「Low」と一致するもの

Housemeister - ele-king

 ナイアガラのクラウス・ワイスやガビ・デルガドーのソロ・アルバムなど、ジャーマン・ファンクにはまったくといっていいほど揺れがなく、ダンス・ミュージックとしてはかなり厳しいものがある。同じことがジュークを取り入れたジャーマン・エレクトロのハウスマイスターにも言える。

オープニングは"東京"。


 4作目はタイトルにもなっている通り、DJで世界を回りながら、それぞれの土地でOP-1だけを駆使してつくったそうで、なるほどジュークの質感は上手くトレースされている。チープで痙攣的。ジャーマン・エレクトロとして考えれば、ディプロを意識したらしきシャラーフトーフブロンクスに続く新機軸と言える。

M4"ニュー・ヨーク"。


 リズムに揺れがないからといって、楽しめないということはない。同じようにつくろうと思ったかどうかもわからないけれど、同じようにつくれないからこそ違う良さが出てくることもある。ジュークが基本的にセクシーな音楽だとすれば、『OP-1』で肥大しているのは過剰なまでのガジェット性である(ホルガー・ヒラーやダー・プランがもしもジュークをやったら......)。

M6"メキシコ・シティ"。


 ドイツ人の笑いというのは、それにしても不自然である。放っておくと観念論に走りやすいので、異化効果をもたらすためにはどうしてもそうなってしまうと三島憲一だったかが書いていた覚えがあるけれど、そのこととリズムに揺れがないこともどこかで繋がっているのだろうか。日本人がつくったハウスは重すぎてつなげないとはよく言われるし、きっと日本人がつくるジュークにも特有の民族性は滲み出てくるだろうから、それはもう少し先の楽しみということで。

M8"シカゴ"。


 ジュークのご当地である"シカゴ"では、むしろドイツっぽい曲になり、"モントリオール"はフザけすぎ(最高!)。そして、エンディングはなぜか"大阪"で、"東京"に比べて、妙にアグレッシヴだったり。やっぱりそれぞれの土地柄を表したということなんだろうか......。

 南アのアヨバネスやポルトガルのリスボン・ベースといった新興のエレクトロニック・ダンス・ミュージックを聴いていると、ジャーマン・テクノと大して違わないと思うことが多い。あるいは『OP-1』も、そのような南半球寄りのダンス・ミュージックに聴こえてしまう面が少なからずあり、実際、何の気なしに続けて聴いたヴェネズエラのダンス・ミュージック、チャンガ・トゥキと最初は見分けがつかなくなって、少し混乱もした。


https://soundcloud.com/bazzerk/bazzerk-changa-tuki-classics

 フランスのDJチーム、ジェス&クラッブがアンゴラ起源のクドゥロをまとめた『バザー』(2011)に続いてコンパイルした『チャンガ・トゥキ・クラシックス』はしかし、どちらかというとバイレ・ファンキを思わせるところが多く、これにDFCチームが"スエーニョ・ラティーノ"(89)に続いて仕掛けたラミレスやディジタル・ボーイなど90年代初頭のハード・テクノを注入したような曲が多く、ライナーによれば現地では猛禽に喩えられる音楽だという(DJババによればテクノトロニック"パンプ・アップ・ザ・ジャム"(89)が起源だそうで、確かにDJイルヴィン"ポポ・サウンド"には強い影響が聴き取れる。また、チャンガとトゥキは当初は違うジャンルだったらしく、興味のある方は長~いライナーノーツを参照のこと)。

 ディジタル・クンビアやシャンガーン・エレクトロなど南半球に存在する他のエレクトロニック・ダンス・ミュージックに較べてチャンガ・トゥキは圧倒的にハードだし、途上国に対して抱くようなエキゾチジスムは最初から打ち砕かれてしまう(......どこにもないとは言わないけれど、しかし、ほとんどないに等しい)。それこそアフリカで最も人気があると言われるヒップ・ホップのMCが完全にUSのコピーでしかなくなってしまったのと同様、そういったものはもはや過去にしか存在しないか、むしろ先進国でデラシネとして息を吹き返すしかないのだろう(女性の割礼=FGMが数字の上ではフランスで増えているように......)。

 いずれにしろ現在のヴェネズエラはここに炙り出されているような強い性格の国なのだろうと思うだけである。チャベスが死んでからのことはよく知らないし、行ってみたいと思うわけでもないけれど、スノーデンが最初に亡命を申請したということは、いまでも反米の拠点か、そのように見做されているということだし、それだけのエネルギーが『チャンガ・トゥキ・クラシックス』から聴こえてくることは間違いない。

Vol.9 「Razer Edge」 - ele-king

 

 みなさんこんにちは。夏真っ盛りですね。今回は少し趣旨を変えて、いつものゲーム・ソフトではなく、ハードウェアの方を取り上げたいと思います。というのも、面白いガジェットを手に入れたのですよ。

 それが上記写真のこちら。まるでiPadの左右に無理やりコントローラーを付けたかのような豪快なデザインのこのガジェットこそ、今年3月末に発売された、PCゲームが遊べるタブレットPC(史上初!)、「Razer Edge」です。

 近年多種多様な機種が出ているタブレットPCですが、その中でもRazer Edgeはトップ・クラスのスペックを誇り、また専用のゲーム・パッドと組み合わせれば、まさに携帯機さながらの感覚で最新のPCゲームを遊ぶことができるのです。いままでこういうハードウェアはありませんでした。

 これを作った〈Razer〉というメーカーは、マウスやキーボード等PCゲーム用の周辺機器を中心に手掛けていて、普通のコスト感覚から外れたハイ・スペックと高価格を併せ持つ、変態的デバイスを数多く世に送り出しています。かく言う僕もこのRazer Nagaという17ボタンマウスには、趣味と仕事の両面でお世話になっています。何かもう17ボタンって聞くだけで変態的でしょ。

 
12個のテンキーをそのままサイドにくっつけた暴力的とも言えるデザイン。しかしこれが意外と使いやすいんです。

 そしてこの『Razer Edge』もご多分に洩れず、じつに〈Razer〉らしい変態的な製品です。ていうかまぁ、変態なのは見るからに明らかなのですが、外見以外でも、たとえば価格は本体が約14,5000円に専用のゲーム・パッドが2,4000円と、ゲーム機としては有り得ない高さ。また本製品はアメリカとカナダの限定販売だったので、今回僕は輸入代行業者を挟んで購入し、その手数料や送料も含めると総額180,000円以上になりました。知り合いにこの話をしたら「命懸けてるね」と言われましたよ。

 いやー、でも、外でPCゲームを遊びたかったんですよ。普段忙しくてゲームをやっている暇がなかなか無いから、せめて電車のなかとか移動中の時間を有効活用したかった。それに本製品のOSはWindows 8なので、持ち前のハイ・スペックと組み合わせるといろいろと遊べるんじゃないかという期待もありました。

 果たしてRazer Edgeはそんな期待に応えられる製品だったのか。180,000円も出すに値するものだったのか。そこのところを今回のレヴューで明らかにしていきたいと思います。

『Razer Edge』のプロモーションビデオ。大体どんなものかわかるはず。

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■ゲーム機としてのRazer Edge

 さっそく、ゲーム機としてどうなのよって点について語っていきたいと思いますが、その前に基本的なスペックの説明をすませましょう。

 Razer Edgeには複数のモデルがありますが、今回僕が手に入れたのは最上位に当たる「Razer Edge Pro 256GB」。CPUはCore i7-3517U 1.9GHz、メモリが8GB DDR 3、256GBのSSDにディスプレイが10.1インチで解像度が1364x768、さらにそこにグラフィック・カードのGT 640M LE(2GB DDR3)が加わり、そこらのコンバーチブルPCと同等以上のスペックを誇ります。

 なので、約14,5000円の本体価格も、ゲーム機としてとらえるとギョッとしますが、本製品と同等のスペックのコンバーチブルPCの価格と比較すると決して法外な値段ではありません。ただしゲーム・パッドの方はぼったくってますね。これ単体で2,4000円というのは正直有り得ないと思いますが、これが無いと本製品の真価が発揮されないので仕方がない。

 
本体の外見は厚めのiPadといった感じ。〈Razer〉にしてはシンプルなデザインに好感。

 さて肝心の使い心地ですが、良い点から挙げると、まずは没入感がとても高い。ディスプレイの大きさも解像度もタブレットPCとしては最大級ではありませんが、ゲーム・パッドを装着して持ったときの視界の占有率はとても高く、市販の携帯ゲーム機を遥かに凌駕しています。それこそ感覚的には24インチのディスプレイで遊ぶときとほとんど遜色ありません。

 実際にゲームを遊んだときのパフォーマンスはまずまずといったところでしょうか。いくらタブレットPCとしてハイ・スペックとは言え、最新のPCゲームを最高画質で且つ60FPSで動かすのは不可能です。どうしても動かしたい場合は相当設定を下げざるを得ません。

 ただし30FPSを基準にすれば、最高設定とまではいかないものの、かなりの品質を出すことができます。これは人によって考えが違うとは思いますが、現行のコンシューマ用のゲームがほとんど30FPSで動いていることを考えれば、コンシューマと同等のパフォーマンスでより高い品質で遊べる、というふうにとらえればアリかな、というのが僕の感想です。

 あまり専門的な話にしたくないので今回は詳細なベンチマークは行いませんが、あくまでもザックリとした観測として30FPS基準で大体これぐらいの画質で動くよ、という感じで最近のゲーム4本のスクリーン・ショットを用意しました(クリックで拡大できます)。

 
『BioShock: Infinite』は今回の4本のなかでは最もコスト・パフォーマンスが良かった。グラフィックス設定をすべてHighにしても30~40FPSを維持し、快適に遊べた。

 
次いでパフォーマンスが良かったのがウクライナ産ポスト・アポカリプスFPSの『Metro: Last Light』。SSAAとTessellationをオフにする以外はすべて最高設定。これで屋内はほぼ30FPS以上を維持。屋外では20FPS代前半に落ち込む場面もあり。

 
いちばん厳しかったのが『Crysis 3』。PCゲーム・グラフィックスのベンチマーク的存在の同作は、元々重いこともあり、30FPSを出すにはすべての設定を中以下に落とす必要があった。

 
脱メスゴリラを遂げた、等身大のララ・クロフトが売りの新生『Tomb Raider』。画質は簡易プリセットのままではコスト・パフォーマンスが良くないが、各項目を個別に設定すれば大分改善される。

 もうひとつ良かった点が、〈Steam〉のゲームを遊ぶ際のSteam Cloudによる連携ですね。最近の〈Steam〉のゲームはセーブ・データをクラウド管理でき、すべての環境でそれを読み出すことができます。これを利用することで、ひとつのゲームを出先ではRazer Edgeで遊び、家に着いたら続きをデスクトップPCでやるといったことが可能なのです。まさにハードウェアに縛られないクラウド時代ならではのゲーミングと言え、じつは今回いちばん感動したのもこの点でした。

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■携帯し難い携帯機

 良い点を先に挙げてみましたが、悪い点ももちろんあります。というか、本製品は良い点も相殺しかねないぐらいの弱点を抱えており、それはズバリ物理的に重くて長いということです。

 まず重さ。本体自体が約960gでiPad 2の1.5倍近い重さがあり、これにさらにゲーム・パッドを装着すると約1.9kgになる。それを左右のグリップで支えると手首にとても負担が掛かります。とてもじゃないけど普通の携帯機と同じ感覚で持つことはできず、座って膝に置くなり何らかの支えが不可欠です。

 次に長さ。これも本体だけなら約280x180mmとiPadより少し細長い程度なのですが、ゲーム・パッドを装着すると横幅が約410mmになります。これは電車の座席で利用すると両サイドに手がはみ出る長さ。普通に迷惑であり、使う際は状況をよく考えなければいけません。

 またこの長さは持ち運ぶ際にも何かと不便。まずリュックサックは必携。個別のケースにしてもゲーム・パッドを装着したときの約410x190mmという変則的な大きさをピッタリ収めてくれるものは見つかりませんでした。ここは公式でケースを販売してほしかった。

 
持ち運びが不便な携帯機。良くも悪くも常識を打ち破っていると言える。

 加えてバッテリーの短さについても触れておかなければなりません。平常時は大体4~5時間程ですが、いざゲームを動かすと、保って1時間半といったところ。ヘヴィなゲームを動かすには大量に電力が必要なのはわかりますが、これだけ短いと携帯機としては何とも心許ない。一応ゲーム・パッド側に内臓させる拡張バッテリーも別売りされていますが、それを積むとさらに重くなるというジレンマにも悩まされます。

 要するに携帯機としてはあまりにも取り回しが悪すぎるわけです。ただ、これについては初めからわかっていないはずがなく、普通は取り回しも考えてベターな仕様に着地させるものを、たとえ本末転倒になっても極端な大画面・高性能に舵を切ってしまうのが〈Razer〉らしいというか、変態たるゆえんだと思います。

 良さも悪さも理解した上で、それでも使いたいやつだけが使えばいい。むしろこれだけ高額のものを購入した時点で、覚悟はできているんだろ? そうとでも言いたげな開き直りさえ感じます。

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■タブレットPCとしてのRazer Edge

 ここまではゲーム機としてのRazer Edgeについて触れてきましたが、前述したように本製品はそれだけに留まるものではありません。ここからは汎用タブレットPCとして見た場合にどうなのかという点について書いていきましょう。

 ズバリ言ってしまえば、本製品のタブレットPCとしての最大の長所であり同時に短所でもあるのは、OSがWindows 8であるということです。

 周知のとおり、Windows 8は新たにタッチパネル操作に最適化されたModern UIが採用されていますが、使い勝手は良くありません。というか、従来のデスクトップ型のUIと混合していて、両者を行ったり来たりするのが非常に煩雑なのです。

 
Modern UIもそれだけなら決して悪くはないのだが......

 それを象徴しているのがWin 8版Internet Explorer 10。こいつはなんとModern UI版とデスクトップ版の2種類が混在している。Modern UI版はタッチパネル操作に最適化されていますが、履歴機能が欠けており、また一部動作しないプラグインもあって、ブラウザとして十分ではありません。

 一方のデスクトップ版はModern UI版の物足りなさはありませんが、各ボタンが小さくてタッチパネル操作では使い難い。さらにModern UI版とデスクトップ版はCookieやブックマーク等の情報が共有されない!

 こうしたちぐはぐさはOS全般に見られ、何をするにもまずはこのオペレーションの煩雑さに慣れなければいけません。Windowsではいまにはじまった話ではありませんが、改めて普段使っているiPhoneとの差を実感してしまう次第です。

 ただしどんなに腐ってもWindowsであり、巷に溢れる多種多様のソフトウェアやハードウェアを使うことができるのが何よりの利点。従来のWindowsと同じく、OSそのものの煩雑ささえ克服できれば、スペックの高さも利用していろいろなことができるでしょう。

 ゲーマーとしてまず思いつくのが、Frapsを使ったスクリーン・ショットや動画の撮影。またはゲームの内部データを弄ったり、ネットからMODをダウンロードしてきて適用したりも思いのままです。

 しかしそれ以上に僕がやりたかったのが、Photoshopを動かして絵を描くということ。これさえできれば僕にとってはPCで行うことのおよそ8割が実現できるも同然なのです。とは言えPhotoshopを十分に使うにはさまざまな周辺機器も不可欠です。マウスとかキーボードとかペンタブレットとか。そんなわけで、半ば強引に必要なものを揃えてみました。

 
何か根本的に間違っている気がする。

 じゃん。出オチ感が半端ないですが一応解説すると、マウスは例の17ボタンのRazer Naga、ペンタブレットはIntuos 4のLargeとそれぞれ普段愛用しているものを転用。キーボードはBuffaloのワイヤレス・キーボード、SRKB04BKを新調。テンキー付きで大分横長ですが、そもそもRazer Edge自体横長なので、いっしょに持ち歩くなら関係あるまいとこれを選択。またRazer Edge自体はひとつしかUSBポートがないので、ElecomのUSBハブ、U3H-A401BBKも合わせて用意。

 結論から言えばPhotoshopを動かすこと自体は可能でした。今回この連載のタイトルバナーを新調しましたが、この絵の原寸が4320x2080px。これだけの大きさの画像でも軽快に動作し、ほぼストレス無く作業ができたのは感激です。ただし前述した本製品の携帯機としての意義以上に、本末転倒感が拭えません。

 少なくともこういうことをやるのであれば、ゲーム・パッドと同じくアタッチメントとして販売されているキーボード・ドックやドッキングステーションが必要不可欠でしょう。またマウスとタブレットもさらにコンパクトで且つワイヤレスにするのが望ましい。言うまでもないことですが、今回のセッティングはまったく実用的ではありません。

 理想は液晶タブレットのようにタッチパネルを直接ペンで操作できることですが、現状のスタイラスペンでは実用に耐える精度は出せませんし、この辺は今後の技術向上に期待といったところでしょうか。PCゲームの携帯化が実現できたいま、僕が次に待ち望むのはCG制作環境の完全な携帯化に決まりました。

 
ちなみにRazer Edgeでの制作は早々に切り上げ、結局普段通りデスクトップでの作業に戻っていきました......

■まとめ

 個人的には、この『Razer Edge』は大満足です。180,000円出した価値はありました。やはりPCゲームを野外で遊べるというのは、他には代え難い体験です。しかしその体験を得るために犠牲にしなければいけないこと、克服しなければいけない課題がたくさんあり、その点で他人にはまったく薦められないデバイスなのも確か。これは一般人を端から度外視した、どうしても使いたいやつだけが使うものなのです。

 ただこうしたゲーム体験は現状こそ『Razer Edge』のみで得られる特異なものですが、あと数年すればわりと近いことは一般のタブレットPCでもできるようになるんじゃないかと僕は思っています。先日iOS7がゲーム・パッドへの正式対応を発表し、それとともに出回った装着型のゲーム・パッドの画像は、まんまRazer Edgeを彷彿させるものでした。一般向けタブレットPCの性能向上も著しく、そう遠くないうちに現行機レベルのゲームをそこらのタブレットPCで動作させられる環境が整ってくるはずです。

 そんな、来るかもしれない未来を想像しつつ、現状においてはその未来を唯一体現できるこのRazer Edgeを、僕はこれからも満喫したいと思います。


P.S.
本記事でもサラッと触れましたが、今回長らく仮のままだったタイトル・バナーを一新しました。日本人の立場から洋ゲーを遊ぶ、レヴューするという意味で、日本的美少女を中心にした絵になりました。

 装いも新たにした当連載を、引き続きよろしくお願い致します。
 

The XX - ele-king

 今年も終わってしまった......。
 フジロックは3日間で100を超すアクトがライヴを繰り広げるのだが、そのなかで毎年いくつかの奇跡のようなステージが生まれている。毎年必ずフジに行く人たちはそのことをよく知っているので、自分のアンテナを最大限に広げ、最高の瞬間の目撃者たろうとがんばるのである。
 それはかならずしもメイン・ステージのヘッドライナーではないし、自分が大好きなアーティストであるわけでもない。普段はあまり聴かないアーティストでも、会場にいてタイムテーブルを眺めていると、妙に気になったりするのだ。
 そしてその予感につられて泥濘んだ山道をえんえん歩いた先にとんでもない瞬間を目撃するのは、このフェスの醍醐味のひとつだろう。

 今年は予想通り3日間断続的な雨に降られはしたものの、オーディエンスは雨などものともしない完全装備であの広い会場を移動していた。まったく目撃することはできなかったが、ライ(Rhye)やマムフォード・アンド・サンズ(Mumford & Sons)、マヤ・ジェイン・コールズ(Maya Jane Coles)そしてウィルコ・ジョンソン(Wilko Johnson)はよかったんじゃないだろうか? 僕は今年それほど多くのステージを観ることはできなかったが、それでもThe XXだけは見逃さなくてほんとによかった、まさに奇跡としか言いようのないステージだったのだ。

E王
The XX
Coexist

Young Turks/ホステス

Amazon iTunes

 彼らのセカンド・アルバム『コエグジスト』が発売になったときには全体のトーンがファーストより落ち着いていたこともあって聴き流してしまい、どうしても自分なりの入り口が見つからなかった。
 しかしその状況は3月ぐらいに一変した。きっかけはユーチューブにアップされたBBCのスタジオ・ライヴで、彼らがカヴァーしていたのは2001年に世界中で大ヒットとなったハウス・ナンバー、キングス・オブ・トゥモロー(Kings Of Tomorrow)の"ファイナリー(Finally)"だった。その解釈のあまりの素晴らしさにドギモを抜かれ、これは『コエグジスト』を完全に聴き逃しているに違いないと、即座にリピート再生を開始した。

 それは界面のあまりの滑らかさに、かえって手触りや特徴を消し去られているような純度の高いアルバムだったと、ようやく発売から半年たってから気がついた。そして4月のコーチェラ、6月のボナルーとグラストンバリーのライヴをユーストやユーチューブで見ると、演奏も歌もファースト発売時より格段にレベルアップしている。まさかこれほど旬な時期に彼らのライヴを観られるとは願ってもないタイミングだ。
 昼間のうちに降った雨の湿気が森に溜まり、照明の光がぼやけた輪郭となって反射するなか、ライヴは"トライ(Try)"からはじまった。まず驚いたのはビートの音色の多彩なことだった。決して音数は多くないリズム・パターンなのに、ひとつひとつの音がほんとによく響いてくる。
 彼等の大きな特徴はダンス・ビートとの絶妙な距離感にある。そう、ダンス・ミュージックそのものを作ろうとはしてないのだ。そうではなく自然とこのビートを感覚で選びとっているのだ。ちょうどユーチューブで"ファイナリー"を発見した頃、同じようにジェイミーがソロ名義でルイ・ダ・シルバ(Rui Da Silva)の"タッチ・ミー(Touch Me)"のカヴァーをやっているのを見つけたことを思い出した。"タッチ・ミー"は2002年に全英でナショナル・チャート初登場2位でランク・インしている。
 彼等にとってティーンネイジャーの入口だった2000年から2002年あたりのイギリスのチャートの半分はダンス・ミュージックだったのである。これから自分はどんな音楽を聴くべきかを彼等が真剣に考えはじめたときに、イギリスでいちばん勢いがあったのがダンス・ミュージックであったことは間違いない。少なくともテレビやラジオからはさまざまなダンス・ミュージックが、毎週トピックになる新譜として流れていたはずだ。だとするならば音楽が彼等にとって大事なものとして意識された時点から、すでにそれはダンス・ミュージックだった。そしてこれは僕の妄想かもしれないけれど、"ファイナリー"と"タッチ・ミー"に共通する存在はダニー・テナグリア(Danny Tenaglia)である。テナグリアのDJで2000年から2005年ぐらいに踊ったことのある人ならすぐわかるだろう。The XXがもしテナグリアやジョン・ジョン・ディグウィードになんらかの影響を受けていたとすれば、彼等のビートの洗練のされ方は納得がいく。
 ステージにはスモークが焚かれ、白を中心とした照明が黒い服を着たロミーとオリバーを照らす。ちょうどライヴの中盤あたりで"ナイト・タイム(Night Time)"、これまでのステージに圧倒され言葉も出ない。ここからの後半さらにふたりのヴォーカルの響きが強さと深さを増した。彼等は孤独を歌っているけれど決して孤独を嘆いてはいない。その部分は変わっていないのだが、彼等の声の響きと演奏から強力な自信と信念が伝わってくる。
 これまで共鳴というかたちで響き合っていたメンバーの関係性がさらに進んで有機的に絡み合っているように思えてならない。もし、彼等が、もしくはロミーとオリバーがより深く向き合ってこのステージを行っているとしたら、いまこのときにしか見ることのできないライヴだ。僕は"シェルター(Shelter)"あたりから、ロミーとオリバーからまったく目が離せなくなってしまった。彼らもオーディエンスの思いに応えるということでなく、オーデェンスもそれぞれの気持ちを重ねるということではなく、目の前に現れた予想を遥かに超えたなにか純粋なものに息を飲むというような瞬間が続く。

 ラストの"エンジェル(Angel)"を終えてステージ袖に消えてゆくロミーとオリバーが手をつないだ瞬間、僕はほんとに胸が締め付けられた。
 もしあのふたりが僕の想像するように向き合っているのなら、これほどまでにピュアな関係性が現実ならば、僕はこの先の彼等に訪れるものを想像して震えてしまう。いやそうではない、終わってほしくない物語がまたひとつはじまったのだ。
 イギリスでは3枚、4枚と続いて進化もしくは深化し、さらにテンションを維持しながらアルバムを作り続けるアーティストはまれである、それはしかたのないことなのだ。しかし彼等なら、次の次元あるいは想像を超えた風景を見せてくれるかもしれない。

The XX "finally"


Jamie XX & Yasmin "touch me"


Marcellus Pittman - ele-king

 欧米のいまのテクノ/ハウスの盛り上がりは本当にすごい。NHK'Koyxeиとスカイプで話して、向こうの状況を聞いていると羨ましくなる。まず何がすごいかって、NHK'Koyxeиもローレル・ヘイローもマーク・フェルもディーン・ブラントも、そしてピート・スワンソンもネイト・ヤングもホアン・アトキンスもURもジュリアン・バーウィックもミカ・ヴァイニオもアンソニー・ネイプルスもアンディ・ストットも、同じようなイヴェントに出演している。境界線は取っ払われて、拡張し、開かれているというわけだ。『TECHNO definitive 1963-2013』で取りあげていた連中が、いま見事に合流している。ハウス・シーンが新旧入り乱れて活性化しているように。
 ジェイムス・ブレイクやエア・ヘッドらがデトロイト・ハウスに触発されている話は前にしたが、デトロイト・ハウスは何もセオ・パリッシュとムーディーマンだけではない。マルセラス・ピットマンも代表的なひとりだ。彼は3 Chairsの第4のメンバーでもあり、ジャジーでメロウなトラックは自らのレーベル〈Unirhythm〉から出している。ブラック・ミュージックとしてのハウスの最良なモノが彼の音楽にもある。この夏のお盆、君の魂をケアするのは、破産した米国の工業都市からやって来るマルセラス・ピットマンになるだろう。


Marcellus Malik Pittman Japan Tour 2013


8.9(FRI)Osaka@Triangle

Music by Maurice Fulton & Marcellus Pittman

open/start 21:00
Door 3000yen with 1Drink
With Flyer/Advanced 2500yen with 1Drink
Pia, e+

Info: Triangle https://www.triangle-osaka.jp
大阪市中央区西心斎橋2丁目18-5 TEL 06-6212-2264

AHB Production https://www.ahbproduction.com

Red Bull Music Academy Radio
https://www.redbullmusicacademy.jp
https://www.rbmaradio.com

8.10(SAT)Niigata @goldenpigs yellow
- Lights Down Low -

Guest DJ: Marcellus Pittman
DJ: Ichiya TAKIO KAIZU & smook
LJ: CON
SOUND SYSTEM: february audio

open 22:00
Door 3500yen
Advanced 3000yen

Info: Golden Pigs Yellow https://www.goldenpigs.com/yellow.html
新潟市中央区東掘通6番町1051-1 G.Eビル3F TEL 025-201-9981
WAXIN' https://waxin-essence.blogspot.com
Cave Records TEL 025-201-8878

8.11(SUN)Ueda @LOFT
- Sound of LOFT -

Guest DJ: Marcellus Pittman
DJ: Masahiko Uchikawa(Rhythm Of Elements, LOFTSOUL), Atsushi Fujisawa(H.R.N), Tatsuga&Tetsuta

open 21:00
Door 3000yen
With Flyer 3000yen with 1Drink

Info: LOFT https://www.facebook.com/loft0268
長野県上田市中央2-13-10ツカサビル3F TEL 0268-25-6220


8.15(THU)Kyoto @COLLAGE
- welcome Marcellus Pittman -

Guest: Marcellus Pittman
Act: hanky and friends

open 20:00
Adm 3000yen with 1Drink
With Flyer 2500yen with 1Drink

Info: COLLAGE https://www6.ocn.ne.jp/~collage/collage/
京都市中京区西木屋町通四条上ル紙屋町336?レイホウ会館3F TEL 075-256-6700


8.16(FRI)Tokyo @Amate-Raxi
- Marcellus Pittman Feat. Re:Funk -

B1F
Marcellus Pittman
AYUMU OKADA (yes. / disk union)
KAJI (JMC / XXX)
OHISHI (JMC / SODEEP)

DANCE PERFORMANCE...
Lagos APT. +SODEEP (NAO, UEMATSU)

1F
STOCK (JMC / World Spin)
konsin (WALKERS)
Dee Jay

open 22:00
Door 3500yen with 1Drink
With Flyer 2500yen with 1Drink

Info: AMATE-RAXI https://www.amrax.jp
東京都渋谷区渋谷3-26-16 TEL 03-3486-6861


8.17(SAT)Nagoya @Club Mago
- audi. -

Guest DJ: Marcellus Pittman
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

open 22:00
Door 3000yen
With Flyer 2500yen

Info: Club Mago https://club-mago.co.jp
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F TEL 052-243-1818

TOTAL TOUR INFO: AHB Production 06-6212-2587 www.ahbproduction.com



あらべぇ - ele-king

この夏からLIVEを始めることにしました。MPCを使った即興的な実験音楽になると思います。詳細は追ってTwitterで報告できると思いますので、興味ある方もない方もチェックしてもらえたら嬉しいです。
https://twitter.com/wlowlodub
soundcloud.com/wlowlodub
calmlamp.net/

選曲の方ですが、最近聴いているヤツから選んだので自然と夏に合うモノとなりました。1〜4は曲、5はmix、6〜10はAlbum、EPとなっております。どれも素晴らしいのでよかったらチェックしてみてください!

"最近聴いてるヤツ"


1
colleen - summer water
https://www.youtube.com/watch?v=LbUG29uNYXo
もう夏はコレ!といった感じです。

2
Marques Houston - Body
https://www.youtube.com/watch?v=hOP-KfLIgIk
チャラいですね~。

3
Monkey_sequence.19 - Lazy Lovin'
https://www.youtube.com/watch?v=KtNaljh4q30
minnie riperton使いが冴えてます。

4
キセル - ナツヤスミ
https://www.youtube.com/watch?v=fgSGSKLw9t8
透明感あります。僕もナツヤスミに入りました。

5
Swarvy ✘ the art of rəuse - MOST HIGH
https://soundcloud.com/the-art-of-reuse/swarvy-the-art-of-r-use-most
ペンシルヴァニアのビートメイカー、swarvyによるroots rock reggaeを中心としたmix。
選曲も最高ですがswarvyによるエフェクト処理によってひと味違うモノとなっております。

6
King Jammy - Dub Kings: King Jammy At King Tubby's
夏にdubは欠かせませんね~。是非LPでどうぞ。

7
Aloonaluna - Bunny
https://aloonaluna.bandcamp.com/album/bunny
lynn fister女史のソロ・プロジェクトによるテープ作品。Hooker Visionからのリリース。
ドリーミーなローファイ・ポップが夏の夜更かしをお助けします。

8
ALI BIRRA - Ammalele
最近エチオピア音楽がアツいですね〜!激アツです!どんちゃかどんちゃかなパーカッションに自然なローファイ具合、最高です!

9
BDR - Bushman Dr. tape
https://soundcloud.com/budorinos/bushman-dr-tape-teaser
東京在住、MCやDJとしてでも活動するbudoriことBDRによるビートテープ。煙たく凶悪なベースに所々施されたdub処理が映えます。

10
1968 - aporia
https://1968.bandcamp.com/album/aporia
新潟在住の音楽家、1968によるフリージャズなFree EP。最初聴いた時、うおーーー!ってなりました笑 とにかく聴いてみてください。

Co Laの新章 - ele-king


Co La
Moody Coup

Software / melting bot

Amazon

 〈ソフトウェア〉からのリリースとなったセカンド・アルバム『ムーディ・クープ』で格段に磨かれた感のあるボルチモアのプロデューサー、コ・ラ。〈NNAテープス〉、〈ソフトウェア〉といったアンダーグラウンドのポジティヴな熱量がこもったレーベルを拠点に、ジャム・シティやキングダムを擁する〈フェイド・トゥ・マインド〉などへも音楽的な橋をかけ、大きな飛躍を見せようとしている。今回の初来日では、「元ポニーテイル」という紹介がもはや不要となりつつあるギタリスト、ダスティン・ウォンとのコラボレーションが予定されていたりと、東京・大阪のそれぞれの夜を、次のシーンを築く個性的なアーティストたちがサポートする様も楽しみである。


昨年の〈100% SILK〉のジャパン・ツアーにつづく10年代のサマー・オブ・ダブ! 近未来のエキゾチカを描くUSアンダーグランドの鬼才Co Laが初来日!!

ニュー・エキゾチカ、 アヴァン・ラグジュアリー、 ファーニチャー・ミュージックと称された〈NNA Tapes〉からの怪作『Daydream Repeater』、最新作『Moody Coup』は近代エレクトロニック・ミュージックの旗手 Oneohtrix Point Never主宰、NYCブルックリンの新鋭レーベル〈Software〉よりリリース、トロピカルに土着的であり、モダンに都会的であり、シンセティックに未来的である、10年代エキゾチカの奥地へと突き進み、前人未到のダブの領域へと踏み込んだボルチモアの鬼才、Co La。未だかつてない温かくも冷たい至高のサイケデリア、インディ・ダンス、ディスコ、ダブ、アンビエント、ドローン、テクノ、インダストリアル、ハウス、ジューク、ベース、ビートなど、様々なジャンル、モード、文脈が入り乱れるネット/10年代以降の感性を結実させた新しい辺境の夏が始まる。

https://bondaid.jp

■C o L a J a p a n T o u r 2 0 1 3

■東京公演

BONDAID #1 8.2 (FRI) @ SECO Bar Shibuya Tokyo

Live: Co La, Dustin Wong, Co La x Dustin Wong - Ecstatic Sunshine -,
Sapphire Slows, Dream Pusher,

Dj: Cold Name, Mayu, sali, asyl cahier, SlyAngle

日程:2013年8月2日(金)
会場:SECO Bar Shibuya Tokyo
時間:OPEN 21:00 / START 21:00
料金:ADV & W/F 2500 yen | DOOR 3000 yen

詳細: https://bondaid.jp/post/52069137191/bondaid-1

主催:BONDAID
お問合わせ bbondaidd (at) gmail (dot) com

■大阪公演

OZ 8.4 (SUN) @ Club Circus Osaka

Live: Co La, metome, Eadonmm,
Dj: Keita Kawakami, Seiho, OZ crew

日程:2013年8月4日(日)
会場:Club Circus
時間:TBA
料金:ADV 2000 yen | DOOR 2500 yen

主催:OZ
お問合わせ https://oz-party.tumblr.com

詳細: https://bondaid.jp/post/52068939200/oz


Femi Kuti - ele-king

 フェラ・クティの音楽的継承者としての姿を求める人には、このフェミ・クティよりも彼の異母弟(フェラの末っ子)シェウン・クティの方がより"正統"として響くだろう。62年生まれのフェミより20年もあとの80年代に生まれたシェウンは、父親の音楽に、一定の距離を置いたところからかなり純粋な畏怖と憧憬をもって接している印象を受ける。現在30代以下のミュージシャンをして、70~80年代サウンドを"新しいもの"として解釈させるようなポジティヴな隔世感も少なからず作用しているだろうが、末っ子シェウンは父フェラのアフロ・ビート様式の泥臭さをフレッシュなものとしてほぼ全肯定し、自分の手で素直に再提示できるメンタリティーを持っている......つまり、父親のバンド:エジプト80を引き継ぐにふさわしい(無論いい意味で)ピュアな継承者なのだと思う。
 それに対し、父親の黄金期の70年代から父のバンドで修業し、そのスタイルを間近で学んだ長男フェミは、当然独り立ちする際には父親との差別化を意識したに違いない。加えて、ときは80年代、いわゆる"ワールド・ミュージック"が、主にパリ経由で、一定の西欧ナイズ&モダナイズを強要されながら......というか、事実その効果で、世界のマーケットに食い込み始める時期だ。フェミの西欧マーケットを視野に入れた〈アフロ・ビート×モダニズム〉の方向性は、おそらくそのときから一貫している。彼がしばしばインタヴューで語る"自分の音楽の原則"も実に明快だ。曰く:〈基礎が堅牢なアフロ・ビートの原理をあまり危うくしないこと〉。それは、父親の音楽様式をそのまま継ぐつもりはない、という意思の婉曲表明になっている。

 しばらく前にパリのエリゼ・モンマルトルでフェミ・クティのライヴを見たときに驚いたのは、演奏よりもむしろそのMC......というより演説だった。アフリカの窮状、その原因となっている西側諸国とアフリカ諸国の権力者間の密約、それによるアフリカの政治腐敗と、西側の後ろ盾によって温存され続ける、アフリカの市民が搾取される構造、慢性的貧困。それを理論的に担保する新自由主義経済/グローバリゼイション・システムの欺瞞を、演奏の合間に何度も、長々と、激しい口調で語るのだが、その演説がすべてフランス語だったのだ。
 生まれこそロンドンだが、旧英国領で英語を公用語とするオリジン国ナイジェリアのラゴスで育ち暮らすフェミが一体いつどこでフランス語を習得したのかと思ったら、実はラゴスのアリアンス・フランセーズ(フランス語学校)に自分から通い、それを音楽活動が軌道に乗って久しい30代に入って以降もしばらく続けていたらしい。そう報じる《ラディオ・フランス》の最新インタヴューでのフェミは、次のようなことも語っていた。

 ......フランスはアフリカ音楽の"メッカ"だ。サリフ・ケイタもアンジェリック・キジョもフランス経由で世界的な名声を得たし、昔、父がアフロ・ビートを世界に広めようとした際も、フランスより旧宗主国イギリスの方が父の音楽に対してずっと冷淡だった。その後、自分が初めてヨーロッパで公演しようとした際も、イギリスでブックできたのは2ヶ所だったが、フランスでは15ヶ所で演奏できた。財政面の問題で自分のバンド:ポジティヴ・フォースが解散の危機にあった際、在ラゴスのフランスの文化機関が尽力してナイジェリア=フランス文化交流イヴェントに招聘してくれたことで、オレのことをフランスの新聞が一面で評価してくれ、それが自分にとって決定的な転機となった、と。

 今回のアルバムでは、近作(『Day by Day』『Africa for Africa』)にあった派手さや、ポップなフィーリングが、音の生々しさ、ゴツゴツした感じに取って代わられている。しかし15年来の相棒であるフランス人プロデューサー/エンジニアのソディ・マルシスヴェール(Sodi Marciszwer)との共同作業の流れのなかで見れば、ああなるほど、今回はこういう音にしたかったんだな、と、すんなり腑に落ちる。

 これまでは単に Sodi と表記されることが多かったソディ・マルシスヴェールは、日本ではほとんど語られることがないが、フランスのストリート・ミュージック/プロテスト・ミュージックの分野では篤い信頼を置かれている人物だ。古くはレ・ネグレス・ヴェルト、マノ・ネグラから、IAM(アイアム/仏ヒップホップ・グループの最高峰)、ラシッド・タハ(ぼくが先日レヴューした『Zoom』のパリ録音部分のエンジニアは彼だ)など錚々たる面々と仕事をしてきたが、なにより1980年代後半以降、つまりパリがアフリカ音楽にとって最大の友好的"ハブ都市"になって以降の晩年のフェラ・クティが、時代感覚に長け、世界に売れるアフリカ音楽の音を作れる男と踏んで信頼を置いたエンジニアが彼なのである。それでソディはフェラの『Just Like That』『Beasts of No Nation』『O.D.O.O.』、遺作『Underground System』で仕事をするようになったし、フェラが没したのち、エイズ・チャリティーのフェラ・トリビュート盤『Red Hot + Riot』でも活躍したのだった。

 父が他界したあとにそのソディと15年以上もタッグを組んでいるフェミが父親から最も直接的に引き継いだのは、思うに、アフロ・ビートの様式以上に、その政治性、闘争心と、時代感覚に優れた相棒のソディなのである。父のバンド(音)を引き継いだのがシェウンなら、そのブレインを引き継いだのがフェミ、という対比を見ることもできるわけだ。そのシェウンの録音のプリミティヴな質感も当然意識したに違いないし、ここ最近の世界中のアフロ・ビート・バンドの、アナログでパワフルでシンプルな音のトレンドも考慮して、フェミは今回の音をソディとともに作ったはずだ。フェミ特有の持ち味(ソウル・ジャズ~ファンク・テイスト、メロディアスなヴォーカル・ライン、キャッチーでアップリフティングなホーンのリフ、コーラス隊とのコール&レスポンス etc.)はそのままに、それを近作にない"raw"なストロング・サウンドで表現したのだ。

 つまり戦略。フェミは戦略の人だと思う。アフロ・ビートを伝統芸能として守ることが目的ではなく、アフリカの問題が世界の問題(の象徴)である以上、より広く世界規模でその現状をつまびらかにすることを第一義と考える、そんな音楽家/活動家である。その手段として、(最もそれを届けなくてはならない対象である)西側のリスナーの耳を常に意識し、彼らに馴染みやすいそのときどきの時代の音を適度に採用することを全く厭わない。むしろその方が逆に、雄弁で舌鋒鋭いメッセンジャーとしてのフェミのキャラが鮮やかに立ち上がってくる。"アフロ・ビートの原理をあまり危うくしない"ように留意しながら、毎回そこを緻密に計算していると思うのだ。

 今作のリード・チューン"The World is Changing"のPVも、同じ意味で実にフェミらしい。例によって分かりやすい英語で歌われ、さらに非英語話者でも理解しやすいようにすべての歌詞を随時表示し、重要な単語は視覚的に強調されている。地球が苦しみに変わっていく......というテーマのヘヴィーさに軽快なギターの刻みとポップでテンポのいい映像が対置されて観る者を引き込む工夫がなされているし、持たざる者とすべてを失った者が呆然と立ちすくむとき、その背後に、歌詞で一切触れずして、地球規模で暴利をむさぼる打倒すべき巨大な権力構造を、観る者に意識させる。この、誰も心躍らない気の重いテーマを、いかにスムースに伝えるかに心を砕くのがフェミなのである。(余談だが、もちろんシェウンのプロテスト性もかなりのもので、『From Africa with Fury : Rise』でも〈モンサント〉や〈ハリバートン〉といった企業を名指しで糾弾していたくらいだが、その直接的なやり口も父親譲りな気がするし、その点のフェミとシェウンの表現法の違いに注目するのも面白いだろう)

 とにかく、そういう汎地球的メッセンジャーたらんとするフェミのアティテュードを思うに、彼が自分からフランス語を習得したことにも合点がいく。もちろん相棒ソディが仏人であることや、アフリカ音楽にとってのフランスの重要性を身をもって知ったフェミが、その自分を評価してくれ、世界へメッセージする足掛かりとしてもふさわしい場所を重要な活動拠点に位置づけようとしたことも、その大きな要因だろう。
 しかし、おそらく彼にとってフランス語のもっとも大きな有用性は、ツアーで各地を回ってステイジ上からメッセージする際、西側のフランス語圏だけでなく、フランスやベルギーの旧植民地/旧統治領であったアフリカ諸国の"同胞"にも、その国の公用語で語りかけられることなのだろうと想像する。ひとくちにアフリカといっても、植民地政策の成り行きから公用語の面で主に英語圏とフランス語圏とに二分されてしまっている。フェミの性格からしたら、"アフリカ・ユナイト"主義のメッセンジャーとしての理想像をストリクトに追求しそうではないか? 仏語圏アフリカのトップ・ミュージシャンで英語も使える人はいても、その逆はそう、いない気がする。

 そうしたフェミとフランスとの関係はあまり知られていないと思うが、ついでに言えば、フェミは自分のマネージメント・オフィス、レコード会社、ビジネス上のコネクション、銀行もすべてパリに置いている。そんな事情もあってだろう、前掲の《ラディオ・フランス》のインタヴューでのフェミは、〈パリのナイジェリア人〉とも形容されていた。ジョージ・ガーシュウィン『パリのアメリカ人』以降長らく、この言い回しはお約束の決まり文句なのだが。
 その〈パリのナイジェリア人〉は、この新作『No Place for My Dream』のワールド・ツアーを、パリ郊外のラ・デファンスからスタートさせた。ラ・デファンス地区とは、世界有数の多国籍企業が数多くそのフランス支社を構える同国最大のビジネス街、つまりフランスでもっとも新自由主義を象徴する場所だ。その場所で、この悲惨きわまりない荒廃したゴミの街(ラゴスのスラム)のジャケットの新作をアピールしたのである。近未来的な高層ビルが林立する、世界でも屈指の"ハイパー・アーバン"なビジネス街に、このポスターが貼られた場面を想像してみて欲しい。それがフェミ・クティのやり方なのである。

‪Femi Kuti‪ - The World is Changing (official video)‬

interview with Washed Out - ele-king


Washed Out
Paracosm

Sub Pop/よしもとアール・アンド・シー
(8月7日発売予定)

Amazon iTunes

 態度ははっきりしている。音楽にできる最良の行為、それは現実を忘れさせること。アドルノ以来、「醜い現実を酷くないかのように見えなくしてしまうのは実にけしからん」と、延々と批判されてきた大衆音楽の特性をアーネスト・グリーンは肯定する。まやかしであっても夢を選ぶ、そう思いたくなるときもたしかにある。現実が酷ければ酷いときほど、ダンス・カルチャーが燃え上がるように。
 現実直視音楽にも最高につまらないものがあるように、現実逃避音楽は誰にでも作れるわけではない。テクが要るし、スキルも、コンセプトも、時代を見る目も要る。フランク・オーシャンのように、ドリーミーな音楽が現実を軽視した浮ついたものであるとも限らない。時代と向き合うことでしかドリーミーな音楽は威力を発揮しないとも言える。
 夢作りの確信犯、ウォッシュト・アウトの新作『パラコズム』は、あなたを騙すことができるのだろうか。以下の取材から、彼は何を目的に、どんな思いで音楽を作っているのかが伺えるだろう。同時に、彼の音楽的な土台、その方向性もより明確にわかるはずだ。彼が夢見ているのは、ごくごく素朴な夢である。ゆえに彼は広く愛され、同時に非難される。が、しかし、この2年、どれほど彼のフォロワーが出てきたことか......

すごく昼間っぽいサウンドのアルバムを作りたかったんだ。晴れた夏の日に外で聴きたいレコードをね。曲を書いてたのは真冬で、すごく寒くて、でも頭にそんな場面を浮かべて書いてた。だから遅くても8月にはリリースしなきゃって思ったし、そこを目指してたんだよ。

アセンズに引っ越したと聞きましたが、住んでいるのはそこですか?

アーネスト:うん、ジョージア州アセンズ。いまもその家で電話してるんだ。いいところだよ。いまは春の終わりから初夏って感じで、いい季節。

ウィズイン・アンド・ウィズアウト』が2011年の7月ですから、ちょうど2年ぶりの新作となりますね。いまの心境は?

アーネスト:そうだな......最初に頭に浮かぶのはこの2年間のことかな。で、そのほとんどはツアーでライヴをたくさんやってたんだよね。この前のアルバムでは少なくとも1年半、2年近くツアーを続けたから。あいだには短い休みしかなくて、曲を書きだすには次のステップが何かちゃんとわかってなきゃいけないんだけど、いつも移動してライヴをやってるとそれがすごく難しくて。だから去年の8月にツアーが終わると、ほとんどすぐに新しいレコードの曲を書きはじめたんだよ。で、仕上げたのが今年の4月の初め。だから僕はツアーが終わるとほぼすぐに自分のスタジオにこもって、新曲を作ってた。休みなくね。

今回のアルバムのリリースが8月になったということに関しては理由がありますか? 夏に出したかったとか、夏の終わりに出したかったとか?

アーネスト:その通り。一番の理由は、この新しいレコードが......最初、僕はすごく昼間っぽいサウンドのアルバムを作りたかったんだ。晴れた夏の日に外で聴きたいレコードをね。曲を書いてたのは真冬で、すごく寒くて、でも頭にそんな場面を浮かべて書いてた。だから遅くても8月にはリリースしなきゃって思ったし、そこを目指してたんだよ。少なくともここジョージアでは9月、10月に涼しくなって季節が秋に変わりはじめるから、それまでに出せるよう、完成させるのが僕にとっては重要だった。実際、そうやって締切を設定するのがよかったんだよね。とはいえ、もし曲作りに詰まって素材が揃わなかったら、当然リリースは先に延ばしただろうけど、自分としては夏までに出そうと思ってたんだ。

あなたは、チルウェイヴという新しいジャンルの代表格となってしまったことで、賛同者も多い反面、多くの批判にも遭ったと思います。ここ日本でも賛否両論がありましたが、あなたは自分を取り巻いた、そうしたさまざまな言葉は気になりましたか? 傷ついたり、翻弄されたりしませんでしたか? 

アーネスト:変な気がするのは......いま2009年、2010年の頃を振り返ると、僕には音楽業界における経験がまったくなかったし、それ以上に音楽制作やプロダクションにさえ経験がなかったから、ものすごくナイーヴだったんだ。いまあの頃の曲を聴くと、自分ではそのナイーヴさが聞こえてくる。その経験のなさは、いいことでも悪いことでもあったと思う。例えば評価されても批判されても、自分の音楽について書かれること自体初めてだったから、受け入れやすかったっていうのかな。誉められてもリアルに感じられなかったし......うまく説明できないんだけど。変に聞こえるかもしれないけど、あんまり気にならなかったんだよ。
 たぶん、『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』を作ってるときは期待されてるのがわかってたし、その前に出したレコードを気に入ってるファンが大勢いるのがわかってた。たぶんどんなアーティストにとって難しいのは、そういうファンの期待に応えながら、新しいことをやって前に進もうとすることなんだよね。僕自身、同じようなレコードを何枚も作りたくないから。
 で、批判に関していうと......かなり早い段階から、無視するのが一番だってわかったんだよ。レヴューは読まないほうがいい、って。それを早い段階で学んだのが大切だったと思う(笑)。とくにネガティヴなやつは。何の得にもならないし、僕はできるかぎり避けようとしてる。

ベッドルームで作った音楽をブログにあげたらいきなりそれが話題となって、そして、アルバムまで出すことになってしまいました。日本からも、いきなり野外レイヴにライヴで呼ばれたり、2010年から2011年は、いろいろな急展開があったと思います。ベッドルームで楽しみにのために作っていた音楽を、人前でライヴ演奏することは、最初、いろいろな困難があったと思います。いかがだったでしょうか?

アーネスト:そうだね。日本でのライヴに関して言うと、これまで何度かやったんだけど......最初の来日は〈フリークス・フェスティヴァル〉だっけ? あれはほんとにライヴをはじめたばっかりの頃だったんだ。だからまだ試行錯誤してたし、ベスト・パフォーマンスだったとは言えないな(笑)。でもその1年後に〈フジ・ロック〉でまた日本に行って、あれは個人的にあらゆる場所でやってきたたなかでも思い出深いライヴのひとつなんだよ。自分たちでも何歩か前に進んで、どうすればいいパフォーマーになれるか、やりかたがわかりはじめてた。で、いまはそこからまた進んで、より経験を積んで、用意ができてると思う。新作でも重要だったのが、これをライヴで演奏することになる、ライヴが前よりずっとよくなるってことだったんだ。

つまり、たくさんライヴをいろんな場所でやった経験が、音楽そのものやソングライティングにも影響したということ?

アーネスト:その通り。いま思ったんだけど、僕ら、いろんなバンドと一緒にツアーしたんだよね。演奏においてもソングライティングにおいても、よりビッグなバンドのサポートを務めたことがすごくいい経験になったと思う。最後のツアーではザ・シンズのサポートをやったんだ。僕は長年彼らのカジュアルなファンだったんだけど、実際に毎晩彼らのライヴを観て、そのプロフェッショナリズムに触れるのがすごく興味深かった。
 と同時に毎晩彼らの曲を聴いて、ソングライティングでも......聴いてて自分が盗みたいところを頭のなかでメモしてたんだよね(笑)。だからライヴをやればやるほど、どうすればうまくいくかトリックがいろいろわかってきて、それを自分の曲に取り入れたくなった。もしベッドルームでずっと曲を作りつづけてたら、絶対にこんなレコードはできなかっただろうな。ただのベッドルーム・レコードじゃなくて、ライヴの延長っていう部分がすごく大きいんだ。

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僕は、もちろんいまでも新しい音楽はネットで追いかけてるんだけど、ある意味クリエイティヴな距離を置こうともしてるんだ。トレンドってことで言えば、フランク・オーシャンとか、ドリーミーでありながらR&B寄りのサウンドがある。いまは、そのへんのサウンドをやってる面白い人たちが大勢いると思う。


Washed Out
Paracosm

Sub Pop/よしもとアール・アンド・シー
(8月7日発売予定)

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ライフ・オブ・レイジャー』のような音楽は、当時のリーマンショックと、直接的ではないにせよ、少なからず何らかの関係があると思いますか?

アーネスト:当然外の世界と関係してた。もちろん、全部僕個人の経験をフィルターにはしてるけど。だって僕はあの当時大学を卒業して、不況で職が見つけられなかったんだよ! 実際、タイトルの『ライフ・オブ・レジャー』もちょっとしたアイロニーのつもりだったんだ。僕は実家に戻って親と住みながら、"ライフ・オブ・レジャー=悠々自適の生活"を過ごしてたんだから。それが5年も続いた。家賃も払わずにすんで、すごく変な感じだったな。大人になったのに、何もやらずに親と同居して、気楽ではあるんだけど、同時に......まともな大人になれてないという後ろめたさもあった。
 罪悪感があったんだよ。あのレコードの歌詞はそれについてだしね。でも音楽的には、僕はずっとああいうフィーリングの曲を作ってきたと思う。そこは僕の直感的なものっていうか、喜びと悲しみの中間、何も起きてないけどオプティミスティックな感覚はある、みたいな――僕がいまあのレコードを聴くと、そういうフィーリングが聞こえるんだよね。

興味深いのは、ちょうど『ライフ・オブ・レイジャー』の頃から、ドリーミーで、逃避的な音がいろんなところから聴こえるようになったことです。これを時代の隠された声として捉えることはできると思いますか?

アーネスト:うん、できると思う。僕がやっていたことと似ていることをやってたバンドがいくつかいて......コンセプト的に同じようなものがあって、それを音楽にしていた。ちゃんとした理由は答えられないんだけどね。いくつか思い浮かぶのは......ひとつは当時テクノロジーにおいて、レコーディングができるセッティングが手に届くようになったこと。しかもそのレコーディングの方法が以前とは違ってた。テープや高価なスタジオを使わない、コンピュータでのレコーディングだね。そのことが曲作りにも影響を及ぼしてたんだ。そこは大きかったと思う。ネオン・インディアンやトロ・イ・モアみたいな人たちを考えると、僕らはみんな同じツールを使ってたし、みんな同世代で、たぶん似た音楽を聴いて育ってきてて。そこが一番大きいんじゃないかな。コンピュータ・テクノロジーの側面が。他の人たちにもその質問訊いてみたら面白いだろうけど。

とくにアメリカでは、こういうドリーミーな音は、ウォッシュト・アウトが出てくるまで、あまりになかったと思います。しかし、この2年、欧州のインディ・シーンでもドリーミーな音が目立っています。あなたに近いテイストをもった音楽で、共感できるアーティストはいますか?

アーネスト:それはいま挙げたような人たちだよね。新しいバンドで言うと......難しいな。僕は、もちろんいまでも新しい音楽はネットで追いかけてるんだけど、ある意味クリエイティヴな距離を置こうともしてるんだ。トレンドってことで言えば、フランク・オーシャンとか、ドリーミーでありながらR&B寄りのサウンドがある。ああいうのが去年すごく人気になったよね。うん、フランク・オーシャンをはじめとして、そのへんのサウンドをやってる面白い人たちが大勢いると思う。
 ただ個人的にはもうちょっと古いレコードを聴いてるんだ。とくにこの新作はいま出てきてる新しいアーティストより、古いレコードのほうに影響を受けてる。新しい音楽に関しては、僕はDJをよくやるんだけど、そのときはもっとダンス・ワールドにプラグインしてるんだ。プールサイドっていうバンドはすごくいいと思う。面白いサウンドを持ってて、よくあるクラブっぽいサウンドのダンス・ミュージックじゃない。もっとスロウで......この前のレコードはすごく好きだったんだ。ただ、このレコードの大きな影響のひとつにヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』があって。それってダンス・レコードからものすごく飛躍してるんだけど(笑)。だから自分としては今回、純粋なエレクトロニック・ミュージックとは違うサウンドの音楽に興味を持ってたんだよね。

あなたの音楽は初期の頃から、「戦わずに逃げよ」と言っていますよね? なぜそのような思いにいたったのでしょうか? とても興味深い反応だと思います。

アーネスト:その通りって気がするな。理由はわからないけど。僕は根っからのデイドリーマー、夢想家なんじゃないかな。生まれてからずっとそうだったし......いや、僕は大好きなことをやってるし、別に自分のミジメな存在から逃げだしたいってわけじゃない。それでも、本能的にそういうところがあるんだと思う。僕はきっと理想主義者で、ロマンティックで......僕の音楽から"エスケーピズム=逃避主義"っていう言葉を受け取って、それをネガティヴに考える人が多いんだけど、僕からするとアート自体がユートピア的なものなんだよね。日常の生活、いまここにおいてはすべてがパーフェクトってわけにはいかないかもしれないけど、なんであれ白昼夢として夢想することはできる。とくにこのレコードは全部それについてなんだ。頭のなかのもうひとつの世界、白昼夢、オルタナティヴな現実――なんて呼んでもいいけど。

トールキンやルイスの『ナルニア物語』のようなファンタジー小説をあなたが好む理由は何でしょう?

アーネスト:えーと、実際そういう本は読んでるし、ファンと言ってもいいけど、そういう物語が大好きだとは言えないな。でもファンタジーっていう言葉を聞くと、そういうものがまっさきに思い浮かぶ。一番先に思い浮かぶ世界がルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』だったり、トールキンの中つ国だったり。ただ、必ずしもこのレコードの制作時にそういうものを考えてたわけじゃなくて。むしろ、もっと現実的な世界をユートピア的視点から見てるっていうのかな? 別に動物がふわふわ浮かんでるとか、そういうんじゃないんだ(笑)。いま起きてることのもう少し良いヴァージョンなんだよね。
 僕、これが最初のインタビューだから、あと何度かやればもうちょっとうまく説明できるんだろうけど......。とにかく僕は毎日作業を続けてたんだけど、どんなアーティストでも作家でも、長い間ひとつの創造的空間を生み出そうとしてると......あるポイントにくると、もう問題は「ウォッシュト・アウトにとって意味が通じるか?」ってことじゃなくて、「自分が作りだしているその空間にとって意味が通じてるか?」ってことになるんだ。うまく言えないんだけど、僕にとってはその思考が興味深かった。その結果、2年前なら使わなかったような音楽的アイデアをたくさん使うことになったしね。頭のなかの空間で生きてるような感覚、創造的世界が存在してて、『どうすればこれを描きだせるだろう?』って感じだった。僕にとってこのレコードのサウンドは全部それなんだよ。とても温かくて、視覚的なサウンドで......ハープを多用してるよね? あのクラシックなハープ、グリッサンドっていうんだけど、あれは僕にとって夢の状態をリプリゼントするサウンドなんだ。初期のディズニー映画なんかでよく使われてる音なんだけど。とにかくそういうテキスチャーが、僕なりに自分が作りだそうとしていた世界を描きだしてるんだよ。

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僕の音楽から"エスケーピズム=逃避主義"っていう言葉を受け取って、それをネガティヴに考える人が多いんだけど、僕からするとアート自体がユートピア的なものなんだよね。日常の生活、いまここにおいてはすべてがパーフェクトってわけにはいかないかもしれないけど、なんであれ白昼夢として夢想することはできる。


Washed Out
Paracosm

Sub Pop/よしもとアール・アンド・シー
(8月7日発売予定)

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『ライフ・オブ・レイジャー』に収録された楽曲は、サンプリング・ベースの作りをしていました。そこから脱却するのに、あなたは自分の作曲法をどのように変えていきましたか?

アーネスト:サンプリングが素晴らしいのは、サウンドのテキスチャーが豊かなんだよね。何かしら処理が施されてるから、アコースティック・ピアノの純粋な音なんかとは感触が違う。僕はサンプリングのそういうところがすごく好きなんだけど、欠点としては曲を書くときにフレキシビリティがないんだ。あるループが曲の一部にはハマっても、曲を広げていこうとすると仕えなくなったり。反復的にしか使えないんだ。ダンス・ミュージックやヒップホップが反復的なのは、だからなんだよね。僕は新作ではそこから離れて、もうちょっと違うソングライティングのアイデアを試したかった。もう少し複雑なアイデアをやりたくて、そのためには普通のインストゥルメンテーションを使うほうが理に適ってたんだ。
 でも普通のインストゥルメンテーションをウォッシュト・アウト的にするには、さっき言ってたようなテキスチャーのある楽器を見つけなきゃいけなくて。で、いくつかのキーボードがこのアルバムのサウンドの核になったんだよ。一番有名なのがメロトロン、60年代初期に作られたキーボードで。オーケストラルな楽器、フルートやホーン、ハープ、そういう音があらかじめ録音されてて、ほとんどサンプラーみたいなキーボードなんだよね。元々の楽器、フルートなんかから録音された音がそれぞれの鍵盤に割り当てられてて、弾けるようになってる。しかも時代遅れのテクノロジーを通じて、面白いテキスチャーが生まれてるんだ。僕にとってはそれが両方の世界の一番いいとこどりだった。サンプリング的なテキスチャーがあるのに、ピアノを弾くように自由に弾けるんだ! 僕はそれでコードを弾いて、ハーモニーを作っていった。すごく楽しかったな。

今回は機材の面で、どのような変化がありましたか? セッティング自体も変わった?

アーネスト:機材もセッティングも変わったね。僕はジョージア州アトランタからアセンズへ引っ越したんだけど、そんなに遠いわけじゃなくて、車で1時間くらいかな? ただ田舎に移ったことがこのアルバムにとっては大きかった。僕にとっては初めてちゃんとしたスタジオを家に設置したことも重要だったと思う。
 うん、実際このレコードには、ウォッシュト・アウトの他のレコードで使われた音がひとつとしてないんだ。全部一から作っていったから。『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』はかなりシンセサイザーを多用したレコードで、シンセサイザーの長所はほぼどんなサウンドでも作れるところだよね。ベースでもドラムでも、どんな楽器のどんな音でも大抵複製できる。だから『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』は一握りのシンセサイザーで作ったレコードだったんだけど、新作ではそこをもっと広げたかった。全部にシンセサイザーを使うんじゃなくて、サウンドごとに合った楽器を使うっていうのかな? 例えばチェレスタっていう鍵盤楽器はベルみたいな音、高音域のキラキラした音が出るから、とくにそういうテキスチャーが欲しいときに使ってみたり。とにかくシンセサイザー一辺倒じゃなくて、もっと音のパレットを広げたかったんだ。できるだけ新しいサウンドを導入したかったんだよね。

(※この続きは紙『ele-king vol.10』に掲載。興味深いことに彼は、本作のインスピレーションとして、ヴァン・モリソンの傑作『アストラル・ウィークス』の他に、フォークトロニカ時代のフォー・テットを挙げている。初期のフォー・テット......というのは最近再発されているけれど、ウォッシュト・アウトとの親和性で言えば、実に辻褄が合う話だ。そうなるとやはり、少々強引な言い方だが、サマー・オブ・ラヴの種子は気がついたらアメリカに戻っていた、ということなのだろうか......。もしそうだとしたら、『コスモグランマ』もエメラルズもサン・アローも、そしてトロ・イ・モアやウォッシュト・アウトも......)



Sewn Leather - ele-king

 だいぶ前に僕が三田格の後ろ盾のもと、野田編集長以下を騙しつつもソーン・レザー(Sewn Leather)ことグリフィン・ピンとDJドッグ・ディック(DJ Dogdick)(犬チン)ことマックス・エイゼンバーグの合体ユニット、ドッグ・レザー(Dog Leather)を紙エレキング巻頭インタヴューにフィーチャーするという暴挙に出たにも関わらず、それ以降の布教活動をおろそかしている自分に憤りを感じる。

 三田格から「マーク・スチュワートの再来」とのお言葉を頂いたソーン・レザーではあるが、先日いつも〈ヴィンセント・レディオ〉にてお世話になっている阿部さんが我が家に訪れた際にヴィデオを観せたところ、まったく同じリアクションを取っていたのでなるほど、確かに。エレキング読者諸氏は果たしてどのようなリアクションを取ったのだろうか。真相は闇のままである。

 ここで紙エレキングを未読の方々にソーン・レザーの何たるかを知っていただくためにまずはこれを見てほしい。

 はい。いまのはグリフィンがシカゴでのショウへの道中、対バンのウルフ・アイズに向けてリスペクトを送るため車内で撮影されたものですね(もちろん自画撮り)。

 これがグリフィンなんです。ソーン・レザーなんです。

 僕は個人のパーソナリティをしっかりと体現している音楽に何よりもエキサイトするのだが、そういった意味で彼は最高である。

 まず80'sホラー・ムービーから飛び出してきたような風貌。終わることのないドリフト生活のなか、何度も繕い直されたサバスやヴェノム、バーニングウィッチにコラプテッド、ギズムのシャツが強烈なリアル・クラスト・スタイル。最高のDIYタトゥー(個人的にタトゥーってやっちまってる感があればあるほどイケてると思う)。

 まさかウルフ・アイズもウータンのWの頭文字でバンド名彫られるフォロワーが現れることを予想できたであろうか?

 近年のグリフィンの活動は、本国よりもヨーロッパの手厚いサポートを受けているようだ。それはおもにドラキュラ・ルイス(Dracula Lewis)として知られるシモーネ・トラブッチによるレーベル〈ハンデビス〉(Hundebiss)の、イタリアからの壮絶なラブ・コールによって企まれているのだろう。〈ハンデビス〉の美しいダイカット/変型カヴァーに包まれた特異なリリースには毎度感動させられてはいるが、ドラキュラ・ルイスのほうは個人的にちょっと......。

 と言うのも、昨今の猫も杓子もインダストリアル化現象を待っていたかのように復活したウルフ・アイズの新作を聴いたときの感覚に近い、この手のスタイルに必要不可欠である衝動の是非。グリフィンの前には、ベテランもイタリアはミランのヒップスターも霞んでしまうのは仕方あるまい。そういう意味ではウルフ・アイズを脱けたアーロン・ディロウェイはいまも変わらぬ衝動を昇華しているようにみえる。いい歳こいて。

 そしてグリフィンは繊細な男だ。昨年僕がLAに滞在していた際、たまたま郊外のクラスト・ハウス「ウーマン」に転がり込んでいた彼からのパーティーお誘いという名目の車での送り迎えのなかで触れた彼のグラス・ハート。その儚い輝きに魅せられて誰もがこの男を愛するのであろう。ゆえに彼は世界中をドリフトしつづけられるのだ。

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Volcano Choir
Repave
Jagjaguwar / P-VINE

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 光を撮るために暗闇を撮る――墔郷通範(さいごうみちのり)による"バイゴーン"のPVは、その7割くらいを物も見分けられないほどの真っ暗な闇に割いているが、曲のあとには光の印象しか残さない。
思えばヴォルケーノ・クワイアーの前作『アンマップ』(もちろん多くの人が手にした傑作だ)冒頭の"アイランド、イズ"に付けられたPVも、同じように暗闇を映し、そのことによって光を描く作品だった。深夜から未明にかけて、ゆっくりと光量を増す川沿いの風景が早回しに映し出され、同曲の抑制されたテンションと、その昂まりや開放がじつに静かに映像化されている。これを観たとき感嘆の息をもらしたのは筆者ばかりではないはずだ。彼らの登場を鮮やかに印象づけた一曲である。
"アイランド・イズ"でも"バイゴーン"でも共通するのは、光を印象づけるものとして蛍光灯(専門的には何というのかわからない。ご覧のような電飾を用いて表現している)が用いられていることだ。これは墔郷自身の持ち味であるかもしれないが、ボン・イヴェールとコレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズとの混合体であるこのバンドを象徴するようにも思われる。前者のサッドコア的情感を持ったフォーキー・スタイルと、後者のエレクトロニクスや、ペレの血を引くポストロック・マナー。このふたつが自然光と人工照明の対照のなかに捉えられていないだろうか。木の幹がボン・イヴェールを、そこに結びつけられた蛍光灯がCOCOBを代理すると考えるのは、図式的に過ぎるだろうか。
ともあれ照明によってくっきりと存在を照らされる木と、木によって照らすものとしての役割を最大限に引き出された照明とは、互いを補いながら忘れがたくあたたかい光/闇を描き出している。
新作の充実ぶりが予感される、素晴らしい一曲が届けられたことを喜びたい。



ジャスティン・ヴァーノンakaボン・イヴェールを中心とする
ヴォルケーノ・クワイアーの新作『REPAVE』より、ファースト・PVが到着!
監督は日本が誇るヒゲの奇才、墔郷通範(さいごうみちのり)氏!

9月4日に新作『REPAVE』をリリースするジャスティン・ヴァーノンakaボン・イヴェールとコレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズなどのメンバーによるヴォルケーノ・クワイアー。そのファースト・トラックである"Byegone"のPVが到着しました。前作『UNMAP』収録の"Island,Is"につづき監督を務めたのは、ディアフーフ、アクロン/ファミリー、少年ナイフ、石橋英子、kowloonなどのPVを手掛け、初期mouse on the keysのVJメンバーでもあり、更に画家ロッカクアヤコとのコラボレーション活動も注目を集めたコントラリードの墔郷通範(さいごうみちのり)氏! そんな監督に対し、ヴォルケーノ・クワイアーから感謝のステートメントも届いております。ヒゲ監督の作品、ぜひお部屋を暗くしてじっくりとご覧下さい!


■ヴォルケーノ・クワイアーより墔郷通範監督へのステートメント

「ミッチ(墔郷通範)の映像は、わたしたちがしっくりとくる言葉を見つけられないまま、ずっと気になって探していた要素を掴んでいます。それらはなにか具体的な領域に足を踏み入れることをせずに、わたしたちの感情を掻き立てるものであり、シンボリックで、わくわくさせるものです。彼のひとつひとつの作品にはストーリーがあります。それらは私たちひとりひとりが、自らのフィルターを通してその意味を発見するような個人的なものです。そこにはリズムと流れるような感覚がたしかにあり、音楽や物語に沿っていながら、そのどちらとも相容れないものです。まるで、わたしたちの音楽を魔法の呪文にしたかのようです。こんなに素晴らしい作品を生み出すことのできる人をあなたは見つけられるでしょうか? きっとできないでしょう。わたしたちの作品をこのように理解してくれる人物を雇うことはほとんど不可能です。わたしたちはミッチと友だちになれて本当に嬉しい。彼は世界の反対側にいながら、異なるアイデアや視点で、わたしたちが表現したかったことを見事にとらえています。」

■ヴォルケーノ・クワイアー
もはや説明不要、現在のシーンを代表するシンガーソングライター、グラミー・アーティスト、ジャスティン・ヴァーノンakaボン・イヴェール。そんな彼がまだブレイクするずっと前――デ・ヤーモンド・エジソンに在籍していた頃、同郷ウィスコンシンのポストロック・バンドであるコレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズ(exペレ)に魅了され、お互いは接近。親密な友人関係のなかから「何かいっしょにやろう!」とはじまったのがヴォルケーノ・クワイアー。しかしそこには何のプランもなく、リリース予定もなく、ただ気が向いたときにセッションしたり、メールで音源をやりとりしたり。そんな感じでヴォルケーノ・クワイアーの活動はゆっくりゆっくりと進んで行く。
しかしその成果は2009年にアルバム『アンマップ』として世に出ることになる。さらに「一回こっきり、ライヴもやらない」というスタンスだったが、ペレ~コロニーズ勢が何度も日本に来ていることもあり、「どうせ終わりなら、お別れ記念として日本でだけやってみよう」と世界も羨む来日公演を。しかしそのジャパン・ツアーが彼等にバンドとしての魂を産んでしまった! ツアー中に「これほど楽しいバンドは無い! 続けない意味がわからない!」とあっさり続投宣言。秘密裏にセカンド・アルバムの制作に入っていったのだ。
 そして2013年セカンド・アルバム『リペイヴ』を発表。そう、ヴォルケーノ・クワイアーはもうプロジェクトではない。完全に「バンド」となった。彼らには素晴らしい未来が続いているのだ。

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