「PAN」と一致するもの

interview with Distance & Loefah - ele-king


ディスタンスのDJでフロアは大盛り上がり

 今年で13年目を迎えている〈DBS(ドラムンベース・セッション)〉の「Dubstep Warz」にて、ロンドンからディスタンスとローファーが来日した。ディスタンスとローファー......贅沢なメンツである。ふたりのダブステッパーは、早い時期から忘れがたい作品を残している。それぞれタイプは違うが、キーパーソンであることは間違いない。夜の12時、僕は代官山ユニットの楽屋でふたりを待った。

 楽屋のドアが開いて、ふたりが入ってきた。まずは最初にディスタンスの話を訊こう。僕の家には彼の2枚のアルバムがある。〈プラネット・ミュー〉から出ている『マイ・デーモンズ』(2007年)と『リパーカッションズ』(2008年)は、ともに深夜の都会の風景写真をアートワークにしている。実際にディスタンスの音楽は深夜の都会の片隅に我々をテレポートする。ブリアルのように......。

 ローファーには待機してもらい、僕は神波京平さんとタナカ・テツジ君とグレッグ・サンダース――すなわちディスタンスを名乗る男を囲んだ。

ダブステップが変わってしまったからだよ。やたらノイジーになって、「ウワワワワ!」というサブベースのうるさい音がたくさん出てきてしまった。それで僕は、そう、ダブステップに飽きてしまったんだよ。

どんな経緯でダブステップのシーンに入ったのか教えてください。あなたはスキューバの〈ホットフラシュ〉から2004年に出したシングルでデビューしていますよね?

ディスタンス:いや、あれは2003年だよ。

ホント?

ディスタンス:間違いない。〈ホットフラシュ〉の002番だよね。

で、そもそもはどういうはじまりだったんですか?

ディスタンス:UKのアンダーグラウンドにはドラムンベースとUKガラージとふたつあるんだけど、僕はガラージが大好きだった。ガラージがダークになってダブステップに発展する。〈テンパ〉から出たハッチャの『ダブステップ・オールスターズ・ヴォリューム・ワン』(2003年)、あのあたりからダブステップが広く認知されはじめていったよね。僕はガラージの延長でダブステップを聴きはじめて、そのダークなエレメンツに触発されたんだ。

スキューバの〈ホットフラシュ〉レーベルから出したのはどんな経緯から?

ディスタンス:〈フォワード〉(注:ダブステップの伝説的なパーティ)で彼と会って、知り合ったんだよね。

へー。

ディスタンス:ポール・ローズ(スキューバの本名)がまだスペクタという名前でやっていた頃だったね。彼はベルリンに移住したから、もう頻繁には会っていないけどね。いま彼は〈ベルグハイン〉で「サブスタンス」というパーティをやっているよ。

あー、知ってる。最近、「サブスタンス」のミックスCDを出しましたよね。

ディスタンス:僕も呼ばれてそこでまわしたよ。

〈フォワード〉はいつから行きはじめたんですか?

ディスタンス:2000年代の最初だね。ガラージをやっている友だちに教えられて〈フォワード〉に行った。衝撃だったさ。それで毎週通うようになった。

どのくらいの人たちが踊っているの?

ディスタンス:20人ぐらいだったよ。

20人!

ディスタンス:ハイプじゃないんだ。音楽に共鳴した人たちが集まって、すごい熱気だった。DJブースをみんなが囲んで、かかっているダブプレートをじーっと見るんだ。で、「スクリームって書いてあるけど、誰だよ?」って。そんな感じだった。ピンチはブリストルから車でやって来るんだ。ハッチャ、ヤングスタ、ベンガ......みんなそこにいたんだ。

では、その場にいた20人がみんなDJやプロデューサーになるんだね。

ディスタンス:そうだね(笑)。僕はいつも、彼らのファンだった。で、いつしか自分でも作ってみようと、はじめるんだ。


[[SplitPage]]

いまでもダブプレートを使っている?

ディスタンス:使っているけど、正直言うと、最近は減っている。技術的な問題なんだ。ダブプレートはハウリやすいし、床が揺れると針飛びしやすい。こればかりは仕方ない。CDRを使う機会が増えている。それから機内への持ち込みも最近ではかなり制限されているんだ。それもCDRが増えている理由のひとつだね。本当はダブプレートを使いたいんだけどね。

最初のアルバムに『マイ・デーモンズ』というタイトルを付けたのは?

ディスタンス:それは最初に作りはじめたトラックのうちのひとつだったんだけど、僕はもともとメタルを聴いていて。

メタルからその言葉が来たの?

ディスタンス:ノー、ノー、ノー。うーん、説明がちょっと難しいな。

『マイ・デーモンズ』と『リパーカッションズ』のアートワークがすごく好きなんですよね。あの都会の夜の淋しい風景が、あなたの音楽にとても合っていると思って。

ディスタンス:そうだね。僕もそう思う。あれは、〈プラネット・ミュー〉のマイケル・パラディナスが探してきてくれたんだ。2000枚の写真のなかからふたりで探したんだよ。ニューヨークの写真家の写真なんだよ。

えー? あれはサウス・ロンドンじゃないの?

ディスタンス:違う(笑)。たぶん、ニューヨークじゃないかな。

ずーっと、クロイドンかサウス・ロンドンのどこかだと思っていました!

ディスタンス:ハハハハ。でも、あのヴィジュアルが僕の音楽に完璧に合っているのは間違いないよね。

マイケル・パラディナスの音楽は昔から知っていたんですか?

ディスタンス:知らなかった。後から知ったよ。僕はガラージを聴くまでずっとロックを聴いていたら。

どうして彼と知り合ったの?

ディスタンス:ヴェックスドのジェイミー(・ティーズデイル)から紹介されたんだ。曲を作りはじめた頃、完成するといつもジェイミーに送っていたんだ。ジェイミーはそれをそのままマイケルに渡してくれていたんだよ。

2007年から自分のレーベル〈チェストプレート(Chestplate)〉をやってますよね? あれはどういう理由ではじまったんですか?

ディスタンス:うん、あれは自分の音楽の玄関口みたいなつもりではじめたんだけど、最近は新しいアーティストの紹介もしたいと思っている。

いま8枚?

ディスタンス:そうだね。

すべてディスタンスでしょ?

ディスタンス:いやいや、スクリームとベンガのスプリットも出しているよ。

出したいと思っている新しいアーティストは誰ですか?

ディスタンス:まだ言えないけど、10番目は2枚組で新しいアーティストを収録するつもりなんだ。

あなたのサード・アルバムは?

ディスタンス:年内に完成させるつもりです。

〈プラネット・ミュー〉から?

ディスタンス:たぶんね。


[[SplitPage]]

 ここでローファーと替わってもらった。短髪で長身の彼は、ロンドンのルードボーイなセンスをどこかに感じさせる。

 さて、あらためて言おう。ピーター・リヴィグストン――ローファーの名で知られる彼はダブステップにおいて最重要人物のひとり。スクリーム、ベンガ、マーラ、コーキ、それらと並ぶキーパーソンである。


ローファー、ポスト・ダブステップを指標する男だ

 言うまでもないことだが、ローファーがマーラとコーキの3人ではじめた〈DMZ〉は、リリースされているほとんどの音源がいまやクラシックである。彼が2004年にデジタル・ミスティックズ(マーラ+コーキ)&ローファーとして発表したEP「ダブセッション」は初期ダブステップの名盤の1枚で、2005年のローファーのソロ・シングル「ルート/ザ・ゴート・ステアー」はその時代のもっともドープな1枚として記憶されている。

 また、ピンチの"パニッシャー"のリミックス、サーチ&デストロイの"キャンディフロッス"のリミックスも評判となった。ちなみにスクリームの「ローファー・リミックス」なる12インチは、レーベル面のアートワークがレジデンツである!(だからデザイン買いした)

 もっともローファーの場合、そのキャリアに対して作品数は決して多いとは言えない。が、逆に出しているものはほとんど"間違いない。そういう意味で彼は、玄人好みのひとりと言えるだろう。

どうしてマーラやコーキと知り合って、〈DMZ〉として活動するようになったんでしょう?

ローファー:ヤツらは僕が10代の頃、ほとんど同じエリアに住んでいたんだ。僕らはノース・クロイドンで育ったんだよ。コーキは隣の街にいた。15歳のときハードコア・ジャングルにハマって、サージェント・ポークスとマーラはMCをやりはじめるんだ。

高校が同じだったとか?

ローファー:マーラとコーキとポークスは同じ高校だったけど、僕は違った。

パーティで知り合ったの?

ローファー:いやいやいや、そういうのじゃない。ホント、同じエリアだったから、街をぶらぶらしていたら知り合った感じ。

いいですねー(笑)。レゲエのサウンドシステムの影響はあるの?

ローファー:ダブに関してはプロダクションのスタイルにおいて影響を受けている。でも、僕が影響を受けたのは、レゲエというよりもジャングルとヒップホップなんだよ。もしくはアシッド・ハウス。

アシッド・ハウス?

ローファー:ああ、〈トラックス〉や〈DJインターナショナル〉のシカゴ・ハウスとかさ、ミスター・フィンガーズ、マーシャル・ジェファーソン......。1987年とかさ、あの時代の音だよ。1988年のイングランドはすごかったんだぜ。

ていうか、そのときあなたは何歳だったんですか?

ローファー:9歳かな。

9歳でアシッド・ハウスかー、それは早熟ですね(笑)。

ローファー:さすがにパーティには行ってないよ。海賊ラジオ放送で聴いていたんだよ。

だって小3ですよ。

ローファー:はははは。


 ここで楽屋に突然、ドン・レッツが乱入する......。ドクター・マーティンの50周年イヴェントで来日していたという。嵐のようにやって来て嵐のように去っていったドン・レッツ......。


ローファー:ルーズ・エンズって知ってる?

ルーズ・エンズ! えー、知ってるけど、その名前、ものすごく久しぶりに聴きました。(注:80年代にソウル、ジャズ、ファンクを演奏して、レアグルーヴからアシッド・ジャズへと繋げたグループ)

ローファー:だから、サウス・ロンドンって海賊ラジオがすごかったんだよ。ソウル、レアグルーヴ、アシッド・ハウス......、で、その代表格がルーズ・エンズだったんだ。

へー、ブリストルにおけるワイルド・バンチみたいなものだったんですね。

ローファー:イングランドはやっぱ、海賊ラジオの影響がホントに大きいんだよ。


[[SplitPage]]

絶対に忘れたくないことなんだ。1981年にサウス・ロンドンのブリクストンで反政府の暴動が起きた。高い失業、低賃金、貧困、粗末な住宅に対するフラストレーションが爆発したのさ。そのときに警察がとった作戦の名前が「スワンプ81」というんだよ。

しかし......アシッド・ハウスを聴いていたキッズがどうやってダブステップに入ったんですか?

ローファー:1998~1999年くらいまではジャングルやドラムンベースにハマっていたんだけど、でもちょっと飽きてしまって、ちょうどその頃は自分たちでも何か作ろうって感じで思っていた。マーラはまだガラージのMCで、ハッチャはガラージのDJだった。で、僕はマーラやハッチャといっしょにいつも車でドライヴしながらクラブに出掛けていたんだよね。で、その道中で、僕は自分の曲をかけていたんだ。それから僕たちはハッチャがまわしていた〈フォワード〉に行くようになった。

ハッチャとはどうして知り合ったの?

ローファー:マーラを通じてだよ。ハッチャはビッグ・アップルという地元のレコ屋で働いていたんだよね。知り合ってから僕もビッグ・アップルに通っていたよ。

じゃあ、ホントに同じ時期に複数の人間がいっしょになったんですね。

ローファー:そうだね。

マーラたちと〈DMZ〉をはじめたときは最初からシリアスだった? それとも遊び的なところもあったんですか?

ローファー:最初から、ものすごくシリアスだった。ただしそれがカネになるとはまったく考えていなかったけどね。

〈DMZ〉はしばらく休止していますよね?

ローファー:〈DMZ〉とは、まさにマーラ、コーキ、そして僕のことなんだ。だから......マーラと他の人との繋がりで〈ディープ・メディ〉(マーラのレーベル)がはじまって、僕と他の人との繋がりで〈スワンプ81〉(ローファーのレーベル)がはじまった。

ローファーの名前で〈スワンプ81〉から出さないのは何故ですか?

ローファー:ローファーは〈DMZ〉だからさ。

〈DMZ〉は終わったわけじゃないんですね。

ローファー:決して(笑)。焦ってリリースするようなことはしたくないんだ。僕たちの素晴らしい音が完成したら出す、でも、決して焦らない。

あなた自身、自分の作品をここ2~3年出してないのは何故ですか?

ローファー:その理由のひとつは、ダブステップが変わってしまったからだ。やたらノイジーになって、「ウワワワワ!」というサブベースのうるさい音がたくさん出てきてしまった。それで僕は、そう、ダブステップに飽きてしまったんだよ。

それがあなたの言う"ポスト・ダブステップ"なんですね。

ローファー:そうなんだ。〈スワンプ81〉はポスト・ダブステップのレーベルなんだよ。

他にはどんなレーベルがある?

ローファー:〈Night Slugs〉、〈Hemlock〉、〈Hessle〉なんかがポスト・ダブステップをやっているね。

あー、〈Hemlock〉はアントールド、〈Hessle〉はラマダンマンのレーベルですよね。ああ、なるほどー。

ローファー:レイヴ・ミュージックではなくクラブ・ミュージックだよね。初期のダブステップがレイヴに変質したものではないんだ。いわば初期の20人の世界だよ。よりグルーヴィーで、ドラムマシンで作られていて、あと128 BPMぐらいのテンポ......よりソウルフルなダンス・ミュージック、それは〈スワンプ81〉のコンセプトでもあるんだよ。

 ここで、神波さんが「〈スワンプ81〉という名前にはブルクストンの暴動が関係しているんだよ」と教えてくれる。

へー、そうなんですか。

ローファー:ああ、絶対に忘れたくないことなんだ。1981年にサウス・ロンドンのブリクストンで反政府の暴動が起きた。高い失業、低賃金、貧困、粗末な住宅に対するフラストレーションが爆発したのさ。そのときに警察がとった作戦の名前が「スワンプ81」というんだよ。
(注:私服警察をブリクストンに送り込み、暴動の関係者などを片っ端から逮捕した)

まったく現代に通じる話ですね。

ローファー:まあ、そういうことだね(笑)。実際、僕の住んでいるエリアでは、その暴動の話はずうっと、いまでも世代を超えて語り継がれているんだよ。

 実はローファーに話を訊いているあいだにディスタンスのプレイ時間がきてしまい、ブリクストンの話を聞いたときにはもうディスタンスのDJがはじまって30分ぐらい経っていた。

 すぐにフロアに戻った。ディスタンスは......彼の作品世界のように、都会のダーク・アンビエントを繰り広げていた。良い感じで埋まったフロアからはときおり叫び声が聞こえた。そしてポスト・ダブステップを指標するローファーは......DJの1曲目にダブ・ポエトリーの伝説、LKJの"Di Great Insohreckshan"(『Making History』収録)をかけた。

 そしてローファーは、取材で話していたように、アントールド以降のポスト・ダブステップをミックスした。それはアシッド・ハウス、テクノ、ジャングル、ガラージ、ダブステップ、それらUKアンダーグラウンド・ミュージックの絶妙なブレンドで、そしてその新しい音はものの見事にフロアをロックしたのだった。

 ちなみに7月の〈DRUM & BASS x DUBSTEP WARZ〉――メアリー・アン・ホブス(17日)、そしてスクリーム&ベンガ(31日)決定! 


CHART by STRADA RECORDS 2010.05.27 - ele-king

Shop Chart


1

MASSIVE ATTACK

MASSIVE ATTACK PARADISE CIRCUS-GUI BORATTO REMIX WHITE (US) / »COMMENT GET MUSIC
MASSIVE ATTACKのアルバム「Heligoland」収録曲を、KOMPAKTなどからのリリースでもお馴染みのブラジル生まれのクリエイターGui Borattoがリミックス!メランコリックなディープ・ハウス ・リミックスで、繊細なバック・トラックに可憐な女性ヴォーカルがグッとくる最上級の仕上がり!DOMMUNEでDJ AGEISHIさんがプレイしてました!

2

MAXXI AND ZEUS

MAXXI AND ZEUS THE STRUGGLE INTERNATIONAL FEEL(EU) / »COMMENT GET MUSIC
大人気レーベルINTERNATIONAL FEELからナントQUIET VILLAGEの変名MAXXI AND ZEUSが12インチをリリース!両面ともハイクオリティーなアンビエント系サウンドで、Chris Coco、Phil Mison、Prins Thomas、Pete Herbert、Mixmaster Morris、Mountain of One、Max Essaといったチルアウト~バレアリック系DJはもちろんAshley Beedle、Tom Middleton、Horse meat Disco、Jimpster、Soft Rocks、Brendon Moeller、Nick Chacona、DFAらも絶賛!

3

JEPHTE GUILLAUME

JEPHTE GUILLAUME DEJA VUE(feat.WILTRUD WEBER) TET KALE (US) / »COMMENT GET MUSIC
100枚限定のプロモも話題だったこの曲が遂に正規リリース!SPIRITUAL LIFEやIBADANからのリリースで知られるJEPHTE GUILLAUMEが久々に自分のレーベルから放つ強力盤で、彼らしいパーカッシヴなハウス・トラックに伸びやかな女性ヴォーカルがフィーチャーされたシリアス且つカッコイイ作品!

4

BAYARA CITIZENS(JOE CLAUSSELL etc)

BAYARA CITIZENS(JOE CLAUSSELL etc) SONG FOR AFRIKA SACRED RHYTHM (US) / »COMMENT GET MUSIC
ここ最近のJOE CLAUSSELLのプレイでも注目を集めていたこのアフロ・ハウスがようやくリリース!グルーヴィーなアフロ・パーカッションに浮遊感のあるシンセ・ソロがフィーチャーされたディープなインスト・チューン!

5

JOE CLAUSSELL

JOE CLAUSSELL THE SACRED RHYTHM MUSIC SAMPLER-FAR EAST SACRED RHYTHM (US) / »COMMENT GET MUSIC
SACRED RHYTHMからリリース予定のコンピレーションからの先行サンプラー・シングル!Mental Remedy名義での清々しいインスト・チューンをはじめ、アンビエント調のB1、アフロなドラムが炸裂するBayara Citizens名義のB2という充実の内容!

6

SLAM MODE

SLAM MODE APPAKETA-JEFF MILLS REMIXES SPIRITUAL LIFE (US) / »COMMENT GET MUSIC
休眠状態(?)だったSPIRITUAL LIFEから突如12インチがリリース!同レーベルからのコンピレーション「New Birth」に収録されていたJEFF MILLSによるリミックスを、更に今回JOE CLAUSSELLがオーヴァーダブを施した初お目見えの新ヴァージョン!JEFFらしいドラムにエスノなヴォーカルが舞うぶっ飛んだテック・ハウス!何かと使えるアカペラの収録も嬉しい!

7

TOMMY BONES

TOMMY BONES RAW BASICS EP WONDER WAX (US) / »COMMENT GET MUSIC
WAVE MUSICやREALTONE等からリリースしているTOMMY BONESがDJ SPINNAのレーベルWONDERWAXから12インチをリリース!ミニマルで図太いディープ・インスト・ハウスで、そのままプレイしてもロング・ミックスに使ってもバッチリな即戦力盤!DJ SPINNAによるミックスも収録!

8

FERDI BLANKENA

FERDI BLANKENA SEANCE WOLFSKUIL(EU) / »COMMENT GET MUSIC
Darko Esser等のリリースで知られるレーベルWolfskuilの限定シリーズ!小気味良いパーカッション・トラックにディープなシンセがジワジワと入ってくるカッコいいインスト・チューン!これはハマる!OsunladeやBrothers' Vibe、Luke Solomon、Michel Cleis、Marc Romboy、SIS、Laurent Garnierらもプレイ!

9

THE NATHANIEL X PROJECT

THE NATHANIEL X PROJECT THE RESURRXION E.P. MY LOVE IS UNDERGROUND(FR) / »COMMENT GET MUSIC
現代のものとは思えないこのサウンド・・・!しかしこれが新譜だから驚き!それもそのはず94年に懐かしのMUSIC STATIONレーベルからリリースした以来となる超久々の作品で、バリバリ90'sハウスな仕上り!タフなビートにバウンシーなベースが踊らせてくれます!

10

MAYNARD FERGUSON

MAYNARD FERGUSON PAGULIACCI-JOE CLAUSSELL REMIX COLUMBIA (US) / »COMMENT GET MUSIC
JOE CLAUSSELLはもちろんFRANCOIS K.らのプレイで人気の超絶ジャズ・ファンク系クラシック「PAGULIACCI」がJOE CLAUSSELLによる絶妙なエディットが施され12インチ・リリース!ちなみに滅多にお目にかかれないオリジナルUS12インチはプロモ・オンリーで中古市場でン万円で取引されています!以前JOEセレクトのコンピにもこの曲のエディットが収録されていましたが、今回は初お目見えのロング・ヴァージョン!これはマストです!

CHART by TRASMUNDO 2010.05.27 - ele-king

Shop Chart


1

H.FUTAMI PRESENTS『CONSCIOUS BLUES』 »COMMENT

2

ECD『TEN YEARS AFTER』»COMMENT

3

HIRAGEN from TYRANT『CASTE』 »COMMENT

4

RAMB CAMP『Ramb Camp』 »COMMENT

5

BING『HOMENAJE A LA MUSICA COLOMBIANA』 »COMMENT

6

STARRBURST『INSTRUMENTALS』 »COMMENT

7

SEMINISHUKEI PRESENTS『WISDOM OF LIFE』 »COMMENT

8

SFP BRAND NEW Tee »COMMENT

9

PAYBACK BOYS BRAND NEW Tee »COMMENT

10

blahmuzik『ABNOIZ』 »COMMENT

interview with Juan Atkins - ele-king

 オウテカの来日ライヴ公演が決定したとき、彼らが指名したDJのひとりがデトロイト・テクノのオリジネイター、ホアン・アトキンスだった。これは......なかなかいい話だ。つねにマニアの注目に晒されながら、ときにリスナーを困惑させることさえ厭わないUKの電子音楽における高名な実験主義者たちのオリジナル・エレクトロへの偏愛は良く知られた話である。だから、当然といえば当然の指名なのだろうけれど......。しかし、デトロイトのファンキーなテクノの生臭さはベッドルームのIDM主義者の潔癖性的な志向性とは、まあ、言ってしまえば180度違う......こともないだろう。昔から彼らはレイヴ・カルチャーを擁護し、その庶民性を見下す連中を批判してきたし、何よりも彼らがオリジナル・エレクトロへの愛情を失ったことはたぶんいちどもないのだ。とにかくオウテカは今回、決してトレンディーとは思えないデトロイトのエレクトロ・マスターの宇宙のファンクネスを引っ張ってきたのである。そんなわけで、6月4日の〈DIFFER有明〉のパーティを控えたホアン・アトキンスに話を訊いてみた。

■いまデトロイトですか?

ホアン:そうだね。

■最近はどんな風に過ごされていますか?

ホアン:最近は〈Movement 2010〉に向けての準備で毎日忙しいな。〈Movement 2010〉は知ってるかい? デトロイト・エレクトロ・ミュージック・フェスで今年は5月29日~31にかけて開催されるんだよ。去年は......たしか83,000人くらい集まったって聞いたな。今年はモデル500名義でライヴで参加するんだけど、パーティを閉めなくちゃいけないからね。準備がけっこう大変で、最近はそれに向けてずっと準備を進めているという感じさ。日本のショウだって? まずは〈Movement 2010〉をキッチリやらなきゃいけないが、準備はもちろんしているよ。オレが日本を好きなことは知ってるだろ。

■体調のほうはいかがですか? DJは頻繁にやっていますか? 曲作りのほうは?

ホアン:ぼちぼちだね。曲作りに関して言えば、オレは取りかかるまでに時間がかかってしまうんだよ。シングルがもうすぐリリースされるけど、いまもまた新しいシングルに取りかかっている。正確に言えば、もうしばらくずっとそれに取りかかっているんだけどね。

■今回はオウテカ自らの指名で東京でのDJを依頼されたようですが、オウテカとは直接知り合いなんですよね? デトロイトにも来ていますし......。

ホアン:直接の知り合いではないよ。たしか過去にいちど会ったことがあるはずだけど。

■彼らはエレクトロ――といっても最近のファッション界で流行っているエレクトロではないですよ、マントロニクスやジョンズン・クルー、あるいはあなたのサイボトロンのようなオリジナル・エレクトロが大好きだから、それもあって依頼したんじゃないかと思うんですけど......。

ホアン:オウテカがマントロニクス、ジョンズン・クルーやサイボトロンが好きだっていうのは嬉しいね。オレを健全なラインナップのなかでやらせてくれて、彼らには感謝しているよ。

■実際、彼らとはエレクトロに関して話し合ったことがあるんじゃないですか?

ホアン:もしかしたら話したかもしれないけど、なにせオレが彼らに会ったことがあるのはおそらく過去の1回だけだっていうこともあって何を話したかはあまり覚えてないんだよ。

■オウテカに関して、あなたの評価を聞かせてください。

ホアン:正直、オレは彼らの音楽についてよく知らないんだ。彼らの音楽をあまり聴いたことがないんだよ。でも彼らがエレクトロを好きだと知って、オウテカに興味を持ったよ。次のときまでに必ず彼らのカタログをチェックしておく。アルバムも最近出たんだろ。日本に行くまでに必ずそれも聴いておくよ。

■2005年に『20 Years Metroplex: 1985 - 2005』をベルリンの〈トレゾア〉から発表しましたが、あれはまさにこの20年のあなたの歴史でした。あのコンピレーションに関するあなたのコメントをください。

ホアン:あれはオレが過去に作ったトラックのなかでもとくに人気があるものを集めたものさ。あれを出そうと思ったのはみんながオレに、「なんであの作品の収録トラックはどれもCDでリリースされてないんだ?」、「どうなってんだよ」ってしつこかったからだな。オレ自身としては、あの作品はオレのトラックがより広いところに行くためのプラットフォームになればいいと思って取りかかった。そう思って作った作品だよ、あれは。2枚のCDにあのトラックを入れ込むのには少し苦労したけど、それに挑戦しているときの気分は悪くはなかったね。

■どんな反響がありましたか?

ホアン:良いフィードバックを得ることができたと思っているよ。世界中で受け入れられたかどうかはわからないけど、オレのまわりからのあの作品に対しての反応はかなり良いものだったよ。

■あなたのレーベル〈メトロプレックス〉そのものはもう動くことはないのでしょうか?

ホアン:いや、動きだしたいと思っている。でもその前にギアをかけてアクセルを踏む準備に入らないとね。新しいトラックに取りかかりたいと思ってるよ。ショウももっとやりたいね。

■この10年の、つまりゼロ年代のエレクトロニック・ミュージックのシーンをあなたはどう見ていますか? 停滞していると思いますか? それともゆっくりでも前進していると思いますか?

ホアン:うーん、停滞してはいないと思うけどね。ゆっくりどころかオレはすごい勢いで進化していると思うよ。まわりではいろいろ起こっているみたいだし。

■具体的には誰がいますか?

ホアン:いまの前進の仕方からするとたくさんいるはずだけど、オレには今誰かの名前を挙げることはできないかな。

■例えば......フライング・ロータスのような新しい世代の音をあなたはどう見てますか?

ホアン:フライング・ロータスの名前は聞いたことがあるんだけど、彼の音楽はまだ知らないんだ。ごめんよ。正直に言うよ。オレには娘がいるんだけど、彼女が最近音楽を作っている。まだ作品の制作段階だがそれが発表された日には事件になる。彼女のスタイルはどこにもないもので、素晴らしい。彼女のアーティスト名はMilan Ariel。アトキンスをつけるかどうかは彼女もまだ決めてないようだけどね。

■あなたのなかに新作を発表する予定はありますか? もしあるなら具体的に教えてください。

ホアン:モデル500名義のシングルがリリースされる。〈Movement 2010〉で披露するつもりだよ。そのシングルは〈R&S〉から4週間から6週間後にはリリースされるはずだよ。
●今回の日本でのセットについて教えてもらえませんか? なにか特別なことをプランされているようでしたらそれについても教えてもらえればと思います。

ホアン:Very Groovy。Very Very Sexy Groovyなエレクトリック・ダンス・ミュージック・セットを披露しようと思っている。オレはいつだって一夜限りのスペシャルな夜を作り上げるために本気でショウに取り組む。今回は日本だっていうこともあって、オレ自身も正直楽しみにしているし、オレのショウはいつだって特別なんだ。どこでやっても全力で取り組むだけさ。ただ日本やオーディエンスのヴァイヴスがオレに伝わって、意識せずとも自分が特別に納得できてしまうようなプレイを繰り出してしまうことにもなりかねないと思っているよ(笑)。それに今回は特別にアンリリースド音源をいくつか持って行くつもりなんだ。過去にデモとしてしか存在しなかったトラックをね。他のアーティストのもオレの自身のも。もうすぐリリースされるシングルも、もしかするとプレイするかもしれないな。

■それでは最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

ホアン:愛してるぜ。オレたちはVery Sexy Funkyナイトをともにするんだ。準備をしておいてくれよ。オレは日本のファンを愛しているんだ。Don't miss it!

<オウテカ東京公演 2010>


Autechre

Claude Young

出演 : Autechre, Juan Atkins, Claude Young and more.
日程 : 2010.6.4(Fri) OPEN / START 22:00
会場 : ディファ有明
料金 : 前売り ¥5,500 / 当日¥6,500
*20歳未満の方はご入場出来ません/
 入場時に写真付身分証の提示をお願いします。
 YOU MUST BE 20 AND OVER / PHOTO ID REQUIRED


企画・制作 : BEATINK / BEAT RECORDS
MORE INFO >>
https://www.beatink.com/events/autechre2010/

interview with Jeff Mills - ele-king

小野島 大小野島 大 / Dai Onojima
音楽評論家。隔月(奇数月)にジャンルレスなパーティ「bug III」を渋谷Lazy Worker's Barで開催。次回は5/21(金)。
詳細はhttps://onojima.txt-nifty.com/まで。
twitterはhttps://twitter.com/dai_onojima

 ジェフ・ミルズの新作『The Occurence』は、「宇宙」をテーマにしたここ最近の一連のコンセプト・ワークの集大成とも言うべき力作だ。前作『Sleeper Wakes』のストーリーから宇宙遊泳中に起こった出来事をモチーフとして展開する。また彼にとって6年ぶりのミックスCDでもある。手塚治虫『火の鳥』のカットをスリーヴに引用し、日本初の「ヴァイナル・ディスク」を使用するなど、このプロジェクトへの並々ならぬ力の入れようがよくわかる。そして音楽の内容もまた、いかにもジェフ・ミルズらしい、ジェフ・ミルズにしかできない、深遠にして唯一無二の硬質なテクノ美学が繰り広げられる。まさに宇宙空間を彷徨っているような謎めいた音像、どこまでも幻想的かつ覚醒したイメージ。そこには難解で思索的な世界観があるが、決して聴き手を排除するようなものではなく、むしろその音の波のなかでゆったりと遊ばせてくれるような懐の深さがある。まさに音による別世界旅行である。本作に先駆け、去る1月1日に東京・渋谷〈WOMB〉で開かれた「宇宙からの帰還」を祝うパーティでは、全曲新曲のみで6時間のセットを構成するという意欲的な試みもおこなっている。


Jeff Mills /
The Occurrence

Third Ear

Amazon

 だが、高度にコンセプチュアルで壮大な世界観をみっちりと組み上げることでますます孤高の念を強めつつある、このテクノの哲学者は、一方でダンス・フロアの最前線からは少し距離を置いているようにも見える。『Sleeper Wakes』でも本作でも、いわゆるフロア・コンシャスに展開するフィジカルなダンス・トラックはほとんどなく、リズミックな曲も、全体のスペース・シンフォニー的な超然とした流れの中での起伏がつけられるぐらい。クラブの現場ではハードでファンキーな楽曲も多くプレイされクラウドを熱狂させる場面もあるのに、リリースものにおいては、そうした側面を見せなくなってしまった。かって誰よりもハードでファンキーでフィジカルな、恐ろしいほど研ぎ澄まされたダンス・トラックを連発して世界中のフロアを熱狂させたこの男は、いま、なにを考えているのか。

テクノ自体、フューチャリスティックな面をもっていて、そこに向かって自由に想像力を働かせることができる音楽だということです。ですが現実的にはダンスフロアに止まってしまっている。

■新作を拝聴しました。このようなコンセプトのアルバムをいま作られた理由はなんだったんでしょうか?

ジェフ:今作は『Sleeper Wakes』からの抜粋で、『Sleeper Wakes』の物語のなかでももっとも重要だと思われる出来事(The Occurrence)をフィーチュアして焦点をあて、それをさらに広げたものを、アルバムという形で表現したいと思ったのです。今回のミックス・アルバムを作った目的のひとつは、『Sleeper Wakes』の曲(「Space Walk」)をいかに物語を語るように伝えるか、ということでした。スポークン・ワードのような効果を出すために、そういった曲を足してみるなどいろいろ工夫してみました。こうした試みは初めてだったので、とてもチャレンジングで、やり甲斐がありましたね。今後も、『Sleeper Wakes』のなかから別のパートをフィーチュアして新たなアルバムを作る可能性もあると思います。

■あなたは3年の間宇宙を旅して、2010年1月1日0時0分1秒に東京・渋谷〈WOMB〉のパーティに帰還した、という設定でコンセプトを進めてきたわけですが、その「帰還」の瞬間は、あなたにとってどんな体験でしたか?

ジェフ:3年という長いあいだ日本に戻っていなかったわけですからね。しかもその前まではかなり頻繁に日本を訪れていましたから。なのでちょっと緊張していました。でも、その瞬間に向けてかなり綿密な準備を重ねてきましたし、細かいディテールまで全部決め込んでいきましたから、そういう意味では自信を持ってチャレンジできました。セッティングなども自分にとっては新しいやり方を使ってのイヴェントでしたから、新しい体験をすることができました。でもその新しいチャレンジに対して日本のクラウドがどんな反応をするかは、予想もつきませんでした。

■実際にプレイしていかがでしたか? クラウドの反応も含めて。

ジェフ:ちょっといままでとは違っていましたね。3~4年(日本では)プレイしていなかったから、以前のクラウドとは多少違っていることは予想できましたが、今回はかけた曲がすべて新曲でしたから、お客さんにとっても初めて聴く曲ばかりだったわけです。なのでクラウドの共感を得るまで少し時間がかかったんですが、0時から6時までひと晩中ひとりでプレイしたので、じっくりと時間をかけて、最終的にはクラウドだけではなくクラブのスタッフなど、イベントに関わった人たちすべてとともに、なにかひとつの結論のようなものを見いだせたんじゃないかと思います。

■その「結論」とは?

ジェフ:4年以上かけて、〈WOMB〉のレジデンシーからこの『Sleeper Wakes』のプロジェクトまでの一連のコンセプトのシリーズにひとつ終止符を打つことができたこと。レジデンシーだったりアルバムだったり、いろんな側面からこのプロジェクトを完結させることができました。そしてお客さんの側も、新しいサウンドを受け入れる許容量が十分にあるという手応えを得ることができました。『Sleeper Wakes』のコンセプトにしても、これを日本のみならず世界中で進めることができるという確実な自信を得ることができました。実際、ヨーロッパなどいくつかの国で、同じようなコンセプトでいくつかパフォーマンスをやっています。そうした繋がり、自信めいたものを得て、このコンセプトを続けることができるという「結論」を得られて、少し安心しているところです。

■『Sleeper Wakes』のプロジェクトをやることで、あなたが得たものとは何だったんでしょうか?

ジェフ:いちばん大きいのは、つねに新しいサウンドを作り出していくということに、自分自身なにも抵抗を感じずにできるようになったし、お客さんもそれを受け入れてくれる、というたしかな自信を得たことでしょうね。とくに日本に関しては、あえて4年間のブランクを作って、自分はつねに新しいサウンドを作り、新しいものを探し求めているというメッセージを送り続け、実際に4年後にまったく新しいものを提供することができました。結果として今回のプロジェクトは成功したということで、これからは、レコードを出してツアーをやって......という手続きを経ずともオンタイムで新しいものをお客さんに伝えることが、当たり前のこととしてできるようになったということが、今回のいちばんの成果です。

■それまであなたの活動において、「新しいものをやる」ということの困難さを感じていたことがあったわけですか?

ジェフ:以前からセットのなかにいくつか新曲を組み込む実験はやっていたんですが、過去の経験では、まったくふだんと違うセットをやるときには、オーガナイザーから「そういうことは事前にお客さんに知らせて欲しい」と言われるんです。でもそんなのは馬鹿げている。お客さんはその日どんな体験をするかはわからないけれども、それを楽しみに来る、という環境を作りたかった。そのひと晩のためにテーラーメイドされた曲をプレイする、すべてはその日のための曲をかける。それがスペシャルなイヴェントではなくて、いつもそうであるような、そんな環境を作りたかったのです。

■パーティでのDJプレイというのは、ある種の芸能/エンタテイメントという側面もあると思います。お決まりの定番曲をかけてお客さんに喜んでもらう、というような。そうした部分に嫌気が差していたということもあるんでしょうか

ジェフ:そういうお決まりのダンス・イヴェントを否定するつもりはまったくありません。これだけテクノロジーの発達した現在、いろんなオプションがあってもいいのではないか、ということです。私はDJや音楽を作ることに関して、長いことプロフェッショナルとしてやってきました。なのでその両方を提供するというスタンスをとっていきたい。ほかのDJがどういうやり方をするにせよ、自分としてはその時その時のイヴェントのために曲を作り提供するというやり方を自分のスタイルとして作り上げていきたいのです。今回のプロジェクトが成功したことで、そうしたスタイルが日本のみならず受け入れられつつあると実感しています。

 

[[SplitPage]]

テクノは今後ハードでフィジカルに訴えるものというよりも、もっとメンタルに働きかけるものが大きくなっていく。サイケデリックで、メンタルにトリッピーなものが主流になっていくような気がします。

■以前あなたは、もうミックス・アルバムは出さないと宣言し、実際に長いこと出していなかったわけですが、今回なぜあえてミックスCDという形で出したのでしょうか。

ジェフ:今回に関して言えば、ミックスは結果としてそうなったというだけです。いままでのものはクラウドを踊らせるためにスムーズに曲を繋げる、いわばディスコ・ミックスだったんですが、今回に関してはミックスというよりはトランスレーションですね。サイエンス・フィクションのシナリオを語っていくに過程で、結果的に曲がミックスされたということです。それというのも、物語のバックドロップとしてこの音楽が流れているというシナリオだから、必然的に曲と曲が繋がっていくんです。だから、今までのいわゆるDJミックスがディスコ・ミックスだとしたら、これは「ストーリー・ミックス」とでも言えるようなものと言えるでしょう。

■なるほど。さきほどあなたは、言葉を紡ぐようにストーリーを語った、とおっしゃいましたが、そういう物語的な表現にこだわる理由とは?

JeffMills
Jeff Mills /
The Occurrence

Third Ear

Amazon

ジェフ:ひとつに、プロダクション的な面。音楽をストーリー・テリングのように使うことで、より良いプロダクションの結果が得られ、自分のプロダクション能力も上げることができる。そうしたことを常に意識し努力することで、音楽で何かを語ることが可能になっていくと思います。もうひとつは、もともとテクノ自体、フューチャリスティックな面をもっていて、そこに向かって自由に想像力を働かせることができる音楽だということです。ですが現実的にはダンスフロアに止まってしまっている。なので私は人びとの気持ちを刺激してイマジネーションを喚起して、自分たちの現実からはなかなか届かない別世界に引き込むような、そういうテクノ本来の世界を表現していきたいと思ったのです。現代社会ではあらゆることが目まぐるしく起きていて、なかなか現実の能力だけではすべてを理解しきれない。そのために想像力が必要なんですが、テクノはその一助になるということを再認識させたいのでです。

■サイエンス・フィクションという言葉が出ましたが、あなたは宇宙に限らず、「タイムマシーン」や「メトロポリス」など、SF的なモチーフにこだわってきました。あなたにとってサイエンス・フィクションとはどういう魅力があるんでしょう?

ジェフ:テクノとサイエンス・フィクションは切っても切り離せない存在じゃないかと思います。SFのBGMとしていちばんマッチするのがテクノじゃないでしょうか。というのも、テクノの、構成があってないようなオブスキュアな感じというのが、SFのなかで表現される、現実ではないような想像を超えたストーリーとうまく合致するんです。もちろん私だけではなく、ホアン・アトキンスとかケニー・ラーキンといった多くのテクノのプロデューサーがそうしたことを意識して曲を作っています。テクノの素晴らしさを一般にアピールするには、SFと関連づけるのがいちばんわかりやすいのではないでしょうか。

■今作のアート・ワークに手塚治虫の「火の鳥」を使ってますね。

ジェフ:テクノとサイエンス・フィクションというふたつのアート・フォームを結びつけるためのステップとして、今回手塚さんの絵を使わせてもらえることになったのはラッキーでした。もともとのコンセプトは同じようなもので、彼はヴィジュアルで表現しているし、私の場合は音楽で表現している。根本にあるものは同じだと思うし共感しています。

■さきほど「ダンスフロアに止まらないテクノ本来の魅力」ということをおっしゃいましたが、あなたはここ最近ダンス・フロア向けのシングルをほとんど出していません。それはダンス・トラックスだけではないテクノを追求していきたいという意欲のあらわれなんでしょうか

ジェフ:アナログ12インチのシングルは出していますが、ダンス・ミュージックという観点であまり考えてないことはたしかです。リリースするものに関しては、リスナーが何かを感じ取って、それが頭の片隅に残って、またなにか新しいものを聴きたいと思ってくれればいい。あとは、この音がどういう風に作られたのか、この先どういう風に発展していくのか、まったく予想ができないようなものを作っています。

■ふむ。あなたのクラブでのプレイではかなりハードでファンキーな面も出ているのに、リリースされるものでは、今回のCDも含めそうした面はほとんど出てきません。これは現場でのプレイと録音物を分けて考えているということですか。

ジェフ:たしかに意図的に分けて考えています。ダンスフロアで人びとが踊りたがっているいるのに、それなりの曲をかけないわけにはいかないでしょう。ハードな曲やファンキーな曲をかけて、その場のクラウドが肉体的になにかを分かち合って一体感を生むことを、ことダンスフロアにおいてDJはひとつの目的にしていますからね。そこで初めて自分のプレイを自分の表現したいものへと発展させていくことができるようになる。でもアルバムに関してはお客さんが目の前にいるわけではないので、もう少しフリーな気持ちで自由に表現できるし、アルバムを聴いてくれるリスナーは踊るというより、聴くという環境で接してくれていると思うので、音にさまざまなヴァリエーションを加えることができると考えます。

■なるほど。しかし個人的な要望なんですが、もう少しハードでファンキーな曲もアルバムで聴きたいと思います。

ジェフ:(笑)なるほど。これは個人的に感じているんですが、テクノが今後どうなっていくか考えると、日本だけじゃなく世界的に、ハードでフィジカルに訴えるものというよりも、もっとメンタルに働きかけるようなものが大きくなっていくんじゃないでしょうか。サイケデリックで、メンタルにトリッピーなものが主流になっていくような気がします。なので、これからハードとかソフトとか、そういうジャンル分けはなくなってくると思います。クラブの現場ではDJとして、その夜の流れを作っていくなかで、どこかのタイミングでクラウドをプッシュする必要があってハードな曲もかけますが、アルバムでもストーリーテリングのために、ダンスフロアほどハードでなくても、そういった強弱やメリハリはつけているつもりです。

■最後の質問です。メタモルフォーゼでX-102として来日されるということでいまから楽しみなんですが、どんな内容になりそうでしょうか。また今後X-102としてレコードを作る予定がありますか?

ジェフ:それは言えません(笑)。もともとX-102は「土星の輪(ring of saturn)」をテーマにしているプロジェクトなので、そういうテーマのライヴになると思います。それ以外は、残念ながらシークレットだ(笑)。

 スカイプ越しに聴いたジェフの声は、こちらの挑発的な質問にもあくまでも冷静であり知的であり、静かな自信に溢れていた。たんなるダンスフロアの道具としてのテクノを拒絶し、あくまでもアート・フォームとしてのテクノを厳しく追求しながら、電子音楽の可能性と未来を提示しようとする。彼によってテクノはただの快楽装置ではなく、何事かを語りメッセージを投げかけるだけの幅と深みを得るに至った。そしてその作業はさらに深度を増しながら、いまだ終わる気配がない。

 8月のメタモルフォーゼに先駆け、5月30日には、2012年5月21日(月)午前7時34分、東京にて観測される金環日食にむけてのカウントダウン・イヴェント〈SOLAR FREQUENCY〉にも出演が決定している。いまこそその姿を確認せよ。

 

CHART by BEAMS RECORDS 2010.05.25 - ele-king

Shop Chart


1

Waves

Waves Encounter BEAMS BRAIN »COMMENT GET MUSIC
BEAMS RECORDSでもこれまで大プッシュしてきたアーティストKuniyuki Takahashiと、Nobuhiko'Ebizo'Tanumaが新たに始動させたバンド・プロジェクト"waves"のデビュー・アルバム!ダンスミュージックをインプロビゼーションで再構築するというコンセプトの元、ギター/シンセサイザーにイアン・オブライエン、ドラムにみどりん(Soil &"Pimp"Sessions)という豪華ゲストを迎え、それぞれが長いキャリアの中で培ってきたアイデンティティが折り重なった、叙情性豊かなサウンドを披露!透明感溢れる絶品のグルーヴは、多くのリスナーを陶酔へと誘うに違いない!

2

He3 Project

He3 Project Chapter One Family Groove »COMMENT GET MUSIC
ミラクルなラテン・ソウル音源が奇跡的発掘!フリーソウル、レアグルーヴシーンで知られるコーク・エスコヴェード率いるアズテカのメンバーであり、コークの盟友でもあるハーマン・エベリッシュが71~74年にかけて制作していたという未発表音源がこの度リリース!これが、所謂未発テイクを集めた安易なモノではなく、アルバムとして全く遜色ない、いやむしろリリースされていたら確実に名盤として知られていたであろう素晴らしい内容!軽やかなメロウ・ソウル(3)やコークの名盤「coke」収録のMake It Sweet原曲(5)など、全編を通じて西海岸のライトな風が吹きぬける最高のラテン・ソウル!

3

V.A.

V.A. Heavenly Sweetness Label Compilation #1 Heavenly Sweetness »COMMENT GET MUSIC
ダグ・ハモンド、バイアード・ランカスターといったリヴィング・レジェンド達の新録からダグ・カーンの名盤再発まで、新旧の優れたスピリチュアル・ジャズを発信するHeavenly Sweetnessのレーベル・ショウケースが登場!過去にリリースしたレーベルの代表曲~新鋭アーティストの未発表音源までを収めたDisc-1は、言うまでも無く力強いグルーヴが揃ったレーベルベスト的選曲!一方Disc-2 はフォーテット、カルロス・ニーニョ等素晴らしいクリエイター達が、ブラック・ジャズの巨人達の重厚な楽曲を見事にリミックス!これは全ブラック・ジャズファンにとって理想的な2枚組と言えるでしょう!

4

Spinetti - Dadi - Ceccarelli - Petreni

Spinetti - Dadi - Ceccarelli - Petreni InventaRio Rip Curl »COMMENT GET MUSIC
MPB~イタリアン・ジャズを繋ぐ美しすぎる1枚!マリーザ・モンチの兄貴分、ダヂがイタリアの実力派ジャズミュージシャン達と共に制作した新録アルバム。イタリア流のモダンで小粋なジャズと、ダヂの歌声、ボサノヴァ・ギターが見事に溶け合い、エクレクティックで上品なブラジリアン・グルーヴを聴かせてくれます。マリーザ・モンチ、イヴァン・リンスといった豪華客演陣の歌声も絶品!

5

Pal Joey

Pal Joey Somewhere In New York Pal Joey Music »COMMENT GET MUSIC
HOT MUSIC!90年代のNYハウス界にその名を残すパル・ジョーイが、自身の過去の音源をまとめたアルバムをリリース!このパル・ジョーイ、実はNYの伝説的レコードショップ、Vinylmaniaのスタッフであり、かのラリー・レヴァンとも親交のあった、ガラージカルチャーでは熱心なファンの多いクリエイター。ハウスクラシックスとして知られる大名曲①やディスコネタを絶妙にリコンストラクトした③⑥など、ジャジーなネタ使いとブレイクビーツ的グルーヴ感がセンス抜群の好トラックが満載!ミックス&ノンミックスの2枚組!

6

Prince Jammy

Prince Jammy Strictly Dub Pressure Sounds »COMMENT GET MUSIC
高クオリティのレゲエ・リイシューでお馴染み、プレッシャー・サウンズがまたしても素晴らしいダブ・プレートを発掘!ダブの申し子、プリンス・ジャミーが80年代アメリカで極少量でプレスしたという幻のアルバムが素晴らしい音質でここに再発!スライ&ロビー、ボビー・エリスといった名うてのミュージシャン達が60~70年代の名リディムを多数カヴァーし、ジャミーが自由奔放にダブ・ミキシングしたあのフレーズがこんなバージョンに!?という驚きも!

7

Risco Connection

Risco Connection Risco Connection Musica Paradisco »COMMENT GET MUSIC
ガラージ、ロフト・クラシックスとして知られるリスコ・コネクション音源が初のCDアルバム化!ディスコのレゲエカヴァーでカルトな人気を誇るジョー・アイザックスによるこのユニット、本アルバムでは、最も有名なマクファデン&ホワイトヘッドのAin't No Stopping Us NowカヴァーのStopping Ver⑤から、ダイアナロス①、インナーライフ②、CHIC④といったディスコ大名曲のカヴァー、そしてうれしいインスト・トラックまで、レア音源を余すところ無く収録!マニアもビックリの初CD化、お見逃し無く!

8

Mose Allison

Mose Allison The Way Of The World Anti- »COMMENT GET MUSIC
アメリカはミシシッピ州出身の超ベテラン・ブルース・ピアニスト/シンガー、モーズ・アリソンがなんと12年ぶりにニューアルバムをリリース!プロデュースは、こちらもベテラン・シンガー・ソングライターのジョー・ヘンリーということで、ジャズ・ブルース、カントリー色の濃いルーツ音楽好きには堪らない内容!トム・ウェイツやヴァン・モリソンらにも愛される彼の、古きよきアメリカの風合いと哀愁にシビレます!

9

The Last Electro - Acoustic Space Jazz & Percussion Ensemble

The Last Electro - Acoustic Space Jazz & Percussion Ensemble Miles Away Stones Throw »COMMENT GET MUSIC
マッドリブ流フューチャー・スピリチュアル・ジャズの傑作!過去にスティービー・ワンダー、ウェルドン・アーヴァイン等へのオマージュをアルバムにしてきたマッドリブ。今回はジャズの帝王、マイルス・ディヴィスからインスパイアされたという渾身のブラック・ジャズ集!フィル・ラネリン、ハリー・ホワイテイカー、ロイ・エアーズといった御大たちの大名曲を全くの新解釈でカヴァーする様は、やはり圧巻!特にラストを飾るコルトレーン&ファラオへ捧げる大作は、スリリングな展開が問答無用に格好いい!!

10

Erykah Badu

Erykah Badu New Amerykah Part Two : Return of The Ankh Universal »COMMENT GET MUSIC
前作から2年、エリカ・バドゥのNew Amerykahの第2章が遂にリリース!プロデューサー/参加陣には、ソウルクオリアンズのジェイムス・ポイザー、Sa-Raのシャフィーク、Jディラ、カリム・リギンス、マッドリブといったお馴染みかつ間違いの無いメンツ。音の方はアナログな楽器をふんだんに使った柔らかくオーガニックなR&B!ロイエアーズProで知られるシルビア・ストリプリンのダンスクラシックスのカヴァー④も聴きドコロ!コレはハズせませんね。

CHART by JET SET 2010.05.24 - ele-king

Shop Chart


1

MAXXI & ZEUS

MAXXI & ZEUS THE STRUGGLE / THE CELL »COMMENT GET MUSIC
もはやレーベル買いするしかないInternational Feelの第5弾はQuiet Villageの変名リリース!!筋金入りのハードコア・ディガーJoel Martinと、ご存知Radio SlaveことMatt EdwardsによるQuiet Villageタッグ、久々の新作はMaxxi & Zeus名義でのウルトラ・ディープ・チルアウト。

2

GIRL UNIT

GIRL UNIT I.R.L. EP »COMMENT GET MUSIC
■'10年年間ベスト候補■変幻自在の進化形UKG歴史的傑作がこちら。凄過ぎます!!L-Vis 1990とBok Bok率いる当店激推しポスト・UKファンキー/UKGレーベルNight Slugsから、巨大新星Girl Unitの特大傑作1st.12"が登場!!

3

AERA

AERA INFINITE SPACE EP »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆Joy Orbison x Pantha Du Princeな美麗スロー音響ハウス大傑作!!ダブステップ/UKGの新潮流として当店も激烈プッシュ中のスロー・アーバン美麗ミニマル/テック・サウンドに呼応した特大傑作が到着しました!!

4

SECONDO

SECONDO I THINK I'M GONNA LIKE »COMMENT GET MUSIC
ニューディスコ・セットにも完璧にフィットするスロー音響ディスコ傑作!!エディットの嵐による脱臼ドファンキー・グルーヴで当店お馴染みのUK天才Secondo。自ら率いるDreckから、メロウで端正な2トラックスをお届けします~!!

5

MOS DEF

MOS DEF MOS DUB »COMMENT GET MUSIC
遂にMos Defの楽曲もレゲエのクラシック音源とマッシュ・アップ!"Ms.Fat Booty"、"Travellin Man"、をはじめとするMos Defの代表曲と、Desmond Dekker、Lee Perry等レジェンド達のオケとを心地良く、そしてドープに溶け合わせた極上の全10曲!

6

V.A.

V.A. SOUNDS SUPERB VOL.7 »COMMENT GET MUSIC
エグみが人気のIn Flagranti監修グレイト・リエディット・シリーズ第7弾!!毎回必ず光るトラックが収録されてる人気シリーズも早くもVol.7。今回は"Finders Keepers"な辺境深掘り最新事情にリンクした感がナイス!!

7

JUAN MACLEAN

JUAN MACLEAN SCION A/V REMIX »COMMENT GET MUSIC
House of House, Shit Robotを筆頭にDFA馴染みのヒット・メイカーが集合!!先日リリースされたばかりの『DJ Kicks』も大好評のThe Juan Macleanによる、データ配信が先行していたアルバム収録曲リミクシーズが待望のアナログ化。お見逃し無く!!

8

REBOOT

REBOOT RAMBON EP (LUCIANO REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Lucianoによるリミックスをフィーチャー!!間もなくリリースが予定されているRebootのアルバム『Shunyata』から先行シングル・カット作品!!Luciano率いるCadenzaの記念すべき50作品目がこちらです。

9

JAMAICA

JAMAICA I THINK I LIKE U 2 »COMMENT GET MUSIC
遂にPhoenixを超えるか!!グラマラス&スウィートなフレンチ・ディスコ・ロック爆裂キラー!!JusticeのXavierの後輩バンド、Poney Poneyが、名前をJamaicaに改めUKメジャー・デビュー!!Breakbot Remixもメチャクチャ最高です★

10

TANLINES

TANLINES SETTINGS »COMMENT GET MUSIC
トロピカルでドリーミーなインディ・シンセ・ポップ超最高峰★2010年スーパー・マスト盤です!!ブルックリン・シンセ・インディ新世代No.1、Tanlines。US/True Pantherからのリリースとなった2nd.シングル!!2010年の夏に聴きたい全ての音がここに詰まってます。

Laurie Anderson Only An Expert - ele-king

 ワルシャワが渋谷から下北沢に移転して、新譜をチェックする店がまたひとつ近場になくなってしまったので、ディスク・ユニオンの4階にいったら、ローリー・アンダーソンの12インチ・シングルがあった。

 ローリー・アンダーソンは随分久しぶりに聞く名前である。しらべると、2001年の『ライフ・オン・ア・ストリング』以来の『ホームランド』なるアルバムが来月に出るらしく、このシングルはアルバムからの先行カットらしい。ビル・フリゼールやヴァン・ダイク・パークスやドクター・ジョンが参加しハル・ウィルナーがプロデュースした『ライフ・オン~』は、タイトルの通り、ヴァイオリンを弾くパフォーマンス・アーティストである彼女の個人史を、それと密接に関わるアメリカとの関係で読み解いた、静謐であると同時に重く、生や死や救済といったものを感じさせる、全体的には"O Superman"と似ていないクラシカルなアルバムだった。私は『ホームランド』は当然まだ聴いてないが、シングルの2曲、たとえばA面の"Only An Expert"はゼロ年代に流行ったパンキッシュなディスコを彷彿させる楽曲で、ピーター・シェラーやエイヴィン・カンといったロフト・ジャズ系の参加(シングルにははいってないがアルバムのクレジットにはジョン・ゾーンも名前もある)は想定内だが、急逝したスティーヴ・リードとの双頭作が印象的だったフォー・テットことキエラン・ヘブデンや、オマー・ハキムの存在がこの曲を〈DFA〉といかないまでも80Sマナーのダンス・トラックにするのに貢献しており、音の間から彼女の(内縁の?)夫であり、『ホームランド』を共同プロデュースしたというルー・リードのフリップ&イーノを思わせるギターが顔をのぞかせるのは、攻撃とはいわないまでも前作と好対照である。

 夫唱婦随と書くと反感をかいそうだが、ルーとの関係がローリーに『ホームランド』を作らせたのではないと断言できない。もっとも私はローリーがルーに唯々諾々と従ったわけではなく、彼らの住居の居間での音楽やアートや政治についての対話が心にのこり、彼女に10年ぶりの新作を作らせた可能性は否定できないといいたいのであり、それをいえば、エドガー・アラン・ポーのきわめて象徴的な長編詩「The Raven(大鴉)」のタイトルを借りた、ルーの最新作にあたる03年の『ザ・レイヴン』も舞台劇として考案されており、パフォーマティヴな方法論ということでいえば、ローリーの影響が先であった。

 別に私は「どっちがどっち色に染まった」というゴシップを話したいのではなく、男女がたがいに影響を交わし、作品が本人たちも気づきがたい符牒を投げかけることにおもしろさを感じるし、史実や確定した評言を精査しつつも固執せず、仮定の連鎖で思考を拡散させるのが批評でなくて、なにが批評なの?と思います。

 話がそれてしまった。私はローリー・アンダーソンのシングルを聴いて、なにを思い出したかといえば、先月出たデイヴィッド・バーンとファット・ボーイ・スリムの『ヒア・ライズ・ラヴ』である。このアルバムはフェルディナンド・マルコス比国大統領の夫人であるイメルダを描いたもので、バーンのライナーノーツによれば彼のアイデアの元はリシャルト・カプシチンスキーがエチオピアの独裁者でありマーカス・ガーヴェイの汎アフリカ主義によりジャーと名指されたラス・タファリ・マッコウネンことハイレ・セラシエ一世を描いた『皇帝ハイレ・セラシエ――エチオピア帝国最後の日々』(筑摩書房、のちに筑摩文庫)にあり、彼は宮廷内のシュールでシアトリカルな世界を、3千足のクツを亡命後の宮廷にのこしたイメルダに重ね、彼女と彼女の乳母にあたるエストレーリャを並行して描くことで、甘さと切なさが同居するミュージカルに仕立てた。と書いて思ったのだが、「甘さ」と「切なさ」は古典的な物語では対立項ではない。というかそれがワンセットになったのが悲劇や喜劇や歌劇であり、演劇の革新運動はそれらに対するアンチテーゼであり、かつゼロ年代の演劇(のことはよく知らないが)をとりまく磁場であったのだったら、バーンがいかにライナーノーツで「私が興味を持っている物語は、影響力のある人物の原動力――何が彼等を動かすのか、どのようにして先へ先へと駆り立てるのか、そういった疑問に対する答えにあります」と誠実に狙いを説明しても、というか、誠実になればなるほど、パンクでもワールドミュージックでもオルタナティヴであったバーンによって、『ヒア・ライズ・ラヴ』は最後まで周到に甘いミュージカル仕立てなのにミュージカルから確実に踏み外しているのには驚くべきことだ。イーノとの『ブッシュ・オブ・ゴースツ』以来の共作である前作『エヴリシング・ザット・ハプンズ・ウィル・ハプン・トゥデイ』のポップさとこの甘さはまるでちがう。イーノとの作品はあえてポップなのにノーマン・クックとの1枚はなぜかミュージカルにならない

[[SplitPage]]

 私はこの2枚組を通して聴いて、実験的な曲があったほうがよかったのではないかと最初思ったのだけど、バーンはイメルダが70年後半から80年代前半、ディスコ(スタジオ54とかレジーンズとか)通いしたことに着想を得て、当時のディスコの再現をノーマン・クックに依頼しており、音楽性の振れ幅はかえって全体の調和を乱すと思った。で、音楽はといえば、あの時代のディスコ――EW&Fとかコモドアーズとか、ニューウェイヴ~ニューロマでもマイケル=クインシー――ではなく、それらを忖度したオリジナル・スコアで、つまり、まっとうなミュージカルの方法論で、私などマブタのウラにありし日の鈴木英人の表紙の『FMステーション』が浮かぶほどの清涼感あふれるポップスなのである。やや低音が強すぎる気がするが、ディスコとエキゾチシズムの匙加減は絶妙であり、"Every Drop Of Rain"の打ち込みベースの下世話なグリッサンドなど笑えるポイントもある。バーンの相手が、たとえばアトム・ハートだともっと上手に当時のムードを再現しただろうけど、それだときっと芸が細かすぎる。ようは似すぎないのが肝要なのだろう。
数年前まで、映画ではドキュメンタリーが流行り、あまつさえ音楽映画にもそういうものが多かったが、本作は『キャデラック・レコード』よりも『ドリーム・ガールズ』で、モデルをひとつの似像ではなく多義的なイメージの集積ととらえている。ここでのイメルダは、フローレンス・ウェルチであり、ルーファス・ウェインライトの妹のマーサであり、シンディ・ローパーであり、カミーユであり、B-52'sのケイト・ピアソンであり、10,000マニアックスのナタリー・マーチャントであり、もちろんエストレーリャ役のトーリ・エイモス、マルコス元大統領役のスティーヴ・アールの独唱もある。イメルダのイメージは上記のようにまことに多彩だが、ダブル・キャストというのはあるにしても、主役が分裂するのがミュージカルかといえば否で、舞台に何人もアニーがいれば混乱の元だろう(ちかごろの学芸会では配役が自己申告制になっていて、同じ役の子が何人もいるがあれはかえってブキミだ)。本作はその意味で――ネコもシャクシも使うので使いたくないが――メタ・ミュージカルであり、それが実際わかるのは、終始登場人物の対話劇/モノローグで進んできたこのアルバムの終盤でバーン本人が歌う "アメリカン・トゥログロダイト"である。この曲だけは歌い手(配役)が「アンサンブル」となっていて、これが演奏者を指すなら、オペラでオーケストラ・ピットの楽団員が突然歌い出すようなものだ。ここでは以下のように歌っている。

 アメリカ人は例のセクシーなジーンズを穿いている
 アメリカ人はテクノロジーを駆使している
 アメリカ人は例のインターネットをサーフィンしている
 アメリカ人は例の50セントを聴いている
"American Troglodyte"(永田由美子訳)

 この曲が転換点であり、このあと物語は佳境をむかえるのだが、バーンが仕組んだ虚構の裂け目は、(メロ)ドラマをカタストロフに収斂させない後ろ髪を引くような感じをあたえる。それは本作をイメルダにまつわるミュージカルとして聴こうとする私たちの能動性を反転させ、その形式のシュミラークルを作るだけでなく、彼の地でいまだ血気さかんなイメルダのあり得たかもしれない似像を作りさえするという意味で、バーンの(内縁?)の妻であるシンディ・シャーマンがマリリン・モンローやソフィア・ローレンに扮装し架空の映画スチールを撮影したシリーズを思わせる。彼女はのちに対象を、女性の卑近な記号であるセレブリティや先人(リキテンシュタインとか)のパロディから人形や死体まで拡張したが、あれはエルロイの『ブラック・ダリア』のように即物的でグロテスクだった。『ヒア・ライズ・ラヴ』に描かれたイメルダはシンディ・シャーマンの写真のなかの女ようにグロテスクではなく、むしろ表面的には真逆だがしかし、バーンがイメルダに惹かれたのは権力者の内面のわからなさであり、彼がそれをグロテスクと感じなかったとは思えない。

 婦唱夫随と書くとマッチョな方に怒られそうだが、バーンの女性観にはシンディの影がつきまとう。彼は多数のシンガーを証言者に見立て、イメルダのドキュメンタリーをエディットしたともいえなくはなく、私はもしこれをミュージカル映画にするならリンチかトリアーに撮ってもらいたい。バーンは『ヒア・ライズ・ラヴ』で政治にもっともちかい場所にいた人物をとりあげながら政治をひとつ道具立てとしか考えていないが、もし仮にこれが映画になるなら〈帝国〉の独裁が横行したゼロ年代のパロディにはなるかもしれない。


 私は書き忘れたが、政治に言及するのはローリーのほうである。〈NONESUCH〉ホームページによれば、ローリー・アンダーソンは『ホームランド』で「アメリカの外交政策、拷問、経済の崩壊、個人的自由、医療過誤、宗教~」が作品の主要なテーマになり、それをほのめかすように彼女のシングルのB面にはゲイであるアントニーをフィーチャーしたアルバム未収録曲"Pictures And Things"が入っている。男声でも女声でもないアントニーの「中声」は"Pictures And Things"のなかでローリーのヴォイス・エフェクトによりさらに変態(メタモルフォーゼ)したグロテスクな言葉の連なりとして夢のように現実に響くのだった。

 私はそれにもうひとつ書き忘れたが、ふたりはレーベル・メイトだった。

"In a Strangeland"はカーボンコピーではない。アンドレア・エンブロのドラミングは、深く突進する足音とパキっとしたエナジーとの特徴的な組み合わせである。ヴォーカルは死にものぐるいの声とカレン・Oとキム・ゴードンの溝を手玉に取る。"In a Strangeland"はイミテーションではなく、インスピレーションの結実である。 『Pitchfork』

ノーウェイヴがもしいまも生きているのなら、ブルックリンのデュオ、トーク・ノーマルがその目安となる。ドラマー、アンドレア・エンブロの驚くべきほど正確なパーカッション。ギタリストのサラ・レジスターは彼女のオノから不協和音ノイズとおぞましさを引き出す。 『Lost At E Minor』

トーク・ノーマルはライト級ではない。ダークでムーディで、リズミカルだ。しかしそれは我々が好んで耳にするようなフレンドリーな音ではない。 『Time Out New York』

芸術気取りの音楽が野蛮さへと奇妙に変換される進化の歴史がある。ニューヨークのふたり組、トーク・ノーマルはこのヘドロ状の葬送歌というブランドの耳を維持し続けている。それはもっとも素朴なやり方で完璧に実現しているのだ。 『The Fader』

 彼女たちの音楽の背後にはNYのノイズ・ロックの系譜が広がる。烈しいギターと声があり、他方ではまるでミュータント・ディスコを思わせるようなドライヴするビートもある。が、もっとも重要なことは、女性ふたりによるこのバンドの音楽が素晴らしくパワフルであるということだ。『ピッチ・フォーク』は彼女たちの音楽を「いまはヴェルヴェットの次元にまでは到達していないかもしれないが、将来そのぐらいの魔法を引き起こすことも可能であることを保証しよう」と評価する。

 今回のジャパン・ツアーは彼女たちだけではない。各公演における共演者たち――待望のアルバムのリリースを控えている七尾旅人、コラボレーション・アルバムを完成したばかりのiLL、同じくアルバムを発表したばかりのあふりらんぽのPIKA、空間現代とオオルタイチ等々にも注目して欲しい。

6/9 SHIBUYA O-NEST w/オオルタイチ、空間現代 他
open/18:30 start/19:00 ¥3500(tax in) ドリンク別
O-nest 03-3462-4420
6/13 京都METRO w/iLL、OUTATBERO 他
open/18:00 start/18:30 ¥3500(tax in) ドリンク別
METRO 075-752-2787
6/14 心斎橋FANDANGO w/iLL、太愛鼓(PIKA drum solo)
open/18:30 start/19:00 ¥3500(tax in) ドリンク別
FANDANGO 06-6308-1621 
6/15 新代田FEVER w/iLL, 七尾旅人
open/18:30 start/19:00 ¥3500(tax in) ドリンク別
FEVER 03-6304-7899
チケット e+ / ローソンチケット / チケットぴあ

interview with Talk Normal - ele-king

 ブルックリンのふたりの女は実験的なノイズ・ギターとドライヴするドラミングを容赦なくぶちまける。ブルースの偉人、サン・ハウスの曲を残忍な都会の地響きへと変換する。ローリー・アンダーソンの芸術を絶え間ないフィードバックのなかに爆発させる。圧倒的にパワフルな音をかき鳴らす噂のトーク・ノーマルが突然来日することになった!


Talk Normal /
Sugarland

Rare Book Room

Amazon

 ティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークスやソニック・ユース......とかくそれらの名前を引き合いに語られるトーク・ノーマルは、ドラマーのアンドレア・エンブロ(77ボア・ドラムに参加している)、そしてギターのサラ・レジスタ(マスタリング・エンジニアとしてのキャリアを持ち、ソニック・ユースの『ダーティ』をはじめ多くの作品に関わっている)のふたりからなる。昨年末にデビュー・アルバム『シュガーランド』を発表、これが都内の輸入盤店で評判となって、あっという間に売り切れている。今年に入ってからはCDRのみの発売だったシングル「シークレット・コグ」がヴァイナルとして発売され(1曲目がサン・ハウスのカヴァー)、これもまた話題となった。トーク・ノーマルはいま日本で流行の"ブルックリン系"と表象されるアーティでソフトなバンドと違って、鋭くやかましいバンドである。雑誌の表紙を飾るファッショナブルな男の子バンドの影に隠れながらも、しかしライヴハウスで力強い"音"を演奏しているふたりの女性によるバンドだ。その生の音をどうかこの機会に聴いて欲しいと思います。

トーク・ノーマルは、ローリー・アンダーソンが本で着ていたTシャツにインスパイアされたの。"Talk Normal"って書いてあったんだけど、サラがそれを組み立て直して、その単語をテープで冷蔵庫に貼ってあったの。

トーク・ノーマルのアルバム『シュガーランド』が出たとき、東京の輸入盤店で話題になって、わりと早く売り切れてしまったんですよ。知ってましたか?

アンドレア:とてもスィートね。

まずは、トーク・ノーマルの結成までの経緯を知りたいのですが、サラさんはすでにマスタリング・エンジニアとしてのキャリアがありますよね。

サラ:私はミュージシャンとしては、まだ4年ぐらいだけど、エンジニアは18歳のときからはじめたの。そう考えるとかなり長いわね。基本的にフリーランスだけど、いまでもスタジオでマスタリングをすることもあるわ。アンドレアもプロフェッショナル・エンジニアよ。

ふたりは、同じことをしているのですか。

サラ:いいえ、アンドレアは基本的にライヴ・サウンドやパフォーマンスに関連したことが中心。他にラジオなど、いろんなヴァラエティがあるわ。

例えばどんなところでやっているのですか?

アンドレア:私は長いあいだトニック(エレクトロ、アンビエント、ノイズなどNYの老舗ライヴハウス)でライヴ・サウンドを担当していたの。あと、バワリーボール・ルームとか。大きなビッグ・バンド、例えば、ミシェル・ンデゲオチェロ(R&B)、ダイアマンダ・ギャラス(アヴァンド・オペラ)や 最近はオ・ルヴォアール・シモーヌなど。ミシェル・ンデゲオチェロとは、2回日本にも行ったことがあるのよ。彼女は90年代の人でとてもナイスよ。

サラ:私は、ずっと音楽で何かやりたいと思って、エンジニアになってレコードを作りたいという、大きなアイディアがあったの。ミュージシャンかエンジニア、どちらもなりたかったんだけど、後になって、ミュージシャンになることにもなってよかったわ。

ふたりはどこであったのですか?

アンドレア:大学で、ふたりともNYU(ミュージック・テクノロジー科)に通っていたの。

同じクラスですか?

サラ:いいえ、私はエンジニア、彼女はパフォーマンスを勉強していたの。

トーク・ノーマルはどのようにスタートしたのですか。

サラ:アンドレアはAntonius Blockというバンドをやっていて、私はそのバンドが好きで、そこに加入することになったの。そのバンドが終わって、私たちは続けて練習をしたり、プレイしていたの。それがトーク・ノーマルになったの。

アメリカといえども、女性でエンジニアを目指すというのもまだまだ少数じゃないですか? 

サラ:そうは思わない。たぶん、多くはなってきているのかな。この仕事をやっているからかもしれないけど、私はまわりでいつも見ていると思う。

バンド名の由来は?

アンドレア:トーク・ノーマルは、サラが、ローリー・アンダーソンが本で着ていたTシャツにインスパイアされたの。"Talk Normal"って書いてあったんだけど、サラがそれを組み立て直して、その単語をテープで冷蔵庫に貼ってあったの。その単語は私のなかでも成長していって。バンドに名前が必要になったとき、これを使うのは自然なことだったの。

 

[[SplitPage]]

私はこの"トライバル"という言葉に対して、何か平和なものを見つけたいけど、その用語に対しては憤慨している。なぜなら、私はロック・シンコペーションがプレイできるけど、あえて選んでいない。

最初からふたりでやろうと思ったんですか?

アンドレア:私たちは、よく誰かとプレイしているわ。この前のアルバムは3人だった......? いいえ、ふたりね。レコーディングでは、友だちなどゲストミュージシャンを招いて、ベースやいろんなサウンドを加えていっているの。新しい曲はベースやサックスや他の音が入ったりしているわ。7月の末にソニック・ユースとプロスペクト・パークでショーをするんだけど、このときは何人かと一緒に音を組み立てていってプレイしたいと思っているの。

なぜデュオ・バンドが最近増えたと思いますか?

アンドレア::簡単にバンドが組めるからかな? じゃあ、一緒にプレイしようか、とか。でも、ふたりだけで音の隙間を埋めるのは簡単じゃないと思うけど。この形態は最近はじまったことじゃないし、日本のルインズといちど一緒にショーをしたことがあるんだけどすごいと思う。あと、ミック・バーとかね。

トーク・ノーマルの音楽を手短に言うならば、ノイズとトライバル・ビートだと思うんですけど、いかがでしょう?

アンドレア:OK、じゃあトライバルについて話そう。

サラ:たまに言われることがあるんだけど、トライバル・ビートという意味がいまいちわからない。私たちの典型的なドラムセットは、スネアドラム、そんなにシンバルを使わないけど、それがトライバルなビートかしら、それよりシンコペーションを使うと思うけど。

ちなみにックンロールの8ビートにある種の違和感のようなものがあるんでしょうか?

アンドレア:すでに自分は長いあいだやっているけど、とくにドラムプレイに関しては、伝統的でないアプローチにいく傾向があるの。はっきりしていないことをするのは、クリエイターとしての自分にとっていつでも重要なことよ。"トライバル"という言葉に関しては、ドラマーとしての女性に、より一般的に投げられる言葉で問題もあるわよね。彼女たちが、キック、スネア、ハイハット、シンコペーションを少なく、タムを中心としたビートを選ぶからかしら。私はこの"トライバル"という言葉に対して、何か平和なものを見つけたいけど、その用語に対しては憤慨している。なぜなら、私はロック・シンコペーションがプレイできるけど、あえて選んでいない。たんに女性のドラマーの、大きな分類にひとまとめにされている。これが"ダンサブル"や"地球の"という意味なら受け入れるけど......、でもこれが人びとをダンスさせるかしら。たぶん、これはダンスという意志ではなく文脈ね。少なくとも私たちトーク・ノーマルは、私たちのアイディアの文脈を与えようとしている。

それではトーク・ノーマルの音楽をふたつの単語で表して下さい。

サラ:ノイズ&ポップ

アンドレア:ノイズ&ドライヴィン・ビート

ホント、すごいパワフルなノイズですよね。『シュガーランド』もヒリヒリしたノイズからはじまる。トーク・ノーマルのノイズはどこから来るんでしょう? あなたがたの感情から? 

アンドレア:みんなオリジナル・サウンドを作ろうとしているし、ノイズって言う音楽は人びとが毎日聴くような音楽じゃないわね。よりレアで、魅力的で、エッジなサウンドだと思う。

リディア・ランチなどノーウェイヴからの影響はどの程度あるんですか?

サラ:そんなにないわ。

アンドレア:私たちの音楽が、ニューウェイヴから影響を受けているとは思わないけど、彼女の作った音楽が、私たちが好きな音楽だというのはわかる気がする。

ビキニ・キルのようなライオット・ガールからの影響はありますか?

アンドレア:名前は知っているけど、ビキニ・キルはほとんど聴いたことがない。

サラ:私はまったく聴いたことがないの。でもいつかは聴いてみたいわ。

トークノーマルはどのような音楽に影響を受けているのですか?

サラ:自分の聴く音楽すべてに影響を受けていると思うのだけど、私の音楽の趣味の範囲はとても広いの。この仕事(エンジニア)をしているからもしれないし、すべてのことに興味があるからかもしれないけど、ほとんど何でも聴くわ。トップ40から、ビヨンセにもインスパイアされるし、スモール・バンドまで、点数を付けたりもしないし。私はたんに音楽が大好きなの。

では、最近好きなバンドはいますか?

サラ:この質問はアンドレアが担当ね。彼女はリストを持っているの。

アンドレア:Air Waves、PC Worship、Future Islands、US Girls、MNDR、 Zola Jesus、Rainbow Arabia、Antimagic、Jana Hunter、Coldcave、Real Estate、Xeno & Oaklander、Wet Dog、Explode Into Colors、3rd Law、 Golden Grrls、Peepholes、Trash Kit、tuneyards......。

サラ:このあいだ、アザー・ミュージックの横に出来た新しい会場(Annex)でマーサ・ウェインライトと共演したんだけど、普通にしていたら遭遇しなかったかもしれないけど、すべての瞬間がとても良かったわ。

トーク・ノーマルには政治的なところ、いわゆるフェミニズム的なところはありますか?

アンドレア:フェミニズムはないわね。

サラ:政治的に大きなメッセージがあるとしたら、たぶん来年ね(笑)。

 

[[SplitPage]]

女の子はいつも真剣に実験音楽を作っていたと思う。ただ、いままで露出がなかったから、気にもされなかったんだと思う。

なんか最近のブルックリンのバンドを聴いていると、アニマル・コレクティヴやMGMT、ヴァンパイア・ウィークエンドのような男の子のバンドがソフトになって、トーク・ノーマルのような女性のバンドがアグレッシヴになっているような......というのは早とちりですかね?

サラ:ハハハハ。

アンドレア:それは面白い意見ね。私は、これらのバンド(アニマル・コレクティヴやMGMT、ヴァンパイア・ウィークエンド)と同じレヴェルにいるとも思っていないんだけど。

これは日本から見た意見ですが......。

アンドレア:日本の人たちが、こういう風に思っているならとてもワイルドね(笑)。ただ、アグレッシヴな音楽をやっている男の子のバンドもたくさんいるし、ソフトな音楽をやっている女の子のバンドもたくさんいるわよ。

ちなみにアニマル・コレクティヴ、MGMT、ヴァンパイア・ウィークエンドの3つのなかで好きなバンドはいますか?

サラ:聴いたことがあるのは、MGMTかな。アニマル・コレクティヴは是非、聴いてみたいわね。

アンドレア:アニマル・コレクティヴは好きよ。

じゃあ、パティ・スミスとコートニー・ラヴとではどっちが好きですか?

サラ:どちらも平等に好きよ。違った角度で。

アンドレア:インスパイアという意味ではパティ・スミスだけどね。

昨年、〈Not Not Fun Records〉が女性バンドばかりを集めた『My Estrogeneration』というコンピレーションを出しましたよね。トーク・ノーマルも"Warrior"を提供してましたが、ああいうコンピを聴いていると、実験的な音楽をやる女性バンド(USガールズ、サン・アロウ、ポカハウティッドとか)がどんどん増えてきているんじゃないかと思うんですけど、どうです?

サラ:単純な話、たくさんの女の子バンドがノイジーな音楽を作っているわ。でもそれが男の子バンドよりも多いかどうかはわからない。

アンドレア:女の子はいつも真剣に実験音楽を作っていたと思う。ただいままで大量の露出がなかったから、気にもされなかったんだと思う。おかしいのは、人びとがすべての女の子をひとつのプールに放り込んで、彼女たちが勝手に自分の好きなように泳いでいるのが良いみたいに言うの。この分類や区別には気をつけたいと思う。新しいことを盛り上げようとするのはわかるけど、それが本当にあるのかないのか......。個人的に、レコードは、男性中心、男女混合のものを、女性中心のものと同じぐらい見るわ。

この10年でUSのインディ・ロックはどのように変化したと思いますか?

サラ:たぶん人びとはいろんな方向に向かっていると思う。よりたくさんのジャンルができたし、たくさんのレーベルがあるけど、オリジナルなレーベルはなくなったわね。何でもピック・アップするようになったし。本当の意味でメジャー・レーベルもなくなったし。バンドはあまりツアーをしなくなってきたわね。やっぱりインターネットの影響は大きいわね。

 

[[SplitPage]]

希望をなくした、特定の感情からインスパイアされている。私は"戦う曲"が書きたくて、怒りに乾杯し、モチベーションを動かすつもり。

トーク・ノーマルの言葉について話を訊きたいのですが、歌詞の面では誰の影響を受けたんですか?

サラ:違う方向からいろいろね。すべてが断片的で、私とアンドレア、両方が何かを持って来て、それを組み合わせていく。でき上がったものをまた、いろいろ変えてみたり......。

"Hot Song"や"In A Strangeland"のような曲、あるいは"Warrior"のような曲にもパンキッシュというか、ものすごい熱を感じるのですが、歌詞はどんなことをテーマにしているのですか?

サラ:"Hot Song"はね、私たちが練習をしている場所の近所に、たくさん子供がいるんだけど。この曲では、子供たちにスマイルを与えることはできなかったということがテーマ。子供は子供、違う文化だからね。

アンドレア:"In A Strangeland"は、20世紀の作家、ジェイムズ・ボールドウィンの小説『もう一つの国』からの影響よ、とてもエナジーを受けている。

サラ:"Warrior"は、何か具体的なことをしたいと思っていて、自分たちを強く、エキサイトさせようとしていたのね。

"Warrior"はまた狂った曲ですが、あの曲の狂おしさはどっか来ているのですか?

アンドレア:クレイジーさはすべて私たちのなかにあるの。PILのジョニー・ライドンは、自由なヴォーカル表現に特定の焦点があったわ。歌詞は、希望をなくした、特定の感情からインスパイアされている。私は"戦う曲"が書きたくて、怒りに乾杯し、モチベーションを動かすつもり。

"Uniforms"みたいな曲には社会風刺が込められているんじゃないですか?

アンドレア:いいえ、たぶんどこかのラインに"政治的な"ことが含まれているのかもしれないけど、全体的の曲の意志は、政治的でなく、むしろただたんに、社会的、政治的、個人的ないらだちなどの、心の底からの確信したリストなの。

"Transmission Lost"が大好きなんですが、あの曲の主題を教えてください。

アンドレア:さっきも言ったように、このテーマは、サラが見た霞んでいる夢から来ているの。彼女が選んだこの言葉は、夢をとても美しく描写し、曲のすべてだと思うし、その後、私たちでいくつかの言葉を当てはめていったの。最初にサラが、まどろみから覚め、夢を書き留められないぐらい、長く待ったように、ゆるいコンセプトが、そのメモリーをフェイドアウトさせるのでなく、より明確に待っていたことを発展させたの。

『シュガーランド』というアルバム・タイトルは何を意味していますか? 

アンドレア:"シュガーランド"という言葉には、いろんな意味があって、元々は"Transmission Lost"の歌詞からとったの。歌詞がタイトルにあれば賢いし、ファンが自分の方法で見つけたら、より面白いと思ったの。この歌詞には、"ドリームランド"という詩的なテーマがあって、さっきも言ったようにサラが見た夢にインスパイアされているの。彼女のドリームランドだけは、本当にどこかにあって、"Transmission Lost"にあるドリームランドは、より曖昧な意味なの。そして"シュガーランド"という単語は、トニ・モリソンの本『ソロモンの歌』から引用したの。彼女は本の中で、詩的に"シュガーマン"という言葉をよく使っていて、私はいつも彼女の文章に、詩的なものを感じていたし、彼女の文章を口ずさむようになったの。あとはたんに"Sugarland"という言葉が好きだったの。シンプルで定番で、ちょっと遊び心もあって......。みんなはトーク・ノーマルを激しいサウンドと見ているだろうけど、これが私たち自身を表すと考えているの。

ゆらゆら帝国がお好きだそうですね。残念ながら彼らは解散してしまいましたが。

アンドレア:彼らがアメリカツアーをしたときにいちどサウンドを担当したことがあるの。サイケデリックでとても良いわよね。

1曲誰かのカヴァーをやるとしたら何をやりたいですか?

アンドレア:デペッシュ・モードなら何でも。あとは......The Ampsかな。

オールタイム・トップ・5のアルバムを挙げてください。

サラアンドレア:ロキシー・ミュージック『フォー・ユア・プレジャー』、ザ・クリーチャーズ『フィースト』、ローリー・アンダーソン『ビッグ・サイエンス』、デペッシュ・モード『ソングス・オブ・フェイス・アンド・デヴォーション』、カニエ・ウェスト『808's & ハートブレイク』、ロバート・フラック『ファースト・テイクス』、ブライアン・イーノ『テイキング・タイガー・マウンテン』......他にもたくさんあるけど。

それじゃ、日本で会えるのを楽しみにしています。最後にこれを読んでいるリスナーにメッセージをお願いします!

アンドレア:日本に行くのはとても楽しみ。この機会を頂けたのはとても光栄なことね。

サラ:とにかくエキサイト。待ちきれないわ。

 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291