暗躍するマーク・リーダーもクレジットに名を連ねている。マンチェスター育ちの彼は、ニュー・オーダーの “Blue Monday” の誕生に立ち会い、石野卓球をベルリンへ送り込んだ。また彼は、Wang Oneと同郷のインディ・バンド “STOLEN” の世界デビュー・アルバム『Fragment』のプロデューサーを務め、自身のレーベル〈MFS〉からリリースさせた。大陸間を横断しながら活動する様はまさに “密輸人”。なお、彼は『Fragment』に収録された “Chaos” のリミックスVer.も提供しており、そちらも大変クールだった。

 今回の “IDK -idontknowwhatyoutalkingabout-(Mark Reeder's Got You Remix)”では原曲にみられるTB-303のニュアンスを尊重しつつ、妖しげなシンセのサウンドをまぶした。ちなみにSTOLENが2024年1月30日と2月1日に大阪と東京でライブを行った際、Wang Oneはスペシャル・アクトとして抜擢されている。このとき披露したのは5曲程度だったが、インパクトは十分だった。

 そしてもうひとり、“IDK” のリミキサーがいる。それが10代なかばのDJ/作曲家・heykazma。“音に溶ける” パーティ〈yuu.ten〉のオーガナイザーでもあるheykazmaは、バイレファンキやジューク/フットワークのようなアブストラクなビートで老獪な音のジャーニーを紡ぎ出す。個人的な体感ではheykazmaのリミックスが最もフロアライクで、構成も明確だったように感じる。

 先のインタヴューによれば、Caseのルーツのひとつにゲーム音楽があるという。作中で流れるサウンドトラックによって、ダンス・ミュージックをはじめとする海外の音楽に開眼していった。昨今の中国ではオーセンティックなテクノやハウスがゲーム音楽として実装されるケースもあり、多くの才能あるトラックメイカーがビッグ・タイトルに関わっている。たとえばTSARなどはYellow Clawのレーベル〈Barong Family〉からのリリースで知られるChaceと共に中国の音楽ファンの間で並べて語られることもあったが、いまや『崩壊:スターレイル』をけん引する存在だ。

 インターネットを介して未知の音楽を発見し、自作曲を発表する。そしてゲームへと回帰。つまりいま、ダンス・ミュージックと接触するのに生身の空間でパーティを開く必要もないのだが、我々はフロアへと誘われてゆく。10代のパーティ・オーガナイザーが率先してイベントをうつのだから、やはりそこには特別な磁場があるのだ。マーク・リーダー、〈TREKKIE TRAX〉、heykazma。3世代にわたって証明されたのは、ネットの有象無象から生まれた情熱の行方なのかもしれない。

 そして中国の大海にも、我々が獲得してきた熱量や憧れと同じ類のものがただよっていた。それらがひとつ形として結実したのが、今回のリミックス盤だ。混沌とする昨今、音楽に世界や社会を背負わせるのは重すぎるかもしれない。だが、本作にはかつて我々がみたユートピアの片鱗がある。

Sleaford Mods - ele-king

 前作『UK Grim』からおよそ3年。スリーフォード・モッズのニュー・アルバム『The Demise of Planet X』が1月16日にリリースされる。先日発表された戦争孤児を支援するための曲 “Megaton” が話題となった彼らだけれど、新作はこの困難な現代で生きることがテーマとなっているようで、ゲストにはオルダス・ハーディングやグライム・ラッパーのスノーウィーの名も見える。
 ちなみにジェイソン・ウィリアムソンは先月、映画『GAME』で主演を務めることがアナウンスされたばかり(UKでは11月21日公開)。この夏日本でも上映された『バード ここから羽ばたく』にもちょい訳で出演していた彼だが、いよいよ本格的に銀幕デビュー、と。
 なおその『GAME』はなかなか興味深い経緯から生まれている。ポーティスヘッドのジェフ・バロウが自身の〈Invada Records〉内に新たに立ち上げた部門、〈Invada Films〉の第一作で、監督のジョン・ミントンはこれまでベス・ギボンズやスリーフォード・モッズ、ガゼル・ツインのMVを手がけてきた人物だ(『GAME』が長編第一作。バロウも共同脚本とプロデュースで参加)。ブリストルで撮影された同作は、1993年の英レイヴ・シーンを背景としたスリラー(!)とのことで、いやこれはかなり観たいでしょ。合わせてチェックしておきたい。

Sleaford Mods
ウィットに富みながらも辛辣に彼らはこの社会を批判する
現代UKパンクの真骨頂にして、労働者階級の代弁者であるスリーフォード・モッズ。
ニュー・アルバム『The Demise of Planet X』を1月16日にリリースすることを発表!
グウェンドリン・クリスティー、オルダス・ハーディング、スー・トンプキンズが参加!
アルバムのオープニング・トラック「The Good Life」をMVと共に公開。

『The Demise of Planet X』は、未来を予測することが非常に困難な状態の中で生きる人生、そして集団的トラウマによって形づくられた人生を表している。前作を書いたときは、停滞――まるで死体のように息をしていない国――についての作品だった。あれから3年、その死体は戦争とジェノサイド、そしてコロナ禍の長引く心理的影響によって切り裂かれ、SNSはグロテスクで歪んだデジタル操作の場へと変貌した。まるで廃墟の中で生きているような感覚。それは俺たちの集団的な精神に刻み込まれた、多層的でおぞましい異形のようなものだ。世界がクソみたいな状況に落ちていく中で自分を褒めるのもどうかと思うけど、『The Demise of Planet X』には本当に満足している。ただ突きつけるだけの作品じゃなくて、ちゃんとメガネをかけて中身を覗き込むように、じっくり味わう必要があるんだ。 - ジェイソン・ウィリアムソン(Sleaford Mods)

社会に対する不満や怒りを、DIYなパンク・サウンドとメッセージ性の強い歌詞と共に表現するスリーフォード・モッズが、ニュー・アルバム『The Demise of Planet X』を2026年1月16日(金)に〈Rough Trade Records〉よりリリースすることを発表した。アンドリュー・フェーンとジェイソン・ウィリアムソンによるこれまでで最もスケールが大きく野心的な作品である本作には、俳優グウェンドリン・クリスティー(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』『ゲーム・オブ・スローンズ』)が初となる音楽作品への参加及び出演を果たし、さらにはライフ・ウィズアウト・ビルディングスの元フロント・ウーマン、スー・トンプキンスという稀少なゲスト参加に加え、〈4AD〉に所属するオルダス・ハーディング、ソウル・シンガーのリアム・ベイリー、そしてグライムMCのスノーウィーとのコラボレーションを収録。後者2人はどちらもバンドの地元ノッティンガム出身である。そして本日のアルバムの発表に合わせて、アルバムのオープニング・トラックである「The Good Life」がMVと共に公開された。ミュージック・ビデオは、ベン・ウィートリー(『イン・ジ・アース』『MEG ザ・モンスターズ2』)が監督を務め、先述したグウェンドリン・クリスティーとミッドランズ出身のバンド、ビッグ・スペシャルが出演している。

「The Good Life」は、社会的な崩壊と個人的な崩壊が入り混じった感覚を描いている。アンドリュー・フェーンよる切迫感のあるビートと魅惑的なメロディに乗せて、ウィリアムソンがマシンガンのような語り口で、音楽シーンに波紋を呼んだ自身の発言の影響を描き出している。ビッグ・スペシャルとグウェンドリン・クリスティーは、その発言によって生まれた混乱の中で揺れる、彼の内なる葛藤と苦悩の声を代弁している。「“The Good Life”は、他のバンドをけなすこと、そしてそれが自分にもたらす喜びと苦しみについて歌っている。自分自身に問いかけているんだ――なぜ自分はバンドをけなすのか?なぜそんなことをずっと続けているのか?グウェンドリンとビッグ・スペシャルは、俺の心の声を具現化してくれていて、“良い人生(=Good Life)”を楽しむべきなのか、それとも混沌に身を委ねるのかという、内なる葛藤をめぐって議論しているんだ」とウィリアムソンは語る。

Sleaford Mods Ft. Gwendoline Christie & Big Special - The Good Life (Official Video)
配信リンク >>> https://sleafordmods.ffm.to/goodlife

アルバムには、ありきたりな表現を打ち破る先日リリースされたシングル「Megaton」、オルダス・ハーディングによる雲のように軽やかなゲスト・ボーカルをフィーチャーした「Elitest G.O.A.T.」、有害な男らしさを鋭く突く内省的な「Bad Santa」、そしてBBCで60-70年代に放送されていた子ども向け番組『The Magic Roundabout』に着想を得た軽快なラップ・チューンであるタイトル曲などが収録されている。ノッティンガム出身のSSW、リアム・ベイリーは疲れきった世界を嘆くようなソウルフルな歌声で「Flood the Zone」に参加。トランプ主義への痛烈な批判を歌い上げている。グライム・ラッパーのスノーウィーは、「Kill List」で鋭いラップを披露。この曲はベン・ウィートリー監督の同名映画から着想を得たホラー・ヒップホップとなっている。さらに「No Touch」では、スリーフォード・モッズが、惜しまれつつ解散したライフ・ウィズアウト・ビルディングスのスー・トンプキンスをスタジオに招き、ウィリアムソンとのデュエットを実現。ふたりの人間味あふれる声がしなやかなベースラインとオルゴールのようなキーボードのモチーフの上で美しく絡み合っている。

『The Demise of Planet X』は、これまでで最も幅広く、表現力に富んだ音楽的アプローチを見せる作品だ。現代社会を描き出し、批判し、風刺しながら、広がりゆく社会の閉塞感に抗うように、普遍的な怒りとエネルギーの解放を叫んでいる。世界の終焉を大爆発ではなくじわじわと押し寄せる退屈で苛立たしい日常の波として見つめている今作は、鮮烈なサウンド、辛辣な言葉、包み込むような空気感、そして心を惹きつけるウィットによって反撃を繰り広げる。全13曲を通して、聴く者の心と頭、そして足をも揺り動かす作品となっている。

スリーフォード・モッズのニュー・アルバム『The Demise of Planet X』は、CD、LP、デジタル/ストリーミングで2026年1月16日(金)に世界同時リリース。国内盤CDには歌詞対訳・解説書が封入され、ボーナストラックとして先日発売された「Megaton」 7インチのB面に収録された曲「Give ‘Em What They Want」が収録される。輸入盤はCDとLPが発売され、LPは数量限定盤LP(ネオングリーン・マーブル・ヴァイナル)も発売される。また、数量限定のカセットも発売される。

label: Rough Trade Records / Beat Records
artist: Sleaford Mods
title: The Demise of Planet X
release date: 2026.01.16
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15448

・国内盤CD
(解説書/歌詞対訳付き/ボーナストラック追加収録)
・輸入盤CD
・限定盤LP
(数量限定/ネオングリーン・マーブル・ヴァイナル)
・輸入盤LP
・輸入盤カセット

Tracklist
01. The Good Life feat. Gwendoline Christie & Big Special
02. Double Diamond
03. Elitest G.O.A.T. feat. Aldous Harding
04. Megaton
05. No Touch feat. Sue Tompkins
06. Bad Santa
07. The Demise of Planet X
08. Don Draper
09. Gina Was
10. Shoving the Images
11. Flood the Zone feat. Liam Bailey
12. Kill List feat. Snowy
13. The Unwrap
14. Give ‘Em What They Want (bonus track for Japan)

CD

輸入盤LP

限定盤LP

カセット

Wolf Eyes x Anthony Braxton - ele-king

 〈ESPディスク〉と言えばアルバート・アイラーをはじめ1960年代のアメリカのフリー・ジャズおよびアンダーグラウンドなロックの名盤(奇盤?)を多々残したレーベルとして有名だが、21世紀以降も新録をたびたび世に送り出していることは案外知られていないのかもしれない。たとえば2010年にはイーライ・ケスラーの『Oxtirn』をリリースしているし、米澤めぐみらアメリカ在住の日本人ピアノ・トリオによる『Boundary』(2018年)も〈ESPディスク〉だ。近年活況を呈する韓国のジャズ・アヴァンギャルドからはピアニストのチョン・ウンヘのソロ作『Nolda』(2021年)が出ており、韓国人初の〈ESPディスク〉からのリリースということで現地で話題を呼んだ。そのような歴史ある現在進行形のレーベルから出た2025年の新作の一つがウルフ・アイズとアンソニー・ブラクストンのコラボレーション・ライヴを収めた『Live at pioneer works, 26 october 2023』である。

 ウルフ・アイズは1996年にネイト・ヤングを中心に結成されたアメリカのノイズ系グループ。もともとヤングのソロ・プロジェクトとして始動したが、メンバー変遷を経て現在はジョン・オルソンとのデュオとして活動している。他方のアンソニー・ブラクストンは1960年代後半からキャリアを始め、シカゴのAACM(創造的音楽家たちの進歩のための協会)の初期からのメンバーであり、アルトサックスをはじめ多種類の楽器を扱う演奏家としても作曲家としても膨大かつ独創的な足跡を残してきたレジェンドだ。1994年にマッカーサー財団の「天才賞(Genius Grant)」を受賞したほか多数の賞も受賞している。理論家/教育者としての影響力も大きい。そうした両者がコラボレートするのは今回が初めてではなく、20年前に共演を果たしている。きっかけは2004年にスウェーデンのフェスティバルでブラクストンがウルフ・アイズを聴いたことだったそうで、ライヴ後にブラクストンは彼らのすべてのCD(当時すでに50枚以上は出ていたはずなのだが!)を購入、翌2005年にサーストン・ムーアが企画に関わったイベントでステージを共にし、その模様がアルバム『Black Vomit』として2006年にリリースされた。すなわち今回ESPディスクから出たアルバムは、20年近くの時を経て再び録音作品の制作が実現したことになる。

 正確には『Live at pioneer works, 26 october 2023』が出る前に、ウルフ・アイズが主導するコラボレーション・シリーズの一環として、自主制作で『Difficult Messages Vol. 5 Live in Los Angeles』が2024年にリリースされているが、25分ほどのミニ・アルバムだった。同作の録音が2023年10月4日のロサンゼルス公演で、それから約3週間後の10月26日、ニューヨークの文化センター「パイオニア・ワークス」でのライヴを録音したのが今回のESP盤である。ライヴはパイオニア・ワークスが主催する「False Harmonics」シリーズの第18回として行われ、4組の出演者のうちウルフ・アイズとアンソニー・ブラクストンはイベントのトリを飾った。約20年前の『Black Vomit』が、丁々発止のやり取りだけでなく、微弱な電子音響から耳を聾する轟音、そのノイズの嵐を掻き分けてサックスが浮かび上がるダイナミックな熱気に満ちていたのに対し、新録のESP盤はまさに円熟と呼びたくなる変化を遂げている。そもそも20年前の共演ではウルフ・アイズのメンバーはネイト・ヤング、ジョン・オルソン、マイク・コネリーの3人だったのに対し、コネリーが脱退して(入れ替わるように参加したジェイムス・バルジョーも抜け)、ヤングとオルソンのデュオになったという違いはあるのだが、むしろ音のヴァリエーションはESP盤のほうが豊かに感じるのである。強烈なハーシュノイズ、うねるような電子音、スペーシーなエフェクト音に加え、パイプや電子ノイズがまるでサックスのようなフリーキーな響きを奏でる。そこにブラクストンがソプラニーノ、アルト、さらにバスとサックスを持ち替えながら、時に朗々と、時に素早く、あるいは雑味を交えてフレーズを挟んでいく。場面によってはまるで多重録音された複数のサックスが複層的に絡み合っていくかのようだ。ここにはノイズの海をサックスが泳ぐような構図はないものの、そのことによってかえって、ウルフ・アイズとアンソニー・ブラクストンがさらに一体となっているようにも思うのだ。

 それにしてもブラクストンのサックス演奏は耳を惹きつける。とりわけ今回のESP盤では熱が入る場面も多々あり、唸り声を上げながら息を吹き込む様子には鬼気迫るものを感じた。思えば名盤『For Alto』(1971年)でサックス奏者としての音楽言語を披瀝したブラクストンだったが、近年は演奏家というよりも作曲家/理論家/教育者としての存在感が強かった。実際、今年80歳を迎えたブラクストンを祝してリリースされた8枚組大作アルバム『Trillium X』は彼が取り組んでいるオペラの作品であるし、書籍『Anthony Braxton - 50+ Years of Creative Music』の付属CDである『2 Comp (2023)』もタイトル通りコンポジション作品だった。彼が独自に開発してきた音楽システムを、下の世代のミュージシャンを交えて実践/発展させてきたのが近年のブラクストンの活動の特徴でもあった。あるいは、やはり生誕80周年を記念してサックス奏者スティーヴ・リーマンが捧げたアルバム『The Music of Anthony Braxton』は、現代のジャズ・ミュージシャンが作曲家としてのブラクストンを解釈することに重きが置かれていた。日本でも、新世代を中心とした刮目すべき即興音楽コンピレーション・アルバム『1,000,000 CHARGE OF PSYCHIC YOUTH』に、サックス奏者の山田光が、演歌のようなテーマから始まるブラクストン作曲の “Composition No.77 E” の演奏を寄せていた。そうした状況を踏まえても、今回のESP盤における、声を漏らしながら迫真のパフォーマンスを繰り広げるブラクストンの姿は、演奏家としての現在の彼にあらためて耳を傾けるという意味でも重要だろう。

Miru Shinoda - ele-king

 バンド・yahyelでの活動、〈Protest Rave〉運営メンバーといった一面でも知られる音楽家・篠田ミルが、ソロ・デビュー作となるEP「Pressure Field」を昨年リリース作『epoch』のプロデュースなどで関係を深めた松永拓馬と共同運営するレーベル〈ECP〉より10月22日にリリース。

 映画音楽やサウンド・アートの領域までを広く行き来する傍ら政治的アクションにも積極的にかかわる彼によるEP「Pressure Field」は、変容する社会への疑問を投げかけるかのようなメッセージと、実験性とポップセンスが同居する巧みなサウンド・デザインによって構成された6曲入の作品。音楽家として社会を見つめ、音で問題提起を続けてきたかれなりの、現況へのアンサーか。以下詳細。

Artist:Miru Shinoda
Title:Pressure Field(EP)
Label:ecp
Format:Digital
Release: 2025.11.5
Streaming:https://linkco.re/nBDz4muE

Tracklist:

1. Big Site
2. Hottest Summer
3. Good Morning Mr.Kishida
4. Power Plant - Fukushima 250117
5. Sine Waves in The Rain
6. Path

All songs written/produced/mixed by Miru Shinoda
Mastering: Wax Alchemy
Artwork: Atsushi Yamanaka
Label: ecp
Artist Photo: Kenta Yamamoto
PR: Masayuki Okamoto
Production: スタジオ さ組

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これまで松永拓馬、ACE COOL、Rinsaga、May J.ら多彩なアーティストとの楽曲制作や、yahyelメンバーとしての国内外での活動、また舞台・映画音楽、ファッションムービーのサウンドデザイン、サウンドアートの領域まで、様々な創作の場を越境してきた音楽家・篠田ミルが、ソロデビューとなるEP《Pressure Field》を発表する。

更新され続ける猛暑、身体に染みついた新自由主義、福島の発電所が放つノイズ、雨の中でゆらぐ正弦波。
『Pressure Field』は、圧力変化の個人的な備忘録であり、その音響的な軌跡である。

篠田ミルはこれまで、コロナ禍のライブハウス・クラブカルチャーを守るムーブメント『#SaveOurSpace』や、クラブカルチャーに根ざしたサウンドデモ『プロテストレイヴ』を企画するなど、政治的アクションにも深く関わってきた。

また、2024年には相模原市藤野の自然環境を舞台とした野外イベント『by this river』を開催し、自然環境の中で音楽と観客が一体化するような実験的空間を創り上げた。2025年には、被災地支援を行うbeatfic experimentとのコラボレーションのもと、福島県で開催された『rural 2025』にて、「被災の記憶に耳を澄ますこと」を主題に、ポータブルラジオを使ったサウンドパフォーマンス“Tuning for Pray”を初演。さらに、音楽家・原摩利彦の声がけのもと、パレスチナ・ガザでレコーディングした音を元にした楽曲の購買で支援に繋げる『THEY ARE HERE』プロジェクトへ共同発起人として参加している。

こうした実践に共通するのは、「音と場」の関係性を通じて、社会に対する聴覚的な応答を試みる姿勢である。

今回のソロデビューEPは、これら長年のコラボレーションと分野横断的な経験を凝縮し、個人的なステートメントとして結実させるもの。ポップな感覚とアヴァンギャルドな質感、そして社会や環境への鋭敏な感受性が交差する作品となっている。

また、本作品は2024年に篠田ミルと松永拓馬が設立したレーベル/プラットフォーム「ecp」よりリリースされる。

●篠田ミル / Miru Shinoda

1992年生まれ。音楽家。
2015年にyahyelのメンバーとしてデビュー。以降、松永拓馬やACE COOL、Rinsagaなど多くのアーティストと楽曲提供やプロデュースを行う。また、ファッションブランドのルックムービーや映画音楽、舞台音楽の作曲、サウンドインスタレーションやパフォーマンスの制作にも携わる。
2024年には松永拓馬と共にレーベル・プラットフォーム《ecp》を設立、神奈川県藤野にてイベント《by this river》の開催に携わる。
また、これまでに《プロテストレイヴ》や《D2021》などの表現活動を通じたアクティビズムにも、企画や運営を通じて積極的に参加している。

近年の主な参加作品:
・サウンドパフォーマンス “Tuning for Pray”(2025)
・ACE COOL『明暗』(2024)
・松永拓馬『Epoch』(2024)
・橋本ロマンス『饗宴』(2024)
・Rinsaga『Saga』(2022)
・May J.『Silver Lining』(2021)

Herbert & Momoko - ele-king

 イギリスの電子音楽家、マシュー・ハーバートがドラムと歌を主とした表現を手がけるモモコ・ギルとのユニット「Herbert & Momoko」にて約6年ぶりの来日公演を実施。静岡の〈FESTIVAL de FRUE 2025〉でのDJセットを皮切りに、東京・福岡・札幌・京都・金沢の全6都市をめぐるジャパン・ツアーとなる。

 Herbert & Momokoは、ミニマル~エクスペリメンタルな側面で知られるマシュー・ハーバートの数々のプロジェクトのなかでもハウス・ミュージックとヴォーカルを軸とした、実験性とポップ・センスが同居したユニット。本年6月には〈Strut Records〉からコラボ・アルバム『Clay』を発表。ふたりがつむぐ、晩秋のメランコリックな気分にぴったりの世界観に浸ってみましょう。

Herbert & Momoko Japan Tour 2025

11/01 SAT SHIZUOKA at FESTIVAL de FRUE 2025 *DJ set feat. Momoko live vocals
Les Claypool's Bastard Jazz / AKIRAM EN / anaiis & Grupo Cosmo / Capablanca / CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN / DJ Sotofett / DOGO / Enji / E.O.U / ffan / GEZAN / Joana Queiroz & Manami Kakudo / MASCARAS / Nakibembe Embaire Group ft.Naoyuki Uchida / Ohzora Kimishima / Powder / Rubel / Solar / Yamarchy / 7e / 鏡民
https://festivaldefrue.com

11/04 TUE TOKYO 18:00 at WWW X *Duo Live Extended Show
DJ: 5ive [Thinner Groove]
https://www-shibuya.jp/schedule/019224.php

11/07 FRI FUKUOKA 22:00 at Keith Flack *Duo Live
DJ: p.co [SEXTANS] / Tatsuoki [Broad] / vvekapipo [hertz]
https://t.livepocket.jp/e/herbert_momoko

11/08 SAT SAPPORO 20:00 at Precious Hall *Duo Live
DJ: midori yamada (the hatch)
https://t.livepocket.jp/e/20251108herbert-momoko

11/13 THU KYOTO 19:00 at Metro *Duo Live
Front Act: Kazumichi Komatsu
https://www.metro.ne.jp/schedule/251113

11/14 FRI KANAZAWA 18:00 at PALAIS *Duo Live
DJ: FUTOSHI SUGIKI / Susumu Kakuda
https://pa-lais.com/schedule/2025-11-14

tour promoted by WWW & melting bot
tour poster: Andry Adolphe


Matthew Herbert

Matthew Herbertは受賞歴のある作曲家、アーティスト、プロデューサー、作家であり、その革新的な作品の幅は30枚以上のアルバム(高く評価された『Bodily Functions』を含む)から、アカデミー賞受賞映画『ファンタスティック・ウーマン』の音楽、ナショナル・シアター、ブロードウェイ、テレビシリーズ(『Noughts and Crosses』、『The Responder for BBC』)、ゲーム(『Lego』)、ラジオのための音楽にまで及ぶ。ソロ演奏、DJ活動、自身の21人編成ビッグバンドや100人合唱団を含む様々なミュージシャンとの共演で、シドニー・オペラハウスからハリウッド・ボウルまで世界中でパフォーマンスを行い、インスタレーション、演劇、オペラも創作している。

Quincy Jones、Ennio Morricone、Serge Gainsbourg、Mahler といった象徴的なアーティストのリミックスを手掛け、Bjork の長期にわたる共同制作者でもある。ロイヤル・オペラ・ハウス、BBC、ドイツ・グラモフォンなどから作品を委嘱されているが、最も知られているのは、日常音やいわゆる「ファウンド・サウンド」を電子音楽へと昇華させる音響表現である。代表作『ONE PIG』は豚の誕生から食卓へ、そしてその先までを追った作品だ。2018年には初著書『The Music』を Unbound 社より出版。現在はラジオフォニック研究所のクリエイティブ・ディレクターを務める。

2021年、Matthewと聴覚をテーマにした Enrique Sanchez Lansch による特別ドキュメンタリー『A Symphony Of Noise』が公開された。10年以上にわたり撮影された本作は、電子音楽家、アーティスト、サウンド活動家としての Matthew の約20のプロジェクトを追う。彼はまた最近、音を用いた作曲の倫理に関する博士号を取得し、次の実験的プロジェクトでは10億を超える音を聴取することを基盤としている。

https://www.instagram.com/matthewherbertmusic


Momoko Gill

Momoko Gillは、ロンドンを拠点に活動する新進気鋭のアーティスト。プロデューサー、作曲家、作詞家、そしてマルチ・インストゥルメンタリストとして、ドラムと歌を中心に多彩な表現を展開し、注目を集めている。オックスフォードに生まれ、京都・横浜・サンタバーバラ・ロンドンで育ったバックグラウンドを持ち、その幅広い感性を音楽に注ぎ込む。Matthew Herbert、Alabaster DePlume、Tirzah、Coby Seyなど、英国の個性豊かなアーティストたちと共演し、ジャズ、アヴァンギャルド、エレクトロニックの狭間で独自の存在感を示してきた。ロンドンのクリエイティブ・コミュニティTotal Refreshment Centreを拠点としている。

2025年には Matthew Herbert と Clay を共同プロデュース。そもそもの始まりは、Herbert のアルバム『The Horse』収録曲を Momoko がリミックスし、その音を Herbert が高く評価したことだった。また、詩人/ラッパー Nadeem Din-Gabisi とのデュオ An Alien Called Harmony ではプロデューサーを務める。さらに2026年初頭には、自己プロデュースによるデビュー・ソロアルバムを Strut Records からリリース予定。
親密さと深みを併せ持つ歌声で、ジャンルと物語性、そして音響実験の境界を押し広げながら、独自の音楽世界を切り拓いている。

https://www.instagram.com/momokogill

Oneohtrix Point Never - ele-king

 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが『Again』以来、2年ぶりのアルバムを発表する。題して『トランキライザー(精神安定剤、鎮痛剤)』、つまりわれわれを穏やかにさせてくれるようなサウンドに満ちている、ということだろうか。いやいや、これまでも多くコンセプチュアルな作品を送りだしてきたダニエル・ロパティンのことだ。まったく逆の可能性だってありうるわけで……10月20日にMVとともに公開された新曲 “Lifeworld” と、その前日19日に投下された “For Residue” と “Bumpy” の都合3曲、むむむ、これはどっちだ……!? CDとLPの発売は11月21日、配信開始は11月17日とのことなので、OPNが踏みだす新たな一歩がどのようなものになっているのか、あれこれ想像を膨らませておこうではないか。

Oneohtrix Point Never

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
ニュー・アルバム『Tranquilizer』を発表!
「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」の3曲が解禁!
アルバムは11月17日デジタル配信、11月21日にCD・LPが発売

現代音楽シーンにおいて、静かに、しかし圧倒的な影響力を持つワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、ニュー・アルバム『Tranquilizer』を発表! 〈Warp〉より11月17日(月)にデジタル/ストリーミングで配信がスタートし、11月21日(金)にCDとLPが発売される。アルバム発表にあわせて、新曲「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」が解禁され、OPNならではの幻想的で超現実的なサウンド世界が姿を現す。

Oneohtrix Point Never - Lifeworld (Official Video)
Youtube:https://youtu.be/YfjsyKFbyqM

「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」の3曲配信開始
https://warp.net/opn-tranquilizer

精神安定剤を意味する『Tranquilizer』の出発点は偶然の光景だった。歯医者の椅子に横たわり、歯に響く振動を受けながら、ふと見上げた蛍光灯のカバー。灰色のタイル天井に貼られた、青空とヤシの木のプリント──安っぽい人工の楽園。その瞬間、OPNは問いかける。この世界の音とは何か。日常と非日常がかろうじて均衡を保ちながら共存する、この薄っぺらな現実の音とは。

さらに、数年前、インターネット・アーカイブから、巨大なサンプル・ライブラリがインターネットから忽然と消えた事件も創作の引き金となった。90年代から2000年代にかけての何百枚ものクラシックなサンプルCD──シーケンス、ビート、パッド、バーチャル楽器。『サイレントヒル』から『X-ファイル』まで、数え切れない作品に陰影を与えてきた音源たちが、一瞬にして闇に呑み込まれたという出来事。それは文化の断絶、時代の記憶を繋ぐ回線が無慈悲に断ち切られるような体験だった。幸いにも、失われかけた音の断片は再び救出され、文化的アーカイブとして息を吹き返す。本作は、過去への逃避とは何を意味するのか、そしてその先に何が待っているのかを問いかけ、超現実的でディープなテクスチャーで聴く者を包み込む。

失われた音の断片をもとに、『Tranquilizer』は音の幻覚を描き出す。静謐なアンビエンスがデジタルの混沌へとねじれ、日常の質感は感情の奔流へと変容する。忘却と廃退に形づくられたレコード。現実と非現実の境界はぼやけ、サンプルはノイズへと溶け込み、夢の中で扉がきしむ音を立てる。今作のOPNは、これまで以上に没入的だ。ノスタルジーではなく、失われた音を新しい感情の器として再構築している。

このアルバムは、かつて商業用オーディオ・キットとして作られた音源群に形を与えた作品だ。陳腐なサウンドの索引を裏返しにしたようなもの。今日の文化の奥底にある狂気と倦怠を最もよく表現できる、プロセス重視の音楽制作へと回帰した作品なんだ。 ──Oneohtrix Point Never

アルバム発表にあわせて解禁された「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」の3曲は、メディアの崩壊、アンビエントな不穏さ、そして儚い美が交錯する、まさにOPNらしい世界が描かれている。

アートワークは、インディアナ州を拠点とするアーティスト、アブナー・ハーシュバーガーによって描かれた絵画で、アブナーが育ったノースダコタの平原を抽象的かつ有機的に再構築している。忘れ去られた素材や農村風景に根ざしたそのビジュアルは、『Tranquilizer』のテーマである崩壊、記憶、クラフト感と呼応する。

過去20年にわたり、OPNは世界有数の実験的エレクトロニック・ミュージックのプロデューサー/作曲家としてその名を確立し、21世紀の音楽表現を刷新し続けている。初期の『Eccojams』はヴェイパーウェイヴを生み出し、『R Plus Seven』や『Garden of Delete』といった作品はデジタル時代のアンビエント/実験音楽を再定義した。さらに、サフディ兄弟の『グッド・タイム(原題:Good Time)』と『アンカット・ダイヤモンド(原題:Uncut Gems)』やソフィア・コッポラの『ブリングリング(原題:The Bling Ring)』の映画音楽を手がけ、今年最も注目を集める映画のひとつであるジョシュ・サフディ監督作『Marty Supreme』の音楽も担当。またザ・ウィークエンド、チャーリーXCX、イギー・ポップ、デヴィッド・バーン、アノーニとのコラボレーションでも知られている。

OPN待望の最新アルバム『Tranquilizer』は、11月17日(月)にデジタル/ストリーミングで配信され、11月21日(金)にCDとLPが発売される。国内盤CDにはボーナストラック「For Residue (Extended)」が追加収録され、解説書が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(クリア・ヴァイナル)も発売。限定盤LPは数量限定の日本語帯付き仕様(解説書付)でも発売される。さらに国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、Tシャツ付きセットも発売決定。

label : BEAT RECORDS / Warp Records
artist : Oneohtrix Point Never
title : Tranquilizer
release : 2025.11.21
商品ページ : https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15439
TRACKLISTING :
01. For Residue
02. Bumpy
03. Lifeworld
04. Measuring Ruins
05. Modern Lust
06. Fear of Symmetry
07. Vestigel
08. Cherry Blue
09. Bell Scanner
10. D.I.S.
11. Tranquilizer
12. Storm Show
13. Petro
14. Rodl Glide
15. Waterfalls
16. For Residue (Extended) *Bonus Track

CD+Tシャツセット

LP+Tシャツ

CD

LP

限定LP


R.I.P. D’Angelo - ele-king

緊那羅:Desi La(訳:編集部)

 人は大衆音楽における「才能」について、歌声や見た目の特別さを指して語りがちだ。どんなふうに歌い、叫び、あるいは甘く歌い上げるのか、とか。だが、音を「どのように聴いているのか」、そしてさまざまなジャンルの音楽をレゴブロックのように組み合わせ、過去の黄金の瞬間を細かく分解し、それを吸収し、「なんてこった!」と神々しいまでに独自なひらめきにうなずきながら、人びとを椅子から立ち上がらせ、心を動かすようなかたちに再構築する、その才能についてはあまり語られないかもしれない。D’Angeloは、2025年10月14日、わずか51歳という若さでこの世を去った。彼をめぐっては、メディア、共演者、ファン、そして彼のイメージや遺産で商売をしようとするSNS上の人びとから、さまざまな思い出が語られるだろうけれど、彼に正しく敬意を捧げるためには、彼を「ミュージシャン」と呼ぶだけでは足りないと私は思っている。彼はむしろ「技師(エンジニア)」であり、「建築家」だった。プリンスやマイルス・デイヴィス、パーラメントのように音楽を構築した偉大な建築家たちの系譜に属する存在だ。

 インスタグラムを何気なくスクロールしていたとき、私は残念ながら、あの“Untitled (How Does It Feel)”のヴィデオでの一瞬の性的イメージばかりを強調するインフルエンサーたちの投稿を目にしてしまった。彼を性的対象としてしか見ないそうした悪魔的な心性こそが、いくつかある理由のうちのひとつ——彼がキャリアの大部分を通して長く姿を消していた理由のひとつ——ではないのか。あの映像で焼きついた彼の官能的なイメージは、当時の大衆の記憶から決して消えることはないだろう。が、それは彼の真の才能を示すものではなかった。彼を讃えるということは、彼が望んだかたちで見られること、そして彼の激しい努力の結実を讃えることでもある。

 D’Angelo——本名マイケル・ユージーン・アーチャー——はヴァージニア州の生まれで、ファレルと同郷である(ヴァージニアの水にはたしかに何かがあるのだろう)。彼は教会の少年として育ち、ゴスペルを愛し、そしてソウル、ロック、ファンクの黄金時代の巨人たち——アル・グリーン、ジミ・ヘンドリックス、フェラ・クティ、プリンスなど——に憧れた。彼のヒーローもまた、みんな同じく「建築家」だった。音に対する鋭敏な耳を持ち、アレンジ、バンドの選択、そして全体的なプレゼンテーションにおいて非凡なセンスを備えた音楽家たちだ。彼は成長するにつれて、それらの創造者たちの手がけた構造を解きほぐし、彼らがどう音楽を創出しているのかを考究した。とりわけ、プリンスだ。彼がひとりでスタジオとサウンド全体を完全に支配していたその姿に魅了され、「あれが自分だ」と感じたはずだ。

 音楽業界が何かとレッテルを貼りたがるなかで、D’Angeloが『Brown Sugar』でシーンに登場し、最初のすばらしい成功を収めてから、彼には「ネオ・ソウル」という称号が与えられた。1995年のデビュー当時から、そして続いて登場したエリカ・バドゥの『Baduizm』(1997年)などと並び、その呼称は一定の妥当性を持っていたと言える。というのも、ヒップホップはもともとソウル/ファンクに影響を受けており、ネオ・ソウルの進化は、文化的にも経済的にも支配的となったヒップホップからの影響の「フィードバック・ループ」を示していたからだ。セクシーでチルなヴァイブス、しかもストリートの匂いもある。
 じっさいD’Angelo はネオ・ソウルの特徴をすべて体現していた——ヒップホップの影響を受けたタイトなビート、滑らかなヴォーカル、無駄のないプロダクション、社会的意識をもった歌詞、グルーヴに乗った重心の低いフロー、そして技巧に走らないセクシーな歌声……。
 多くのミュージシャンとは異なり、D’Angeloが遺した公式アルバムはわずか3枚のみだ。しかしそのどれもが前作を凌ぐ傑作であり、『Black Messiah』(2014)はまさにその頂点に立つ作品だった。彼が病に倒れる前に取り組んでいた未発表の音楽も、いずれ何らかの形で日の目を見ることになるだろうが、現時点では、『Black Messiah』こそが彼の到達点であり頂点である。もちろんそれは、『Voodoo』(2000)や『Brown Sugar』を軽んじてよいという意味ではない。むしろいまとなっては、これら2作を、音楽だけにすべてを賭けたひとりの男が歩んできた、その進化の道筋としても味わえる。

 もし私が「ブラックネス(黒人性)」という概念を音楽的革命として講義する授業を開くとしたら、『Black Messiah』収録の“The Door”という曲をかけるだろう。70年代的なハーモニーとファンクのリフが全編を覆い、厚みのあるファンク・ベースが鳴り響き、1940年代のブルーズ的スライド・ギターのクレッシェンドでは、スライドが弦に擦れる音までミックスに残されている。90年代的なデジタル録音のようなアンプ・ディストーションはなく、リラックスしたホンキートンク調のビートに乗せたファルセットの歌声。ファンク特有の切れ味あるストップ&スタートのイントネーションがありながら、歌唱技巧を排している。そしてたしかなダウンビートが、教室で机を叩いてビートを刻み、まわりの仲間が手拍子を合わせていた高校時代のあの瞬間を黒人たちに思い起こさせる。そうしたすべてが、この1曲のなかに凝縮されている。
 D’Angelo はまた、「ブラック/アフリカ的な音楽学習法」の価値を体現していた。ブルーズ、ゴスペル、ジャズ、あるいはアフリカの伝統音楽——いずれにおいても、黒人音楽とは共同体的な営みであり、集中して意図的に聴くことによって成り立っている。複数のパートが重層的に動きながらも、汗をかくことなく完璧に同期している。ビートとビートのあいだにはたっぷりとした呼吸がある。「重要なのは何を演奏するかではなく、何を演奏しないかだ」とマイルス・デイヴィスが言ったように。
 デビュー作で成功を収めたにもかかわらず、D’Angelo は資本主義的商業システム——すなわち大手レーベルという獣——の餌食になることを拒んだ。アーティストの首筋に息を吹きかけ、スタジオに押しかけては「早くリリースを」「長いツアーを」「最大の利益を」と迫る連中に対して、彼は「くそくらえ」と言い放ち、ルーツのクエストラヴとともに5年間もの冬眠に入ったのだ。……5年だ! 大学の学位を取るより長い。その「大学」が『Voodoo』であり、さらにそれを3倍にしたものが『Black Messiah』だった。
 反資本主義的な精神を貫きながら、D’Angelo は「ブラック・ヒストリーの音」を追い求め、それに人生を捧げた。彼は、過去の偉大な音楽家たちの独自性の蒐集家であり、各アルバムの制作にあたっては、その音楽を研究し、向き合い、ジャムし、さらにまた向き合い、あらたな協働者を招き入れてはまた向き合い、ヴォーカルだけで2年を費やしてもなお、音楽とともに座り続けた。その結果、『Voodoo』と『Black Messiah』は聴く者の前で雲を切り裂き、天を開く。細部にまでこだわり抜いたサウンド・デザインが機能する要素を徹底的に磨き上げ、極限まで高めている。
 建築家とは機械や建物の「内部構造」を見る者である。それを組み合わせることで以前よりも高い創意を生み出す。構造の逆解析を行い、どの瞬間においても楽曲を「最高なもの」として立ち上がらせる。そのような能力を持つ者。D’Angeloには「駄作」と呼べるアルバムがひとつもない。それは、彼が——良い意味で——あまりにも「良いアルバムを作ること」に執心していたからだ。そして、彼は待ち、さらに待ち続け、それが熟するのを見届けた。

 D’Angelo の壮大さ、彼のパフォーマンス、優しさ、録音作品は、視界の果てまで広がるほどの賛辞の波を呼び起こした。しかし残念なことに、彼を苦しめたある種の悪魔が誘発した逮捕、依存、鬱などが彼の早すぎる死に影響した可能性がある。皮肉なことに、彼を押し上げたその「社会的イメージ」こそが彼の首にかかった重すぎる錨となり、彼はそこから抜け出そうともがいた。注目すべきは、『Black Messiah』がD’Angeloのアルバムのなかで唯一、彼自身の姿がジャケットの表にもその裏面にも登場していない作品であるという点だ。焦点は完全に「作品そのもの」に置かれている。
 彼の焦点は、つねに芸術そのものに向けられていたのだ。そして2025年のいま、私たちはようやくその全体像を享受できるのである。その美しさ——彼の微笑み、その語り口、彼が遺した物語とそこに刻まれた教訓、そして何よりも音楽への絶対的な献身——そのすべてを、ありのままに味わえるのだ。


People often talk of talent as if it`s only a person’s singular singing voice or their particular look. How they sing, shout or croon. But not enough of how they hear and put the Lego blocks of multiple genres of music together, pick apart the golden moments of excellence of the past, take them in and head nod to the “goddamn!” pure heavenly idiosyncrasies and reassemble them in a way that move people from their seats and into their hearts. D`Angelo has left us at the early age of 51 years old this past October 14th 2025. There will be many memories of him from media, collaborators, fans and social media types looking to capitalize on his image and legacy. But to properly give tribute to him, I feel it`s appropriate to knight him not a mere musician but an engineer. An architect. In the vein of other architects like Prince or Miles Davis or Parliament. Doomscrolling on Instagram, I unfortunately ran across posts by influencers only emphasizing his sexuality from that one moment in time with the video "Untitled (How Does It Feel)", but that objectifying demon mind is actually the reason among several others for his long absence for the majority of his career. That image will never disappear from the public conscious of that time but that wasn`t his talent. To honor him is to honor how he wanted to be seen and the result of his intense efforts.

D`Angelo, born Michael Eugene Archer in Virginia, just like Pharrell (I think there is something in the water in VA for sure), was a church boy who grew up with love for the Gospel and love for the titans of the soul, rock, and funk era, i.e. Al Green, Jimi Hendrix, Fela Kuti, and Prince just to name a few. All his heroes were also fellow architects. Musicians with keen ears for sound, arrangement, band selection, and overall presentation. And as he grew up dissecting those creators and how they moved - he particularly was mesmerized by Prince`s one man command over the studio and his sound - D`Angelo said that`s me.

With the music industries need to label, D`Angelo`s entry into the scene and initial success with “Brown Sugar” was given the mantle of Neo-Soul. And to some extent with his debut in the 1995 and other titanic releases in the same period like Erykah Badu`s Baduizm in 1997, this is warranted as hip hop was initially influenced by soul/funk and Neo-Soul`s evolution signaled a feedback loop of influence by the dominance of hip hop culturally and financially. Sexy chill vibes but street.

D`Angelo exhibited the hallmarks of what was to be Neo- Soul; clear, hard hip-hop influenced beats, smooth vocals, uncluttered productions, socially relevant lyrics, in the pocket groove heavy flows, and sexy vocals that avoided theatrical gymnastics.

Until many musicians, D`Angelo leaves behind only 3 official albums. But each one is a classic greater than the one before with “Black Messiah” being the crowning achievement. I`m sure that music he was working on before his previously unannounced cancer disabled him will see the light of day in some way, but for now “Black Messiah” is the apex of his known work. That doesn`t mean sleep on “Voodoo” or “Brown Sugar.” Instead, just enjoy the evolution from a man solely focused on it.

If I could teach a class on blackness as a concept of musical revolution, I might play a song like “The Door” from “Black Messiah.” An unassuming song drenched in 70`s harmonic funk recitations, thick funk bass, 1940`s blues slide crescendos with the noise of the slide gracing the strings left in the mix, no amp distortion a la 1990`s digital recording, falsetto singing to a relaxed honky tonk sing song beat, the crispness of funk stop start intonation leaving out vocal gymnastics, and a solid down beat that gives black people memories of that guy in the class room who banged on the desk in high school to make a fire beat while his friends clapped in unison around. All of this in one song.

D`Angelo also represents the value of the Black / African method of studying music. Black music, whether blues or gospel or jazz or traditional African, is a communal situation filled with intensive intentional listening, focused and deliberate, layered instrumentation with multiple parts moving but in sync without breaking a sweat. Lots of breathing between the beats. “It`s not what you play but what you don`t” as Miles Davis used to say. D`Angelo despite his debut album success, refused to be the meat for the capitalist commercial beasts that major labels often are, breathing down the necks of artists, visiting them in the studio in effort to push them for a quick release, a long tour, and maximum profits. D`Angelo said fuck them and went into a five year hibernation with Questlove of The Roots ..... 5 YEARS!!!! just to produce “Voodoo.” 5 years is longer than

getting your degree in university. In this case though, the university was “Voodoo” and then times that by 3 with “Black Messiah.” Anti-capitalist in his endeavours, D`Angelo rested on his devotion to the “sound” of Black history in his eyes. A collector of the idiosyncrasies among his favorite musicians of the past, in making each album, he studied and sat with the music, jammed and sat with the music, invited new collaborators and then sat with the music, spent almost 2 years just doing vocals and still sat with the music. And it shows cause in particular “Voodoo” and “Black Messiah” separate the clouds from the heavens for listeners, letting loose a sound design meticulous with it`s attention to the things that work and amping them up.

An architect sees the inside of the machine or the building, the innerworks that when put together create greater ingenuity that before, reversed analysis of construction that allows each song to be see at a moment`s notice as great. D`Angelo doesn`t have any bad albums because he was too intent (in a good way) to make a good album. And he waited and waited til it gestated.

Though the grandeur of D`Angelo, his performances, his kindness, his recordings created waves of accolades that rolled exponentially as far as the eye could see, unfortunately certain demons haunted him leading to arrests, addiction, depression and so forth, all of which may have contributed to his untimely departure. His social image, the very thing that propelled him forward became an albatross, too heavy to bear but he did his best to break free. Take deep note that “Black Messiah” is the only D`Angelo album where he doesn`t appear on the cover or back sleeve. The focus was fully on his art. The beauty now of 2025 is we can enjoy the beauty of his smile, his diction, his stories, lessons learned and absolute devotion to music.

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高橋芳朗

 ディアンジェロが逝ってしまった。死因は膵臓癌。51歳だった。かつての公私におけるパートナー、アンジー・ストーンが3月1日に交通事故で他界したのがまだ記憶に新しい中での思いがけない訃報。プリンスと共に彼の最大のインスピレーション源だったスライ・ストーンも6月9日に亡くなったばかりだ。スライの死を受けて、ディアンジェロの諸作を改めて聴き直していた方も多かったと思う。

 ディアンジェロは、1990年代以降で最も強大な影響力を有したアーティストのひとりだ。ただし、彼が30年に及ぶキャリアで残したアルバムはたったの3作。1995年の『Brown Sugar』、2000年の『Voodoo』、そして2014年の『Black Messiah』。もともと完璧主義だったことに加え、2000年代は薬物/アルコール依存、相次ぐ逮捕騒動などで活動が停滞。寡作ぶりに拍車をかけることになった。

 ディアンジェロの3作のアルバムはすべて掛け値なしに破格の傑作といえるが、彼は現在に至る名声を実質最初の2作で確立している。人種差別撤廃を訴えるブラック・ライヴズ・マター運動を背景に作られ、ザ・ルーツのクエストラヴが「俺たちの世代にとっての『There's a Riot Goin' On』」と激賞した『Black Messiah』も強力だが、真のゲームチェンジャーはやはり『Brown Sugar』と『Voodoo』。特に『Voodoo』は決定的だった。

 ビヨンセはディアンジェロへの追悼コメントで彼を「The Pioneer of Neo-Soul」と讃えたが、ディアンジェロが『Brown Sugar』と『Voodoo』によって果たした功績を端的にまとめるならば、それはまさに「ネオソウルの音楽像を作り上げたこと」となる。ディアンジェロが編み出したネオソウル・サウンドの最大の特徴は、J・ディラの作風に着想を得た揺らぎ(ズレ)のあるビート、そこから生じる聴く者をじわじわと引きずり込んでいくような深みのあるグルーヴ。その原点といえる試みは『Brown Sugar』収録の “Me and Those Dreamin' Eyes of Mine” で確認できるが、完成を迎えるのは5年後の『Voodoo』まで待たなくてはならない。

 『Voodoo』のビートの革新性は、レコーディング時の数々の逸話が浮き彫りにしてくれる。たとえば、ギタリストとしてのゲスト参加が決まっていたレニー・クラヴィッツがサンプル・トラックのドラム・パターンに違和感を訴えて「これでは演奏ができない」と辞退したエピソードなどは、ディアンジェロが描いていたヴィジョンがいかにセオリーから逸脱していたかを示す好例だろう。だが、何よりも興味深いのは『Voodoo』の大半の曲でドラムを担当しているクエストラヴの証言だ。彼はレコーディングに際して、ディアンジェロから「徹底的に正確さを削ぎ落としてほしい。絶対にうまくいくから俺を信じろ。グルーヴをキープしつつ、とにかくだらしなく叩くんだ」と要求されたという。

 正確さこそが命であると考えていたクエストラヴはディアンジェロの注文通りに演奏するのに約1ヶ月もの時間を費やしたそうだが、その成果──クエストラヴが言うところの「泥酔しているかのような演奏」──が最も如実に表れているのが以降ネオソウルのひとつのプロトタイプとして継承されていくことになる “Playa Playa”や “Chicken Grease” だ。ここで打ち出されているフィーリングは現在ネオソウルとして紹介されているあらゆる作品から聴き取れるのはもちろん、もはや今日のモダン・ミュージックを語る上で欠かせないものになっている。

 ミュージック・ビデオと併せてディアンジェロのアイコンになっている “Untitled (How Does it Feel)” がたくさんのオマージュ・ソングを生み出し続けている事実も含め、彼と『Voodoo』の遺伝子はいまもなおそこかしこで見つけることができる。ディアンジェロのデビューから30年、『Voodoo』のリリースから25年。これだけの歳月を経ているにもかかわらず、そのレガシーがなんら古びることなくフレッシュなアイデアとして有効性を維持しているのは驚異的と言うほかない。1990年代にデビューしたレジェンドのなかでも、ディアンジェロの音楽は若い世代にとって比較的「近い」位置にあったのではないだろうか。

 でもだからこそ、この世界にディアンジェロがいない現実をなかなか受け止めきれずにいる。ジョージ・クリントンがケンドリック・ラマーやフライング・ロータスとコラボするような未来が、きっと彼にもあったと思うのだ。

Autechre meets Kohei Matsunaga - ele-king

 来年2月頭に予定されているオウテカの来日公演のサポート・アクトが決定した。オウテカが全面の信頼を寄せるNHKことコウヘイ・マツナガ――なぜ〈Unsound Osaka〉に出演しなかったのかわからない、関西エレクトロニック・ミュージックの第一人者とも呼ぶべき、アカデミアとポピュラー・ミュージックの間に橋を架ける男――、この共演はひじょうに楽しみです。大阪公演はすでに完売しているが、東京はまだチャンスがある。公演情報はこちらから。

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